(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024178835
(43)【公開日】2024-12-25
(54)【発明の名称】輸送の対象物を固定及び固定解除する方法、並びにこれに用いる逆止弁付き梱包用袋
(51)【国際特許分類】
B65D 81/05 20060101AFI20241218BHJP
F04B 41/00 20060101ALI20241218BHJP
F04F 5/16 20060101ALI20241218BHJP
【FI】
B65D81/05 400
F04B41/00 C
F04F5/16
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023097284
(22)【出願日】2023-06-13
(71)【出願人】
【識別番号】594065180
【氏名又は名称】株式会社クレスコ
(71)【出願人】
【識別番号】523160140
【氏名又は名称】株式会社プラムピーチ
(74)【代理人】
【識別番号】100115200
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 修之
(72)【発明者】
【氏名】竹ノ下 真一
(72)【発明者】
【氏名】川井 雄之介
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 光司
【テーマコード(参考)】
3E066
3H076
3H079
【Fターム(参考)】
3E066AA53
3E066AA55
3E066AA59
3E066CA01
3E066FA01
3E066FA11
3E066HA03
3E066JA01
3E066KA01
3E066KA02
3E066MA09
3H076AA02
3H076AA34
3H076BB41
3H076CC95
3H079AA18
3H079AA24
3H079CC21
3H079DD03
(57)【要約】
【課題】本発明は、輸送の対象物を入れることが可能な容器と、空気で膨らませることが可能で逆止弁により外部空気と連通又は閉鎖する袋とを用いて、輸送の対象物を封入した輸送の対象物を固定及び固定解除する方法を提供することを目的とする。
【解決手段】 本輸送の対象物を固定及び固定解除する方法は、輸送の対象物は、任意の形状及び大きさである1個又は複数個の各対象物で構成されている。この方法では、輸送元で各対象物をそれぞれ容器内の任意の位置に入れた状態で間隙に袋を配設し、内圧調整しながら加圧可能に気体を供給する手段を逆止弁を介して袋の内部と流体的に接続した状態で、袋を膨らませることで容器内に各対象物を固定し、袋の空気を抜いて容器内での各対象物の固定を解除する。
【選択図】
図7b
【特許請求の範囲】
【請求項1】
輸送の対象物を入れることが可能な容器と、空気で膨らませることが可能で逆止弁により外部空気と連通又は閉鎖する袋とを用いて、輸送の対象物を封入した輸送の対象物を固定及び固定解除する方法であって、
前記輸送の対象物は、任意の形状及び大きさである一個又は複数個の各対象物で構成され、輸送元で各対象物をそれぞれ容器内の任意の位置に入れた状態で前記間隙に前記袋を配設し、内圧調整しながら加圧可能に気体を供給する手段を前記逆止弁を介して前記袋の内部と流体的に接続した状態で、前記袋を膨らませることで前記容器内に前記各対象物を固定し、前記袋の空気を抜いて前記容器内での前記各対象物の固定を解除する、ことを特徴とする輸送の対象物を固定及び固定解除する方法。
【請求項2】
前記袋の空気を抜いて前記容器内での前記対象物それぞれの固定を解除するときに、前記袋の逆止弁の先まで届くノズルの遠位側端部を挿入して外部と連通させることで該袋の内圧を減圧する環境を構築し、該袋から脱気させる、ことを特徴とする請求項1に記載の輸送の対象物を固定及び固定解除する方法。
【請求項3】
前記内圧調整しながら加圧可能に気体を供給する手段には減圧して気体を脱気させる減圧手段が設けられた加減圧手段であり、前記ノズルを挿入してその遠位側の端部を前記袋の逆止弁の先まで届かせた状態で該ノズルの近位側の端部を前記加減圧手段に流体的に接続することで、強制的に該袋から脱気させることを特徴とする請求項2に記載の輸送の対象物を固定及び固定解除する方法。
【請求項4】
前記袋は、少なくとも二つ以上有し、前記対象物は、輸送元で前記対象物をそれぞれ容器内の任意の位置に入れた状態で前記間隙に配設するときに、
前記容器の天面側を開放した状態で該間隙の天面視における全体にわたって連続する経路を形成し、該経路にわたって少なくとも一つの袋を配設した後に該袋を膨らませ、
前記容器の天面側を開放した状態で該間隙の側面視における全体にわたって連続する経路を形成し、該経路にわたって少なくとも他の一つ袋を配設した後に前記容器の天面側を閉鎖した状態で該他の一つの袋を膨らませる、ことを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の輸送の対象物を固定及び固定解除する方法。
【請求項5】
空気で膨らますことが可能であり、脱気したときにシート状になる長手方向に延びる袋本体と、内部に逆止弁を設けて該袋本体の長手方向一端側の縁部に連結されて前記袋本体を脱気したときに略同一平面のシート状に畳まれる管状部材とで構成される、請求項1~4のいずれか1項に記載の輸送の対象物を固定及び固定解除する方法に用いる逆止弁付き梱包用袋。
【請求項6】
前記袋本体は、膨らまされる過程で長手方向に延びる長手側袋部、並びに/又は該長手側袋に連通して幅側に延びる幅側袋部、並びに/又は該長手側袋部もしくは/または該幅側袋部連通して長手側袋部の外表面で径方向に延びる複数の突出部を有し、前記袋本体が完全に膨らまされるより前に前記間隙内で少なくとも前記長手側袋部と前記幅側袋部と前記突出部とのいずれかの外表面の一部がそれぞれの輸送の対象物に当接する、ことを特徴とする請求項5に記載の逆止弁付き梱包用袋。
【請求項7】
請求項5に記載の逆止弁付き梱包用袋二つが略同一平面上で一体結合された梱包用マットであって、
それぞれの前記袋本体は、長手方向に延びる主袋部と、長手方向に所定ピッチを空けて該主袋部から直交方向に延びてそれぞれ前記主流袋部と流体的に連通する複数の副流袋部と、を有し、
それぞれの前記袋本体は、互いに各副流袋部が長手方向に所定ピッチずらして対向して略同一平面上で嵌合し、互いの隣り合う各副流袋部の直交方向に沿った縁部同士が熱溶着され、一方の各副流袋部の直交方向先端と他方の主流袋部とが熱溶着されることで、それぞれの前記管状部材を介してそれぞれの主流袋部から副流袋部に空気を入れて膨らませること及び脱気させることを可能に構成される、ことを特徴とする梱包用マット。
【請求項8】
前記袋本体の外表面に繰り返し利用回数の残数が明示可能な残数表示部が設けられる、ことを特徴とする請求項1~6のいずれか1項に記載の輸送の対象物を固定及び固定解除する方法に用いる逆止弁付き梱包用袋、又は請求項7に記載の梱包用マット。
【請求項9】
請求項2又は3に記載の輸送の対象物を固定及び固定解除する方法における内圧調整しながら加圧可能に気体を供給する給気手段を有する梱包用袋へ給気及び脱気兼用エアーガンであって、該給気手段は、
供給する気体の内圧を調整する圧力調整弁を設けており、該圧力調整弁は、
供給する気体の内圧に対抗する弾性体を備えたプランジャと、
該プランジャが内部で軸線方向に滑動するシリンダと、
該シリンダの外周に内外を連通する軸線方向に所定距離延びる開口又は所定間隔を空けた複数の開口と、
前記シリンダの外周に覆って所定角度の軸回転可能に配設され、軸線方向に所定間隔を空けて順に回転方向にずらした貫通孔を有する環状部材とを備える、
ことを特徴とする梱包用袋へ給気及び脱気兼用エアーガン。
【請求項10】
前記給気手段は、
圧縮空気を導入し送り出す導入流路と、
該導入流路から送り出された圧縮空気を給気方向又は脱気方向に切り替えて送り出す分流手段と、
該分流手段から送り出された圧縮空気を先端の給気口又は脱気口まで案内する主流路とを備え、
前記分流手段は、前記主流路内に挿入配設される環状断面を有する中空筒状部材であり、環状断面の軸線回りに所定間隔ごとに長手方向に穿けられ、前記導入流路から送り出された圧縮空気を長手方向に沿って前記主流路内に送り出す複数の供給用分流流路を有し、該供給用分流流路から前記主流流路内に送り出される圧縮空気の流れによる負圧に引き込まれて前記環状断面の軸線に沿った同方向の空気流を合流させ、
圧縮空気を給気方向又は脱気方向に切り替えて送り出すときに、前記供給用分流流路を給気方向又は脱気方向に切り替える切替機構を有する、
ことを特徴とする請求項9に記載の梱包用袋へ給気及び脱気兼用エアーガン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、輸送元で1つ又は複数の大きさ等が異なる輸送対象物を容器の任意の位置に入れて梱包しても輸送時のずれや揺れが問題とならず、輸送先でも簡単に輸送対象物を取り出すことができる輸送の対象物を固定及び固定解除する方法、並びにこれに用いる逆止弁付き梱包用袋等に関する。
【背景技術】
【0002】
物流が活性化に伴い輸送コストの低減がますます重要になっている。特に近年の輸送では、商品等輸送の対象物の大きさ、形状が異なる場合でも輸送の対象物に合わせず、これを梱包する段ボール等の容器の方を数種類に統一化して、容器に見合う輸送対象物を1つ又は複数同封することで1回の輸送あたりの輸送トラック等の荷積み量の確保や積み荷工程の簡略化によって輸送コストを低減することが主流になってきている。
【0003】
このような輸送形態では、容器と輸送の対象物とが合っていないため容器の内壁と対象物とに間隙が発生し、そのまま梱包して輸送すると輸送時に容器の中で対象物がズレたり、揺れたりして破損するおそれがある。これを防止するために梱包時に容器内で対象物を固定する作業が必要となっていた。
しかしながら、輸送元で梱包時に対象物を容器内で固定するためには余分な固定材料や労力による工数やコストの負担が増加していた。
【0004】
また、対象物を容器に入れた状態で間隙に発泡スチロールの粒状物や例えば「プチプチ:登録商標」に代表される気泡緩衝材を間隙に詰めて対象物を保護し、固定する方法も存在するが、粒状物や気泡緩衝材の必要量や間隙への詰め方・対象物への巻き方を作業者の経験に任せており、人的コストが増加や定常的な固定ができない。さらに、粒状物や気泡緩衝材の輸送元での保管に場所を要する。加えて輸送先での廃棄時の煩雑な作業や環境負荷の問題もあり、例えば、この点に改善がみられる特許文献1のような気泡緩衝材であっても十分とまでは言えない。
【0005】
一方、近年、特許文献2~3のような内部に気体を入れて膨らますことが可能な袋に吸気及び排気用の逆止弁を設ける梱包材が存在し、輸送元で梱包用の容器と輸送の対象物との間隙に膨らました梱包材で埋めて、輸送時のズレや揺れを防止しつつ、輸送先で気体を抜いて畳んでコンパクトに収容・保管することが可能なものも提供されている。しかしながら、このような梱包材であっても輸送元で輸送の対象物と容器との間隙の大きさや形態が特定されないと梱包材を膨らませるための気体量が明確でなく、また輸送元でどのような手段で膨らませるのかについての提案がされていない。加えて輸送先で気体を抜く手段についても提案されていない。したがって、実際の輸送元での梱包や輸送先での収容(又は廃棄)を実行するには、作業の勘や経験側に頼らざるを得ず、低労力で迅速な梱包及び収納作業を達成方法が提供されていない現状がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2019-043668号公報
【特許文献2】特開2020-117261号公報
【特許文献3】特開2016-43934号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
以上の問題に鑑みて本発明は創作されたものであり、輸送元で1つ又は複数の大きさ等が異なる輸送対象物を容器の任意の位置に入れて梱包しても輸送時のずれや揺れが問題とならず、輸送先でも簡単に輸送対象物を取り出すことができる輸送の対象物を固定及び固定解除する方法、並びにこれに用いる逆止弁付き梱包用袋等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために本発明は、
輸送の対象物を入れることが可能な容器と、空気で膨らませることが可能で逆止弁により外部空気と連通又は閉鎖する袋とを用いて、輸送の対象物を封入した輸送の対象物を固定及び固定解除する方法であって、
前記輸送の対象物は、任意の形状及び大きさである一個又は複数個の各対象物で構成され、輸送元で各対象物をそれぞれ容器内の任意の位置に入れた状態で前記間隙に前記袋を配設し、内圧調整しながら加圧可能に気体を供給する手段を前記逆止弁を介して前記袋の内部と流体的に接続した状態で、前記袋を膨らませることで前記容器内に前記各対象物を固定し、前記袋の空気を抜いて前記容器内での前記各対象物の固定を解除する、ことを特徴とする輸送の対象物を固定及び固定解除する方法、を提供する。
【0009】
本発明の輸送の対象物を固定及び固定解除する方法では、段ボール等梱包用の容器内に輸送の対象物を入れた状態で容器と対象物との間隙に逆止弁を有する袋に空気を入れて内圧を調整しながら加圧することで空気の形状自由度及び弾性力(反発力)を活用して容器内で対象物を固定(位置決め)している。この方法によれば、縮んだ状態の袋を容器と輸送対象物と間隙にある程度入れておくだけで袋に空気を供給する過程で対象物の大きさや形状、個数、容器内の位置を問わず、間隙の形状に沿って袋が膨らんで対象物に当接し、空気の弾性力により容器内で対象物をしっかりと固定することができる。その結果、対象物の輸送時のズレや揺れを防止して輸送中の対象物の破損を回避することができる。
【0010】
また、本発明の方法は、輸送元で袋を加圧・減圧しながら空気を入れて内圧調整するだけなので発泡スチロールの粒状物等を詰める場合のように容器内での対象物の固定が作業者の経験に依存することなく、また作業時間、作業人員の低減も行うことができる。さらに、輸送先で袋内の空気をある程度脱気するだけで簡単・迅速に容器から対象物を出すことができ、袋を取り出した後にさらに外部の開放空間で袋内の空気を脱気した後にコンパクトに収納・保管して再利用することもできる。その結果、輸送先での人員・作業時間を低減に伴うコスト低減及び廃棄に伴う環境負荷の低減を同時に達成できる。
【0011】
また、本輸送の対象物を固定及び固定解除する方法は、前記袋の空気を抜いて前記容器内での前記対象物それぞれの固定を解除するときに、前記袋の逆止弁の先まで届くノズルの遠位側端部を挿入して外部と連通させることで該袋の内圧を減圧する環境を構築し、該袋から脱気させる、ことが好ましい。
【0012】
本発明では、輸送先で袋内の空気を脱気させる際に、逆止弁の先まで届いて弁を開放させるノズルを挿入することで逆止弁を開放しつつ袋内から外部までの空気流路を形成することができ、袋内の内圧と外部の空気圧との差で簡単に強制的な脱気を達成することができる。
【0013】
また、好適な本輸送の対象物を固定及び固定解除する方法では、前記内圧調整しながら加圧可能に気体を供給する手段には減圧して気体を脱気させる減圧手段が設けられた加減圧手段であり、前記ノズルを挿入してその遠位側の端部を前記袋の逆止弁の先まで届かせた状態で該ノズルの近位側の端部を前記加減圧手段に流体的に接続することで、強制的に該袋から脱気させる。
【0014】
本方法によれば、輸送元で容器と輸送対象物との間隙で膨らませる加圧手段に減圧手段も設けることとし、その減圧手段と上述したノズルの近位側(外部側)の端部を接続することとしている。この方法によれば、輸送元で袋の逆止弁の先に挿入して袋内の空気の脱気流路を形成することに加えて、そのノズルの近位側(外部側)の端部から減圧手段で強制的に脱気するため、袋内の空気を迅速かつ完全に抜き取ることができる。したがって、輸送元で作業者を問わず短時間で簡単に袋を畳んで折り畳み可能なシート状にすることができ、狭いスペースでも収容しやすく、次に輸送元になる際に再利用しやすい保管状況が作られる。このことは近年の環境負荷低減の要請にも沿っており、特に個人間輸送が発達した社会状況を踏まえても有益である。
【0015】
また、前記袋は、少なくとも二つ以上有し、前記対象物は、輸送元で前記対象物をそれぞれ容器内の任意の位置に入れた状態で前記間隙に配設するときに、
前記容器の天面側を開放した状態で該間隙の天面視における全体にわたって連続する経路を形成し、該経路にわたって少なくとも一つの袋を配設した後に該袋を膨らませ、
前記容器の天面側を開放した状態で該間隙の側面視における全体にわたって連続する経路を形成し、該経路にわたって少なくとも他の一つ袋を配設した後に前記容器の天面側を閉鎖した状態で該他の一つの袋を膨らませる、ことが好ましい。
【0016】
この方法において、輸送元で梱包用の容器内で間隙に梱包用の袋を詰めて膨らませて固定する際に、まず梱包用の袋を二つ以上準備して容器の天面を開けた状態で一個又は複数個の対象物を入れて任意の位置に配置する。このとき天面視において容器と輸送対象物との間隙を後述する
図8(a)及び
図7a~
図7cに参照するように水平方向でジグザグになって連続して繋がるように形成する。この状態で一つの袋をジグザグになった間隙にわたって詰めていき、その状態で袋を膨らませると袋が膨らむ過程で容器の内壁と対象物や対象物同士を袋の内圧で任意の位置に配置した輸送対象物同士を位置決めをしながら一気に固定することが可能である。
【0017】
また、容器内での上下方向の輸送対象物と容器との間隙については他の袋を用いて同様に輸送対象物を位置決め、固定する。具体的には、側面視における容器と輸送対象物との間隙を連続して繋がるように形成する。例えば、後述する
図8(b)及び
図7cに参照するように容器内の間隙を、容器の底側の間隙から一方の側面側の間隙をわたって上方の間隙に繋がるように形成し、その連続した間隙にわたって他の袋(水平方向に用いた袋と異なる袋)を詰める。この状態で容器の天面を閉鎖し、その後、膨らませていく。その結果、膨らむ過程で容器の底壁及び天面壁と対象物との間隙が袋の内圧で固定される。
【0018】
以上により、二つ又はそれ以上の袋を使うことで容器内の任意の位置に入れた複数個の対象物であっても簡単かつ同時に水平方向及び上下方向にしっかり固定することができる。
【0019】
次に第二の本発明として上述した輸送の対象物を固定及び固定解除する方法に用いる逆止弁付き梱包用袋が提供される。この逆止弁付き梱包用袋は、空気で膨らますことが可能であり、脱気したときにシート状になる長手方向に延びる袋本体と、内部に逆止弁を設けて該袋本体の長手方向一端側の縁部に連結されて前記袋本体を脱気したときに略同一平面のシート状に畳まれる管状部材とで構成される。
【0020】
上述してきた本輸送の対象物を固定及び固定解除する方法で容器と輸送対象物との間隙に詰められる逆止弁付き梱包用袋は、長手方向に延びており、逆止弁を内部に設けた管状部材を袋本体の縁部に連結させることでノズルを挿入する際に袋本体内部までノズルを案内しつつ逆止弁を開放できるようにしている。この構成により、輸送対象物を容器に入れた状態でその間隙に延びていきやすい長手方向に延びる梱包用袋にしながら空気を供給して輸送対象物をしっかり固定(位置決め)できる状態に膨らませることができる。
また、輸送先で袋本体を脱気して畳んだときに逆止弁付きの管状部材まで連続した1枚のシート状にできるため、再利用に資する収納性が高い。
【0021】
また好ましい前記袋本体は、膨らまされる過程で長手方向に延びる長手側袋部、並びに/又は該長手側袋に連通して幅側に延びる幅側袋部、並びに/又は該長手側袋部もしくは/または該幅側袋部連通して長手側袋部の外表面で径方向に延びる複数の突出部を有し、前記袋本体が完全に膨らまされるより前に前記間隙内で少なくとも前記長手側袋部と前記幅側袋部と前記突出部とのいずれかの外表面の一部がそれぞれの輸送の対象物に当接する。
【0022】
本梱包用袋の構成にした場合、複数の輸送の対象物の主経路の間隙に沿って袋本体を配設し、幅側の袋部を折ってその他の間隙に配設しておけば、袋本体を膨らます過程で長手側袋部が主経路の間隙内で膨らんでいって概ね複数の輸送の対象物を容器内に固定しながら、その他の間隙に幅側袋部が入り込んで膨らむことで、すべての輸送の対象物や容器の内壁で加圧しながら膨らんだ袋本体が当接することとなり、しっかりと輸送の対象物を固定し、保護することができる、さらに、この袋本体は径方向に複数の突出部を設けるため間隙が間隙の形状が細かく変わっているような場合でも、突出部が先に輸送の対象物に当接することとなり、その点でも、確実に輸送の対象物を固定・保護できる点で有利であり、輸送対象物の大きさや個数、容器の大きさ、形状を問わず輸送元で輸送対象物を簡単かつ確実に固定することができる。
【0023】
また、第三の本発明として上記逆止弁付き梱包用袋二つ(第一梱包用袋 及び第二梱包用袋)が略同一平面上で一体結合された梱包用マットであって、
それぞれの前記袋本体(第一袋本体 及び第二袋本体)は、長手方向に延びる主袋部と、長手方向に所定ピッチを空けて該主袋部から直交方向に延びてそれぞれ前記主流袋部と流体的に連通する複数の副流袋部と、を有し、
それぞれの前記袋本体は、互いに各副流袋部が長手方向に所定ピッチずらして対向して略同一平面上で嵌合し、互いの隣り合う各副流袋部の直交方向に沿った縁部同士が熱溶着され、一方の各副流袋部の直交方向先端と他方の主流袋部とが熱溶着されることで、それぞれの前記管状部材を介してそれぞれの主流袋部から副流袋部に空気を入れて膨らませること及び脱気させることを可能に構成される、梱包用マットを提供する。
【0024】
本梱包用マットは、上述してきた逆止弁付き梱包用袋を
図9に示すように長手方向に延びる主流袋部とこれと連通して櫛形状に形成された副流袋部とで構成された形状にし、その形状の二つ逆止弁付き梱包用袋を互いに対向させて縁部を熱溶着して結合している。この梱包用マットは、二つの逆止弁付き梱包用袋がそれぞれ別個独立に膨らますことができ、膨らます過程で長手方向に延びていきながら直交方向に略筒状部材が並列したエアーマット形状を形成する。
【0025】
このような構成を採用すれば、袋本体の一方が破れても他方の袋本体を膨らませて輸送対象物を固定することができ、耐久性が高く再利用を積極的に促進できる。また、本梱包用マットの場合、二つの袋本体の副流袋部がそれぞれ並列して膨らんでいくため袋本体が一つの場合のような全体として膨らんでいって一部の輸送対象物だけに袋本体が当接して内圧を作用させることはなく、所定ピッチごとに並列筒状の区画となって膨らんだ波状になるため複数の輸送対象物の種々の場所に当接して内圧を作用させることとなる、
【0026】
さらに二つの袋本体が別々に給気及び脱気できるため間隙に応じて膨らみ量や内圧を調整できる。その結果、種々の形状、個数の輸送対象物に対応してしっかりと固定することができる。
【0027】
また、好適な逆止弁付き梱包用袋、又は梱包用マットにおいて、前記袋本体の外表面に繰り返し利用回数の残数が明示可能な残数表示部が設けられる。
【0028】
上述してきた本輸送の対象物を固定及び固定解除する方法で容器と輸送対象物との間隙に詰められる逆止弁付き梱包用袋又は梱包用マットは、長手方向に延びており、逆止弁を内部に設けた管状部材を袋本体の縁部に連結させることでノズルを挿入する際に袋本体内部までノズルを案内しつつ逆止弁を開放できるようにしている。この構成により、輸送対象物を容器に入れた状態でその間隙に延びていきやすい長手方向に延びる梱包用袋にしながら空気を供給して輸送対象物をしっかり固定(位置決め)できる状態に膨らませることができる。
【0029】
また、輸送先で袋本体を脱気して畳んだときに逆止弁付きの管状部材まで連続した1枚のシート状にできるため、再利用に資する収納性が高い。さらに、袋本体の外表面に繰り返し利用回数の残数が明示可能な残数表示部を設けているため、耐久性限界として設定した利用回数の残りまでユーザは安心して再利用することができ、環境負荷の低減という社会要請に貢献し得るものを提供可能となる。
【0030】
また第四の本発明として、上述してきた輸送の対象物を固定及び固定解除する方法における内圧調整しながら加圧可能に気体を供給する給気手段を有する梱包用袋へ給気及び脱気兼用エアーガンを提供する。この給気手段では、
供給する気体の内圧を調整する圧力調整弁を設けており、該圧力調整弁は、
供給する気体の内圧に対抗する弾性体を備えたプランジャと、
該プランジャが内部で軸線方向に滑動するシリンダと、
該シリンダの外周に内外を連通する軸線方向に所定距離延びる開口又は所定間隔を空けた複数の開口と、
前記シリンダの外周に覆って所定角度の軸回転可能に配設され、軸線方向に所定間隔を空けて順に回転方向にずらした貫通孔を有する環状部材とを備える。
【0031】
本梱包用袋へ気及び脱気兼用エアーガンでは、梱包用袋を膨らませる際に袋内の内圧調整するための圧力調整弁が備えられている。この圧力弁は、圧縮空気等の供給気体の内圧にバネ等の弾性体が対抗してプランジャがシリンダ内を滑動する構成であり、プランジャの滑動位置に応じて供給気体を外部放出(いわゆるガス抜き)することで所望の内圧に調整することを可能としている。さらに具体的には、シリンダを軸線方向(プランジャの滑動方向)に延びる開口や同方向に間隔を空けた複数の開口を設け、シリンダの外周に配設された環状部材には軸方向及び回転方向を順にずらした複数の位置に貫通孔を設けている。このような構成にすると、ユーザが環状部材を回転させて所望の貫通孔をシリンダの開口に合うように設定すると、シリンダの開口位置をプランジャの滑動位置が超えるとガス抜きされ、それ以上、バネ等の弾性力を抗する内圧を作用させることができなくなり、所望の内圧以下に供給気体の圧力を調整することができる。
【0032】
また、前記給気手段は、
圧縮空気を導入し送り出す導入流路と、
該導入流路から送り出された圧縮空気を給気方向又は脱気方向に切り替えて送り出す分流手段と、
該分流手段から送り出された圧縮空気を先端の給気口又は脱気口まで案内する主流路とを備え、
前記分流手段は、前記主流路内に挿入配設される環状断面を有する中空筒状部材であり、環状断面の軸線回りに所定間隔ごとに長手方向に穿けられ、前記導入流路から送り出された圧縮空気を長手方向に沿って前記主流路内に送り出す複数の供給用分流流路を有し、該供給用分流流路から前記主流流路内に送り出される圧縮空気の流れによる負圧に引き込まれて前記環状断面の軸線に沿った同方向の空気流を合流させ、
圧縮空気を給気方向又は脱気方向に切り替えて送り出すときに、前記供給用分流流路を給気方向又は脱気方向に切り替える切替機構を有しても良い。
【0033】
本給気及び脱気兼用エアーガンは、外部から圧縮空気を導入して梱包用袋に給気と脱気の両方を切り替えして実行することができる機能を有している。具体的には、導入流路から導入した圧縮空気を分流手段により、袋内に加圧しながら空気を送り込む正方向(主流路の給脱気口側)の圧縮空気流と、袋内に減圧しながら空気を排出する逆方向(主流路の反対側)の圧縮空気流とに切り替え可能に構成されている。この分流手段は環状断面の中実筒形状であり、環状断面内に所定角度間隔ごとに穿けられた複数の供給用分流流路から導入流路からの圧縮空気の空気流を主流路内に送り出し、その負圧によって環状部材の中心軸線方向に流れる空気流を作り、両空気流を合流させこととしている。そして、切替機構で供給用分流流路を給気方向又は脱気方向に切り替え可能にしている。
【0034】
このような構成を採用すれば、梱包用袋に給気する際には供給用分流流路を介して主流路内の内壁側に圧縮空気を正方向の流しながら、その負圧を分流手段の中空部分に作用させて加圧給気流を作ることができる。一方、分流手段の切替機構を切り替えると脱気用分流流路を介して主流路内の内壁側に逆方向の圧縮空気を流しながら、その負圧を分流手段の中空部分に作用させて減圧脱気流を作ることができる。
【0035】
このエアーガンは、もともと据え付けられている工場内のコンプレッサー等に接続することを想定しており、輸送元で1個または複数個の輸送対象物を任意の位置に入れてその間隙に本梱包用袋を入れて既存の圧縮空気を利用するだけで、梱包用袋への給気と脱気をしながら迅速かつ適正に輸送対象物の詰め込んで固定することができ、また輸送先で容易に取り出し作業を行うことができ、輸送コストを大幅低減することが可能となる点で有利である。また、本エアーガンは、既存の圧縮空気を用いるだけで一つのエアーガンで給気と脱気と両方切り替え可能であることで輸送元での梱包時、輸送先での対象物の取出時に必要なツール点数を減らすことも可能としている。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【
図1】ノズルを挿入した状態の本発明の逆止弁付き梱包用袋の構造を示す平面図である。
【
図2】(a)には本発明の逆止弁付き梱包用袋に用いる素材の例、(b)にはその素材の他の例を示している。
【
図3】(a)には、逆止弁付き梱包用袋にノズルを差し込んで袋本体を膨らませる前の状態の写真図、(b)には、本発明の逆止弁付き梱包用袋の袋本体を膨らませて逆止弁を閉鎖した状態の写真図が示されている。
【
図4】
図1~
図2の逆止弁付き梱包用袋に給気又は脱気するためのノズルと加圧及び減圧調整機能を有するエアーブロー・バキュームガンの一例を示す写真図が示されている。
【
図5】(a)に汎用の気泡緩衝材を輸送対象物に巻いた状態で容器内に入れた従来例の様子を示す写真図、(b)に複数個の輸送対象物それぞれに汎用の気泡緩衝材を巻いた状態で容器内に入れた従来例の様子を示す写真図、を示している。
【
図6】(a)に輸送対象物を容器内に入れて容器と輸送対象物の上方との間隙に本梱包用袋を詰めて膨らませる前の様子の一例の写真図例、(b)に(a)から本梱包用袋を膨らませた後の様子の写真図例が示されている。
【
図7a】複数個の輸送対象物を容器内に入れた後に容器と各輸送対象物との間隙に2枚の本梱包用袋(本梱包用マット)を詰めて膨らませる前の様子の一例の写真図が例示されている。
【
図7b】
図7aの状態から2枚の本梱包用袋(本梱包用マット)を膨らませて上方の間隙に配設する本梱包用袋(本梱包用マット)を空けた状態の様子の一例の写真図が例示されている。
【
図7c】
図7bの状態から上方の間隙に配設する本梱包用袋(本梱包用マット)を閉じて上方の間隙を埋めた状態の様子の一例の写真図が例示されている。
【
図8】
図7(b)の固定方法の概念説明として梱包用マットを用いる場合の模式図が例示されている。
【
図9】梱包用袋を一体に組み合わせた梱包用130を示しており、(a)はその平面模式図、(b)は(b)のラインA-Aに沿った略断面図が示されている。
【
図10】給気及び脱気兼用エアーガンの概略図を示している。
【
図11】(a)に給気及び脱気兼用エアーガンで梱包用袋等内に圧縮空気を噴射(給気)する様子を示す模式図、(b)に給気及び脱気兼用エアーガンで梱包用袋等内の空気を吸引(脱気)する様子を示す模式図、(c)に給気及び脱気兼用エアーガンに設けられた切替ノズルにより空気の流れを示す模式図が示されている。
【
図13】
図1の梱包用袋の袋本体の変形例の平面模式図が示されている。
【発明の最良の実施形態】
【0037】
まず、本発明の輸送の対象物を固定及び固定解除する方法に用いる梱包用袋の実施形態として袋本体が一つで形成されたものを例示する。
図1にはノズルを挿入した状態の本発明の逆止弁付き梱包用袋の構造を示す平面図である。
図2(a)には本発明の逆止弁付き梱包用袋に用いる素材の例、(b)にはその素材の他の例を示している。
図3(a)には、逆止弁付き梱包用袋にノズルを差し込んで袋本体を膨らませる前の状態の写真図、
図3(b)には、本発明の逆止弁付き梱包用袋の袋本体を膨らませて逆止弁を閉鎖した状態の写真図が示されている。
図4には、
図1~
図2の逆止弁付き梱包用袋に給気又は脱気するためのノズルと加圧及び減圧調整機能を有するエアーブロー・バキュームガンの一例を示す写真図が示されている。
【0038】
《梱包用袋単体の構造例について》
逆止弁付き梱包用袋31は、
図1に示すように長手方向(
図1の上下方向)に延びて内部に空気を入れると膨らむエアーバッグのような構成であり、中空の袋本体33と、袋本体33の長手方向の一端(上端)の縁部に設けられた空気を供給及び脱気するための管状部材35と、管状部材35の内部で袋本体33の内部側の位置に設けられた逆止弁37と、から構成されている。逆止弁付き梱包用袋31は、袋本体33内の空気が抜かれて縮んだ状態では、
図1に示すように管状部材35と同平面のシート状に畳むことが可能となる。
【0039】
管状部材35は、外部から中空のノズル41を挿入するための突出部39と、該突出部39と連通して袋本体33の内部に設けられた逆止弁37とで構成され、逆止弁37により外部と袋本体33の内部とを連通及び閉鎖する機能を有する。突出部39は、畳んでシート状になっている状態で長舌片39aと短舌片39bを重ねて両側を熱溶着して構成しており、
図2(a)(b)に示す例では長舌片39aを緑色、短舌片39bを黄色で色分けしている。この長舌片39a、短舌片39bを使用することにより、空気を注入する際の挿し込み口となる管状部材39の位置が特定し易くなり、ノズル41の先端の袋本体33内部への案内がし易くなる。これによって、ノズル41の管状部材39への挿し込み作業が容易になっている。
【0040】
逆止弁37は、二枚のシール材43、45を重ねて左右両側の熱溶着部47、49を熱溶着により接合して構成されており、それぞれ全体として扁平状に構成されている。また、熱溶着部47、49の内側にはヒートシール部51、53が設けられており、逆止弁37の下端(
図1の下端)が袋本体33内への出口55、逆止弁37の上端(
図1の上端)が突出部39からの入口57となっている。逆止弁37の内側は、入口57と出口55を結ぶ中央部に吸気及び脱気の流路59を形成している。この流路59に沿って、左右両側で下方傾斜する一対のヒートシール部65、65を対向・配置させた第1段弁フラップ部61、左右両側で下方傾斜する一対のヒートシール部67、67を対向・配置させた第2段弁フラップ部63、が設けられている。
【0041】
このような構成の逆止弁37により、
図2(a)に示すようにノズル41を管状部材35の突出部39から逆止弁37にわたって挿し込んで第1段弁フラップ部61、第2段弁フラップ部63を押し込んでその先端(遠位端)を袋本体33内まで到達させた状態で、ノズル41の近位端側に接続したエアーガン71(後述の給気及び脱気兼用エアーガン71参照)でノズル41内に空気を注入して袋本体33を膨らませる。その後、
図2(b)に示すようにノズル41を撤去すれば、第1段弁フラップ部61、第2段弁フラップ部63がそれぞれ一対のヒートシール部65及び65,67及び67が上昇する過程で互いに当接することで上記流路59を閉鎖し、袋本体33内の空気が外部に流出することを防止する。
【0042】
なお、逆止弁37の構成としては図示したものに限定されず、弁フラップの段数、各弁フラップを構成するヒートシール部の個数、形状については様々な構成が想定される。
【0043】
《梱包用袋の素材例について》
次に袋本体33及び管状部材35に用いる素材について例示説明する。
図2には本梱包用袋31の袋本体33及び管状部材35に使用する樹脂素材の代表例の模式図が示されている。
図2(a)には一例としてナイロン製フィルムとポリエチレン製フィルムとを貼り付けた二層構造の素材、
図2(b)には他の例としてナイロン製フィルムと接着性ポリエチレン製フィルムとポリエチレン製フィルムとを貼り付けた五層構造の素材、が示されている。
【0044】
まず
図2(a)の二層構造素材では、外面に(i)ナイロン製フィルムと内面に(ii)ポリエチレン製フィルムとを互いに(iii)に示すように接着剤で貼りつけて一枚のシートを形成している。(i)ナイロン製フィルムは、引張強度及び耐突き刺し性が優れ、輸送元及び輸送先での繰り返し再利用できることを企図している本梱包袋31用の外面の素材に適している。また、ナイロン製フィルムは酸素透過度が低く梱包袋として使用した場合に中身の酸化防止が図ることができる点でも有利である。その一方、(i)ナイロン製フィルムは、耐熱温度が高いためナイロン樹脂単体では熱溶着(ヒートシール)ができない点でナイロン樹脂単体だけで袋形状に製造することはできない。
【0045】
このため
図2(a)に示す本梱包用袋31に用いる素材例では、(i)ナイロン製フィルムに(ii)ポリエチレン製フィルムを接着剤((iii)参照)貼り付けたラミネートフィルムを構成している。(ii)ポリエチレン製フィルムは、(i)ナイロン製フィルムと比べて防湿能力に優れており、融点が低い(80~100℃)ため熱加工性が良く、熱溶着(ヒートシール)に適しているので、シール強度が高くできる点で熱溶着が難しい(i)ナイロン製と組み合わせるのに適しているからである。したがって、本梱包用袋31を(i)ナイロン製フィルムと(ii)ポリエチレン製フィルムとを(iii)に示すように接着剤で貼りつけた二層構造とすることで、引張強度、耐突き刺し性、及びヒートシール性という本梱包用袋31として求められる両者(i)(ii)の利点を組合せた素材を形成している。
【0046】
次に
図2(b)の五層構造素材では、ナイロン製フィルムと接着性ポリエチレン製フィルムとポリエチレン製フィルムとを貼り付けた五層構造を形成している。(i)ナイロン製フィルムは引張強度及び耐突き刺し性が優れ、(ii)ポリエチレン製フィルムはヒートシール性が優れている点は、上述した通りであるが、(i)ナイロン製フィルムは透明度も高いという特徴もあり、
図2(b)の他の例では(ii)ポリエチレン製フィルムと組み合わせた層構造のラミネートフィルムとしての強度を高めるために、(i)ナイロン製フィルムを二重にしたラミネートフィルムを形成している。具体的には、最外面(最上面)から最内面(最下面)に向かって順に(i)ナイロン製フィルム、(iii)接着性ポリエチレン製フィルム、(i)ナイロン製フィルム、(iii)接着性ポリエチレン製フィルム、(ii)ポリエチレン製フィルム、とを互いに貼りつけて一枚のシートを形成している。このような層構造にすると、(i)ナイロン製フィルムの特徴である透明度が損なわれないという利点を維持しながら、フィルム全体の強度と酸化防止能力とを向上させることができる。
【0047】
《梱包用袋の他の構造例(梱包用マット)について》
図9は上述してきた梱包用袋31を一体に組み合わせた梱包用マット130を示しており、(a)はその平面模式図、(b)は(b)のラインA-Aに沿った略断面図、が示されている。本梱包用マット130は、それぞれ横方向(
図9(a)の上下)に延びる第一梱包用袋131aと第二梱包用袋131bとを熱溶着して長手方向(
図9(a)の左右方向)に延びるものであり、それぞれの第一梱包用袋131a及び第二梱包用袋131bごとに有する第一管状部材135a及び第二管状部材135bを介して別々に第一袋本体136a及び第二袋本体135内に給気又は脱気される。さらに詳細には、第一袋本体136a及び第二袋本体135は、それぞれ横方向(
図9(a)の上下)に延びる主流部133a1及び133b2から連通して幅方向(
図9(a)の上下方向)に所定ピッチずれて並列分岐する複数の副流袋部133a2~133a5及び133b2~133b6を有している。
【0048】
このような構造の二つの第一梱包用袋131a及び第二梱包用袋131bは、副流袋部133a2~133a5及び133b2~133b6が幅方向に対向して互いの凹凸が嵌合するように組み合わされて、長手方向に隣り合う副流袋部133a2~133a5及び副流袋部133b2~133b6の縁部同士が熱溶着され、さらに副流袋部133a2~133a5及び副流袋部133b2~133b6の幅方向先端の縁部が、それぞれ主流部133b2及び主流部133a1の幅方向根元の縁部に熱溶着されることで一体の梱包用マット130を形成している。
【0049】
図9(b)は、
図9(a)の副流袋部133a2、133b2、133a2が熱溶着された状態で給気され、膨らんだ状態を示している。この図から副流袋部133a2、133b2、133a2は、それぞれ縁部132が熱溶着されて略波形状を有しており、空間(丸1)及び空間(丸3)は、連通する第一袋本体133aの内部空間であり、第一袋本体133bの内部空間である空間(丸2)とは別個独立の空間を形成していることがわかる。したがって、本梱包用マット130は、第一袋本体136a又は第二袋本体135の一方が破れても他方を膨らませて輸送対象物90を固定することができ、耐久性及び再利用性に優れている。また、本梱包用マット130の場合、二つの第一袋本体136aの副流袋部133a2~133a5と第二袋本体135の副流袋部133b2~133b6が袋本体が一つの場合のように全体として膨らんでいって一部の輸送対象物90だけに袋本体が当接して内圧を作用させることはなく、所定ピッチごとに並列筒状の区画となって膨らんだ波状になるため複数の輸送対象物90の種々の場所に当接して内圧を作用させることとなり、さらにそれぞれの第一袋本体136a又は第二袋本体135が別々に給気及び脱気できるため間隙に応じて膨らみ量や内圧を調整できる。
【0050】
《梱包用袋を用いた輸送対象物の固定方法及び解除方法(輸送元及び輸送先での作業)について》
次に
図1に示す梱包用袋31を用いた輸送対象物の固定方法及び解除方法について説明する。
まず第一の輸送対象物の固定方法として、
図5(a)には輸送元で汎用の気泡緩衝材(例えば登録商標「プチプチ」のごとき)32を輸送対象物90に巻いた状態で容器20としての段ボール内に入れた従来例の様子を示す写真図、
図6(a)に輸送対象物を容器内に入れて容器と輸送対象物の上方との間隙に本梱包用袋を詰めて膨らませる前の様子の一例の写真図例、
図6(b)に(a)から本梱包用袋を膨らませた後の様子の写真図例が示されている。
【0051】
図5(a)に示すように従来の気泡緩衝材32を用いた固定方法の場合、容器20に入れる前に予め輸送対象物90に気泡緩衝材32を巻き付けて又は気泡緩衝材32の袋内に輸送対象物90を入れた状態で、縦開放扉20a及び横開放扉20bが開けられた容器20内に輸送対象物90を入れている。このとき輸送対象物90は、容器90の大きさに輸送対象物90が対応していない場合も容器20と輸送対象物90との間隙91も大きくなり、このまま縦開放扉20a及び横開放扉20bを閉鎖して梱包すると固定性が悪く輸送時に容器20内で輸送対象物90がズレたり、中で振動したりすることとなる。
【0052】
これに対して本梱包用袋31を用いる場合、まず
図6(a)のように内部が空で縦開放扉20a及び横開放扉20bが開けられた状態で、膨らます前の梱包用袋31を輸送対象物90をそのまま入れ、その後、膨らまされていない本梱包用袋31を容器20と輸送対象物90との間隙91に配設し、
図3(b)で上述したように袋本体33の内部に給気して
図6(b)に示すように膨らませる。この状態で縦開放扉20a及び横開放扉20bを閉鎖する。これにより単に輸送対象物90を空の容器20に投入し、輸送対象物90の上方に梱包用袋31を設置して膨らませた後に容器20を閉鎖するだけで、膨らまされた梱包用袋31が上方の間隙91に隙間なく配設され、梱包用袋31内の空気の弾性力により輸送対象物90を容器20内で上下方向にしっかりと抑えつけられて固定される。
【0053】
さらに、輸送対象物90を容器20内でしっかり固定しながら同時に無理せず梱包するために梱包用袋31の膨らみ量を適正に調整する必要がある。このことを達成すべく、輸送対象物90の上で梱包用袋31を膨らませる前に縦開放扉20a及び横開放扉20bの一方又は両方を閉鎖した後、梱包用袋31の管状部材35にノズル41を挿入して袋本体33に空気を送り込む際に、袋本体33の内圧が所定値を超えないように加圧する。この加圧には例えば、後述するエアーガン71を用いる。
【0054】
次に、輸送対象物90の第二の固定方法は、輸送元で段ボール等の容器20内に複数個の輸送対象物90を入れて梱包する場合であり、
図5(b)には複数個の輸送対象物90それぞれに汎用の気泡緩衝材32を巻いた状態で容器20内に入れた従来例の様子を示す写真図、
図7aには複数個の輸送対象物90を容器20内に入れた後に容器20と各輸送対象物90(後述の90a~90b)との間隙91に2枚の本梱包用袋31(後述する梱包用マット130、230)を詰めて膨らませる前の様子の一例の写真図、
図7bには
図7aの状態から2枚の梱包用袋31(梱包用マット130、230)を膨らませて上方の間隙91に配設する梱包用袋31(梱包用マット130,230)を空けた状態の様子の一例の写真図、
図7cには
図7bの状態から上方の間隙91に配設する梱包用袋31(梱包用マット130,230)を閉じて上方の間隙91を埋めた状態の様子の一例の写真図が例示されている。
【0055】
図5(b)に示すように従来、複数個の輸送対象物90を気泡緩衝材32を用いて容器20内に固定する場合、予め各輸送対象物90に気泡緩衝材32を巻き付けて、縦開放扉20a及び横開放扉20bが開けられた容器20内に輸送対象物90を入れていたが、容器20内に入れる輸送対象物90の大きさや個数により容器内の間隙91も変化し、単に気泡緩衝材32を巻き付けた輸送対象物90を入れて縦開放扉20a及び横開放扉20bを閉鎖して梱包しただけでは固定性が悪い点、
図5(a)に示す例と同様である。
【0056】
これに対して
図7a~
図7cの写真図に示すように2枚の本梱包用袋31(本梱包用マット130,230)を用いた複数個の輸送対象物90の固定方法では、
図7a~
図7cに示すように容器20内に複数個の輸送対象物90をそのまま入れて容器20の内壁とそれぞれの輸送対象物90との間隙91に膨らませる前の本梱包用袋31(梱包用マット130,230)をジグザグ及びコの字に詰めた状態でノズル41により給気する。さらに詳細には以下、
図8に示す模式図で例示説明する。
【0057】
図8には、
図7a~
図7cの固定方法の概念説明として梱包用マット130(
図9参照)を用いる場合の模式図が例示されている。
図8(a)には5個の輸送対象物90a~90eを容器20内に入れた状態で容器20と各輸送対象物90との間隙91に本梱包用マット130、230をジグザグ(主に
図7a~
図7bの梱包用マット130参照)及びコの字(主に
図7cの梱包用マット230参照)に詰めた様子の平面模式図が示されている、また、
図8(b)には3個の輸送対象物90f~90hを容器20内に入れた状態での間隙91に本梱包用マット130、230を詰めた様子(主に
図7cの梱包用マット230参照)の側面模式図が示されている、
【0058】
まず、輸送対象物90の水平方向(平面方向)の固定について
図8(a)を参照して説明する。
図8(a)に示すように、平面視で容器20内に五個の輸送対象物90a~90eを入れた状態で容器20と輸送対象物90a、90eとの間隙91は、容器20の紙面左右内壁と輸送対象物90a、90eと、それぞれの輸送対象物90a~90e同士と、に設けられており、さらに、容器20の紙面上下内壁と輸送対象物90a~90eそれぞれの紙面上下端と、にも間隙91が設けられている。このような状態ではジグザグに連続する間隙91の経路を見出すことができ、そのような間隙91の経路に梱包用マット130を詰め、その後、
図7(b)同様に給気用の第一管状部材135aにノズル41を差し込んで給気し、間隙経路内で梱包用マット130を膨らませている。
【0059】
このように梱包用マット130を膨らませると紙面横方向全ての間隙91に梱包用マット130が入っており、輸送対象物90a~90eの紙面左右側の縁部の少なくとも一部に当接することになるため紙面横方向にしっかりと固定される。また、梱包用マット130は、輸送対象物90a、90c、90eそれぞれの紙面上端と容器20の紙面上内壁との間隙91、輸送対象物90b、90dそれぞれの紙面下端と容器20の紙面下内壁との間隙91とに入っており、膨らまされると輸送対象物90a~90eの紙面上下端の少なくとも一部に当接することになるため縦方向にしっかりと固定される。したがって、梱包用マット130を膨らませるだけで容器20内の水平方向で輸送対象物90a~90eをしっかりと固定することができる。
【0060】
次に、輸送対象物90の鉛直方向の固定について
図8(b)及びもう一つの梱包用マット230を参照して説明する。
図8(b)に示すように、容器20内に3個の輸送対象物90a~90cを入れた状態で、側面視において容器20と輸送対象物90a~90cそれぞれの紙面上方及び下方との間隙91が設けられている。このような状態では紙面上方から紙面側部を亘って紙面下方に至るコの字に連続する間隙91の経路を見出すことができる。このような間隙91の経路に梱包用マット230を詰め、その後、給気用の第一管状部材235aにノズル41を差し込んで給気し、間隙経路内で梱包用マット230を膨らませている。
【0061】
梱包用マット230を膨らませると
図8(b)の紙面上下両側の間隙91に梱包用マット230が入っており、輸送対象物90a~90cの紙面上下端に当接することになるため紙面上下方向(鉛直方向)にしっかりと固定される。したがって、梱包用マット230を膨らませるだけで容器20内の鉛直方向で輸送対象物90a~90cをしっかりと固定することができる。
【0062】
以上のように、本梱包用袋31又は本梱包用マット130(230)を二つ以上準備し、膨らませる前の状態で
図7(b)や
図8に示すようなジグザグ状及びコの字状の間隙91に配設すれば、膨らむ過程で梱包用袋31や梱包用マット130(230)の内圧で任意の位置に配置した輸送対象物を位置決めしながら一気に固定することが可能である。
【0063】
《梱包用袋の他の構造例(変形袋)について》
図13には、上述してきた梱包用袋31の変形例の平面模式図が示されている。この梱包用袋31における袋本体33は、上述してきたように長手方向に延びる長手側袋部31aを有しており、その途中で長手側袋部31aに連通して幅方向両側(
図13の上下方向側)に延びている。したがって、膨らまされる過程で長手側袋部31aが長手方向に延びていき、両側袋部31bに至ると内部の空気が分流されてその先の長手側袋部31aと両側袋部31bとが膨らんで延びていく。このような袋本体31の構成にすると長手側袋部31aが配設される輸送対象物90や容器20との間隙91の経路だけでなく、両側袋部31bが配設された経路の間隙91にも袋本体33が配設されて膨らまされるため、少ない数の梱包用袋31であっても種々の間隙91に入り込んで各輸送対象物90を当接し、固定することができる。
【0064】
さらに、
図13の袋本体33は、外表面に径方向に突出する突出部31cが外表面全体にわたって複数配設されており、膨らまされる過程で突出部31cが他の外表面よりも径方向に拡がって、他の外表面より先に間隙91内で輸送対象物90や容器20の内壁に当接する。この突出部31cにより、種々の間隙91の細かい幅や経路の変化に対応して、輸送対象物90のどこかを当接することができる。さらに、袋本体33に同じ加圧力で膨らませても突出部31cとそれ以外の外表面で当接力が変化するため間隙91に適した調整をしながら各輸送対象物90を容器20内でしっかりと固定するができる。
【0065】
《給気及び脱気兼用エアーガンについて》
次に、梱包用袋31や梱包用マット130(以下、単に「梱包用袋31等」とも称する。)への給気及び脱気兼用エアーガン(以下、単に「エアーガン」とも称する)71について例示説明する。
図10は、梱包用袋31等内に圧縮空気を給気して膨らませる機能と、梱包用袋31等内の空気から脱気して縮ませる機能とを有する給気及び脱気兼用エアーガン71の概略図、
図11は、(a)にエアーガン71で梱包用袋31等内に圧縮空気を噴射(給気)する様子を示す模式図、(b)にエアーガン71で梱包用袋31等内の空気を吸引(脱気)する様子を示す模式図、(c)にエアーガン71に設けられた切替ノズル72により空気の流れを示す模式図が示されている。また、
図12にはエアーガン71に設けられる圧力調整弁300の模式図が示されている。
【0066】
エアーガン71は、ユーザが把持するハンドル73の下方に設けられた供給口77に工場内のコンプレッサ等が接続され、圧縮空気がハンドル73の導入流路(
図11(a)(b)の点線参照)により上方のハンドル73と連通するガン部材80に送り出される。ガン部材80は、圧縮空気の主流路を形成する環状断面を有する中空の筒状部材であり、内部軸線に沿って中空の切替ノズル72が挿入配設されている。ハンドル73の導入流路から送り出された圧縮空気はストッパ78が開放されると切替ノズル72の環状断面の周壁内で周回りに所定ピッチで長手方向(軸線方向)に穿けられた複数の流路(
図11(a)(b)及び
図11(c)の1次エア(丸印1)の流路 参照)に分流され、例えば給気時には、1次エアとして圧縮空気がガン部材80内をノズル口径74側(正方向)に案内され、先端から噴射される。このとき
図11(c)に示すように切替ノズル72内の複数の流路に分流された1次エア(丸印1)としての圧縮空気は、ガン部材80の内周壁に沿って流れ、この1次エア(丸印1)の流れで生じる負圧により引っ張られた空気流が2次エア(丸印2)としてガン部材80の軸線に沿って発生する。このように1次エア(丸印1)と1次エア(丸印1)により発生した2次エア(丸印2)とにより形成された空気流がノズル41を経由して梱包用袋31等内を膨らませる空気となる。これがエアーガン71の給気機能である。
【0067】
一方、脱気時には、切替ノズル72の向きが逆転され、1次エア(丸印1)としてハンドル73から切替ノズル72内に送り出された圧縮空気は、ガン部材80内に放出されて、ホース取付口75側(逆方向)に案内され、ホース取付口75から噴射される。このとき向きが逆転した切替ノズル72内の複数の流路に分流された1次エア(丸印1)としての圧縮空気は、上記給気の場合と同様にガン部材80の内周壁に沿って流れ、1次エア(丸印1)による負圧で生じる2次エア(丸印2)とにより形成された空気流でノズル口径74側に吸引力を発生させ、ノズル41を経由して梱包用袋31等内を減圧して縮ませる。これがエアーガン71の脱気機能となる。
【0068】
なお、上記説明では切替ノズル72の向きを逆転させることで1次エアを逆転させて給気(噴射)から脱気(吸引)させる場合を例示したが、切替ノズル72の環状断面の周壁内で周回りに所定ピッチで穿けられる複数の流路を、ノズル口径74側(正方向)に向かって貫通する流路と該流路に対して位相をずらしてホース取付口75側(逆方向)に向かって貫通する流路とで形成し、切替ノズル72を軸回転させてハンドル73の導入流路から送り出される圧縮空気の分流方向を逆転させることで給気(噴射)から脱気(吸引)させる場合も考えられる。また、上記
図10~
図11の給気及び脱気兼用エアーガン71は、工場内のコンプレッサ等の圧縮空気を用いるものを想定し、大量輸送の受発注を行う輸送元及び輸送先を前提に説明したが、給気及び脱気兼用エアーガン71はこれ以外にも輸送元、輸送先にコンプレッサ等の設備をもたない個人間輸送等、少量輸送における携帯式の電動エアーガンであることも想定される。このような場合には、別途汎用の圧縮空気を生成する機構及びバッテリを装備することとなる。
【0069】
《圧力調整弁について》
上述したエアーガン71は、ガン部材80内と連通して内部の圧縮空気を加圧及び減圧する圧力調整弁300が設けられている(図示せず)。
図12の模式図で例示されるように圧力調整弁300は概ね、筒状のシリンダ301と、シリンダ301の内部で軸線方向に滑動(矢印A参照)するプランジャ302とシリンダ301の外周を覆って軸回転可能な環状部材303とで構成されている。シリンダ301は、外部側を閉鎖しガン部材80の内部側を開放する中空部材である。プランジャ302は、一面(紙面「内部側」の面)がガン部材80の内部、反対面がシリンダ301の内部に向いてシリンダ301の内部を軸線方向に滑動する円板部材302aと、円板部材302aの前記反対面(紙面上面)とシリンダ301の上端内部との間に配設され、ガン部材80内の圧縮空気圧に対抗するバネ部材(弾性体)302bとを備えている。
【0070】
プランジャ302は、ガン部材80内の圧縮空気の圧力が大きくなると円板部材302bがバネ部材302を抗して上昇(紙面)し、バネ部材302の弾性力と釣り合う点で停止する。逆に、ガン部材80内の圧縮空気の圧力が小さくなると円板部材302bがバネ部材302を抗して上昇(紙面)し、バネ部材302の弾性力と釣り合う点で停止する機能を有する。
【0071】
環状部材303は、所定の軸方向距離を有する環状部材であり、矢印Bに示すようにシリンダ301の外部側端部(紙面上端)から被せられて外周周りを覆って軸回転可能に配設される。また環状部材303は、軸線方向に所定間隔を空けて順に軸回転方向に所定ピッチずらした貫通孔303a~303cを有している。さらに、シリンダ301の外周には、内外を連通して軸線方向に所定距離延びる開口301a(又は所定間隔を空けた複数の開口(図示せず))を有している。
【0072】
このような構成の圧力調整弁300にすると、例えば、環状部材303を軸回転させて最下の貫通孔303cがシリンダ301の開口301aの位置に合うように設定すると、ガン部材80内の圧縮空気の圧力が上昇し、プランジャ302の円板部材302aが上昇しても円板部材302aの下面が貫通孔303cを超えると開口301aと貫通孔303cが連通するためガン部材80内の圧縮空気が外部に放出されることになり、それ以上の圧力に圧縮空気の圧力が上昇することはなく、給気される梱包用袋31等内の空気の加圧が制限される。また、環状部材303をさらに反時計回りに軸回転させて貫通孔303bが開口301aの位置に合うように設定し、貫通孔303cが合う位置に設定した場合よりは円板部材302aを抗するバネ部材302bの弾性力が大きいため圧縮空気による梱包用袋31等内の加圧限界を大きくすることができる。さらに、環状部材303をさらに反時計回りに軸回転させて貫通孔303aが開口301aの位置に合うように設定すると梱包用袋31等内の加圧限界をさらに大きく設定することができる。すなわち、シリンダ301に軸線方向に延びる開口301a(軸線方向に所定距離を空けて配列する貫通孔でも良い)を設け、軸回転可能な環状部材303に軸線方向に所定距離を空けて所定角度ずらした複数の貫通孔303a~303cを設けるだけで圧縮空気の加圧・減圧を階段的に制御可能な圧力調整弁を構成することとなる。
【0073】
また、上記説明では圧力調整弁300による圧縮空気の圧力調整について例示説明してきたが、コンプレッサ等からの圧縮空気は、一定かつ強い噴射流であるため圧力調整弁300以外に別途の手段で圧力調整する又は別の手段と圧力調整弁300と併用し、梱包用袋31等の急激な膨らみ等を制限する必要性が生じる場合もある。このような別途の手段として、エアーガン71の導入流路の圧縮空気流の空気量を調整する手段等が考えられる。例えば、エアーガン71のハンドル73の導入流路(
図11の点線参照)からの圧縮空気の送り出しを開放・閉鎖するストッパ78にスロットルバルブ(絞り弁)を配設して、スロットルバルブを緩やかに開放・閉鎖することで導入流路から送り出される空気量を変化させる場合が考えられる。
【0074】
以上、本発明の種々の実施形態について説明してきたが、本明細書及び図面に示す実施形態は、本発明の一例であり、特許請求の範囲の考え方や教示から他の種々の改良例、変形例が存在することは当業者に明白であろう。
【符号の説明】
【0075】
20 容器(梱包用容器)
20a 横開放扉
20b 縦開放扉
31 梱包用袋
32 気泡緩衝材
33 袋本体
33a~33
35 管状部材
35a~35
37 逆止弁
39 突出部
39a 長舌片
39b 短舌片
41 ノズル
43,45 シール部材
47,49 熱溶着部
51、53 ヒートシール部
55 出口
57 入口
59 流路
61 第1段弁フラップ部
63 第2段弁フラップ部
65、67 ヒートシール部
71 給気及び脱気兼用エアーガン(加減圧手段)
72 切替ノズル(分流手段)
73 ハンドル(導入流路)
74 ノズル口径
75 ホース取付口径
76 ダストバック
77 供給口
78 ストッパ
80 ガン部材
81 梱包対象物
90 輸送対象物(対象物)
90a~90h 輸送対象物
91 間隙
91a~91 間隙
130 梱包用マット
131a 第一梱包用袋
131b 第二梱包用袋
133a 第一袋本体
133a1 主流袋部
133a2~133a5 副流袋部
133b 第二袋本体
133b1 主流袋部
133b2~133b6 副流袋部
135a 第一管状部材
135b 第二管状部材
235a 第一管状部材
235b 第二管状部材
300 圧力調整弁
301 シリンダ
301a 開口
302 プランジャ
302a 円板部材
302b バネ部材(弾性体)
303 環状部材
303a~3003c 貫通孔