(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024178862
(43)【公開日】2024-12-25
(54)【発明の名称】エレベータ内ロボット乗降システム
(51)【国際特許分類】
G05D 1/43 20240101AFI20241218BHJP
B66B 1/06 20060101ALI20241218BHJP
B66B 3/00 20060101ALI20241218BHJP
【FI】
G05D1/02 T
B66B1/06 F
B66B3/00 L
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023097342
(22)【出願日】2023-06-13
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 令和5年3月13日に、ciRobotics株式会社が、動画配信サイトyoutubeチャンネル内で、ホテル宿泊者居室への無人配送ロボットによる物品配送業務などについての技術紹介を、外部に対して公開した。 令和5年3月24日に、ciRobotics株式会社が、動画配信サイトyoutubeチャンネル内で、ホテル宿泊者居室への無人配送ロボットによる物品配送業務などについての公開実験動画を、外部に対して公開した。 令和5年3月24日に、大分朝日放送が、午後6時台のローカルニュースの中で放送した、タイトル名が「宿泊用品をロボットが配送!?」の中で、ホテル宿泊者居室への無人配送ロボットによる物品配送業務などについての実証実験を、報道陣に公開で行ったことについて、放映した。 令和5年4月15日に、大分合同新聞社が、この新聞社が発行する新聞紙上において報道した。
(71)【出願人】
【識別番号】523225601
【氏名又は名称】株式会社CAOS
(74)【代理人】
【識別番号】100080160
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 憲一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100149205
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 泰央
(72)【発明者】
【氏名】宮崎 健
(72)【発明者】
【氏名】下川 靖夫
(72)【発明者】
【氏名】阿部 優志
(72)【発明者】
【氏名】姫野 誉博
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 隆士
(72)【発明者】
【氏名】下岡 広幸
【テーマコード(参考)】
3F303
3F502
5H301
【Fターム(参考)】
3F303CB22
3F303CB24
3F303CB27
3F502HC07
3F502JA21
3F502KA01
5H301AA02
5H301BB05
5H301BB14
5H301GG09
5H301LL02
5H301LL08
5H301LL14
5H301QQ02
(57)【要約】 (修正有)
【課題】エレベータ内ロボット乗降システムを提供する。
【解決手段】エレベータ200のかご220に取り付けてエレベータの運転情報を入手し、かご内の乗客の在否情報を送信するとともにかごの運転を独立運転モードに切り替え可能に構成されたエレベータ制御ボックス20と、エレベータ制御ボックスが入手した運転情報を交信するルータ30と、ルータからの運転情報を入手する通信手段16、移動する周囲環境の撮像データを得るカメラ12、及び周囲の障害物までの距離を得る障害物センサ14を有し、あらかじめ取得したマップ情報と障害物センサ情報との照合を行うことにより現在位置を推定して目的地に移動するとともに、かご内の乗客の在否情報、及び/又はかご内への移動通路の撮像データに基づきかご内へ乗車する者が居ないと判定したときに、かご内に乗車するロボット10と、ロボットに行先指示情報を交信するサーバ100と、を有する構成とした。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エレベータのかごに取り付けて前記エレベータの運転情報を入手し、前記かご内の乗客の在否情報を送信するとともに前記かごの運転を独立運転モードに切り替え可能に構成されたエレベータ制御ボックスと、
前記エレベータ制御ボックスが入手した前記運転情報を交信するルータと、
前記ルータからの前記運転情報を入手する通信手段、移動する周囲環境の撮像データを得るカメラ、及び周囲の障害物までの距離を得る障害物センサを有し、あらかじめ取得したマップ情報と前記障害物センサ情報との照合を行うことにより現在位置を推定して目的地に移動するとともに、前記かご内の乗客の在否情報、及び/又は前記かご内への移動通路の撮像データに基づき前記かご内へ乗車する者が居ないと判定したときに前記かご内に乗車するロボットと、
前記ロボットに行先指示情報を交信するサーバと、
を有することを特徴とするエレベータ内ロボット乗降システム。
【請求項2】
前記移動通路の撮像データは、前記エレベータドアの開扉空間を検知対象とするよう構成されたことを特徴とする請求項1に記載のエレベータ内ロボット乗降システム。
【請求項3】
前記エレベータ制御ボックスは、前記かごの所定時間遡った区間内の所定回数のサンプリングにより得られた重量データの回帰直線の傾きを算出し、前記算出値が所定の閾値の範囲内にあるときに、前記かご内に乗客等が居ないと判定することを特徴とする請求項1に記載のエレベータ内ロボット乗降システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エレベータのかご内の乗客の在否を判定してロボットが乗降するエレベータ内ロボット乗降システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、人手不足や感染症対策などによりホテルや病院などの多層階施設において、ロボットによる無人配達のニーズが高まっている。このようなニーズを実現するには、ロボットがエレベータの運転状況を把握するとともに、かごへの乗車可否を判定してロボット自らが乗降する機能を実現することが必須である。
【0003】
ロボット自らがかごに乗降するためには、かご内の乗客の在否を判定する必要がある。仮に、かご内の乗客の在否判定をしなかった場合には、エレベータのかご内に人が乗っている場合でも、ロボットがかご内に強引に入ろうとしてしまい不測のトラブルを生じるおそれがある。また、エレベータの乗場において、かご内へ人が乗車しようとしているか否かを識別する機能を実現することも必要となる。
【0004】
さらに、かかる機能を実現するうえで、ホテルや病院等の設備の改造や機器の追加設置等をできる限り少なくできるように構成することが望ましい。
【0005】
特許文献1には、複数台のロボットに対してエレベータを利用して移動先の指示・管理を行わせるためのエレベータ管理装置、情報処理装置、エレベータ管理システム及びエレベータ管理装置の制御方法が開示されている。具体的には、エレベータ管理装置は、エレベータの運転状況に基づいて、ロボットの各々が所望の移動先に到着するまでの時間を算出し、算出した時間に基づいて少なくとも1つのロボットを特定する。そして、特定したロボットが所望の移動先まで移動するために利用可能なエレベータに関する情報を含む移動先情報を出力するよう構成されている。
【0006】
また、特許文献2には、地図情報に基づく走行経路を走行するロボットと、ロボットを搬送するエレベータと、地図情報を蓄積するサーバとを備え、サーバは、エレベータがロボットを搬送する際に、ロボットに対し、エレベータによって搬送された先のエリアの地図情報を送信する地図送信部を有する地図情報配信システム及び地図情報配信方法が開示されている。
【0007】
また、特許文献3には、遠隔制御や建物オーナーの依頼により設定状態の変更を行う監視センターと、建物内を移動するロボットで構成されたエレベータの遠隔制御システムが開示されている。具体的には、ロボットが建物の無線設備を利用し、監視センターに設けられる監視センターサーバ経由でエレベータに対しロボットが現在居る階と、目的階と、移動予定時刻を送信し、受信したエレベータはその時刻に、ロボットが現在居る階へかごを移動させ、続いて目的階へ移動するといった一連の制御を行うものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2021-31264号公報
【特許文献2】特開2021-113917号公報
【特許文献3】特開2021-70578号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献1に記載の技術にあっては、稼働中の複数台のロボットに対して、その中の特定のロボットへの移動制御及び管理を行うため移動先情報をそのロボットに与えて、そのロボットが所望の移動先まで移動可能とするよう構成されている。しかしながら、この特許文献1の技術では、エレベータのかご内へロボットが乗降して異なるフロアへの移動を自由に行うための具体的なシステムを得ることができるとはいえない。
【0010】
また、特許文献2に記載の技術は、エレベータでロボットを搬送する際の移動先のフロアのエリアに関する地図情報を送信して提供するものであり、自己位置推定や経路追従が円滑に行えるようにするためのものである。従って、この特許文献2に記載された技術では、エレベータのかご内へロボットが乗降して異なるフロアへの移動を自由に行うための具体的なシステムを得ることができるとはいえない。
【0011】
また、特許文献3に記載の技術は、既存機器のみでロボットとエレベータとの連携を可能とする制御方法を提供するものであり、ロボット自身が移動依頼情報を作成し、この移動依頼情報に基づき、監視センターサーバがエレベータの制御・管理を行うように構成されている。換言すれば、監視センターサーバを介在したエレベータの遠隔制御であるため、システムを構築するうえで監視センターサーバを含む大幅なシステム変更が必要となり、その分コストも増大するとともに、通常のエレベータシステムでは簡単かつ短時間での改修をできないおそれがある。
【0012】
本発明は、上記のような問題点に鑑みてなされたものであり、ロボットがエレベータのかご内に乗客が居ないことや乗車しようとする者が居ないことを判定して乗降するよう構成されたエレベータ内ロボット乗降システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
請求項1に記載の発明は、エレベータのかごに取り付けて前記エレベータの運転情報を入手し、前記かご内の乗客の在否情報を送信するとともに前記かごの運転を独立運転モードに切り替え可能に構成されたエレベータ制御ボックスと、
前記エレベータ制御ボックスが入手した前記運転情報を交信するルータと、
前記ルータからの前記運転情報を入手する通信手段、移動する周囲環境の撮像データを得るカメラ、及び周囲の障害物までの距離を得る、例えば、LiDAR(Light Detection And Ranging)センサを有し、あらかじめ取得したマップ情報と前記LiDARセンサ情報との照合を行うことにより現在位置を推定して目的地に移動するとともに、前記かご内の乗客の在否情報、及び/又は前記かご内への移動通路の撮像データに基づき前記かご内へ乗車する者が居ないと判定したときに前記かご内に乗車するロボットと、
前記ロボットに行先指示情報を交信するサーバと、
を有することを特徴とするエレベータ内ロボット乗降システムである。
【0014】
請求項2に記載の発明は、前記移動通路の撮像データは、前記エレベータドアの開扉空間を検知対象とするよう構成されたことを特徴とする請求項1に記載のエレベータ内ロボット乗降システムである。
【0015】
請求項3に記載の発明は、前記エレベータ制御ボックスは、前記かごの所定時間遡った区間内の所定回数のサンプリングにより得られた重量データの回帰直線の傾きを算出し、前記算出値が所定の閾値の範囲内にあるときに、前記かご内に乗客等が居ないと判定することを特徴とする請求項1に記載のエレベータ内ロボット乗降システムである。
【発明の効果】
【0016】
請求項1に記載の発明によれば、エレベータ制御ボックスが入手した、例えば、階情報、かごの重量情報、ドアの開閉情報等の運転情報に基づきかご内に乗客が居ないこと、及び/又はカメラによる開扉空間の撮像データによるかごへ乗車する者が居ないとする情報に基づき、かご内への乗車可否の判定をすることができる。このため、ロボットが乗客の居るエレベータのかご内に強引に入ろうとすることを未然に防止することができる。
また、ロボットが、かごに乗車すると当該かごを独立運転モードに切り替えるよう構成しているために、ロボットが行先階に到着する途中でかご内に乗客が乗車してくることを可能な限り防止することができる。
また、ロボットは、あらかじめ取得したマップ情報と障害物センサの情報との照合を行うことにより現在位置を推定して目的地に移動することができるよう構成している。
このため、道案内となる位置情報を発信する装置やロボットを誘導する装置等の設置やこれに伴う通信系統の敷設工事等を行う必要がなく、簡単な構成で低コストのシステムを提供することができる。
【0017】
請求項2に記載の発明によれば、かご内へ乗車する者が居ないとする判定は、エレベータドアの開扉空間をカメラで撮影した撮像データに基づき行うよう構成されているために、かご内への移動通路から離れている人をマスク処理して、かごに乗降する人のみを検出対象とすることができる。
したがって、例えば、エレベータドアの両脇にいる人等を誤検知することがなく、確実にかご内に乗降する人のみを検知することができる。また、カメラで撮影した撮像データの画像処理に必要となるメモリ容量を低減することができ、併せて画像処理を高速化することができる。
【0018】
請求項3に記載の発明によれば、かごの所定時間遡った区間内の所定回数のサンプリングにより得られた重量データの回帰直線の傾きを算出し、当該算出値が所定の閾値の範囲内にあるときに、かご内に乗客等が居ないと判定するよう構成している。このために、乗降客の錯綜やノイズによる微細変動等を排除でき、かごの重量を正確に測定することができる。また、かごの内部に人感センサ等の設置工事等を行うことなく低コストのシステムを提供することができる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明に係るエレベータ内ロボット乗降システムの概略構成を示す図である。
【
図2】エレベータのかごを独立運転モードへ切り替える方法の一例の説明図である。
【
図3】エレベータのかごを独立運転モードへ切り替える方法の他の例の説明図である。
【
図4】エレベータのかごドアを「開」又は「閉」にする方法の一例の説明図である。
【
図5】本発明に係るエレベータ内ロボット乗降システムのかごを含むエレベータの動作の一例を説明するタイムチャートである。
【
図7】かごの重量を算出する方法の説明図(その1)である。
【
図8】かごの重量を算出する方法の説明図(その2)である。
【
図9】かごの重量を算出する方法の説明図(その3)である。
【
図10】エレベータの乗場にかご内へ乗車する者が居ないことを確認する方法の説明図である(その1)。
【
図11】エレベータの乗場にかご内へ乗車する者が居ないことを確認する方法の説明図である(その2)。
【
図12】エレベータの乗場にかご内へ乗車する者が居ないことを確認する方法の説明図である(その3)。
【
図13】本発明に係るエレベータ内ロボット乗降システムの乗車制御の概略のフローチャートである。
【
図14】本発明に係るエレベータ内ロボット乗降システムの降車制御の概略のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
次に、図面を参照して、本開示に係るエレベータ内ロボット乗降システムの実施形態について下記の順序で説明する。以下の説明に係る図面において、同一又は類似の部分には同一又は類似の符号を付している。ただし、図面は、模式的なものであり、各部の寸法の比率等は現実のものとは必ずしも一致しない。また、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれることは勿論である。
1.本発明に係るエレベータ内ロボット乗降システムのロボットの構成例
2.エレベータ制御ボックスによるエレベータのかごの独立運転
3.独立運転モードへの切り替え方法
4.エレベータのかごの上昇下降に伴う主ロープの張力
5.エレベータのかごの張力による乗客の在否の判定方法
6.エレベータのかご内へのロボットの乗車可否の判定方法
7.エレベータのかごへのロボットの乗車制御
8.エレベータのかごからのロボットの降車制御
【0021】
<1.本発明に係るエレベータ内ロボット乗降システムのロボットの構成例>
図1は、本発明に係るエレベータ内ロボット乗降システム1(以下、略して「本システム1」ということがある。)の概略構成を示す図である。
ロボット10は、例えば、宿泊施設である多層階からなるホテルや病院の病床棟などの建物内において、宿泊者や療養者等に食事や飲み物などを無人で配達する作業を行うものである。勿論、ホテルや病院内の使用済のリネン類などの回収、或いは消毒済の清浄なリネン類などの各客室への配達などの作業を行うこともできる。
【0022】
本システム1における、ロボット10の本体10aは、本図に示すように、周側面の四隅に曲面を有する略方形状に形成され、本体10aの前側面を上方に延設してフロント部10bを形成し、フロント部10bの後面には、所定の間隔で上下方向に2段の配達品棚15、15を配設している。配達品棚15、15は、配達先への配達品を載置するスペースである。本実施例では、配達品棚15は2段の例について示しているが、2段に限定されるものではない。また配達品が大きなものである場合には、配達品棚15、15のいずれか又は両方を取り外し可能に構成してもよい。また、本体10aの上面に配達品を載置することもできる。なお、本体10aの上面は、所定の深さの凹部を形成することにより、移動中に落ちやすい物品や小物物品を収納可能に構成してもよい。
【0023】
また、本体10aの底面には、ロボット10が自走するための走行移動装置11が配設されている。走行移動装置11は、例えば、本体10aの底面に配設された駆動輪(例えば4輪)が、本体10aに内蔵されたモータ(不図示)により駆動されるよう構成されている。モータの駆動は、本体10aに内蔵されたバッテリ(不図示)により行われる。
【0024】
また、フロント部10bの頂部は、背面方向に略45度に二段にわたって屈曲する第1の屈曲部と第2の屈曲部を有し、第2の屈曲部により形成された水平面上にはカメラ12が前方向の撮影が可能な態様で立設されている。カメラ12は、画像処理により前方の人物が存在するか否かを判定するためのものである。なお、カメラ12の詳細については後述する。
【0025】
また、フロント部10bの上部には、アンテナを含む通信装置16が内蔵されている。通信装置16は、例えば、インターネット等によりロボット10とロボットサーバ100やエレベータ制御システム250との間で情報伝達を行うものである。
このために、エレベータ200のかご220の天井裏にエレベータ制御ボックス20及びLTE(Long Term Evolution)ルータ30が取り付けられている。そして、エレベータ制御ボックス20は、LTEルータ30を介してエレベータ制御システム250からエレベータ200の運転情報を入手するとともに、ロボット10やロボットサーバ100との通信を行う。つまり、LTEルータ30は、エレベータ制御ボックス20とロボット10、ロボットサーバ100及びエレベータ制御システム250との各種信号やデータをやりとりするための通信インタフェースである。
【0026】
なお、これらの情報伝達は、インターネットを通じたクラウド400を介して行う例を示しているが、例えば、エレベータ制御システム250専用の通信手段であってもよく、特定の通信手段に限定されるものではない。また、情報伝達の内容としては、例えば、配達先の指示や配達が完了した等のロボット10の作業状況等、及びエレベータ200のかご220の重量データや階情報及びかごドア221の開閉状態等を含む運転情報がある。
【0027】
フロント部10bにおける通信装置16の下方には、
図1に示すように、制御装置17が内蔵されている。制御装置17は、ロボット10の統括的な制御を実行する装置であり、例えば、ロボット10の自己位置推定と環境地図作成等の演算処理を行うマイクロコンピュータ、演算制御に必要な制御プログラムの格納、建物の平面図データ等の地図情報の記憶及び一時的にデータを記憶するためのメモリ、カメラ12で撮影した画像データ処理用のプロッセッサ、後述する障害物検知センサ14のセンサ信号等の入出力回路、走行移動装置11を駆動制御する入出力回路及び通信装置16との通信インタフェース回路等を備えている。
【0028】
また、フロント部10bの前面には、
図1に示すように、障害物検知センサ14が配設されている。障害物検知センサ14は、ロボット10の移動通路における障害物を検知するためのセンサである。ロボット10は、障害物検知センサ14により移動通路に何らかの障害物があることを検知すると、当該障害物を回避した進路をとる。または、障害物が通過するまで移動を停止する。また、ロボット10の自己位置推定と環境地図作成にも利用する。なお、障害物検知センサ14の詳細については後述する。
【0029】
フロント部10bの第1の屈曲部と第2の屈曲部とにより形成された斜面には、操作パネル13が配設されている。操作パネル13は、例えば、カラー液晶表示器等の表示器と操作用のタッチパッドを貼り合わせて形成されている。操作パネル13は、使用時における配達先の設定、ロボット10の走行移動のスタート・ストップ、配達品の受取完了等の確認操作の他、システムの運用に必要な各種パラメータやデータ等の設定操作及び保守点検時の操作等に使用するものである。
【0030】
操作パネル13の操作方法としては、例えば、使用者は、配達品を配達品棚15に載置すると、操作パネル13を操作して、配達先の部屋番号を設定し、スタートボタンを押す。これにより、ロボット10は設定された部屋に配達品を配達すべく移動を開始する。なお、配達先の部屋番号は、操作パネル13により設定可能とするほか、後述するロボットサーバ100からインターネットを介して設定可能に構成することもできる。
【0031】
ロボット10は、設定された配達先へ向かうために、自らの現在位置推定と環境地図作成を行う機能(SLAM)を有している。そして、ロボット10は、予めメモリに記憶している建物の平面図データや目印データ等に基づき、配達先である所定の階及び部屋を自ら探索しながら自走して目的地に到達する。
【0032】
ここで、SLAMとは、「Simultaneous Localization and Mapping」の略称で、「自己位置推定と環境地図作成を同時に行う」技術のことである。自己位置推定とは、自分の現在の所在位置はどこか、移動している方向はどの向きか、を認識することを指し、「環境地図作成」は、自分の周辺環境を把握して地図を作成することを指す。
【0033】
しかしながら、ロボット10自らが自己位置推定をするためには、センサが不可欠である。このために、ロボット10は、先述のように、障害物検知センサ14を備えている。なお、ロボット10が後進可能に構成している場合は、さらにロボット10の背面を撮影することができる背面用障害物センサ14を配設してもよい。同様に、本体10aの背面にも障害物検知センサ14を配設してもよい。または、カメラ12を360度回動可能に構成してもよい。
【0034】
次に、SLAM技術で使用され得るセンサについて説明する。本システム1におけるロボット10のSLAM技術で使用され得るセンサとしては、一般的に、次のようなものが考えられる。
まず第1は、LiDAR(Light Detection and Ranging)である。LiDARは、赤外線レーザを使用したセンサである。具体的には、赤外線レーザを照射し、物体に反射して戻ってきた赤外線レーザを検出して、二次元又は三次元の点群データを作成する。そして、この点群データの変化を測ることで、自己位置推定や環境地図作成を行うよう構成することができる。LiDARを用いて作成した点群データは距離精度が高く、遠距離まで取得できるのが特徴である。また、可視光を使用するものではないため暗闇であっても精度に影響がなく、照明の無い環境でも使用することができる。しかし、点群データの密度が粗くなる課題がある。
【0035】
第2は、カメラである。具体的には、カメラから取得した撮像データに基づき周辺環境を把握し、当該撮像データ内で物体の特徴点を認識し、当該撮像データにおける特徴点の変化を測定することで自己位置推定と環境地図作成を行うよう構成されている。
カメラは、例えば2台のレンズを有するステレオカメラや3台以上のレンズを有するマルチカメラを使用することで、複数のレンズでの撮像データ及びレンズ間の視差に基づき三角測量の原理によって対象物までの距離を測定することができる。しかも対象物を立体的に把握することができる。カメラは、可視光線による撮像データに基づき自己位置推定と環境地図作成を行うものであるため安価である。しかし、暗闇では使用できないという問題点を有している。しかし、赤外線カメラを利用すれば、照明の無い暗闇であってもSLAM技術に使用することができる。また、ロボット10に照度センサ及び照明装置を搭載しておき、夜間に照明の無い通路等を移動する際は、照度センサが反応して照明装置を点灯させ、通路を照らすように構成すれば、カメラの欠点を克服することができる。
【0036】
第3は、ToF(Time of Flight)センサである。Time of Flightとは、文字通り光の飛行時間を意味しており、具体的には、レーザ光や超音波などを照射し、物体に反射して戻ってきたレーザ光等を検出して距離を測る。これにより、自己位置推定や環境地図作成を行うことができる。ToFセンサは、LiDARによく似ているが、ToFセンサは、距離情報を画像の濃淡で奥行きを表現した深度画像データとして取得する点でLiDARと相違する。また、LiDARに比べて近距離しか測定できないが、屋内で使用する場合には、これで充分であるといえる。
【0037】
第4は、超音波センサである。超音波センサとは、その名のとおり超音波を発射して距離を測定するセンサである。具体的には、センサヘッドから超音波を発信し、対象物から反射してくる超音波をセンサヘッドで受信し、発信から受信までの「時間」を計測することで対象物までの距離を測定するよう構成している。しかし、超音波センサは近距離(例えば、10m以下)の対象物の検出に適しているため、SLAM技術の用途を主とするよりも、ロボット10が移動する際に移動通路にある障害物や、接近してくる障害物を検知する用途に適している。したがって、対象物が接近してきて所定の距離内に入ったことを超音波センサが検出した場合には、ロボット10の移動経路の変更や移動を停止させる等の措置を取るよう構成することができる。
【0038】
本システム1におけるロボット10は、SLAM用のセンサとして障害物センサ14を使用する例について説明するが、障害物センサ14に限定されるものではなく、カメラ、ToF又は超音波センサであってもよい。またこれらを併用しても何ら差し支えない。
また、本実施例では、ロボット10は障害物検知センサ14としてLiDARを使用するが、LiDARに限定されるものではない。
【0039】
<2.エレベータ制御ボックスによるエレベータのかごの独立運転>
ロボット10は、ホテル等の指定された部屋に配達品を配達するのに際し、配達作業を行うホテル等が平屋建てであれば、同一フロア内を配達して回ればすむ。しかし、例えば、ホテル等は、通常多層階であるために、異なった階へ移動するには、ロボット10は、自力でエレベータ200の乗降をしなければならない。
【0040】
エレベータ200は、
図1に示すように、昇降路210内をかご220が昇降する。そして、呼出のあった階に到着すると乗場300の前で停止し、エレベータドア231が開き、続いてかごドア221が開く。かごドア221が開いた状態で乗客は、かご220から乗場300へ降車する。降車が終わると、今度は、他の乗客が乗場300からかご220内へ乗車する。しかし、乗場300やかご220が混雑している場合には、乗車客と降車客が錯綜する。
【0041】
そこで、ロボット10が、かご220内に乗車するに際しては、かご220内に人が居ないことを確認する必要がある。また、乗場300において、エレベータドア231とロボット10との移動通路となる空間に乗車する者が居ないことを確認する必要がある。
さもないと、ロボット10が、かご220内に強引に乗車するおそれがあり、不測のトラブルを生じかねないからである。
【0042】
このために、かご220の天井裏に取付けたエレベータ制御ボックス20は、エレベータ制御システム250からかご220の運転情報を入手し、これを同じくかご220の天井裏に取付けたLTEルータ30を介してクラウド400を経由してロボット10に送信し、ロボット10は当該かご220の運転情報に基づきかご220に乗車可能か否かを判定する。
【0043】
具体的には、エレベータ制御ボックス20は、既存のエレベータ制御システム250から、かご220の重量データ、エレベータドア231やかごドア221の開閉状態、かご220の上昇下降状態(停止状態含む)、及び現在のかご220が位置する階数情報等を所定の通信手段により取得する。そして、かご220の重量データからかご220内の乗客の在否を判定し、ロボット10に乗車可否の情報を、LTEルータ30を介して送信する。
【0044】
ロボット10は、当該かご220の運転情報及び乗車可の情報を受信すると、乗場300に乗車の移動通路に人が居ないことを確認する。そして、乗車の移動通路に人が居ないことを確認して、かご220内に乗車する。なお、詳細は後述する。
ロボット10が、かご220に乗車すると、ロボット10が行先階に到着する途中では、かご220内に乗客が乗車できないようにする必要がある。ロボット10が乗車したかご220に乗客が同乗してきた場合に、不測のトラブルが発生することを未然に防止するためである。そこで、本システム1では、エレベータ200のかご220を独立運転モードに切り替えできるよう構成している。
【0045】
このために、エレベータ制御ボックス20は、エレベータ200のかご220の独立運転と平常運転の切り替えスイッチ241を制御する機能を有している。ここで、エレベータ200の「独立運転」とは、乗場300に設置してあるかご220を呼び出すための乗場押しボタン232の呼出操作を受け付けず、無効にして、かご220内に設置してあるかご操作盤240の操作にしたがって運転する運転モードである。「独立運転」は、例えば、引越しなどの直通運転を必要とする場合に使用される運転モードであるため、一般の利用者は、通常使用することができない。
【0046】
エレベータ200のかご220を独立運転モードにするには、まず、当該かご220内に設置されているかご操作盤240の開戸を開ける。そうすると、かご操作盤240の中に、例えば、「平常運転」と「独立運転」とを切り替える切り替えスイッチ241が内蔵されている。このスイッチを「平常運転」に設定すると、一般のエレベータ200の利用者が日常利用している運転モードになる。すなわち、乗場300に設置してある乗場押しボタン232の呼出操作を行うと、かご220が呼び出されて当該乗場300に到着し、乗降することができる。
【0047】
一方、当該切り替えスイッチ241を「独立運転」に設定すると、前記のように乗場押しボタン232の呼出操作が無視及び無効にされ、かご220内のかご操作盤240の操作にしたがって運転する独立運転モードとなる。具体的には、かご220内のかご操作盤240の階ボタンを押下することによって行先階にかご220が移動し、そこでかご220は停止し、自動的にエレベータドア231及びかごドア221が開く。
【0048】
次に、乗降が終わってかごドア221を閉める際は、「閉」ボタンを押した後も、かごドア221が完全に閉まるまで「閉」ボタンを押し続ける必要がある。かごドア221が途中まで閉じたときに「閉」ボタンの押下をやめると、かごドア221は直ちに反転して開いてしまうので注意が必要である。
【0049】
<3.独立運転モードへの切り替え方法>
エレベータ制御ボックス20は、かご220にロボット10が乗車してから配達先の階で降車が完了するまでは、エレベータ200を独立運転モードで運転する。このために、当該切り替えスイッチ241を「独立運転」に外部から切り替える。
【0050】
具体的には、
図2に示すように、かご操作盤240に内蔵された「平常運転」と「独立運転」との切り替えスイッチ241のレバーに、モータ242に連動する取っ手243を装着している。モータ242は、その両極をエレベータ制御ボックス20に内蔵された接点21及び直流電源22に直列接続されている。このような接続において、接点21がオンすることによりモータ242に直流電源22の電圧が印加される。モータ242は、電圧が印加されると回転し、これに連動して取っ手243が駆動され、切り替えスイッチ241のレバーを操作して「平常運転」から「独立運転」に切り替える。これにより、切り替えスイッチ241の「独立運転」側の接点が接続されている制御回路244の端子244aと端子244cとが接続される回路が形成されて、かご220は、平常運転モードから独立運転モードに切り替わる。
【0051】
独立運転モードから平常運転モードに切り替える場合は、モータ242を逆回転させることにより取っ手243を逆方向に駆動して、切り替えスイッチ241を「独立運転」から「平常運転」に切り替える。これにより、切り替えスイッチ241の「平常運転」側の接点が接続されている制御回路244の端子244bと端子244cとが接続される回路が形成されて、かご220は、独立運転モードから平常運転モードに切り替わる。
なお、モータ242をさらに回転させることによりカム機構(不図示)が作動して取っ手243を駆動し、切り替えスイッチ241のレバーを反転操作して「独立運転」から「平常運転」に切り替えるよう構成してもよい。
【0052】
また、
図3に示すように構成してもよい。具体的には、切り替えスイッチ241のコモン側を、かご操作盤240内の端子241bに接続し、端子241bをエレベータ制御ボックス20に内蔵された接点21のb接点側の端子21bに接続する。
また、切り替えスイッチ241のa接点側を同じく端子241aに接続し、端子241aを前記の接点21のa接点側の端子21aに接続する。
また、前記の接点21のコモン側の端子21cをかご操作盤240内の端子241cに接続する。なお端子241cは制御回路244の端子244cに接続されている。
【0053】
以上のような回路構成とすることにより、エレベータ制御ボックス20に内蔵された接点21が端子21bに接続されている場合において、切り替えスイッチ241の「平常運転」の側の接点が制御回路244の端子244bに接続されているときは、制御回路244の端子244cに接続される回路が形成されて平常運転モードとなる。
また、切り替えスイッチ241の「独立運転」の側の接点が制御回路244の端子244aに接続されているときは、制御回路244の端子244aと端子244cとが接続される回路が形成されて独立運転モードとなる。
また、エレベータ制御ボックス20に内蔵された接点21が端子21aに接続された場合には、切り替えスイッチ241が「平常運転」、「独立運転」のどちらの側に接続されても無効となり、制御回路244の端子244aと端子244cとが接続される回路が形成されて独立運転モードとなる。
以上のような回路構成とすることにより、エレベータ制御ボックス20に内蔵された接点21の作動により、外部から強制的に独立運転モードに切り替えることができる。
【0054】
このように、エレベータ制御ボックス20からかご220を独立運転モードに切り替え可能に構成することにより、ロボット10が、かご220に乗車してから配達先の階で降車を完了するまでは、かご220を独立運転モードで運転することができる。
したがって、ロボット10がエレベータ200のかご220に乗車中に、乗客が途中階から乗車してくるおそれをなくすることができる。これによりロボット10と乗客との不測のトラブルが発生することを未然に防止することができるとともに、配達品を確実に配達することができる。
【0055】
なお、独立運転モードに切り替えたときに、かごドア221の「開」及び「閉」操作を行う必要がある。この制御は、例えば、
図4に示すように、かご操作盤240に内蔵された制御回路244に接続されている開押ボタン245と閉押ボタン246のそれぞれに並列にエレベータ制御ボックス20に内蔵された接点25及び接点26を接続することで実現できる。
【0056】
具体的には、接点25は、端子25aと端子245a、及び端子25bと端子245bとが接続されることにより、開押ボタン245に並列接続されている。また、接点26は、端子26aと端子246a及び端子26bと端子246bを介して閉押ボタン246に並列接続されている。
したがって、エレベータ制御ボックス20に内蔵された接点25をオンにすることによりかごドア221は開になり、接点26をオンにすることによりかごドア221は閉になる。
【0057】
また、ロボット10から開押ボタン245や閉押ボタン246等の操作を要求する信号を送信し、これを受信したエレベータ制御システム250が、かご操作盤240の制御回路244に制御信号を送信して、遠隔制御によりかご220の運転モードを、「平常運転」から「独立運転」に切り替えることや、かごドア221を「開」又は「閉」に操作することができるように構成してもよい。
【0058】
<4.エレベータのかごの上昇下降に伴う主ロープの張力>
以上のように、かご220内にロボット10のみが乗車できるようにするためには、かご220内に乗客が居ないことを判定し、その判定結果をロボット10に伝えることが求められる。
【0059】
そこで、エレベータ制御ボックス20は、かご220にロボット10を乗車させるために、かご220内における乗客の在否を判定し、乗客の在否判定結果を、ロボット10にLTEルータ30を介して送信する。
この場合において、エレベータ制御ボックス20は、かご220単体の重量は既知であるため、かご220の重量を測定することにより、かご220内に乗客がいないことを判定することができる。そして、運転中のかご220の重量は、例えば、かご220を懸垂する主ロープ(主索)260の張力Tの大きさを測定することにより知ることができる。
しかし、運転中のかご220の重量(すなわち張力T)は、乗客の乗降変動やかご220が上昇又は下降する際に作用する加速度αの値によって大きく変動する。そこで、まず、エレベータ200のかご220内の乗客の乗降変動や上昇下降に伴う主ロープ260の張力Tについて説明する。
【0060】
図5は、本システム1のかご220内の乗客の在否判定の仕組みを説明するタイムチャートである。本図のうち、
図5Aは、かご220の階情報を示すタイムチャート、
図5Bは、かごドア221の開閉情報を示すタイムチャート、
図5Cは、かご220の上昇運転情報を示すタイムチャート、
図5Dは、かご220の下降運転情報を示すタイムチャートである。また、
図5Eは、以上のようなかご220の上昇下降や乗降変動に伴う、かご220の重量情報を示すタイムチャートである。
【0061】
図5Aにおいて、縦軸は階(1階から6階)、横軸は時間を示す(以下、
図5Bから
図5Eの横軸についても同じ。)。また、
図5Bにおいては、縦軸の「開」(上側)が、かごドア221が開状態であることを、「閉」(下側)が閉状態であることを示す。また、
図5Cにおいては、縦軸の「1」(上側)が、上昇運転中であることを、「0」(下側)が上昇運転中でないことを示す。
また、
図5Dにおいては、縦軸の「1」(上側)が、下降運転中であることを、「0」(下側)が下降運転中でないことを示す。
また、
図5Eにおいては、縦軸が、かご220の重量(すなわち、
図6に示すかご220を吊り下げる主ロープ260の張力T)を示す。なお、かご220の重量は、ストレインゲージ等の重量センサを用いて測定することができる。
【0062】
ここで、かご220の重量、つまり主ロープ260の張力Tについて、
図6に基づき説明する。
図6は、エレベータ200の概略構造の模式図である。本図において、エレベータ200は、昇降路210の上端に設置された巻上機270に巻架された主ロープ260の一端にかご220が懸垂され、当該巻架された主ロープ260の他端には釣合おもり280が懸垂されて構成されている。そして、かご220は、昇降路210内に上下方向に沿って配設された所定の数のガイドレール(不図示)を、かご220の所定の位置に配設されたガイドローラ(不図示)が摺動しながら巻上機270により昇降路210内を上昇又は下降する。
【0063】
かご220を懸垂する主ロープ260の張力Tは、かご220の質量をM、乗客の平均質量をm、乗客数をn、地球の重力加速度をg、かご220の上昇又は下降時の加速度をαとすると、かご220が上昇時の張力Tは、T=(M+n・m)(g+α)となる。
また、かご220が下降時の張力Tは、T=(M+n・m)(g-α)となる。
また、かご220が停止中の張力Tは、α=0であるため、T=(M+n・m)gとなる。
【0064】
なお、主ロープ260の他端に懸垂されている釣合おもり280の質量は、一般的には、かご220にその積載量の半分の乗客を乗せたときのかご220側の質量に釣り合うように決められている。したがって、釣合おもり280による張力と、かご220側の張力Tとの差は、巻上機270が負担する。
【0065】
そこで、かご220を含むエレベータ200の動作の一例について、
図5に基づき説明する。
図5Aから
図5Eにおいて、かご220は、1階から出発する(601a)。この場合において、かごドア221は、閉(602a)から開(602b)となる。ここで、誰も乗車していない状態(605a)から、1名乗車すると、かご220の重量は1名分増加する(605b)。乗車した乗客が行先階ボタンを押すと、かごドア221は閉となる(602c)。そして、かご220は上昇を開始し(603b)、2階(601b)、3階(601c)を通過して乗客が居る4階(601d)に到着すると、ここで上昇を停止し(603c)、かごドア221が開(602d)となる。
【0066】
この間、上昇開始時の主ロープ260の張力Tは、
図5Eに示すように、増速の加速度αの影響により増加し、T=(M+1・m)(g+α)となる(605c)。そして、加速がなくなり定速度運転となると、張力Tは、T=(M+1・m)gとなる(605d)。さらに、到着階である4階に近づくと今度は減速の加速度αとなるため、張力Tは、T=(M+1・m)(g-α)となり(605e)、4階に到着すると加速度α=0となるため、張力Tは、T=(M+1・m)gとなる(605f)。この間において、
図5Dに示すかご220の下降については、かご220が下降していないため、本図に示すようなタイムチャートとなる(604a)。
【0067】
次に、
図5Aから
図5Eにおいて、かごドア221が開(602d)になると、その状態で、2名の乗客が順番に乗車する(605g、605h)。そして、かごドア221が閉になり(602e)、かご220は、上昇運転となる(603d)。
そうすると、上昇開始時の主ロープ260の張力Tは、前記と同様に、最初は増速の加速度αとなるためT=(M+3・m)(g+α)となり(605i)、加速がなくなり定速度運転となると張力Tは、T=(M+3・m)gとなる(605j)。そして、5階を通過して(601e)、次の到着階である6階に近づくと減速の加速度αとなるため張力Tは、T=(M+3・m)(g-α)となる(605k)。さらに、6階に到着すると(601f)、ここで上昇を停止し(603e)、かごドア221が開(602f)となる。この場合に加速度α=0となるため、張力Tは、T=(M+3・m)gとなる(605l)。
【0068】
次に、
図5Aから
図5Eにおいて、かごドア221が開(602f)となった状態で、1名の乗客が降車し、2名の乗客は乗車したままとする(605m)。そして、かごドア221が閉になり(602g)、かご220は、今度は下降運転となる(604b)。さらに、かご220は下降を継続し(604b)、5階(601g)、4階(601h)、3階(601i)、2階(601j)を通過して1階(601k)に到着すると、ここで下降を停止し(604c)、かごドア221が開(602h)となる。
【0069】
この間、下降開始時の主ロープ260の張力Tは、最初は増速の加速度αとなるため、T=(M+2・m)(g-α)となり(605n)、加速がなくなり定速度運転となると張力Tは、T=(M+2・m)gとなる(605o)。そして、次の到着階である1階に近づくと減速の加速度αとなるため張力Tは、T=(M+2・m)(g+α)となる(605p)。さらに、1階(601k)に到着すると、ここで下降を停止する(604c)。この場合に加速度α=0となるため、張力Tは、T=(M+2・m)gとなる(605q)。
【0070】
次に、
図5Aから
図5Eにおいて、かごドア221が開(602h)になると、2名の乗客が順番に降車する(605r、605s)。この場合には、乗客数は0人となるため、n=0となる。したがって、このときの張力Tは、T=(M+0・m)g=Mgとなる。そして、かごドア221が閉になると(602i)、かご220は、今度は上昇運転となる(603f)。そして、かご220は上昇を開始する(603f)。以下、前記のかご220の上昇動作と同様であるため、説明を省略する。
【0071】
<5.エレベータのかごの張力による乗客の在否の判定方法>
エレベータ制御ボックス20は、かご220を懸垂する主ロープ260の張力Tの大きさに基づき、かご220内に乗客が居ないことを判定する。この判定方法について、先に説明した
図5の事例に基づき、以下に説明する。
【0072】
図5Eにおいて、かご220を懸垂する主ロープ260の張力Tの大きさは、本図に示すように、かご220内への乗客の乗降や上昇下降時の加速度αの影響により大きく変動する。そこで、上昇中及び下降中の張力Tよりも、かご220が所定の階に停止して、乗客の乗降がなされたときに着目する。本図において、乗客の乗降がなされたのは、破線で囲んだ605Aから605Dにおいてである。そこで、破線で囲んだ605Dを例に、かご220内の乗客の在否を判定する方法を
図7から
図9に基づき説明する。
【0073】
エレベータ制御ボックス20は、エレベータ制御システム250から直近の遡った所定の時間の区間W、例えば、8秒間におけるかご220の重量(張力Tの値)の所定の回数のサンプリングデータを取得する。そして、当該サンプリングにより得た区間Wにおける重量データに基づき回帰直線の傾きを求め、当該回帰直線の傾きが所定の閾値の範囲H内にあるか否かを判定する。
【0074】
図7は、破線で囲んだ605Dにおいて、2名の乗客が順番に降車した直後の現在(605s)から(605r、605q)に遡った区間Wの重量データに基づき回帰直線の傾きを求めたものである。本図において、所定の区間Wの重量データにおける回帰直線の傾きは、所定の閾値の範囲H内にあるため、かご220の重量データ(張力T)として当該区間Wの重量データの平均値Y1を採用する。つまり、乗客が降車する前の(605q)重量データに略近い値Y1が、かご220の重量データとして採用される。
そして、この場合には、かご220の重量データは、かご220に人が乗車していないn=0とき(605s)の値であるT=Mgとは異なるため、乗客が居ると判定する。
【0075】
図8は、破線で囲んだ605Dにおいて、2名の乗客が順番に降車する時から遡った時間(605s)と、降車してからの経過時間(605r、605q)とが略同じである現在(605s)から(605r、605q)に遡った区間Wの重量データに基づき回帰直線の傾きを求めたものである。本図においては、所定の区間Wの重量データにおける回帰直線の傾きは、所定の閾値の範囲H外にあるため、張力Tとして当該区間Wの重量データは採用しない。つまり、この区間Wにおけるかご220の重量データは変動幅が大きいため、かご220の重量データとして採用しない。
【0076】
図9は、破線で囲んだ605Dにおいて、2名の乗客が順番に降車してしばらく時間が経過したときの現在(605s)から(605r、605q)に遡った区間Wの重量データに基づき、回帰直線の傾きを求めたものである。本図においては、所定の区間Wの重量データにおける回帰直線の傾きは、所定の閾値の範囲H内にあるため、かご220の重量データ(張力T)として当該区間Wの重量データの平均値Y2を採用する。つまり、全ての乗客が降車した後の(605s)重量データに略近い値Y2が、かご220の重量データとして採用される。
そして、この場合には、かご220の重量データは、かご220に人が乗車していないときであるため(605s)、既知の値であるT=Mg(≒Y2)となる。このため、乗客は居ないと判定することができる。
【0077】
以上のようにして、かご220内に乗客が居るか否かの判定を行うよう構成しているため、重量センサ自体のノイズによる微細変動を排除して、より正確な判定をすることができる。
【0078】
<6.エレベータのかご内へのロボットの乗車可否の判定方法>
次に、エレベータ200のかご220内へのロボット10の乗車可否の判定方法について説明する。
【0079】
ロボット10は、エレベータ200のかご220が呼び出された階に到着し、エレベータドア231及びかごドア221が開になると、カメラ12によりエレベータドア231の開扉空間内を撮影し、当該撮像データからかご220内に乗客が居ないことを判定する。併せて、乗場300のかご220内への移動通路に乗車しようとしている者が居ないことの確認も行う。ここで、この6.の説明において、「エレベータドア231」とは、エレベータドア231及びかごドア221の総称を意味するものとする。
【0080】
図10から
図12は、エレベータ200の乗場300のかご220内への移動通路にロボット10の乗車する者が居ないことを確認する方法の説明図である。これらの図面において、
図10は、ロボット10のカメラ12を通して見たエレベータ200の乗場300におけるエレベータドア231までの距離が2mの場合の図である。
【0081】
ロボット10は、内蔵のカメラ12により乗場300におけるエレベータドア231の開扉空間内を撮影し、画像解析を行うことによりかご220内の乗客の在否、及び乗場300からかご220に乗ろうとする者の在否を判定する。当該在否判定において、エレベータドア231の撮影範囲外領域233(本図においてハッチングを付した領域)は、ロボット10のかご220内への移動通路の範囲外である為、関係のない人物を認識しないようにマスク処理を実施する。
【0082】
図11は、ロボット10のカメラ12を通して見た乗場300におけるエレベータドア231までの距離が1mの場合の図である。エレベータドア231までの距離を近づければ、マスク処理を実施する撮影範囲外領域233は狭くなる。
【0083】
図12は、ロボット10のカメラ12を通して見た乗場300におけるエレベータドア231までの距離が0.3mの場合の図である。エレベータドア231までの距離をさらに近づければ、マスク処理を実施する撮影範囲外領域233はますます狭くなる。
以上のように、ロボット10の現在位置からエレベータドア231までの距離に応じて、ロボット10のかご220内への移動通路となるエレベータドア231の左右の撮影範囲外領域233にマスク処理を行い、
図10から
図12にハッチングを付した撮影範囲外領域233は、乗客の在否判定の対象から除外する。
【0084】
なお、カメラ12は先述のように、レンズを2個有するステレオカメラやレンズを複数個有するマルチカメラを使用することにより、対象物までの距離を正確に測定することができるとともに、対象物を立体的に把握することができるため、乗客の在否判定を正確に行うことができる。
【0085】
以上のように構成することにより、カメラ12で撮影した撮像データの画像処理に必要となるメモリ容量を低減することができ、併せて画像処理を高速化することができる。また、乗客の在否判定は、高精細の画像が要求されるものではなく、かご220の内部及びロボット10のかご220内への移動通路に人が居るか否かの判定が出来さえすればよいので、画像の画素数を必要最小限に抑制することができる。
【0086】
かご220内への乗車可否の判定は、最終的にはロボット10自身が行う。この方法として、次の3つが考えられる。
(1)かご220の重量データにより乗客は居ないと判定された場合に、その判定に従って乗車する。
(2)かごドア221が開になったときに、ロボット10のカメラ12によりかご220内を撮影し、当該撮像データからに乗客が居ないこと及び乗場300からかご220に乗ろうとする者が居ないことが確認できれば乗車する。
(3)前記(1)と(2)を併用する。
【0087】
(1)は、部外者の出入りがほとんどなく、エレベータ200の利用者にロボット10が乗車する場合の留意事項が周知されている場合には適用が可能である。
(2)は、エレベータ200の利用者が少なく、かご220内及び乗場300で乗降客が錯綜しない場合には適用が可能である。
(3)は、上記の(1)(2)の何れにも該当しない場合に適用するのが望ましい。
ロボット10が、かご220に乗車するか否かの判定を上記のいずれの方法により行うかは、エレベータ200の使用の実情に合わせて選択すればよい。
【0088】
<7.エレベータのかごへのロボットの乗車制御>
図13は、本システム1におけるロボット10の乗車制御の概略のフローチャートである。本図に示すフローチャートでは、上記の(3)の例について、ロボット10が、現在居る階とは異なる他の階の配達先へ、エレベータ200を利用して移動する場合を例について、以下に詳しく説明する。
【0089】
図13において、ロボット10は、所定の待機場所において、配達品棚15に配達品が載置される(ステップS101)。
ロボットサーバ100は、配達品の配達先をロボット10に送信する。又は、運用者がロボット10の操作パネル13の設定画面から配達先を手動で設定する。配達先は、例えば、ホテルの場合には部屋番号等である(ステップS102)。
配達先を受信又は入力されたロボット10は、SLAM機能により配達先に向けて移動する(ステップS103)。
【0090】
ロボット10は、エレベータ200の乗場300へ移動し(ステップS103)、乗場300に到着すると、ロボットサーバ100を介して、エレベータ制御ボックス20に対してエレベータ200を独立運転モードへ切り替えるように要求する。エレベータ制御ボックス20は、各種エレベータ情報(ドア開閉・フロア・上下昇降方向・重量センサ情報)を用いて、エレベータ200が未使用状態になるまで独立運転モードへの切り替えを保留する。そして、エレベータ200が未使用状態と判定されると、エレベータ制御ボックス20は、エレベータ200を独立運転モードへと切り替え、エレベータ制御システム250に対し、かご220を呼び出す(ステップS104)。スマートホンを用いたかご220の呼び出し及び行先階を指定するサービスは、すでに一部のエレベータメーカで実用化されている。そこで、本システム1はこのようなサービスを利用する。
【0091】
一方、エレベータ200のかご220は、乗客の乗場押ボタン232の操作による呼び出しに応じて、上昇・下降を行っている(ステップS105)。エレベータ制御システム250は、かご220の運転状況を監視し、かご220の現在の所在階、重量データ、かごドア221の開閉等の運転情報を逐次取得している(ステップS106)。なお、ステップS105及びステップS106は、常時継続的に実行されている。本図では、煩を避けるために以下、記載を省略する。
【0092】
ステップS104において、ロボット10からかご220の呼び出しを受信したエレベータ制御システム250は、かご220を群管理等の所定の運転手順に従ってロボット10の待機する階に移動させる(ステップS107)。
【0093】
かご220がロボット10の待機する階に到着し、エレベータドア231及びかごドア221が開になると(ステップS108)、エレベータ制御システム250は、これを検知する(ステップS109)。なお、
図13及び
図14では、「エレベータドア231及びかごドア221」を略して「ドア」と表記する。
【0094】
エレベータ制御システム250は、エレベータ制御ボックス20に対し、かご220の現在の所在階、重量データ、かごドア221の開状態等の運転情報を送信する(ステップS110)。
かご220の運転情報を受信したエレベータ制御ボックス20は、かご220内の乗客の在否を判定する。乗客の在否判定は、かご220の重量に着目して、先述の
図5、
図6及び
図7から
図9で説明した手順により行う。そして、かご220が到着したこと、かごドア221が開になっていること及びかご220内の乗客在否の判定結果(以下、「かご空き判定結果」という。)をロボット10に送信する(ステップS111)。
【0095】
ロボット10は、エレベータ制御ボックス20から、かご220の到着情報及びかご空き判定結果を受信する(ステップS112)。そして、当該受信したかご空き判定結果に基づき乗車可否判定をする。具体的には、かご空き判定結果が乗客有の場合は、かご220への乗車は見送り、ステップS104へ行く。また、かご空き判定結果が乗客なしの場合には、ロボット10は、乗場300のかご220内への移動通路に人が居ないことを確認するステップへ行く(ステップS113)。
【0096】
乗場300のかご220内への移動通路に人が居ないことの確認は、先述の
図10から
図12で説明した手順により行う(ステップS114)。
確認の結果、かご220内への移動通路に人が居る場合には、乗車を見送り、ステップS104へ行く。また、かご220内への移動通路に人が居ないことを確認できた場合には(ステップS115)、ロボット10は、エレベータ制御ボックス20に乗車要求信号を送信する(ステップS116)。
【0097】
エレベータ制御ボックス20は、当該独立運転開始要求信号を受信すると、エレベータ200を利用中か否かを判定した上で、エレベータ200のかご220の運転モードを「平常運転」から「独立運転」に切り替える。その後、ロボット10から乗車開始要求信号を受信すると(ステップS117)、かごドア221を「開」にするドア開信号を念のため出力する。具体的な「独立運転」モードへの切り替え方法及びドア開信号の出力の方法は、先述の
図2から
図4で説明した手順により行う(ステップS118)。
【0098】
エレベータ制御システム250は、エレベータ200のかご220の運転モードが「平常運転」から「独立運転」に切り替わったことを検知する(ステップS119)。
エレベータ制御ボックス20は、かご220の運転モードを「平常運転」から「独立運転」に切り替え、かごドア221を「開」にすると、ロボット10に対して乗車可信号を送信する(ステップS120)。
ロボット10は、乗車可信号を受信すると(ステップS121)、乗場300からエレベータドア231への移動通路を移動してかご220内に乗車する(ステップS122)。
【0099】
ロボット10は、かご220への乗車が完了すると、エレベータ制御ボックス20及びエレベータ制御システム250に乗車完了信号及び行先階信号を送信する(ステップS123)。エレベータ制御ボックス20及びエレベータ制御システム250は、ロボット10からの乗車完了信号及び行先階信号を受信する(S124~S125)。ロボット10からの乗車完了信号を受信したエレベータ制御ボックス20は、かご操作盤240にドア閉信号を、かごドア221が閉になるまで出力する(ステップS126)。
【0100】
エレベータ制御システム250は、エレベータドア231及びかごドア221が閉となったことを検知すると(ステップS127)、かご220を行先階へ移動させるようエレベータ200を制御する(ステップS128)。これにより、かご220は、行先階へ移動する(ステップS129)。同時に、当該かご220に乗車しているロボット10も行先階へ移動する(ステップS130)。
【0101】
本発明に係るエレベータ内ロボット乗降システム1におけるロボット10の乗車制御は、以上のようなフローで行うことができるため、かご220内にロボット10と乗客が同乗することを可能な限り防止できる。また、乗客が乗車しているかご220内にロボット10が強引に乗車してくることや、逆に、ロボット10が乗車しているかご220内に乗客が乗り込んでくることもない。したがって、不測のトラブルを生じるおそれがなく、配達品を指定の配達先に安全に配達することができる。
【0102】
<8.エレベータのかごからのロボットの降車制御>
図14は、本システム1におけるロボット10の降車制御の概略のフローチャートである。本図において、ロボット10は、
図13のステップS130で説明したように、かご220に乗車して配達先の階に移動する(ステップS201)。したがって、ロボット10は、かご220と一緒に配達先の階に移動する(ステップS202)。
【0103】
エレベータ制御システム250は、エレベータ200及びかご220の運転情報を監視し、逐次取得している(ステップS203)。ここで、かご220が行先階に到着すると(ステップS204)、エレベータ制御システム250は、かご220が行先階に到着したことを検知し、エレベータ制御ボックス20に到達情報を送信する(ステップS205)。
【0104】
エレベータ制御ボックス20は、エレベータ制御システム250から、かご220が行先階に到着した情報を受信する(ステップS206)。エレベータ制御ボックス20は、ロボット10に、かご220が行先階に到着した情報を送信し(ステップS207)、ロボット10は、当該情報を受信する(ステップS208)。
【0105】
エレベータ制御ボックス20は、かご操作盤240にドア開信号を出力する(ステップS209)。これにより、エレベータドア231及びかごドア221が開になる。
エレベータ制御システム250は、エレベータドア231及びかごドア221が開になったことを検知する。そして、エレベータ制御ボックス20にかごドア221が開になった情報を送信する(ステップS210)。
【0106】
エレベータ制御ボックス20は、かごドア221が開になった情報を受信し(ステップS211)、ロボット10に対し、降車可信号を送信する(ステップS212)。ロボット10は、かごドア221が開いた状態で、乗客が乗り込もうとしていないことをカメラ12及び障害物検知センサ14で確認し(ステップS213)、かつ確認をしながらかご220から降車する(ステップS214)。この場合にロボット10は「ロボットが降車しますので通路を開けてください。」という音声を発して乗車しようとしている乗客に移動通路をあけるよう注意を促してもよい。
【0107】
ロボット10は、かご220から降車すると、降車完了信号をエレベータ制御ボックス20に送信する(ステップS215)。エレベータ制御ボックス20は、降車完了信号を受信すると(ステップS216)、かご操作盤240に、かごドア221が閉になるまでドア閉信号を出力する(ステップS217)。これにより、エレベータドア231及びかごドア221が閉になる。
【0108】
エレベータ制御システム250は、かごドア221が閉になったことを検知する。そして、エレベータ制御ボックス20にエレベータドア231及びかごドア221が閉になった情報を送信する(ステップS218)。エレベータドア231及びかごドア221が閉になった情報を受信したエレベータ制御ボックス20は(ステップS219)、エレベータ200のかご220の運転モードを「独立運転」から「平常運転」に切り替え、ドア開信号を解除する(ステップS220)。具体的な「平常運転」モードへの切り替え方法は、先述の
図2及び
図3で説明した手順により行う。
【0109】
エレベータ制御システム250は、エレベータ200のかご220の運転モードが「独立運転」から「平常運転」に切り替わったことを検知する(ステップS221)。
エレベータ200のかご220は、次の行先階へ移動する(ステップS222)。
【0110】
かご220から降車したロボット10は、配達先フロアにおいて配達先の部屋への配達作業を開始する(ステップS223)。ロボット10は、配達先フロアでの配達作業を終了すると(ステップS224)、ロボットサーバ100に対し、配達作業が終了した情報を送信する(ステップS225)。ロボットサーバ100は、配達作業が終了した情報を受信すると(ステップS226)、ロボット10に対し、次の行先情報を送信する(ステップS227)。ロボットサーバ100から次の作業指示を受けたロボット10は、次の行先に移動し、次の配達作業を行う(ステップS228)。
【0111】
本発明は、以上のように構成されているために、ロボット10がエレベータ200のかご220内に乗客が居ないことや乗車しようとしている者がいないことを判定して乗降するよう構成されたエレベータ内ロボット乗降システム1を提供することができる。
【0112】
本発明に係るエレベータ内ロボット乗降システム1は以上のように構成されているが、以上の説明は、一実施例に過ぎず、本発明の趣旨の範囲内で様々な変形を取り得ることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0113】
1 エレベータ内ロボット乗降システム
10 ロボット
10a 本体
10b フロント部
11 走行移動装置
12 カメラ
13 操作パネル
14 障害物検知センサ
15 配達品棚
16 通信装置
17 制御装置
20 エレベータ制御ボックス
21 接点
21a~21c 端子
22 直流電源
25 接点
26 接点
25a、25b 端子
26a、26b 端子
30 LTEルータ
100 ロボットサーバ
200 エレベータ
210 昇降路
220 かご
221 かごドア
231 エレベータドア
232 乗場押ボタン
233 撮影範囲外領域
240 かご操作盤
241 切り替えスイッチ
241a~241c 端子
244a~244c 端子
245a、245b 端子
246a、246b 端子
242 モータ
243 取っ手
244 制御回路
245 開押ボタン
246 閉押ボタン
250 エレベータ制御システム
260 主ロープ
270 巻上機
280 釣合おもり
300 乗場
400 クラウド
M かごの質量
m 乗客の平均質量
n 乗客数
T 張力
g 重力加速度
α 加速度