(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024017886
(43)【公開日】2024-02-08
(54)【発明の名称】画像表示装置、表示システム、スクリーンおよび遠隔画像投影方法
(51)【国際特許分類】
E01F 9/608 20160101AFI20240201BHJP
G09F 19/22 20060101ALI20240201BHJP
G09F 19/18 20060101ALI20240201BHJP
G09F 19/00 20060101ALI20240201BHJP
E01F 9/00 20160101ALI20240201BHJP
E01F 9/646 20160101ALI20240201BHJP
E01F 9/688 20160101ALI20240201BHJP
【FI】
E01F9/608
G09F19/22 P
G09F19/18 A
G09F19/00 Z
E01F9/00
E01F9/646
E01F9/688
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022120831
(22)【出願日】2022-07-28
(71)【出願人】
【識別番号】000202361
【氏名又は名称】綜合警備保障株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】加沢 徹
【テーマコード(参考)】
2D064
【Fターム(参考)】
2D064AA29
2D064BA03
2D064EA04
2D064EA10
2D064EA25
2D064EB17
(57)【要約】
【課題】昼でも夜でも良好な視認性で用いることができ、かつ、歩行者等の導線を妨げないように装置を移動させながらの誘導指示業務を行うことができる画像表示装置、表示システム、スクリーンおよび遠隔画像投影方法を提供する。
【解決手段】ベース部と、前記ベース部に立設される支持柱と、前記支持柱から前記ベース部に向けて設置されるスクリーンと、前記ベース部に設置され、前記スクリーンに対して斜め下方向から画像を投影する投影装置と、前記スクリーンの表面に設けられ、斜め下方向からの入射光のみを水平方向に反射する特定角反射を行う反射材と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベース部と、
前記ベース部に立設される支持柱と、
前記支持柱から前記ベース部に向けて設置されるスクリーンと、
前記ベース部に設置され、前記スクリーンに対して斜め下方向から画像を投影する投影装置と、
前記スクリーンの表面に設けられ、斜め下方向からの入射光のみを水平方向に反射する特定角反射を行う反射材と、
を備えることを特徴とする画像表示装置。
【請求項2】
前記スクリーンは、錐体の側面の形状に形成され、該錐体の側面の形状を縦方向に等間隔に水平輪切りされた複数の部位をそれぞれ繋いで構成されることにより、前記支持柱のスライド伸縮に合わせて折り畳み可能である、
ことを特徴とする請求項1に記載の画像表示装置。
【請求項3】
前記スクリーンは、布材で形成することにより、前記支持柱のスライド伸縮に合わせて折り畳み可能である、
ことを特徴とする請求項1に記載の画像表示装置。
【請求項4】
請求項1から3の何れか一項に記載の画像表示装置と、
前記画像表示装置と通信接続され、前記画像表示装置に設けられる前記投影装置が投影する画像を送信する外部機器と、
被写体の水平方向からの外見を撮像して前記外部機器に対して該撮像した画像を出力する撮像装置と、
を備えることを特徴とする表示システム。
【請求項5】
前記外部機器は、前記撮像装置が撮像した画像に対する画像処理を実行する、
ことを特徴とする請求項4に記載の表示システム。
【請求項6】
前記撮像装置は、複数設けられ、
前記投影装置は、前記撮像装置の台数に応じた台数が設けられ、複数の前記撮像装置によって撮像されたそれぞれの画像を前記スクリーンにそれぞれ投影可能なように設置される、
ことを特徴とする請求項4に記載の表示システム。
【請求項7】
前記画像表示装置は、該画像表示装置が設置された第1の場所の周囲の画像である現地状況画像を撮像し、前記外部機器に送信する現地状況撮像装置をさらに備え、
前記外部機器は、前記現地状況画像を表示する現地状況表示装置をさらに備える、
ことを特徴とする請求項4に記載の表示システム。
【請求項8】
前記外部機器は、複数の前記撮像装置が撮像した画像のうち、前記被写体の正面が映っていると判断した画像のみを前記画像表示装置へ送信する、
ことを特徴とする請求項6に記載の表示システム。
【請求項9】
ベース部に立設される支持柱から前記ベース部に向けて設置されるスクリーンであって、
前記スクリーンの表面に設けられ、斜め下方向からの入射光のみを水平方向に反射する特定角反射を行う反射材を備える、
ことを特徴とするスクリーン。
【請求項10】
錐体の側面の形状に形成され、該錐体の側面の形状を縦方向に等間隔に水平輪切りされた複数の部位をそれぞれ繋いで構成されることにより、前記支持柱のスライド伸縮に合わせて折り畳み可能である、
ことを特徴とする請求項9に記載のスクリーン。
【請求項11】
布材で形成することにより、前記支持柱のスライド伸縮に合わせて折り畳み可能である、
ことを特徴とする請求項9に記載のスクリーン。
【請求項12】
前記反射材は、前記スクリーンの表面に連なって設けられた球面反射鏡に対して、球形透過体を挿入して構成され、
前記球形透過体は、下半分を球面とし、投影装置からの入射光が照射される位置のみを特定角の直線で構成される平面とする、
ことを特徴とする請求項9に記載のスクリーン。
【請求項13】
前記反射材は、前記スクリーンの表面に連なって設けられた鋸歯状の反射鏡面で構成され、
前記鋸歯状の反射鏡面は、投影装置からの入射光が照射される方向と水平方向との2等分線に直交した第1の鏡面と、該第1の鏡面に直交した第2の鏡面と、を含む、
ことを特徴とする請求項9に記載のスクリーン。
【請求項14】
互いに異なる方向から視認可能な複数の投影装置が設置された第1の場所から離れた第2の場所の遠隔誘導者の周囲に設置された表示装置、または前記遠隔誘導者が着用する表示装置が、前記第1の場所に設置された現地状況撮像装置が撮像した現地状況画像を、投影する工程と、
前記複数の投影装置が、前記第2の場所に設置されて前記遠隔誘導者を互いに異なる方向から撮像する複数の撮像装置が撮像した画像を、投影する工程と、
前記遠隔誘導者の正面方向に対応する、前記表示装置が投影した前記現地状況画像の撮像方向に対応する前記投影装置が、前記遠隔誘導者の正面画像または該正面画像に基づいて生成したアバター画像を投影する工程と、
を含むことを特徴とする遠隔画像投影方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像表示装置、表示システム、スクリーンおよび遠隔画像投影方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、工事現場等の交通誘導を行う交通誘導員を模した形状の人型ロボットで、遠隔操作員の操作のもとで指示手旗を振るなど、ごく定型的な動作を行うことができる技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002-242131号公報
【特許文献2】特開平6-301889号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の技術によれば、車線上の自動車に向けた進行/停止誘導、車線変更等のごく定型的な誘導業務には適用できる。しかしながら、例えば道路に面したビル工事現場から出入りする自動車と、歩道の通行人および道路上の一般車両と、に向けて適切な誘導指示を行うためには、柔軟性が大きく不足している。
【0005】
また、カメラが撮像した遠隔操作員の画像をディスプレイに映して遠隔から誘導作業を行うことが考えられるが、屋外の日射環境の下ではディスプレイが見にくくなることも多い、という問題がある。さらに、固定されたディスプレイでは、歩行者等の導線を妨げないように装置を移動させながらの誘導作業は遂行できない、という問題がある。
【0006】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、昼でも夜でも良好な視認性で用いることができ、かつ、歩行者等の導線を妨げないように誘導指示業務を行うことができる画像表示装置、表示システム、スクリーンおよび遠隔画像投影方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明は、ベース部と、前記ベース部に立設される支持柱と、前記支持柱から前記ベース部に向けて設置されるスクリーンと、前記ベース部に設置され、前記スクリーンに対して斜め下方向から画像を投影する投影装置と、前記スクリーンの表面に設けられ、斜め下方向からの入射光のみを水平方向に反射する特定角反射を行う反射材と、を備える。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、昼でも夜でも良好な視認性で用いることができ、かつ、歩行者等の導線を妨げないように装置を移動させながらの誘導指示業務を行うことができる、という効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、第1の実施の形態にかかる表示システムの概略構成を示す図である。
【
図2】
図2は、表示システムの構成を示すブロック図である。
【
図3】
図3は、制御サーバのハードウェア構成を示すブロック図である。
【
図4】
図4は、移動型ディスプレイの構成例を示す図である。
【
図5】
図5は、スクリーンの収納時の移動型ディスプレイを示す図である。
【
図6】
図6は、再帰性反射材の一例を概略的に示す図である。
【
図7】
図7は、再帰性反射材の別の一例を概略的に示す図である。
【
図8】
図8は、スクリーンに対して文字メッセージを投影した例を示す図である。
【
図9】
図9は、移動型ディスプレイの別の構成例を示す図である。
【
図10】
図10は、第2の実施の形態にかかる表示システムの概略構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に添付図面を参照して、画像表示装置、表示システム、スクリーンおよび遠隔画像投影方法の実施の形態を詳細に説明する。
【0011】
(第1の実施の形態)
ここで、
図1は第1の実施の形態にかかる表示システム1の概略構成を示す図、
図2は表示システム1の構成を示すブロック図である。
図1に示すように、表示システム1は、画像表示装置である移動型ディスプレイ10と、遠隔誘導者3が存在する管制室2(第2の場所の一例)において遠隔誘導者3が装着するVRゴーグル20と、管制室2において使用される複数のビデオカメラ30と、複数のビデオカメラ30の撮像画像を処理する外部機器である制御サーバ40と、を備える。
【0012】
図2に示すように、移動型ディスプレイ10と、VRゴーグル20と、複数のビデオカメラ30とは、制御サーバ40と通信可能に接続される。制御サーバ40とVRゴーグル20および複数のビデオカメラ30との通信には無線通信を用い、制御サーバ40はVRゴーグル20および複数のビデオカメラ30と無線通信が可能な範囲内であれば任意の位置に設置することができる。また、制御サーバ40と移動型ディスプレイ10との通信には、インターネットなどのネットワーク50を介した通信を用いる。
【0013】
図1に示すように、管制室2における遠隔誘導者3は、移動型ディスプレイ10が設置された場所(第1の場所の一例)の周囲を撮像した画像(以下、「現地状況画像」という。)を投影する現地状況表示装置であるVRゴーグル20を装着する。VRゴーグル20が遠隔誘導者3に装着され起動されると、制御サーバ40は、現地状況画像の所定の方向を初期状態としてVRゴーグル20に投影する。その後、VRゴーグル20は、装着された遠隔誘導者3の頭部の向きを検知して、制御サーバ40へ送信する。制御サーバ40は、受信した遠隔誘導者3の頭部の向きに基づいて、VRゴーグル20に投影する現地状況画像の範囲を変更する。これにより、遠隔誘導者3はあたかも移動型ディスプレイ10が設置された場所に居るかのような仮想現実感を得ることが可能である。なお、VRゴーグル20に代えて、管制室2の壁面を、現地状況画像を投影する現地状況表示装置としてもよい。
【0014】
移動型ディスプレイ10は、詳細は後述するが、管制室2の複数の撮像装置であるビデオカメラ30で撮像した遠隔誘導者3の画像Xを投影することにより、たとえば自動車車線上の車に向けた進行・停止誘導や車線変更等の誘導指示業務、あるいは道路に面したビル工事現場から出入りする自動車と歩道の通行人とに対する誘導指示業務などを行うことができる。本実施の形態では、南北方向に通じる歩道を、工事用車両が東西方向に横断する、工事現場の車両出入口付近に移動型ディスプレイ10が設置されているものとする。
【0015】
図1に示すように、管制室2には、管制室2内に位置してVRゴーグル20に投影された画像を見ながら誘導指示業務を行う遠隔誘導者3を、撮像する複数のビデオカメラ30が設けられる。
【0016】
複数のビデオカメラ30は、遠隔誘導者3の水平全方向からの外見を、リアルタイムに撮像することができる。
図1に示す例においては、ビデオカメラ30は管制室2内に4台設置されており、遠隔誘導者3を4方向から撮像する。本実施の形態では、ビデオカメラ30は、遠隔誘導者3が4台のビデオカメラ30のうちの1台に正対したとき、その遠隔誘導者3の正面、背面、および左右両側面をそれぞれ撮像するように設置されているものとする。それぞれのビデオカメラ30は、自己が撮像した画像を制御サーバ40へ出力する。
【0017】
次に、制御サーバ40について説明する。
図3は、制御サーバ40のハードウェア構成を示すブロック図である。
図3に示すように、制御サーバ40は、無線通信部41、表示部42、操作部43、マイク44、記憶部45、制御部46及び通信部47を有する。
【0018】
無線通信部41は、周知技術である特定小電力通信、無線LAN又はLTE(Long Term Evolution)通信等を用いて、VRゴーグル20および複数のビデオカメラ30との間で無線通信を行うための通信インタフェース部である。
【0019】
通信部47は、インターネットなどのネットワーク50を介した通信等を用いて移動型ディスプレイ10との間で通信を行うための通信インタフェース部である。
【0020】
表示部42は、液晶パネルなどの表示デバイスで構成され、遠隔誘導者3に対する表示出力に用いられる。操作部43は、キーボード等の操作デバイスで構成され、遠隔誘導者3からの操作の受付けに用いられる。また、タッチパネルディスプレイなどを用い、表示部42と操作部43とを一体に構成してもよい。マイク44は、操作者の音声入力に用いられる音声入力デバイスである。
【0021】
記憶部45は、ハードディスク装置又は不揮発性メモリなどからなる記憶デバイスである。
【0022】
制御部46は、制御サーバ40の全体制御を行う制御部である。制御部46は、CPU(Central Processing Unit)などの制御装置と、ROM(Read Only Memory)やRAM(Random Access Memory)などの記憶装置を備えており、通常のコンピュータを利用したハードウェア構成となっている。
【0023】
制御部46は、4台のビデオカメラ30によって撮像された4方向からの撮像画像を画像処理して、移動型ディスプレイ10に投影できるフォーマットに変換する。制御部46は、例えば、撮像画像の縮尺の歪みを除去するなどの画像処理を実行する。また、制御部46は、4台のビデオカメラ30で撮像された遠隔誘導者3の撮像画像のそれぞれについて、遠隔誘導者3の正面を撮像しているか否かを認識し、正面を撮像していると認識したビデオカメラ30によって撮像された遠隔誘導者3の撮像画像のみを、移動型ディスプレイ10に送信する。
【0024】
次に、移動型ディスプレイ10の構成について説明する。
【0025】
図4は、移動型ディスプレイ10の構成例を示す図である。
図4に示すように、移動型ディスプレイ10は、ベース部11と、複数のプロジェクタ12と、支持柱13と、スクリーン14と、を備える。
【0026】
ベース部11は、複数の車輪を備える。ベース部11は、複数の車輪を回転させて移動可能な円盤形状の台車である。
【0027】
支持柱13は、ベース部11の中心部に垂直に立設される。支持柱13は、スライド伸縮可能である。
【0028】
スクリーン14は、支持柱13の頂点からベース部11の円周に向けて設置される円錐形状(スカート形状)である。スクリーン14は、スクリーン14の表面に反射材である再帰性反射材15を備える。ただし、詳細は後述するが、
図4に示すように、再帰性反射材15は、単純な再帰性ではなく、斜め下方向からの入射光のみを水平方向に反射する特定角反射を行う。一方で、再帰性反射材15は、外乱光および直射日光については、単純な再帰性反射を行うものとなっている。
【0029】
図4に示すように、スクリーン14は、円錐形状(スカート形状)に形成され、当該円錐形状を縦方向に等間隔に水平輪切りされた複数の部位をそれぞれ繋いで構成される。
【0030】
ここで、
図5はスクリーン14の収納時の移動型ディスプレイ10を示す図である。
図5に示すように、スクリーン14は、円錐の側面の形状を縦方向に等間隔に水平輪切りされた複数の部位をそれぞれ繋いで構成されるため、支持柱13のスライド伸縮に合わせて、折り畳み可能である。また、スクリーン14の形状は、円錐に代えて、多角錐などの別の錐体の側面の形状を基にしてもよい。また、スクリーン14は、魚釣りで用いられる魚籠(びく)のように、下方が順に大きくなるような複数の輪に取付けられたものであってもよい。
【0031】
複数のプロジェクタ12は、円盤形状のベース部11の円周部に設置される。例えば、複数のプロジェクタ12は、管制室2において使用されるビデオカメラ30が4台の場合、4台設置される。複数のプロジェクタ12は、スクリーン14に対して、4台のビデオカメラ30によって撮像された4方向からの遠隔誘導者3の撮像画像を、それぞれの撮像方向に対応する方向のプロジェクタ12で投影可能なように、円盤形状のベース部11の円周部から内側斜め上方向に向けて、一定間隔でそれぞれ設置される。本実施の形態では、4台のプロジェクタ12はベース部11の円周部に、互いに等間隔に設置され、移動型ディスプレイ10は、プロジェクタ12の投影方向が、南北方向の歩道、および東西方向の車両出入方向に合うように設置されるものとする。
【0032】
また、移動型ディスプレイ10は、支持柱13の上部に、多方位スピーカ16と、360度カメラ17と、通信部18と、を備える。
【0033】
通信部18は、インターネットなどのネットワーク50を介した通信等を用いて、移動型ディスプレイ10と制御サーバ40との間で通信を行うための通信インタフェース部である。
【0034】
多方位スピーカ16は、マイク44を介して入力された管制室2における遠隔誘導者3からの音声、または電子音を出力する。
【0035】
360度カメラ17は、移動型ディスプレイ10の設置場所の周囲の画像である現地状況画像を撮像し、制御サーバ40に通信部18を介して送信する現地状況撮像装置である。制御サーバ40は、管制室2における遠隔誘導者3が着用する表示装置であるVRゴーグル20に対して、移動型ディスプレイ10の設置場所の現地状況画像を投影する。なお、制御サーバ40は、VRゴーグル20に代えて、管制室2の壁面を形成して遠隔誘導者3の周囲に設置された表示装置に対して、移動型ディスプレイ10の設置場所の現地状況画像を投影してもよい。
【0036】
遠隔誘導者3が管制室2の4台のビデオカメラ30のうちの1台に正対して、VRゴーグル20を装着し起動すると、制御サーバ40は、初期状態としてVRゴーグル20に、360度カメラ17が撮像した現地状況画像のうち、所定の方向の撮像範囲を初期状態として投影するとともに、その正対したビデオカメラ30を、移動型ディスプレイ10の4台のプロジェクタ12のうち、当該所定の範囲の撮像方向に設置されたプロジェクタ12に対応付ける。
【0037】
本実施の形態では、制御サーバ40は、初期状態としてVRゴーグル20に、現地状況画像のうち、北方向の道路が映る範囲を投影するとともに、その正対したビデオカメラ30を、移動型ディスプレイ10の北方向にあるプロジェクタ12に対応付ける。同様にして、遠隔誘導者3の背面のビデオカメラ30は南方向にあるプロジェクタ12に、左側面のビデオカメラ30は西方向にあるプロジェクタ12に、右側面のビデオカメラ30は東方向にあるプロジェクタ12に、それぞれ対応づける。
【0038】
そして、制御サーバ40の制御部46は、その正対したビデオカメラ30の撮像画像が遠隔誘導者3の正面を撮像しているものと認識し、この撮像画像のみを移動型ディスプレイ10に送信する。すると、対応する移動型ディスプレイ10の北方向に設置されたプロジェクタ12のみが、スクリーン14にその撮像画像を投影することとなる。この結果、歩道の北側に位置する通行人のみが、移動型ディスプレイ10に投影された遠隔誘導者3の正面画像を視認可能となる。
【0039】
ここで、前述の遠隔誘導者3がVRゴーグル20を装着した状態で、右側面にあるビデオカメラ30のほうへ方向転換して正対すると、VRゴーグル20には、現地状況画像の東方向の範囲が投影され、同様の処理の流れによって、移動型ディスプレイ10の東方向に設置されたプロジェクタ12が、遠隔誘導者3の正面画像をスクリーン14に投影し、その他のプロジェクタ12は遠隔誘導者3の画像を投影しないこととなる。この結果、東方向から接近する工事車両の運転手のみが、遠隔誘導者3の正面画像を視認可能となる。
【0040】
さらにそこから、遠隔誘導者3がVRゴーグル20を装着した状態で、右側面にあるビデオカメラ30のほうへ方向転換して正対すると、VRゴーグル20には、現地状況画像の南方向の範囲が投影され、同様の処理の流れによって、移動型ディスプレイ10の南方向に設置されたプロジェクタ12が、遠隔誘導者3の正面画像をスクリーン14に投影し、その他のプロジェクタ12は遠隔誘導者3の画像を投影しないこととなる。この結果、歩道の南側に位置する通行人のみが、遠隔誘導者3の正面画像を視認可能となる。
【0041】
さらにそこから、遠隔誘導者3がVRゴーグル20を装着した状態で、右側面にあるビデオカメラ30のほうへ方向転換して正対すると、VRゴーグル20には、現地状況画像の西方向の範囲が投影され、同様の処理の流れによって、移動型ディスプレイ10の西方向に設置されたプロジェクタ12が、遠隔誘導者3の正面画像をスクリーン14に投影し、その他のプロジェクタ12は遠隔誘導者3の画像を投影しないこととなる。この結果、西方向から接近する工事車両の運転手のみが、遠隔誘導者3の正面画像を視認可能となる。
【0042】
上述のような処理によって、遠隔誘導者3が着用するVRゴーグル20が投影する現地状況画像の撮像方向と、プロジェクタ12が遠隔誘導者3の正面画像を投影する方向とが一致するので、遠隔誘導者3は、移動型ディスプレイ10が設置された場所から離れた管制室3に位置した状態で、VRゴーグル20に投影された現地状況画像に映る通行人や工事車両などに対する誘導動作を行い、当該通行人または当該工事車両の運転手は、移動型ディスプレイ10に投影された遠隔誘導者3の誘導動作を視認することができ、遠隔での交通誘導を実施することができる。
【0043】
次に、スクリーン14の表面に設けられた再帰性反射材15について詳述する。
【0044】
ここで、
図6は再帰性反射材15の一例を概略的に示す図である。
図6(a)は本実施形態にかかる再帰性反射材15を示し、
図6(b)は従来の再帰性反射材115を示している。
【0045】
図6(a)に示すように、再帰性反射材15は、スクリーン14の表面に連なって設けられた球面反射鏡15aに対して、レンズである球形透過体15bを挿入して構成される。
図6(a)に示す再帰性反射材15の球形透過体15bは、
図6(b)に示す従来の再帰性反射材115の球面反射鏡115aに対して挿入される球形透過体115bのように真円球形ではない。
【0046】
図6(a)に示すように、再帰性反射材15の球形透過体15bは、下半分を球面とし、斜め左上(プロジェクタ12からの入射光が照射される位置)のみを特定角の直線で構成される平面としている。このように再帰性反射材15の球形透過体15bを構成することにより、プロジェクタ12から照射される斜め下方向からの入射光のみを、単純な再帰性ではなく、水平方向に反射する特定角反射を行うことが可能になっている。
【0047】
ここで、
図7は再帰性反射材15の別の一例を概略的に示す図である。
図7(a)は本実施形態にかかる再帰性反射材15を示し、
図7(b)は従来の再帰性反射材115を示している。
【0048】
図7(a)に示すように、再帰性反射材15は、スクリーン14の表面に連なって設けられた鋸歯状の反射鏡面15cで構成される。
図7(a)に示す再帰性反射材15の反射鏡面15cは、
図7(b)に示す従来の再帰性反射材115のようにコーナーミラー(互いに直交した箱型鏡面)115cではない。
【0049】
図7(a)に示すように、再帰性反射材15の鋸歯状の反射鏡面15cは、斜め下からの方向(プロジェクタ12からの入射光が照射される方向)と水平方向との2等分線に直交した第1の鏡面と、当該第1の鏡面に直交した第2の鏡面と、を含む。このように再帰性反射材15を構成することにより、プロジェクタ12から照射される斜め下方向からの入射光のみを、単純な再帰性ではなく、水平方向に反射する特定角反射を行うことが可能になっている。
【0050】
このように本実施形態によれば、スクリーン14の表面に設けられた再帰性反射材15の特性により、強い日光の直射の下でも、周囲からの視認性の高い遠隔映像誘導が可能となるので、昼でも夜でも良好な視認性で用いることができ、突発的または特異的な事象にも対応することができる。また、歩行者等の導線を妨げないように装置を移動させながらの誘導指示業務が可能になる。さらに、本実施形態によれば、遠隔誘導者3の現地までの移動時間をなくし、いかなる地方からも従事でき、快適な屋内環境で誘導指示業務に専念することができる。
【0051】
なお、本実施形態においては、複数のプロジェクタ12を用いてスクリーン14に対して画像Xを投影するようにしたが、これに限るものではなく、光ビームのスキャンにより、より細かい粒度制御やスクリーン14の形状に応じたプロジェクションマッピングを行う投影装置を用いるようにしてもよい。
【0052】
また、本実施形態においては、制御サーバ40の制御部46は、4台のビデオカメラ30によって撮像された4方向からの遠隔誘導者3の撮像画像を、移動型ディスプレイ10に送信するようにしたが、これに限るものではなく、必要な文字メッセージも移動型ディスプレイ10に送信してスクリーン14に対して投影するようにしてもよい。ここで、
図8はスクリーン14に対して文字メッセージMを投影した例を示す図である。
【0053】
また、本実施形態においては、制御サーバ40の制御部46は、4台のビデオカメラ30によって撮像された4方向からの遠隔誘導者3の撮像画像を、移動型ディスプレイ10に送信するようにしたが、これに限るものではなく、管制室2における遠隔誘導者3がデータスーツを着用することにより遠隔誘導者3の動きをデータ化する装置を撮像装置として適用し、移動型ディスプレイ10に送信して画像Xを投影するようにしてもよい。また、遠隔誘導者3の動きをデータ化する撮像装置は、データ化した遠隔誘導者3の動きに連動させてアニメキャラクタ等を動かしたアバター画像を作成して、移動型ディスプレイ10に送信するようにしてもよい。この場合、キャラクタやグッズの宣伝ツールとしても併用できる。
【0054】
なお、本実施形態においては、スクリーン14は、円錐形状を縦方向に等間隔に水平輪切りされた複数の部位をそれぞれ繋いで構成されるようにしたが、これに限るものではない。ここで、
図9は移動型ディスプレイ10の別の構成例を示す図である。
図9に示すように、スクリーン14を布材で形成することにより、支持柱13のスライド伸縮に合わせて、折り畳み可能としてもよい。
【0055】
(第2の実施の形態)
次に、第2の実施の形態について説明する。
【0056】
第2の実施の形態は、複数の遠隔誘導者での誘導指示業務を行うようにした点が、第1の実施の形態と異なる。以下、第2の実施の形態の説明では、第1の実施の形態と同一部分の説明については省略し、第1の実施の形態と異なる箇所について説明する。
【0057】
図10は、第2の実施の形態にかかる表示システム1の概略構成を示す図である。
図10に示す表示システム1の例は、複数の管制室2A~2Cに、異なる遠隔誘導者3A~3Cがそれぞれ配置される。
【0058】
この場合、移動型ディスプレイ10は、管制室2A~2Cごとの画像XA~XCを投影するプロジェクタ12A~12Cをそれぞれ円盤形状のベース部11の円周部に設置するものとする。
【0059】
各管制室2A~2Cの制御サーバ40は、4台のビデオカメラ30によって撮像された4方向からの撮像画像のうち、例えば遠隔誘導者3の正面を撮像した撮像画像を、移動型ディスプレイ10に送信する。
【0060】
このように本実施形態によれば、1台の移動型ディスプレイ10で複数の遠隔誘導者3A~3Cによる複数方向の異なる誘導指示業務が可能となる。
【0061】
なお、上述の各実施形態は、本発明の好適な実施の例ではあるがこれに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の変形による実施が可能である。
【符号の説明】
【0062】
1 表示システム
10 画像表示装置
11 ベース部
12 投影装置
13 支持柱
14 スクリーン
15 反射材
15a 球面反射鏡
15b 球形透過体
15c 鋸歯状の反射鏡面
17 現地状況撮像装置
18 通信部
20 現地状況表示装置
30 撮像装置
40 外部機器