(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024178855
(43)【公開日】2024-12-25
(54)【発明の名称】支障物検知装置、支障物検知方法およびプログラム
(51)【国際特許分類】
B61L 23/00 20060101AFI20241218BHJP
B61L 29/00 20060101ALI20241218BHJP
【FI】
B61L23/00 A
B61L29/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023097323
(22)【出願日】2023-06-13
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)令和4年度、国土交通省、次世代鉄道開発補助金事業、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】598076591
【氏名又は名称】東芝インフラシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高橋 雄介
(72)【発明者】
【氏名】小林 広幸
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 美彦
(72)【発明者】
【氏名】大嶽 達哉
(72)【発明者】
【氏名】瀬戸 直人
(72)【発明者】
【氏名】服部 陽平
(72)【発明者】
【氏名】加藤 紀康
(72)【発明者】
【氏名】瀬川 泰誠
【テーマコード(参考)】
5H161
【Fターム(参考)】
5H161AA01
5H161MM05
5H161MM12
5H161MM14
5H161NN10
5H161PP13
(57)【要約】
【課題】走行経路上の支障物を効率的に検出して、突発的な走行支障にも円滑に対処することができ、鉄道車両の自動運転を効果的に実現すること。
【解決手段】実施形態の支障物検知装置は、中央装置にネットワークで接続され、鉄道車両に搭載される支障物検知装置であって、前記鉄道車両の進行方向の監視情報を取得する取得部と、前記鉄道車両の現在位置を測定する測位部と、前記中央装置から、前記鉄道車両の走行経路と線路とに関する経路情報を取得する経路情報取得部と、前記監視情報と、前記現在位置と、前記経路情報と、に基づいて、前記鉄道車両の走行経路および前記走行経路の周辺の領域である第1の検知領域と、前記第1の検知領域以外の領域である第2の検知領域と、を設定する検知領域設定部と、前記第1の検知領域と前記第2の検知領域とから、支障物を検出する支障物検知部と、前記支障物の検出結果に基づいて、所定の処理を実行する制御部と、を備える。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
中央装置にネットワークで接続され、鉄道車両に搭載される支障物検知装置であって、
前記鉄道車両の進行方向の監視情報を取得する取得部と、
前記鉄道車両の現在位置を測定する測位部と、
前記中央装置から、前記鉄道車両の走行経路と線路とに関する経路情報を取得する経路情報取得部と、
前記監視情報と、前記現在位置と、前記経路情報と、に基づいて、前記鉄道車両の走行経路および前記走行経路の周辺の領域である第1の検知領域と、前記第1の検知領域以外の領域である第2の検知領域と、を設定する検知領域設定部と、
前記第1の検知領域と前記第2の検知領域とから、支障物を検出する支障物検知部と、
前記支障物の検出結果に基づいて、所定の処理を実行する制御部と、
を備える支障物検知装置。
【請求項2】
前記検知領域設定部は、前記鉄道車両以外の鉄道車両の走行経路および周辺の領域を、前記第2の検知領域として設定する、
請求項1に記載の支障物検知装置。
【請求項3】
前記検知領域設定部は、前記鉄道車両の走行経路と隣合う第2の走行経路および前記第2の走行経路の周辺の領域を、前記第2の検知領域として設定する、
請求項2に記載の支障物検知装置。
【請求項4】
前記検知領域設定部は、さらに、踏切および前記踏切の周辺の領域を、前記第2の検知領域として設定する、
請求項2に記載の支障物検知装置。
【請求項5】
前記検知領域設定部は、前記走行経路の前方に、前記鉄道車両の進行方向を切り替えるための分岐器が存在すると判断された場合には、前記監視情報の解析結果または前記経路情報に基づいて、分岐先の経路を前記第1の検知領域に設定する、
請求項1に記載の支障物検知装置。
【請求項6】
前記支障物検知部は、前記支障物として、前記鉄道車両の停止位置を示すための停止位置目標物を検出する、
請求項1に記載の支障物検知装置。
【請求項7】
前記制御部は、前記第1の検知領域で前記支障物が検出された場合、前記鉄道車両を減速または停止させる走行制御を行う、
請求項1に記載の支障物検知装置。
【請求項8】
前記支障物検知部は、前記第1の検知領域で、他の鉄道車両を検出し、
前記制御部は、前記第1の検知領域で、車両基地における前記鉄道車両が入るべき車庫の中に、前記支障物としての停止中の前記他の鉄道車両が検出された場合には、前記鉄道車両を前記他の鉄道車両の手前で停止させる走行制御を行う、
請求項1に記載の支障物検知装置。
【請求項9】
前記制御部は、前記第1の検知領域で前記支障物が検出された場合に、前記走行経路の変更要求を、前記中央装置に送信する、
請求項1に記載の支障物検知装置。
【請求項10】
前記制御部は、さらに、前記第1の検知領域に、前記鉄道車両の進行方向を切り替えるための分岐器が存在する場合には、前記走行経路の変更要求として、前記分岐器の分岐先の変更要求を、前記中央装置に送信する、
請求項9に記載の支障物検知装置。
【請求項11】
前記検知領域設定部は、前記中央装置から前記走行経路が変更された旨の通知および変更後の走行経路を受信した場合には、前記変更後の走行経路およびその周辺の領域を、前記第1の検知領域に設定する、
請求項9に記載の支障物検知装置。
【請求項12】
前記制御部は、前記第2の検知領域で前記支障物が検出された場合、前記支障物が前記第2の検知領域で検出された旨を、前記中央装置に通知する、
請求項1に記載の支障物検知装置。
【請求項13】
中央装置にネットワークで接続され、鉄道車両に搭載される支障物検知装置で実行される支障物検知方法であって、
前記鉄道車両の進行方向の監視情報を取得するステップと、
前記鉄道車両の現在位置を測定するステップと、
前記中央装置から、前記鉄道車両の走行経路と線路とに関する経路情報を取得するステップと、
前記監視情報と、前記現在位置と、前記経路情報と、に基づいて、前記鉄道車両の走行経路および前記走行経路の周辺の領域である第1の検知領域と、前記第1の検知領域以外の領域である第2の検知領域と、を設定するステップと、
前記第1の検知領域と前記第2の検知領域とから、支障物を検出する支障物検知部と、
前記支障物の検出結果に基づいて、所定の処理を実行するステップと、
を含む支障物検知方法。
【請求項14】
中央装置にネットワークで接続され、鉄道車両に搭載される支障物検知装置のコンピュータに実行させるためのプログラムであって、
前記鉄道車両の進行方向の監視情報を取得するステップと、
前記鉄道車両の現在位置を測定するステップと、
前記中央装置から、前記鉄道車両の走行経路と線路とに関する経路情報を取得するステップと、
前記監視情報と、前記現在位置と、前記経路情報と、に基づいて、前記鉄道車両の走行経路および前記走行経路の周辺の領域である第1の検知領域と、前記第1の検知領域以外の領域である第2の検知領域と、を設定するステップと、
前記第1の検知領域と前記第2の検知領域とから、支障物を検出する支障物検知部と、
前記支障物の検出結果に基づいて、所定の処理を実行するステップと、
を前記コンピュータに実行させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、支障物検知装置、支障物検知方法およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、鉄道車両の自動運転が求められている。特に、鉄道車両が多く行き交う都市部や車両基地の構内では、列車集中制御装置等の中央装置によって運転指令による運転制御の際に、走行経路上の支障物の有無を判断して、鉄道車両の走行や構内入替え操車を行う必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007-1519号公報
【特許文献2】特開2022-63907号公報
【特許文献3】国際公開第2021/229701号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本実施形態の課題の一つは、走行経路上の支障物を効率的に検出して、突発的な走行支障にも円滑に対処することができ、鉄道車両の自動運転を効果的に実現することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
実施形態の支障物検知装置は、中央装置にネットワークで接続され、鉄道車両に搭載される支障物検知装置であって、前記鉄道車両の進行方向の監視情報を取得する取得部と、前記鉄道車両の現在位置を測定する測位部と、前記中央装置から、前記鉄道車両の走行経路と線路とに関する経路情報を取得する経路情報取得部と、前記監視情報と、前記現在位置と、前記経路情報と、に基づいて、前記鉄道車両の走行経路および前記走行経路の周辺の領域である第1の検知領域と、前記第1の検知領域以外の領域である第2の検知領域と、を設定する検知領域設定部と、前記第1の検知領域と前記第2の検知領域とから、支障物を検出する支障物検知部と、前記支障物の検出結果に基づいて、所定の処理を実行する制御部と、を備える。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】
図1は、実施形態にかかる鉄道車両の概略構成の一例を示す図である。
【
図2】
図2は、実施形態における車両基地の構内の概略を示す模式図である。
【
図3】
図3は、実施形態にかかる走行支障物検知装置の機能的構成の一例を示すブロック図である。
【
図4】
図4は、実施形態にかかる走行経路データの一例を示す図である。
【
図5】
図5は、実施形態における第1の検知領域と第2の検知領域の設定例を示す説明図である。
【
図6】
図6は、実施形態における第1の検知領域と第2の検知領域の他の設定例を示す説明図である。
【
図7】
図7は、実施形態において第2の検知領域の他の設定例を示す説明図である。
【
図8】
図8は、実施形態において分岐器が検出された撮像画像の例を示す説明図である。
【
図9】
図9は、実施形態において人が検知された場合の例を示す説明図である。
【
図10】
図10は、実施形態において停止位置目標物が検知された場合の例を示す説明図である。
【
図11】
図11は、実施形態にかかる支障物検知処理の手順の一例を示すフローチャートである。
【
図12】
図12は、実施形態にかかる第1の検知領域設定処理の手順の一例を示すフローチャートである。
【
図13】
図13は、実施形態にかかる第2の検知領域設定処理の手順の一例を示すフローチャートである。
【
図14】
図14は、実施形態にかかる支障物検知および制御処理の手順の一例を示すフローチャートである。
【
図15】
図15は、実施形態にかかる支障物に応じた処理の手順の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、添付の図面を用いて、本実施形態にかかる支障物検知装置を備えた鉄道車両について説明する。
【0008】
(実施形態)
図1は、実施形態にかかる鉄道車両の概略構成の一例を示す図である。
図1に示すように、本実施形態にかかる鉄道車両RVは、レールR上を走行する。鉄道車両RVは、センサ10と、アンテナ50と、慣性センサ70と、走行支障物検知装置100と、記録装置30と、表示装置40と、を含む。
【0009】
センサ10は、鉄道車両RVの進行方向を撮像可能に設けられるカメラやLiDAR(Light Detection and Ranging)等が該当する。
カメラは、可視光により撮影する装置である。カメラは、2次元データである撮影画像を生成する。また、カメラは、ステレオカメラなどの対象物までの距離を測定可能な装置であってもよい。カメラは、鉄道車両RVの前方、つまり鉄道車両RVの進行方向に向けられる。これにより、カメラは、鉄道車両RVの進行方向の撮影画像を撮影する。なお、カメラは、ステレオカメラに限らず、単眼カメラであってもよい。
【0010】
LiDARは、レーザー光を照射し、レーザー光の反射光が戻ってくるまでの時間により、対象物までの距離を測定する。LiDARは、3次元データである距離画像を生成する。距離画像とは、複数の画素のそれぞれが対象物までの距離を示した画像である。LiDARは、鉄道車両RVの前方、つまり鉄道車両RVの進行方向に向けられる。これにより、LiDARは、鉄道車両RVの進行方向の距離画像を撮影する。なお、鉄道車両RVは、3次元データを取得する装置として、LiDARに限らず他の装置を有していてもよい。
【0011】
ここで、撮像画像と距離画像は、監視情報の一例である。
センサ10としては、この他、カラー画像および距離画像を同時に出力可能な光学式センサを用いても良く、例えば、パターン投光方式、フォトグラメトリー方式、Time Of Flight方式の光学式センサを用いることができる。
【0012】
アンテナ50は、鉄道車両RVの幅方向の中央付近に設置され、測位用の人工衛星から送信された電波信号を受信する。電波信号は、鉄道車両RVの位置を計測するための情報を含む信号である。
【0013】
慣性センサ70は、例えば、3軸加速度センサ、3軸ジャイロセンサおよび3軸地磁気センサ、車輪速センサおよび回転計発電機(TG:タコジェネレータ)等の自立型センサである。慣性センサ70は、各センサの出力データを走行支障物検知装置100に出力する。
【0014】
走行支障物検知装置100は、鉄道車両RVの走行の支障となる支障物を検知する支障物検知装置の一例である。記録装置30は、走行支障物検知装置100による支障物の検知結果を記憶する。表示装置40は、センサ10によって鉄道車両RVの進行方向を撮像して得られる画像や、走行支障物検知装置100による支障物の検知結果等の各種情報を表示する。
【0015】
走行支障物検知装置100は、
図1に示すように、鉄道車両RVの外部に設けられた中央装置200と無線ネットワークで接続される。中央装置200は、サーバ装置などの情報処理装置である。中央装置200は、鉄道車両RVの走行を制御する。例えば、中央装置200は、鉄道車両RVの走行ルートや、走行ルートの各地点の通過時刻などを有する走行ルートを鉄道車両RVに送信する。また、中央装置200は、鉄道車両RVが走行ルートで検出した検出結果を受信する。
【0016】
本実施形態の鉄道車両RVは、鉄道車両が多く行き交う都市部や車両基地の構内を自動運転で走行する。
【0017】
図2は、実施形態における車両基地の構内の概略を示す模式図である。
図2に示すように、車両基地の構内には、多数のレールRが敷設されており、また、鉄道車両RVを入庫するための車庫300が複数設けられている。
図2に示すように、車両基地の構内には、多数の鉄道車両RVが走行するようになっている。
【0018】
次に、本実施形態にかかる走行支障物検知装置100の詳細について説明する。
図3は、実施形態にかかる走行支障物検知装置100の機能的構成の一例を示すブロック図である。
【0019】
本実施形態にかかる走行支障物検知装置100は、
図3に示すように、画像取得部101と、測位部102と、経路情報取得部103と、通信部104と、検知領域設定部105と、支障物検知部106と、制御部107と、記憶部110と、を主に備えている。
【0020】
記憶部110は、ROM(Read Only Memory)、フラッシュメモリ、HDD(Hard Disk Drive)、SDカード等の不揮発性の記憶媒体、およびRAM(Random Access Memory)、レジスタ等の揮発性の記憶媒体を含む。そして、記憶部110は、鉄道車両RVが有するプロセッサが実行するプログラム等の各種情報を記憶する。
【0021】
画像取得部101は、センサ10のカメラで撮像された監視情報としての撮像画像を取得する。また、画像取得部101は、センサ10のLiDARから監視情報としての距離画像を取得する。
【0022】
測位部102は、鉄道車両RVの現在位置を測位する。具体的には、測位部102は、アンテナ50で受信した人工衛星からの電波信号に基づき鉄道車両RVの位置を計測することが可能である。鉄道車両RVの位置は、線路の左右レール中央付近の位置情報となる。測位部102は、例えば、GNSS(Global Navigation Satellite System)を構成し、アンテナ50で受信した電波から鉄道車両RVの測位(衛星測位)を行い、計測結果としての位置情報(測位情報とも称する)を出力する。
【0023】
ここで、GNSSは、米国のGPS、日本の準天頂衛星(QZSS)、ロシアのGLONASS(GLO)、欧州連合のGalileo(GAL)、中国のBeidou(BDS)等の衛星測位システムの総称である。
したがって、アンテナ50と測位部102を構成している受信機は、それらの衛星測位システムのいずれであっても測位が可能に構成されている。
【0024】
なお、測位部102は、アンテナ50で受信した電波に基づく測位結果に加えて、あるいは別個に、慣性センサ70からの検知結果を利用して、鉄道車両RVの現在位置を測定することもできる。例えば、測位部102は、慣性センサ70の車輪の回転計発電機による出力値を積算することで、現在位置を測定することができる。
【0025】
また、測位部102は、画像取得部101で取得したカメラによる撮像画像やLiDARによる距離画像を用いて、SLAM(Simultaneous Localization and Mapping)技術による自己位置推定を行っても良い。
【0026】
通信部104は、中央装置200との無線通信を制御する。具体的には、通信部104は、中央装置200と各種情報や通知の送受信を無線通信で行う。
【0027】
経路情報取得部103は、通信部104を介して、中央装置200から経路情報を取得する。経路情報は、鉄道車両RVの経路に関する情報であり、自己の鉄道車両RVの走行経路を示す走行経路データと、車両基地構内で配設された全ての線路に関する情報を示す線路情報とから構成される。
【0028】
図4は、実施形態にかかる走行経路データの一例を示す図である。
図4の走行経路データの例では、鉄道車両RVは、始点であるA駅の1番線から、終点であるE駅の1番線まで走行し、その後、車両基地内の車庫No.3に入庫することを示している。また、
図4の走行経路データの例では、鉄道車両RVは、車両基地内の車庫No.3から出庫して、E駅の2番線から、終点でありA駅の2番線までを走行することを示している。
【0029】
ここで、鉄道車両RVは、A駅の1番線から車庫No.3までの間に、複数の分岐器D1を通過する。分岐器D1とは、レールR1を繋ぎ変えることで、鉄道車両RVの進行方向を変更する機器である。すなわち、鉄道車両RVは、分岐器D1を通過する場合に、複数の走行ルートを選択することができる。
【0030】
図3に戻り、検知領域設定部105は、画像取得部101で取得した撮像画像および距離画像と、測位部102で測定した鉄道車両RVの現在位置と、経路情報取得部103で取得した経路情報と、に基づいて、撮像画像において、第1の検知領域と、当該第1の検知領域以外の領域である第2の検知領域と、を設定する。
【0031】
すなわち、検知領域設定部105は、経路情報の走行経路データにおける鉄道車両RVの現在位置を特定し、撮像画像からエッジ強調等によりレールを検出して自己の鉄道車両RVの走行経路を特定する。そして、検知領域設定部105は、撮像画像において第1の検知領域と、当該第1の検知領域以外の領域である第2の検知領域と、を設定する。
【0032】
ここで、第1の検知領域は、鉄道車両RVの走行経路および走行経路の周辺の領域であり、鉄道車両RVの建築限界および周辺領域により規定される立体的な領域である。検知領域設定部105は、検出されたレールのうち正面に存在するレールを自己の鉄道車両RVの走行経路のレールと判断して、第1の検知領域を設定する。
【0033】
第2の検知領域は、具体的には、自己の鉄道車両RV以外の鉄道車両RVの走行経路および周辺の領域を含む。検知領域設定部105は、自己の鉄道車両RVの走行経路と隣合うレールである走行経路(第2の走行経路と称する)および当該第2の走行経路の周辺の領域を第2の検知領域として設定する。この場合、第2の検知領域は、自己の鉄道車両RVの走行経路と隣り合う走行経路を走行する鉄道車両RVの建築限界および周辺領域により規定される立体的な領域となる。
【0034】
図5は、実施形態における第1の検知領域と第2の検知領域の設定例を示す説明図である。
図5に示す例では、検知領域設定部105は、距離画像に基づいて、撮像画像において、自己の鉄道車両RVの走行経路、すなわち、鉄道車両RVが走行するレールR1の任意の設定位置P毎に、建築限界断面Y1、および周辺領域断面Y1’までの距離を求める。
【0035】
ここで、建築限界断面Y1,Y2は、鉄道車両RVの進行方向に直交する方向における建築限界の断面である。周辺領域断面Y1’,Y2’は、鉄道車両RVの進行方向に直交する方向における建築限界の外側に予防的に拡大して設定される周辺領域の断面である。周辺領域断面は、予防限界断面とも称される場合もある。
【0036】
図5の例では、検知領域設定部105は、自己の鉄道車両RVの走行経路とその周辺を第1の検知領域410に設定し、自己の鉄道車両RVの走行経路と隣合う走行経路とその周辺を第2の検知領域420に設定している。
【0037】
具体的には、検知領域設定部105は、鉄道車両RVの進行方向においてレールの異なる設定位置Pについて求めた建築限界断面Y1および周辺領域断面Y1’を断面とするトンネル形状の領域を、第1の検知領域410として設定する。また、検知領域設定部105は、設定位置P毎に求めた建築限界断面Y1および周辺領域断面Y1’までの距離の範囲(集合)である値域を値域情報として求める。
【0038】
また、
図5の例では、検知領域設定部105は、鉄道車両RVの走行経路と隣り合う走行経路を走行する鉄道車両RVの進行方向においてレールの異なる設定位置Pについて求めた建築限界断面Y2および周辺領域断面Y2’を断面とするトンネル形状の領域を、第2の検知領域420として設定する。また、検知領域設定部105は、設定位置P毎に求めた建築限界断面Y2および周辺領域断面Y2’までの距離の範囲(集合)である値域を値域情報として求める。
【0039】
図6は、実施形態における第1の検知領域と第2の検知領域の他の設定例を示す説明図である。
図6の例では、検知領域設定部105は、自己の鉄道車両RVの走行経路とその周辺を第1の検知領域410に設定する。さらに、検知領域設定部105は、自己の鉄道車両RVの走行経路と隣合う走行経路とその周辺の領域420aと、さらに隣り合う走行経路(レールR3)とその周辺の領域420bと、を第2の検知領域420に設定している。
【0040】
第1の検知領域410及び領域420aの設定については、
図5と同様である。さらに、検知領域設定部105は、鉄道車両RVの走行経路と隣り合う走行経路を走行する鉄道車両RVの進行方向においてレールの異なる設定位置Pについて求めた建築限界断面Y3よび周辺領域断面Y3’を断面とするトンネル形状の領域420bを、領域420aと合わせて、第2の検知領域420として設定する。また、検知領域設定部105は、設定位置P毎に求めた建築限界断面Y3および周辺領域断面Y3’までの距離の範囲(集合)である値域を値域情報として求める。なお、
図6では、一つの設定位置Pについての建築限界断面Y3よび周辺領域断面Y3’のみを示し簡略化している。
【0041】
なお、本実施形態の検知領域設定部105は、第1の検知領域410、第2の検知領域420を、建築限界断面と周辺領域断面とに基づいて設定していたが、これに限定されるものではない。例えば、建築限界断面に代えて、鉄道車両RVの車両限界断面から第1の検知領域、第2の検知領域を設定するように、検知領域設定部105を構成することができる。ここで、車両限界断面は、鉄道車両RVの進行方向に直交する方向における車両限界の断面である。
【0042】
検知領域設定部105は、さらに、踏切および踏切の周辺の領域を、第2の検知領域として設定することができる。
【0043】
図7は、実施形態において第2の検知領域の他の設定例を示す説明図である。
図7に示すように、検知領域設定部105は、撮像画像を解析して踏み切りを検出した場合、距離画像に基づいて踏み切りとその周辺の領域Sまでの距離を求める。そして、検知領域設定部105は、隣合う走行経路とその周辺の領域420aと、踏み切りとその周辺の領域Sと、踏切とその周辺の領域Sと、を第2の検知領域に設定する。
【0044】
検知領域設定部105は、撮像画像および距離画像の解析により、走行経路の前方に、鉄道車両RVの進行方向を切り替えるための分岐器が存在すると判断された場合には、分岐先の経路を第1の検知領域に設定する。
【0045】
具体的には、検知領域設定部105は、撮像画像および距離画像を解析して、分岐器の分岐先がいずれの方向に設定されているかを判断して、分岐先の経路を第1の検知領域に設定する。または、検知領域設定部105は、経路情報取得部103によって取得した経路情報の中の走行経路(
図4参照)で、自己の鉄道車両RVの経路が分岐器の分岐先がいずれの方向になっているかを判断して、分岐先の経路を第1の検知領域に設定する。
【0046】
図8は、実施形態において分岐器が検出された撮像画像の例を示す説明図である。
図8の例では、第1の検知領域で鉄道車両RVの走行経路であるレールRの前方に、分岐器BGが存在している。そして、レールRは、分岐器BGによりレールR1とレールR2に分岐する。検知領域設定部105は、第1の検知領域にこのような分岐器BGが存在すると判断した場合、画像解析により分岐器BGの分岐先がレールR1の方向となっているか、レールR2の方向になっているかを判別する。そして、検知領域設定部105は、、分岐先はレールR1の方向である場合には、分岐器BGより先の領域では、レールR1の方向の領域A1を、第1の検知領域に設定する。検知領域設定部105は、分岐先はレールR2の方向である場合には、分岐器BGより先の領域では、レールR2の方向の領域A2を、第1の検知領域に設定する。なお、
図8の例では、分岐器BGによる分岐先がレールR1の方向になっている。
【0047】
あるいは、検知領域設定部105は、経路情報の中の走行経路(
図4参照)で、自己の鉄道車両RVの走行経路の最終地点の車庫のNo等から分岐器の分岐先がレール1の方向であるかレールR2の方向であるかを判断して、領域A1,A2のいずれかを1の検知領域に設定する。
【0048】
検知領域設定部105は、中央装置200から走行経路が変更された旨の通知および変更後の走行経路を受信した場合には、変更後の走行経路およびその周辺の領域を、第1の検知領域に設定する。
【0049】
図3に戻り、支障物検知部106は、第1の検知領域と前記第2の検知領域とから、支障物を検出する。具体的には、支障物検知部106は、撮像画像の第1の検知領域、第2の検知領域を画像解析し、支障物を検知し、撮像画像の解析結果と距離画像あるいは上記値域情報に基づいて、検知された支障物の種類、位置、支障物までの距離を求める。例えば、支障物の種類として、第1の検知領域または第2の検知領域内における他の鉄道車両、第1の検知領域または第2の検知領域内の人等があげられるがこれらに限定されるものではない。支障物の位置としては、支障物の実際の位置の他、支障物が第1の検知領域、第2の検知領域のいずれの領域に存在しているかを示すものである。
【0050】
図9は、実施形態において人が検知された場合の例を示す説明図である。
図9の例では、支障物検知部106は、第1の検知領域410内で、自転車で線路を横断中の人を支障物として検知している。
【0051】
また、支障物検知部106は、支障物として、鉄道車両RVの停止位置を示すための停止位置目標物を検出する。
【0052】
図10は、実施形態において停止位置目標物が検知された場合の例を示す説明図である。
図10の例では、支障物検知部106は、第1の検知領域410内および第2の検知領域420内で、停止位置目標物としての車止め801を、それぞれ支障物として検知している。
【0053】
なお、停止位置目標物は、
図10の例に示すように固定されて設置された車止め801の他、車両基地の構内で工事中等により仮に設定された標識であってもよい。これにより、一時的に工事中で鉄道車両RVが走行できない走行禁止区間がある場合でも、支障物検知部106が仮の停止位置目標物を検知することで、自動的に鉄道車両RVの走行禁止区間へ入ることを回避することが可能となる。
【0054】
図3に戻り、制御部107は、支障物検知部106による支障物の検出結果に基づいて、所定の処理を実行する。具体的には、制御部107は、支障物の種類、位置、支障物までの距離に基づいて、鉄道車両RVの減速や停止等の走行制御を行ったり、中央装置200へ支障物に関する情報(すなわち、種類、位置、支障物までの距離等)を送信する。この場合、制御部107は、さらに周辺の状況も中央装置200に送信するように構成してもよい。これにより、中央装置200では、支障物の周辺の状況も把握することができ、より的確な指示を鉄道車両RVに送出することが可能となる。
【0055】
制御部107は、第1の検知領域で支障物が検出された場合、鉄道車両RVを減速または停止させる走行制御を行う。この場合、制御部107は、支障物の種類や支障物までの距離に応じて、停止制御と減速制御とを切り替えることができる。例えば、支障物が一定距離以上離れた場所で移動中の人である場合には、当該人はいずれ移動して走行経路から外れるため、制御部107は鉄道車両RVを減速制御する。また、支障物が一定距離未満の近い場所を移動中の人や、距離にかかわらず停止している人または人以外の物体である場合には、制御部107は鉄道車両RVを停止制御することができる。このような場合には、制御部107は、さらに中央装置200に通報するように構成してもよい。
【0056】
また、制御部107は、支障物の種類や支障物までの距離に応じて、減速度の大小を可変とすることができる。例えば、支障物までの距離が所定距離以上で遠い場合には、減速度を小さくし、支障物までの距離が所定未満以上で近い場合には、減速度を多くしたり、減速度の大きさを支障物までの距離に反比例するように減速制御を行うように制御部107を構成することができる。
【0057】
また、制御部107は、第1の検知領域で、車両基地における鉄道車両RVが入るべき車庫の中に、支障物としての他の停止中の鉄道車両RVが検出された場合には、鉄道車両を他の鉄道車両の手前で停止させる走行制御を行う。これにより、鉄道車両RVの縦列駐車が可能となる。
【0058】
この場合において、車庫までの距離が一定距離以上の場合に、鉄道料車両RVを車庫の前で停止され、車庫までの距離が一定距離未満の場合には、中央装置200に入庫する車庫の変更要求を送信するように制御部107を構成しても良い。
【0059】
制御部107は、第1の検知領域で支障物が検出された場合に、走行経路の変更要求を、中央装置200に送信してもよい。例えば、制御部107は、第1の検知領域に、鉄道車両RVの進行方向を切り替えるための分岐器BGが存在する場合には、走行経路の変更要求として、分岐器の分岐先の変更要求を、中央装置200に送信する。
【0060】
制御部107は、第2の検知領域で支障物が検出された場合、支障物が第2の検知領域で検出された旨および支障物の情報(すなわち、種類、位置、支障物までの距離等)を、中央装置200に通信部104を介して送信する。これにより、他の走行経路における他の鉄道車両RVの走行制御を中央装置200が行うことが可能となる。
【0061】
次に、以上のように構成された本実施形態にかかる走行支障物検知装置100による支障物検知処理について説明する。
【0062】
図11は、実施形態にかかる支障物検知処理の手順の一例を示すフローチャートである。まず、画像取得部101は、センサ10から撮像画像および距離画像を取得する(S11)。次に、測位部102は、自己の鉄道車両RVの現在位置を測定する(S13)。そて、経路情報取得部103は、中央装置200から経路情報を取得する(S15)。
【0063】
次に、検知領域設定部105は、第1の検知領域の設定処理を実行する(S17)。次いで、検知領域設定部105は、第2の検知領域の設定処理を実行する(S19)。そして、支障物検知部106と制御部107とは支障物検知および制御処理を実行する(S21)。
【0064】
制御部107は、所定の終了条件が具備されたか否かを判断し(S23)、具備していない場合には(S23:No)、処理はS11に戻り、S11からS21までの処理が繰り返し実行される。一方、所定の終了条件を具備する場合には(S23:Yes)、処理は終了する。
【0065】
次に、S17の第1の検知領域設定処理について説明する。
図12は、実施形態にかかる第1の検知領域設定処理の手順の一例を示すフローチャートである。
【0066】
検知領域設定部105は、画像取得部101で取得した撮像画像を解析して、レールを検出する(S31)。ここで、検知領域設定部105は、検出されたレールのうち、正面に存在するレールを自己の鉄道車両RVの走行経路と判断する。
【0067】
次に、検知領域設定部105は、経路情報取得部103で取得した経路情報の自己の走行経路データを参照する(S33)。そして、前方に分岐器が存在するか否かを判断する(S35)。前方に分岐器が存在しない場合には(S35:No)、検知領域設定部105は、自己の走行経路において建築限界断面と周辺領域断面を設定地点ごとに設定することで第1の検知領域を設定する(S39)。
【0068】
S35で前方に分岐器が存在する場合には(S35:Yes)、上述したとおり、画像解析または走行経路データから、分岐先から自己の進行方向を決定する(S37)。そして、検知領域設定部105は、S37で決定された進行方向を自己の走行経路に含め、自己の走行経路において建築限界断面と周辺領域断面を設定地点ごとに設定することで第1の検知領域を設定する(S39)。
【0069】
次に、S19の第2の検知領域設定処理について説明する。
図13は、実施形態にかかる第2の検知領域設定処理の手順の一例を示すフローチャートである。
【0070】
検知領域設定部105は、画像取得部101で取得した撮像画像を解析して、レールおよび特定領域を検出する(S51)。ここで、検知領域設定部105は、検出されたレールのうち、正面以外に存在するレールを他の走行経路と判断する。また、特定領域とは、例えば、踏切などが該当する。
【0071】
次に、検知領域設定部105は、経路情報取得部103で取得した経路データを参照する(S53)。次いで、検知領域設定部105は、他の走行経路において建築限界断面と周辺領域断面を設定地点ごとに設定し、かつ特定領域を含めて第2の検知領域を設定する(S55)。そして、処理は呼出し元に戻る。
【0072】
次に、S21の支障物検知および制御処理について説明する。
図14は、実施形態にかかる支障物検知および制御処理の手順の一例を示すフローチャートである。
【0073】
まず、支障物検知部106は、撮像画像に対して、検知領域設定部105で検出されたレールの上面に接する基準面を設定する(S61)。これによりレールよりも下方に存在し、支障物となる可能性が低い物体が支障物として検出されてしまうことを回避することができる。
【0074】
そして、支障物検知部106は、基準面上で、距離画像と値域情報とに基づいて支障物を検知する(S63)。ここで、支障物検知部106は、まず、支障物の候補を検出し、検出された支障物候補の中から、支障物候補の大きさや移動ベクトル等に基づいて支障物を検知する。
【0075】
次に、支障物検知部106は、支障物が第1の検知領域で検知されている場合には(S65:Yes)、支障物に応じた処理を実行する(S67)。支障物に応じた処理の詳細については後述する。一方、支障物が第1の検知領域で検知されておらず、第2の検知領域で検出された場合には(S65:No)、支障物検知部106は、支障物の情報(すなわち、種類、位置、支障物までの距離等)とともに第2の検知領域で支障物が検知された旨を中央装置200に通知する(S69)。
【0076】
そして、支障物検知部106は、検知処理が終了したか否かを判断し(S71)、終了していない場合には(S71:No)、処理はS63に戻り、S63からS67,S69までの処理を繰り返し実行される。S71で検知処理が終了した場合には(S71:Yes)、処理は呼出し元に戻る。
【0077】
次に、S67の支障物に応じた処理について説明する。
図15は、実施形態にかかる支障物に応じた処理の手順の一例を示すフローチャートである。
【0078】
まず、制御部107は、検知された支障物が所定の条件を具備するか否かを判断する(S81)。ここで、所定の条件は、例えば、支障物が物体であったり、車両である場合があげられるがこれらに限定されるものではない。
【0079】
そして、支障物が所定の条件を満たさない場合には(S81:No)、制御部107は、鉄道車両RVの減速または停止の制御を行う(S91)。そして、処理は呼出し元に戻る。
【0080】
一方、S81で支障物が所定の条件を満たす場合には(S81:Yes)、制御部107は、撮像画像において前方に分岐器が存在するか否かを判断する(S83)。そして、前方に分岐器が存在しない場合には(S83:No)、制御部107は、鉄道車両RVの減速または停止の制御を行い(S91)、処理は呼出し元に戻る。
【0081】
一方、S83で前方に分岐器が存在する場合には(S83:Yes)、制御部107は、中央装置200に、前方に存在する分岐器の識別番号とともに、分岐器の分岐先の変更要求を、通信部104を介して送信する(S85)。
【0082】
次に、制御部107は、中央装置200から変更後の走行経路と変更通知を受信したか否かを判断する(S87)。制御部107は、中央装置200から変更後の走行経路と変更通知を受信していなければ(S87:No)、受信待ちの状態となる。
【0083】
制御部107が中央装置200から変更後の走行経路と変更通知を受信した場合には(S87:Yes)、検知領域設定部105は、変更後の走行経路とその周辺の領域を、第1の検知領域に設定する(S89)。そして、処理は
図11のS19に戻る。
【0084】
このように本実施形態では、走行支障物検知装置100では、画像取得部101が鉄道車両RVの進行方向の監視情報としても撮像画像と距離画像を取得し、測位部102が鉄道車両RVの現在位置を測定し、経路情報取得部103が中央装置200から、鉄道車両RVの走行経路データと線路データとを含む経路情報を取得し、検知領域設定部105が撮像画像および距離画像と、鉄道車両RVの現在位置と、経路情報と、に基づいて、鉄道車両RVの走行経路および走行経路の周辺の領域である第1の検知領域と、前記第1の検知領域以外の領域である第2の検知領域と、を設定し、支障物検知部106が第1の検知領域と第2の検知領域とから、支障物を検出し、制御部107が支障物の検出結果に基づいて、鉄道車両の走行制御や中央装置200への通知の処理を実行する。このため、本実施形態によれば、撮像画像全体で領域の区別なしに支障物を検知するのではなく、自己の走行経路およびその周辺領域と、それ以外の領域とを区別して、支障物を検知して、検知領域毎に支障物に応じた適切な制御を行うことができる。従って、本実施形態によれば、走行経路上の支障物を効率的に検出して、突発的な走行支障にも円滑に対処することができ、鉄道車両の自動運転を効果的に実現することができる。
【0085】
特に、車両基地の構内においては、鉄道車両が多く行き交うため、本実施形態によれば、鉄道車両の車両基地構内での入替え操車を自動運転で効果的に実現することができる。また、都市部においても鉄道車両が多く行き交うため、本実施形態によれば、鉄道車両の自動運転を効果的に実現することができる。
【0086】
例えば、従来から無線式列車制御システム(CBTC:Communications-Based Train Control)が知られている。このシステムでは、鉄道車両の運行と制御を鉄道車両と地上装置等の中央装置の間の通信を使って行う信号システムであり、鉄道車両が走行中に、先行車両と一定距離まで接近すると、自動的に停止することが可能となる。
【0087】
しかしながら、走行中の自己の鉄道車両と先行車両との間が一定距離以上ある場合でも、その間に支障物が存在した場合には、停止前に支障物に衝突してしまう。これに対して本実施形態では、自己の鉄道車両と先行車両との間が一定距離以上ある場合でも、支障物が第1の検知領域で検出され走行制御や中央装置200への通知で適切な措置がなされることになる。このため、本実施形態によれば、走行経路上の支障物を効率的に検出して、突発的な走行支障にも円滑に対処することができ、鉄道車両の自動運転を効果的に実現することができる。
【0088】
また、本実施形態では、走行支障物検知装置100の検知領域設定部105は、鉄道車両以外の鉄道車両の走行経路および周辺の領域を、第2の検知領域として設定する。より具体的には、本実施形態では、走行支障物検知装置100の検知領域設定部105は、鉄道車両RVの走行経路と隣合う第2の走行経路および第2の走行経路の周辺の領域を、第2の検知領域として設定する。このため、本実施形態によれば、自己の走行経路およびその周辺領域である第1の検知領域と、鉄道車両以外の鉄道車両の走行経路および周辺の領域である第2の検知領域とを区別して、支障物を検知して、自己の鉄道車両RVの走行経路とその周辺の領域、他の鉄道車両RVの走行経路とその周辺の領域のそれぞれにおける支障物に応じた適切な制御を行うことができる。従って、本実施形態によれば、走行経路上の支障物を効率的に検出して、突発的な走行支障にも円滑に対処することができ、鉄道車両の自動運転をより効果的に実現することができる。
【0089】
また、本実施形態では、走行支障物検知装置100の検知領域設定部105は、踏切および踏切の周辺の領域を、第2の検知領域として設定する。このため、本実施形態によれば、自己の走行経路およびその周辺領域である第1の検知領域と、踏切とその周辺を含む第2の検知領域とを区別して、支障物を検知して、それぞれにおける支障物に応じた適切な制御を行うことができる。このため、本字嫉視形態によれば、踏切とその周辺領域の支障物をも効率的に検出して、突発的な走行支障にも円滑に対処することができ、鉄道車両の自動運転をより効果的に実現することができる。
【0090】
また、本実施形態では、走行支障物検知装置100の検知領域設定部105は、走行経路の前方に、鉄道車両RVの進行方向を切り替えるための分岐器が存在すると判断された場合には、撮像画像および距離画像の解析結果または経路情報に基づいて、分岐先の経路を第1の検知領域に設定する。このため、本実施形態によれば、分岐器による分岐先の走行経路およびその周辺においても、支障物を効率的に検出して、突発的な走行支障にも円滑に対処することができ、鉄道車両の自動運転を効果的に実現することができる。
【0091】
また、本実施形態では、走行支障物検知装置100の検知領域設定部105は、支障物として、鉄道車両RVの停止位置を示すための停止位置目標物を検出する。このため、本実施形態によれば、停止位置目標物を効率的に検知して、鉄道車両RVをその手前で停止させることができ、鉄道車両の自動運転をより効果的に実現することができる。
【0092】
また、本実施形態では、走行支障物検知装置100の制御部107は、第1の検知領域で支障物が検出された場合、鉄道車両を減速または停止させる走行制御を行う。このため、本実施形態によれば、自己の走行経路とその周辺における支障物を効率的に検知して、鉄道車両RVをその手前で停止させたり、減速させることができ、鉄道車両の自動運転をより効果的に実現することができる。
【0093】
また、本実施形態では、走行支障物検知装置100の制御部107は、第1の検知領域で、車両基地における鉄道車両RVが入るべき車庫の中に、支障物としての停止中の他の鉄道車両RVが検出された場合には、鉄道車両RVを他の鉄道車両RVの手前で停止させる走行制御を行う。このため、本実施形態によれば、二台の鉄道車両RVを縦列駐車させることができ、鉄道車両の自動運転をより効果的に実現することができる。
【0094】
また、本実施形態では、走行支障物検知装置100の制御部107は、第1の検知領域で支障物が検出された場合に、走行経路の変更要求を、前記中央装置に送信する。具体的には、制御部107は、第1の検知領域に、鉄道車両の進行方向を切り替えるための分岐器が存在する場合には、走行経路の変更要求として、分岐器の分岐先の変更要求を、中央装置200に送信する。このため、本実施形態によれば、自己の走行経路とその周辺において支障物が検知された場合に、中央装置200により走行経路を変更させることができ、鉄道車両の自動運転をより効果的に実現することができる。
【0095】
また、本実施形態では、走行支障物検知装置100の検知領域設定部105は、中央装置200から走行経路が変更された旨の通知および変更後の走行経路を受信した場合には。変更後の走行経路およびその周辺の領域を、第1の検知領域に設定する。このため、本実施形態によれば、走行経路が変更された場合でも迅速に第1の検知領域を設定変更することで、自己の走行経路とその周辺における支障物をより効率的に検知することができ、鉄道車両の自動運転をより効果的に実現することができる。
【0096】
また、本実施形態では、走行支障物検知装置100の制御部107は、第2の検知領域で支障物が検出された場合、支障物が第2の検知領域で検出された旨を、中央装置200に通知する。このため、本実施形態によれば、自己の走行経路とその周辺以外の領域の支障物を効率的に検出して、中央装置200に制御を委ねることで、突発的な走行支障にも円滑に対処することができ、鉄道車両の自動運転をより効果的に実現することができる。
【0097】
なお、本実施形態では、センサ10のLiDARにより距離画像を取得していたが、LiDARを実装しなくてもよい。この場合、センサ10を、鉄道車両RVの車幅方向に離間して設けられる2つのカメラ(左右の2つのカメラ)を含んで構成し、2つのカメラの撮像により得られる2つのカラー画像を、距離画像として取得するように画像取得部101を構成して良い。すなわち、この場合には、画像取得部101は、センサ10として二つのカメラにより撮像したステレオ画像の一方を基準画像、他方を参照画像とし、基準画像の全ての画素若しくは基準画像の一部の有効領域内の画素について、参照画像の画素との視差を求める。
【0098】
そして、画像取得部101は、以下の式(1)を用いて、基準画像の画素が表す物体までの距離Zを距離画像として求めても良い。以下の式(1)において、fはセンサ10が含む2つの撮像部の焦点距離を表し、Bはセンサ10が含む2つの撮像部間の距離を表し、Dは基準画像の画素と参照画像の画素との視差Dを表す。
Z=f×B/D・・・(1)
なお、この場合における検知領域の設定や支障物の検知手法は、特開2019-84881号公報に記載された手法により実現可能である。
【0099】
本実施形態の走行支障物検知装置100は、CPUなどの制御装置と、ROMやRAMなどの記憶装置と、HDD、CDドライブ装置などの外部記憶装置と、ディスプレイ装置などの表示装置と、キーボードやマウスなどの入力装置を備えており、通常のコンピュータを利用したハードウェア構成となっている。
【0100】
本実施形態の走行支障物検知装置100で実行される支障物検知プログラムは、ROM等に予め組み込まれて提供される。
【0101】
本実施形態の走行支障物検知装置100で実行される支障物検知プログラムは、インストール可能な形式又は実行可能な形式のファイルでCD-ROM、フレキシブルディスク(FD)、CD-R、DVD(Digital Versatile Disk)等のコンピュータで読み取り可能な記録媒体に記録して提供するように構成してもよい。
【0102】
さらに、本実施形態の走行支障物検知装置100で実行される支障物検知プログラムを、インターネット等のネットワークに接続されたコンピュータ上に格納し、ネットワーク経由でダウンロードさせることにより提供するように構成しても良い。また、本実施形態の走行支障物検知装置100で実行される支障物検知プログラムをインターネット等のネットワーク経由で提供または配布するように構成しても良い。
【0103】
本実施形態の走行支障物検知装置100で実行される支障物検知プログラムは、上述した各機能部(画像取得部101、測位部102、経路情報取得部103、通信部104、検知領域設定部105、支障物検知部106、制御部107)を含むモジュール構成となっており、実際のハードウェアとしてはCPU(プロセッサ)が上記ROMから支障物検知プログラムを読み出して実行することにより上記各部が主記憶装置上にロードされ、画像取得部101、測位部102、経路情報取得部103、通信部104、検知領域設定部105、支障物検知部106、制御部107が主記憶装置上に生成されるようになっている。
【0104】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0105】
10 センサ
40 表示装置
50 アンテナ
70 慣性センサ
100 走行支障物検知装置
101 画像取得部
102 測位部
103 経路情報取得部
104 通信部
105 検知領域設定部
106 支障物検知部
107 制御部
110 記憶部
200 中央装置
300 車庫
410 第1の検知領域
420 第2の検知領域
RV 鉄道車両
R,R1,R2 レール
BG 分岐器