(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024178841
(43)【公開日】2024-12-25
(54)【発明の名称】電磁流量計
(51)【国際特許分類】
G01F 1/58 20060101AFI20241218BHJP
【FI】
G01F1/58 N
【審査請求】未請求
【請求項の数】18
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023097297
(22)【出願日】2023-06-13
(71)【出願人】
【識別番号】000006507
【氏名又は名称】横河電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100169823
【弁理士】
【氏名又は名称】吉澤 雄郎
(74)【代理人】
【識別番号】100176728
【弁理士】
【氏名又は名称】北村 慎吾
(72)【発明者】
【氏名】林 悠一
(72)【発明者】
【氏名】岡本 和年
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 雄大
【テーマコード(参考)】
2F035
【Fターム(参考)】
2F035BE02
(57)【要約】
【課題】シンプルな構造で、非満水状態などの配管の内部の状態を判定する。
【解決手段】配管11を流れる流体14の流量を測定する電磁流量計10が、配管11の内側に重力方向に沿って超音波を送信するとともに、反重力方向に進行する超音波を受信する第1超音波センサ18Aと、第1超音波センサ18Aから重力方向に離間して第1超音波センサ18Aと対向し、配管11の内側に反重力方向に沿って超音波を送信するとともに、重力方向に進行する超音波を受信する第2超音波センサ18Bと、第1超音波センサ18A及び第2超音波センサ18Bの超音波受信波形に基づき、配管11の内部の状態を判定する演算器17とを備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
配管を流れる流体の流量を測定する電磁流量計であって、
前記配管の内側に重力方向に沿って超音波を送信するとともに、反重力方向に進行する超音波を受信する第1超音波センサと、
前記第1超音波センサから重力方向に離間して前記第1超音波センサと対向し、前記配管の内側に反重力方向に沿って超音波を送信するとともに、重力方向に進行する超音波を受信する第2超音波センサと、
前記第1超音波センサ及び前記第2超音波センサの超音波受信波形に基づき、前記配管の内部の状態を判定する演算器と
を備える電磁流量計。
【請求項2】
前記演算器は、前記配管の内部の状態として、前記配管の内部が前記流体で満たされているかどうかを判定する請求項1に記載の電磁流量計。
【請求項3】
前記演算器は、前記配管の内部が前記流体で満たされていないと判定すると、アラームを出力する請求項2に記載の電磁流量計。
【請求項4】
前記演算器は、前記第1超音波センサの超音波受信波形に、前記第2超音波センサから送信された超音波の受信波形が含まれ、前記第2超音波センサの超音波受信波形に、前記第1超音波センサから送信された超音波の受信波形が含まれる場合に、前記配管の内部が前記流体で満たされていると判定する請求項2に記載の電磁流量計。
【請求項5】
前記演算器は、複数時点での前記第2超音波センサの超音波受信波形に含まれる、前記第2超音波センサから送信された超音波が前記流体に進入してから界面で反射して生じた反射波の受信波形の時間差を検知することで、前記配管の内部が前記流体で満たされていない非満状態を検知する請求項2に記載の電磁流量計。
【請求項6】
前記演算器は、前記非満状態を検知すると、前記第2超音波センサからの超音波の送信と前記反射波の受信との時間差から前記流体の液位を算出し、前記流体の液位の算出結果を前記流体の流量の測定結果に反映する請求項5に記載の電磁流量計。
【請求項7】
前記演算器は、前記配管の内部の状態として、前記配管の底部に堆積物が溜まっているかどうかを判定する請求項1に記載の電磁流量計。
【請求項8】
前記演算器は、前記配管の底部に前記堆積物が溜まっていると判定すると、アラームを出力する請求項7に記載の電磁流量計。
【請求項9】
前記演算器は、複数時点での前記第1超音波センサの超音波受信波形に含まれる、前記第1超音波センサから送信された超音波が前記流体に進入してから界面で反射して生じた反射波の受信波形の時間差を検知することで、前記配管の底部に前記堆積物が溜まっている溜状態を検知する請求項7に記載の電磁流量計。
【請求項10】
前記演算器は、前記溜状態を検知すると、前記第1超音波センサからの超音波の送信と前記反射波の受信との時間差から前記堆積物の高さを算出し、前記堆積物の高さの算出結果を前記流体の流量の測定結果に反映する請求項9に記載の電磁流量計。
【請求項11】
前記演算器は、第1時点での前記第1超音波センサの超音波受信波形を、前記配管の内部が前記流体で満たされている第2時点での前記第1超音波センサの超音波受信波形と比較するとともに、前記第1時点での前記第2超音波センサの超音波受信波形を、前記第2時点での前記第2超音波センサの超音波受信波形と比較することで、前記配管の内部が前記流体で満たされていない非満状態と、前記配管の底部に堆積物が溜まっている溜状態とが同時に発生しているかどうかを判定する請求項1に記載の電磁流量計。
【請求項12】
前記演算器は、複数時点での前記第1超音波センサ又は前記第2超音波センサの超音波受信波形に含まれる、前記第1超音波センサ又は前記第2超音波センサから送信された超音波が前記配管の内周面に施されたライニングに進入してから前記ライニングと前記流体との境界面で反射して生じた反射波の受信波形の時間差を検知することで、前記ライニングの厚さの変化を検知する請求項1に記載の電磁流量計。
【請求項13】
前記演算器は、前記ライニングの厚さが閾値以下であると判定すると、アラームを出力する請求項12に記載の電磁流量計。
【請求項14】
前記第1超音波センサ及び前記第2超音波センサが取り付けられたアースリングを更に備える請求項1に記載の電磁流量計。
【請求項15】
前記第1超音波センサ及び前記第2超音波センサは、前記配管の外周面に取り付けられる請求項1に記載の電磁流量計。
【請求項16】
前記第1超音波センサ及び前記第2超音波センサは、前記配管の内周面に施されたライニングの外周面に取り付けられ、前記配管を貫通する請求項1に記載の電磁流量計。
【請求項17】
前記第1超音波センサ及び前記第2超音波センサは、前記配管に取り付けられ、前記配管と前記配管の内周面に施されたライニングとを貫通する請求項1に記載の電磁流量計。
【請求項18】
前記配管に取り付けられ、前記配管の内周面に施されたライニングの内周面の一部を覆い、前記配管の内部の50%未満しか前記流体で満たされていない状態でも前記流体に接触する位置まで延びている1対の電極を更に備える請求項1に記載の電磁流量計。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電磁流量計に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1から特許文献3には、電磁流量計が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開昭61-140918号公報
【特許文献2】実開平03-017519号公報
【特許文献3】特開2006-023181号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1及び特許文献2に開示されている電磁流量計では、非満水状態の流量を測定することができない。特許文献3に開示されている流量計は、従来のフリューム構造と電磁流量計とを組み合わせた構造のため、構造が複雑となり、コストが高くなる。
【0005】
本開示の目的は、シンプルな構造で、非満水状態などの配管の内部の状態を判定することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
幾つかの実施形態に係る電磁流量計について以下に記載する。
【0007】
[1]
配管を流れる流体の流量を測定する電磁流量計であって、
前記配管の内側に重力方向に沿って超音波を送信するとともに、反重力方向に進行する超音波を受信する第1超音波センサと、
前記第1超音波センサから重力方向に離間して前記第1超音波センサと対向し、前記配管の内側に反重力方向に沿って超音波を送信するとともに、重力方向に進行する超音波を受信する第2超音波センサと、
前記第1超音波センサ及び前記第2超音波センサの超音波受信波形に基づき、前記配管の内部の状態を判定する演算器と
を備える電磁流量計。
【0008】
このような電磁流量計においては、シンプルな構造で、配管の内部の状態を判定することができる。
【0009】
[2]
前記演算器は、前記配管の内部の状態として、前記配管の内部が前記流体で満たされているかどうかを判定する[1]に記載の電磁流量計。
【0010】
このような電磁流量計においては、シンプルな構造で、配管の内部が流体で満たされているかどうかを判定することができる。
【0011】
[3]
前記演算器は、前記配管の内部が前記流体で満たされていないと判定すると、アラームを出力する[2]に記載の電磁流量計。
【0012】
このような電磁流量計においては、配管の内部が流体で満たされていない状態についてユーザに通知することができる。
【0013】
[4]
前記演算器は、前記第1超音波センサの超音波受信波形に、前記第2超音波センサから送信された超音波の受信波形が含まれ、前記第2超音波センサの超音波受信波形に、前記第1超音波センサから送信された超音波の受信波形が含まれる場合に、前記配管の内部が前記流体で満たされていると判定する[2]又は[3]に記載の電磁流量計。
【0014】
このような電磁流量計においては、配管の内部が流体で満たされている状態を精度良く検知することができる。
【0015】
[5]
前記演算器は、複数時点での前記第2超音波センサの超音波受信波形に含まれる、前記第2超音波センサから送信された超音波が前記流体に進入してから界面で反射して生じた反射波の受信波形の時間差を検知することで、前記配管の内部が前記流体で満たされていない非満状態を検知する[2]から[4]のいずれか1項に記載の電磁流量計。
【0016】
このような電磁流量計においては、配管の内部が流体で満たされていない状態を精度良く検知することができる。
【0017】
[6]
前記演算器は、前記非満状態を検知すると、前記第2超音波センサからの超音波の送信と前記反射波の受信との時間差から前記流体の液位を算出し、前記流体の液位の算出結果を前記流体の流量の測定結果に反映する[5]に記載の電磁流量計。
【0018】
このような電磁流量計においては、配管の内部が流体で満たされていない状態でも、流体の流量を精度良く測定することができる。
【0019】
[7]
前記演算器は、前記配管の内部の状態として、前記配管の底部に堆積物が溜まっているかどうかを判定する[1]から[6]のいずれか1項に記載の電磁流量計。
【0020】
このような電磁流量計においては、シンプルな構造で、配管の底部に堆積物が溜まっているかどうかを判定することができる。
【0021】
[8]
前記演算器は、前記配管の底部に前記堆積物が溜まっていると判定すると、アラームを出力する[7]に記載の電磁流量計。
【0022】
このような電磁流量計においては、配管の底部に堆積物が溜まっている状態についてユーザに通知することができる。
【0023】
[9]
前記演算器は、複数時点での前記第1超音波センサの超音波受信波形に含まれる、前記第1超音波センサから送信された超音波が前記流体に進入してから界面で反射して生じた反射波の受信波形の時間差を検知することで、前記配管の底部に前記堆積物が溜まっている溜状態を検知する[7]又は[8]に記載の電磁流量計。
【0024】
このような電磁流量計においては、配管の底部に堆積物が溜まっている状態を精度良く検知することができる。
【0025】
[10]
前記演算器は、前記溜状態を検知すると、前記第1超音波センサからの超音波の送信と前記反射波の受信との時間差から前記堆積物の高さを算出し、前記堆積物の高さの算出結果を前記流体の流量の測定結果に反映する[9]に記載の電磁流量計。
【0026】
このような電磁流量計においては、配管の底部に堆積物が溜まっている状態でも、流体の流量を精度良く測定することができる。
【0027】
[11]
前記演算器は、第1時点での前記第1超音波センサの超音波受信波形を、前記配管の内部が前記流体で満たされている第2時点での前記第1超音波センサの超音波受信波形と比較するとともに、前記第1時点での前記第2超音波センサの超音波受信波形を、前記第2時点での前記第2超音波センサの超音波受信波形と比較することで、前記配管の内部が前記流体で満たされていない非満状態と、前記配管の底部に堆積物が溜まっている溜状態とが同時に発生しているかどうかを判定する[1]から[10]のいずれか1項に記載の電磁流量計。
【0028】
このような電磁流量計においては、シンプルな構造で、配管の内部が流体で満たされていない状態と、配管の底部に堆積物が溜まっている状態とが同時に発生しているかどうかを判定することができる。
【0029】
[12]
前記演算器は、複数時点での前記第1超音波センサ又は前記第2超音波センサの超音波受信波形に含まれる、前記第1超音波センサ又は前記第2超音波センサから送信された超音波が前記配管の内周面に施されたライニングに進入してから前記ライニングと前記流体との境界面で反射して生じた反射波の受信波形の時間差を検知することで、前記ライニングの厚さの変化を検知する[1]から[11]のいずれか1項に記載の電磁流量計。
【0030】
このような電磁流量計においては、シンプルな構造で、ライニングの厚さの変化を検知することができる。
【0031】
[13]
前記演算器は、前記ライニングの厚さが閾値以下であると判定すると、アラームを出力する[12]に記載の電磁流量計。
【0032】
このような電磁流量計においては、ライニングの劣化についてユーザに通知することができる。
【0033】
[14]
前記第1超音波センサ及び前記第2超音波センサが取り付けられたアースリングを更に備える[1]から[13]のいずれか1項に記載の電磁流量計。
【0034】
このような電磁流量計においては、超音波センサを後付けで設置することができる。
【0035】
[15]
前記第1超音波センサ及び前記第2超音波センサは、前記配管の外周面に取り付けられる[1]から[13]のいずれか1項に記載の電磁流量計。
【0036】
このような電磁流量計においては、超音波センサを簡単に設置することができる。
【0037】
[16]
前記第1超音波センサ及び前記第2超音波センサは、前記配管の内周面に施されたライニングの外周面に取り付けられ、前記配管を貫通する[1]から[13]のいずれか1項に記載の電磁流量計。
【0038】
このような電磁流量計においては、超音波センサを流体に接触させなくて済むとともに、超音波センサから送信される超音波が反射する界面の数を減らすことができる。
【0039】
[17]
前記第1超音波センサ及び前記第2超音波センサは、前記配管に取り付けられ、前記配管と前記配管の内周面に施されたライニングとを貫通する[1]から[13]のいずれか1項に記載の電磁流量計。
【0040】
このような電磁流量計においては、超音波センサから送信される超音波が反射する界面の数を減らすことができる。
【0041】
[18]
前記配管に取り付けられ、前記配管の内周面に施されたライニングの内周面の一部を覆い、前記配管の内部の50%未満しか前記流体で満たされていない状態でも前記流体に接触する位置まで延びている1対の電極を更に備える[1]から[17]のいずれか1項に記載の電磁流量計。
【0042】
このような電磁流量計においては、流体の液位が低い状態でも、流体の流量を測定することができる。
【発明の効果】
【0043】
本開示によれば、シンプルな構造で、非満水状態などの配管の内部の状態を判定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【
図1】本開示の実施形態に係る電磁流量計の構成を示す図である。
【
図2】本開示の実施形態に係る電磁流量計の部分斜視図である。
【
図3】本開示の実施形態に係る電磁流量計の一変形例の部分斜視図である。
【
図4】本開示の実施形態に係る超音波センサの配置を示す図である。
【
図5】本開示の実施形態に係る超音波センサの配置の一変形例を示す図である。
【
図6】本開示の実施形態に係る超音波センサの配置の別の変形例を示す図である。
【
図7】本開示の実施形態に係る超音波センサによる、満水状態での超音波送受信の例を示す図である。
【
図8】
図7に対応する送受信波形の例を示す図である。
【
図9】本開示の実施形態に係る超音波センサによる、非満水状態での超音波送受信の例を示す図である。
【
図10】
図9に対応する送受信波形の例を示す図である。
【
図11】本開示の実施形態に係る超音波センサによる、配管底部に堆積物が溜まった状態での超音波送受信の例を示す図である。
【
図13】本開示の実施形態に係る超音波センサによる、非満水状態かつ配管底部に堆積物が溜まった状態での超音波送受信の例を示す図である。
【
図15】本開示の実施形態に係る電磁流量計の動作を示すフローチャートである。
【
図16】本開示の実施形態に係る電磁流量計の構成の一変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0045】
以下、本開示の一実施形態について、図を参照して説明する。
【0046】
各図中、同一又は相当する部分には、同一符号を付している。各実施形態の説明において、同一又は相当する部分については、説明を適宜省略又は簡略化する。
【0047】
図1を参照して、本実施形態に係る電磁流量計10の構成を説明する。
図1は、電磁流量計10が取り付けられた配管11の断面と、電磁流量計10の各構成要素とを示している。
【0048】
電磁流量計10は、配管11を流れる流体14の流量を測定する装置である。流体14は、水道水などの導電性液体である。配管11は、ステンレスなどの金属で構成されている。配管11の内側は、ライニング12と呼ばれる絶縁体で覆われている。すなわち、配管11の内周面には、ライニング12が施されている。
【0049】
電磁流量計10は、第1励磁コイル13A及び第2励磁コイル13Bを含む1対の励磁コイルと、第1電極15A及び第2電極15Bを含む1対の電極と、増幅器16と、演算器17と、第1超音波センサ18A及び第2超音波センサ18Bを含む1対の超音波センサと、切替器20と、送受信回路21と、表示器24とを備える。
【0050】
第1励磁コイル13A及び第2励磁コイル13Bは、それぞれ配管11の上下で管軸と垂直な方向に並ぶように装備されている。第1励磁コイル13A及び第2励磁コイル13Bは、配管11の内部に磁界を発生させる。第1電極15A及び第2電極15Bは、それぞれ配管11の左右で管軸と垂直かつ第1励磁コイル13A及び第2励磁コイル13Bの並ぶ方向と垂直な方向に並ぶように配置されている。ファラデーの電磁誘導の法則により、配管11の内部の導電性の流体14に流速が生じると、第1励磁コイル13A及び第2励磁コイル13Bから発生する磁界とは垂直の方向かつ管軸と垂直な向きに起電力が発生する。発生した起電力は、第1電極15A及び第2電極15Bでピックアップされ、増幅器16で第1電極15A及び第2電極15B間に誘起される流量に応じた電圧が増幅され、演算器17に取り込まれる。第1励磁コイル13A及び第2励磁コイル13Bは、励磁回路からの励磁電流によって駆動するが、既知の構成であるため、説明を省略する。
【0051】
第1超音波センサ18A及び第2超音波センサ18Bは、それぞれ配管11の上下で管軸と垂直かつ第1電極15A及び第2電極15Bの並ぶ方向と垂直な方向、すなわち、第1励磁コイル13A及び第2励磁コイル13Bの並ぶ方向と同じ方向に並ぶように配置されている。第1超音波センサ18A及び第2超音波センサ18Bは、切替器20を介して送受信回路21に繋がっている。送受信回路21は、演算器17と繋がっている。演算器17は、例えば、マイクロコンピュータなどのコンピュータである。演算器17は、各種センサ信号の送受信のタイミング制御、及び流量演算を行う。演算器17は、表示器24と繋がっている。表示器24は、例えば、LCD又は有機ELディスプレイである。「LCD」は、liquid crystal displayの略語である。「EL」は、electro luminescentの略語である。表示器24は、流量演算の結果、及び各種アラームを表示する。演算器17は、表示器24に代えて又は加えてスピーカと繋がっていてもよい。スピーカは、流量演算の結果、及び各種アラームを音声で出力してもよい。
【0052】
【0053】
第1超音波センサ18Aは、配管11の内側に重力方向に沿って超音波を送信するとともに、反重力方向に進行する超音波を受信する。第2超音波センサ18Bは、第1超音波センサ18Aから重力方向に離間して第1超音波センサ18Aと対向している。第2超音波センサ18Bは、配管11の内側に反重力方向に沿って超音波を送信するとともに、重力方向に進行する超音波を受信する。演算器17は、第1超音波センサ18A及び第2超音波センサ18Bの超音波受信波形に基づき、配管11の内部の状態を判定する。したがって、本実施形態によれば、シンプルな構造で、配管11の内部の状態を判定することができる。
【0054】
本実施形態では、演算器17は、配管11の内部の状態として、配管11の内部が流体14で満たされているかどうかを判定する。演算器17は、この判定の結果に応じて流量演算の結果を補正する機能を持つ。したがって、本実施形態によれば、シンプルな構造で、配管11の内部が流体14で満たされているかどうかを判定することができるだけでなく、配管11の内部が流体14で満たされていない状態でも、流体14の流量を精度良く測定することができる。
【0055】
本実施形態では、演算器17は、配管11の内部の状態として、配管11の底部に
図11に示すような堆積物23が溜まっているかどうかを更に判定する。演算器17は、この判定の結果に応じて流量演算の結果を補正する機能も持つ。したがって、本実施形態によれば、シンプルな構造で、配管11の底部に堆積物23が溜まっているかどうかを判定することができるだけでなく、配管11の底部に堆積物23が溜まっている状態でも、流体14の流量を精度良く測定することができる。
【0056】
図2を参照して、本実施形態に係る超音波センサの配置を説明する。
【0057】
第1超音波センサ18A及び第2超音波センサ18Bは、それぞれ第1励磁コイル13A及び第2励磁コイル13Bを避ける位置に設置されることが望ましい。例えば、
図2に示したように、第1超音波センサ18A及び第2超音波センサ18Bは、第1励磁コイル13A及び第2励磁コイル13Bの下流に設置されるのが好適である。
【0058】
本実施形態では、電磁流量計10は、アースリング19を更に備える。アースリング19は、電磁流量計10の電気的なアースを取るための付属品である。
【0059】
図3を参照して、本実施形態に係る超音波センサの配置の一変形例を説明する。
【0060】
第1超音波センサ18A及び第2超音波センサ18Bは、アースリング19に取り付けられてもよい。この変形例によれば、配管11に取り付けられた電磁流量計10に対して第1超音波センサ18A及び第2超音波センサ18Bを後付けで設置可能である。
【0061】
図4を参照して、本実施形態に係る超音波センサの配置を更に説明する。
【0062】
第1超音波センサ18A及び第2超音波センサ18Bは、配管11の外周面に取り付けられる。すなわち、第1超音波センサ18A及び第2超音波センサ18Bは、配管11に接するように設置される。
【0063】
図5を参照して、本実施形態に係る超音波センサの配置の一変形例を説明する。
【0064】
第1超音波センサ18A及び第2超音波センサ18Bは、配管11を貫通するようにライニング12の外周面に取り付けられてもよい。すなわち、第1超音波センサ18A及び第2超音波センサ18Bは、ライニング12に接するように設置されてもよい。
【0065】
図6を参照して、本実施形態に係る超音波センサの配置の別の変形例を説明する。
【0066】
第1超音波センサ18A及び第2超音波センサ18Bは、配管11とライニング12とを貫通するように配管11に取り付けられてもよい。すなわち、第1超音波センサ18A及び第2超音波センサ18Bは、流体14に接するように設置されてもよい。この変形例では、第1超音波センサ18A及び第2超音波センサ18Bは、第1超音波センサ18A及び第2超音波センサ18Bが流体14に乱れを発生させることを防ぐために、特に、第1励磁コイル13A及び第2励磁コイル13Bの下流に設置されるのが好適である。
【0067】
第1超音波センサ18A及び第2超音波センサ18Bは、
図4から
図6のいずれに示した配置であっても、接着、溶接、又はネジ締結などの機械的な締結方法など、任意の接合方法で固定されてよい。
【0068】
図7及び
図8を参照して、本実施形態に係る超音波センサによる、満水状態での超音波送受信の例を説明する。
【0069】
図8の上段の波形のように、配管11の上部と底部とにそれぞれ設置された第1超音波センサ18A及び第2超音波センサ18Bは、互いに超音波を送受信する。ただし、第1超音波センサ18A及び第2超音波センサ18Bは、異なるタイミングで超音波を送信する。
図8の中段及び下段の波形のように、第1超音波センサ18A及び第2超音波センサ18Bは、センサ単体でも超音波を送受信する。例えば、
図8の中段では、第1超音波センサ18Aから送信された矩形波は、
図7に示した配管11とライニング12との境界面Aで反射し、第1超音波センサ18Aで受信波形Aとして観測される。同様に、ライニング12と導電性の流体14との境界面Bからの反射波が受信波形Bとして観測される。
図8の中段の受信波形Cは、第1超音波センサ18Aから発せられた超音波が導電性の流体14と底部側のライニング12との境界面Cで反射したものである。
図8の中段の送信波形から受信波形Aまでの伝搬時間T1は、配管11の音速及び厚さによって定まるものである。同様に、送信波形から受信波形Bまでの伝搬時間T2からT1を差し引いた時間差(T2-T1)は、ライニング12の音速及び厚さによって定まるものである。同様に、送信波形から受信波形Cまでの伝搬時間T3からT2を差し引いた時間差(T3-T2)は、導電性の流体14の音速、及び配管11の内部空間の直径によって定まるものである。一方、
図8の下段では、第2超音波センサ18Bから送信された矩形波は、
図7に示した配管11とライニング12との境界面Dで反射し、第2超音波センサ18Bで受信波形Dとして観測される。同様に、ライニング12と導電性の流体14との境界面Cからの反射波が受信波形Cとして観測される。
図8の下段の受信波形Bは、第2超音波センサ18Bから発せられた超音波が導電性の流体14と上部側のライニング12との境界面Bで反射したものである。
図8の下段の送信波形から受信波形Dまでの伝搬時間T4は、配管11の音速及び厚さによって定まるものである。同様に、送信波形から受信波形Cまでの伝搬時間T5からT4を差し引いた時間差(T5-T4)は、ライニング12の音速及び厚さによって定まるものである。同様に、送信波形から受信波形Bまでの伝搬時間T6からT5を差し引いた時間差(T6-T5)は、導電性の流体14の音速、及び配管11の内部空間の直径によって定まるものである。
【0070】
図9及び
図10を参照して、本実施形態に係る超音波センサによる、非満水状態での超音波送受信の例を説明する。
【0071】
図9の配管11の断面図で表されているように、非満水の場合は配管11の上部に気相22が存在する。配管11内が非満水になっている場合、液相-気相の音響インピーダンスの差から超音波は気相22及び流体14の界面で強く反射され、気相22中を伝搬することができない。そのため、
図10の上段の波形のように、配管11の上部と底部とにそれぞれ設置された第1超音波センサ18A及び第2超音波センサ18Bは、互いの超音波を受信できない状態となる。
図10の中段の波形のように、第1超音波センサ18Aから送信された超音波については、境界面A及び境界面Bからの反射波の受信波形A及び受信波形Bが観測されるのみとなり、
図7のような満水時には見られた境界面Cからの反射波の受信波形Cが観測されなくなる。一方、
図10の下段の波形のように、第2超音波センサ18Bから送信された超音波については、境界面D及び境界面Cからの反射波の受信波形D及び受信波形Cに加え、液相-気相の境界面Fからの反射波の受信波形Fが観測される。導電性の流体14の音速が明らかであれば、受信波形Fが受信されるまでの伝搬時間T6と受信波形Cが受信されるまでの伝搬時間T5との時間差(T6-T5)から非満水の流体14の液位を求めることができる。導電性の流体14の音速値は、ユーザが液種を選択するか、又は電磁流量計10に直接入力することで設定されてもよい。あるいは、導電性の流体14の音速値として、満水状態における時間差(T3-T2)などと既知の配管11の内部空間の直径とから算出した値を保存しておき、使用してもよい。
【0072】
演算器17は、第1電極15A及び第2電極15Bで測定された電圧より体積流量を演算するが、
図9のような非満水状態のときに
図7のような満水状態と同様に体積流量を演算してしまうと、誤差が生じる。そこで、演算器17は、
図10の上段で示した超音波センサの送受信波形を参照して非満水状態を判別するとともに、第1電極15A及び第2電極15Bで測定された電圧より満水状態を仮定して求めた体積流量を、
図10の下段で示した時間差(T6-T5)から算出される液位に応じて補正する。その結果、非満水状態の流体14の体積流量を求めることができる。
【0073】
図11及び
図12を参照して、本実施形態に係る超音波センサによる、配管11の底部に土砂などの堆積物23が溜まった状態での超音波送受信の例を説明する。
【0074】
図11の配管11の断面図で表されているように、配管11の底部に堆積物23が溜まっている場合、固相-液相の音響インピーダンスの差から超音波は流体14及び堆積物23の界面で強く反射される。そのため、
図12の上段の波形のように、配管11の上部と底部とにそれぞれ設置された第1超音波センサ18A及び第2超音波センサ18Bは、互いの超音波を受信できない状態となり得る。
図12の下段の波形のように、第2超音波センサ18Bから送信された超音波については、境界面D及び境界面Cからの反射波の受信波形D及び受信波形Cが観測されるのみとなり、
図7のような満水時には見られた境界面Bからの反射波の受信波形Bが観測されなくなる。一方、
図12の中段の波形のように、第1超音波センサ18Aから送信された超音波については、境界面A及び境界面Bからの反射波の受信波形A及び受信波形Bに加え、固相-液相の境界面Gからの反射波の受信波形Gとして観測される。導電性の流体14の音速が明らかであれば、受信波形Gが受信されるまでの伝搬時間T3と受信波形Bが受信されるまでの伝搬時間T2との時間差(T3-T2)から堆積物23の高さを求めることができる。導電性の流体14の音速値は、ユーザが液種を選択するか、又は電磁流量計10に直接入力することで設定されてもよい。あるいは、導電性の流体14の音速値として、満水状態における時間差(T3-T2)などと既知の配管11の内部空間の直径とから算出した値を保存しておき、使用してもよい。
【0075】
演算器17は、第1電極15A及び第2電極15Bで測定された電圧より体積流量を演算するが、
図11のような、配管11の底部に堆積物23が溜まった状態のときに
図7のような満水状態と同様に体積流量を演算してしまうと、誤差が生じる。そこで、演算器17は、
図12の上段で示した超音波センサの送受信波形を参照して堆積物23の有無を判別するとともに、第1電極15A及び第2電極15Bで測定された電圧より満水状態を仮定して求めた体積流量を、
図12の中段で示した時間差(T3-T2)から算出される堆積物23の高さに応じて補正する。その結果、堆積物23の体積を差し引いた流体14の体積流量を求めることができる。
【0076】
図13及び
図14を参照して、本実施形態に係る超音波センサによる、非満水状態かつ配管11の底部に堆積物23が溜まった状態での超音波送受信の例を説明する。
【0077】
図13の配管11の断面図で表されているように、非満水かつ配管11の底部に堆積物23が溜まっている場合、
図14の上段の波形のように、配管11の上部と底部とにそれぞれ設置された第1超音波センサ18A及び第2超音波センサ18Bは、互いの超音波を受信できない状態となる。
図14の中段の波形のように、第1超音波センサ18Aから送信された超音波については、境界面A及び境界面Bからの反射波の受信波形A及び受信波形Bが観測されるのみとなり、
図7のような満水時には見られた境界面Cからの反射波の受信波形Cが観測されなくなる。
図14の下段の波形のように、第2超音波センサ18Bから送信された超音波についても、境界面D及び境界面Cからの反射波の受信波形D及び受信波形Cが観測されるのみとなり、
図7のような満水時には見られた境界面Bからの反射波の受信波形Bが観測されなくなる。演算器17は、このような非満水状態かつ配管11の底部に堆積物23が溜まった状態については、アラームを発報してユーザへ通知する。配管11内が完全に空になった場合、及び堆積物23で満たされた場合も、同様の超音波波形が観測されるため、演算器17は、アラームを発報する。
【0078】
図15を参照して、本実施形態に係る電磁流量計10の動作を説明する。
【0079】
ステップS1において、第1超音波センサ18Aは、配管11の内側に重力方向に沿って超音波を送信する。その後、第2超音波センサ18Bは、配管11の内側に反重力方向に沿って超音波を送信する。超音波を送信する順序は逆でもよい。すなわち、第2超音波センサ18Bが超音波を送信した後に、第1超音波センサ18Aが超音波を送信してもよい。
【0080】
第1超音波センサ18Aの超音波受信波形に、第2超音波センサ18Bから送信された超音波の受信波形が含まれ、第2超音波センサ18Bの超音波受信波形に、第1超音波センサ18Aから送信された超音波の受信波形が含まれる場合には、ステップS2の処理が実行される。例えば、第1超音波センサ18A及び第2超音波センサ18B間の送受信波形が
図8の上段のような波形であれば、ステップS2の処理が実行される。
【0081】
それ以外の場合には、演算器17は、現時点である第1時点での第1超音波センサ18Aの超音波受信波形を、配管11の内部が流体14で満たされていた時点である第2時点での第1超音波センサ18Aの超音波受信波形と比較するとともに、第1時点での第2超音波センサ18Bの超音波受信波形を、第2時点での第2超音波センサ18Bの超音波受信波形と比較することで、非満状態と溜状態とが同時に発生しているかどうかを判定する。非満状態とは、配管11の内部が流体14で満たされていない状態のことである。溜状態とは、配管11の底部に堆積物23が溜まっている状態のことである。非満状態と溜状態とが同時に発生していると判定された場合には、ステップS5の処理が実行される。例えば、第1超音波センサ18A単体での送受信波形と、第2超音波センサ18B単体での送受信波形とが、それぞれ
図14の中段及び下段のような波形であれば、ステップS5の処理が実行される。
【0082】
非満状態と溜状態とが同時に発生していないと判定された場合には、演算器17は、第1時点及び第2時点での第2超音波センサ18Bの超音波受信波形に、第2超音波センサ18Bから送信された超音波が流体14に進入してから界面で反射して生じた反射波の受信波形の時間差が含まれるかどうかを判定する。そのような時間差が含まれる場合には、非満状態のみが発生していると判定することができる。すなわち、演算器17は、複数時点での第2超音波センサ18Bの超音波受信波形に含まれる、第2超音波センサ18Bから送信された超音波が流体14に進入してから界面で反射して生じた反射波の受信波形の時間差を検知することで、配管11の内部が流体14で満たされていない非満状態を検知する。そして、ステップS3の処理が実行される。例えば、第2超音波センサ18B単体での送受信波形が
図10の下段のような波形であれば、ステップS3の処理が実行される。
【0083】
非満状態と溜状態とが同時に発生していないと判定され、非満状態が検知されなかった場合には、演算器17は、第1時点及び第2時点での第1超音波センサ18Aの超音波受信波形に、第1超音波センサ18Aから送信された超音波が流体14に進入してから界面で反射して生じた反射波の受信波形の時間差が含まれるかどうかを判定する。そのような時間差が含まれる場合には、溜状態のみが発生していると判定することができる。すなわち、演算器17は、複数時点での第1超音波センサ18Aの超音波受信波形に含まれる、第1超音波センサ18Aから送信された超音波が流体14に進入してから界面で反射して生じた反射波の受信波形の時間差を検知することで、溜状態を検知する。そして、ステップS4の処理が実行される。例えば、第1超音波センサ18A単体での送受信波形が
図12の中段のような波形であれば、ステップS4の処理が実行される。
【0084】
ステップS2において、演算器17は、配管11の内部が流体14で満たされていると判定する。そして、演算器17は、通常の流体14の流量の演算を行う。演算器17は、演算結果を表示器24に表示させる。
【0085】
ステップS3において、演算器17は、配管11の内部が流体14で満たされていないと判定する。すなわち、演算器17は、非満状態を検知する。そして、演算器17は、第2超音波センサ18Bからの超音波の送信と反射波の受信との時間差から流体14の液位を算出する。演算器17は、流体14の液位の算出結果を流体14の流量の測定結果に反映する。すなわち、演算器17は、通常の流体14の流量の演算を行って得られた演算結果を、算出した液位に応じて補正する。演算器17は、補正後の演算結果を表示器24に表示させる。演算器17は、非満状態についてのアラームを出力する。例えば、演算器17は、そのようなアラームを表示器24に表示させる。
【0086】
ステップS4において、演算器17は、配管11の底部に堆積物23が溜まっていると判定する。すなわち、演算器17は、溜状態を検知する。そして、演算器17は、第1超音波センサ18Aからの超音波の送信と反射波の受信との時間差から堆積物23の高さを算出する。演算器17は、堆積物23の高さの算出結果を流体14の流量の測定結果に反映する。すなわち、演算器17は、通常の流体14の流量の演算を行って得られた演算結果を、算出した高さに応じて補正する。演算器17は、補正後の演算結果を表示器24に表示させる。演算器17は、溜状態についてのアラームを出力する。例えば、演算器17は、そのようなアラームを表示器24に表示させる。
【0087】
上述のように、本実施形態では、配管11内が満水か否か、具体的には気相22又は堆積物23がないかが、
図8の上段に示したような第1超音波センサ18A及び第2超音波センサ18B間の受信波形が観測されるか否かで判別される。第1超音波センサ18A及び第2超音波センサ18B間で受信波形が観測されない場合、第1超音波センサ18A及び第2超音波センサ18B単体で受信波形F及び受信波形Gのいずれも観測できない場合は、非満水かつ配管11の底部に堆積物23が溜まっていると判断され、アラームが発報される。第1超音波センサ18A及び第2超音波センサ18B単体で受信波形F及び受信波形Gのどちらかが観測される場合は、観測される波形が受信波形Fか受信波形Gかで、配管11内が非満水か堆積物23が溜まっている状態かが判別される。判別の結果は、アラームとしてユーザに通知されるとともに、流体14の体積流量の演算結果に反映される。
【0088】
本実施形態を応用して、ライニング12の厚さをモニタすることもできる。
【0089】
配管11の内側に設置されているライニング12の材料としては、PFA又はPTFEなどの絶縁性樹脂が使用される。「PFA」は、perfluoroalkoxy alkanes(ペルフルオロアルコキシフッ素樹脂)の略語である。「PTFE」は、polytetrafluoroethylene(ポリテトラフルオロエチレン)の略語である。ライニング12は導電性の流体14と接液する部材になり、流体14がスラリー性流体の場合には、ライニング12が摩耗して経年的に薄くなるおそれがある。そこで、第1超音波センサ18A及び第2超音波センサ18Bから照射され、受信された信号を用いてライニング12の厚さをモニタすることが考えられる。例えば、
図8の中段のように、第1超音波センサ18Aから超音波が送信されてから境界面A及び境界面Bで生じた反射波の受信波形A及び受信波形Bが受信されるまでにかかった伝搬時間の差(T2-T1)と、ライニング12の音速とをパラメータとして用いて、ライニング12の厚さを求めることができる。演算器17は、ライニング12の厚さを演算及び出力するとともに、ライニング12の厚さがユーザ設定値を下回った場合にアラームでユーザに通知することができる。すなわち、演算器17は、複数時点での第1超音波センサ18A又は第2超音波センサ18Bの超音波受信波形に含まれる、第1超音波センサ18A又は第2超音波センサ18Bから送信された超音波がライニング12に進入してからライニング12と流体14との境界面で反射して生じた反射波の受信波形の時間差を検知することで、ライニング12の厚さの変化を検知してもよい。演算器17は、ライニング12の厚さが閾値以下であると判定すると、アラームを出力してもよい。例えば、演算器17は、そのようなアラームを表示器24に表示させてもよい。
【0090】
図16を参照して、電磁流量計10の構成の一変形例を説明する。
【0091】
本実施形態では、流量測定のために電磁流量計10の電極面が接液するが、流体14の液位が50%未満などの低い状態になっても流量測定が可能となるように、面電極を採用することで、接液面を拡大してもよい。すなわち、第1電極15A及び第2電極15Bは、配管11の内周面に施されたライニング12の内周面の一部を覆い、配管11の内部の50%未満しか流体14で満たされていない状態でも流体14に接触する位置まで延びるように配管11に取り付けられていてもよい。
【0092】
本開示は上述の実施形態に限定されるものではない。例えば、ブロック図に記載の2つ以上のブロックを統合してもよいし、1つのブロックを分割してもよい。フローチャートに記載の2つ以上のステップを記述に従って時系列に実行する代わりに、各ステップを実行する装置の処理能力に応じて、又は必要に応じて、並列的に又は異なる順序で実行してもよい。その他、本開示の趣旨を逸脱しない範囲での変更が可能である。
【符号の説明】
【0093】
10 電磁流量計
11 配管
12 ライニング
13A 第1励磁コイル
13B 第2励磁コイル
14 流体
15A 第1電極
15B 第2電極
16 増幅器
17 演算器
18A 第1超音波センサ
18B 第2超音波センサ
19 アースリング
20 切替器
21 送受信回路
22 気相
23 堆積物
24 表示器