(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024178839
(43)【公開日】2024-12-25
(54)【発明の名称】一次調整力の提供に用いる制御装置、及び一次調整力提供方法
(51)【国際特許分類】
H02J 3/32 20060101AFI20241218BHJP
H02J 3/14 20060101ALI20241218BHJP
H02J 7/00 20060101ALI20241218BHJP
【FI】
H02J3/32
H02J3/14 130
H02J7/00 L
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023097294
(22)【出願日】2023-06-13
(71)【出願人】
【識別番号】000211307
【氏名又は名称】中国電力株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000176
【氏名又は名称】弁理士法人一色国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】伊豆野 泰道
【テーマコード(参考)】
5G066
5G503
【Fターム(参考)】
5G066AA02
5G066AA03
5G066HB03
5G066HB09
5G066JA05
5G066JB03
5G066KA01
5G066KB03
5G066KD04
5G503AA01
5G503BA04
5G503BB01
5G503CA08
5G503CC02
(57)【要約】
【課題】需要家の蓄電池をリソースとする一次調整力を提供する場合に需要家における蓄電池のニーズを損なうことなく一次調整力を提供する。
【解決手段】制御装置は、電力系統の周波数を計測する周波数計測器、蓄電池、及び電力変換装置と通信可能に接続し、周波数計測器から送られてくる電力系統の周波数を取得し、取得した周波数をSOC時系列データとして管理し、蓄電池から送られてくるSOCの計測値を取得し、取得したSOCをSOC時系列データとして管理し、周波数時系列データとSOC時系列データに基づき選択される調整方式パターンに基づき蓄電池の放電電力又は充電電力を制御する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
需要家の蓄電池をリソースとする一次調整力を電力系統に提供するための制御を行う制御装置であって、
プロセッサ及び記憶装置を有する情報処理装置を用いて構成され、
前記電力系統の周波数の時系列データである周波数時系列データと、
前記蓄電池のSOC(State Of Charge)の時系列データであるSOC時系列データと、
前記電力系統の周波数の偏差と前記蓄電池の放電電力又は充電電力との関係を示す情報を含む複数の調整方式パターンと、
を記憶し、
前記電力系統の周波数を計測する周波数計測器、前記蓄電池、及び電力変換装置と通信可能に接続し、
前記周波数計測器から送られてくる前記電力系統の周波数を取得し、取得した前記周波数を前記SOC時系列データとして管理し、
前記蓄電池から送られてくるSOCの計測値を取得し、取得した前記SOCを前記SOC時系列データとして管理し、
前記周波数時系列データと前記SOC時系列データとに基づき選択される前記調整方式パターンに基づき前記蓄電池の放電電力又は充電電力を制御する、
制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載の制御装置であって、
前記複数の調整方式パターンは、前記偏差に応じて前記蓄電池の放電電力又は充電電力を所定の速度調停率により比例制御する調整方式パターンを含む、
制御装置。
【請求項3】
請求項1に記載の制御装置であって、
前記複数の調整方式パターンは、前記偏差の絶対値が予め設定された閾値未満のときは第1速度調停率により比例制御し、前記絶対値が前記閾値以上のときは前記第1速度調停率よりも小さい第2速度調停率で比例制御する調整方式パターンを含む、
制御装置。
【請求項4】
請求項1に記載の制御装置であって、
前記複数の調整方式パターンは、
前記偏差が負値であり、かつ、前記偏差の絶対値が予め設定された閾値未満のときは第1速度調停率により比例制御し、
前記偏差が負値であり、かつ、前記絶対値が前記閾値以上のときは前記第1速度調停率よりも小さい第2速度調停率で比例制御し、
前記偏差が正値のときは、所定の速度調停率により比例制御する
調整方式パターンを含む、
制御装置。
【請求項5】
請求項1に記載の制御装置であって、
前記周波数時系列データ及び前記SOC時系列データを説明変数とし、前記説明変数について設定した前記調整方式パターンを目的変数として生成した学習データにより学習した機械学習モデルを記憶し、
前記複数の調整方式パターンは、前記周波数時系列データ及び前記SOC時系列データを前記機械学習モデルに入力することにより生成される調整方式パターンを含む、
制御装置。
【請求項6】
請求項1に記載の制御装置であって、
前記複数の調整方式パターンは、前記偏差の絶対値が予め設定した値以下の領域に不感帯を有する調整方式パターンを含む、
制御装置。
【請求項7】
請求項1に記載の制御装置であって、
前記複数の調整方式パターンは、前記偏差の絶対値が予め設定した値以上の領域では前記蓄電池の放電電力又は充電電力の値が予め設定された範囲を逸脱しないように制限されている調整方式パターンを含む、
制御装置。
【請求項8】
需要家の蓄電池をリソースとする一次調整力を電力系統に提供するための制御を行う、プロセッサ及び記憶装置を有する情報処理装置が、
前記電力系統の周波数の時系列データである周波数時系列データと、
前記蓄電池のSOC(State Of Charge)の時系列データであるSOC時系列データと、
前記電力系統の周波数の偏差と前記蓄電池の放電電力又は充電電力との関係を示す情報を含む複数の調整方式パターンと、
を記憶するステップ、
前記電力系統の周波数を計測する周波数計測器、前記蓄電池、及び電力変換装置と通信可能に接続するステップ、
前記周波数計測器から送られてくる前記電力系統の周波数を取得し、取得した前記周波数を前記SOC時系列データとして管理するステップ、
前記蓄電池から送られてくるSOCの計測値を取得し、取得した前記SOCを前記SOC時系列データとして管理するステップ、
前記周波数時系列データと前記SOC時系列データとに基づき選択される前記調整方式パターンに基づき前記蓄電池の放電電力又は充電電力を制御するステップ、
を実行する、一次調整力提供方法。
【請求項9】
請求項8に記載の一次調整力提供方法であって、
前記複数の調整方式パターンは、前記偏差に応じて前記蓄電池の放電電力又は充電電力を所定の速度調停率により比例制御する調整方式パターンを含む、
一次調整力提供方法。
【請求項10】
請求項8に記載の一次調整力提供方法であって、
前記複数の調整方式パターンは、前記偏差の絶対値が予め設定された閾値未満のときは第1速度調停率により比例制御し、前記絶対値が前記閾値以上のときは前記第1速度調停率よりも小さい第2速度調停率で比例制御する調整方式パターンを含む、
一次調整力提供方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一次調整力の提供に用いる制御装置、及び一次調整力提供方法に関し、とくに需要家の蓄電池等をリソースとして電力系統に一次調整力を提供する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、太陽光発電/風力発電等の発電量が変化し易い再生可能エネルギーを利用した発電設備の導入や、蓄電池/コージェネレーション等の需要家への分散型エネルギーリソース(以下、「リソース」と称する。)の普及が進んだことにより、電力の需給バランスを意識したエネルギーマネージメントの重要性に対する認識が高まっている。こうした状況を背景として、工場や家庭等の需要家に存在するリソースを用いて需給バランスの調整を行う電力システム(オフグリッド、マイクログリッド、VPP(Virtual Power Plant:仮想発電所)等)についての検討や構築が進められている。また、昨今では、電力系統における周波数調整や需給調整のための調整力を効率的に調達するための枠組みとして需給調整市場も開設されている。
【0003】
需要家に存在するリソースを用いて需給バランスの調整を行う仕組みとして、例えば、特許文献1には、電力需給の不均衡に応じて二次電池に充電又は放電制御を行う電力系統の周波数制御装置について記載されている。周波数制御装置は、電力系統の周波数を検出し、予め定められた基準周波数と検出された周波数との偏差を求め、周波数偏差が予め定めた範囲内になるように二次電池の充電又は放電制御を行い、二次電池の充電深度を検出し、検出された二次電池の充電深度が50%になるように二次電池の充電深度を補正する。
【0004】
また例えば、特許文献2には、需要家ニーズに基づき、蓄電池による充電又は放電制御によってもたらされる価値を顕在化することを目的として構成された電力管理システムについて記載されている。電力管理システムは、商用電力系統から受電した受電電力の電力量を測定し、蓄電池と、蓄電池への充電電力及び放電電力の電力量を測定し、需要家における、蓄電池の充電及び放電を含む電力に関する数値化された需要家ニーズを取得し、需要家ニーズに基づき充電又は放電計画を立案し、充電又は放電計画に基づき充電放電制御し、受電電力の対価に関する受電対価情報を取得し、所定期間における測定結果に基づき受電対価を算出し、充電又は放電計画に基づく蓄電池の充電又は放電制御による受益を、需要家、蓄電池保有者、充電又は放電計画を蓄電池保有者に提供するサービス提供者を含む者で按分する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2012-16077号公報
【特許文献2】特開2022-17970号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、一次調整力市場では、周波数変動に対して高速応答が可能な蓄電池をリソースの一つとして用いることが想定されているが、需要家に設置されている蓄電池をリソースとして活用する際は、需要家における蓄電池のニーズ、例えば、BCP(Business Continuity Plan)のためにSOCを最低でも30%程度に維持しておきたいといったニーズを損なうことのない範囲で、蓄電池を一次調整力のリソースとして利用する必要がある。
【0007】
上記の特許文献1に記載の周波数制御装置は、電力系統の周波数偏差が予め定めた範囲内になるように二次電池の充電又は放電制御を行うが、需要家の蓄電池のニーズを考慮しつつ一次調整力を提供するものではない。また、特許文献2に記載の電力管理システムは、需要家ニーズに基づき蓄電池による充電又は放電制御によってもたらされる価値を顕在化することを目的とするものであり、需要家のニーズを考慮しつつ一次調整力の提供を行うものではない。
【0008】
本発明はこうした背景に鑑みてなされたものであり、需要家の蓄電池をリソースとする一次調整力を提供する場合に需要家における蓄電池のニーズを損なうことなく一次調整力を提供することが可能な、一次調整力の提供に用いる制御装置、及び一次調整力提供方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するための本発明のうちの一つは、需要家の蓄電池をリソースとする一次調整力を電力系統に提供するための制御を行う制御装置であって、プロセッサ及び記憶装置を有する情報処理装置を用いて構成され、前記電力系統の周波数の時系列データである周波数時系列データと、前記蓄電池のSOC(State Of Charge)の時系列データであるSOC時系列データと、前記電力系統の周波数の偏差と前記蓄電池の放電電力又は充電電力との関係を示す情報を含む複数の調整方式パターンと、を記憶し、前記電力系統の周波数を計測する周波数計測器、前記蓄電池、及び電力変換装置と通信可能に接続し、前記周波数計測器から送られてくる前記電力系統の周波数を取得し、取得した前記周波数を前記SOC時系列データとして管理し、前記蓄電池から送られてくるSOCの計測値を取得し、取得した前記SOCを前記SOC時系列データとして管理し、前記周波数時系列データと前記SOC時系列データとに基づき選択される前記調整方式パターンに基づき前記蓄電池の放電電力又は充電電力を制御する。
【0010】
その他、本願が開示する課題、及びその解決方法は、発明を実施するための形態の欄、及び図面により明らかにされる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、需要家の蓄電池をリソースとする一次調整力を提供する場合に需要家における蓄電池のニーズを損なうことなく一次調整力を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】実施形態として説明する電力供給システムの概略的な構成を示す図である。
【
図2】充電又は放電制御装置が備える主な機能を説明する図である。
【
図5】調整力提供処理を説明するフローチャートである。
【
図6】制御装置の実現に用いる情報処理装置のハードウェア構成の一例である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態につき図面を参照しつつ説明する。以下の説明において、符号の前に付している「S」の文字は処理ステップを意味する。
【0014】
図1に、本発明の実施形態として示す電力供給システム1の概略的な構成を示している。同図に示すように、電力供給システム1は、電力系統3と、電力系統3に接続する一つ以上の需要家2とを含む。電力系統3は、例えば、従来型の発電設備31(火力発電設備や原子力発電設備等)や再生可能エネルギー利用型の発電設備32(風力発電設備や太陽光発電設備(PV:PhotoVoltaic)等)を含む。電力系統3は、例えば、需要家2の設備を需給調整のリソースとして利用する他の種類の電力システム(オフグリッド、マイクログリッド、VPP(Virtual Power Plant:仮想発電所)等)であってもよい。
【0015】
需要家2には、需要家配電線21、需要家負荷22、一つ以上の蓄電池40、電力変換装置41、周波数計測器45、及び制御装置100が設けられている。需要家配電線21は、電力系統3に接続する配線(宅内配線等)であり、需要家負荷22や電力変換装置41が接続する。需要家負荷22は、例えば、低圧設備や家庭用電気設備であり、需要家配電線71から電力の供給を受ける。蓄電池40、電力変換装置41、及び周波数計測器45は、制御装置100と通信設備50(シリアル通信線、LAN(Local Area Network)、無線LAN等)を介して有線又は無線により互いに通信可能に接続されている。
【0016】
蓄電池40は、例えば、NaS電池、リチウムイオン二次電池、鉛蓄電池、ニッケル水素電池、バナジウムレドックスフロー電池であり、例えば、工場やオフィスビル等の敷地内に設置される産業用蓄電池、マンションや戸建て住宅等の敷地内に設置される家庭用蓄電池、V2H(Vehicle to Home)のリソースとして用いられる電動車両(EV: Electric Vehicle)に搭載される二次電池である。蓄電池40は、通信設備50を介して制御装置100に蓄電池40の状態を示す情報(SOC(State Of Charge)、充電電力、放電電力等。以下、「蓄電池状態情報」と称する。)を通知する。
【0017】
電力変換装置41は、需要家配電線21の交流を直流に変換して蓄電池40への電力供給(蓄電池40の充電)を行う。また、電力変換装置41は、蓄電池40からの直流を交流に変換して需要家配電線21及び電力系統3への電力供給(蓄電池40の放電)を行う。電力変換装置41は、例えば、インバータ及びコンバータを備えたPCS(Power Conditioning System)を用いて実現される。電力変換装置41は、蓄電池40の充電又は放電を、通信設備50を介して制御装置100から送られてくる指示に応じて行う。
【0018】
周波数計測器45は、電力系統3に接続し、電力系統3の周波数(以下、「系統周波数」と称する。)を計測し、計測した系統周波数を通信設備50を介して制御装置100に通知する。
【0019】
制御装置100は、通信設備50を介して電力変換装置41を制御することにより蓄電池40の充電又は放電(需要家配電線21又は電力系統3からの充電電力の受電、需要家配電線21又は電力系統3への放電電力の供給)を制御する。制御装置100は、周波数計測器45から送られてくる系統周波数を受信する。また、制御装置100は、蓄電池40から送られてくる蓄電池状態情報を受信する。制御装置100は、受信した系統周波数に基づき蓄電池40の充電又は放電を制御することにより電力系統3に一次調整力を提供する。制御装置100の一次調整力の提供に関する機能の詳細については後述する。
【0020】
尚、周波数計測器45、制御装置100、及び電力変換装置41の全部又は一部は、例えば、スマートメータやHEMS(Home Energy Management System)、BEMS(Building Energy Management System)、FEMS(Factory Energy Management System)等の要素として実現されるものであってもよい。
【0021】
図2は、制御装置100が備える主な機能を説明するブロック図である。同図に示すように、制御装置100は、記憶部110、周波数計測部120、SOC取得部125、調整方式パターン生成部130、調整方式選択部140、調整方式パターン自動生成部135、及び充電放電制御部150の各機能を備える。
【0022】
上記機能のうち、記憶部110は、周波数時系列データ111、SOC時系列データ112、調整方式パターン群113、選択中調整方式114、及び機械学習モデル115の各情報(データ)を記憶する。
【0023】
このうち周波数時系列データ111は、過去の所定の時点から最新の取得時点までの系統周波数の時系列の情報を含む。また、SOC時系列データ112は、過去の所定の時点から最新の取得時点までの蓄電池40のSOCの時系列の情報を含む。
【0024】
調整方式パターン群113は、制御装置100が電力系統3に一次調整力を提供する際の充電又は放電の制御方式(以下、「調整方式」と称する。)の複数のパターン(以下、「調整方式パターン」と称する。)を含む。調整方式パターンは、系統周波数の基準値(50Hz又は60Hz)からの偏差(以下、「周波数偏差」と称する。)に応じた蓄電池40の充電又は放電制御量(充電電力又は放電電力)を示す情報を含む。
【0025】
選択中調整方式114は、現在適用中(採用中)の調整方式パターンを示す情報や、調整方式パターンの具体的な内容に関する情報を含む。機械学習モデル115については後述する。
【0026】
同図に示す周波数計測部120は、周波数計測器45から送られてくる系統周波数を受信し、受信した系統周波数を、当該系統周波数を計測した日時を示す情報と対応づけて周波数時系列データ111として管理する。
【0027】
SOC取得部125は、蓄電池40や需要家2に設置されているパワーコンディショナ等のSOCを含む蓄電池状態情報の取得(又は計測)が可能な装置や機器と通信することにより蓄電池状態情報を受信し、受信した蓄電池状態情報に含まれているSOCを、当該SOCを計測した日時を示す情報と対応づけてSOC時系列データ112として管理する。
【0028】
調整方式パターン生成部130は、ユーザとの対話処理により調整方式パターンを生成し、生成した調整方式パターンを調整方式パターン群113として管理(登録)する。調整方式パターン生成部130は、例えば、周波数時系列データ111や周波数時系列データ111に基づく情報、SOC時系列データ112やSOC時系列データ112に基づく情報をユーザに提示しつつ上記の対話処理を行い、ユーザから受け付けた情報に基づき調整方式パターンを生成し、生成した調整方式パターンを調整方式パターン群113として管理する。
【0029】
調整方式パターン自動生成部135は、周波数時系列データ111を解析することにより得られる情報やSOC時系列データ112を解析することにより得られる情報に基づき調整方式パターンを生成し、生成した調整方式パターンを調整方式パターン群113として管理する。例えば、調整方式パターン自動生成部135は、周波数時系列データ111及びSOC時系列データ112を説明変数とし、当該説明変数について予め用意された(例えばユーザが設定した)調整方式をラベル(目的変数)として対応づけることにより学習データを生成する。そして、調整方式パターン自動生成部135は、生成した学習データにより学習した機械学習モデル115を用いて調整方式パターンを生成する。
【0030】
調整方式選択部140は、充電放電制御部150が一次調整力を提供する際の調整方式パターンを選択し、選択した調整方法パターンを選択中調整方式114として管理する。具体的には、調整方式選択部140は、調整方式パターン群113から調整方式パターンの一つを選択し、選択した調整方法パターンを特定する情報を選択中調整方式114として管理する。調整方式選択部140は、例えば、周波数時系列データ111に基づく情報やSOC時系列データ112に基づく情報をユーザに提示しつつユーザから調整方式パターンの指定を受け付け、指定された調整方法パターンを選択中調整方式114として管理する。また、調整方式選択部140は、例えば、最新の周波数時系列データ及び最新のSOC時系列データを前述した機械学習モデル115に入力することにより得られた調整方式パターンを調整方式パターン群113から選択し、選択した調整方法パターンを選択中調整方式114として管理する。
【0031】
充電放電制御部150は、通信設備50を介して電力変換装置41を制御することにより蓄電池40の充電又は放電を制御する。同図に示すように、充電放電制御部150は、SOC調整部151及び一次調整力提供部152の各機能を有する。
【0032】
SOC調整部151は、電力変換装置41を制御することにより蓄電池40のSOCが所定の値になるようにする。SOC調整部151は、例えば、SOC時系列データ112に基づき未来のSOCの変化を予測することにより、一次調整力の提供前の段階で蓄電池40に要求されるSOCの値を求め、蓄電池40のSOCが求めた値(以下、「事前SOC値」と称する。)になるように電力変換装置41を制御する。尚、上記の事前SOC値は、例えば、蓄電池40のSOCが、一次調整力の提供中又は提供後にSOCの下限値(以下、「SOC下限値」と称する。)未満にならないような値に設定される。また、事前SOC値は、例えば、蓄電池40のSOCが、一次調整力の提供中又は提供後にSOCの上限値(以下、「SOC上限値」と称する。)を上回らないような値に設定される。
【0033】
一次調整力提供部152は、周波数計測部120から受信した系統周波数に応じて選択中調整方式114に基づき電力変換装置41を制御することにより電力系統3に一次調整力を提供する。一調整力の提供に際し、一次調整力提供部152は、例えば、調整方式パターンに従って比例制御やリミッタ制御(要件を満たす場合)を行う。一次調整力提供部152は、例えば、ユーザが指定したタイミング(スケジュール)で一次調整力の提供を開始し又は終了する。
【0034】
<調整方式パターン>
続いて、調整方式パターンについて説明する。前述したように、調整方式パターンは、周波数偏差に応じた蓄電池40の充電又は放電制御量(充電電力又は放電電力)を示す情報を含む。
【0035】
図3Aに、調整方式パターンの一例を示す。同図に示すグラフの横軸は周波数偏差であり、縦軸は蓄電池40の出力(放電電力又は充電電力)である。蓄電池40の出力が正値(プラス)の場合は蓄電池40は放電し、負値(マイナス)の場合は蓄電池40は充電される。
【0036】
例示する調整方式は、周波数偏差に応じて蓄電池40の出力を所定の速度調停率により比例制御する調整方式である。この例では、周波数偏差が不感帯よりも負側の領域では、周波数偏差の絶対値が大きくなる程、所定の割合で蓄電池の放電電力を増加させている。また、周波数偏差が不感帯よりも正側の領域では、周波数偏差の絶対値が大きくなる程、所定の割合で蓄電池40の充電電力を増加させている。尚、上記の割合(直線の傾き)は速度調停率の逆数に相当する。即ち、速度調停率の値が大きい程、直線の傾きが減少して周波数偏差の変化に対する応答(蓄電池40の出力の変化)が鈍くなり、また、速度調停率が小さい程、直線の傾きが増加して周波数偏差の変化に対する応答(蓄電池40の出力の変化)が鋭敏になる。
【0037】
尚、この例では、原点(周波数偏差がゼロ)を中心とする所定の範囲に周波数偏差の変化に対して蓄電池40の出力を変化させない不感帯を設けている。このように不感帯を設けることで、例えば、過剰な一次調整力の提供や頻繁に充電又は放電が行われることによる蓄電池40の劣化を防ぐことができる。尚、不感帯は必ずしも設けなくてもよい。
図3Bに、
図3Aの調整方式パターンについて不感帯を設けない場合の例を示す。
【0038】
図3Cに、調整方式パターンの他の例を示す。本例は
図3Aの調整方式パターンに類似するが、周波数偏差が所定値未満になった場合又は周波数偏差が所定値を超えた場合に蓄電池40の出力の絶対値(充電電力又は放電電力)が所定範囲を超えないように制限して(一次調整力の要件を満たす範囲でリミッタを設けて)いる。尚、周波数偏差は、通常は標準(基準)周波数を中心に異常発生時以外は(概ね)バランスしている。
【0039】
このように蓄電池40の充電電力又は放電電力を制限することで、蓄電池40のSOCが需要家2が意図していた範囲から逸脱して需要家2のニーズが損なわれてしまうのを防ぐことができる。
【0040】
図3Dに、調整方式パターンの他の例を示す。本例では、周波数偏差の絶対値が予め設定された閾値未満のときは第1速度調停率により比例制御し、上記絶対値が上記閾値以上のときは第1速度調停率よりも小さい第2速度調停率で比例制御するようにしている。具体的には、この例では、周波数偏差の絶対値が一定値を超える直前までは速度調停率を第1速度調停率とし、周波数偏差の絶対値が一定値を超えた場合は速度調停率を第2速度調定率としている。
【0041】
この調整方式パターンによれば、周波数偏差の絶対値が一定値を超えない間は蓄電池40のSOCの変動を抑えてSOCを温存することができるとともに、需要家2の蓄電池40のニーズに対する影響を抑えることができる。また、周波数偏差の絶対値が一定値を超えた場合は多くの一次調整力や長い供給持続時間を供出することができる。尚、この例では充電電力又は放電電力に制限(リミッタ(要件を満たす場合))を設けていないが制限を設けるようにしてもよい。
【0042】
図3Eに、調整方式パターンの他の例を示す。この例では、周波数偏差が負値のとき、周波数偏差が予め設定された閾値未満のときは第2速度調停率により比例制御し、周波数偏差が上記閾値以上のときは第1速度調停率で比例制御するようにしている。具体的には、
図3Dと同様に、周波数偏差が負値のとき、周波数偏差の絶対値が一定値を超える直前までは速度調停率を周波数偏差の変化に対する蓄電池40の出力の変化が小さい第1速度調停率により比例制御し、周波数偏差の絶対値が一定値を超えたときは速度調停率を周波数偏差の変化に対する蓄電池40の出力の変化が大きい第2速度調定率で比例制御するようにしている。尚、この例では、周波数偏差が正値のときは、
図3Bと同様に周波数偏差が大きい程、充電量が大きくなるようにしている。
【0043】
この調整方式パターンによれば、系統周波数が低下した場合に大きな一次調整力を供出することができる。また、系統周波数が高いときは充電電力が大きくなり、需要家2のニーズに対するSOCの不足を防ぐことができる。尚、この例では充電電力又は放電電力に制限(リミッタ)を設けていないが、制限を設けるようにしてもよい。
【0044】
図3Fに、調整方式パターンの他の例を示す。この例は、需要家2が必要とする値に蓄電池40のSOCが維持されるようにすることに重きを置いた調整方式である。この例では、調整方式パターン自動生成部135が、周波数時系列データ111やSOC時系列データ112を解析することにより得られる情報に基づき調整方式パターンを自動生成し、充電放電制御部150が生成された調整方式パターンを選択して当該調整方式パターンに基づき蓄電池40の出力を制御する。
【0045】
同図には、
図3Eの調整方式パターンに従って蓄電池40の出力を制御している状態(実線)から、調整方式パターン自動生成部135が、周波数時系列データ111やSOC時系列データ112に基づき生成した調整方式パターン(点線)に移行する場合をイメージとして示している。このように、調整方式パターン自動生成部135は、必要な場合、周波数時系列データ111やSOC時系列データ112の内容に基づき調整方式パターンを生成し、充電放電制御部150が生成された調整方式パターンに基づき蓄電池40の出力を制御するので、需要家2の蓄電池のニーズを損なわない範囲で提供する一次調整力を最大化することができる。
【0046】
<事前SOC調整機能>
図4は、一次調整力の提供前に、充電放電制御部150のSOC調整部151が、SOC時系列データ112に基づき現在よりも先のSOCの変化を予測して事前SOC値を求め、求めたSOCになるように蓄電池40の充電又は放電を制御する様子を示すグラフである。尚、同グラフの横軸は時間であり、縦軸は蓄電池40のSOCである。
【0047】
同図に示すように、SOC調整部151は、蓄電池40により一次調整力を提供する予定の期間が到来する前(調整力提供時間枠が到来する前)に、SOC時系列データ112に基づき現在よりも先のSOCの変化を予測して事前SOC値を求める。同図に示すように、事前SOC値は、一次調整力の提供中(調整力提供時間枠内)又は提供後(調整力提供時間枠経過後)に蓄電池40のSOCがSOC下限値以上かつSOC上限値以下になるような値に設定される。
【0048】
<処理例>
図5は、制御装置100が、一次調整力の提供に際して行う処理(以下、「一次調整力提供処理S500」と称する。)の一例を説明するフローチャートである。以下、同図とともに説明する。尚、一次調整力提供処理S500の開始時において、記憶部110には、同処理の実行に必要な情報(周波数時系列データ111、SOC時系列データ112、調整方式パターン群113、及び選択中調整方式114)が蓄積もしくは設定済であるものとする。
【0049】
同図に示すように、制御装置100は、一次調整力の提供開始時間が近づいた(現在から提供開始時間までの時間が所定時間以下になった)か否かを監視している(S511)。尚、提供開始時間は、例えば、ユーザが予めスケジュールするようにしてもよいし、制御装置100が系統周波数の変化に応じて自動で設定するようにしてもよい。
【0050】
制御装置100の調整方式選択部140は、一次調整力の提供開始時間が近づいたと判定すると(S511:YES)、調整方式パターンを選択(選択中調整方式114として管理)する(S512)。
【0051】
続いて、制御装置100のSOC調整部151が、事前SOCを求め(S513)、蓄電池40のSOCが求めた事前SOCになるように電力変換装置41を制御する(S514)。
【0052】
続いて、制御装置100は、一次調整力の提供開始時間が到来したか否かを監視する(S515)。制御装置100は、一次調整力の提供開始時間が到来したと判定すると(S515:YES)、S512で選択した調整方式パターンに基づく一次調整力の提供を開始する(S516)。
【0053】
一次調整力の提供中、制御装置100は、一次調整力の提供を終了するか否かを判定する(S517)。例えば、ユーザから提供を終了する操作(指示)を受け付けた場合、制御装置100は一次調整力の提供を終了すると判定する。また、予めスケジュールされた終了時刻が到来すると、制御装置100は一次調整力の提供を終了すると判定する。一次調整力の提供を終了すると判定した場合(S517)、制御装置100は一次調整力の提供を終了する(S518)。その後、処理はS511に戻る。
【0054】
以上に説明したように、本実施形態の制御装置100によれば、蓄電池40をリソースとした一次調整力の提供において、需要家2側の蓄電池40のニーズを損なうことなく、必要とされる一次調整力を提供することができる。
【0055】
<情報処理装置の例>
図6は、制御装置100の実現に用いる情報処理装置のハードウェア構成の一例である。例示する情報処理装置10は、プロセッサ11、主記憶装置12、補助記憶装置13、入力装置14、出力装置15、及び通信装置16を備える。情報処理装置10の具体例として、例えば、パーソナルコンピュータ、オフィスコンピュータ、各種サーバ装置、汎用機等がある。情報処理装置10は、その全部又は一部が、例えば、クラウドシステムによって提供される仮想サーバのように、仮想化技術を用いて提供される仮想的な情報処理資源を用いて実現されるものであってもよい。制御装置100は、通信可能に接続された複数の情報処理装置10を用いて実現してもよい。
【0056】
同図において、プロセッサ11は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、MPU(Micro Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、FPGA(Field Programmable Gate Array)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、AI(Artificial Intelligence)チップ等を用いて構成されている。
【0057】
主記憶装置12は、プログラムやデータを記憶する装置であり、例えば、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、不揮発性メモリ(NVRAM(Non Volatile RAM))等である。
【0058】
補助記憶装置13は、例えば、SSD(Solid State Drive)、ハードディスクドライブ、光学式記憶装置(CD(Compact Disc)、DVD(Digital Versatile Disc)等)、ストレージシステム、ICカード、SDカードや光学式記録媒体等の記録媒体の読取/書込装置、クラウドサーバの記憶領域等である。補助記憶装置13には、記録媒体の読取装置や通信装置16を介してプログラムやデータを読み込むことができる。補助記憶装置13に格納(記憶)されているプログラムやデータは主記憶装置12に随時読み込まれる。
【0059】
入力装置14は、外部から各種情報(機器情報等)の入力を受け付けるインタフェースであり、例えば、キーボード、マウス、タッチパネル、カードリーダ、ペン入力方式のタブレット、音声入力装置等である。
【0060】
出力装置15は、処理経過や処理結果等の各種情報や各種制御情報、制御指令等を出力するインタフェースである。出力装置15は、例えば、上記の各種情報を可視化する表示装置(LCD(Liquid Crystal Display)、グラフィックカード等)、上記の各種情報を音声化する装置(音声出力装置(スピーカ等))、上記の各種情報を文字化する装置(印字装置等)である。尚、例えば、情報処理装置10が通信装置16を介して他の装置との間で情報の入力や出力を行う構成としてもよい。
【0061】
入力装置14及び出力装置15は、ユーザとの間で情報の受け付けや情報の提示を行うユーザインタフェースを構成する。
【0062】
通信装置16は、通信ネットワーク5等の通信基盤を介した他の装置との間での通信(有線通信又は無線通信)を実現する装置であり、例えば、NIC(Network Interface Card)、無線通信モジュール、USBモジュール等を用いて構成される。
【0063】
情報処理装置10には、例えば、オペレーティングシステム、ファイルシステム、DBMS(DataBase Management System)(リレーショナルデータベース、NoSQL等)、KVS(Key-Value Store)等が導入されていてもよい。
【0064】
制御装置100が備える機能は、情報処理装置10のプロセッサ11が、主記憶装置12に格納されているプログラムを読み出して実行することにより、もしくは、制御装置100を構成するハードウェア(FPGA、ASIC、AIチップ等)自体の機能によって実現される。制御装置100は、前述した各種の情報(データ)を、例えば、データベースのテーブルやファイルシステムが管理するファイルとして記憶する。
【0065】
以上、本発明の実施形態について詳述したが、以上の説明は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定するものではない。本発明はその趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に本発明にはその等価物が含まれることは勿論である。例えば、上記の実施の形態は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また上記実施形態の構成の一部について、他の構成の追加、削除、置換をすることが可能である。
【符号の説明】
【0066】
1 電力供給システム
2 需要家
3 電力系統
21 需要家配電線
22 需要家負荷
40 蓄電池
41 電力変換装置
45 周波数計測器
50 通信設備
100 制御装置
110 記憶部
111 周波数時系列データ
112 SOC時系列データ
113 調整方式パターン群
114 選択中調整方式
120 周波数計測部
125 SOC取得部
130 調整方式パターン生成部
135 調整方式パターン自動生成部
140 調整方式選択部
150 充電放電制御部
151 SOC調整部
152 一次調整力提供部
S500 一次調整力提供処理