(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024178853
(43)【公開日】2024-12-25
(54)【発明の名称】聴音装置
(51)【国際特許分類】
H04R 1/00 20060101AFI20241218BHJP
H04R 1/10 20060101ALI20241218BHJP
H04R 25/00 20060101ALI20241218BHJP
【FI】
H04R1/00 317
H04R1/10 104Z
H04R25/00 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023097321
(22)【出願日】2023-06-13
(71)【出願人】
【識別番号】516040866
【氏名又は名称】BoCo株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100096091
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 誠一
(72)【発明者】
【氏名】謝 端明
(72)【発明者】
【氏名】荒牧 純一
【テーマコード(参考)】
5D005
5D017
【Fターム(参考)】
5D005BA03
5D005BA06
5D005BA11
5D017AB13
(57)【要約】
【課題】 骨伝導スピーカをより効率よく利用可能な聴音装置を提供する。
【解決手段】 聴音装置1は、主に、空気伝導スピーカ部3、骨伝導スピーカ部7、連結部5等から構成される。聴音装置1の制御部は、通信部で受けた音響電気信号に対して、アンプを制御可能である。アンプは、骨伝導スピーカ部7及び空気伝導スピーカ部3にそれぞれ適した音響電気信号に増幅及びその他の処理を行い、骨伝導スピーカ部7及び空気伝導スピーカ部3に伝送可能である。すなわち、通信部で受けた音響電気信号に対して、アンプは、最低2チャンネルの出力が可能であり、骨伝導スピーカ部7と空気伝導スピーカ部3へ伝送する音響電気信号を変えることが可能である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
聴音装置であって、
音響電気信号を振動に変換して振動を出力する骨伝導スピーカ部と、
音響電気信号で空気を振動させて音を出力する空気伝導スピーカ部と、
を具備し、
前記骨伝導スピーカ部と前記空気伝導スピーカ部へ伝送する音響電気信号を変えることが可能であることを特徴とする聴音装置。
【請求項2】
前記骨伝導スピーカ部と前記空気伝導スピーカ部へ伝送する音響電気信号の出力レベルを変えることが可能であることを特徴とする請求項1記載の聴音装置。
【請求項3】
前記骨伝導スピーカ部と前記空気伝導スピーカ部へ伝送する音響電気信号の周波数帯を変えることが可能であることを特徴とする請求項1記載の聴音装置。
【請求項4】
前記骨伝導スピーカ部と前記空気伝導スピーカ部へ伝送する音響電気信号の時間的な位相を変えることが可能であることを特徴とする請求項1記載の聴音装置。
【請求項5】
複数のアンプを有し、前記骨伝導スピーカ部へ伝送する音響電気信号の音源と、前記空気伝導スピーカ部へ伝送する音響電気信号の音源が異なることを特徴とする請求項1記載の聴音装置。
【請求項6】
マイクをさらに具備し、
前記骨伝導スピーカ部と前記空気伝導スピーカ部の一方の音源が、前記マイクで得られた音源であることを特徴とする請求項5記載の聴音装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、骨に振動を与えることで音を認識させる骨伝導スピーカを有する聴音装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、音楽や会話を聴く手段として、ヘッドホンやイヤホンなどのような装置(以下、聴音装置という。)が広く使用されてきている。このような聴音装置としては、空気伝導を利用したものと骨伝導を利用したものとがある。空気伝導を利用したものは、電気信号として入力された音源を空気の振動に変換して鼓膜に伝えて振動させ、鼓膜の振動が耳の奥の中耳を通って、脳に音の情報が伝達され認識される仕組みを利用している。
【0003】
一方、骨伝導を利用した聴音装置は、電気信号として入力された音響信号を機械的な振動に変換し、その振動を適切な位置から骨に与えて骨に振動を伝え、その振動により伝わる骨伝導音で音を認識させるものである。この骨伝導を利用した聴音装置は、ヘッドホンやイヤホンのように耳孔に挿入して使用する必要がなく、耳には周囲の音が遮蔽されることなく入ってくるので、装着していても安全である。また、鼓膜の振動を利用しないことから、難聴の人でも音を認識することができ、補聴器等への利用も進められている(例えば特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、骨伝導スピーカと空気伝導スピーカとでは、聴音する音に対して、それぞれ長所と短所が存在する。例えば骨伝導スピーカは、低音域での音に有利であり、空気伝導スピーカは、高音域での音に有利である。また、空気伝導スピーカは、小さい音に対しても有利であり、骨伝導スピーカは大きな音量でも音漏れ等が少ないという利点がある。このため、使用状況や対象に応じて両者を適宜使い分けるなどの必要がある。
【0006】
また、骨伝導を利用した骨伝導スピーカは、振動部を適切な位置に当接させることで聴音が可能となる。適切な位置としては、例えば、こめかみや乳様突起と呼ばれる部位が挙げられる。このように、骨伝導スピーカによれば、耳を塞ぐことなく音を聴くことができるため、周囲の環境音や人声を耳で聞きながら、骨伝導スピーカによって音楽等を聴くことができる。
【0007】
しかし、例えば難聴者が骨伝導スピーカを補聴器として使用する際には、マイクで集音した環境音等を骨伝導スピーカによって聴くことになる。このため、携帯端末等による音楽と、周囲の環境音等とを同時に聞くためには、携帯端末のスピーカで音楽を使用者の周囲の空間に一旦鳴らして、この音楽と共に周囲の環境音をマイクで集音する必要がある。このため、電車内や公共の場等、難聴者が環境音や人声を聞く必要がある場合には、携帯端末等から音楽を同時に聴くことができない。
【0008】
また、骨伝導スピーカを初めて使用した使用者の中には、従来の空気伝導スピーカの場合と比較して、違和感を覚える者も多い。これは、前述したように、空気伝導スピーカと骨伝導スピーカとでは、空気振動を介する音の伝達と、空気振動を伴わない音の伝達とで音の伝達ルートが全く異なり、同じ音源の音であっても、使用者は異なる聞こえ方で音を感じるためと考えられる。
【0009】
一方、発明者らは、骨伝導スピーカをある程度の期間、継続的に使用すると、使用者はいわゆる「慣れ」によって、当初感じていた違和感が低減し、より良い音質で音を感じることができるようになることを見出した。このため、使用初期から慣れるまでの間もできるだけ違和感が小さい聴音装置が望まれる。
【0010】
本発明は、これらのような問題に鑑みてなされたもので、骨伝導スピーカをより効率よく利用可能な聴音装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前述した目的を達成するため、本発明は、聴音装置であって、音響電気信号を振動に変換して振動を出力する骨伝導スピーカ部と、音響電気信号で空気を振動させて音を出力する空気伝導スピーカ部と、を具備し、前記骨伝導スピーカ部と前記空気伝導スピーカ部へ伝送する音響電気信号を変えることが可能であることを特徴とする聴音装置である。
【0012】
前記骨伝導スピーカ部と前記空気伝導スピーカ部へ伝送する音響電気信号の出力レベルを変えることが可能であってもよい。
【0013】
前記骨伝導スピーカ部と前記空気伝導スピーカ部へ伝送する音響電気信号の周波数帯を変えることが可能であってもよい。
【0014】
前記骨伝導スピーカ部と前記空気伝導スピーカ部へ伝送する音響電気信号の時間的な位相を変えることが可能であってもよい。
【0015】
複数のアンプを有し、前記骨伝導スピーカ部へ伝送する音響電気信号の音源と、前記空気伝導スピーカ部へ伝送する音響電気信号の音源が異なってもよい。
【0016】
マイクをさらに具備し、前記骨伝導スピーカ部と前記空気伝導スピーカ部の一方の音源が、前記マイクで得られた音源であってもよい。
【0017】
本発明によれば、骨伝導スピーカ部と空気伝導スピーカ部の両方を有し、骨伝導スピーカ部と空気伝導スピーカ部へ伝送する音響電気信号を変えることが可能であるため、骨伝導スピーカの弱い部分を空気伝導スピーカで補うことができる。このため、よりよい条件で聴音することができる。
【0018】
例えば、骨伝導スピーカ部と空気伝導スピーカ部へ伝送する音響電気信号の出力レベルを変えることが可能であれば、骨伝導スピーカ部と空気伝導スピーカ部で聞く音量を調整することができる。このため、例えば使用初期は骨伝導スピーカ部からの音量を小さくし、空気伝導スピーカ部の比率を上げることで使用者の違和感を緩和し、慣れに応じて骨伝導スピーカ部の比率を上げることで、適切な比率で聴音することができる。
【0019】
また、骨伝導スピーカ部と空気伝導スピーカ部へ伝送する音響電気信号の周波数帯を変えることが可能であれば、低音域は骨伝導スピーカ部をメインとして空気伝導スピーカ部を補助とし、高音域は空気伝導スピーカ部をメインとして骨伝導スピーカ部を補助として使用することができる。
【0020】
また、骨伝導スピーカ部と空気伝導スピーカ部へ伝送する音響電気信号の時間的な位相を変えることが可能であれば、同じ音源の音をわずかにずらして聴音することができる。このため、反響音などを再現することができる。この際、特に小さな音が有利な空気伝導スピーカ部で反響音を受け持つことで、特性に適した効果で聴音することができる。
【0021】
また、複数のアンプを用い、骨伝導スピーカ部へ伝送する音響電気信号の音源と、空気伝導スピーカ部へ伝送する音響電気信号の音源を異なるようにすることで、例えば、一方で音楽等を聴きながら、他方で電話での通話等を行うこともできる。
【0022】
また、マイクをさらに具備すれば、例えば、空気伝導スピーカ部と骨伝導スピーカ部の一方を、周囲の環境音や人声を聞くための補聴器として使用するとともに、他方で音楽を聴くことができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、骨伝導スピーカをより効率よく利用可能な聴音装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図3】(a)、(b)は、利用者が聴音装置1を装着した状態を示す概念図。
【
図4】(a)は、聴音装置1aを示す図、(b)は利用者が聴音装置1aを装着した状態を示す概念図。
【
図5】(a)は、聴音装置1bを示す図、(b)は利用者が聴音装置1bを装着した状態を示す概念図。
【
図6】(a)は、聴音装置1cを示す図、(b)は利用者が聴音装置1cを装着した状態を示す概念図。
【
図7】(a)は、聴音装置1dを示す図、(b)は利用者が聴音装置1dを装着した状態を示す概念図。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、図面を参照しながら、本発明の第1の実施形態について説明する。
図1は、聴音装置1の斜視図である。聴音装置1は、主に、空気伝導スピーカ部3、骨伝導スピーカ部7、連結部5等から構成される。空気伝導スピーカ部3は、音響電気信号で空気を振動させて音を出力する従来の空気伝導型のスピーカを適用可能である。骨伝導スピーカ部7は、音響電気信号を振動に変換して振動を出力し、対象部に接触させることで、振動を直接対象部に伝達する従来の骨伝導型のスピーカを適用可能である。
【0026】
例えば、骨伝導スピーカ部7の内部には、振動部が収容され、電気信号として入力された音響信号を機械的な振動に変換して振動を出力することができる。なお、音響電気信号を振動に変換するとは、外部から入力された音響電気信号を機械振動に変換することであり、例えば、音響電気信号によってダイヤフラム等を振動させることで、音響電気信号を骨に伝達する機械振動に変換する。なお、本発明においては、振動部における振動方式は、特に限定されるものではなく、音響電気信号を機械振動に変換できればよく、圧電式、電磁式、超磁歪など、従来から用いられている方法を採用することができる。また、空気伝導スピーカ部3は、一般的な電磁式の他、バランスド・アーマチュア式、圧電式などがあり、入力された音響信号を機械的な振動に変換して空気を動かす振動に変換する。なお、空気伝導スピーカ部3と骨伝導スピーカ部7の振動の方向は同一軸方向であってもよく、異なる軸方向であってもよい。また、空気伝導スピーカ部3については、音響効果を高めるために複数のスピーカを含んでいてもよい。
【0027】
本実施形態では、空気伝導スピーカ部3と骨伝導スピーカ部7が、所定の間隔をあけて対向して配置され、連結部5で連結される。連結部5は弾性体であり、所定の力で空気伝導スピーカ部3と骨伝導スピーカ部7の間隔を保持することができる。
【0028】
聴音装置1では、骨伝導スピーカ部7の内部に、バッテリーや基板等が収容される。なお、聴音装置1の詳細な構成については後述する。連結部5には、骨伝導スピーカ部7からの電気信号や電力を空気伝導スピーカ部3に伝達するための配線等が収容される。なお、バッテリーや基板等は、空気伝導スピーカ部3側に配置してもよく、両方に配置してもよい。また、操作部を骨伝導スピーカ部7又は空気伝導スピーカ部3のいずれに配置してもよく、連結部5の外周面側にタッチセンサ等を設けて操作部としてもよい。
【0029】
次に、聴音装置1の構成について説明する。
図2は、聴音装置1の構成を示すブロック図である。なお、バッテリー及び操作部等については省略する。聴音装置1は、制御部11、通信部13、アンプ15等を有する。なお、前述したように、制御部11、通信部13、アンプ15等は、骨伝導スピーカ部7に収容されてもよく、空気伝導スピーカ部3に収容されてもよく、それぞれに分配して配置されてもよい。
【0030】
なお、
図1では、通信部13は、外部から有線(ケーブル9)によって音響電気信号を受信する例を示すが、他の端末等からの音響電気信号を無線で受信が可能な、例えばBluetooth(登録商標)などの近距離無線通信を行うこともできる。また、有線の場合には、制御部11、通信部13、アンプ15等(バッテリー及び操作部等含む)を別体として、ケーブル9で接続してもよい。すなわち、ケーブル9は必要に応じて用いられる。
【0031】
制御部11は、通信部13で受けた音響電気信号に対して、アンプ15を制御可能である。アンプ15は、骨伝導スピーカ部7及び空気伝導スピーカ部3にそれぞれ適した音響電気信号の処理を行い、骨伝導スピーカ部7及び空気伝導スピーカ部3に伝送可能である。すなわち、通信部13で受けた同一の音響電気信号に対して、アンプ15は、最低2チャンネルの出力が可能であり、骨伝導スピーカ部7と空気伝導スピーカ部3へ伝送する音響電気信号を変えることが可能である。
【0032】
ここで、骨伝導スピーカ部7と空気伝導スピーカ部3へ伝送する音響電気信号を変えるとは、前述したように、同一の音源による音響電気信号に対して、例えば、出力レベル(電圧)、周波数帯、時間的な位相などを変えることができることを意味する。また、複数の音源からの音響電気信号を、骨伝導スピーカ部7と空気伝導スピーカ部3へ別々に伝送可能である場合も含む。すなわち、骨伝導スピーカ部7と空気伝導スピーカ部3へ伝送される音響電気信号が、全く同一である場合を除くものである。
【0033】
次に、聴音装置1の使用方法について説明する。
図3(a)は、聴音装置1を装着した状態を示す正面概念図、
図3(b)は、聴音装置1を装着した状態を示す側方概念図である。なお、聴音装置1は、片耳で用いられてもよく、右耳用と左耳用のセットで用いられてもよい。この際、一対の聴音装置1の通信部同士は有線で接続されてもよく、または、近距離磁気誘導方式などの無線通信や、他の端末を介して無線で接続されてもよい。このように、骨伝導スピーカ部7と空気伝導スピーカ部3とがそれぞれ一対使用されることで、例えばステレオ信号を聴音することもできる。
【0034】
なお、この場合、前述したように、骨伝導スピーカ部7と空気伝導スピーカ部3へ伝送する音響電気信号を変えることが可能であるとは、一対の聴音装置1に対して、RチャンネルとLチャンネルとで音響電気信号を変えることを意味するのではなく、同一のRチャンネル又はLチャンネルに対して、骨伝導スピーカ部7と空気伝導スピーカ部3へ伝送する音響電気信号とが異なることを意味する。すなわち、Rチャンネル及びLチャンネルのそれぞれに対して(右耳用と左耳用のそれぞれの聴音装置1に対して)、骨伝導スピーカ部7と空気伝導スピーカ部3へ伝送する音響電気信号が異なる。
【0035】
本実施形態にかかる聴音装置1は、骨伝導スピーカ部7と空気伝導スピーカ部3の間隔を開き、骨伝導スピーカ部7と空気伝導スピーカ部3で耳介を挟み込むようにして装着される。この際、空気伝導スピーカ部3は、例えば耳孔に挿入されて耳孔の内部に対して空気振動による音を発信する。なお、空気伝導スピーカ部3は、必ずしも耳孔に挿入される必要はなく、耳孔の近傍に配置されればよい。
【0036】
一方、骨伝導スピーカ部7は、耳介の裏側に当接される。この際、骨伝導スピーカ部7の振動伝達面は、耳介の裏側又は耳介の後方の頭部となる。この際、連結部5の弾性力によって、骨伝導スピーカ部7は、耳介の裏側又は耳介の後方の頭部に押し付けられる。なお、本実施形態では、骨伝導スピーカ部7は、略円柱状であるため、振動伝達面は曲面で構成されるが、平坦面であってもよく、骨伝導スピーカ部7の形状は特に限定されない。
【0037】
ここで、骨伝導スピーカ部7から骨(軟骨含む)へ効率よく振動を伝達するためには、例えば、10φ以下のサイズの振動子が用いられることが望ましい。このようにすることで、小さなスペースに骨伝導スピーカ部7を配置することができる。
【0038】
また、空気伝導スピーカ部3の耳孔挿入部と、骨伝導スピーカ部7の振動伝達面は、装着者の皮膚に直接触れるので、装着時に痛みや不快感を与えない素材で構成される。例えば、合成樹脂や合成ゴム等が挙げられ、これに限られないが、可撓性や柔軟性を有する素材で構成されることが好ましい。
【0039】
次に、制御部11による制御方法について説明する。本実施形態では、例えば、同一の音源による音響電気信号に対して、出力レベルを任意に調整可能である。すなわち、空気伝導スピーカ部3と骨伝導スピーカ部7の出力レベル(音量)を任意に調整することができる。このため、骨伝導スピーカを始めて使用する使用者に対しは、相対的に骨伝導スピーカ部7の出力レベルを下げて、空気伝導スピーカ部3の出力レベルを上げることで、骨伝導スピーカの初期の使用時に感じていた違和感を低減することができる。また、使用時間に応じて、徐々に相対的に骨伝導スピーカ部7の出力レベルを相対的に上げていくことで、いわゆる慣れによって骨伝導スピーカの違和感を抑制することができる。なお、出力レベルの変更は、使用時間に応じて自動で調整してもよく、使用者の操作によって調整してもよい。
【0040】
なお、最終的には空気伝導スピーカ部3の出力レベルを0にするのではなく、骨伝導スピーカ部7と空気伝導スピーカ部3とで適切な出力レベルバランスで聴音することが望ましい。また、骨伝導スピーカ部7と空気伝導スピーカ部3へ伝送する音響電気信号の出力レベルを変えるのではなく、又はこれに加えて、骨伝導スピーカ部7と空気伝導スピーカ部3へ伝送する音響電気信号の周波数帯を変えてもよい。なお、周波数帯を変えるとは、各周波数帯の出力レベルのバランスを変えることをいう。
【0041】
一般的な骨伝導スピーカと空気伝導スピーカとを比較すると、低音域(低周波帯域)は、骨伝導スピーカの方がより有利であり、高音域(高周波帯域)は、空気伝導スピーカの方がより有利であると考えられる。このため、低音域は骨伝導スピーカ部7をメインとして空気伝導スピーカ部3を補助とし、相対的に高音域は空気伝導スピーカ部3をメインとして骨伝導スピーカ部7を補助として使用することで、より効率よく音質を高めることができる。すなわち、骨伝導スピーカ部7に対しては、低音域の出力レベルを相対的に上げて、高音域の出力レベルを相対的に下げ、空気伝導スピーカ部3に対しては、低音域の出力レベルを相対的に下げて、高音域の出力レベルを相対的に上げればよい。
【0042】
また、骨伝導スピーカ部7と空気伝導スピーカ部3へ伝送する音響電気信号の時間的な位相を変えてもよい。骨伝導スピーカ部7と空気伝導スピーカ部3で発せられる音をわずかに時間的にずらすことで、反響音を演出することもできる。また、骨伝導による振動の伝達は骨を伝わる個体伝導であり、空気伝導による伝達スピードより格段に早く伝わるため、同一の音源による音響電気信号を加えた場合、骨伝導スピーカ部7と空気伝導スピーカ部3に時間差が発生し違和感を生ずる。骨伝導スピーカ部7と空気伝導スピーカ部3で発せられる音を時間的にずらすことでこの違和感は解消可能である。
【0043】
この際、通常のイヤホン等によって同様の手法で反響音を演出する場合には、元の音に対して、わずかに遅らせた音を重ね合わせ、合成された音を同一の媒体で聴音することとなる。一方、本実施形態では、元の音と反響音を別の媒体で聞くことができるため、より臨場感のある演出が可能である。なお、反響音は元の音よりも小さな音であるため、小さな音が有利な空気伝導スピーカ部3が反響音を受け持つことで、より特性に適した効果で聴音することができる。
【0044】
なお、聴音装置の形態としては、
図1に示す例には限られない。
図4(a)は、聴音装置1aを示す図である。なお、以下の説明において、聴音装置1と同様の構成については
図1~
図3と同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0045】
聴音装置1aは聴音装置1と略同様の構成であるが、耳掛け部17が設けられる点で異なる。耳掛け部17は、前述した連結部5と同様に、空気伝導スピーカ部3と骨伝導スピーカ部7とを連結して一体化する機能に加えて、耳介の上方に引っ掛けることが可能である。
【0046】
図4(b)は、聴音装置1aの使用状態を示す図である。聴音装置1aも聴音装置1と同様に、空気伝導スピーカ部3が耳孔の内部(耳孔の近傍)に配置され、骨伝導スピーカ部7が耳介の背面側に配置される。この際、耳掛け部17が耳介の上方に引っ掛けられる。このため、より確実に骨伝導スピーカ部7のずれが抑制され、所定の位置で保持することができる。
【0047】
また、
図5(a)は、聴音装置1bを示す図である。聴音装置1bは聴音装置1と略同様の構成であるが、クリップ19が設けられる点で異なる。また、骨伝導スピーカ部7と空気伝導スピーカ部3とがケーブル9aで接続される。このように、骨伝導スピーカ部7と空気伝導スピーカ部3とはケーブル9aで一体化してもよい。なお、以下の説明では、音源等との接続に使用されるケーブル9の図示を省略する。
【0048】
クリップ19は、骨伝導スピーカ部7と対向するように配置される。クリップ19は、例えばばね等によって開状態と閉状態とを保持することができる。なお、クリップ19の形態や位置は図示した例には限られない。
【0049】
図5(b)は、聴音装置1bの使用状態を示す図である。聴音装置1bも聴音装置1と同様に、空気伝導スピーカ部3が耳孔の内部(耳孔の近傍)に配置される。一方、骨伝導スピーカ部7は、耳たぶにクリップ19によって取り付けられる。すなわち、聴音装置1bでは、耳たぶ近傍(又は耳たぶ上部の凹部)に対して振動を伝達可能である。このように、骨伝導スピーカ部7は、耳介の前面側に振動を伝達してもよい。
【0050】
また、
図6(a)は、聴音装置1cを示す図である。聴音装置1cは聴音装置1と略同様の構成であるが、二つの聴音装置(二組の空気伝導スピーカ部3及び骨伝導スピーカ部7)が、ヘッドバンド21によって連結される。
【0051】
図6(b)は、聴音装置1cの使用状態を示す図である。聴音装置1cを頭部に装着すると、空気伝導スピーカ部3が耳孔の内部(耳孔の近傍)に配置され、骨伝導スピーカ部7は、耳介の裏側に配置される。なお、空気伝導スピーカ部3と骨伝導スピーカ部7とは、前述した連結部5と同様に弾性体で連結される。このため、骨伝導スピーカ部7は、耳介の裏面又は耳介の裏側の頭部に押し付けられ、効率よく振動を対象部へ伝達することができる。
【0052】
また、
図7(a)は、聴音装置1dを示す図である。聴音装置1dは眼鏡型であり、耳掛け部23に骨伝導スピーカ部7と空気伝導スピーカ部3とが配置される。なお、空気伝導スピーカ部3は、耳掛け部23(又は骨伝導スピーカ部7)に対してケーブル9aによって接続される。また、制御部やバッテリーなどは耳掛け部23の先端部の本体部25に配置される。
【0053】
図7(b)は、聴音装置1dの使用状態を示す図である。聴音装置1dを頭部に装着すると、空気伝導スピーカ部3が耳孔の内部(耳孔の近傍)に配置され、骨伝導スピーカ部7は、こめかみ部近傍に配置される。なお、骨伝導スピーカ部7は、耳掛け部23に対して弾性変形可能な部材で連結される。このため、骨伝導スピーカ部7は、こめかみ部近傍に押し付けられ、効率よく振動を対象部へ伝達することができる。
【0054】
以上、本実施の形態によれば、空気伝導スピーカ部3と骨伝導スピーカ部7の両方を有するため、それぞれの特性に応じて適切に音響電気信号を制御することで、より効果的に聴音することができる。
【0055】
次に、第2の実施形態について説明する。
図8は、聴音装置の構成図である。なお、以下の実施形態は、上述したいずれの聴音装置に対しても適用可能である。また、以下の説明において、第1の実施形態と同様の構成については
図1~
図7と同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0056】
本実施形態では、複数の通信部13a、13bと、複数のアンプ15a、15bが設けられる。通信部13a、13bは、例えば一方が無線通信であり、他方が有線(ケーブル9)であってもよい。又は、ケーブル9を用いずに、両方を無線通信としてもよい。制御部11は、一方の通信部13aで受信した音響電気信号をアンプ15aに送り、他方の通信部13bで受信した音響電気信号をアンプ15bに送る。アンプ15aは空気伝導スピーカ部3と接続され、アンプ15bは骨伝導スピーカ部7と接続される。すなわち、通信部13aで受けた音は、空気伝導スピーカ部3で聴音可能である。一方、通信部13bで受けた音は、骨伝導スピーカ部7で聴音可能である。
【0057】
このように、本実施形態では、複数のアンプ15a、15bを用い、骨伝導スピーカ部7へ伝送する音響電気信号の音源と、空気伝導スピーカ部3へ伝送する音響電気信号の音源とが異なる。例えば、一方で音楽を聴きながら、他方では電話等の音声を聞くことができる。この際、空気伝導スピーカ部3と骨伝導スピーカ部7のそれぞれの音量のバランスや、音楽と通話とでそれぞれ適した周波数帯に代えることで、使用者に応じて最適な条件で聴音が可能である。
【0058】
なお、
図9に示すように、一方の通信部に代えてマイク27を用いてもよい。すなわち、
図8に示す通信部13bにマイク27を接続し、骨伝導スピーカ部7と空気伝導スピーカ部3の一方の音源が、マイク27で得られた音源となる。例えば、一方では音楽を聴きながら、他方では環境音や音声を聴音することができる。すなわち、音楽を聴きながら、他方を補聴器として使用することができる。
【0059】
第2の実施形態によれば、第1の実施形態と同様の効果を得ることができる。このように、聴音装置は、必ずしも同一の音源でなくてもよく、それぞれ別の音源からの音響電気信号を空気伝導スピーカ部3と骨伝導スピーカ部7のそれぞれに伝送してもよい。
【0060】
以上、添付図を参照しながら、本発明の実施の形態を説明したが、本発明の技術的範囲は、前述した実施の形態に左右されない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0061】
例えば、前述したように、空気伝導スピーカ部3と骨伝導スピーカ部7へ異なる音響電気信号を伝送する際に、その内容や程度を使用者が操作部で適宜選択及び調整を可能としてもよい。また、空気伝導スピーカ部3と骨伝導スピーカ部7とは、必ずしも同数でなくてもよい。例えば、左右で二つの空気伝導スピーカ部3に対し、骨伝導スピーカ部7は、一つ又は三つ以上としてもよい。また、空気伝導スピーカ部3にはノイズキャンセリング機能を設けてもよい。
【符号の説明】
【0062】
1、1a、1b、1c、1d………聴音装置
3………空気伝導スピーカ部
5………連結部
7………骨伝導スピーカ部
9、9a………ケーブル
11………制御部
13、13a、13b………通信部
15、15a、15b………アンプ
17………耳掛け部
19………クリップ
21………ヘッドバンド
23………耳掛け部
25………本体部
27………マイク