(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024178834
(43)【公開日】2024-12-25
(54)【発明の名称】車両制御装置
(51)【国際特許分類】
B60W 20/13 20160101AFI20241218BHJP
B60W 10/08 20060101ALI20241218BHJP
B60W 10/26 20060101ALI20241218BHJP
B60W 10/30 20060101ALI20241218BHJP
B60L 7/14 20060101ALI20241218BHJP
B60L 50/16 20190101ALI20241218BHJP
B60L 50/60 20190101ALI20241218BHJP
B60L 58/12 20190101ALI20241218BHJP
B60L 58/27 20190101ALI20241218BHJP
【FI】
B60W20/13 ZHV
B60W10/08 900
B60W10/26 900
B60W10/30 900
B60L7/14
B60L50/16
B60L50/60
B60L58/12
B60L58/27
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023097282
(22)【出願日】2023-06-13
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000947
【氏名又は名称】弁理士法人あーく事務所
(72)【発明者】
【氏名】星野 優
(72)【発明者】
【氏名】島内 隆行
【テーマコード(参考)】
3D202
5H125
【Fターム(参考)】
3D202BB15
3D202BB21
3D202BB22
3D202BB43
3D202CC58
3D202DD09
3D202DD45
3D202DD46
3D202EE00
3D202EE17
5H125AA01
5H125AC08
5H125AC12
5H125BA00
5H125BC19
5H125BD17
5H125CA02
5H125CB02
5H125CD09
5H125DD11
5H125EE25
5H125EE27
5H125EE42
5H125FF27
(57)【要約】
【課題】バッテリの許容入力電力Winが制限される状況を回避することが可能な車両制御装置を提供する。
【解決手段】バッテリのSOCが所定値以上であり(ステップST1でYES判定)、且つ当該バッテリの温度が所定値以下であること(ステップST2でYES判定)を条件として、水加熱ヒータを作動させる処理(ステップST4)、および、当該処理によって昇温された水をバッテリ回路で循環させる処理(ステップST6)を実行するようにしている。これにより、バッテリの許容入力電力Winが制限される状況が回避され、回生ブレーキが制限されることがなくなる。その結果、車両の減速度を確保するためにエンジンのON要求が生じてしまうことが抑制され、BEVモードでの走行が可能になる。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行用駆動力源として電池からの給電を受ける電動機と内燃機関とを備えると共に、水加熱ヒータからの熱を受ける冷媒が循環可能であって循環する前記冷媒によって前記電池の昇温を可能にする電池昇温回路を備え、惰行走行時に前記電動機を使用する回生ブレーキによる制動を行うようにした車両に搭載された車両制御装置において、
前記電池のSOCが所定値以上であり、且つ当該電池の温度が所定値以下であることを条件として、前記水加熱ヒータを作動させる処理、および、当該処理によって昇温された前記冷媒を前記電池昇温回路で循環させる処理を実行することを特徴とする車両制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は車両制御装置に係る。特に、本発明は、走行用駆動力源として内燃機関と電動機とを備えた車両の制御の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ハイブリッド車両やプラグインハイブリッド車両に代表されるように走行用駆動力源として内燃機関(以下、エンジンと呼ぶ場合もある)と電動機(以下、走行用モータと呼ぶ場合もある)とを備えた車両にあっては、惰行走行時等に、回生ブレーキによる制動を行うと共に走行用モータをジェネレータとして機能させて発電によるバッテリの充電を行うようになっている(例えば特許文献1)。
【0003】
また、特許文献1に開示されているように、走行用モータに給電を行う駆動用バッテリ(以下、バッテリと呼ぶ場合もある)としては、一般にリチウムイオン二次電池が適用されることも知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、バッテリがリチウムイオン二次電池である場合、バッテリのSOC(State Of Charge)が高く且つバッテリ温度が低温である状況にあっては、負極におけるリチウム金属の析出によって劣化が進行する虞があることから、このリチウム金属の析出を抑制するためにバッテリの許容入力電力Winを制限することが行われている。
【0006】
このようにバッテリの許容入力電力Winを制限してしまうと、回生ブレーキによる制動を行うことが大きく制限されることになるため、車両の減速度を確保するためにエンジンON要求が生じることになる。その結果、エンジンを停止して走行用モータのみを走行用駆動力源として用いるBEVモードでの走行が行えなくなってしまうといった課題がある。
【0007】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、前述したバッテリの許容入力電力Winが制限される状況を回避することが可能な車両制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記の目的を達成するための本発明の解決手段は、走行用駆動力源として電池からの給電を受ける電動機と内燃機関とを備えると共に、水加熱ヒータからの熱を受ける冷媒が循環可能であって循環する前記冷媒によって前記電池の昇温を可能にする電池昇温回路を備え、惰行走行時に前記電動機を使用する回生ブレーキによる制動を行うようにした車両に搭載された車両制御装置を前提とする。そして、この車両制御装置は、前記電池のSOCが所定値以上であり、且つ当該電池の温度が所定値以下であることを条件として、前記水加熱ヒータを作動させる処理、および、当該処理によって昇温された前記冷媒を前記電池昇温回路で循環させる処理を実行することを特徴とする。
【0009】
この特定事項により、電池のSOCが所定値以上であり、且つ当該電池の温度が所定値以下である場合、水加熱ヒータを作動させる処理、および、当該処理によって昇温された冷媒を電池昇温回路で循環させる処理を実行することにより、電池の温度を上昇させ、リチウム金属が析出する状況を回避する。これにより、リチウム金属の析出を抑制するために電池の許容入力電力Winを制限するといったことが不要となり、回生ブレーキが制限されることがなくなる。その結果、車両の減速度を確保するために内燃機関のON要求が生じてしまうことが抑制され、BEVモードでの走行が可能になる。
【発明の効果】
【0010】
本発明では、電池のSOCが所定値以上であり、且つ当該電池の温度が所定値以下であることを条件として、水加熱ヒータを作動させる処理、および、当該処理によって昇温された冷媒を電池昇温回路で循環させる処理を実行するようにしている。これにより、電池の許容入力電力Winが制限される状況が回避され、回生ブレーキが制限されることがなくなる。その結果、車両の減速度を確保するために内燃機関のON要求が生じてしまうことが抑制され、BEVモードでの走行が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】実施形態に係る車両の制御系の概略を示す図である。
【
図2】実施形態に係る車両に搭載された冷却水回路の概略を示す図である。
【
図3】バッテリ昇温制御の手順を示すフローチャート図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。本実施形態は、プラグインハイブリッド車両(PHEV)に本発明を適用した場合について説明する。
【0013】
図1は、本実施形態に係る車両の制御系の概略を示す図である。この
図1に示すように、本実施形態に係る車両の制御系は、エンジンECU1、モータECU2、バッテリECU3、エアコンECU4、および、HEV_ECU(車両制御装置)5を備えている。これらECU1~5は、CPUを中心とするマイクロプロセッサとして構成されており、CPUの他に、処理プログラムを記憶するROMやデータを一時的に記憶するRAM、入出力ポート、通信ポート等を備えている。
【0014】
エンジンECU1は、走行用駆動力源としてのエンジン(内燃機関)11を駆動制御する。具体的に、エンジンECU1は、エンジン11の運転状態を検出する各種センサからの信号(例えば、クランクポジションセンサ12からのクランクポジション信号や、水温センサ13からのエンジン冷却水温度信号や、外気温センサ14からの外気温度信号等)が入力ポートを介して入力されており、エンジンECU1からは、エンジン11を駆動するための種々の制御信号が出力ポートを介して出力されている。また、エンジンECU1は、HEV_ECU5と通信しており、HEV_ECU5からの制御信号によりエンジン11を運転制御すると共に必要に応じてエンジン11の運転状態に関するデータをHEV_ECU5に出力する。
【0015】
モータECU2は、図示しないインバータのスイッチング制御によって2個のモータジェネレータ(電動機)MG1,MG2(主に発電機として機能する第1モータジェネレータMG1、主に電動機として機能する第2モータジェネレータMG2)を制御する。具体的に、モータECU2は、モータジェネレータMG1,MG2を制御するために必要な信号が入力ポートを介して入力されており、モータECU2からは、インバータの図示しないスイッチング素子へのスイッチング制御信号等が出力ポートを介して出力されている。また、モータECU2は、HEV_ECU5と通信しており、HEV_ECU5からの制御信号によってモータジェネレータMG1,MG2を制御すると共に必要に応じてモータジェネレータMG1,MG2の運転状態に関するデータをHEV_ECU5に出力する。
【0016】
バッテリECU3は、例えばリチウムイオン二次電池として構成されたバッテリ31を管理する。バッテリ31は、インバータを介してモータジェネレータMG1,MG2と電力をやりとりする。具体的に、バッテリECU3には、バッテリ31を管理するのに必要な信号、例えば、バッテリ31の端子間に設置された電圧センサ32からの端子間電圧信号、バッテリ31の出力端子に接続された電力ラインに取り付けられた電流センサ33からの充放電電流信号、バッテリ31に取り付けられた温度センサ34からの電池温度信号等が入力されており、必要に応じてバッテリ31の状態に関するデータを通信によりHEV_ECU5に送信する。また、バッテリECU3は、バッテリ31を管理するために、電流センサ33により検出された充放電電流の積算値に基づいてそのときのバッテリ31から放電可能な電力の容量の全容量に対する割合である蓄電割合SOCを演算したり、演算した蓄電割合SOCと電池温度とに基づいてバッテリ31を充放電してもよい許容入出力電力である入出力制限Win,Woutを演算したりしている。尚、バッテリ31を構成するリチウムイオン二次電池は、SOC(蓄電割合SOC)が高く且つバッテリ温度が低温である状況では、負極におけるリチウム金属の析出によって劣化が進行する虞がある。このため、従来技術にあっては、このような状況において、リチウム金属の析出を抑制するためにバッテリ31の許容入力電力Winを制限することが行われている。
【0017】
エアコンECU4は、図示しないエアコン装置を制御する。具体的には、周知の如く、車室内の冷房要求、暖房要求および除湿要求等に応じて、エアコン装置のヒートポンプ回路における圧縮機や膨張弁の制御、ブロワモータ41、内外気切替ドア、吹出口切替ドアおよびエアミックスドアの制御を行う。
【0018】
また、エアコンECU4には、車室内前面(インストルメントパネル)に設けられたエアコン操作パネル42上の各種スイッチからのスイッチ信号、および各種センサからのセンサ信号が入力される。エアコン操作パネル42上に設けられた各種スイッチとしては、エアコン装置を自動制御するためのオート(AUTO)スイッチ、圧縮機を強制作動させるためのエアコン(A/C)スイッチ、吸込口モードを切り替えるための吸込口切替スイッチ、車室内の温度を所望の温度(車室内設定温度)に設定するための温度設定スイッチ、ブロワモータ41の送風量をマニュアルモードで設定するための風量切替スイッチ、および、吹出口モードを切り替えるための吹出口切替スイッチ等が備えられている。また、エアコン操作パネル42上にはデフロスタスイッチが設けられており、このデフロスタスイッチをマニュアル操作することによって、デフロスタモード(窓の曇りを除去するモード)とすることもできる。
【0019】
また、エアコンECU4は、
図2に示す冷却水回路6に備えられた各機器を制御する。以下、冷却水回路6について説明する。
図2は、冷却水回路6の概略を示す図である。本実施形態における冷却水回路6は、エアコン装置のヒータユニット61aが備えられるヒータユニット回路61と、バッテリ31が備えられるバッテリ回路(本発明でいう電池昇温回路)62とを備え、これら回路61,62をそれぞれ循環する冷媒(冷却水)同士が熱交換器63によって熱交換可能な構成とされている。
【0020】
ヒータユニット回路61の概略としては、ウォータポンプ61b、エンジン11、水加熱ヒータ(電気ヒータ)61c、流量調整弁61d、ヒータユニット61a、熱交換器63を備えている。ヒータユニット61aは、図示しないエアコン装置のダクト内に配設され、冷却水(ヒータユニット回路61を循環するエンジン冷却水:温水)と空気(ダクトを経て車室内に向けて供給される空気)との間で熱交換を行うことにより、この空気を加温して車室内の暖房に寄与させるようになっている。水加熱ヒータ61cは、ヒータユニット回路61を流れるエンジン冷却水を加熱するための電気ヒータであり、車室内の暖房要求時にエンジン冷却水温度が所定値まで低下した場合にONされてエンジン冷却水を加熱するようになっている。ヒータユニット回路61では、流量調整弁61dによる流量調整によって、ヒータユニット61aを流れるエンジン冷却水の流量と、熱交換器63を流れるエンジン冷却水の流量とが調整可能とされている。また、ヒータユニット回路61は、水加熱ヒータ61cの下流側に水温センサ13が配設されている。水温センサ13の配設位置としてはこれに限定されるものではなく、また、水温センサ13の配設箇所は複数箇所であってもよい。また、
図2は、水加熱ヒータ61cとエンジン11とが直列に接続されたものとしているが、これに限定されるものではない。例えば並列に接続されたものであってもよい。
【0021】
バッテリ回路62は、バッテリ31の温度を調整するための回路であって、ウォータポンプ62aを備えている。バッテリ回路62は、熱交換器63に接続されており、この熱交換器63での熱交換によって、ヒータユニット回路61からの受熱が可能となっている。
【0022】
このような冷却水回路6を備えていることにより、例えば、車室内の暖房要求が生じた場合、エアコンECU4は、暖房要求に応じて必要な熱量(要求熱量)を計算すると共に、エンジン11からエンジン冷却水が受け取る冷却水受熱量を算出し、これらに基づいてウォータポンプ61b、水加熱ヒータ61c等を制御して、要求熱量に応じた暖房が行われるようにしている。
【0023】
HEV_ECU5は、車両全体を制御する。具体的に、HEV_ECU5には、図示しない充電器(家庭用電源等の外部電源に接続されてバッテリ31を充電する装置)の電源プラグの外部電源への接続を検出する接続検出信号、スタートスイッチからのON/OFF信号、シフトポジションセンサからのシフトポジション信号、アクセルペダルポジションセンサからのアクセル開度信号、ブレーキペダルポジションセンサからのブレーキペダルポジション信号、車速センサからの車速信号等が入力ポートを介して入力されている。
【0024】
また、HEV_ECU5は、車両の走行モードを制御する。具体的に、本実施形態に係る車両では、走行モードとして、ハイブリッドモード(HEVモード)や電動モード(BEVモード)での走行が可能となっている。HEVモードは、少なくともエンジン11を走行用駆動力源として用いて走行する走行モードである。BEVモードは、エンジン11を停止して第2モータジェネレータ(走行用モータ)MG2のみを走行用駆動力源として用いて走行する走行モードである。これらHEVモードおよびBEVモードの切替制御については周知であるので、ここでの説明は省略する。
【0025】
また、HEV_ECU5は、バッテリ31の電池のSOC(蓄電割合SOC)が所定値まで低下した場合、そのことを条件としてエンジン11を作動させるように、エンジンECU1にエンジン作動指令信号を送信する。これにより、エンジン11の動力を利用した第1モータジェネレータMG1の発電が行われてバッテリ31が充電されることになる。
【0026】
また、HEV_ECU5は、車両の惰行走行時に、回生ブレーキによる制動を行うと共に第2モータジェネレータMG2をジェネレータとして機能させて発電によるバッテリ31の充電を行う。
【0027】
本実施形態におけるHEV_ECU5の特徴とする機能として、バッテリ31のSOCが所定値以上であり、且つ当該バッテリ31の温度が所定値以下であることを条件として、水加熱ヒータ61cを作動させる処理(エアコンECU4に水加熱ヒータ作動指令信号を送信する処理)、および、当該処理によって昇温された水をバッテリ回路62で循環させる処理(エアコンECU4にポンプ作動指令信号を送信する処理)を実行するようになっている(以下、これらの処理をバッテリ昇温制御と呼ぶこととする)。バッテリ31のSOCはバッテリECU3から取得する。バッテリ31の温度は温度センサ34によって検出されバッテリECU3から取得する。
【0028】
加えて、HEV_ECU5の機能としては、バッテリ31のSOCが所定値以上であり、且つ当該バッテリ31の温度が所定値以下であることを条件として水加熱ヒータ61cを作動させる場合に、ヒータユニット回路61における冷却水温度が所定値に達するまでは、バッテリ回路62のウォータポンプ62aを停止し(バッテリ回路62での水の循環を停止し)、ヒータユニット回路61における冷却水温度が所定値に達した時点でウォータポンプ62aを作動させるようにしている。これにより、各回路61,62の水の温度差が小さい場合において無駄にウォータポンプ62aを作動させることを回避している。また、この場合、ヒータユニット回路61にあっては、流量調整弁61dによる流量調整によって熱交換器63を流れるエンジン冷却水の流量を多くしていることから、ヒータユニット61aに流れ込む冷却水の量が少なくなっている。この場合に、車室内への空調風の吹き出し温度が低くなってしまうことを回避するべく、ブロワモータ41の回転速度の上限値を制限するようにしている。尚、前述のバッテリ昇温制御は、エアコン装置の運転モードがデフロスタモードとなっていないことを条件として実行される。これは、デフロスタモードである場合に、ヒータユニット61aで得られる熱量を維持して防曇性能(窓の曇りを抑制する性能)を確保するためである。
【0029】
以下、バッテリ昇温制御の手順について、
図3のフローチャートを用いて説明する。このフローチャートは、車両のスタートスイッチがONされた状態で所定時間毎に繰り返される。
【0030】
先ず、ステップST1において、バッテリECU3から取得されたバッテリ31のSOCが所定値A1以上であるか否かが判定される。
【0031】
バッテリ31のSOCが所定値A1未満であり、ステップST1でNO判定された場合には、そのまま終了する。一方、バッテリ31のSOCが所定値A1以上であり、ステップST1でYES判定された場合には、ステップST2に移り、バッテリECU3から取得されたバッテリ31の温度が所定値以下であるか否かが判定される。
【0032】
バッテリ31の温度が所定値を超えており、ステップST2でNO判定された場合には、そのまま終了する。一方、バッテリ31の温度が所定値以下であり、ステップST2でYES判定された場合には、ステップST3に移り、現在のエアコン装置の運転モードがデフロスタモード以外のモードであるか否かが判定される。
【0033】
現在のエアコン装置の運転モードがデフロスタモードであり、ステップST3でNO判定された場合には、そのまま終了する。一方、現在のエアコン装置の運転モードがデフロスタモード以外のモードであり、ステップST3でYES判定された場合には、ステップST4に移り、前述したバッテリ昇温制御を開始する。つまり、水加熱ヒータ61cを作動させ、ヒータユニット回路61を循環する冷却水の温度が所定値に達するまで、バッテリ回路62のウォータポンプ62aを停止する。この際、ブロワモータ41の回転速度の上限値を制限し、車室内への空調風の吹き出し温度が低くなってしまうことを回避する。
【0034】
その後、ステップST5に移り、ヒータユニット回路61における冷却水温度が所定値Te2以上となるまで待機する。尚、前述した各所定値(閾値)A1,Te1,Te2は実験やシミュレーションによって予め設定されている。また、ブロワモータ41の回転速度の上限値は、予め設定された固定値とされていてもよいし、ヒータユニット回路61を循環する冷却水の温度や流量に応じて調整されるようになっていてもよい。
【0035】
ヒータユニット回路61における冷却水温度が所定値Te2以上となり、ステップST5でYES判定された場合には、ステップST6に移り、バッテリ回路62のウォータポンプ62aを作動させ、バッテリ回路62で水を循環させることにより、熱交換器63においてヒータユニット回路61の冷却水から受けた熱によってバッテリ31を加温する。
【0036】
以上説明したように、本実施形態では、バッテリ31のSOCが所定値以上であり、且つ当該バッテリ31の温度が所定値以下であることを条件として、水加熱ヒータ61cを作動させる処理、および、当該処理によって昇温された水をバッテリ回路62で循環させる処理を実行するようにしている。これにより、バッテリ31の許容入力電力Winが制限される状況(リチウム金属の析出を抑制するためにバッテリ31の許容入力電力Winが制限される状況)が回避され、回生ブレーキが制限されることがなくなる。その結果、車両の減速度を確保するためにエンジン11のON要求が生じてしまうことが抑制され、BEVモードでの走行が可能になる。
【0037】
尚、本発明は、前記実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲および該範囲と均等の範囲で包含される全ての変形や応用が可能である。
【0038】
例えば、前記実施形態では、プラグインハイブリッド車両に本発明を適用した場合について説明した。本発明はこれに限らず、ハイブリッド車両(HEV)に適用することも可能である。
【0039】
また、前記実施形態では、バッテリ昇温制御において水加熱ヒータ61cを作動させる場合に、ヒータユニット回路61における冷却水温度が所定値に達するまでは、バッテリ回路62のウォータポンプ62aを停止するようにしていた。本発明はこれに限らず、水加熱ヒータ61cの作動開始から所定時間経過後にバッテリ回路62のウォータポンプ62aを作動させるようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明は、走行用駆動力源としてエンジンと走行用モータとを備えた車両におけるバッテリの許容入力電力Winが制限される状況を回避するための対策として適用可能である。
【符号の説明】
【0041】
5…HEV_ECU(車両制御装置) 11…エンジン(内燃機関)
31…バッテリ(電池) 61c…水加熱ヒータ 62…バッテリ回路(電池昇温回路)
MG1,MG2…モータジェネレータ(電動機)