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特開2024-178872石綿調査支援システム、石綿調査支援方法及びプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024178872
(43)【公開日】2024-12-25
(54)【発明の名称】石綿調査支援システム、石綿調査支援方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   G06Q 50/08 20120101AFI20241218BHJP
【FI】
G06Q50/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023097354
(22)【出願日】2023-06-13
(71)【出願人】
【識別番号】523225818
【氏名又は名称】秋田環境測定センター株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100155882
【弁理士】
【氏名又は名称】齋藤 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100154678
【弁理士】
【氏名又は名称】齋藤 博子
(72)【発明者】
【氏名】森 浩
【テーマコード(参考)】
5L049
5L050
【Fターム(参考)】
5L049CC07
5L050CC07
(57)【要約】
【課題】調査者の知識や判断力に依存せずに、適切かつ経済合理性が高い判断を支援する。
【解決手段】石綿調査支援システム1は、建物の材料に石綿が含有しているか否かを判断するための根拠資料の属性情報、材料の商品名を含む第1キーワード、及び前記材料の材料名を含む第2キーワードの入力を受け付け、根拠資料情報として記憶する根拠資料マスタ登録手段31と、書面調査において、材料の材料名及び商品名の入力を受け付け、書面調査情報として記憶する書面調査支援手段32と、を備える。書面調査支援手段32は、根拠資料情報の取得の指示を受け付けると、商品名が入力されているか否か確認し、商品名が入力されている場合、商品名を検索条件として第1キーワードを検索し、商品名が入力されていない場合又は商品名による検索結果が0件の場合、材料名を検索条件として第2キーワードを検索し、検索結果を表示する。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物の石綿調査を支援する石綿調査支援システムであって、
前記建物の材料に石綿が含有しているか否かを判断するための根拠資料の属性情報、前記材料の商品名を含む第1キーワード、及び前記材料の材料名を含む第2キーワードの入力を受け付け、根拠資料情報として記憶する根拠資料マスタ登録手段と、
書面調査において、前記材料名及び前記商品名の入力を受け付け、書面調査情報として記憶する書面調査支援手段と、
を備え、
前記書面調査支援手段は、前記根拠資料情報の取得の指示を受け付けると、前記商品名が入力されているか否か確認し、前記商品名が入力されている場合、前記商品名を検索条件として前記第1キーワードを検索し、前記商品名が入力されていない場合又は前記商品名による検索結果が0件の場合、前記材料名を検索条件として前記第2キーワードを検索し、検索結果を表示することを特徴とする石綿調査支援システム。
【請求項2】
前記根拠資料情報には、更に、過去に前記根拠資料を採用した採用件数が含まれており、
前記書面調査支援手段は、前記根拠資料情報の検索結果が複数存在する場合、前記採用件数が多い順に優先して表示し、前記根拠資料情報の検索結果が0件の場合、新たな前記根拠資料情報の入力を促すことを特徴とする請求項1に記載の石綿調査支援システム。
【請求項3】
前記書面調査支援手段は、前記材料が前記建物に採用された採用時期の入力を受け付け、前記材料名が同一、かつ前記採用時期又は前記商品名の少なくとも1つが異なる場合、前記材料名の変更を促すことを特徴とする請求項1に記載の石綿調査支援システム。
【請求項4】
前記書面調査後に実施される目視調査の結果入力において、前記書面調査情報を取得して表示し、前記書面調査と前記目視調査との前記材料の整合性が有るか無いかの整合性確認と、前記整合性が無い場合には、目視調査で確認した前記材料名の入力を受け付け、目視調査情報として記憶する目視調査支援手段と、
前記材料の石綿含有の有無を分析する建材分析のための試料を識別する試料番号の入力を受け付け、前記目視調査情報の一部として記憶する分析判定支援手段と、
前記目視調査後に実施され、前記材料に石綿が含有しているか否かを判定する結果判定において、前記根拠資料情報の取得の指示を受け付けると、前記試料番号が入力されていない、かつ前記整合性が無い場合、新たに入力される前記材料名が前記書面調査情報の中に有るか無いか検索し、有る場合には同一の前記材料名の前記書面調査情報に係る前記根拠資料情報を表示する結果判定支援手段と、
を更に備えることを特徴とする請求項1に記載の石綿調査支援システム。
【請求項5】
前記分析判定支援手段は、前記材料の使用量、前記材料の石綿含有の可能性及び前記材料の撤去を行うための工事負荷に関する定性評価の入力を受け付け、と、前記材料が前記建物に採用された採用時期とに基づいて、前記建材分析を行うべきか否かの推奨判定結果及び優先度を算出することを特徴とする請求項4に記載の石綿調査支援システム。
【請求項6】
前記目視調査において撮影される写真を貼り付ける写真台紙を表示し、前記写真の画像の入力を受け付ける写真整理支援手段、
を更に備え、
前記写真整理支援手段は、所定の条件に従って前記写真の撮影場所を含む説明文を作成し、前記写真台紙に前記説明文を表示することを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載の石綿調査支援システム。
【請求項7】
前記建材分析のための前記試料の採取用袋に貼り付けられる採取用ラベルの印刷データを作成する建材分析支援手段、
を更に備え、
前記建材分析支援手段は、前記材料の仕上材及び下地材の層別分析を行う前記試料については、前記仕上材及び前記下地材の両方の前記材料名を含む前記印刷データを作成することを特徴とする請求項4に記載の石綿調査支援システム。
【請求項8】
コンピュータが建物の石綿調査を支援する石綿調査支援方法であって、
前記コンピュータが、
前記建物の材料に石綿が含有しているか否かを判断するための根拠資料の属性情報、前記材料の商品名を含む第1キーワード、及び前記材料の材料名を含む第2キーワードの入力を受け付け、根拠資料情報として記憶する根拠資料マスタ登録ステップと、
書面調査において、前記材料名及び前記商品名の入力を受け付け、書面調査情報として記憶する書面調査支援ステップと、
を実行し、
前記書面調査支援ステップは、前記根拠資料情報の取得の指示を受け付けると、前記商品名が入力されているか否か確認し、前記商品名が入力されている場合、前記商品名を検索条件として前記第1キーワードを検索し、前記商品名が入力されていない場合又は前記商品名による検索結果が0件の場合、前記材料名を検索条件として前記第2キーワードを検索し、検索結果を表示することを特徴とする石綿調査支援方法。
【請求項9】
コンピュータを建物の石綿調査を支援する石綿調査支援システムとして機能させるためのプログラムであって、
前記コンピュータを、
前記建物の材料に石綿が含有しているか否かを判断するための根拠資料の属性情報、前記材料の商品名を含む第1キーワード、及び前記材料の材料名を含む第2キーワードの入力を受け付け、根拠資料情報として記憶する根拠資料マスタ登録手段、
書面調査において、前記材料名及び前記商品名の入力を受け付け、書面調査情報として記憶する書面調査支援手段、
として機能させ、
前記書面調査支援手段は、前記根拠資料情報の取得の指示を受け付けると、前記商品名が入力されているか否か確認し、前記商品名が入力されている場合、前記商品名を検索条件として前記第1キーワードを検索し、前記商品名が入力されていない場合又は前記商品名による検索結果が0件の場合、前記材料名を検索条件として前記第2キーワードを検索し、検索結果を表示するためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、法令に従った建物の石綿(「アスベスト」ともいう。)調査を支援する石綿調査支援システム等に関するものである。
【背景技術】
【0002】
建物の解体や改修工事を行う際は、労働安全衛生法に基づく石綿障害予防規則、及び大気汚染防止法に基づく石綿含有の有無の事前調査を行うことが義務付けられている。特に、2022年4月1日から、一定規模以上の工事については、工事の元請業者又は自主施工者が調査結果を都道府県等に報告することが義務付けられている。更に、2023年10月1日以降に着工する工事では、有資格者による事前調査が義務化される。
【0003】
非特許文献1や非特許文献2には、法的要件を満たすための調査方法や調査報告書の例が記載されている。調査報告書の様式は法的に決まっておらず、報告すべき内容として調査建物、調査目的、対象建材、調査結果概要、調査図面、調査結果詳細、調査写真(分析用建材採取写真含む。)、調査判断に用いた添付資料などが求められている。調査報告書の内容は多岐にわたり、情報量も膨大である。従って、調査報告書を適切かつ効率良く作成するためには、調査報告書に必要な情報を体系的に関連付ける仕組みが必要になる。
【0004】
特許文献1には、石綿分析建材の採取場所と分析結果を関連付けするためにバーコードで管理するアスベスト統合管理システムが開示されている。また、特許文献2には、対象構造物のアスベストの調査や分析データを取得した箇所が参照可能な対象構造物のアスベスト3次元マップを生成するアスベスト3次元マップ生成システムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2022-039831号公報
【特許文献2】特開2022-018556号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】中央労働災害防止協会編、「石綿含有建材調査者テキスト 一般建築物・一戸建て等用 改訂第2版」、2023年2月22日発行
【非特許文献2】厚生労働省労働基準局安全衛生部化学物質対策課、環境省水・大気環境局大気環境課、「建築物等の解体等に係る石綿ばく露防止及び石綿飛散漏えい防止対策徹底マニュアル」、[online]、2021年3月公表、2022年3月31日更新、[2023年6月7日検索]、インターネット <URL:https://www.env.go.jp/air/asbestos/post_71.html>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1及び特許文献2のいずれの技術も、法令に従った石綿調査における問題点の改善ができていない。
【0008】
法令に従った石綿調査では、書面調査と目視調査を行う。書面調査の過程で使用する設計書類に記載の材料名は一般建材名が多く、新築及び増改築の資料で同じ材料名があれば、年代が異なるのに同一の建材と扱ってしまい、不適切な判断がなされる恐れがある。
【0009】
また、書面調査や目視調査において石綿含有有無の判断根拠の資料を添付する際、具体的な商品名ではなく一般建材名しか判明しないことが多い。その場合、調査者が様々な情報源から適宜判断し、判断根拠の資料を選択するため、知識や判断力の違いから調査者次第で不適切な判断がなされる恐れがある。
【0010】
更に、建物現場での目視調査終了後、石綿含有の疑いがある材料については建材分析で石綿含有の有無を判定するか、「見なし判定」で石綿含有と見なすことができるが、その選択基準の決まりはなく調査者の判断で決めて良いことになっている。そのため、無駄に多くの建材分析(=試料を採取し、石綿含有の有無を判定するための分析)を行うと、建材分析費用の高騰を招く。一方、建材分析費用を安価にするため、多くの建材を「見なし判定」で石綿含有と見なすと、調査後の工事費用や処分費用の高騰を招く。このように、調査者次第で経済合理性が低い判断がなされる恐れがある。
【0011】
本発明は、前述した問題点に鑑みてなされたものであり、その目的とすることは、調査者の知識や判断力に依存せずに、適切かつ経済合理性が高い判断を支援できる石綿調査支援システム等を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前述した目的を達成するための第1の発明は、建物の石綿調査を支援する石綿調査支援システムであって、前記建物の材料に石綿が含有しているか否かを判断するための根拠資料の属性情報、前記材料の商品名を含む第1キーワード、及び前記材料の材料名を含む第2キーワードの入力を受け付け、根拠資料情報として記憶する根拠資料マスタ登録手段と、書面調査において、前記材料名及び前記商品名の入力を受け付け、書面調査情報として記憶する書面調査支援手段と、を備え、前記書面調査支援手段は、前記根拠資料情報の取得の指示を受け付けると、前記商品名が入力されているか否か確認し、前記商品名が入力されている場合、前記商品名を検索条件として前記第1キーワードを検索し、前記商品名が入力されていない場合又は前記商品名による検索結果が0件の場合、前記材料名を検索条件として前記第2キーワードを検索し、検索結果を表示することを特徴とする石綿調査支援システムである。第1の発明の石綿調査支援システムによって、知識が不十分な調査者に対して、適切な根拠資料の選択を支援できる。
【0013】
第1の発明における前記根拠資料情報には、更に、過去に前記根拠資料を採用した採用件数が含まれており、前記書面調査支援手段は、前記根拠資料情報の検索結果が複数存在する場合、前記採用件数が多い順に優先して表示し、前記根拠資料情報の検索結果が0件の場合、新たな前記根拠資料情報の入力を促すことが望ましい。これによって、経験不足の調査者に対して、経験豊富な調査者による過去の判断結果を表示し、適切な根拠資料の選択を支援できる。
【0014】
また、第1の発明における前記書面調査支援手段は、前記材料が前記建物に採用された採用時期の入力を受け付け、前記材料名が同一、かつ前記採用時期又は前記商品名の少なくとも1つが異なる場合、前記材料名の変更を促すことが望ましい。これによって、採用時期又は商品名が異なるにも関わらず、材料名を同一にしてしまうことによる不適切な判断を防止できる。
【0015】
また、第1の発明は、前記書面調査後に実施される目視調査の結果入力において、前記書面調査情報を取得して表示し、前記書面調査と前記目視調査との前記材料の整合性が有るか無いかの整合性確認と、前記整合性が無い場合には、目視調査で確認した前記材料名の入力を受け付け、目視調査情報として記憶する目視調査支援手段と、前記材料の石綿含有の有無を分析する建材分析のための試料を識別する試料番号の入力を受け付け、前記目視調査情報の一部として記憶する分析判定支援手段と、前記目視調査後に実施され、前記材料に石綿が含有しているか否かを判定する結果判定において、前記根拠資料情報の取得の指示を受け付けると、前記試料番号が入力されていない、かつ前記整合性が無い場合、新たに入力される前記材料名が前記書面調査情報の中に有るか無いか検索し、有る場合には同一の前記材料名の前記書面調査情報に係る前記根拠資料情報を表示する結果判定支援手段と、を更に備えることが望ましい。これによって、目視調査において判明した材料に対する根拠資料の選択結果と、書面調査における根拠資料の選択結果との間で齟齬が生じることを防止できる。
【0016】
また、第1の発明における前記分析判定支援手段は、前記材料の使用量、前記材料の石綿含有の可能性及び前記材料の撤去を行うための工事負荷に関する定性評価の入力を受け付け、と、前記材料が前記建物に採用された採用時期とに基づいて、前記建材分析を行うべきか否かの推奨判定結果及び優先度を算出することが望ましい。これによって、経験不足の調査者であっても、建材分析を行うか否かの判断において、経済合理性が高い判断を行うことができる。
【0017】
また、第1の発明は、前記目視調査において撮影される写真を貼り付ける写真台紙を表示し、前記写真の画像の入力を受け付ける写真整理支援手段、を更に備え、前記写真整理支援手段は、所定の条件に従って前記写真の撮影場所を含む説明文を作成し、前記写真台紙に前記説明文を表示することが望ましい。これによって、写真の説明文を入力する手間が省けるとともに、必要な写真の整理漏れを防止できる。
【0018】
また、第1の発明は、前記建材分析のための前記試料の採取用袋に貼り付けられる採取用ラベルの印刷データを作成する建材分析支援手段、を更に備え、前記建材分析支援手段は、前記材料の仕上材及び下地材の層別分析を行う前記試料については、前記仕上材及び前記下地材の両方の前記材料名を含む前記印刷データを作成することことが望ましい。これによって、層別分析の対象となる材料を明示することができ、採取方法の間違いを防止できる。
【0019】
第2の発明は、コンピュータが建物の石綿調査を支援する石綿調査支援方法であって、前記コンピュータが、前記建物の材料に石綿が含有しているか否かを判断するための根拠資料の属性情報、前記材料の商品名を含む第1キーワード、及び前記材料の材料名を含む第2キーワードの入力を受け付け、根拠資料情報として記憶する根拠資料マスタ登録ステップと、書面調査において、前記材料名及び前記商品名の入力を受け付け、書面調査情報として記憶する書面調査支援ステップと、を実行し、前記書面調査支援ステップは、前記根拠資料情報の取得の指示を受け付けると、前記商品名が入力されているか否か確認し、前記商品名が入力されている場合、前記商品名を検索条件として前記第1キーワードを検索し、前記商品名が入力されていない場合又は前記商品名による検索結果が0件の場合、前記材料名を検索条件として前記第2キーワードを検索し、検索結果を表示することを特徴とする石綿調査支援方法である。第2の発明の石綿調査支援方法を実行することによって、知識が不十分な調査者に対して、適切な根拠資料の選択を支援できる。
【0020】
第3の発明は、コンピュータを建物の石綿調査を支援する石綿調査支援システムとして機能させるためのプログラムであって、前記コンピュータを、前記建物の材料に石綿が含有しているか否かを判断するための根拠資料の属性情報、前記材料の商品名を含む第1キーワード、及び前記材料の材料名を含む第2キーワードの入力を受け付け、根拠資料情報として記憶する根拠資料マスタ登録手段、書面調査において、前記材料名及び前記商品名の入力を受け付け、書面調査情報として記憶する書面調査支援手段、として機能させ、前記書面調査支援手段は、前記根拠資料情報の取得の指示を受け付けると、前記商品名が入力されているか否か確認し、前記商品名が入力されている場合、前記商品名を検索条件として前記第1キーワードを検索し、前記商品名が入力されていない場合又は前記商品名による検索結果が0件の場合、前記材料名を検索条件として前記第2キーワードを検索し、検索結果を表示するためのプログラムである。第3の発明のプログラムを汎用のコンピュータにインストールすることによって、第1の発明の石綿調査支援システムを構築することができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明により、調査者の知識や判断力に依存せずに、適切かつ経済合理性が高い判断を支援できる石綿調査支援システム等を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】石綿調査支援システム1の概要を示す図
図2】端末2及びサーバ3であるコンピュータ10のハードウエア構成図
図3】石綿調査支援システム1における情報の流れを示す図
図4】石綿調査支援システム1の機能を示すブロック図
図5】主要なテーブルレイアウトの一例
図6】主要なテーブルレイアウトの一例
図7】根拠資料マスタ登録画面50の一例
図8】詳細表画面60の一例(左側)
図9】詳細表画面60の一例(右側)
図10】仕上表ファイル70の一例
図11】書面調査判定画面80の一例
図12】第1の根拠資料情報取得処理の流れを示すフローチャート
図13】分析判定チェック画面90の一例
図14】試料採取一覧表ファイル100の一例
図15】ラベル印刷データ110の一例
図16】結果判定画面120の一例(左側)
図17】結果判定画面120の一例(右側)
図18】第2の根拠資料情報取得処理の流れを示すフローチャート
図19】写真整理画面130の一例
図20】報告書印刷画面150の一例
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下図面に基づいて、本発明の実施形態を詳細に説明する。本発明の実施形態における石綿調査支援システムは、コンピュータが、法令に従った建物の石綿調査を支援するシステムである。石綿調査支援システムは、石綿障害予防規則や大気汚染防止法で要求される建物解体、改修工事前の石綿調査や建物維持、不動産取引等で要求される石綿調査の報告書類を作成する作業を支援する。平成18年9月にアスベスト含有建材の使用は禁止されているが、それ以前に着工、製造した建築物、船舶、工作物等にはアスベストが含まれる可能性がある。この為、建物等を解体、改修する労働者や建物等を利用する人への健康障害の恐れがある。この問題が発生しないように、平成17年に石綿障害予防規則が制定され、石綿調査が義務付けられた。石綿調査は、対象となる箇所全てを網羅的に調査する必要がある。
【0024】
調査者は、最初に建物等の設計書類などをもとにした書面調査を行い、書面調査の結果を用いながら対象建物の目視調査を行い、実際に使用されている材料の情報を整理する。この後、調査者は、各材料を国やメーカー等の情報をもとに石綿含有疑義建材(=無石綿建材と断定できないもの)と無石綿建材と不明に分ける。尚、不明と判断される場合は使用されている建材の情報が無い或いは情報はあるものの材質が判断できない場合などがある。石綿含有疑義建材については、調査者は、建材分析で石綿含有の有無を判定するか、又は見なし判定として石綿含有建材として扱うのかを判断する。そして、調査者は、これらの情報を収集整理し、報告書を作成する。
【0025】
図1は、石綿調査支援システム1の概要を示す図である。図1に示すように、石綿調査支援システム1は、端末2と、端末2とネットワーク4を介して接続されるサーバ3とによって構成される。端末2は、直接又はネットワーク4を介して印刷装置5と接続される。端末2及びサーバ3の台数は特に限定されるものではない。また、1台のコンピュータだけで石綿調査支援システム1を構築することも可能である。
【0026】
石綿調査支援システム1は、端末2及びサーバ3に専用のプログラムがインストールされ、いわゆるクライアント/サーバ型システムとして構成されても良いし、サーバ3に専用のプログラムがインストールされ、端末2に汎用のウエブ閲覧ソフトがインストールされ、いわゆるウエブシステムとして構成されても良い。更に、サーバ3は、会社内に設置されるオンプレミスサーバでも良いし、クラウドサービスを提供する事業者が構築する仮想サーバでも良い。
【0027】
図2は、端末2及びサーバ3であるコンピュータ10のハードウエア構成図である。コンピュータ10は、図2に示すように、制御部11、記憶部12、通信部13、入力部14、表示部15、周辺機器I/F部16等によって構成され、これらのハードウエアがバス17によって接続される。尚、図2に示すコンピュータ10の構成は一例であり、適宜様々な構成をとることができる。
【0028】
制御部11は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)等により構成される。CPUは、記憶部12、ROM、記録媒体等に格納されるプログラムをRAM上のワークメモリ領域に呼び出して実行し、バス17を介して接続された各部を駆動制御する。ROMは、コンピュータのブートプログラムやBIOS等のプログラム、データ等を恒久的に保持する。RAMは、ロードしたプログラムやデータを一時的に保持するとともに、制御部11が各種処理を行うために使用するワークエリアを備える。制御部11は、上記プログラムを読み出して実行することにより、後述する図3の石綿調査支援システム1の各手段として機能する。
【0029】
記憶部12は、例えば、ハードディスクドライブやソリッドステートドライブ、フラッシュメモリ等の記憶装置である。記憶部12には制御部11が実行するプログラムや、プログラム実行に必要なデータ、オペレーティングシステム等が格納されている。これらのプログラムコードは、制御部11により必要に応じて読み出されてRAMに移され、CPUに読み出されて実行される。また、記憶部12には石綿調査支援システム1において利用される各種データが記憶される。
【0030】
通信部13は、通信制御装置及び通信ポートを有し、ネットワーク4等との通信を制御する。入力部14は、例えば、キーボードやマウス等のポインティングデバイス、或いはディスプレイと一体的に設けられたタッチパネル等であり制御部11に対してデータを入力する。表示部15は、液晶パネル等のディスプレイ装置と、ディスプレイ装置と連携して表示処理を実行するための論理回路(ビデオアダプタ等)で構成され、制御部11の制御により入力された表示用データをディスプレイ装置上に表示させる。周辺機器I/F部16は、周辺機器(例えば印刷装置5等)を接続させるためのポートであり、周辺機器I/F部16を介して周辺機器とのデータの送受信を行う。周辺機器との接続形態は有線、無線を問わない。
【0031】
図3は、石綿調査支援システム1における情報の流れを示す図である。石綿調査支援システム1における情報は、外部情報21、システム内保存情報22、作業ツール(印刷物)23、報告書類(印刷物)24等である。大まかな情報の流れは、外部情報21がシステム内保存情報22に反映され、システム内保存情報22が作業ツール(印刷物)23や報告書類(印刷物)24に反映される。
【0032】
外部情報21は、建物の部屋(箇所)を一意に識別する番号である図面ナンバリング情報21a、建物の設計図等から得られる設計図書類情報21b、建物の目視調査から得られる目視調査情報21c、建材分析の分析結果21d等を含む。調査者は、建物の平面図や立面図を用いて、屋内については部屋単位で番号又は記号を付与し、屋外については部位(箇所)単位で番号又は記号を付与し、図面ナンバリング情報21aとする。
【0033】
システム内保存情報22は、主要な情報として、詳細表22aを含み、更にこの関連情報を含む。関連情報は、根拠資料マスタ22b、調査場所入力表22c、仕上表情報入力表22d、書面調査判定表22e、添付資料リスト表22f、目視調査入力表22g、分析判定チェック表22h、試料採取一覧表22i、結果判定表22j、添付資料一覧22k、写真台紙22l、写真データ22m等である。作業ツール(印刷物)23は、調査者が目視調査において持参する調査記録表23a、建材分析のための建材採取用容器に貼付される建材採取用ラベル23b等を含む。報告書類(印刷物)24は、法令に基づく報告時に提出される報告書類として、調査結果報告書24a、アスベスト調査詳細表24b、調査写真集24c、添付資料集24d等を含む。
【0034】
図4は、石綿調査支援システム1の機能を示すブロック図である。石綿調査支援システム1を構成する端末2及びサーバ3の制御部11は、記憶部12、通信部13、入力部14、表示部15、周辺機器I/F部16等を駆動制御し、根拠資料マスタ登録手段31、書面調査支援手段32、目視調査支援手段33、分析判定支援手段34、建材分析支援手段35、結果判定支援手段36、写真整理支援手段37、報告書出力手段38等として機能する。各手段の詳細は後述する。
【0035】
以下では、混乱を避ける為、石綿調査支援システム1は、端末2及びサーバ3に専用のプログラムがインストールされ、クライアント/サーバ型システムとして構成されるものとする。端末2及びサーバ3のハードウエアの基本的な動作は以下の通りである。端末2の制御部11は、端末2の表示部15に各種画面を表示させ、端末2の入力部14を介して調査者からのデータ入力を受け付け、通信部13を介してサーバ3に送信する。サーバ3の制御部11は、端末2から受信する要求に応じて、データをサーバ3の記憶部12に記憶したり、サーバ3の記憶部12を検索し、通信部13を介して検索結果を端末2に送信したりする。端末2の制御部11は、サーバ3から受信するデータを端末2の表示部15に表示させる。また、端末2の制御部11は、周辺機器I/F部16又は通信部13を介して印刷装置5に各種印刷データを送信する。印刷装置5は、端末2から受信する印刷データを印刷する。
【0036】
図5及び図6は、主要なテーブルレイアウトの一例である。サーバ3の記憶部12には、図5及び図6に示すテーブルや、その他の不図示のテーブルを含むデータベースが構築される。以下、例えば、判断根拠41lと判断根拠42jのように、異なるテーブルでも同一の項目名であれば、同一の性質を持つデータとする。
【0037】
図5(a)に示す根拠資料マスタテーブル41は、各材料を石綿含有疑義建材と無石綿建材に分ける根拠になる国やメーカー等の資料(=根拠資料)に関する根拠資料マスタ22bの情報を記憶する。根拠資料マスタテーブル41は、根拠資料を一意に識別する根拠資料識別番号41aを主キーとし、大分類コード41b、小分類コード41c、出典者名称41d、題名41e、出典元41f、出典元URL41g、出典者部署41h、出典者連絡先41i、添付ファイルパス41j、更新日41k(※年号、和暦、月日を分けて記憶しても良い。)、判断根拠41l、商品名等キーワード41m、材料名キーワード41n、調査内容・結果(内容)41o、採用件数41p等を含む。
【0038】
大分類コード41b、小分類コード41cについては、別途各コードと名称が対応付けられて記憶される。添付ファイルパス41jは、根拠資料の電子ファイルが記憶される記憶領域のアドレスである。判断根拠41lは、石綿含有疑義建材と無石綿建材に分ける根拠の概要であり、例えば、「協会資料」、「メーカー資料」、「国交省資料」、「石綿DB」等の根拠資料の属性情報や、「一般的に含有せず」、「石綿製品製造禁止後」等の説明文である。商品名等キーワード41mは、根拠資料を検索するためのキーワードであり、例えば、材料の商品名、出典者の略称、題名の一部等である。材料名キーワード41nは、根拠資料を検索するためのキーワードであり、材料の一般名称や、その略称等である。調査内容・結果(内容)41oは、調査内容や結果を簡潔に示す文章の文例等である。採用件数41pは、当該根拠資料が最終的な調査結果の根拠として採用された件数である。
【0039】
尚、図示はしていないが、サーバ3の記憶部12に構築されるデータベースは、根拠資料マスタテーブル41の他に、石綿調査を依頼する取引先、石綿調査を実施する調査機関や調査者、建材分析を実施する分析機関や分析者、建物の図面や現地の写真集、建物構造、建物用途、所見、年号等のマスタテーブルを含む。
【0040】
図5(b)に示す書面調査判定表テーブル42は、書面調査判定表22eを記憶する。書面調査判定表テーブル42は、管理案件を一意に識別する管理番号42a、建物を一意に識別する建物番号42b、及び書面調査における建物の材料を一意に識別する書面材料識別番号42cを複合主キーとし、材料名42d、採用年42e、商品名42f、メーカー名42g、石綿含有の可能性42h、石綿の種類42i、判断根拠42j、根拠資料識別番号42k、添付資料番号42l等を含む。
【0041】
材料名42dは、設計図書に記載された材料の一般名称や、その略称である。また、設計図書に商品名だけ記載された場合はその商品の一般名称となる。採用年42eは、材料が建物に採用された時期(年又は年月)を示すものである。尚、石綿製品禁止の時期に関連し平成18年8月以前は竣工年(月)とし、平成18年9月以降は着工年(月)とする。採用年42eは、増改築されていなければ、建物が竣工又は着工された年又は年月であり、増改築されたときに採用された材料であれば、建物の増改築工事の竣工又は着工された年又は年月である。竣工年、増改築年が分からないものは不明とする。商品名42fは、材料名42dと異なり、各メーカーを識別可能な名称である。添付資料番号42lは、報告書に添付する根拠資料の通し番号である。
【0042】
図5(c)に示す結果判定表テーブル43は、現地の目視調査で得られる調査記録を目視調査入力表22g、詳細表22aを介して記憶する。結果判定表テーブル43は、管理番号43a、建物番号43b、及び目視調査における建物の材料を一意に識別する目視材料識別番号43cを複合主キーとし、書面_材料名43d、書面_判断根拠43e、書面_添付資料番号43f、整合性確認43g、既存材料名43h、気づき・確認・判定事項43i、試料番号43j、採取番号43k、判断根拠43l、根拠資料識別番号43m、添付資料番号43n、石綿含有有無43o、石綿種類43p、レベル43q等を含む。「書面_」は、書面調査と目視調査における同じ項目名称を区別するための表記であり、以下も同様である。
【0043】
整合性確認43gは、書面調査で判明した材料と目視調査で確認した材料が同一か否かを示すフラグである。書面調査の材料名が現地での目視調査で確認した材料と異なる場合、目視調査で確認した材料名については、既存材料名43hに記憶される。気づき・確認・判定事項43iは、調査者が目視調査において気づいたことなどの備忘録である。試料番号43jは、建材分析の試料を識別する番号である。採取番号43kは、同一の試料番号43jについて採取場所を識別する番号である。建材分析を行う際は、通常1つの材料について3か所以上で採取する。石綿含有有無43oは、材料に石綿が含有しているか否かの判定結果である。レベル43qは、石綿の飛散の危険性に合わせた作業レベルを示し、レベル1(石綿含有吹付け材)、レベル2(石綿含有保温材、耐火被覆材、断熱材)、レベル3(その他の石綿含有建材)の3段階に分かれ、レベル1が最も危険である。
【0044】
図6(a)に示す詳細表テーブル44は、結果判定表22jを記憶する。詳細表テーブル44は、管理番号44a、建物番号44b、及び詳細表の材料を一意に識別する詳細番号44cを複合主キーとし、場所44d、No.44e、部屋(箇所)名44f、部位44g、書面_材料名44h、書面_採用年44i、書面_商品名44j、書面_メーカー名44k、書面_石綿含有の可能性44l、書面_石綿の種類44m、書面_判断根拠44n、書面_添付資料44o、整合性確認44p、既存材料名44q、気づき・確認・判定事項44r、試料番号44s、採取番号44t、判断根拠44u、添付資料番号44v、石綿含有有無44w、石綿種類44x、レベル44y等を含む。
【0045】
場所44dは、建物内の大まかな位置を示し、例えば、1階、2階、外部等である。No.44eは、建物の部屋(箇所)を一意に識別する番号であり、図面ナンバリング情報21aが反映される。部位44gは、部屋(箇所)を構成する各要素を示し、例えば、部屋(箇所)名44fが「玄関」であれば、「床1」、「床1下地」、「巾木1」、「壁1」、「壁1下地」、「天井1」等である。
【0046】
図6(b)に示す分析判定チェック表テーブル45は、分析判定チェック表22hに関する情報を記憶する。分析判定チェック表テーブル45は、管理番号45a、建物番号45b、及び分析判定の対象となる材料を一意に識別する材料識別番号45cを複合主キーとし、材料名45d、使用部位数45e、採用年45f、石綿含有疑義フラグ45g、レベル45h、使用量45i、石綿含有可能性45j、工事負荷45k、優先度45l、判定結果45m、分析実施フラグ45n、試料番号45o等を含む。
【0047】
使用部位数45eは、当該材料が使用されている部位の数である。石綿含有疑義フラグ45gは、石綿含有の疑義があるか否かを示すフラグである。使用量45i、石綿含有可能性45j及び工事負荷45kは、調査者による評価項目である。優先度45l及び判定結果45mは、コンピュータ10による計算項目である。使用量45iから判定結果45mの詳細は図12を参照しながら後述する。分析実施フラグ45nは、分析を実施するか否かを示すフラグである。
【0048】
尚、図示はしていないが、サーバ3の記憶部12に構築されるデータベースは、書面調査判定表テーブル42から分析判定チェック表テーブル45の他に、図3に示すシステム内保存情報22の各情報に対応するテーブルを含んでも良い。
【0049】
<根拠資料マスタ登録手段31>
根拠資料マスタ登録手段31は、根拠資料マスタ登録画面を介して、建物の材料に石綿が含有しているか否かを判断するための根拠資料の属性情報、材料の商品名を含む第1キーワード、及び材料の材料名を含む第2キーワードの入力を受け付け、根拠資料情報として根拠資料マスタテーブル41に記憶する。根拠資料の属性情報を第1キーワードや第2キーワードとともに記憶することによって、後述の処理において効率良く根拠資料を検索できる。根拠資料の属性情報の一例は、図5(a)に示しているが、この例に限定されるものではない。
【0050】
以下、根拠資料マスタ登録手段31の詳細について説明する。図7は、根拠資料マスタ登録画面50の一例である。端末2は、マスタ設定画面(不図示)において、根拠資料の大分類及び小分類が入力され、新規ボタンが押下されると、根拠資料の大分類及び小分類とともに新規登録要求をサーバ3に送信する。サーバ3は、根拠資料識別番号を自動採番し、根拠資料マスタテーブル41に新しいレコードを追加するとともに、根拠資料識別番号等を端末2に送信する。そして、端末2は、図7に示す根拠資料マスタ登録画面50を表示する。
【0051】
図7の例では、分類51aに大分類「国関連」、小分類「石綿データベース」が表示され、根拠資料識別番号51bに「000300」が表示されている。端末2は、根拠資料の属性情報として、出典者名称51c、題名51d、出展元51e、出展元URL51f、出典者部署51g、出典者連絡先51h、添付ファイル51i、最終更新日51j、判断根拠51k、調査内容・結果(内容)51nの入力を受け付け、第1キーワードとして、商品名等キーワード51lの入力を受け付け、第2キーワードとして、材料名キーワード51mの入力を受け付ける。そして、端末2は、登録ボタン52が押下されると、各項目に入力されているデータをサーバ3に送信する。サーバ3は、端末2から受信するデータを根拠資料マスタテーブル41の各項目に記憶し、採用件数41pを0件で記憶する。
【0052】
<書面調査支援手段32>
書面調査支援手段32は、書面調査において、材料名及び商品名の入力を受け付け、書面調査情報として書面調査判定表テーブル42に記憶する。そして、書面調査支援手段32は、根拠資料情報の取得の指示を受け付けると、商品名が入力されているか否か確認し、商品名が入力されている場合、商品名を検索条件として根拠資料情報の第1キーワードを検索し、商品名が入力されていない場合又は商品名による検索結果が0件の場合、材料名を検索条件として根拠資料情報の第2キーワードを検索し、検索結果を表示する。これによって、知識が不十分な調査者に対して、適切な根拠資料の選択を支援できる。図5(b)の書面調査判定表テーブル42の説明でも記載した通り、材料名は、材料の一般名称やその略称が入力され、商品名は、材料名と異なり、各メーカーを識別可能な名称が入力されることを想定している。
【0053】
また、書面調査支援手段32は、根拠資料情報の検索結果が複数存在する場合、過去に根拠資料を採用した採用件数(=根拠資料情報に含まれる)が多い順に優先して表示し、根拠資料情報の検索結果が0件の場合、新たな根拠資料情報の入力を促す。「採用件数が多い順に優先して表示」とは、例えば、採用件数が最も多い単一の検索結果を表示することや、採用件数が多い順に整列して複数の検索結果を表示することを意味する。これによって、経験不足の調査者に対して、経験豊富な調査者による過去の判断結果を表示し、適切な根拠資料の選択を支援できる。採用件数は、図5(a)の根拠資料マスタテーブル41の説明でも記載した通り、当該根拠資料が最終的な調査結果の根拠として採用された件数である。採用件数のカウント処理は、後述する結果判定支援手段36によって実行される。カウント処理は、1調査案件(複数の建物が存在する場合でも)で書面調査判定表22e、結果判定表22jのいずれか又は両方で採用されたものを1カウントとする。また、同じ添付資料が複数カ所で採用されていても1カウントとする。
【0054】
また、書面調査支援手段32は、材料が建物に採用された採用時期の入力を受け付け、材料名が同一、かつ採用時期又は商品名の少なくとも1つが異なる場合、材料名の変更を促すメッセージを表示する。これによって、採用時期又は商品名が異なるにも関わらず、材料名を同一にしてしまうことによる不適切な判断を防止できる。尚、同じ材料名を区別する場合は、例えば「石膏ボード」であれば「石膏ボード1」、「石膏ボード2」の様に分類番号を付与することなど考えられる。但し、稀に無石綿製品など、採用時期又は商品名が異なっても、材料名を同一にしても支障が無い材料もあるため、システム上は注意喚起に留める。本実施の形態では、採用時期は、図5(b)の書面調査判定表テーブル42の採用年42eの説明に記載した通り、増改築されていなければ、建物が施工又は着工された年又は年月が入力され、増改築されたときに採用された材料であれば、建物が増改築された年又は年月が入力されることを想定している。
【0055】
以下、書面調査支援手段32の詳細について説明する。図8及び図9は、詳細表画面60の一例である。詳細表画面60は横に長いので、図8に左側部分、図9に右側部分を図示している。詳細表画面60は、場所61aからレベル61vまでの表示項目を有し、詳細表テーブル44に記憶されるデータの表示領域と、各種ボタン62a~62pとを含む。各種ボタン62a~62pは、概ね作業順に配置されているため、調査者は順番にボタンを押下していくことにより、正しい順序で作業を進めることが可能である。
【0056】
端末2は、調査場所入力表作成ボタン62aが押下されると、表計算ソフト(例えば、Microsoft(登録商標)社のExcel(登録商標))の調査場所入力表ファイル(不図示)を作成し、表示部15に表示する。調査場所入力表ファイルは、建物の各場所における部屋(箇所)名称を入力するためのファイルである。例えば、2階建ての建物であれば、場所は1階、2階、外部である。また、例えば、1階の部屋(箇所)名称は、No.1が「玄関」、No.2が「ホール」、No.3が「廊下」、・・・である。調査者は、図面ナンバリング情報21aに基づいて、調査場所入力表に情報を入力する。
【0057】
次に、端末2は、部屋(箇所)名取込ボタン62bが押下されると、調査場所入力表ファイルから情報を取得し、詳細表画面60の場所61a、No.61b、部屋(箇所)名61cに表示する。
【0058】
次に、端末2は、仕上表作成ボタン62cが押下されると、表計算ソフトの仕上表ファイルを作成し、表示部15に表示する。図10は、仕上表ファイル70の一例である。仕上表ファイル70は、図10に示す内部仕上表のシート及び外部仕上表のシート(不図示)等から構成される。内部仕上表は、部屋(箇所)ごとの床建材情報74、巾木建材情報(不図示)、壁建材情報(不図示)、天井建材情報(不図示)、その他建材情報(不図示)等を含み、外部仕上表も同様の情報を含む。例えば、床建材情報74は、床1仕上、床1下地、床2仕上、床2下地等の部位を含み、部位ごとに材料名75a、採用年75b、商品名75cを含む。3種類目の床材が存在する場合や、床材の下地が複数ある場合などは適宜列を増やすことも可能である。図10に示す例では、「床1仕上」の部位は、材料名75aが「クリンカータイル」、採用年75bが「S50」、商品名75cが「不明」である。調査者は、竣工時、改修時、増築時の設計図書類情報21bに基づいて、仕上表ファイル70に部位ごとの仕上建材、下地建材の情報を入力する。
【0059】
次に、端末2は、仕上表情報取込ボタン62dが押下されると、仕上表ファイル70から情報を取得し、詳細表画面60の部位61d、材料名61e、採用年61f、商品名61gに表示する。ここで、端末2は、材料名61eが同一の場合、それらの採用年61f又は商品名61gの少なくとも1つが異なるか否か確認する。そして、材料名61eが同一、かつ、採用年61f又は商品名61gの少なくとも1つが異なる場合、端末2は、「採用年又は商品名の少なくともいずれか1つが異なるにも関わらず、材料名が同一のデータが存在します。」というメッセージを詳細表画面60に重畳して表示し、調査者に対して材料名61eの変更を促す。これは、書面調査の過程で使用する設計書類に記載の材料名は一般建材名が多いので、採用年や商品名が異なるのに同一の材料名を入力してしまい、その後の調査において同一の建材として扱うことによって、不適切な判断がなされることを防止するためである。調査者は、材料名61eを変更する場合、仕上表ファイル70の情報を変更した後、再び仕上表情報取込ボタン62dを押下する。但し、採用年や商品名が異なる場合でも同一の建材として扱うことが正しいこともあるため、端末2は注意喚起のみを行い、材料名61eが変更されなくても、次のボタンを押下可能とする。
【0060】
次に、端末2は、書面調査判定表作成ボタン62eが押下されると、書面調査判定画面を表示部15に表示する。図11は、書面調査判定画面80の一例である。書面調査判定画面80は、建物領域81、書面調査判定領域82及び添付資料領域83から構成される。この書面調査判定画面80は、判断根拠となる添付資料から石綿含有の可能性を判断する目的で用いられる。
【0061】
建物領域81には、No.81aごとに建物名81bが表示される。端末2は、いずれか1つの行がカーソルによって選択され、建物書面情報取得ボタン81cが押下されると、選択されている建物の情報を仕上表情報取込ボタン62dの処理を行った詳細表60から取得し、書面調査判定領域82の材料名82a、採用年82b、商品名82cに表示する。
【0062】
次に、端末2は、判断根拠資料取得ボタン82jが押下されると、サーバ3に第1の判断根拠資料取得要求を送信し、サーバ3は第1の根拠資料情報取得処理を実行する。図12は、第1の根拠資料情報取得処理の流れを示すフローチャートである。サーバ3は、図12のフローチャートに従って、書面調査判定領域82に表示されているデータを1件ずつ読み込み、根拠資料マスタテーブル41を検索し、判断根拠41l、根拠資料識別番号41aを取得する。
【0063】
図12に示すように、サーバ3は、書面調査判定領域82に表示されている1件目のデータを読み込み(ステップS1)、採用年82bがH18.9(平成18年9月)以降着工か否か確認する(ステップS2)。採用年82bがH18.9以降の場合(ステップS2のYes)、サーバ3は、判断根拠を「石綿製品製造禁止後」、添付資料を「-」に決定し(ステップS3)、ステップS9に進む。これは、平成18年9月以降、石綿製品の製造が法律で禁止されているためである。
【0064】
採用年82bがH18.8以前の場合(ステップS2のNo)、サーバ3は、商品名82cが不明かどうか確認する(ステップS4)。商品名82cが不明では無い場合(ステップS4のNo)、サーバ3は、商品名82cで根拠資料マスタテーブル41の商品名等キーワード41m(=第1キーワード)を検索する(ステップS5)。サーバ3は、あいまい検索を行うことが望ましく、例えば、図11に示す書面調査判定領域82の2番目の材料名82a「ビニルタイル(ア)2」(※丸文字や丸数字は使用不可なので、括弧で代用する。以下同様)であれば、サーバ3は、「ビニルタイル」のみで商品名等キーワード41mを検索する。尚、「(ア)」は厚さの略語であり、「(ア)2」は厚さ2mmを意味する。
【0065】
商品名が不明の場合(ステップS4のYes)又は商品名による検索結果が0件の場合(ステップS6のYes)、サーバ3は、材料名82aで根拠資料マスタテーブル41の材料名キーワード41n(=第2キーワード)を検索する(ステップS7)。ステップS5と同様、サーバ3は、あいまい検索を行うことが望ましい。
【0066】
そして、サーバ3は、商品名又は材料名による検索結果から、判断根拠と根拠資料識別番号を決定する(ステップS8)。検索結果が複数存在する場合、サーバ3は、根拠資料マスタテーブル41の採用件数41pが最も多いデータに決定する。運用開始直後で採用件数41pが0件のデータしかない場合や、採用件数41pが同数の場合、サーバ3は、根拠資料識別番号41aが小さいデータを優先して表示することが考えられる。
【0067】
次に、サーバ3は、書面調査判定領域82に表示されている全てのデータの処理が終了したかどうか確認する(ステップS9)。終了していない場合(ステップS9のNo)、サーバ3は、次のデータを読み込み(ステップS10)、ステップS2から処理を繰り返す。終了している場合(ステップS9のYes)、サーバ3は、第1の根拠資料情報取得処理を終了する。そして、サーバ3は、各材料名82aに対応する判断根拠及び根拠資料識別番号を端末2に送信し、端末2は、サーバ3から受信するデータを書面調査判定領域82の判断根拠82g、根拠資料識別番号82hに表示する。端末2は、該当する根拠資料が無い材料名82aがある場合、例えば「材料名〇〇は該当する根拠資料が無いので、根拠資料マスタに登録してください。」等の根拠資料の新規登録を促すメッセージを表示する。
【0068】
図11の説明に戻る。端末2は、書面調査判定領域82における特定の行がカーソルによって選択されると、この特定の材料を識別する情報とともに判断根拠資料取得要求をサーバ3に送信する。サーバ3は、特定の材料に関する第1の判断根拠資料取得処理を実行する。すなわち、サーバ3は、特定の材料について、図12のステップS2からステップS8までの第1の判断根拠資料取得処理を実行する。検索結果が複数存在する場合、サーバ3は、根拠資料マスタテーブル41の採用件数41pが多い順に表示優先度の番号を付し、出典者名称41d、題名41e及び判断根拠41lを端末2に送信する。端末2は、サーバ3から受信するデータを、表示優先度の番号順に添付資料領域83の表示優先度83a、出典者名称83b、題名83c及び判断根拠83dに表示する。
【0069】
端末2は、添付資料領域83における特定の添付資料を示す行がカーソルによって選択され、添付資料変更ボタン83fが押下されると、この特定の添付資料に関する情報を、書面調査判定領域82においてカーソルによって選択されている行のデータに紐付け、判断根拠82g及び根拠資料識別番号82hの表示内容を変更する。尚、端末2は、添付資料領域83における特定の添付資料を示す行がカーソルによって選択され、添付ファイル表示ボタン83eが押下されると、サーバ3から添付ファイルを取得してポップアップで表示し、調査者が添付資料の中身を確認可能にする。また、端末2は、編集作業ボタン82kが押下されると、メーカー名82dから根拠資料識別番号82hまでの項目を編集可能に表示し、入力を受け付ける。
【0070】
調査者は、建物領域81に表示されている全ての建物について、判断根拠資料取得ボタン82j及び編集作業ボタン82kに係る作業を繰り返し実施する。そして、端末2は、全建物添付資料番号付与ボタン82lが押下されると、書面調査判定領域82に表示されている根拠資料識別番号82hに対して、添付資料を一意に識別する通し番号を付与し(但し、根拠資料識別番号が同じであれば、同じ通し番号を付与する。)、添付資料82iに表示する。そして、端末2は、登録ボタン82mが押下されると、入力されているデータをサーバ3に送信する。サーバ3は、書面材料識別番号42cを自動採番し、端末2から受信するデータを書面調査判定表テーブル42に記憶する。これによって、書面調査判定内容が確定する。
【0071】
図8及び図9の説明に戻る。端末2は、書面調査判定表取込ボタン62fが押下されると、サーバ3に書面調査情報取得要求を送信する。サーバ3は、書面調査判定表テーブル42からデータを取得し、端末2に送信する。端末2は、サーバ3から受信するデータを、詳細表画面60のメーカー名61h、石綿含有の可能性61i、石綿の種類61j、判断根拠61k、添付資料61lに表示する。
【0072】
<目視調査支援手段33>
目視調査支援手段33は、書面調査後に実施される目視調査の結果入力において、書面調査情報を取得して表示し、書面調査と目視調査との材料の整合性が有るか無いかの整合性確認と、整合性が無い場合には、目視調査で確認した材料名の入力を受け付け、目視調査情報として結果判定表テーブル43に記憶する。整合性確認は、図5(c)の結果判定表テーブル43の説明でも記載した通り、書面調査で判明した材料と目視調査で確認した材料が同一か否かを示すフラグとして入力されることを想定している。
【0073】
以下、目視調査支援手段33の詳細について説明する。端末2は、詳細表画面60の調査記録表印刷ボタン62gが押下されると、調査者が目視調査に持参して調査内容を記録するための調査記録表23aの印刷データを作成し、周辺機器I/F部16等を介して印刷装置5に印刷データを送信する。印刷装置5は、端末2から受信する印刷データを用いて調査記録表23aを印刷する。調査記録表23aは、書面調査との整合性確認内容、目視調査で判明した材料名、目視調査での気づき・確認・判定事項を入力するための印刷物である。尚、調査者は、目視調査において写真撮影も行う。具体的には、調査者は、建物の内部であれば部屋単位、外部であれば箇所単位で現況や各材料の写真を撮影し、建材分析用に採取した材料についても同様に採取状況を撮影し、調査写真集24c用のデータとして保管しておく。
【0074】
端末2は、詳細表画面60の目視調査入力表作成ボタン62hが押下されると、表計算ソフトの目視調査入力表ファイル(不図示)を作成し、表示部15に表示する。目視調査入力表ファイルは、調査記録表23aに記録された情報を入力するためのファイルである。調査者は、調査記録表23aに基づいて、目視調査入力表ファイルに情報を入力する。
【0075】
端末2は、詳細表画面60の目視調査情報取込ボタン62iが押下されると、目視調査入力表22gから情報を取得し、詳細表画面60の整合性確認61m、既存材料名61n、気付き・確認・判定事項61oに表示するとともに、サーバ3にデータを送信する。ここで、端末2は、目視調査入力表22gにおいて書面調査に無い材料があれば、詳細表画面60の行を追加し、目視調査入力表22gからその材料の情報(場所、No.、部屋(箇所)名、部位の情報を含む。)を取得し、詳細表画面60の場所61a、No.62、部屋(箇所)名61c、部位61d、整合性確認61m、既存材料名61n、気付き・確認・判定事項61oに表示するとともに、サーバ3にデータを送信する。サーバ3は、詳細番号44cを自動採番し、端末2から受信するデータを詳細表テーブル44に記憶する。
【0076】
<分析判定支援手段34>
分析判定支援手段34は、材料の使用量、材料の石綿含有の可能性及び材料の撤去を行うための工事負荷に関する定性評価の入力を受け付け、定性評価と、材料が建物に採用された採用時期とに基づいて、材料の石綿含有の有無を分析する建材分析を行うべきか否かの推奨判定結果及び優先度を算出する。これによって、経験不足の調査者であっても、建材分析を行うか否かの判断において、経済合理性が高い判断を行うことができる。
【0077】
また、分析判定支援手段34は、建材分析のための試料を識別する試料番号の入力を受け付け、目視調査情報の一部として記憶する。試料番号は、仕上材、下地材をセットで層別分析を行う材料については同じ番号が入力されることを想定している。
【0078】
以下、分析判定支援手段34の詳細について説明する。端末2は、分析判定チェック表作成ボタン62jが押下されると、分析判定チェック画面を表示部15に表示する。図13は、分析判定チェック画面90の一例である。分析判定チェック画面90は、建物領域91及び分析判定チェック表領域92から構成される。
【0079】
建物領域91には、No.91aごとに建物名91bが表示される。端末2は、いずれか1つの行がカーソルによって選択され、建物既存材料名取得ボタン91cが押下されると、選択されている建物を識別する情報とともに、建物既存材料名取得要求をサーバ3に送信する。サーバ3は、端末2から受信する情報に基づいて詳細表テーブル44を検索し、既存材料名44qを取得する。ここで、サーバ3は、既存材料名44qごとに、詳細表テーブル44に登録されているデータ件数をカウントし、集計結果を使用箇所数とし、既存材料名とともに端末2に送信する。端末2は、サーバ3から受信するデータを分析判定チェック表領域92の既存材料名92a及び使用箇所数92bに表示する。
【0080】
端末2は、採用年~工事負荷入力ボタン92mが押下されると、採用年92cから工事負荷92hまでの項目を編集可能に表示し、入力を受け付ける。調査者は、書面調査や目視調査の状況に基づいて採用年92cに年代を入力し、年代が判明しないものは「不明」を入力する。そして、調査者は、既存材料名92a及び採用年92cに基づいて石綿含有の疑義があるか否かを判断し、疑義があれば、石綿含有疑義建材92dにチェックを入力する。石綿含有疑義建材92dにチェックが無ければ、以降の処理において無石綿として扱われ、レベル92eから試料番号92lまでの項目には何も表示されず、入力も不可とする。石綿含有疑義建材92dにチェックが入力された材料については、調査者は、石綿が含有した場合の飛散の危険性に合わせた作業レベル1~3のいずれかをレベル92eに入力する。
【0081】
調査の過程で石綿含有の疑いのある材料が発見された場合、建材分析により石綿含有の有無を判定する方法と建材分析を行わずに石綿含有と見なす「見なし判定」方法があり、どちらを選択するかは法的な制約は無く、調査者の判断で決めて良いことになっている。疑わしい建材全てについて建材分析を行うと、石綿含有と判定される材料の数は最小になるが、建材分析費用が高騰する。一方、「見なし判定」を多くすると、建材分析費用は抑えられるが、石綿含有と判定される材料が増加し、工事費用が高騰するだけではなく処分場の負荷が大きくなる。この為、建材分析で判断する価値の有る材料(特に建材分析で無石綿になる期待が大きい材料)と、見なし判定で良い材料を適切に仕分けることが重要である。
【0082】
石綿含有の疑いがある材料でも、メーカーの石綿含有あるいは無石綿証明が得られれば建材分析の必要はない。しかしメーカーの証明が無いものは建材分析以外で無石綿と判断できず、無石綿であるほど後の工事への影響が無くなることから、無石綿になる可能性が高いものほど、建材分析を行う優先度は高くなる。石綿含有の有無は、材質及び年代の2つの要素が大きく関係する。材質については、これまでの分析結果等に基づく経験則から分かっている。年代については、石綿原綿の大部分が輸入に頼っていたので、年代によって輸入量の大小が判断できるためである。また、石綿が含有した場合、その撤去費用に及ぼす影響は使用量が多くなるほど増大し、更に工事中の養生等の飛散防止対策が必要になるレベル1及び2の方が増大する。しかしながら、法令に基づく石綿調査において、材料に石綿が含有した場合の撤去費用を1つ1つ見積もる作業は、作業時間を考えると現実的ではなく、経験則を考慮しながら、感覚的に判断していく必要がある。
【0083】
そこで、本実施の形態では、分析価値評価(優先度評価)の評価項目である使用量92f、石綿含有可能性92g及び工事負荷92hは、以下の5段階の定性評価とする。
・使用量92f:多い(5点)、やや多い(4点)、中間(3点)、やや少ない(2点)、少ない(1点)
・石綿含有可能性92g:低い(5点)、やや低い(4点)、中間(3点)、やや高い(2点)、高い(1点)
・工事負荷92h:高い(5点)、やや高い(4点)、中間(3点)、やや低い(2点)、低い(1点)
【0084】
調査者は、建物領域91に表示されている全ての建物について、建物既存材料名取得ボタン91c及び採用年~工事負荷入力ボタン92mに係る作業を繰り返し実施する。そして、端末2は、分析価値評価判定ボタン92nが押下されると、分析価値評価算出処理を実行する。
【0085】
分析価値評価算出処理では、端末2は、採用年92c、使用量92f、石綿含有可能性92g及び工事負荷92hに基づいて、優先度92i及び判定結果92jを算出する。採用年92cについては、石綿原綿の輸入量の推移に鑑み、例えば、輸入量の多い時期を1とし、輸入量が少なくなるほど石綿含有の可能性が低くなることから、輸入量に応じて以下の様に設定する。
・昭和35年(1960年)以前:3
・昭和36年(1961年)~昭和44年(1969年):2
・昭和45年(1970年)~平成3年(1991年):1
・平成4年(1992年)~平成10年(1998年):2
・平成11年(1999年)~平成18年(2006年)3
・年代不明:3(リスクを鑑み、最も高い点数とする。)
【0086】
例えば、端末2は、採用年92c、使用量92f、石綿含有可能性92g及び工事負荷92hの数値を全て乗じて、総合評価点数とする(最低点1点~最高点375点)。そして、端末2は、予め設定される閾値と総合評価点数を比較し、総合評価点数が閾値以上の場合は判定結果92jを「分析判定推奨」とし、総合評価点数が閾値未満の場合は判定結果92jを「見なし判定推奨」とする。閾値は、例えば、20~50点程度の範囲で任意に設定可能とする。また、端末2は、総合評価点数が高い順に、優先度92iの順位付けを行う。そして、端末2は、算出結果を分析判定チェック表領域92の優先度92i及び判定結果92jに表示する。
【0087】
例えば、分析判定チェック表領域92の2行目の既存材料名92aが「磁器タイル用接着剤」のデータは、使用量92fが「やや少ない」(2点)、石綿含有可能性92gが「低い」(5点)、工事負荷92hが「やや低い」(2点)、採用年92cが「S55」(1点)なので、端末2は、総合評価点数を2×5×2×1=20点と算出し、予め設定される閾値が20点であれば、判定結果92jを「分析判定推奨」とする。
【0088】
端末2は、分析実施試料番号入力ボタン92oが押下されると、分析実施92k及び試料番号92lを入力可能とし、入力を受け付ける。調査者は、優先度92i及び判定結果92jを参考にしながら、実際に建材分析を行う材料について、分析実施92kにチェックを入力し、試料番号92lを入力する。調査者は、試料番号92lを入力する際、仕上材、下地材をセットで層別分析を行う材料については同じ試料番号を付ける。尚、番号の付け方に特に決まりはないが、レベル92eの高いレベル1から順に試料1、試料2、・・・の順に番号を付けると良い。
【0089】
端末2は、登録ボタン92pが押下されると、入力されているデータをサーバ3に送信する。サーバ3は、材料識別番号45cを自動採番し、端末2から受信するデータを分析判定チェック表テーブル45に記憶する。これによって、分析判定内容が確定する。
【0090】
<建材分析支援手段35>
建材分析支援手段35は、建材分析の試料を採取する採取場所の決定を支援するとともに、試料の採取用袋に貼り付けられる採取用ラベルの印刷データを作成する。建材分析支援手段35は、材料の仕上材及び下地材の層別分析を行う試料については、仕上材及び下地材の両方の材料名を含む印刷データを作成する。これによって、層別分析の対象となる材料を明示することができ、採取方法の間違いを防止できる。
【0091】
以下、建材分析支援手段35の詳細について説明する。端末2は、詳細表画面62の分析試料番号取込ボタン62kが押下されると、サーバ3に分析試料番号取得要求を送信する。サーバ3は、分析判定チェック表テーブル45から試料番号45oを取得し、端末2に送信する。端末2は、サーバ3から受信するデータを、詳細表画面60の試料番号61pに表示する。
【0092】
また、端末2は、試料採取一覧表作成ボタン62lが押下されると、表計算ソフトの試料採取一覧表ファイルを作成し、表示部15に表示する。図14は、試料採取一覧表ファイル100の一例である。試料採取一覧表ファイル100は、場所101a、No.101b、部屋(箇所)名101c、部位101d、整合性確認101e、既存材料名101f、気付き・確認・判定事項101g、試料番号101h、採取番号101i等の項目を含む。場所101aから試料番号101hまでのデータは、端末2がファイルを作成する際に設定されている。端末2は、異なる試料番号101hの間に空白行を挿入し、各材料の使用場所一覧として可視化する。また、端末2は、仕上材と下地材をセットで層別分析する前提で選んだ材料については、図14に示す試料番号101hが「4」の例のように、各部位101dの仕上材と下地材を交互に設定する。
【0093】
試料は、1つの材料につき、原則3箇所以上採取する。調査者は、材料の使用範囲を考慮して1箇所目、2箇所目、・・・の採取場所を決定し、採取番号101iに番号(1)、(2)、・・・を入力する。例えば、屋根のように広範囲の面積に同じ材料が使用されている場合もあるので、調査者は、可能な限り採取場所を分散させて採取する。また、調査者は、層別分析する材料については、図14に示す試料番号101hが「4」の例のように、仕上材と下地材の各行に同じ番号を入力する。
【0094】
端末2は、詳細表画面62の試料採取番号取込ボタン62mが押下されると、試料採取一覧表ファイル100から採取番号を取得し、詳細表画面60の採取番号61qに表示するとともに、サーバ3にデータを送信する。サーバ3は、端末2から受信するデータを詳細表テーブル44に記憶する。
【0095】
端末2は、詳細表画面62のラベル印刷ボタン62nが押下されると、試料採取一覧表ファイル100に基づいてラベル印刷データを作成し、周辺機器I/F部16等を介して印刷装置5に送信する。印刷装置5は、端末2から受信するラベル印刷データを用いて、建材分析のための建材採取用容器に貼付される建材採取用ラベル23b(印刷物)を印刷する。
【0096】
図15は、ラベル印刷データ110の一例である。ラベル印刷データ110は、1頁内に8個のラベル111a~111hのデータが含まれている。各ラベル111a~111hには、建物名112、試料番号113、採取場所114、材料名115が含まれている。試料は1つの材料につき3箇所以上で採取され、小袋に入れられるが、採取後の石綿漏えい防止の観点から、これら3つの小袋を1つに纏め、大袋に入れて2重にすることが求められている。図15に示す例では、ラベル111a~111dが試料番号「1」用であり、ラベル111eから111hが試料番号「2」用である。端末2は、大袋用のラベル111a及びラベル111eの採取場所114を空欄とし、小袋用のラベル111b~111d及び111f~111hの材料名115には、「吹付ロックウール(1)」のように、採取番号を示す(1)、(2)、(3)を付加してラベル印刷データ110を作成する。これによって、試料採取時はラベル表示を確認しながら採取できるため、採取場所の間違いを防止できるとともに、2重梱包の安全対策を支援できる。
【0097】
また、端末2は、試料採取一覧表ファイル100の情報を取得し、ラベル印刷データ110を作成する際、試料番号101hが同一かつ採取番号101iが同一のデータが存在するか否か確認する。端末2は、試料番号101hが同一かつ採取番号101iが同一のデータが存在する場合、これらのデータを層別分析の対象となる仕上材と下地材の組と判断し、材料名115に仕上材と下地材の両方の名称を含めてラベル印刷データ110を作成する。図15のラベル111e~111hは、層別分析の対象となる仕上材「ビニル床シート」と下地材「ビニル床シート接着剤」の組であり、材料名115には両方の名称「ビニル床シート/ビニル床シート接着剤」が含まれている。これによって、層別分析の対象となる材料を明示することができ、採取方法の間違いを防止できる。調査者は、試料の採取後、依頼書と共にラベルが貼付された容器を分析機関に送る。尚、調査者は、試料採取時に写真撮影も行う。
【0098】
<結果判定支援手段36>
結果判定支援手段36は、目視調査後に実施され、材料に石綿が含有しているか否かを判定する結果判定において、根拠資料情報の取得の指示を受け付けると、試料番号が入力されていない、かつ整合性が無い場合、新たに入力される材料名が書面調査情報の中に有るか無いか検索し、有る場合には同一の材料名の書面調査情報に係る根拠資料情報を表示する。これによって、目視調査において判明した材料に対する根拠資料の選択結果と、書面調査における根拠資料の選択結果との間で齟齬が生じることを防止できる。
【0099】
以下、結果判定支援手段36の詳細について説明する。端末2は、詳細表画面60の結果判定表作成ボタン62oが押下されると、結果判定画面を表示部15に表示する。図16及び図17は、結果判定画面120の一例である。結果判定画面120は横に長いので、図16に左側部分、図17に右側部分を図示している。結果判定画面120は、建物領域121、結果判定領域122及び添付資料領域123から構成される。この結果判定画面120は、石綿調査の最終結果を判定する目的で用いられる。
【0100】
建物領域121には、No.121aごとに建物名121bが表示される。端末2は、いずれか1つの行がカーソルによって選択され、建物書面・目視調査情報取得ボタン121cが押下されると、選択されている建物を識別する情報とともに、建物書面・目視調査情報取得要求をサーバ3に送信する。サーバ3は、端末2から受信する情報に基づいて詳細表テーブル44を検索し、必要な情報を取得する。詳細表テーブル44には、書面調査の情報(書面_材料名44h、書面_判断根拠44n、書面_添付資料番号44o)も含まれていることから、サーバ3は、詳細表テーブル44から書面調査と目視調査の両方の情報を取得する。そして、サーバ3は取得した情報を端末2に送信し、端末2はサーバ3から受信するデータを結果判定領域122の書面調査の材料名122a、書面調査の判断根拠122b、書面調査の添付資料122c、整合性確認122d、目視調査の材料名122e、気付き・確認・判定事項122f、試料番号122gに表示する。
【0101】
次に、端末2は、判断根拠資料取得ボタン122nが押下されると、結果判定領域122に表示されているデータとともに、サーバ3に第2の判断根拠資料取得要求を送信し、サーバ3は第2の根拠資料情報取得処理を実行する。図18は、第2の根拠資料情報取得処理の流れを示すフローチャートである。サーバ3は、図18のフローチャートに従って、端末2から受信するデータを1件ずつ読み込み、根拠資料情報を取得する。
【0102】
図18に示すように、サーバ3は、端末2から受信する1件目のデータを読み込み(ステップS21)、試料番号があるか否か確認する(ステップS22)。試料番号がある場合(ステップS22のYes)、サーバ3は、調査結果の判断根拠122hを「建材分析結果」、調査結果の添付資料122jを「分析報告書」に決定し(ステップS23)、ステップS29に進む。例えば、図16の結果判定領域122の2行目は、試料番号122gに「3」が表示されているので、調査結果の判断根拠122hが「建材分析結果」、調査結果の添付資料122jが「分析報告書」となる。
【0103】
試料番号が無い場合(ステップS22のNo)、サーバ3は、整合性確認が「〇」かどうか(=書面調査の材料名と目視調査で確認した材料が一致しているか否か)確認する(ステップS24)。整合性確認が「〇」の場合(ステップS24のYes)、サーバ3は、書面調査の根拠資料情報(=書面調査の判断根拠122b及び書面調査の添付資料122c)を複製し、調査結果の判断根拠122h及び調査結果の添付資料122jとする(ステップS25)。例えば、図16の結果判定領域122の1行目は、試料番号122gが無く、整合性確認122dが「〇」なので、調査結果の判断根拠122h及び添付資料122jは、書面調査の判断根拠122b及び添付資料122cと同じく、「協会資料」及び「添付4」となる。
【0104】
整合性確認が「〇」ではない場合(ステップS24のNo)、サーバ3は、端末2から受信するデータの中に、目視調査において新たに判明した材料名122aと同じ材料名の書面調査の情報があるか否か確認する(ステップS26)。同じ材料名の書面調査の情報がある場合(ステップS26のYes)、サーバ3は、同じ材料名の書面調査の根拠資料情報(=書面調査の判断根拠122b及び書面調査の添付資料122c)を複製し、調査結果の判断根拠122h及び調査結果の添付資料122jとする(ステップS27)。例えば、図16の結果判定領域122の4行目は、試料番号122gが無く、整合性確認122dが「〇」ではないので、調査結果の判断根拠122h及び添付資料122jは、同じ材料名「クリンカータイル」である1行目の書面調査の判断根拠122b及び添付資料122cと同じく、「協会資料」及び「添付4」となる。
【0105】
同じ材料名の書面調査の情報がない場合(ステップS26のNo)、サーバ3は、特定の材料に関する第1の判断根拠資料取得処理を実行する(ステップS28)。すなわち、サーバ3は、特定の材料について、図12のステップS2からステップS8までの第1の判断根拠資料取得処理を実行する。
【0106】
次に、サーバ3は、端末2から受信する全てのデータの処理が終了したかどうか確認する(ステップS29)。終了していない場合(ステップS29のNo)、サーバ3は、次のデータを読み込み(ステップS30)、ステップS22から処理を繰り返す。終了している場合(ステップS29のYes)、サーバ3は、第2の根拠資料情報取得処理を終了する。そして、サーバ3は、各目視調査の材料名122aに対応する根拠資料情報を端末2に送信し、端末2は、サーバ3から受信するデータを調査結果の判断根拠122h、調査結果の根拠資料識別番号122i、調査結果の添付資料122jに表示する。端末2は、該当する根拠資料が無い目視調査の材料名122eがある場合、例えば「材料名〇〇は該当する根拠資料が無いので、根拠資料マスタに登録してください。」等の根拠資料の新規登録を促すメッセージを表示する。
【0107】
端末2は、結果判定領域122における特定の行がカーソルによって選択されると、この特定の材料を識別する情報とともに判断根拠資料取得要求をサーバ3に送信する。サーバ3は、特定の材料に関する第1の判断根拠資料取得処理を実行する。すなわち、サーバ3は、特定の材料について、図12のステップS2からステップS8までの第1の判断根拠資料取得処理を実行する。検索結果が複数存在する場合、サーバ3は、根拠資料マスタテーブル41の採用件数41pが多い順に表示優先度の番号を付し、出典者名称41d、題名41e及び判断根拠41lを端末2に送信する。端末2は、サーバ3から受信するデータを、表示優先度の番号順に添付資料領域123の表示優先度123a、出典者名称123b、題名123c及び判断根拠123dに表示する。
【0108】
端末2は、添付資料領域123における特定の添付資料を示す行がカーソルによって選択され、添付資料変更ボタン123fが押下されると、この特定の添付資料に関する情報を、結果判定領域122においてカーソルによって選択されている行のデータに紐付け、調査結果の判断根拠122h及び根拠資料識別番号122iの表示内容を変更する。尚、端末2は、添付資料領域123における特定の添付資料を示す行がカーソルによって選択され、添付ファイル表示ボタン123eが押下されると、サーバ3から添付ファイルを取得してポップアップで表示し、調査者が添付資料の中身を確認可能にする。また、端末2は、編集作業ボタン122oが押下されると、調査結果の判断根拠122hからレベル122mまでの項目を編集可能に表示し、入力を受け付ける。
【0109】
調査者は、システムによって表示される根拠資料情報を確認し、必要に応じて変更するとともに、建材分析を行った材料については分析報告書に基づいて、それ以外の材料については根拠資料に基づいて、石綿含有有無122kに「あり」又は「なし」の判定を入力する。また、調査者は、石綿含有有無122kが「あり」の材料については、石綿種類122l及びレベル122mを入力する。一方、端末2は、石綿含有有無122kに「なし」が入力されると、石綿種類122l及びレベル122mの入力を不可とし、「-」を表示する。
【0110】
調査者は、建物領域121に表示されている全ての建物について、判断根拠資料取得ボタン122n及び編集作業ボタン122oに係る作業を繰り返し実施する。そして、端末2は、全建物添付資料番号付与ボタン122pが押下されると、結果判定領域122に表示されている根拠資料識別番号122iに対して、添付資料を一意に識別する通し番号を付与し(但し、根拠資料識別番号が同じであれば、同じ通し番号を付与する。)、添付資料122jに表示する。そして、端末2は、登録ボタン122qが押下されると、入力されているデータをサーバ3に送信する。サーバ3は、詳細番号44cを自動採番し、端末2から受信するデータを詳細表テーブル44に記憶する。また、サーバ3は、今回採用された根拠資料の採用件数をカウントアップするため、当該根拠資料識別番号に係る根拠資料マスタテーブル41の採用件数41pに1を加えて更新する。これによって、結果判定の内容が確定する。
【0111】
図8及び図9の説明に戻る。端末2は、結果判定表取込ボタン62pが押下されると、サーバ3に結果判定情報取得要求を送信する。サーバ3は、結果判定表テーブル43からデータを取得し、端末2に送信する。端末2は、サーバ3から受信するデータを、詳細表画面60の調査結果の判断根拠61r、調査結果の添付資料61s、石綿含有有無61t、石綿種類61u、レベル61vに表示する。
【0112】
<写真整理支援手段37>
写真整理支援手段37は、目視調査において撮影される写真を貼り付ける写真台紙を表示し、写真の画像の入力を受け付ける。また、写真整理支援手段37は、所定の条件に従って写真の撮影場所(=調査場所、試料採取場所等)を含む説明文を作成し、写真台紙に説明文を表示する。これによって、写真の説明文を入力する手間が省けるとともに、必要な写真の整理漏れを防止できる。
【0113】
以下、写真整理支援手段37の詳細について説明する。図19は、写真整理画面130の一例である。写真整理画面130は、写真台紙領域131、画像フォルダ表示ボタン141、登録ボタン142、閉じるボタン143等によって構成される。写真台紙領域131は、左半分に3個の小領域132a~132c、右半分に3個の小領域132d~132fの合計6個の小領域132a~132fを含み、左上部と右上部にはページ移動ボタン139、140が配置されている。以下、小領域132a~132fを総称する場合は「小領域132」と表記する。各小領域132は、画像表示領域133、画像貼り付け領域134、説明文領域135、クリアボタン136、削除ボタン137、挿入ボタン138を含む。
【0114】
端末2は、入力部14を介して調査者から写真台紙作成の指示を受け付けると、サーバ3に調査場所情報取得要求を送信する。サーバ3は、詳細表テーブル44から調査場所情報(=場所44d、No.44e、部屋(箇所)名44f)を取得し、端末2に送信する。端末2は、サーバ3から受信する調査場所情報に基づいて、必要な数の小領域データを作成し、小領域データごとに説明文領域135に表示する説明文データを作成する。この説明文データを作成するために、端末2は、予め部屋(箇所)ごとの写真枚数と、所定の説明文作成条件を記憶しておく。例えば、図19に示す例では、部屋(箇所)ごとの写真枚数を3枚としている。端末2は、「部屋(箇所)の総数×3」の数の小領域データを作成し、各小領域データの説明文について、1行目のテキストデータを、場所44d、No.44e、部屋(箇所)名44fの情報から合成し、2行目のテキストデータを、建物の内部の部屋であれば「内観」と(1)、(2)、(3)のいずれかを合成し、建物の外部の箇所であれば「外観」と(1)、(2)、(3)のいずれかを合成する。例えば、図19に示す左上の小領域132aの説明文領域135には、1行目に「調査場所:1F No.1 玄関」、2行目に「内観(1)」が表示されている。
【0115】
また、端末2は、部屋(箇所)ごとの現況の写真と同様、建材分析のための試料を採取した写真についても、必要な数の小領域データを作成し、所定の説明文作成条件に従って、小領域データごとに説明文領域135に表示する説明文データを作成する。端末2は、サーバ3に試料採取場所情報取得要求を送信する。サーバ3は、詳細表テーブル44から試料番号44sがあるデータを抽出し、試料採取場所情報(=場所44d、No.44e、部屋(箇所)名44f、既存材料名44q、試料番号44s、採取番号44t)を取得し、端末2に送信する。端末2は、「試料数(=試料番号44sの最大値)×試料ごとの採取数(=3)×所定の写真枚数(例えば3枚)」の数の小領域データを作成し、各小領域データの説明文について、1行目のテキストデータを、場所44d、No.44e、部屋(箇所)名44fの情報から合成し、2行目のテキストデータを、既存材料名、試料番号及び採取番号の情報から合成する。尚、層別分析を行う材料については、仕上材と下地材を1セットとして小領域データを作成する。例えば、図14に示す試料採取一覧表ファイル100の試料番号101hが「4」の例であれば、端末2は、1、2行目のテキストデータを「採取場所:1F No.2 ホール」+「ビニル床シート/ビニル床シート接着剤 試料番号4 採取番号(1)」、「採取場所:1F No.2 ホール」+「ビニル床シート/ビニル床シート接着剤 試料番号4 採取番号(2)」及び「採取場所:2F No.5 廊下」+「ビニル床シート/ビニル床シート接着剤 試料番号4 採取番号(3)」とする3個の小領域データを作成する。
【0116】
端末2は、画像フォルダ表示ボタン141が押下されると、画像が保存されている画像フォルダ(非表示)を表示する。調査者は、所望の小領域132の画像貼り付け領域134に、画像フォルダから所望の画像をドラッグ&ドロップする。端末2は、ドラック&ドロップされた画像を小領域データに紐付けるとともに、サムネイル画像を画像表示領域133に表示する。調査者は、画像を貼り直したい場合、クリアボタン136を押下する。端末2は、クリアボタン136が押下されると、小領域データと画像の紐付けを解除するとともに、画像表示領域133におけるサムネイル画像の表示を解除する。
【0117】
部屋(箇所)ごとの写真枚数は任意なので、部屋(箇所)ごとの小領域132の削除や挿入も可能とする。調査者は、部屋(箇所)ごとの小領域132を削除したい場合、削除ボタン137を押下する。端末2は、削除ボタン137が押下されると、その小領域132の表示を解除するとともに、その小領域132に係る小領域データを削除する。また、調査者は、部屋(箇所)ごとの小領域132を追加したい場合、挿入ボタン138を押下する。端末2は、挿入ボタン138が押下されると、その小領域132に係る説明文データを複製して新たな小領域データを作成し、新たな小領域132を挿入して写真台紙領域131に表示する。
【0118】
端末2は、登録ボタン142が押下されると、写真台紙領域131のデータをサーバ3に送信する。サーバ3は、端末2から受信するデータを写真台紙22lのデータとして記憶する。
【0119】
<報告書出力手段38>
報告書出力手段38は、石綿調査に関する各種データに基づいて報告書の印刷データを生成し、印刷装置5に送信する。
【0120】
以下、報告書出力手段38の詳細について説明する。図20は、報告書印刷画面150の一例である。報告書印刷画面150は、報告書番号表示領域151a、依頼者名表示領域151b、委託名表示領域151c、プリンタ選択領域151d、発行日入力領域151e、部数入力領域151f、印刷リスト表示領域152、印刷対象選択領域153、一括選択ボタン154、一括解除ボタン155、実行ボタン156、キャンセルボタン157等から構成される。
【0121】
ここで、印刷リスト表示領域152に表示されている書類を説明する。調査概要の書類は、「表紙/目次」、「調査物件一覧及び調査条件」、調査者の資格を示す「資格証(写し)」等である。各建物の結果報告書の書類は、「中表紙」、「調査結果/分析結果まとめ」、「所見」、石綿が含有していると判定した材料(建材)の所在場所の一覧を示す「石綿含有建材所在一覧表」等である。各建物の調査詳細表の書類は、「中表紙」、詳細表画面60に表示されるデータを示す「アスベスト調査詳細表」等である。各建物の図面の書類は、「中表紙」、ナンバリングした平面図、立面図等で必要に応じ石綿材料の所在を表現した「調査図面」等である。各建物の写真の書類は、「中表紙」、写真整理画面130で整理した写真台紙を示す「調査写真集」等である。添付資料の書類は、「中表紙」、添付資料の一覧であって、添付資料番号順に整列され、どの材料に利用されたかを示す「添付資料集」等である。
【0122】
端末2は、印刷リスト表示領域152のいずれか1つの行がクリックされると、その行の印刷対象選択領域153を「〇」にする。また、端末2は、一括選択ボタン154が押下されると、全ての書類について印刷対象選択領域153を「〇」にする。また、端末2は、一括解除ボタン155が押下されると、全ての書類について印刷対象選択領域153の「〇」を解除する。また、端末2は、実行ボタン156が押下されると、印刷対象選択領域153が「〇」になっている書類の印刷データを印刷装置5に送信する。印刷装置5は、端末2から受信する印刷データを印刷する。
【0123】
以上の通り、石綿調査支援システム1によれば、調査者の知識や判断力に依存せずに、適切かつ経済合理性が高い判断を支援できる。また、石綿調査支援システム1によれば、膨大な資料を効率良く整理することを支援でき、調査者の負担を大幅に削減できる。
【0124】
以上、添付図面を参照しながら、本発明に係る石綿調査支援システム等の好適な実施形態について説明したが、本発明はかかる例に限定されない。当業者であれば、本願で開示した技術的思想の範疇内において、各種の変更例又は修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【符号の説明】
【0125】
1………石綿調査支援システム
2………端末
3………サーバ
4………ネットワーク
5………印刷装置
31………根拠資料マスタ登録手段
32………書面調査支援手段
33………目視調査支援手段
34………分析判定支援手段
35………建材分析支援手段
36………結果判定支援手段
37………写真整理支援手段
38………報告書出力手段
41………根拠資料マスタテーブル
42………書面調査判定表テーブル
43………結果判定表テーブル
44………詳細表テーブル
45………分析判定チェック表テーブル
50………根拠資料マスタ登録画面
60………詳細表画面
70………仕上表ファイル
80………書面調査判定画面
90………分析判定チェック画面
100………試料採取一覧表ファイル
110………ラベル印刷データ
120………結果判定画面
130………写真整理画面
150………報告書印刷画面
図1
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