(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024178860
(43)【公開日】2024-12-25
(54)【発明の名称】コリオリ質量流量計
(51)【国際特許分類】
G01F 1/84 20060101AFI20241218BHJP
【FI】
G01F1/84
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023097340
(22)【出願日】2023-06-13
(71)【出願人】
【識別番号】000006507
【氏名又は名称】横河電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】木村 壮
【テーマコード(参考)】
2F035
【Fターム(参考)】
2F035JA02
(57)【要約】
【課題】容易に測定感度を高めること。
【解決手段】コリオリ質量流量計100は、両端が固定され、両端の中心を軸に回転対称の形状であり、両端の一端側から他端側へ被測定対象の流体が流れる測定管1と、測定管1に対して軸を中心とする回転振動を与えるエキサイター2、3と、回転振動させた測定管1に作用するコリオリ力の方向において回転振動の振幅に比例して測定管1に生じる変位、速度または加速度を検出するセンサ4と、検出された変位、速度または加速度に基づいて流体の質量流量を算出する変換器12と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
両端が固定され、前記両端の中心を軸に回転対称の形状であり、前記両端の一端側から他端側へ被測定対象の流体が流れる測定管と、
前記測定管に対して前記軸を中心とする回転振動を与える励振部と、
前記回転振動させた測定管に作用するコリオリ力の方向において前記回転振動の振幅に比例して前記測定管に生じる変位、速度または加速度を検出するセンサ部と、
検出された前記変位、前記速度または前記加速度に基づいて前記流体の質量流量を算出する算出部と、
を備えることを特徴とするコリオリ質量流量計。
【請求項2】
前記励振部は、前記測定管の前記軸に対して一方向側に設けられた第1の励振部と、前記測定管の前記軸に対して他方向側に設けられた第2の励振部とを含み、前記第1の励振部および前記第2の励振部が互いに逆位相で駆動することで前記回転振動を与える、
ことを特徴とする請求項1に記載のコリオリ質量流量計。
【請求項3】
前記センサ部は、前記軸上に1つ設けられる、
ことを特徴とする請求項1に記載のコリオリ質量流量計。
【請求項4】
前記測定管は、前記一端側から延在する第1の管部と、前記第1の管部から直角に屈曲して延在する第2の管部と、前記第2の管部から直角に屈曲して前記他端側に延在する第3の管部とを有するコ字形状である、
ことを特徴とする請求項1に記載のコリオリ質量流量計。
【請求項5】
前記算出部は、前記変位をy
p、前記測定管のたわみ量と等分布荷重の比例係数をK、前記回転振動における前記測定管のねじれ角をθ、前記質量流量をQ
m、前記回転振動の振幅をF
ex0、前記第2の管部の幅をL
bm、前記軸回りの前記測定管の運動に対する減衰係数をD
θ、前記励振部の駆動振動数をω
θおよび前記励振部の励振力に対する位相遅れをφ
θとした次の式(1)をもとに、
【数1】
前記変位、前記速度または前記加速度に基づく前記質量流量を算出する、
特徴とする請求項4に記載のコリオリ質量流量計。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コリオリ質量流量計に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、測定管内を流れる流体の流量を測定する流量計として、コリオリ質量流量計が知られている。
図6は、従来のコリオリ質量流量計の構成および動作の概要を説明する説明図である。
【0003】
図6に示すように、被測定対象の流体が流れる測定管101は、Z軸(例えば鉛直方向)を中心として180°回転対称の「コ」字の形状である。測定管101において、流体が流入および流出する両端部は、X軸上に固定される。
【0004】
測定管101において、流体の流入口側の管部には、(速度)変位を検出するセンサ102が設置されている。また、センサ102と同じ高さ(Z座標)の、流出口側の管部には、(速度)変位を検出するセンサ103が設置されている。このセンサ102、103は、同じ高さ(Z座標)の設置部位における測定管101の(速度)変位を検出する。
【0005】
測定管101の中央(Z軸上)には、測定管101を励振させる励振装置としてエキサイター104が設置されている。エキサイター104は、変換器111によって動作が制御され、Y方向の調和励振力105を与える。エキサイター104は、Y方向の調和励振力105により、図中の点線で示すように、測定管101をY方向にたわませる振動モード(たわみモード)で共振させる。
【0006】
測定管101に生じる振動振幅は微小であるため、エキサイター104の調和励振力105による測定管101の振幅は、測定管101のX軸まわりの回転振動とみなせる。また、測定管101を基準にすると、X軸は、測定管101の共振周波数で回転振動する回転座標系である。
【0007】
ここで、測定管101における流体の流れに沿って、測定管101を眺めた時に流入口から最初に屈曲する箇所までを流入口側、最後に屈曲した箇所から流出口までを流出口側と呼ぶ。流入口側における流体の流速ベクトル106は、正のZ軸方向のベクトルとなる。また、流出口側における流体の流速ベクトル107は、流速ベクトル106とは逆ベクトル(負のZ軸方向のベクトル)となる。
【0008】
Z軸方向における流速ベクトル106、107は、回転座標系における軸ベクトル(X軸方向)と直交するため、Y方向には流体によるコリオリ力が発生する。具体的には、流入口側には正のY方向に働くコリオリ力108、流出口側には負のY方向に働くコリオリ力109が発生する。このコリオリ力108、109は、流体の質量流量に比例する。
【0009】
図6の矢印右側の図は、流入口側に働くコリオリ力108と、流出口側に働くコリオリ力109を取り出したものを示している。コリオリ力108、109の大きさは等しいため、コリオリ力108、109は、測定管101をZ軸まわりに回転させるねじれ振動110となる。したがって、測定管101には、たわみモードの振動運動のみならず、Z軸まわりのねじれ振動110が重畳する。このねじれ振動110における振動成分の振幅(ねじれ角)は、コリオリ力に比例する。
【0010】
このとき、上記のセンサ102、103で検出される(速度)変位は、基本的にたわみモードの振動となるが、ねじれ振動110が互いに逆位相でそれぞれに重畳する。したがって、センサ102、103が検出する振動波形には、わずかな位相差が生じる。この位相差は、ねじれ振動110に由来し、そのねじれ角に比例する。
【0011】
変換器111、センサ102、103から受信した信号を処理することで上記の位相差を検出する。さらに、変換器111は、上記の位相差、ねじれ角、コリオリ力及び質量流量の比例関係を用い、検出した位相差に適切な比例定数を乗じることで、測定管101を流れる流体の質量流量を算出する。変換器111は、算出した流体の質量流量のデータをDCS(Distributed Control System)等の統合生産制御システムやPC(Personal Computer)などの外部機器へ送信する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開昭54-52570号公報
【特許文献2】特開2002-13961号公報
【非特許文献】
【0013】
【非特許文献1】JIS B 7555 コリオリメータによる流量計測方法(質量流量,密度及び体積流量計測)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
上記の従来技術では、質量流量の測定感度は位相差の大きさに比例する。位相差の大きさは、測定管101の形状やセンサ102、103の位置などの装置上の幾何学的な要素によって決まる。測定管101の形状は、流量計の大きさなどに強く制約を受ける。また、センサ102、103の位置の調整においては、位相差の大きさとセンサ102、103に誘起される信号強度とトレードオフの関係にある制約を受ける。このように、位相差を大きくするにはさまざまな制約があることから、従来技術では、測定感度を高めることが困難であるという問題がある。
【0015】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、容易に測定感度を高めることを可能とするコリオリ質量流量計を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明は、両端が固定され、前記両端の中心を軸に回転対称の形状であり、前記両端の一端側から他端側へ被測定対象の流体が流れる測定管と、前記測定管に対して前記軸を中心とする回転振動を与える励振部と、前記回転振動させた測定管に作用するコリオリ力の方向において前記回転振動の振幅に比例して前記測定管に生じる変位、速度または加速度を検出するセンサ部と、検出された前記変位、前記速度または前記加速度に基づいて前記流体の質量流量を算出する算出部と、を備えることを特徴とするコリオリ質量流量計を提供する。
【0017】
本発明によれば、容易に測定感度を高めることができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】
図1は、実施形態にかかるコリオリ質量流量計の構成例を示す説明図である。
【
図2】
図2は、実施形態にかかるコリオリ質量流量計の測定管における周波数応答を説明するグラフである。
【
図3】
図3は、測定管の寸法関係を説明する説明図である。
【
図4】
図4は、測定管にかかるコリオリ力を説明する説明図である。
【
図5】
図5は、変換器の機能構成例を示すブロック図である。
【
図6】
図6は、従来のコリオリ質量流量計の構成および動作の概要を説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に、本発明の一実施形態に係るコリオリ質量流量計を、図面を参照して詳細に説明する。なお、本発明は、以下に説明する実施形態により限定されるものではない。
【0020】
図1は、実施形態にかかるコリオリ質量流量計の構成例を示す説明図である。
図1に示すように、コリオリ質量流量計100において、被測定対象の流体が流れる測定管1は、例えば鉛直方向のZ軸を中心として180°回転対称の形状である。
【0021】
測定管1は、X軸上に固定、すなわち、流体が流入する流入口側と、流体が流出する流出口側の両端部が支持部材1aにより固定されている。流体は、支持部材1aにより固定された測定管1の流入口側から流出口側へと流れる。
【0022】
測定管1は、流入口側から正のZ軸方向に延在する管部1bと、管部1bから直角に屈曲してX軸方向に延在する管部1cと、管部1cから直角に屈曲して流出口側(負のZ軸方向)に延在する管部1dとを有する「コ」字の形状である。
【0023】
なお、測定管1は、本実施形態では「コ」字形状としているが、Z軸を中心として180°回転対称の弓形状(「U」字形状)または「V」字形状などであっても構わない。
【0024】
測定管1の流入口側と流出口側、具体的には管部1b、1dの上部には、エキサイター2、3が設置されている。エキサイター2、3は、変換器12によって動作が制御され、測定管1に対してY方向の調和励振力を与える。このとき、エキサイター2、3は、例えばそれぞれ同じ巻数のコイルと同じ磁力の磁石によって構成されるが、コイルは互い逆向きに巻かれ、かつ導線により並列に接続されるなどにより、互いに逆位相で駆動するものとする。これにより、エキサイター2、3は、測定管1をZ軸まわりにねじれる振動モード(ねじれモード)で共振させる。
【0025】
図2は、実施形態にかかるコリオリ質量流量計100の測定管1における周波数応答を説明するグラフである。
図2に示すグラフGは、横軸を周波数(Frequency)、縦軸を振動強度(Gain)とした場合の測定管1の周波数応答を示している。グラフGに示すように、測定管1においては、たわみモードの共振周波数F1よりも、ねじれモードの共振周波数F2の方が高くなる。
【0026】
このねじれモードの振動振幅は、微小であるため、エキサイター2、3の励振力による振幅は、測定管1のZ軸まわりの回転振動とみなせる。すなわち、エキサイター2、3は、励振部の一例である。なお、測定管1に対してZ軸を中心とする回転振動を与える構成は、上記のエキサイター2、3によるものに限定しない。例えば、励振部は、測定管1を回転振動させる1つのエキサイターであってもよい。
【0027】
図3は、測定管1の寸法関係を説明する説明図である。
図3に示すように、管部1b、1dの長さは、L
plとする。管部1cの長さは、L
bmとする。Z軸を中心とする測定管1の回転角(ねじれ角)はθとする。X軸を中心とする測定管1の回転角はφとする。
【0028】
測定管1に対してZ軸を中心とする回転振動を与えるときの、測定管1の運動方程式は、
図3の寸法関係を用いると次の式(1)のとおりとなる。
【0029】
【0030】
ただし、Jθは、Z軸回りの慣性モーメントである。Dθは、Z軸回りの測定管1の運動に対する減衰係数である。Kθは、Z軸周りの測定管1のねじれ運動に対する復元力となる弾性係数である。Fex0は、エキサイター2、3の励振力の振幅とである。ωθnは、変換器12に制御される測定管1、2の駆動振動数である。
【0031】
式(1)に示す運動方程式から十分時間が経ったときの測定管1のねじれ角θは、次の式(2)のとおりとなる。ただし、φθは、エキサイター2、3の励振力に対する測定管1の振動の位相遅れである。
【0032】
【0033】
また、流入口側の測定管1の管部1bに注目すると、管部1bがY方向に微小にたわむため、X軸まわりの回転振動とみなせる。同様に、流出口側の測定管1の管部1dに注目すると、管部1dがY方向に微小にたわむため、X軸まわりの回転振動とみなせるが、エキサイター2、3の駆動方向は逆方向であることから、流入口側と流出口側のX軸周りも回転は逆となる。
【0034】
このとき、流入口側の測定管1の管部1bにおける微小長さdL
plにかかるコリオリ力dF
cは、
図3の寸法関係を用いると次の式(3)のとおりとなる。なお、Aは、流速に垂直な測定管1の断面積である。vは、内部に流れる流体の流速である。ρは、流体の密度である。Q
mは、質量流量(ρAv)である。
【0035】
【0036】
流入口側の流体の流速ベクトル7と、流入口側の流体の流速ベクトル8は、逆ベクトルの関係にある。また、流入口側の管部1bと流出口側の管部1dの回転も同じであるため、流出口側の測定管1の管部1dにおける微小長さにかかるコリオリ力もdFcとなる。したがって、測定管1に作用するコリオリ力9、10は、測定管1をY方向にたわませる(変位させる)。
【0037】
図4は、測定管1にかかるコリオリ力を説明する説明図である。
図4では、測定管1にかかるコリオリ力による測定管1のたわみを点線で示している。
【0038】
図4に示すように、測定管1をYZ平面で見ると、測定管1は、コリオリ力由来の等分布荷重を受ける片持ち梁とみなせる。この等分布荷重は、次の式(4)のとおりである。
【0039】
【0040】
測定管1を片持ち梁とみなした場合の、この片持ち梁のたわみ量11は等分布荷重に比例するため、測定管1の端部におけるY方向の変位ypは、次の式(5)のとおりとなる。なお、Kは、たわみ量11と等分布荷重の比例係数である。
【0041】
【0042】
この式(5)が示すように、測定管1に作用するコリオリ力9、10による測定管1のY方向の変位、速度または加速度は質量流量と比例する。測定管1のZ軸上に設置されたセンサ4は、このY方向の変位、速度または加速度を検出する。具体的には、センサ4は、測定管1の管部1c、すなわち測定管1を片持ち梁とみなした場合の端部に設置される。
【0043】
変換器12は、センサ4から受信したY方向の変位、速度または加速度に対応する信号を処理し、上記の式(5)に示す適切な比例定数を乗じることで、測定管1内を流れる流体の質量流量を算出する。変換器12は、算出した流体の質量流量を示すデータをDCS等の統合生産制御システムやPCなどの外部機器へ送信する。変換器12は、算出部の一例である。
【0044】
図5は、変換器12の機能構成例を示すブロック図である。
図5に示すように、変換器12は、通信部13と、記憶部14と、制御部15とを有する。
【0045】
通信部13は、制御部15の制御のもと、エキサイター2、3への駆動信号の送信、センサ4が検出した信号の受信、質量流量を示すデータの外部機器への送信等を行う通信インタフェースである。
【0046】
記憶部14は、不揮発性メモリなどであり、設定情報14a、履歴情報14bなどを格納する。設定情報14aは、Y方向の変位、速度または加速度から流体の質量流量を算出するための比例定数などを含む、各種の設定内容を記述したデータである。履歴情報14bは、センサ4の検出結果(Y方向の変位、速度または加速度の値)、算出結果(質量流量の値)の履歴を、例えばタイムスタンプなどを付与して時系列順に列挙したデータである。
【0047】
制御部15は、例えばプロセッサにより実現されるコンピュータであり、励振制御部15a、信号処理部15b、流量算出部15c、データ送信部15dを有する。
【0048】
励振制御部15aは、通信部13を介してエキサイター2、3に駆動信号を出力することで、エキサイター2、3の駆動(励振)を制御する。具体的には、励振制御部15aは、設定情報14aにより設定された所定の励振力、振動駆動数でエキサイター2、3を駆動させる。
【0049】
信号処理部15bは、通信部13を介してセンサ4より受信した信号を処理し、Y方向の変位、速度または加速度の値に変換する。例えば、信号処理部15bは、励振制御部15aが所定の励振力、振動駆動数でエキサイター2、3を駆動させ、一定時間経過した後にセンサ4より信号を受信する。ついで、信号処理部15bは、センサ4より受信した信号を処理することで、ねじれモードが落ち着いたところのY方向の変位、速度または加速度の値を取得する。
【0050】
流量算出部15cは、信号処理部15bが変換したY方向の変位、速度または加速度の値をもとに、設定情報14aにより設定された比例定数を乗じることで、測定管1内を流れる流体の質量流量を算出する。流量算出部15cは、算出した質量流量、算出元となったY方向の変位、速度または加速度の値などを、タイムスタンプを付与して履歴情報14bに格納する。
【0051】
データ送信部15dは、流量算出部15cが算出した流体の質量流量を示すデータを、通信部13を介して外部機器に送信する。例えば、データ送信部15dは、履歴情報14bに含まれる直近の質量流量をタイムスタンプなどとともに外部機器に送信する。また、データ送信部15dは、所定の時間間隔で履歴情報14bにおいて更新された質量流量をタイムスタンプなどとともに外部機器に送信してもよい。
【0052】
(効果)
コリオリ質量流量計100は、両端が固定され、両端の中心をZ軸に回転対称の形状であり、両端の一端側から他端側へ被測定対象の流体が流れる測定管1を備える。コリオリ質量流量計100は、測定管1に対してZ軸を中心とする回転振動を与える励振部を備える。コリオリ質量流量計100は、回転振動させた測定管1に作用するコリオリ力9、10のY方向において回転振動の振幅に比例して測定管1に生じる変位、速度または加速度を検出するセンサ部を備える。コリオリ質量流量計100は、検出された変位、速度または加速度に基づいて流体の質量流量を算出する算出部を備える。
【0053】
このため、コリオリ質量流量計100では、回転振動が大きくなるほど、センサ部が検出する測定管1に生じる変位、速度または加速度も大きくなることから、感度の高い質量流量のセンシングが可能となる。例えば、コリオリ質量流量計100では、回転振動を大きくすることで、容易に質量流量の測定感度を高めることができる。
【0054】
また、励振部は、測定管1の一端側に設けられた第1の励振部(エキサイター2)と、測定管1の他端側に設けられた第2の励振部(エキサイター3)とを含み、第1の励振部および第2の励振部が互いに逆位相で駆動することで回転振動を与える。これにより、コリオリ質量流量計100では、回転振動(ねじれ)にかかるモーメントを大きくすることができ、測定管1の固有角振動数が高くなる場合であっても測定管1を十分な振幅で振動させることができる。
【0055】
また、コリオリ質量流量計100において、センサ部は、Z軸上に1つ設けられる。これにより、コリオリ質量流量計100では、位相差検出のために2つのセンサを有する従来のコリオリ質量流量計と比較して、複数のセンサ機差によるノイズを低減することができる。
【0056】
また、測定管1は、一端側から延在する第1の管部(管部1b)と、第1の管部から直角に屈曲して延在する第2の管部(管部1c)と、第2の管部から直角に屈曲して他端側に延在する第3の管部(管部1d)とを有するコ字形状である。このようなコ字形状のコリオリ質量流量計の共振運動は、一般的に、たわみモードの共振周波数F1よりもねじれモードの共振周波数F2の方が高くなる。このため、コ字形状の測定管1を用いたコリオリ質量流量計100では、比較的低い振動数を持つ外部振動の測定への影響を受けにくくすることができる。
【0057】
また、算出部は、式(5)をもとに、コ字形状の端部において検出された変位、速度または加速度に基づく質量流量を算出する。これにより、コリオリ質量流量計100では、コ字形状の端部において検出された変位、速度または加速度をもとに質量流量を算出することができる。
【0058】
開示される技術特徴の組合せのいくつかの例を以下に記載する。
【0059】
(1)両端が固定され、前記両端の中心を軸に回転対称の形状であり、前記両端の一端側から他端側へ被測定対象の流体が流れる測定管と、
前記測定管に対して前記軸を中心とする回転振動を与える励振部と、
前記回転振動させた測定管に作用するコリオリ力の方向において前記回転振動の振幅に比例して前記測定管に生じる変位、速度または加速度を検出するセンサ部と、
検出された前記変位、前記速度または前記加速度に基づいて前記流体の質量流量を算出する算出部と、
を備えることを特徴とするコリオリ質量流量計。
【0060】
(2)前記励振部は、前記測定管の前記軸に対して一方向側に設けられた第1の励振部と、前記測定管の前記軸に対して他方向側に設けられた第2の励振部とを含み、前記第1の励振部および前記第2の励振部が互いに逆位相で駆動することで前記回転振動を与える、
ことを特徴とする(1)に記載のコリオリ質量流量計。
【0061】
(3)前記センサ部は、前記軸上に1つ設けられる、
ことを特徴とする(1)または(2)に記載のコリオリ質量流量計。
【0062】
(4)前記測定管は、前記一端側から延在する第1の管部と、前記第1の管部から直角に屈曲して延在する第2の管部と、前記第2の管部から直角に屈曲して前記他端側に延在する第3の管部とを有するコ字形状である、
ことを特徴とする(1)~(3)のいずれか1つに記載のコリオリ質量流量計。
【0063】
(5)前記算出部は、前記変位をyp、前記測定管のたわみ量と等分布荷重の比例係数をK、前記回転振動における前記測定管のねじれ角をθ、前記質量流量をQm、前記回転振動の振幅をFex0、前記第2の管部の幅をLbm、前記軸回りの前記測定管の運動に対する減衰係数をDθ、前記励振部の駆動振動数をωθおよび前記励振部の励振力に対する位相遅れをφθとした式(5)をもとに、
前記変位、前記速度または前記加速度に基づく前記質量流量を算出する、
特徴とする(4)に記載のコリオリ質量流量計。
【符号の説明】
【0064】
100…コリオリ質量流量計
1、101…測定管
1a…支持部材
1b~1d…管部
2、3、104…エキサイター
4、102、103…センサ
5、6、105…励振力
7、8、106、107…流速ベクトル
9、10、108、109…コリオリ力
11…たわみ量
12、111…変換器
13…通信部
14…記憶部
14a…設定情報
14b…履歴情報
15…制御部
15a…励振制御部
15b…信号処理部
15c…流量算出部
15d…データ送信部
110…ねじれ振動
F1、F2…共振周波数
G…グラフ