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特開2024-178840空調制御装置、空調制御システム及び空調制御方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024178840
(43)【公開日】2024-12-25
(54)【発明の名称】空調制御装置、空調制御システム及び空調制御方法
(51)【国際特許分類】
   F24F 11/76 20180101AFI20241218BHJP
   F24F 11/47 20180101ALI20241218BHJP
   F24F 11/61 20180101ALI20241218BHJP
   F24F 11/54 20180101ALI20241218BHJP
【FI】
F24F11/76
F24F11/47
F24F11/61
F24F11/54
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023097296
(22)【出願日】2023-06-13
(71)【出願人】
【識別番号】399048917
【氏名又は名称】日立グローバルライフソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】小坂 忠義
(72)【発明者】
【氏名】金澤 律子
(72)【発明者】
【氏名】町田 芳広
(72)【発明者】
【氏名】馬場 宣明
(72)【発明者】
【氏名】平 友恒
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 規和
【テーマコード(参考)】
3L260
【Fターム(参考)】
3L260AA04
3L260AA08
3L260AA09
3L260AB04
3L260BA42
3L260CA12
3L260CB06
3L260CB63
3L260DA12
3L260FA05
3L260FA09
3L260FB15
(57)【要約】      (修正有)
【課題】統合形式の空調機において、設定温度を節電方向に変更する場合であっても、省エネルギーに貢献する。
【解決手段】空調制御装置11は、複数の室内機70に関する運転状態、室内機サーモ状態、設定温度、現在室温を含む空調情報を取得する空調情報取得部55、空調機50の運転状態を切替える際、室内機70に係る設定温度の調整を行うと共に、該調整後の設定温度を含む制御指示を作成する制御指示作成部57、及び、該作成された制御指示を室内機70に送信する制御指示送信部59を備える。制御指示作成部57は、空調機50に係る運転状態を既定状態から節電状態に切替える際に、室内機サーモオン状態である室内機70のうち、設定温度及び現在室温間の差分が反快適側に傾いている室内機70を例外とし、該例外に非該当である室内機70に係る設定温度を、節電時設定温度に変更する調整を行う。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の室内機の各々に備わる個別冷媒配管が、圧縮機を有する室外機に備わる共用冷媒配管に統合して連通接続された統合形式の空調機に係る運転状態を既定状態又は節電状態のいずれかに切替える制御を行う空調制御装置であって、
前記複数の室内機のそれぞれに関する運転状態、室内機サーモ状態、設定温度、現在室温を含む空調情報を取得する空調情報取得部と、
前記空調機に係る運転状態を切替える際、前記室内機に係る設定温度の調整を行うと共に、該調整後の設定温度を含む制御指示を作成する制御指示作成部と、
前記制御指示作成部によって作成された前記制御指示を前記室内機に送信する制御指示送信部と、を備え、
前記制御指示作成部は、
前記空調機に係る運転状態を前記既定状態から前記節電状態に切替える際に、前記室内機サーモ状態が室内機サーモオン状態である前記室内機のうち、前記設定温度及び現在室温間の差分が反快適側に傾いている方から数えて少なくとも1以上の所定の数の室内機を例外とし、この例外に非該当である室内機に係る設定温度を、前記節電状態に係る設定温度に変更する調整を行う
ことを特徴とする空調制御装置。
【請求項2】
請求項1記載の空調制御装置であって、
前記制御指示作成部は、
前期空調機に係る運転状態が前記節電状態にある場合において、前記設定温度が前記節電状態に係る設定温度に変更済である室内機のいずれかが室内機サーモオフ状態から室内機サーモオン状態に遷移した際に、前記例外として節電状態に係る設定温度に変更されていない前記室内機のうち、前記設定温度及び現在室温間の差分が快適側に傾いている方の室内機に係る設定温度を、前記節電状態に係る設定温度に変更する調整を行う
ことを特徴とする空調制御装置。
【請求項3】
請求項1記載の空調制御装置であって、
前記室内機のそれぞれに関する前記室内機サーモ状態が室内機サーモオン状態にある際の現在室温の時間変化率を記録する時間変化率記録部をさらに備え、
前記制御指示作成部は、
前記例外として前記設定温度が前記節電状態に係る設定温度に変更されていない前記室内機のうち、前記設定温度及び現在室温間の差分が反快適側に傾いている方の室内機に関する前記時間変化率に基づいて算出される、当該室内機に係る室内機サーモ状態が室内機サーモオン状態から室内機サーモオフ状態に遷移するまでの猶予時間長、が所定の時間閾値以下である場合に、前記設定温度が前記節電状態に係る設定温度に変更済である前記室内機のうち、前記設定温度及び現在室温間の差分が反快適側に傾いている方の室内機に係る設定温度を、前記節電状態に係る設定温度に変更する直前の設定温度に戻す調整を行う
ことを特徴とする空調制御装置。
【請求項4】
請求項3記載の空調制御装置であって、
前記時間変化率記録部は、前記室内機それぞれの前記室内機サーモ状態が室内機サーモオン状態から室内機サーモオフ状態に遷移する際の現在室温の時間変化率を記録する
ことを特徴とする空調制御装置。
【請求項5】
請求項1記載の空調制御装置であって、
前記統合形式の空調機は、ビル空調システムを構成する複数の空調系統に属しており、
前記ビル空調システムに関する消費電力を取得する消費電力取得部と、
前記ビル空調システムが設置されたビル全体の消費電力の目標値である目標電力を設定する目標電力設定部と、をさらに備え、
前記制御指示作成部は、前記目標電力と比べて前記消費電力の方が大きい場合に、前記複数の空調系統のうち少なくとも1系統に属する前記空調機に係る運転状態を前記既定状態から前記節電状態に切替える制御指示を作成する
ことを特徴とする空調制御装置。
【請求項6】
請求項5記載の空調制御装置であって、
前記目標電力設定部は、上位システムから取得した節電要求に基づいて、前記目標電力を設定する
ことを特徴とする空調制御装置。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか一項に記載の空調制御装置であって、
前記空調情報取得部は、前記空調情報として省エネルギに係る保護状態をさらに取得し、
前記制御指示作成部は、
前記空調機に係る運転状態を前記既定状態から前記節電状態に切替える際に、前記複数の室内機のうち、前記空調情報として省エネルギに係る保護状態が設定された室内機を例外とし、この例外に非該当である室内機に係る設定温度を、節電状態に係る設定温度に変更する調整を行う
ことを特徴とする空調制御装置。
【請求項8】
複数の室内機の各々に備わる個別冷媒配管が、圧縮機を有する室外機に備わる共用冷媒配管に統合して連通接続された統合形式の空調機と、当該空調機に係る運転状態を、少なくとも既定状態又は節電状態のいずれかに切替える制御を行う空調制御装置とを備える空調制御システムであって、
前記空調制御装置は、
前記複数の室内機のそれぞれに関する運転状態、設定温度、現在室温、室内機サーモ状態を含む空調情報を取得する空調情報取得部と、
前記空調機に係る運転状態を切替える際、当該室内機に係る設定温度の調整を行うと共に、該調整後の設定温度を含む制御指示を作成する制御指示作成部と、
前記制御指示作成部によって作成された前記制御指示を前記室内機に送信する制御指示送信部と、を備え、
前記制御指示作成部は、
前記空調機に係る運転状態を前記既定状態から前記節電状態に切替える際に、前記室内機サーモ状態が室内機サーモオン状態である前記室内機のうち、前記設定温度及び現在室温間の差分が反快適側に傾いている方から数えて少なくとも1以上の所定の数の室内機を例外とし、この例外に非該当である室内機に係る設定温度を、前記節電状態に係る設定温度に変更する調整を行い、
前記例外に該当する室内機は、前記設定温度に従う空調制御動作を行う一方、
前記例外に非該当である室内機は、前記設定温度の変更値に従う空調制御動作を行う
ことを特徴とする空調制御システム。
【請求項9】
請求項8記載の空調制御システムであって、
前記統合形式の空調機と、前記空調制御装置との間は、通信媒体を介して電子的に接続されており、
前記複数の室内機の各々は、
当該室内機に係る前記空調情報を前記空調制御装置宛に通知し、
前記空調制御装置は、
前記例外に非該当である室内機から通知された前記空調情報のうち、当該室内機に係る設定温度に基づいて、前記節電状態に係る設定温度の変更値を算出し、当該算出した設定温度の変更値を当該室内機に通知する
ことを特徴とする空調制御システム。
【請求項10】
複数の室内機の各々に備わる個別冷媒配管が、圧縮機を有する室外機に備わる共用冷媒配管に統合して連通接続された統合形式の空調機に係る運転状態を既定状態又は節電状態のいずれかに切替える制御を行う空調制御装置に用いられる空調制御方法であって、
前記複数の室内機のそれぞれに関する運転状態、室内機サーモ状態、設定温度、現在室温を含む空調情報を取得するステップと、
前記空調機に係る運転状態を切替える際、前記室内機に係る設定温度の調整を行うと共に、該調整後の設定温度を含む制御指示を作成するステップと、
前記作成された前記制御指示を前記室内機に送信するステップと、を有し、
前記制御指示を作成するステップでは、
前記空調機に係る運転状態を前記既定状態から前記節電状態に切替える際に、前記室内機サーモ状態が室内機サーモオン状態である前記室内機のうち、前記設定温度及び現在室温間の差分が反快適側に傾いている方から数えて少なくとも1以上の所定の数の室内機を例外とし、この例外に非該当である室内機に係る設定温度を、前記節電状態に係る設定温度に変更する調整を行う
ことを特徴とする空調制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、統合形式の空調機を制御することで省エネルギー化を図る空調制御装置、空調制御システム及び空調制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば中小規模のビルでは、複数の室内機に係る個別冷媒配管が共用冷媒配管に統合して連通接続され、該共用冷媒配管を有する室外機に設けた圧縮機により冷媒を圧縮・循環させるビルマルチエアコン・パッケージエアコン等と呼ばれる統合形式の空調機が設置されることが多い。
【0003】
統合形式の空調機では、設定温度を元に空調機内部で、圧縮機を停止して室外機サーモオフ状態にする制御温度(サーモオフ温度)と、圧縮機を起動して室外機サーモオン状態にする制御温度(サーモオン温度)とを設定し、圧縮機の回転速度、風量の組み合わせを調整することで室温を設定温度に収束させる空調制御を行う。
【0004】
こうした統合形式の空調機では、室外機サーモオフ状態が続くと、冷房運転では室温が上昇し、暖房運転では室温が低下してゆく。空調機の現在室温が、冷房運転ではサーモオン温度を超えるか、暖房運転ではサーモオン温度未満になると、空調機は、室外機に備わる圧縮機を再起動して室外機サーモオン状態にする。ここで、圧縮機の再起動時には、定常運転時と比べて多大な起動電力を要する。
【0005】
統合形式の空調機では、複数の各室内機においてそれぞれの現在室温が設定温度を超えると、該当する室内機に係る個別冷媒配管と共用冷媒配管との接続部に設けたバルブの閉止操作を行う。これを室内機サーモオフと呼ぶ。全ての室内機に係るバルブが閉じられると、空調機は、室外機のサーモ状態を室外機サーモオフ状態にする制御を行う。
室内機のサーモオフ状態が続いて冷房運転では現在室温がサーモオン温度を超えるか、暖房運転では現在室温がサーモオン温度未満になると、該当する室内機に係るバルブを開放する。このとき室外機に備わる圧縮機が仮に停止している場合、空調機は圧縮機を再起動させる。
【0006】
特許文献1には、統合形式の空調機において、圧縮機の停止・再起動に伴う消費電力の増大を防ぐため、圧縮機の停止・再起動が頻繁に発生する状況を検知して、室内機毎に設定温度を変更することで複数の室内機毎のサーモオン状態からサーモオフ状態への遷移タイミングを時間的にずらす技術が開示されている。
【0007】
また、特許文献2には、室内温度を監視しながら、全ての室内機がサーモオフ状態になりそうな場合をその都度検知して、事前にサーモオフ温度やサーモオン温度を変化させる技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2012-154600号公報
【特許文献2】WO2016/016918号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献1、2に係る空調制御技術では、統合形式の空調機において、設定温度を節電方向に変更するに際し、設定温度に対応するサーモオフ温度が現在室温と比べて冷房運転では高く、暖房運転では低いケースでは、室外機サーモ状態が室外機サーモオン状態から室外機サーモオフ状態に遷移して圧縮機が停止する。すると、圧縮機の再起動時には定常運転時と比べて多大な消費電力を要するため、かえって節電意図に反するおそれがあるという課題を内在していた。
【0010】
前記課題を解決するために、本発明は、複数の室内機の各々に備わる個別冷媒配管が、圧縮機を有する室外機に備わる共用冷媒配管に統合して連通接続された統合形式の空調機において、設定温度を節電方向に変更する場合であっても、省エネルギーに貢献可能な空調制御装置、空調制御システム及び空調制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記課題を解決するため、本発明に係る空調制御装置は、
複数の室内機の各々に備わる個別冷媒配管が、圧縮機を有する室外機に備わる共用冷媒配管に統合して連通接続された統合形式の空調機に係る運転状態を既定状態又は節電状態のいずれかに切替える制御を行う空調制御装置であって、
前記複数の室内機のそれぞれに関する運転状態、室内機サーモ状態、設定温度、現在室温を含む空調情報を取得する空調情報取得部と、
前記空調機に係る運転状態を切替える際、前記室内機に係る設定温度の調整を行うと共に、該調整後の設定温度を含む制御指示を作成する制御指示作成部と、
前記制御指示作成部によって作成された前記制御指示を前記室内機に送信する制御指示送信部と、を備え、
前記制御指示作成部は、
前記空調機に係る運転状態を前記既定状態から前記節電状態に切替える際に、前記室内機サーモ状態が室内機サーモオン状態である前記室内機のうち、前記設定温度及び現在室温間の差分が反快適側に傾いている方から数えて少なくとも1以上の所定の数の室内機を例外とし、この例外に非該当である室内機に係る設定温度を、前記節電状態に係る設定温度に変更する調整を行う
ことを最も主要な特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、複数の室内機の各々に備わる個別冷媒配管が、圧縮機を有する室外機に備わる共用冷媒配管に統合して連通接続された統合形式の空調機において、設定温度を節電方向に変更する場合であっても、省エネルギーに貢献することができる。
上記以外の課題、構成及び効果は、以下の実施形態で詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の第1実施例に係る第1空調制御システムの概要を機能的に表す概略構成図である。
図2】本発明の実施形態に係る空調制御装置のハードウェア構成図である。
図3図2に示す空調制御装置に備わるデータベースに格納された空調機管理テーブルのデータ構造を概念的に表す説明図である。
図4】第1実施例に係る第1空調制御システムに備わる空調機を冷房運転する際の複数の各機能部での動作手順を概念的に表すシーケンス図である。
図5A】第1実施例に係る第1空調制御装置の動作説明に供するフローチャート図である。
図5B】第1実施例に係る第1空調制御システムに備わる空調機の動作説明に供するタイムチャート図である。
図6】本発明の第2実施例に係る第2空調制御システムの概要を機能的に表す概略構成図である。
図7A】第2実施例に係る第2空調制御装置の動作説明に供するフローチャート図である。
図7B】第2実施例に係る第2空調制御システムに備わる空調機の動作説明に供するタイムチャート図である。
図8】本発明の第3実施例に係る第3空調制御システムの概要を機能的に表す概略構成図である。
図9A】第3実施例に係る第3空調制御装置の動作説明に供するフローチャート図である。
図9B】第3実施例に係る第3空調制御システムに備わる空調機の動作説明に供するタイムチャート図である。
図10】本発明の第4実施例に係る第4空調制御システムの概要を機能的に表す概略構成図である。
図11A】第4実施例に係る第4空調制御装置の動作説明に供するフローチャート図である。
図11B】第4実施例に係る第4空調制御装置の動作説明に供するフローチャート図である。
図11C】第4実施例に係る第4空調制御システムに備わる空調機の動作説明に供するタイムチャート図である。
図12】比較例に係る空調制御システムに備わる空調機の連携動作説明に供するタイムチャート図である。
【発明の実施の形態】
【0014】
本発明の実施形態に係る空調制御装置、空調制御システム、空調制御方法について、適宜の図面を参照しながら詳細に説明する。
本発明の実施形態に係る空調制御装置、発電システム制御装置の説明において、共通の機能を有する構成要素には共通の符号を付し、その重複した説明を省略する。
【0015】
〔第1実施例に係る第1空調制御システム1-1の概略構成〕
はじめに、第1実施例に係る第1空調制御システム1-1の概略構成について、図1を参照して説明する。
図1は、第1実施例に係る第1空調制御システム1-1の概要を機能的に表す概略構成図である。
【0016】
第1実施例に係る第1空調制御システム1-1は、図1に示すように、第1実施例に係る第1空調制御装置11―1と、第1ビル空調システム13-1との間を、インターネットや専用通信線等の通信媒体103を介してデータ交換可能に電子的に接続して構成されている。第1実施例では、第1空調制御装置11―1は、第1ビル空調システム13-1とは異なる場所に設けられている。
【0017】
〔第1空調制御装置11―1の構成〕
第1空調制御装置11―1は、図1に示すように、複数の室内機70の各々に備わる個別冷媒配管23a、25a、27a、29a、31aが、圧縮機63を有する室外機60に備わる共用冷媒配管45に統合して連通接続された統合形式の空調機50に係る運転状態を既定状態又は節電状態のいずれかに切替える制御を行う空調制御装置11が前提となる。
【0018】
詳しく述べると、第1空調制御装置11―1は、図1に示すように、目標電力設定部51、消費電力取得部53、空調情報取得部55、制御指示作成部57、及び制御指示送信部59を備えて構成されている。
【0019】
目標電力設定部51は、消費電力の目標となる目標電力を設定する機能を有する。目標電力設定部51は、通信媒体を介して電子的に接続されたDRのような上位システムからの電力削減指示に基づいて、目標電力を設定しても構わない。
ここで、DR(Demand Response)とは、局所的な電力の需要と供給のバランスをとることで電力系統の安定化を図る目的で、電力系統管理者や電力小売業者の指示に従い、需要家側に設置された第1ビル空調システム13-1のような設備に属する空調機50等の負荷の消費電力を調整する仕組みを意味する。
【0020】
消費電力取得部53は、第1ビル空調システム13-1に属する空調機50に係る現在電力データを、スマートメータ15、制御端末17等を適宜介して取得する機能を有する。スマートメータ15、制御端末17について、詳しくは後記する。
【0021】
空調情報取得部55は、複数の室内機70のそれぞれに関する運転状態、設定温度、現在室温、室内機サーモ状態、省エネルギーに係る保護状態を含む空調情報を取得する機能を有する。前記空調情報について、詳しくは適時に後記する。
【0022】
制御指示作成部57は、空調機50に係る運転状態を切替える際、複数の各室内機70に係る設定温度の調整を行うと共に、該調整後の設定温度を含む制御指示を作成する機能を有する。具体的には、制御指示作成部57は、空調機50に係る運転状態を既定状態から節電状態に切替える際に、室内機サーモ状態が室内機サーモオン状態である室内機70のうち、設定温度及び現在室温間の差分が、冷房運転時では高温側に、暖房運転時では低温側に傾いている方から数えて少なくとも1以上の所定の数の室内機70を例外とし、この例外に非該当である室内機70の設定温度を、節電設定温度に変更する調整を行う。
これにより、空調機50に係る運転状態を既定状態から節電状態に切替える際において、現時点での空調環境が劣後に相当する室内機70を制御除外室内機として設定する一方、残りの室内機70を制御対象室内機として設定し、制御対象室内機の設定温度を、節電状態に係る設定温度に変更することができる。
その結果、現時点で劣後に相当する室の空調環境を改善する効果と、省エネルギーに貢献する効果と、を両立することができる。
【0023】
また、制御指示作成部57は、目標電力と比べて消費電力の方が大きい場合に、複数の空調系統のうち少なくとも1系統に属する空調機5に係る運転状態を既定状態から節電状態に切替える制御指示を作成する。ここで、目標電力と比べて消費電力の方が大きい場合とは、消費電力を目標電力に収束させるために所要の電力削減が求められるケースである。
これにより、消費電力を目標電力に収束させるために所要の電力削減が求められるケースにおいて、複数の空調系統のうち少なくとも1系統に属する空調機5に係る運転状態を既定状態から節電状態に切替える制御指示を作成することを通じて、電力削減要求に応えることができる。
制御指示作成部57のその他の機能について、詳しくは適宜後記する。
【0024】
制御指示送信部59は、制御指示作成部57によって作成された制御指示を複数の室内機70宛に送信する機能を有する。
【0025】
〔用語の定義〕
ここで、本明細書で用いる主要な用語を定義する。
空調機50に係る運転状態のうち「既定状態」とは、空調機50において標準的な空調機能を実現するために予め設定される運転状態を意味する。
空調機50に係る運転状態のうち「節電状態」とは、空調機50において標準的な空調機能と比べて消費電力削減による省エネルギー化を実現するために予め設定される運転状態を意味する。この「節電状態」は、省エネルギー効果の調整を図るため、例えば、強い「節電状態」、普通の「節電状態」、弱い「節電状態」などといった省エネルギー効果の観点で複数段階の「節電状態」を設定する構成を採用しても構わない。
「節電状態に係る設定温度」とは、空調機50において標準的な空調機能と比べて消費電力削減による省エネルギー化を実現するための「節電時設定温度」を意味する。「節電状態に係る設定温度」は、本発明に係る空調制御システム1を構築する際に予め適宜の値に設定される。ただし、「節電状態に係る設定温度」は、既定状態に係る設定温度に対する相対温度差(例えば、冷房運転時は+2°C、暖房運転時は-2°C等)の形態で設定しても構わない。
「空調機50に係る運転状態を既定状態から節電状態に切替える際に、~所定の数の室内機70を例外とする」とは、所定の数の室内機70を、空調機50に係る運転状態を切替える対象室内機から除外することを意味する。これにより、例外とされた室内機70では、その設定温度を節電時設定温度に変更する調整が行われないことになる。なお、空調機50に係る運転状態を切替える対象室内機から除外された空調機を「制御除外室内機」と呼ぶ場合がある。
「設定温度及び現在室温間の差分が反快適側に傾いている方」の室内機70とは、設定温度に対する現在室温が冷房運転時では高温側に、暖房運転時では低温側に傾いている方、つまり快適性に反する方の室に設置された室内機を意味する。
「設定温度及び現在室温間の差分が快適側に傾いている方」の室内機70とは、設定温度に対する現在室温が冷房運転時では低温側に、暖房運転時では高温側に傾いている方、つまり快適性を満たす方の室に設置された室内機を意味する。
【0026】
〔第1ビル空調システム13-1の構成〕
第1ビル空調システム13-1は、スマートメータ15、制御端末17、第1空調系統41、第2空調系統43、通信媒体105、107を備えて構成されている。スマートメータ15及び制御端末17の間は、通信媒体105を介して電子的に接続されている。また、制御端末17及び第1空調系統41の間、並びに、制御端末17及び第2空調系統43の間は、それぞれ通信媒体107を介して電子的に接続されている。
【0027】
スマートメータ15は、第1ビル空調システム13-1に属する空調機50に係る現在電力データを、通信媒体103、105を介して第1空調制御装置11等へ通知する機能を有する。
【0028】
制御端末17は、通信媒体105を介して、第1ビル空調システム13-1に属する空調機50に係る現在電力データを取得する一方、通信媒体107を介して、第1空調系統41に備わる空調機50に関する設定温度及び現在室温の情報、並びに、第2空調系統43に備わる空調機50に関する設定温度及び現在室温の情報を取得・伝達する機能を有する。
【0029】
第1空調系統41及び第2空調系統43は、図1に示すように、第1ビル空調システム13-1に属する、室外機60及び室内機70を備える空調機50の群である。
【0030】
第1空調系統41は、第11~第15室内機23、25、27、29、31の各々に備わる個別冷媒配管23a、25a、27a、29a、31aが、第1圧縮機22を有する第1室外機21に備わる共用冷媒配管45に統合して連通接続された統合形式の第1空調機81を備える。前記個別冷媒配管23a、25a、27a、29a、31aの各々には、第11~第15室内機23、25、27、29、31の各々への冷媒流通量を制御するための電磁弁24、26、28、30、32が設けられている。
【0031】
第11~第15室内機23、25、27、29、31(室内機70:図1参照)の各々には、各室毎の空調に関する運転状態(電源のオン/オフ、運転モード(ノーマル/エコ)・(冷房/暖房/除湿)を含む)、設定温度、現在室温、室内機サーモ状態、省エネルギー(エコ)モードの禁則に係る保護状態、風量/風向き、タイマ設定等を含む空調情報を設定操作する際に用いる室内リモコン(不図示)が設けられている。ここで、設定温度とは、各室毎の雰囲気温度(現在室温)として目指すべき目標室温を意味する。
【0032】
また、室内機70の空気吸込口には、現在室温を検出するための温度センサ75(例えば図6参照)が設けられている。ただし、現在室温検出用の温度センサ75を、当該室内機70の空調内容を設定操作するための室内リモコン、当該室内機70が設置された室の壁面などに適宜設けても構わない。
【0033】
第1空調機81に属する第1室外機21及び第11~第15室内機23、25、27、29、31の各々は、第1通信線42及び通信媒体107をそれぞれ介して制御端末17に電子的に接続されている。
第1空調機81に関する空調情報は、第1通信線42及び通信媒体107をそれぞれ介して制御端末17に送られる。また、第1空調機81に関する制御指示は、第1通信線42及び通信媒体107をそれぞれ介して、第1室外機21、第11~第15室内機23、25、27、29、31のそれぞれに送られる。
【0034】
一方、第2空調系統43は、第21室内機37に備わる個別冷媒配管37aが、第2圧縮機35を有する第2室外機33に備わる個別冷媒配管47に一対一で連通接続された第2空調機83を備える。前記個別冷媒配管37aには、第21室内機37への冷媒の流通量を制御するための電磁弁が設けられていない。ただし、前記個別冷媒配管37aに対し、第21室内機37への冷媒の流通量を制御するための電磁弁を設けても構わない。
【0035】
第2空調機83に属する第2室外機33及び第21室内機37の各々は、第2通信線46及び通信媒体107をそれぞれ介して制御端末17に電子的に接続されている。
第2空調機83に関する空調情報は、第2通信線46及び通信媒体107をそれぞれ介して制御端末17に送られる。また、第2空調機83に関する制御指示は、第2通信線46及び通信媒体107をそれぞれ介して、第2室外機33、第21室内機37のそれぞれに送られる。
【0036】
〔本発明明細書における構成部材に対する符号付与ルール〕
ここで、本発明明細書における構成部材に対する符号付与ルールに言及する。
第1実施例に係る第1空調制御システム1-1(図1参照)、第2実施例に係る第2空調制御システム1-2(図6参照)、第3実施例に係る第3空調制御システム1-3(図8参照)、第4実施例に係る第4空調制御システム1-4(図10参照)について、それぞれを区別した上での説明を要しない限り、第1~第4空調制御システム1-1、1-2、1-3、1-4を単に「空調制御システム1」と総称することとする。
また、第1実施例に係る第1空調制御装置11-1(図1参照)、第2実施例に係る第2空調制御装置11-2(図6参照)、第3実施例に係る第3空調制御装置11-3(図8参照)、第4実施例に係る第4空調制御装置11-4(図10参照)について、それぞれを区別した上での説明を要しない限り、第1~第4空調制御装置11-1、11-2、11-3、11-4を単に「空調制御装置11」と総称することとする。
また、第1実施例に係る第1ビル空調システム13-1(図1参照)、第2実施例に係る第2ビル空調システム13-2(図6参照)、第3実施例に係る第3ビル空調システム13-3(図8参照)、第4実施例に係る第4ビル空調システム13-4(図10参照)について、それぞれを区別した上での説明を要しない限り、第1~第4ビル空調システム13-1、13-2、13-3、13-4を単に「ビル空調システム13」と総称することとする。
さらに、図1等に示すように、第1空調系統41に備わる第1空調機81(図1参照)、及び、第2空調系統43に備わる第2空調機83について、それぞれを区別した上での説明を要しない限り、第1空調機81及び第2空調機83を単に「空調機50」と総称することとする。
前記と同様に、図1等に示すように、第1空調系統41に属する第1室外機21、及び、第2空調系統43に属する第2室外機33について、それぞれを区別した上での説明を要しない限り、第1室外機21、第2室外機33を単に「室外機60」と総称することとする。
前記と同様に、図1等に示すように、第1室外機21に備わる第1圧縮機22、及び、第2室外機33に備わる第2圧縮機35について、それぞれを区別した上での説明を要しない限り、第1圧縮機22、第2圧縮機35を単に「圧縮機63」と総称することとする。
前記と同様に、図1等に示すように、第1空調系統41に属する第11~第15室内機23、25、27、29、31、及び、第2空調系統43に属する第21室内機37について、それぞれを区別した上での説明を要しない限り、第11~第15室内機23、25、27、29、31、第21室内機37を単に「室内機70」と総称することとする。
【0037】
〔空調制御装置11のハードウェア構成例〕
次に、空調制御装置11のハードウェア構成例について、図2図3を参照して説明する。
図2は、本発明の実施形態に係る空調制御装置11のハードウェア構成例を示すブロック図である。図3は、図2に示す空調制御装置11に備わるデータベース(DB)61に格納された空調機管理テーブルのデータ構造を概念的に表す説明図である。
【0038】
空調制御装置11は、図2に示すように、各種の演算処理を行うCPU91、不揮発性記憶媒体93、RAM等のメモリ95、通信部97、及びデータベース(DB)61を備えて構成されている。これら構成部材の各間はバスライン99を介してデータ交換可能に電子的に接続されている。通信部97は、前記通信媒体103に電子的に接続されている。
【0039】
DB61の空調機管理テーブルには、例えば図3に示すように、第11~第15室内機23、25、27、29、31の識別情報に対応付けて、これら室内機70がそれぞれ設置された各室毎の空調に関する運転状態(電源がオンかオフか?、運転モードがノーマルかエコか?、冷房か暖房か除湿か?、を含む)、設定温度、現在室温、室内機サーモ状態、省エネルギー(エコ)モードの禁則に係る保護状態を含む空調情報が記述されている。
ここで、省エネルギー(エコ)モードの禁則に係る保護状態とは、例えば、サーバー室やVIP室に設けられた室内機70において、保護状態をオンにすることによって、運転状態のノーマルモードから省エネルギー(エコ)モードへの遷移を禁止する運用を可能にするサービスである。
例えば、サーバー室やVIP室のような特別な配慮を要する特別室において、同室に設定された室内機70に係る空調情報として、保護状態をオンにする旨を設定する構成を採用すれば、特別室に見合った優れた空調環境を安定的に提供することができる。
空調機管理テーブルに記憶された空調情報は、複数の室内機70毎の制御指示を作成する際に参照される。
【0040】
空調制御装置11では、不揮発性記憶媒体93に予め記憶され、本発明に係る演算処理の内容を記述した制御プログラムをCPU91が実行することにより、前記した目標電力設定部51、消費電力取得部53、空調情報取得部55、制御指示作成部57、及び制御指示送信部59の各機能を実現するように動作する。
【0041】
〔空調制御装置11の動作手順〕
次に、空調制御装置11の動作手順について、図4を参照して説明する。
図4は、第1空調制御システム1-1に備わる空調機50を冷房運転する際の複数の各機能部での動作手順を概念的に表すシーケンス図である。
【0042】
目標電力設定部51は、例えば、ユーザ入力に従って、ビル空調システム13が設置されたビル全体の消費電力の上限値である上限電力(あるいは、上限電力量)を設定する。
上限電力は、次述のデマンド料金制度を考慮して、毎時0分~30分、30分~60分といった30分区間の平均電力の上限値である。ユーザは、電力料金の基本料金を低減するために、空調制御装置11が設置されないケースでの上限値と比べて目標電力を低値に設定する。上限電力は通常、年1回乃至数回頻度で変更される。
目標電力設定部51は上記30分区間の途中段階で、30分区間の終了時に消費電力が目標電力を上回らないように目標電力を算出する。目標電力設定部51で設定された目標電力は、逐次DB61に送られて、DB61の所定の記憶領域に保存される。
【0043】
ここで、前記の上限電力を設定するに際し、考慮すべき背景事情について説明する。
中小規模のビルの電力料金は、500kW未満の場合、デマンド料金制度が適用されることが多い。デマンド料金制度とは、毎時0分~30分、30分~60分といった30分区間の平均電力を計測し、30分平均電力値の月間最大値を基準に電力基本料金が定められ、それが12か月継続するという制度である。この制度に対応して、本発明の実施形態に係る空調制御装置11は、30分平均電力が目標を超えそうになるとアラームを鳴らしたり、メール通知したり、空調機50を制御したりすることで消費電力低減を図るデマンド制御機能を有する。
具体的には、空調制御装置11は、デマンド制御機能を発揮することにより、空調機50に係る室外機60に設けられている接点端子(不図示)を通じて、室外機60に備わる圧縮機63を止め、圧縮機63の上限出力を制限し、空調機50の動作モードを冷暖房運転から送風に切り替え、設定温度を節電方向に変化させるなどの遠隔操作を行う。
【0044】
なお、目標電力設定部51は、電力需給の均衡を狙った電力系統管理者や電力小売業者からのデマンド制御に係る電力削減要求に従って、目標電力を設定しても構わない。
このように構成すれば、消費電力を目標電力に収束させることで得られる本来の省エネルギー効果に加えて、電力需給の均衡促進といった社会的な要請に応える効果を奏することができる。
【0045】
消費電力取得部53は、スマートメータ15及び制御端末17を介して、ビル空調システム13に属する空調機50に係る現在の単位時間当たりの消費電力量である現在電力データを、例えば1分周期で取得する。消費電力取得部53により取得された現在電力データは、DB61に送られて、DB61の所定の記憶領域に保存される。
【0046】
空調情報取得部55は、複数の室内機70のそれぞれに関する運転状態、設定温度、現在室温、室内機サーモ状態、省エネルギーに係る保護状態を含む空調情報を、例えば1分周期で取得する。空調情報取得部55により取得された空調情報は、DB61に送られて、DB61の所定の記憶領域に保存される。
【0047】
制御指示作成部57は、制御対象となる室内機70のリスト(図1に示す例では、第11~第15室内機23、25、27、29、31のリスト:「室内機リスト」と呼ぶ場合がある。)、目標電力設定部51により設定された目標電力、消費電力取得部53により取得された現在の消費電力である現在電力、複数の室内機70毎の空調情報、変更直前の設定温度をDB61から読み出すと共に、当該読み出した各種情報に基づいて、複数の各室内機70毎の変更直前の設定温度及び制御指示を、例えば1分周期で作成する。
制御指示作成部57で作成された複数の各室内機70毎の変更直前の設定温度及び制御指示は、DB61に送られて、DB61の所定の記憶領域に保存される。
【0048】
制御指示送信部59は、制御指示作成部57で作成された複数の各室内機70毎の制御指示を、例えば1分周期でDB61から読み出すと共に、当該読み出した制御指示を、複数の各室内機70にそれぞれ送信する。
【0049】
〔空調機50の基本動作〕
次に、室内機70の基本動作について、第11室内機23を代表的に用いて説明する。
第11室内機23には、第11室内機23が設置された室の空調環境を設定操作するための室内リモコン(不図示)が設けられている。ユーザは、室内リモコンの操作ボタンを操作することにより、例えば、空調に関する運転状態(電源がオンかオフか?、冷房か暖房か除湿か?、を含む)、設定温度、風量や風向き等を設定することができる。
【0050】
第11室内機23は、温度センサ75(例えば図6参照)により検知した現在室温が設定温度に一致するように風量や冷媒流入量を調整する。
第11室内機23への冷媒流入量は、電磁弁24を用いて調整するか、第11室内機23が第1室外機21に対して冷媒流入量の増減要求を行うことで調整する。第1室外機21は、各室内機70からの冷媒流入量の増減要求を集計して、集計した冷媒流入量の増減要求を満たすように第1圧縮機22の回転速度を決定する。
【0051】
室内の冷暖房負荷が空調機50の容量に対して小さい場合、冷房運転時には冷えすぎ、暖房運転時には温めすぎの空調状態に陥りやすい。こうした場合には、第11室内機23への冷媒の流入を止めるサーモオフ温度を設定し、現在室温がサーモオフ温度に到達すると電磁弁24を閉じて冷媒の流入を止める。冷媒の流入が止められた第11室内機23では、冷房運転時には現在室温が上昇し、暖房運転時には現在室温が下降する。現在室温がサーモオン温度に達すると、電磁弁24を開いて冷媒の流入を再開する。電磁弁24が開かれている状態を、一般的には室内機サーモオン状態、電磁弁24が閉じられている状態を室内機サーモオフ状態と呼ぶ。
【0052】
第1室外機21に対して統合形式で接続された第11~第15室内機23、25、27、29、31のうち、1台のみがサーモオン状態の場合、その1台の室内機70の現在室温がサーモオフ温度に到達すると、第1室外機21は第1圧縮機22を停止する。その後、第11~第15室内機23、25、27、29、31のうちのいずれかの室内機70がサーモオン温度に達すると、第1室外機21は第1圧縮機22を再起動する。
【0053】
第2空調系統43のように、第2室外機33に接続される室内機70が第21室内機37単独の場合、第21室内機37に備わる個別冷媒配管37aに対し、第21室内機37への冷媒の流通量を制御するための電磁弁を設けることを省略してもよい。この場合、現在室温がサーモオフ温度に到達すると、第2室外機33が第2圧縮機35を停止させ、その後、現在室温がサーモオン温度に到達すると、第2圧縮機35を再起動させる。
【0054】
室内機70に係るサーモオン温度及びサーモオフ温度は、設定温度を元に室内機70が内部で計算して決定する。サーモオフ温度と設定温度間の差分、及びサーモオン温度と設定温度間の差分は、室内機70の設計値として予め決められている。
【0055】
〔第1空調制御装置11―1の動作〕
次に、第1実施例に係る第1空調制御装置11―1の動作について、図5Aを参照して説明する。
図5Aは、第1実施例に係る第1空調制御装置11―1の動作説明に供するフローチャート図である。
図5Aに示すフローは、第1空調制御装置11―1に属するCPU91(主として制御指示作成部57)によって、例えば1分周期で実行される。
【0056】
ステップS1において、空調制御装置11に備わるCPU91は、目標電力設定部51により設定された目標電力、及び消費電力取得部53により取得された現在電力データをDB61から読み出し、当該読み出した目標電力及び現在電力の電力差(目標電力-現在電力)Pdfを求める。次いで、CPU91は、前記電力差Pdfの符号が正か負かの判定を行う。
ステップS1の判定の結果、CPU91は、前記電力差Pdfの符号が正(ステップS1のYes)の場合、処理の流れを次のステップS2へ進ませる一方、前記電力差Pdfの符号が負(ステップS1のNo)の場合、処理の流れをステップS16へとジャンプさせる。
【0057】
ステップS2において、CPU91は、第1ビル空調システム13-1に属する第1空調系統(系統識別:1)41、第2空調系統(系統識別:2)43の系統識別を変数iに順次代入し、ステップS2~S14の反復処理を実行させる。
【0058】
ステップS3において、CPU91は、系統iに属する動作中(電源オン)の室内機数〔IDU_ON_num〕を取得する。
【0059】
ステップS4において、CPU91は、系統iに属し、設定温度が節電時設定温度ではない対象室内機70のリスト(対象室内機リスト)を取得する。
【0060】
ステップS5において、CPU91は、系統iに属する室内機70について、所定の条件〔(IDU_ON_num >= 2) かつ(対象室内機が存在?) 〕を満たすか否かの判定を行う。
ステップS5の判定の結果、CPU91は、所定の条件を満たす(ステップS5のYes:系統iに属する動作中の室内機数〔IDU_ON_num〕が2以上あり、かつ、ステップS4の対象室内機70が存在する)場合、処理の流れを次のステップS6へ進ませる一方、所定の条件を満たさない(ステップS5のNo:系統iに属する動作中の室内機数〔IDU_ON_num〕が2未満、及び/又は、ステップS4の対象室内機70が存在しない)場合、反復処理を終了させる。
【0061】
ステップS6において、CPU91は、ステップ4で取得した対象室内機リストに存する対象室内機70について、冷房運転時は各室内機70に係る温度差(現在室温-設定温度)、暖房運転時は各室内機70に係る温度差(設定温度-現在室温)を用いてソートする(掲載順序を降順に並び替える)。このソートによって、対象室内機リストに存する対象室内機70は、反快適性の高い順に整列する。
【0062】
ステップS8-1において、CPU91は、制御除外室内機台数〔e_c〕に1を代入する。これにより制御除外室内機台数e_c が初期設定される。
【0063】
ステップS9において、CPU91は、ステップS4で取得した対象室内機リストにある対象室内機70に付された室内機識別を変数jに順次代入し、S9~S13の反復処理を実行させる。
【0064】
ステップS10において、CPU91は、〔制御除外室内機台数e_cが1以上かつjで特定される室内機70がサーモオン状態〕か否かの判定を行う。
ステップS10の判定の結果、CPU91は、制御除外室内機台数e_cが1未満もしくはjで特定される室内機70がサーモオフ状態である(ステップS10のNo)場合、処理の流れを次のステップS11へ進ませる一方、制御除外室内機台数e_cが1以上かつjで特定される室内機70がサーモオン状態(ステップS10のYes)である場合、処理の流れをステップS15へジャンプさせる。
【0065】
ステップS11において、CPU91は、室内機j(室内機識別が変数jに該当する室内機)に係る変更直前の設定温度(非節電時設定温度)を記録する。
【0066】
ステップS12において、CPU91は、室内機jに係る設定温度を節電時設定温度(節電状態に係る設定温度)に変更する。
【0067】
ステップS13において、CPU91は、S9~S13の反復処理を継続するか否かの判定を行う。
ステップS13の判定の結果、CPU91は、ステップS4で取得した対象室内機リストにある全ての室内機70についての反復処理が終了していない場合、S9~S13の反復処理を継続させる一方、ステップS4で取得した対象室内機リストにある全ての室内機70についての反復処理が終了した場合、S9~S13の反復処理を終了させて、処理の流れを次のステップS14へ進ませる。
【0068】
ステップS14において、CPU91は、S2~S14の反復処理を継続するか否かの判定を行う。
ステップS13の判定の結果、CPU91は、第1ビル空調システム13-1に属する全ての空調系統についての反復処理が終了していない場合、S2~S14の反復処理を継続させる一方、第1ビル空調システム13-1に属する全ての空調系統についての反復処理が終了した場合、S2~S14の反復処理を終了させて、一連の制御指示機能の処理を終了させる。
【0069】
ステップS15(ステップS10において、制御除外室内機台数e_cが1以上かつjで特定される室内機70がサーモオン状態である旨の判定が下された場合)において、CPU91は、制御除外室内機台数e_cをデクリメント〔e_c=e_c-1〕して、処理の流れをステップS13に移行させる。
【0070】
ステップS16(ステップS1において、前記電力差Pdfの符号が負である旨の判定が下された場合)において、CPU91は、第1ビル空調システム13-1に属する第1空調系統(系統識別:1)41、第2空調系統(系統識別:2)43の系統識別を変数iに順次代入し、ステップS16~S22の反復処理を実行させる。
【0071】
ステップS17において、CPU91は、系統iに属する室内機70のリスト(室内機リスト)を取得する。
【0072】
ステップS18において、CPU91は、ステップS17で取得した室内機70のリストにある室内機識別を変数jに順次代入し、S18~S21の反復処理を実行させる。
【0073】
ステップS19において、CPU91は、室内機j(室内機識別が変数jに該当する室内機)に係る設定温度が節電時設定温度(節電状態に係る設定温度)か否かの判定を行う。
ステップS19の判定の結果、CPU91は、室内機jに係る設定温度が節電時設定温度と一致する(ステップS19のYes)場合、処理の流れを次のステップS20へ進ませる一方、室内機jに係る設定温度が節電時設定温度とは一致しない(ステップS19のNo)場合、処理の流れをステップS21へジャンプさせる。
【0074】
ステップS20において、CPU91は、室内機jに係る設定温度を変更直前の設定温度(非節電時設定温度)に戻す。
【0075】
ステップS21において、CPU91は、S18~S21の反復処理を継続するか否かの判定を行う。
ステップS21の判定の結果、CPU91は、ステップS17で取得した室内機リストにある全ての室内機70についての反復処理が終了していない場合、S18~S21の反復処理を継続させる一方、ステップS17で取得した室内機リストにある全ての室内機70についての反復処理が終了した場合、S18~S21の反復処理を終了させて、処理の流れを次のステップS22へ進ませる。
【0076】
ステップS22において、CPU91は、S16~S22の反復処理を継続するか否かの判定を行う。
ステップS22の判定の結果、CPU91は、第1ビル空調システム13-1に属する全ての空調系統についての反復処理が終了していない場合、S16~S22の反復処理を継続させる一方、第1ビル空調システム13-1に属する全ての空調系統についての反復処理が終了した場合、S16~S22の反復処理を終了させて、一連の制御指示機能の処理を終了させる。
【0077】
〔第1空調制御システム13―1に備わる空調機50の連携動作〕
次に、第1実施例に係る第1空調制御システム13―1に備わる空調機50の連携動作について、図5Bを参照して説明する。
図5Bは、第1実施例に係る第1空調制御システム13―1に備わる空調機50(冷房運転時)の連携動作の説明に供するタイムチャート図である。
【0078】
図5Bに示すタイムチャート図では、図5Aに示すステップS1において、目標電力及び現在電力(ビル消費電力)の電力差(目標電力-現在電力)Pdfが正(目標電力と比べて現在電力が小さい場合)から負(目標電力と比べて現在電力が大きい場合)に変化した時刻t1前後の、第11~第15室内機23、25、27、29、31のそれぞれの現在室温、設定温度、室内機サーモ状態の時間推移,並びに、第1室外機21の室外機サーモ状態及び空調機消費電力の時間推移を表している。
【0079】
各室内機70の現在室温が右肩下がりの状態ではサーモ状態は室内機サーモオン、現在室温が右肩上がりの状態ではサーモ状態は室内機サーモオフになる。
図5Bにおいて、目標電力及び現在電力の電力差(目標電力-現在電力)Pdfが正から負に変化した時刻t1時点で、室内機サーモオン状態である室内機70は、第11室内機23、第13室内機27、第15室内機31の3台である。ちなみに、第15室内機31において、時刻t1は、室内機サーモ状態が室内機サーモオフから室内機サーモオンに遷移した直後のタイミングである。
【0080】
このとき、この3台のうち設定温度及び現在室温間の差分(現在室温-設定温度)が反快適側に最も傾いているのは第15室内機31である。このため、第15室内機31を、設定温度を節電時設定温度(節電状態に係る設定温度)に変更する対象室内機の例外として設定(図5Aに示すステップS15参照)し、残り4台の室内機23、25、27、29の設定温度を、前記節電時設定温度に変更(図5Aに示すステップS12、及び図5B参照)する。
【0081】
これにより、4台の室内機23、25、27、29が室内機サーモオフとなり、第1室外機21の空調負荷が減るので消費電力は低減するが、1台の室内機(第15室内機31)が室内機サーモオン状態を維持するので、第1室外機21のサーモ状態が室外機サーモオフ状態に遷移することはない。
【0082】
ここで注目すべきは、室内機サーモオン状態を維持する室内機70(第15室内機31)は、室内機サーモオン状態の室内機のうち、反快適性が最も高い室、換言すれば、快適性が最も低い室に設置された室内機70である点である。このように構成すれば、快適性が最も低い室の空調環境を改善する効果と、省エネルギーに貢献する効果とを両立することができる。
またこれと同時に、室内機サーモオン状態を維持する室内機70(第15室内機31)は、室内機サーモオン状態の室内機のうち、この後室内機サーモオン状態の時間が最も長く継続すると見込まれ、設定温度を変更した室内機70のいずれかが次に室内機サーモオン状態になるまで、室内機サーモオン状態を維持できる可能性が最も高いという点にも注目すべきである。このように構成すれば、省エネルギーに貢献する効果をより確実に実行することができる。
なお、第1実施例の動作説明では、空調機50が冷房運転中の場合を例示したが、暖房運転時でも冷房運転時に準じた制御を行うことにより、前記と同様の効果を得ることができる。
【0083】
その後、時刻t2において、第15室内機の室温はサーモオフ温度に到達し、室内機サーモオフ状態に変更される。時刻t3において、第1空調制御システム13-1は、第15室内機の設定温度を節電時設定温度に変更する。第15室内機が室内機サーモオフになったため、室外機サーモオフを防止するという役割を果たさなくなったためである。こうすることで、第15室内機ではこの後、長時間に渡って室内機サーモオフが続くため、省エネルギーに貢献する効果が大きくなる。
【0084】
第1実施例に係る第1空調制御装置11-1、及び第1空調制御システム1-1によれば、統合形式の空調機50において、設定温度を節電方向に変更する場合であっても、快適性が低い室の空調環境を改善しながら、省エネルギーに貢献することができる。
【0085】
〔第2実施例に係る第2空調制御システム1-2の概略構成〕
次に、第2実施例に係る第2空調制御システム1-2の概略構成について、図6を参照して説明する。
図6は、第2実施例に係る第2空調制御システム1-2の概要を機能的に表す概略構成図である。
【0086】
第1実施例に係る第1空調制御システム1-1と、第2実施例に係る第2空調制御システム1-2とは、基本的な構成が共通している。そこで、前記両者間の相違点に注目して説明することで、第2実施例に係る第2空調制御システム1-2の説明に代えることとする。
【0087】
第1実施例では、第1空調制御装置11―1は、第1ビル空調システム13-1とは異なる場所に設けられるのに対し、第2実施例では、第2空調制御装置11―2は、第2ビル空調システム13-2と同じビル内に設けられている。この相違点に由来して、第1ビル空調システム13-1に設けられていた制御端末17と共通の機能を果たす制御端末機能部54が、第2空調制御装置11―2に設けられている。
【0088】
また、第1実施例では、複数の各室内機70の現在室温は、空気吸込み口に設けた温度センサ75により検出しているのに対し、第2実施例では、室内リモコンに設けた温度センサ23b、25b、27b、29b、31b(図6参照)によって、各室の現在室温を検出している。
なお、第2空調制御装置11―2のハードウェア構成は、第1空調制御装置11―1と同じである。
【0089】
〔第2空調制御装置11―2の動作〕
次に、第2実施例に係る第2空調制御装置11―2の動作について、図7Aを参照して説明する。
図7Aは、第2実施例に係る第2空調制御装置11―2の動作説明に供するフローチャート図である。
図7Aに示すフローは、第2空調制御装置11―2に属するCPU91(主として制御指示作成部57)によって、例えば1分周期で実行される。
【0090】
第1実施例に係る第1空調制御装置11-1と、第2実施例に係る第2空調制御装置11―2とは、基本的な動作が共通している。そこで、前記両者間の相違点に注目して説明することで、第2実施例に係る第2空調制御装置11―2の動作説明に代えることとする。
【0091】
第1実施例では、ステップS8-1において、CPU91は、制御除外室内機台数〔e_c〕に1を代入するのに対し、第2実施例では、ステップS8-2において、CPU91は、制御除外室内機台数〔e_c〕に1-〔節電時設定温度かつサーモオン状態の室内機台数〕を代入する手順を採用している。
これにより、設定温度を節電時設定温度に変更するか否かを判定する際、第1実施例では、1台を除外するのに対し、第2実施例では、既に節電時設定温度に変更された室内機70が存在し、そのいずれかが室内機サーモオン状態である場合には、まだ節電時設定温度に変更されていない室内機70が節電時設定温度に変更する際の除外が解除されて節電時設定温度に変更することができるようになる。
そのため、第2実施例では、第1実施例と比べてより素早く全ての室内機70を節電時温度設定に変更できる効果を期待することができる。
【0092】
〔第2空調制御システム13―2に備わる空調機50の連携動作〕
次に、第2実施例に係る第2空調制御システム13―2に備わる空調機50の連携動作について、図7Bを参照して説明する。
図7Bは、第2実施例に係る第2空調制御システム13―2に備わる空調機50(冷房運転時)の連携動作の説明に供するタイムチャート図である。
【0093】
第1実施例と第2実施例との相違点は、第1実施例では、設定温度を節電時設定温度に変更する際の室内機70の対象範囲から(例外として)除外されていた制御除外室内機(第15室内機31)に関し、第2実施例では、設定温度が節電時設定温度に変更済の4台の室内機23、25、27、29のうち1台の室内機(第12室内機25)が室内機サーモオン状態に遷移した時刻t4のタイミングをトリガとして、時刻t4に対して少し遅れた時刻t5のタイミングをもって、前記除外されていた室内機(第15室内機31)の設定温度を節電時設定温度に変更している。
第2実施例によれば、第1実施例と比べて、素早く全ての室内機70を節電時温度設定に変更するため、より一層の節電効果を期待することができる。
また、第2実施例によれば、複数の室内機70の各々に対し、設定温度を節電時設定温度に変更する機会を均等に付与する効果を副次的に得ることができる。
【0094】
〔第3実施例に係る第3空調制御システム1-3の概略構成〕
次に、第3実施例に係る第3空調制御システム1-3の概略構成について、図8を参照して説明する。
図8は、第3実施例に係る第3空調制御システム1-3の概要を機能的に表す概略構成図である。
【0095】
第1実施例に係る第1空調制御システム1-1と、第3実施例に係る第3空調制御システム1-3とは、基本的な構成が共通している。そこで、前記両者間の相違点に注目して説明することで、第3実施例に係る第3空調制御システム1-3の説明に代えることとする。
【0096】
第1実施例では、第1空調制御装置11―1は、例えばユーザによって適宜設定される電力量を、目標電力設定部51に係る目標電力として採用するのに対し、第3実施例では、第3空調制御装置11―3に接続されるアグリゲーションコーディネータシステム(本発明の「上位システム」に相当する。)19から通信媒体101を介して送られてくるデマンド制御に基づく目標電力を、目標電力設定部51に係る目標電力として採用する点が相違している。
【0097】
なお、第3空調制御装置11―3のハードウェア構成は、第1空調制御装置11―1と同じである。
【0098】
〔第3空調制御装置11―3の動作〕
次に、第3実施例に係る第3空調制御装置11―3の動作について、図9Aを参照して説明する。
図9Aは、第3実施例に係る第3空調制御装置11―3の動作説明に供するフローチャート図である。
図9Aに示すフローは、第3空調制御装置11―3に属するCPU91(主として制御指示作成部57)によって、例えば1分周期で実行される。
【0099】
第2実施例に係る第2空調制御装置11-2と、第3実施例に係る第3空調制御装置11―3とは、基本的な動作が共通している。そこで、前記両者間の相違点に注目して説明することで、第3実施例に係る第3空調制御装置11―3の動作説明に代えることとする。
【0100】
第2実施例では、ステップS8-1において、CPU91は、制御除外室内機台数〔e_c〕に1-〔節電時設定温度かつサーモオン状態の室内機台数〕を代入する演算を行う手順を採用しているのに対し、第3実施例では、ステップS8-3において、CPU91は、制御除外室内機台数〔e_c〕に2-〔節電時設定温度かつサーモオン状態の室内機台数〕を代入する演算を行う手順を採用している。
これにより、設定温度を節電時設定温度に変更しない制御除外室内機台数e_cに関し、〔節電時設定温度かつサーモオン状態の室内機台数〕が存在しない場合には第2実施例では、制御除外室内機台数e_cを1台に設定していたのに対し、第3実施例では、制御除外室内機台数e_cを2台に設定している。
そのため、第3実施例によれば、第2実施例と比べて、室外機60が室外機サーモオフ状態に陥る事態をより一層抑制する効果を期待することができる。
【0101】
〔第3空調制御システム13―3に備わる空調機50の連携動作〕
次に、第3実施例に係る第3空調制御システム13―3に備わる空調機50の連携動作について、図9Bを参照して説明する。
図9Bは、第3実施例に係る第3空調制御システム13―3に備わる空調機50(冷房運転時)の連携動作の説明に供するタイムチャート図である。
【0102】
第2実施例と第3実施例との相違点は下記の通りである。
すなわち、第2実施例では、目標電力及び現在電力の電力差(目標電力-現在電力)Pdfが正から負に変化した時刻t1時点で、室内機サーモオン状態である室内機70は、第11室内機23、第13室内機27、第15室内機31の3台である。ちなみに、第15室内機31において、時刻t1は、室内機サーモ状態が室内機サーモオフから室内機サーモオンに遷移した直後のタイミングである。
このとき、この3台のうち設定温度及び現在室温間の差分(現在室温-設定温度)が反快適側に最も傾いているのは第15室内機31である。このため、第2実施例では、第15室内機31を例外として設定(図7Aに示すステップS15参照)し、残り4台の室内機23、25、27、29の設定温度を、前記節電時設定温度に変更(図7Aに示すステップS12、及び図7B参照)している。
【0103】
これに対し、第3実施例では、前記3台のうち、設定温度及び現在室温間の差分(現在室温-設定温度)が反快適側に最も傾いている第15室内機31に加えて、次点で設定温度及び現在室温間の差分(現在室温-設定温度)が反快適側に傾いている第11室内機23を例外として設定(図9Aに示すステップS15参照)し、残り3台の室内機25、27、29の設定温度を、前記節電時設定温度に変更(図9Aに示すステップS12、及び図9B参照)する。
【0104】
これにより、3台の室内機25、27、29が室内機サーモオフとなり、第1室外機21の空調負荷が減るので消費電力は低減するが、2台の室内機(第11室内機23及び第15室内機31)が室内機サーモオン状態を維持するので、第1室外機21が室外機サーモオフ状態に遷移するリスクを一層低減することができる。
【0105】
第3実施例では、第2実施例と比べて、目標電力及び現在電力の電力差(目標電力-現在電力)Pdfが正から負に変化した時刻t1時点において、室内機サーモオン状態を維持する室内機(第11室内機23及び第15室内機31)が1台から2台に増えるため、仮に、この2台のうちいずれかが想定外に早く室内機サーモオフ状態になった場合でも、もう1台が室内機サーモオン状態を維持する。
【0106】
従って、第3実施例によれば、第2実施例と比べて、第1室外機21が室外機サーモオフ状態に遷移するリスクを一層低減することができる。その結果、第1室外機21が室外機サーモオフ状態に遷移した後、室外機サーモオン状態に遷移させる際に生じる消費電力の増大(図12に示す比較例参照)を未然に抑止する効果を期待することができる。
【0107】
さらに、第2実施例では、設定温度を節電時設定温度に変更する際の室内機70の対象範囲から(例外として)除外されていた制御除外室内機(第15室内機31)に関し、設定温度が節電時設定温度に変更済の4台の室内機23、25、27、29のうち1台の室内機(第12室内機25)が室内機サーモオン状態に遷移した時刻t2のタイミングをトリガとして、時刻t2に対して少し遅れた時刻t3のタイミングをもって、前記除外されていた室内機(第15室内機31)の設定温度を節電時設定温度に変更している。
【0108】
これに対し、第3実施例では、制御除外室内機(第11室内機23及び第15室内機31)に関し、設定温度が節電時設定温度に変更済の4台の室内機23、25、27、29のうち1台の室内機(第12室内機25)が室内機サーモオン状態に遷移した時刻t6のタイミングをトリガとして、時刻t6に対して少し遅れた時刻t7のタイミングをもって、前記除外されていた室内機(第15室内機31)の設定温度を節電時設定温度に変更している。
第3実施例によれば、第2実施例と比べて、設定温度が節電時設定温度に変更される室内機70の台数を素早く増加させることができる。また、複数の室内機70の各々に対し、設定温度を節電時設定温度に変更する機会を均等に付与する効果を一層高めることができる。
【0109】
〔第4実施例に係る第4空調制御システム1-4の概略構成〕
次に、第4実施例に係る第4空調制御システム1-4の概略構成について、図10を参照して説明する。
図10は、第4実施例に係る第4空調制御システム1-4の概要を機能的に表す概略構成図である。
【0110】
第1実施例に係る第1空調制御システム1-1と、第4実施例に係る第4空調制御システム1-4とは、基本的な構成が共通している。そこで、前記両者間の相違点に注目して説明することで、第4実施例に係る第4空調制御システム1-4の説明に代えることとする。
【0111】
第4実施例に係る第1空調制御装置11―4は、第1実施例に係る第1空調制御装置11―1の構成(目標電力設定部51、消費電力取得部53、空調情報取得部55、制御指示作成部57、及び制御指示送信部59)と比べて、時間変化率記録部56を追加した点が相違している。
時間変化率記録部56は、室内機70のそれぞれが室内機サーモオン状態から室内機サーモオフに遷移する際の室内機70に係る現在室温の時間変化率を記録する機能を有する。時間変化率記録部56により記録された時間変化率データは、ある室内機70について、サーモ状態が室内機サーモオン状態から室内機サーモオフに遷移するタイミングを予測する際に参照される。
【0112】
また、第1実施例では、複数の各室内機70の現在室温は、空気吸込み口に設けた温度センサ75により検出しているのに対し、第4実施例では、温度センサ75に追加して、第4ビル空調システム13―4の屋外に設けた外気温度センサ76によって、屋外の雰囲気温度を検出している。
【0113】
第4実施例に係る第1空調制御装置11―4では、CPU91は、時間変化率記録部56によって記録された、室内機70のそれぞれが室内機サーモオン状態から室内機サーモオフに遷移する際の室内機70に係る現在室温の時間変化率と、外気温度センサ76による屋外の雰囲気温度とに基づいて、例えば数時間分の現在室温に係る時間変化率を表す傾きデータと、屋外雰囲気温度との相関をとることにより、ある室内機(図11Cに示す例では第15室内機31)70について、室内機サーモオン状態から室内機サーモオフに遷移するタイミングを予測する。
なお、第4空調制御装置11―4のハードウェア構成は、第1空調制御装置11―1と実質的に同じである。
【0114】
〔第4空調制御装置11―4の動作〕
次に、第4実施例に係る第4空調制御装置11―4の動作について、図11A及び図11Bを参照して説明する。
図11A及び図11Bは、第4実施例に係る第4空調制御装置11―4の動作説明に供するフローチャート図である。
図11A及び図11Bに示すフローは、第4空調制御装置11―4に属するCPU91(主として制御指示作成部57)によって、例えば1分周期で実行される。
【0115】
第2実施例に係る第2空調制御装置11-2と、第4実施例に係る第4空調制御装置11―4とは、基本的な動作が共通している。そこで、前記両者間の相違点に注目して説明することで、第4実施例に係る第4空調制御装置11―4の動作説明に代えることとする。
【0116】
第2実施例では、ステップS8-2において、CPU91は、制御除外室内機台数〔e_c〕に1-〔節電時設定温度かつサーモオン状態の室内機台数〕を代入する演算を行う手順を採用しているのに対し、第4実施例では、ステップS8-4(図11A参照)において、CPU91は、制御除外室内機台数〔e_c=1〕の演算を行う手順を採用している。
これにより、設定温度を節電時設定温度に変更しない制御除外室内機台数e_cに関し、第2実施例では、制御除外室内機台数e_cを1台もしくは0台(節電時設定温度かつサーモオン状態の室内機台数が存在しない場合)に設定していたのに対し、第4実施例では、制御除外室内機台数e_cを1台に設定している。
【0117】
さらに、第4実施例では、第2実施例のステップS8-2の直前(ステップS8-4の直前)に、ステップS7及びステップS23の処理を挿入している。
図11Aに示すステップS7において、CPU91は、系統iに属し、かつ、室内機サーモオン状態の室内機台数を室内機サーモオン台数ThOn_numに代入する。
ステップS23において、CPU91は、室内機サーモオン台数ThOn_numが1であるか否かの判定を行う。
ステップS23の判定の結果、CPU91は、室内機サーモオン台数ThOn_numが1と等しくない(ステップS23のNo)場合、処理の流れを前記したステップS8-4へ進ませる一方、対象室内機の台数が1台(ステップS23のYes)の場合、処理の流れを次のステップS24(図11B参照)へ進ませる。
【0118】
図11Bに示すステップS24において、CPU91は、対象室内機リストに挙げられている1台の対象室内機70に係る室内機識別を取得する。
【0119】
ステップS25において、CPU91は、室内機識別が付された対象室内機70の所定時間t_fx(例えば2分等の時間長)に渡る温度変化に基づき次回サーモオフ状態に遷移するのに要すると予測される遷移予測時間t_thを算出する。ここで、前記遷移予測時間t_thが本発明の「猶予時間長」に、前記所定時間t_fxが本発明の「所定の時間閾値」に、それぞれ相当する。
【0120】
ステップS26において、CPU91は、ステップS25で算出された遷移予測時間t_thが前記所定時間t_fx以下か否かの判定を行う。
ステップS26の判定の結果、CPU91は、遷移予測時間t_thが前記所定時間t_fx以下(ステップS26のYes)の場合、処理の流れを次のステップS27へ進ませる一方、遷移予測時間t_thが前記所定時間t_fxを超える(ステップS26のNo)場合、つまり、サーモオン状態の対象室内機70がサーモオフ状態に遷移する迄ある程度の猶予があると予測される場合、処理の流れをステップS14へ戻す。
【0121】
ステップS27において、CPU91は、系統iに属し、室内機サーモオン状態、かつ設定温度が節電時設定温度である対象室内機70のリスト(対象室内機リスト)を取得する。
【0122】
ステップS28において、CPU91は、ステップS27で取得した対象室内機リストの中から、冷房運転時は各室内機70に係る温度差(現在室温-設定温度)、暖房運転時は各室内機70に係る温度差(設定温度-現在室温)が最大となる、つまり、現時点での空調環境が最も劣る室に設置された室内機70に付されている室内機識別を取得する。
【0123】
ステップS29において、CPU91は、ステップS28で取得した室内機識別が付されている室内機70に係る設定温度を変更直前の設定温度(非節電時設定温度)に戻す。その後、CPU91は、処理の流れをステップS14へ戻す。
【0124】
〔第4空調制御システム13―4に備わる空調機50の連携動作〕
次に、第4実施例に係る第4空調制御システム13―4に備わる空調機50の連携動作について、図11Cを参照して説明する。
図11Cは、第4実施例に係る第4空調制御システム13―4に備わる空調機50(冷房運転時)の連携動作の説明に供するタイムチャート図である。
【0125】
第4実施例では、設定温度を節電時設定温度に変更する際の室内機70の対象範囲から(例外として)除外されている制御除外室内機(第15室内機31:図11C参照)に関し、時間変化率記録部56によって記録された、室内機70のそれぞれが室内機サーモオン状態から室内機サーモオフに遷移する際の室内機70に係る現在室温の時間変化率に基づいて、この室内機(第15室内機31)のサーモ状態が室内機サーモオン状態から室内機サーモオフに遷移するタイミングを予測し、この予測結果(図11Cの例では、予測遷移時刻t10)に基づいて、設定温度が節電時設定温度に変更済の4台の室内機23、25、27、29のうち最も空調環境の劣る1台の室内機(第12室内機25)の設定温度を、予測遷移時刻t8のタイミングをもって、変更直前の既定時設定温度(非節電時設定温度)に戻している。これにより、第12室内機25は室内機サーモオフ状態から室内機サーモオン状態に遷移する。
【0126】
第4実施例によれば、統合形式の空調機50において、設定温度を節電方向に変更する場合であっても、現時点で劣後に相当する室の空調環境を改善しながら省エネルギーに貢献する第1実施例の効果、並びに、より一層の節電効果を得ると共に、複数の室内機70の各々に対し、設定温度を節電時設定温度に変更する機会を均等に付与する第2実施例の効果に加えて、統合形式の空調機50において、複数の室内機70毎の設定温度に係るスケジュール管理を適時かつ適切に遂行する効果を期待することができる。
その結果、第1室外機21が室外機サーモオフ状態に遷移(図12に示す比較例に係る時刻t1-t11で区画された室外機サーモオフ区間を参照)した後、室外機サーモオン状態に遷移(図12の時刻t11参照)させる際に生じる消費電力の増大を未然に抑止することができる。
【0127】
なお、本発明に係る空調制御システム1として、図1に示すように、空調制御装置11と、統合形式の空調機50が設けられるビル空調システム13と、を備え、これらの間は、通信媒体103を介して電子的に接続されており、複数の室内機70の各々は、当該室内機70に係る空調情報を空調制御装置11宛に通知し、空調制御装置11は、前記例外に非該当である対象室内機から通知された空調情報のうち、当該室内機に係る設定温度に基づいて、節電状態に係る設定温度の変更値(節電時設定温度)を算出し、当該算出した設定温度の変更値を当該室内機に通知する構成を採用しても構わない。
このように構成すれば、快適性が低い室の空調環境を改善しながら、省エネルギーに貢献可能な空調制御システム1を得るためのより具体的な構成を提示することができる。
【0128】
なお、本発明に係る空調制御方法として、複数の室内機70のそれぞれに関する運転状態、室内機サーモ状態、設定温度、現在室温を含む空調情報を取得するステップと、空調機50に係る運転状態を切替える際、室内機70に係る設定温度の調整を行うと共に、該調整後の設定温度を含む制御指示を作成するステップと、前記作成された前記制御指示を室内機70に送信するステップと、を有し、前記制御指示を作成するステップでは、前記空調機50に係る運転状態を既定状態から節電状態に切替える際に、室内機サーモ状態が室内機サーモオン状態である室内機70のうち、設定温度及び現在室温間の差分が反快適側に傾いている方から数えて少なくとも1以上の所定の数の室内機70を例外とし、この例外に非該当である室内機に係る設定温度を、節電時設定温度に変更する調整を行う構成を採用しても構わない。
このように構成すれば、快適性が低い室の空調環境を改善しながら、省エネルギーに貢献可能な空調制御方法を得るための具体的な手順を提示することができる。
【0129】
〔その他の実施形態〕
以上説明した複数の実施形態は、本発明の具現化の例を示したものである。したがって、これらによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されることがあってはならない。本発明はその要旨又はその主要な特徴から逸脱することなく、様々な形態で実施することができるからである。
【0130】
また、ここで説明した実施形態の構成の一部を他の実施形態の構成に置き換えることができ、また、ある実施形態の構成に他の実施形態の構成を加えることも可能である。さらに、各実施形態の構成の一部について、他の構成の追加、削除、置換をすることも可能である。
【0131】
例えば、本発明の実施形態に係る空調制御装置11が適用される統合形式の空調機50を備えるビル空調システム13としては、図1に示すように、第1空調系統41及び第2空調系統43の2系統の空調系統を備え、第1空調系統41に係る統合形式の第1空調機81では、1台の第1室外機21に対して5台の第11~第15室内機23、25、27、29、31を組み合わせる一方、第2空調系統43に係る第2空調機83では、1台の第2室外機33に対して1台の第21室内機37を組み合わせる形態を例示して説明したが、本発明はこの例に限定されない。
【0132】
ひとつの空調系統(空調機50)に属する室外機60及び室内機70のそれぞれの数は任意であり、例えば、2台の室外機60に対して5台の室内機70を組み合わせるなど、適宜の組み合わせ数を採用しても構わない。また、ひとつのビル空調システム13に属する空調系統の数も前記と同様に任意であり、適宜の数だけ設定しても構わないことは言うまでもない。
【符号の説明】
【0133】
1 空調制御システム
11 空調制御装置
13 ビル空調システム
15 スマートメータ
17 制御端末
19 アグリゲーションコーディネータシステム(上位システム)
23a、25a、27a、29a、31a 個別冷媒配管
45 共用冷媒配管
50 空調機
51 目標電力設定部
53 消費電力取得部
54 制御端末機能部
55 空調情報取得部
56 時間変化率記録部
57 制御指示作成部
59 制御指示送信部
60 室外機(空調機)
61 データベース
63 圧縮機
70 室内機(空調機)
75 温度センサ
76 外気温度センサ
91 CPU
103、105、107 通信媒体
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図6
図7A
図7B
図8
図9A
図9B
図10
図11A
図11B
図11C
図12