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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024178854
(43)【公開日】2024-12-25
(54)【発明の名称】聴音装置
(51)【国際特許分類】
   H04R 1/00 20060101AFI20241218BHJP
   H04R 25/00 20060101ALI20241218BHJP
   H04R 3/00 20060101ALI20241218BHJP
【FI】
H04R1/00 317
H04R25/00 F
H04R3/00 310
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023097322
(22)【出願日】2023-06-13
(71)【出願人】
【識別番号】516040866
【氏名又は名称】BoCo株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100096091
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 誠一
(72)【発明者】
【氏名】謝 端明
(72)【発明者】
【氏名】荒牧 純一
【テーマコード(参考)】
5D017
5D220
【Fターム(参考)】
5D017AB13
5D220AA16
5D220AB01
5D220AB06
5D220AB08
5D220DD03
(57)【要約】
【課題】 骨伝導スピーカをより効率よく利用可能な聴音装置を提供する。
【解決手段】 聴音装置1は、主に、複数の骨伝導スピーカ3a、3b、3c、3d、本体部7、ヘッドバンド5等から構成される。ヘッドバンド5は、使用者の頭部に装着可能である。聴音装置1は、制御部、通信部、アンプ等を有する。制御部は、通信部で受けた音響電気信号に対して、アンプを制御可能である。アンプは、骨伝導スピーカ3a、3b、3c、3dにそれぞれ適した音響電気信号の処理を行い、骨伝導スピーカ3a、3b、3c、3dに伝送可能である。すなわち、通信部で受けた同一の音響電気信号に対して、アンプは、最低4チャンネルの出力が可能であり、骨伝導スピーカ3a、3b、3c、3dへ伝送する音響電気信号をそれぞれ変えることが可能である。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
聴音装置であって、
音響電気信号を振動に変換して振動を出力する3つ以上の骨伝導スピーカを有し、
少なくとも一部の前記骨伝導スピーカに伝送される音響電気信号を、他の前記骨伝導スピーカに伝送される音響電気信号に対して変えることが可能であることを特徴とする聴音装置。
【請求項2】
少なくとも一部の前記骨伝導スピーカへ伝送する音響電気信号の出力レベルをそれぞれ変えることが可能であることを特徴とする請求項1記載の聴音装置。
【請求項3】
少なくとも一部の前記骨伝導スピーカへ伝送する音響電気信号の周波数帯をそれぞれ変えることが可能であることを特徴とする請求項1記載の聴音装置。
【請求項4】
少なくとも一部の前記骨伝導スピーカへ伝送する音響電気信号の時間的な位相をそれぞれ変えることが可能であることを特徴とする請求項1記載の聴音装置。
【請求項5】
複数のアンプを有し、いずれかの前記骨伝導スピーカへ伝送する音響電気信号の音源と、他の前記骨伝導スピーカへ伝送する音響電気信号の音源とが異なることを特徴とする請求項1記載の聴音装置。
【請求項6】
複数の前記骨伝導スピーカを、少なくとも頭部の周方向の異なる位置に配置して保持可能であることを特徴とする請求項1記載の聴音装置。
【請求項7】
複数の音源に対して、音源ごとに、前記骨伝導スピーカの出力レベルを変えることで、使用者がそれぞれ別々の音源からの音響電気信号を、頭部の異なる位置で聴音可能であることを特徴とする請求項1記載の聴音装置。
【請求項8】
複数のマイクをさらに具備し、
複数の前記マイクを、使用者の周囲の異なる方向に向けて配置可能であり、
各方向の前記マイクによって得られたそれぞれの音響電気信号を、それぞれの前記マイクの方向に対応した方向の前記骨伝導スピーカに伝送可能であることを特徴とする請求項1記載の聴音装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、骨に振動を与えることで音を認識させる骨伝導スピーカを有する聴音装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、音楽や会話を聴く手段として、ヘッドホンやイヤホンなどのような装置(以下、聴音装置という。)が広く使用されてきている。このような聴音装置としては、空気伝導を利用したものと骨伝導を利用したものとがある。空気伝導を利用したものは、電気信号として入力された音源を空気の振動に変換して鼓膜に伝えて振動させ、鼓膜の振動が耳の奥の中耳を通って、脳に音の情報が伝達され認識される仕組みを利用している。
【0003】
一方、骨伝導を利用した聴音装置は、電気信号として入力された音響信号を機械的な振動に変換し、その振動を適切な位置から骨に与えて骨に振動を伝え、その振動により伝わる骨伝導音で音を認識させるものである。この骨伝導を利用した聴音装置は、ヘッドホンやイヤホンのように耳孔に挿入して使用する必要がなく、耳には周囲の音が遮蔽されることなく入ってくるので、装着していても安全である。また、鼓膜の振動を利用しないことから、難聴の人でも音を認識することができ、補聴器等への利用も進められている(例えば特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平02-62199号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の空気伝導スピーカは、両耳に対して装着可能なように1対をワンセットとして使用されることが多い。このように、一対の空気伝導スピーカを用いることで、いわゆるステレオ音源を聴音することが可能である。すなわち、両方の耳から、Lチャンネルの音響電気信号と、Rチャンネルの音響電気信号をそれぞれ聴音することで、より広がりのある音楽等を聴音可能である。
【0006】
一方、従来の空気伝導スピーカに置き換わるように使用されてきた骨伝導スピーカとしても、通常は1対をワンセットして使用されることが多い。ここで、発明者らは、両方の耳介を通じて使用されるわけではない骨伝導スピーカであっても、振動を伝達する位置に応じて、音の聞こえる方向を知覚可能であることを見出した。すなわち、一対の骨伝導スピーカを、例えば頭部の両側にそれぞれ配置すれば、空気伝導スピーカと同様にステレオ音源を知覚可能であることを見出した。このため、より効果的に骨伝導スピーカを使用する方法が望まれる。
【0007】
本発明は、これらのような問題に鑑みてなされたもので、骨伝導スピーカをより効率よく利用可能な聴音装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前述した目的を達成するため、本発明は、聴音装置であって、音響電気信号を振動に変換して振動を出力する3つ以上の骨伝導スピーカを有し、いずれかの前記骨伝導スピーカに伝送される音響電気信号を、他の前記骨伝導スピーカに伝送される音響電気信号に対して変えることが可能であることを特徴とする聴音装置である。
【0009】
少なくとも一部の前記骨伝導スピーカへ伝送する音響電気信号の出力レベルをそれぞれ変えることが可能であってもよい。
【0010】
少なくとも一部の前記骨伝導スピーカへ伝送する音響電気信号の周波数帯をそれぞれ変えることが可能であってもよい。
【0011】
少なくとも一部の前記骨伝導スピーカへ伝送する音響電気信号の時間的な位相をそれぞれ変えることが可能であってもよい。
【0012】
複数のアンプを有し、いずれかの前記骨伝導スピーカへ伝送する音響電気信号の音源と、他の前記骨伝導スピーカへ伝送する音響電気信号の音源とが異なってもよい。
【0013】
複数の前記骨伝導スピーカを、少なくとも頭部の周方向の異なる位置に配置して保持可能であってもよい。
【0014】
複数の音源に対して、音源ごとに、前記骨伝導スピーカの出力レベルを変えることで、使用者がそれぞれ別々の音源からの音響電気信号を、頭部の異なる位置で聴音可能であってもよい。
【0015】
複数のマイクをさらに具備し、複数の前記マイクを、使用者の周囲の異なる方向に向けて配置可能であり、各方向の前記マイクによって得られたそれぞれの音響電気信号を、それぞれの前記マイクの方向に対応した方向の前記骨伝導スピーカに伝送可能であってもよい。
【0016】
本発明によれば、3つ以上の骨伝導スピーカを用い、少なくとも一部の骨伝導スピーカに伝送される音響電気信号を、他の骨伝導スピーカに伝送される音響電気信号に対して変えることで、従来のように単に2か所で振動を受けて聴音する場合と比較して、より効果的に骨伝導スピーカからの音を聴音することができる。
【0017】
例えば、少なくとも一部の骨伝導スピーカへ伝送する音響電気信号の出力レベルを変えることが可能であれば、部位によって聞く音量を調整することができる。このため、例えば、所定の方向の音量を大きくすることで、その方向から音が聞こえるような、音に方向性を感じることができる。
【0018】
また、少なくとも一部の骨伝導スピーカへ伝送する音響電気信号の周波数帯を変えることが可能であれば、低音域と高音域とで聞こえる方向を変えることができる。このため、より臨場感のある音を聴音可能である。
【0019】
また、少なくとも一部の骨伝導スピーカへ伝送する音響電気信号の時間的な位相を変えることが可能であれば、同じ音源の音をわずかにずらして聴音することができる。このため、反響音などを再現することができる。こ
【0020】
また、複数のアンプを用い、いずれかの骨伝導スピーカへ伝送する音響電気信号の音源と、他の骨伝導スピーカへ伝送する音響電気信号の音源を異なるようにすることで、例えば、一方で音楽等を聴きながら、他方で電話での通話等を行うこともできる。
【0021】
また、複数の骨伝導スピーカを、少なくとも頭部の周方向の異なる位置に配置して保持可能であれば、より確実に音の方向性を感じることができる。
【0022】
また、複数の音源に対して、音源ごとに、骨伝導スピーカの出力レベルを変えることで、使用者がそれぞれ別々の音源からの音響電気信号を、頭部の異なる位置で聴音可能であれば、例えば、音源ごとに、聞こえる方向性を感じることができる。例えば、複数の人からの音声を聴音する際、それぞれの人ごとに、聞こえる骨伝導スピーカの出力レベルを変えることで、あたかも、別々の方向からそれぞれの人が発声しているように、音声を聴音可能である。
【0023】
また、複数のマイクを異なる方向に向けて配置すれば、マイクで受けた音の方向を算出可能であり、これに応じて骨伝導スピーカの出力レベルを調整することで、音の受けた方向に対応した方向からの音として聴音可能である。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、骨伝導スピーカをより効率よく利用可能な聴音装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】聴音装置1の概略図。
図2】聴音装置1の構成図。
図3】(a)、(b)は、利用者が聴音装置1を使用した状態を示す概念図。
図4】聴音装置1aの概略図。
図5】聴音装置1aを示す構成図。
図6】聴音装置1bを示す構成図。
図7】(a)、(b)は、聴音装置1bの使用方法を示す概念図。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、図面を参照しながら、本発明の第1の実施形態について説明する。図1は、聴音装置1を示す図である。聴音装置1は、主に、複数の骨伝導スピーカ3a、3b、3c、3d、本体部7、ヘッドバンド5等から構成される。骨伝導スピーカ3a、3b、3c、3dは、音響電気信号を振動に変換して振動を出力し、対象部に接触させることで、振動を直接対象部に伝達する従来の骨伝導型のスピーカを適用可能である。
【0027】
例えば、骨伝導スピーカ3a、3b、3c、3dの内部には、振動部が収容され、電気信号として入力された音響信号を機械的な振動に変換して振動を出力することができる。なお、音響電気信号を振動に変換するとは、外部から入力された音響電気信号を機械振動に変換することであり、例えば、音響電気信号によってダイヤフラム等を振動させることで、音響電気信号を骨に伝達する機械振動に変換する。なお、本発明においては、振動部における振動方式は、特に限定されるものではなく、音響電気信号を機械振動に変換できればよく、圧電式、電磁式、超磁歪など、従来から用いられている方法を採用することができる。
【0028】
本実施形態では、骨伝導スピーカ3a、3b、3c、3dが、所定の間隔をあけてヘッドバンド5に配置される。ヘッドバンド5は、使用者の頭部に装着可能である。したがって、図示した例では、使用者の頭頂部近傍に骨伝導スピーカ3aが配置され、頭部の周方向(おでこから後頭部にかけて)に3つの骨伝導スピーカ3b、3c、3dが所定の間隔で配置される。この際、それぞれの骨伝導スピーカ3a、3b、3c、3dの振動伝達面が、使用者の対象部に押し当てられて接触する。
【0029】
なお、ヘッドバンド5の形態は図示した例には限られず、帽子やヘルメットの内部に複数の骨伝導スピーカが配置されてもよく、VR用ゴーグルなどと組み合わせてもよい。また、骨伝導スピーカ3a、3b、3c、3dの配置や個数は図示した例には限られず、少なくとも3つの骨伝導スピーカが配置されればよい。この際、複数(例えば3つ以上)の骨伝導スピーカが、頭部の周方向の異なる位置に配置されて保持されることが望ましい。
【0030】
ヘッドバンド5の一部には、本体部7が配置される。聴音装置1では、本体部7の内部に、バッテリーや基板等が収容される。ヘッドバンド5には、本体部7からの電気信号や電力を各骨伝導スピーカ3a、3b、3c、3dに伝達するための配線等が収容される。なお、バッテリーや基板等は、本体部7ではなく、各骨伝導スピーカ3a、3b、3c、3dの内部に配置してもよい。また、操作部を本体部7又はヘッドバンド5に設けてもよい。
【0031】
次に、聴音装置1の構成について説明する。図2は、聴音装置1の構成を示すブロック図である。なお、バッテリー及び操作部等については省略する。聴音装置1は、制御部11、通信部13、アンプ15等を有する。なお、前述したように、制御部11、通信部13、アンプ15等は、本体部7に収容されてもよく、骨伝導スピーカやヘッドバンド5に収容されてもよく、それぞれに分配して配置されてもよい。
【0032】
なお、通信部13は、外部から有線によって音響電気信号を受信してもよく、他の端末等からの音響電気信号を無線で受信することが可能な、例えばBluetooth(登録商標)などの近距離無線通信で受信してもよい。また、有線の場合には、制御部11、通信部13、アンプ15等(バッテリー及び操作部等含む)を別体として、ケーブルで接続してもよい。
【0033】
制御部11は、通信部13で受けた音響電気信号に対して、アンプ15を制御可能である。アンプ15は、骨伝導スピーカ3a、3b、3c、3dにそれぞれ適した音響電気信号の処理を行い、骨伝導スピーカ3a、3b、3c、3dに伝送可能である。すなわち、通信部13で受けた同一の音響電気信号に対して、アンプ15は、最低4チャンネルの出力が可能であり、骨伝導スピーカ3a、3b、3c、3dへ伝送する音響電気信号をそれぞれ変えることが可能である。なお、全ての骨伝導スピーカ3a、3b、3c、3dに対して伝送する音響電気信号を変えるのではなく、少なくとも一部の骨伝導スピーカに伝送される音響電気信号を、他の骨伝導スピーカに伝送される音響電気信号に対して変えることが可能であればよい。
【0034】
ここで、骨伝導スピーカ3a、3b、3c、3dへ伝送する音響電気信号を変えるとは、前述したように、同一の音源による音響電気信号に対して、例えば、出力レベル(電圧)、周波数帯、時間的な位相などを変えることができることを意味する。また、複数の音源からの音響電気信号を、骨伝導スピーカ3a、3b、3c、3dへ別々に伝送可能である場合も含む。すなわち、骨伝導スピーカ3a、3b、3c、3dへ伝送される音響電気信号が、全て同一である場合を除くものである。
【0035】
次に、聴音装置1の使用例について説明する。図3(a)は、聴音装置1を装着した状態を示す平面概念図、図3(b)は、聴音装置1を装着した状態を示す正面概念図である。なお、図3(a)、図3(b)は、ヘッドバンド5及び本体部7の図示を省略し、骨伝導スピーカ3a、3b、3c、3dの配置のみを示す図である。
【0036】
本実施形態にかかる聴音装置1は、ヘッドバンド5を頭部に装着することで、骨伝導スピーカ3a、3b、3c、3dが、頭部の各部に当接されて押し付けられる。ここで、骨伝導スピーカ3a、3b、3c、3dから骨(軟骨含む)へ効率よく振動を伝達するためには、例えば、10φ以下のサイズの振動子が用いられることが望ましい。このようにすることで、小さなスペースに骨伝導スピーカ3a、3b、3c、3dを配置することができる。
【0037】
また、骨伝導スピーカ3a、3b、3c、3dの振動伝達面は、装着者の皮膚に直接触れるので、装着時に痛みや不快感を与えない素材で構成される。例えば、合成樹脂や合成ゴム等が挙げられ、これに限られないが、可撓性や柔軟性を有する素材で構成されることが好ましい。
【0038】
次に、制御部11による制御方法について説明する。本実施形態では、例えば、同一の音源による音響電気信号に対して、出力レベルを任意に調整可能である。すなわち、骨伝導スピーカ3a、3b、3c、3dの出力レベル(音量)を任意に調整することができる。表1は、骨伝導スピーカ3a、3b、3c、3dの出力レベル比の一例を示す。
【0039】
【表1】
【0040】
前述したように、発明者らは、骨伝導スピーカによって振動が伝達される部位を、使用者が得られる音の方向として感じることができることを見出した。また、さらに鋭意研究の結果、複数の骨伝導スピーカの出力レベルを調整することで、骨伝導スピーカの配置方向ではない方向(複数の骨伝導スピーカの配置の合成方向)からの音として感じることができることを見出した。
【0041】
このため、表1に示すように、骨伝導スピーカ3a、3b、3c、3dの少なくとも一部へ伝送する音響電気信号の出力レベル比をそれぞれ変えると、同一の音であっても、その音の方向性を付与することができる。例えば、骨伝導スピーカ3a、3b、3c、3dの出力レベル比を0:50:50:0(設定A)に設定すると、図3(a)において、方向Aから音が聞こえるように感じることができる。すなわち、使用者は、骨伝導スピーカ3b、3cの中間から音が聞こえるように感じることができる。
【0042】
同様に、表1のB~Hのように骨伝導スピーカ3a、3b、3c、3dの出力レベル比を変えると、図3(a)に示すように、方向B~Hからそれぞれ音が聞こえるように感じることができる。さらに、表1のI~Kのように設定することで、図3(b)に示すように、方向I~Kからそれぞれ音が聞こえるように感じることができる。このように、四つの骨伝導スピーカ3a、3b、3c、3dの出力レベル比を調整することで、使用者は、3次元的な任意の方向からの音として感じることができる。
【0043】
また、骨伝導スピーカ3a、3b、3c、3dへ伝送する音響電気信号の出力レベルを変えるのではなく、又はこれに加えて、骨伝導スピーカ3a、3b、3c、3dの少なくとも一部へ伝送する音響電気信号の周波数帯をそれぞれ変えてもよい。なお、周波数帯を変えるとは、各周波数帯の出力レベルのバランスを変えることをいう。
【0044】
このように、骨伝導スピーカ3a、3b、3c、3dの周波数帯を調整することで、例えば低音域の聞こえる方向と、高音域の聞こえる方向とを調整することができる。このため、例えば5.1サラウンドや7.1サラウンド等のように、各方向からの音を任意に変えて、より臨場感のある音を疑似的に感じることが可能である。
【0045】
また、骨伝導スピーカ3a、3b、3c、3dの少なくとも一部へ伝送する音響電気信号の時間的な位相をそれぞれ変えてもよい。骨伝導スピーカ3a、3b、3c、3dからの振動をわずかに時間的にずらすことで、反響音を演出することもできる。
【0046】
この際、通常のイヤホン等によって同様の手法で反響音を演出する場合には、元の音に対して、わずかに遅らせた音を重ね合わせ、合成された音を同一の媒体で聴音することとなる。一方、本実施形態では、元の音と反響音を別の方向から聞くことができるため、より臨場感のある演出が可能である。例えば、表1において、設定Aでは骨伝導スピーカ3b、3cをメイン(前方からの音)とし、骨伝導スピーカ3a、3dを反響音(後方や上方からの音)とすることもできる。
【0047】
以上、本実施の形態によれば、複数の骨伝導スピーカ3a、3b、3c、3dを有し、それぞれに対して適切に音響電気信号を制御することで、より効果的に音声を聴音することができる。
【0048】
次に、第2の実施形態について説明する。図4は、聴音装置1aを示す図であり、図5は、聴音装置1aの構成図である。なお、以下の説明において、第1の実施形態と同一の機能を奏する構成については、図1図3と同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0049】
本実施形態では、通信部に代えて(又は通信部と接続されて)、マイク17a、17b、17c、17dが設けられる。すなわち、聴音装置1aは、補聴器として使用可能である。なお、図4に示す例では、マイク17a、17b、17c、17dは、骨伝導スピーカ3a、3b、3c、3dと同一の位置に配置されたが別の部位であってもよい。なお、複数のマイク17a、17b、17c、17dを異なる方向に向けて配置する場合には、それぞれ指向性マイクであることが望ましい。
【0050】
このように、複数のマイク17a、17b、17c、17dによって、周囲の環境音や声を受けると、制御部11は、それらの音ごとに、それぞれのマイク17a、17b、17c、17dの入力レベルを把握し、その音がどの方向から聞こえているのかを把握することができる。例えば、前述したように、マイク17b、17cが略同一の入力レベルであれば、その中間からの音であると判断することができる。すなわち、音ごとに音声情報と方向情報とを紐づけることができる。
【0051】
このようにして得られた音と方向の情報に応じて、制御部11はアンプ15を制御して、その音が、得られた方向から聞こえるように、骨伝導スピーカ3a、3b、3c、3dの出力レベルを調整することで、使用者は、あたかもその方向からの音として感じることができる。なお、マイクの個数を、骨伝導スピーカよりも少なくしても、同様の効果を得ることができる。
【0052】
第2の実施形態によれば、第1の実施形態と同様の効果を得ることができる。このように、聴音装置を補聴器として使用することもできる。すなわち、複数のマイクを用い、複数のマイクを、使用者の周囲の異なる方向に向けて配置することで、各方向のマイクによって得られたそれぞれの音響電気信号を、それぞれのマイクの方向に対応した方向の骨伝導スピーカに伝送可能である。このため、使用者は、従来の補聴器のように、単に音を大きくするのみではなく、その音の聞こえる方向を感じることができる。
【0053】
次に、第3の実施形態について説明する。図6は、第3の実施形態にかかる聴音装置1bの構成図である。本実施形態では、複数のアンプ15a、15b、15c、15dが設けられる。すなわち、それぞれの骨伝導スピーカ3a、3b、3c、3dごとにアンプ15a、15b、15c、15dが設けられる。
【0054】
なお、図示した例では、通信部13が一つであるが、複数であってもよい。通信部13が一つである場合には、通信部で受信する音響電気信号に、複数の音声情報と共に、その音声情報ごとの識別情報とが紐づけられて含まれており、通信部13で異なる音源からの複数の音声情報を受けることができるものとする。
【0055】
なお、通信部13を複数配置して、アンプごとに異なる通信部を配置する場合には、それぞれの通信部で受けた音声情報に対して、その通信部ごとの識別情報が付加される。すなわち、聴音装置1bは、受信される音響電気信号に対して、元の音源をそれぞれ識別することができる。このため、いずれかの骨伝導スピーカへ伝送する音響電気信号の音源と、他の骨伝導スピーカへ伝送する音響電気信号の音源とが異なるようにすることができる。
【0056】
制御部11は、それぞれの音源(音声情報)ごとに、対応するアンプ15a、15b、15c、15dへ音響電気信号を分配する。このようにすることで、例えば、所定の骨伝導スピーカは音楽用として使用し、他の骨伝導スピーカは電話での通話用などと、用途によって使用する骨伝導スピーカを変えることができる。なお、第1の実施形態と組み合わせて、マイクと通信部を併用して、通信部からの音楽等を所定の骨伝導スピーカで聞きながら、マイクから受けた音声や環境音を、他の所定の骨伝導スピーカで聞くこともできる。この際、通話やマイクで受けた音声に対しては、音声に対応する周波数帯の出力レベルを他の周波数帯よりも上げて、声を聴きやすくしてもよい。
【0057】
次に、聴音装置1bの使用方法の応用例について説明する。聴音装置1bは、図7(a)に示すように、テレビ会議システムに適用可能である。図示した例では、人P~Tの5人の場合を示すが、これには限られない。
【0058】
それぞれの人P~Tが発した音声は、それぞれマイクで拾われて、音声情報が回線を通じて使用者のスピーカへ伝送されて聴音可能となる。この際、前述したように、各人の音声情報には、識別情報が付加されており、音声情報ごとに区別することができる。このため、制御部11は、それぞれの人P~Tの音声情報毎に、骨伝導スピーカの出力レベルを調整可能である。すなわち、元の音源(人P~Tのマイクで拾われた音声)ごとに、アンプ15a、15b、15c、15d(骨伝導スピーカ3a、3b、3c、3d)に対して異なる制御を行う。なお、アンプのチャンネル数が十分あれば、単体のアンプで骨伝導スピーカ3a、3b、3c、3dを制御してもよい。
【0059】
表2は、各人P~Tの音声情報に対する骨伝導スピーカ3a、3b、3c、3dの出力レベルの調整例を示す図である。
【0060】
【表2】
【0061】
前述したように、骨伝導スピーカ3a、3b、3c、3dの出力レベルを調整することで、その方向性を感じることができる。例えば表2に示した例では、人Pの音声は骨伝導スピーカ3b(使用者の左側(図3(a)参照))のみで聴音する。したがって、人Pの音声は、使用者の左側からの音声として感じることができる。また、人Qの音声は骨伝導スピーカ3b(使用者の左側(図3(a)参照))と骨伝導スピーカ3c(使用者の右側(図3(a)参照))とで約7:3の出力レベル比で聴音する。したがって、人Qの音声は、使用者の左斜め前からの音声として感じることができる。
【0062】
このように、人ごとに異なる方向から声が聞こえるように制御することで、図7(b)に示すような人の配置の仮想会議として感じることができる。このようにすることで、例えば、二人が同時に発言した場合、従来のシステムでは、音声が重なって同一のスピーカで聞くことになるため、それらを区別して把握することは困難である。しかし、本聴音装置を用いれば、それぞれの人の音声が異なる方向から聞こえてくるため、通常の会議室での会議と同様に、音声を多少区別して把握することができる。
【0063】
第3の実施形態によれば、第1の実施形態と同様の効果を得ることができる。このように、聴音装置は、必ずしも同一の音源でなくてもよく、それぞれ別の音源(それぞれ別のマイクで拾った音声含む)からの音響電気信号を骨伝導スピーカ3a、3b、3c、3dのそれぞれに伝送してもよい。また、複数の音源に対して、音源ごとに、骨伝導スピーカ3a、3b、3c、3dの出力レベルを変えることで、使用者がそれぞれ別々の音源からの音響電気信号を、頭部の異なる位置で聴音することが可能である。このため、音源ごとに異なる方向からの音として感じることができる。
【0064】
以上、添付図を参照しながら、本発明の実施の形態を説明したが、本発明の技術的範囲は、前述した実施の形態に左右されない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0065】
例えば、前述したように、骨伝導スピーカ3a、3b、3c、3dへ異なる音響電気信号を伝送する際に、その内容や程度を使用者が操作部で適宜選択及び調整を可能としてもよい。
【符号の説明】
【0066】
1、1a、1b………聴音装置
3a、3b、3c、3d………骨伝導スピーカ
5………ヘッドバンド
7………本体部
11………制御部
13………通信部
15、15a、15b、15c、15d………アンプ
17a、17b、17c、17d………マイク
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7