(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024178829
(43)【公開日】2024-12-25
(54)【発明の名称】ジェスチャ判定装置及びジェスチャ判定システム
(51)【国際特許分類】
G06F 3/01 20060101AFI20241218BHJP
E05F 15/73 20150101ALI20241218BHJP
【FI】
G06F3/01 570
E05F15/73
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023097271
(22)【出願日】2023-06-13
(71)【出願人】
【識別番号】000003551
【氏名又は名称】株式会社東海理化電機製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110002583
【氏名又は名称】弁理士法人平田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山本 恒行
【テーマコード(参考)】
2E052
5E555
【Fターム(参考)】
2E052AA09
2E052BA04
2E052CA06
2E052EB01
2E052EC01
2E052GA05
2E052LA02
5E555AA54
5E555BA23
5E555BB23
5E555BC13
5E555CB66
5E555EA22
5E555FA00
(57)【要約】
【課題】誤判定を抑制できるジェスチャ判定装置及びジェスチャ判定システムを提供する。
【解決手段】ジェスチャ判定装置1は、ユーザの手の動作が所定の操作入力を行うためのジェスチャであるか否かを判定するジェスチャ判定部42と、動作中のユーザの肘角度を取得する肘角度取得部41と、を備える。ジェスチャ判定部42が判定するジェスチャには、所定方向の一方側へ手を振る場合と他方側へ手を振る場合とで異なる操作入力となるスワイプジェスチャが含まれる。ジェスチャ判定部42は、ユーザが所定方向に手を振る振り動作が検出された際、振り動作中のユーザの肘角度に基づいて、振り動作がスワイプジェスチャであるか否かを判定する。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユーザの手の動作が所定の操作入力を行うためのジェスチャであるか否かを判定するジェスチャ判定部と、
前記動作中のユーザの肘角度を取得する肘角度取得部と、を備え、
前記ジェスチャ判定部が判定する前記ジェスチャには、所定方向の一方側へ手を振る場合と他方側へ手を振る場合とで異なる操作入力となるスワイプジェスチャが含まれ、
前記ジェスチャ判定部は、ユーザが前記所定方向に手を振る振り動作が検出された際、前記振り動作中のユーザの肘角度に基づいて、前記振り動作が前記スワイプジェスチャであるか否かを判定する、
ジェスチャ判定装置。
【請求項2】
車室の天井に設けられ開口部を前後方向に開閉する開閉体を備えた車両に用いられ、
前記ジェスチャ判定部が判定する前記スワイプジェスチャは、前記開閉体が開く側へ手を振ることで前記開閉体を開ける操作入力を行い、前記開閉体が閉じる側へ手を振ることで前記開閉体を閉じるための操作入力を行うものである、
請求項1に記載のジェスチャ判定装置。
【請求項3】
前記ジェスチャ判定部は、ユーザが手を後方へ振る後振り動作が検出された際、前記後振り動作時のユーザの肘角度が所定の肘角度閾値以下となったことを1つの条件として、前記後振り動作が前記スワイプジェスチャであると判定する、
請求項2に記載のジェスチャ判定装置。
【請求項4】
ユーザの手の動作を検知するための動作センサと、
前記動作中のユーザの肘角度を検知するための肘角度センサと、
前記動作及び前記動作中の前記ユーザの肘角度の最小値に基づいて、前記動作が所定の操作入力を行うためのジェスチャであるか否かを判定するジェスチャ判定装置と、を備え、
前記ジェスチャ判定装置が判定する前記ジェスチャには、所定方向の一方側へ手を振る場合と他方側へ手を振る場合とで異なる操作入力となるスワイプジェスチャが含まれ、
前記ジェスチャ判定装置は、前記動作センサを用いてユーザが前記所定方向に手を振る振り動作が検出された際、前記振り動作中のユーザの肘角度に基づいて、前記振り動作が前記スワイプジェスチャであるか否かを判定する、
ジェスチャ判定システム。
【請求項5】
車室の天井に設けられ開口部を前後方向に開閉する開閉体を備えた車両に用いられ、
前記動作センサは、前記天井に取り付けられ、
前記ジェスチャ判定装置が判定する前記スワイプジェスチャは、前記開閉体が開く側へ手を振ることで前記開閉体を開ける操作入力を行い、前記開閉体が閉じる側へ手を振ることで前記開閉体を閉じるための操作入力を行うものである、
請求項4に記載のジェスチャ判定システム。
【請求項6】
前記ジェスチャ判定装置は、ユーザが手を後方へ振る後振り動作が検出された際、前記後振り動作時のユーザの肘角度が所定の肘角度閾値以下となったことを1つの条件として、前記後振り動作が前記スワイプジェスチャであると判定する、
請求項5に記載のジェスチャ判定システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ジェスチャ判定装置及びジェスチャ判定システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、車両の乗員によってなされたジェスチャを検出し、検出したジェスチャに応じたコマンドを出力するジェスチャ判定装置が開示されている。具体的には、特許文献1に記載のジェスチャ判定装置は、乗員がサンルーフの開方向(すなわち後方)に手を移動させるジェスチャを行ったことを検出したときサンルーフを開くコマンドを出力し、乗員がサンルーフの閉方向(すなわち前方)に手を移動させるジェスチャを行ったことを検出したときサンルーフを閉じるコマンドを出力している。
【0003】
ここで、特許文献1に記載のジェスチャ判定装置は、ジェスチャの誤判定を抑制すべく、ジェスチャの判定の際に手のひらの向きも同時に検出している。そして、特許文献1に記載のジェスチャ判定装置は、手のひらの向きを後向きにして手を後方へ移動させるジェスチャが行われた場合のみサンルーフを開くコマンドを出力し、手のひらの向きを前向きにして手を前方へ移動させるジェスチャが行われた場合のみサンルーフを閉じるコマンドを出力している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、ジェスチャの際の手のひらの向きは人によって異なることがあるため、特許文献1に記載のジェスチャ判定装置においては、ジェスチャの誤判定を抑制する観点から改善の余地がある。
【0006】
本発明は、前述の事情に鑑みてなされたものであり、誤判定を抑制できるジェスチャ判定装置及びジェスチャ判定システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、前記の目的を達成するため、ユーザの手の動作が所定の操作入力を行うためのジェスチャであるか否かを判定するジェスチャ判定部と、前記動作中のユーザの肘角度を取得する肘角度取得部と、を備え、前記ジェスチャ判定部が判定する前記ジェスチャには、所定方向の一方側へ手を振る場合と他方側へ手を振る場合とで異なる操作入力となるスワイプジェスチャが含まれ、前記ジェスチャ判定部は、ユーザが前記所定方向に手を振る振り動作が検出された際、前記振り動作中のユーザの肘角度に基づいて、前記振り動作が前記スワイプジェスチャであるか否かを判定する、ジェスチャ判定装置を提供する。
【0008】
また、本発明は、前記の目的を達成するため、ユーザの手の動作を検知するための動作センサと、前記動作中のユーザの肘角度を検知するための肘角度センサと、前記動作及び前記動作中の前記ユーザの肘角度の最小値に基づいて、前記動作が所定の操作入力を行うためのジェスチャであるか否かを判定するジェスチャ判定装置と、を備え、前記ジェスチャ判定装置が判定する前記ジェスチャには、所定方向の一方側へ手を振る場合と他方側へ手を振る場合とで異なる操作入力となるスワイプジェスチャが含まれ、前記ジェスチャ判定装置は、前記動作センサを用いてユーザが前記所定方向に手を振る振り動作が検出された際、前記振り動作中のユーザの肘角度の最小値に基づいて、前記振り動作が前記スワイプジェスチャであるか否かを判定する、ジェスチャ判定システムを提供する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、誤判定を抑制できるジェスチャ判定装置及びジェスチャ判定システムを提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】実施の形態における、乗員が車両の開閉体を開けるためのジェスチャを行っている様子を示す車両の車室内の図である。
【
図2】実施の形態における、乗員が車両の開閉体を閉じるためのジェスチャを行っている様子を示す車両の車室内の図である。
【
図3】実施の形態における、オープンスワイプジェスチャ時及びクローズスワイプジェスチャ時のそれぞれの乗員の肘角度の推移の一例を示すグラフである。
【
図4】実施の形態における、オープンスワイプジェスチャ時及びクローズスワイプジェスチャ時のそれぞれの乗員の肘角度の最小値の平均値の一例を示すグラフである。
【
図5】実施の形態における、ジェスチャ判定システムの機能ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
[実施の形態]
本発明の実施の形態について、
図1乃至
図5を参照して説明する。なお、以下に説明する実施の形態は、本発明を実施する上での好適な具体例として示すものであり、技術的に好ましい種々の技術的事項を具体的に例示している部分もあるが、本発明の技術的範囲は、この具体的態様に限定されるものではない。
【0012】
図1は、乗員Pが車両10の開閉体111を開けるためのジェスチャを行っている様子を示す車両10の車室内の図である。
図2は、乗員Pが開閉体111を閉じるためのジェスチャを行っている様子を示す車両10の車室内の図である。
【0013】
本形態のジェスチャ判定システム1は、車室の天井11に設けられた開口部110を開閉する開閉体111を備えた自動車等の車両10に搭載される。開閉体111は、例えばサンルーフ及びサンシェードの少なくとも一方にて構成される。本形態においては、開閉体111がサンルーフである例を示し、以後、開閉体111をサンルーフ111ともいう。サンルーフ111は、開口部110を閉塞している状態から後方へ移動することで天井11の開口部110を開くよう構成されている。
【0014】
本形態のジェスチャ判定システム1は、サンルーフ111の開閉を、乗員Pのジェスチャにより遠隔指示可能なシステムである。車両10は、天井11に、乗員Pの手の動作を検知する動作センサ2を備える。そして、車両10は、
図1に示すごとく動作センサ2のセンシング範囲において乗員Pがオープンスワイプジェスチャを行うことでサンルーフ111を開き、
図1に示すごとく動作センサ2のセンシング範囲において乗員Pがクローズスワイプジェスチャを行うことでサンルーフ111を閉じるよう構成されている。オープンスワイプジェスチャは、サンルーフ111が開く側(すなわち後方)へ手を振るジェスチャであり、クローズスワイプジェスチャは、サンルーフ111が閉じる側(すなわち前方)へ手を振るジェスチャである。以後、オープンスワイプジェスチャとクローズスワイプジェスチャとを特に区別しない場合は、単にスワイプジェスチャという。
図1及び
図2においては、動作センサ2のセンシング範囲の境界位置の例を一点鎖線にて示している。
【0015】
図2に示すごとく、乗員Pがクローズスワイプジェスチャをする場合、通常、乗員Pは、まず手を上方かつ後方へ移動させてクローズスワイプジェスチャの本動作のスタート位置に持っていく事前動作を行い、次いで手を前方へ振るクローズスワイプジェスチャの本動作を行う。しかしながら、クローズスワイプジェスチャの事前動作は、手を後方に移動させるという点においてオープンスワイプジェスチャと共通しているため、クローズスワイプジェスチャの事前動作がオープンスワイプジェスチャであると誤判定されるおそれが考えられる。
【0016】
そこで、発明者らは、クローズスワイプジェスチャの事前動作とオープンスワイプジェスチャとの違いを検討したところ、クローズスワイプジェスチャの事前動作とオープンスワイプジェスチャとでは、動作中における乗員Pの肘角度の最小値に違いがあることが見出された。このことにつき、以下説明する。
【0017】
図3は、オープンスワイプジェスチャ時及びクローズスワイプジェスチャ時のそれぞれの乗員の肘角度の推移の一例を示すグラフである。本グラフは、モーションキャプチャを用いて得られたものであり、結果をデフォルメして表している。
図3においては、オープンスワイプジェスチャ時の肘角度の結果を実線で表しており、クローズスワイプジェスチャ時の肘角度の結果を破線で示している。また、
図3において、期間T1は、オープンスワイプジェスチャ又はクローズスワイプジェスチャ前の期間であって乗員Pがステアリングを把持している期間である。期間T2は、オープンスワイプジェスチャ又はクローズスワイプジェスチャを行っている期間である。期間T3は、オープンスワイプジェスチャ又はクローズスワイプジェスチャ後の期間であって乗員Pがステアリングを把持している期間である。期間T2のうち、期間T21は、オープンスワイプジェスチャの本動作の期間又はクローズスワイプジェスチャの事前動作の期間であって、期間T22は、オープンスワイプジェスチャの事後動作又はクローズスワイプジェスチャの本動作の期間である。
【0018】
オープンスワイプジェスチャ時において、乗員Pは、まず期間T21において手を後方へ振る本動作を行うが、このとき肘角度が次第に小さくなり、オープンスワイプジェスチャの本動作の終了時に肘角度が最小となる。そして、オープンスワイプジェスチャの本動作が終わると、乗員Pは、期間T22において手をステアリングに戻す事後動作をするが、このとき肘角度が次第に大きくなる。
【0019】
一方、クローズスワイプジェスチャ時において、乗員Pは、まず期間T21において手を上方かつ後方へ移動させてクローズスワイプジェスチャの本動作のスタート位置に持っていく事前動作を行うが、このとき肘角度が次第に小さくなり、事前動作の終了時に肘角度が最小となる。そして、クローズスワイプジェスチャの事前動作が終わると、乗員Pは、期間T22において手を前方へ振るクローズスワイプジェスチャの本動作を行うが、このとき肘角度が次第に大きくなる。
【0020】
オープンスワイプジェスチャ及びクローズスワイプジェスチャのそれぞれにおいては、前述のような動作がなされるため、ジェスチャ中の肘角度の遷移を見ると、
図3に示すような下に凸の形のグラフとなる。
【0021】
ここで、
図3から、オープンスワイプジェスチャ中の肘角度の最小値は、クローズスワイプジェスチャの事前動作中の肘角度の最小値よりも小さいことが分かる。この一因としては、クローズスワイプジェスチャの事前動作とオープンスワイプジェスチャの本動作とでは、動作の目的が違うことから動作が微妙に異なる結果、肘角度の最小値が変わるものと想像される。
【0022】
次に、
図4は、オープンスワイプジェスチャ時及びクローズスワイプジェスチャ時のそれぞれの乗員の肘角度の最小値の平均値の一例を示すグラフである。
図4の結果は、特定の車両において、複数人にてオープンスワイプジェスチャとクローズスワイプジェスチャを行った際の、オープンスワイプジェスチャ時の肘角度の最小値の平均値と、クローズスワイプジェスチャ時の肘角度の最小値の平均値とを表したものである。また、
図4には、標準偏差を示すエラーバーも併せて示している。
【0023】
図4から、
図3の結果に見られるオープンスワイプジェスチャ時とクローズスワイプジェスチャ時の肘角度の差は、統計的にも見られることが分かる。
【0024】
そこで、本形態のジェスチャ判定システム1は、クローズスワイプジェスチャの事前動作がオープンスワイプジェスチャであると誤判定されることを抑制すべく、乗員Pが前後方向に手を振る振り動作が検出された際、振り動作中の乗員Pの肘角度に基づいて、振り動作がスワイプジェスチャであるか否かを判定する。以下、本形態のジェスチャ判定システム1の詳細について説明する。
【0025】
図5は、本形態のジェスチャ判定システム1の機能ブロック図である。ジェスチャ判定システム1は、動作センサ2、肘角度センサ3、ジェスチャ判定装置4及び駆動部5を備える。動作センサ2は、物体の動作を検知するためのセンサである。肘角度センサ3は、乗員Pの肘の角度を検知するためのセンサである。ジェスチャ判定装置4は、乗員Pの動作がスワイプジェスチャであるか否かを判定するとともに、スワイプジェスチャに応じたサンルーフ111の開閉コマンドを駆動部5へ出力する。駆動部5は、ジェスチャ判定装置4からのコマンドに応じてサンルーフ111を駆動し、サンルーフ111を開閉させる。
【0026】
動作センサ2は、センシング範囲内にて行われた乗員Pの手の動作を検知する。動作センサ2は、例えば、赤外光を用いたToF(Time of Flight)カメラ等のカメラ、ミリ波レーダ等のレーダを用いることができる。
【0027】
動作センサ2は、スワイプジェスチャ時の乗員Pの手の動作が検知可能なよう、その位置及びセンシング範囲が調整されている。本形態において、動作センサ2は、車両10の天井11において車室内に臨むよう取り付けられたオーバーヘッドモジュール6に搭載されている。本形態において、オーバーヘッドモジュール6は、天井11における運転席と助手席との間の位置に設けられる。そして、動作センサ2は、乗員Pがオーバーヘッドモジュール6の近傍まで手を挙げたときにその手がセンシング範囲に入り、乗員Pが手を挙げていない通常姿勢にあるときに乗員Pの手がセンシング範囲に入らないよう構成されている。なお、動作センサ2は、動作センサ2から比較的遠い位置における物体の動きを無視すべく、動作センサ2から所定の距離範囲内のみをセンシング範囲としてもよい。また、動作センサ2の配置は、スワイプジェスチャ時の乗員Pの手の動作を検知可能であれば、オーバーヘッドモジュール6内に限定されない。
【0028】
肘角度センサ3は、スワイプジェスチャを行っている乗員Pの肘角度を検知する。肘角度センサ3は、例えば、肘角度センサ3は、赤外光を用いたToF(Time of Flight)カメラ等のカメラ、ミリ波レーダ等のレーダを用いることができる。
【0029】
肘角度センサ3は、スワイプジェスチャ時の乗員Pの肘角度が検知可能なよう、その位置及びセンシング範囲が調整されている。肘角度センサ3は、動作センサ2と同様にオーバーヘッドモジュール6に搭載されてもよく、この場合は動作センサ2と共通の1つのセンサにて構成されてもよい。また、肘角度センサ3は、スワイプジェスチャを行っている乗員Pの肘角度の検知を容易にすべく、例えば乗員Pの肘角度を横方向から検知するものであってもよいし、複数方向から乗員Pの肘角度を検知するものであってもよい。肘角度センサ3は、乗員Pがスワイプジェスチャを行っているときにその乗員Pの肘を含む腕がセンシング範囲に入り、乗員Pが手を挙げていない通常姿勢にあるときに乗員Pの肘がセンシング範囲に入らないよう構成されている。動作センサ2及び肘角度センサ3のそれぞれの検知結果は、ジェスチャ判定装置4に出力される。
【0030】
ジェスチャ判定装置4は、例えば、プロセッサ及びプロセッサ動作時の演算領域となるRAM(Random Access Memory)を含む制御領域と、ROM(Read Only Memory)、ハードディスク等を有し、プロセッサが実行するプログラム等を記憶する記憶領域とを備える。ジェスチャ判定装置4は、例えば、オーバーヘッドモジュール6に搭載されたマイクロコンピュータ、車両10の各種制御を行うECU(Electronic Control Unit)等にて構成してもよい。ジェスチャ判定装置4は、肘角度取得部41、ジェスチャ判定部42及びコマンド出力部43を備える。
【0031】
肘角度取得部41は、肘角度センサ3の出力結果に基づいて乗員Pの肘角度(すなわち上腕と前腕との間の角度)を取得する。例えば、肘角度取得部41は、肘角度センサ3の出力結果から、骨格検出技術を用いて乗員Pの手首位置、肘位置、肩位置を少なくとも抽出し、これらの位置関係から肘角度を算出してもよい。肘角度取得部41は、例えば乗員Pがスワイプジェスチャをすべく手を挙げ、乗員Pの肘が肘角度センサ3のセンシング範囲内に入ったときにのみ乗員Pの肘角度の取得を行う。そのため、例えば運転席と助手席との双方に乗員がいる場合において、運転席の乗員がスワイプジェスチャをした場合は運転席の乗員の肘角度が取得され、助手席の乗員がスワイプジェスチャをした場合は助手席の乗員の肘角度が取得される。また、肘角度取得部41は、肘角度センサ3のセンシング範囲に乗員Pの肘を含む腕があるときの肘角度の変化を見るべく、肘角度センサ3のセンシング範囲に乗員Pの肘を含む腕があるときは肘角度を継続的に取得する。肘角度取得部41にて取得された乗員Pの肘角度の情報は、ジェスチャ判定部42へ出力される。
【0032】
ジェスチャ判定部42は、乗員Pの手の動作が所定の操作入力を行うためのジェスチャであるか否かを判定する。本形態において、ジェスチャ判定部42は、乗員Pの手の動作が、サンルーフ111を開くために手を後方へ振るオープンスワイプジェスチャか否か、又はサンルーフ111を閉じるために手を前方へ振るクローズスワイプジェスチャか否かを判定する。
【0033】
ジェスチャ判定部42は、スワイプジェスチャを判定するためのジェスチャ判定情報に基づいて、乗員Pの手の動作がスワイプジェスチャか否かを判定する。ジェスチャ判定情報は、例えばジェスチャ判定装置4に記憶されており、例えば手の移動方向や、移動速度、移動距離等の閾値等のスワイプジェスチャの動作条件が含まれ得る。そして、ジェスチャ判定部42は、動作センサ2にて検出された乗員Pの手の動作が、オープンスワイプジェスチャ又はクローズスワイプジェスチャの動作条件を満たす場合、その手の動作がオープンスワイプジェスチャ又はクローズスワイプジェスチャであると判定する。
【0034】
ここで、ジェスチャ判定情報には、オープンスワイプジェスチャを判定するための情報として、乗員Pの肘角度の閾値(以後、「肘角度閾値」という。)が含まれている。すなわち、ジェスチャ判定部42は、乗員Pが手を後方へ振る後振り動作が検出された際、後振り動作中の肘角度が肘角度閾値以下となったことを、オープンスワイプジェスチャの1つの条件としている。これは、前述の
図3及び
図4に示すごとく、オープンスワイプジェスチャの動作中の肘角度の最小値が、クローズスワイプジェスチャの事前動作中の肘角度の最小値よりも小さいことを考慮したものである。
【0035】
肘角度閾値は、乗員Pの肘角度が、オープンスワイプジェスチャ時の乗員Pの肘角度の最小値よりも大きく、クローズスワイプジェスチャの事前動作時の乗員Pの肘角度の最小値よりも小さくなるよう適宜設定される。肘角度閾値の設定方法は種々考えられるが、以下、例示的にいくつか説明する。
【0036】
まず、前述の
図4のデータのように、事前に、複数人のオープンスワイプジェスチャ時の肘角度のデータとクローズスワイプジェスチャ時の肘角度のデータとの統計データを取り、この統計データに基づいて決定してもよい。例えば
図4のような統計データが得られた場合、肘角度閾値を、オープンスワイプジェスチャ時の肘角度の最小値の平均値と、クローズスワイプジェスチャ時の肘角度の最小値の平均値との間の値としてもよい。このとき、肘角度閾値を、
図4の2つのエラーバーの間の値にすることがより好ましい。車室の天井11の高さ等により、オープンスワイプジェスチャ時及びクローズスワイプジェスチャ時の肘角度の最小値が変わる可能性もあるため、車種ごとに前述のような統計をとって車種ごとに肘角度閾値を決定してもよい。
【0037】
また、オープンスワイプジェスチャ時及びクローズスワイプジェスチャ時のそれぞれの肘角度は、個人差があり得るため、乗員P毎に個別に肘角度閾値が設定されてもよい。例えば、オープンスワイプジェスチャを行った際の肘角度の履歴とクローズスワイプジェスチャを行った際の肘角度の乗員P毎の履歴とに基づいて、乗員P毎に肘角度閾値が決定されてもよい。この履歴は、例えば初期設定の際、乗員P毎にオープンスワイプジェスチャ及びクローズスワイプジェスチャを複数回ずつ行わせることで事前に蓄積してもよい。あるいは、車両10の走行中等に乗員P毎に行われたオープンスワイプジェスチャ及びクローズスワイプジェスチャの際の肘角度の履歴を蓄積してもよい。この場合、履歴が蓄積されていない状態においては、クローズスワイプジェスチャの事前動作がオープンスワイプジェスチャであると誤判定される場合も考えられるが、例えばオープンスワイプジェスチャの判定が行われた直後にクローズスワイプジェスチャの判定がなされたようなやり直し動作が検出された場合は、誤判定と判断して履歴に蓄積しない等することで、履歴の精度を上げてもよい。乗員Pの特定は、特に限定されないが、顔認証、指紋認証、声帯認証、網膜認証、カード認証、ID認証等を採用可能である。
以上例示したように、肘角度閾値が設定され得る。
【0038】
ジェスチャ判定部42が、乗員Pによってオープンスワイプジェスチャがなされたと判定した場合、コマンド出力部43は、サンルーフ111を開くコマンド信号を駆動部5へ出力する。また、ジェスチャ判定部42が、乗員Pによってクローズスワイプジェスチャがなされたと判定した場合、コマンド出力部43は、サンルーフ111を閉じるコマンド信号を駆動部5へ出力する。
【0039】
駆動部5は、車両10のサンルーフ111の開閉を駆動するためのアクチュエータを含む。駆動部5は、ジェスチャ判定装置4からのコマンドを受けて、サンルーフ111の開閉を実行する。
【0040】
(実施の形態の作用及び効果)
本形態において、ジェスチャ判定部42が判定するジェスチャには、所定方向の一方側へ手を振る場合と他方側へ手を振る場合とで異なる操作入力となるスワイプジェスチャが含まれている。そして、ジェスチャ判定部42は、乗員Pが所定方向に手を振る振り動作が検出された際、振り動作中の乗員Pの肘角度に基づいて、振り動作がスワイプジェスチャであるか否かを判定する。このようにスワイプジェスチャの判定に動作中の乗員Pの肘角度を考慮することで、スワイプジェスチャであるか否かの判定に誤判定が生じることが抑制される。
【0041】
また、ジェスチャ判定装置4は、車室の天井11に設けられ開口部110を前後方向に開閉する開閉体111を備えた車両10に用いられるものである。そして、ジェスチャ判定部42が判定するスワイプジェスチャは、開閉体111が開く側へ手を振ることで開閉体111を開ける操作入力を行い、開閉体111が閉じる側へ手を振ることで開閉体111を閉じるための操作入力を行うものである。このような場合、ジェスチャを行う乗員Pの位置やジェスチャ動作をする空間が制限されており、スワイプジェスチャの動作の仕方も制限される。そのため、ジェスチャ時の乗員Pの姿勢の違い等に起因するジェスチャ時の肘角度のばらつきが少なくなり、肘角度に基づいたスワイプジェスチャの判定を高精度に行いやすい。
【0042】
また、ジェスチャ判定部42は、乗員Pが手を後方へ振る後振り動作が検出された際、後振り動作時の乗員Pの肘角度が所定の肘角度閾値以下となったことを1つの条件として、後振り動作がスワイプジェスチャであると判定する。これにより、前述のごとく、オープンスワイプジェスチャとクローズスワイプジェスチャの事前動作との誤判定を抑制しやすい。
【0043】
以上のごとく、本形態によれば、誤判定を抑制できるジェスチャ判定装置及びジェスチャ判定システムを提供することができる。
【0044】
[変形形態]
前記実施の形態においては、クローズスワイプジェスチャの事前動作がオープンスワイプジェスチャであると誤判定されることを抑制するための構成を説明したが、例えばオープンスワイプジェスチャの事後動作がクローズスワイプジェスチャであると誤判定されることを抑制するための構成を備えてもよい。すなわち、オープンスワイプジェスチャの事後動作は、手を前方に移動させるという点においてクローズスワイプジェスチャと共通しているため、オープンスワイプジェスチャの事後動作がクローズスワイプジェスチャであると誤判定されるおそれが考えられる。そこで、
図3及び
図4に示される、オープンスワイプジェスチャとクローズスワイプジェスチャとにおける肘角度の最小値の差を利用し、ジェスチャ判定部は、ユーザが手を前方へ振る前振り動作が検出された際、前振り動作時のユーザの肘角度が所定の肘角度閾値以下となっていないことを1つの条件として、前振り動作がスワイプジェスチャであると判定してもよい。
【0045】
また、ジェスチャ判定装置が判定するジェスチャは、手を前後方向に振るスワイプジェスチャに限られず、手を横方向等の前後方向以外に振るスワイプジェスチャであってもよい。このようなジェスチャであっても、事前動作、本動作及び事後動作が存在し得るため、ジェスチャ判定装置による誤判定が生じることが想定し得るが、このようなスワイプジェスチャの判定においても、肘角度に基づいてジェスチャ判定を行うことで誤判定が抑制可能である。
【0046】
また、前記実施の形態においては、ジェスチャ判定システムを車両用とした例を示したが、これに限られず、スワイプジェスチャにてジェスチャ入力可能な機器であればよい。
【0047】
以上、本発明の実施の形態を説明したが、前述した実施の形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。また、実施の形態の中で説明した特徴の組合せの全てが発明の課題を解決するための手段に必須であるとは限らない点に留意すべきである。また、本発明は、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変形して実施することが可能である。
【符号の説明】
【0048】
1…ジェスチャ判定システム
10…車両
11…天井
110…開口部
111…開閉体(サンルーフ)
2…動作センサ
3…肘角度センサ
4…ジェスチャ判定装置
41…肘角度取得部
42…ジェスチャ判定部
P…乗員(ユーザ)