(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024178873
(43)【公開日】2024-12-25
(54)【発明の名称】走査型プローブ顕微鏡システム及びその製造法
(51)【国際特許分類】
G01Q 60/42 20100101AFI20241218BHJP
G01Q 70/14 20100101ALI20241218BHJP
【FI】
G01Q60/42
G01Q70/14
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023097355
(22)【出願日】2023-06-13
(71)【出願人】
【識別番号】723006134
【氏名又は名称】銭 周敏英
(72)【発明者】
【氏名】銭 京華
(57)【要約】
【課題】物質の原子レベルの空間分解能で化学結合の種類を識別する装置を提供すること。
【解決手段】検出対象に対して、接触あるいは非接触で配置される少なくとも一つのプローブを有する検出部と、前記検出部を制御する制御部と、を備え、前記プローブは電磁波を電気信号に変化する機能を備え、前記プローブは前記制御部により制御され、前記対象物近傍の電磁波を捕捉して電気信号に変換することにより、前記対象物における化学結合を高精度に識別可能な走査型プローブ顕微鏡装置を提供する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
走査型プローブ顕微鏡装置であって、検出対象物に対して、接触あるいは非接触で配置される少なくとも一つのプローブを有する検出部と、前記検出部を制御する制御部と、光源部と、信号検出部を備え、前記プローブは電磁波信号を電気信号に変換する機能を備え、前記プローブは前記制御部により制御され、光源部より照射された電磁波信号を前記検出対象物近傍の変化した電磁波を捕捉して電気信号に変換し、前記信号検出部に転送することにより、前記検出対象物を識別可能なことを特徴とする。
【請求項2】
請求項1の検出対象物近傍の電磁波信号が光源部より照射された電磁波の二次を含む二次以上の高次高調波であることを特徴とする。
【請求項3】
請求項1の走査型プローブ顕微鏡において、前記電磁波を電気信号に変化する機能を備えたプローブは、少なくとも先端部は外側から、導電体層と、光電変換体層と、導電体層とを含んで構成される。
【請求項4】
請求項3の光電変換体層がシリコン(Si)、ゲルマニウム(Ge)から選ばれる少なくとも1種のP型層とシリコン(Si)、ゲルマニウム(Ge)から選ばれる少なくとも1種のN型層のPN接合から構成されることが望ましい。
【請求項5】
請求項3の光電変換体層がセレン化銅インジウム[CuInSe2]、セレン化銅インジウムガリウム[Cu(InGa)Se2]から選ばれる少なくとも1種のP型層と硫化カドミウム(CdS)、硫化亜鉛(ZnS)、酸化亜鉛(ZnO)から選ばれる少なくとも1種のN型層のPN接合から構成されることが望ましい.
【請求項6】
請求項1の走査型プローブ顕微鏡において、前記電磁波を電気信号に変化する機能を備えたプローブは、少なくとも先端部は外側から、導電層と、焦電体層と、導電層とを含んで構成される。
【請求項7】
請求項6の焦電体層がチタン酸ジルコン酸鉛(PZT)、チタン酸鉛(PbTiO3)、チタン酸バリウム(BaTiO3)、L-アラニンドープ重水素化硫酸三グリシン(DLaTGS)から選ばれる少なくとも1種の層から構成されることが望ましい.
【請求項8】
請求項1の走査型プローブ顕微鏡において、前記電磁波を電気信号に変化する機能を備えたプローブは、少なくとも先端部は外側から、導電層と、光伝導体層と、導電層とを含んで構成される。
【請求項9】
請求項8の光伝導体層が硫化カドミウム(CdS)、セレン化カドミウム(CdSe)、硫化亜鉛(ZnS)、酸化亜鉛(ZnO)、硫化鉛(PbS)、カドミウム水銀テルル(CdHgTe)、セレン(Se)、リチウムドープゲルマニウムから選ばれる少なくとも1種の層から構成されることが望ましい。
【請求項10】
請求項8の走査型プローブ顕微鏡において、前記電磁波を電気信号に変化する機能を備えたプローブは、前記光伝導体層が量子井戸型構造を含んで構成される。
【請求項11】
請求項8の走査型プローブ顕微鏡において、前記電磁波を電気信号に変化する機能を備えたプローブは、前記光伝導体層が量子ドット型構造を含んで構成される。
【請求項12】
請求項8の走査型プローブ顕微鏡において、前記電磁波を電気信号に変化する機能を備えたプローブは、前記光伝導体層がタイプ二超格子型構造を含んで構成される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、走査型プローブ顕微鏡システムに用いられるプローブ及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
走査型プローブ顕微鏡は原子レベルの分解能を有するため、分析分野において強力な解析手段として広く用いられている。例えば、走査型トンネル顕微鏡、原子間力顕微鏡は原子像、結晶格子像の観察に広く用いられている。また、走査型近接場顕微鏡は光の回折限界を超えて、分子のスペクトルを測定することにより、分子種のマッピングをすることができる。走査型近接場顕微鏡の空間分解能は数ナノメーターを達成している。しかし、分子の化学結合の長さは1ナノメーターよりも短いため、特許文献1、特許文献2、非特許文献1、非特許文献2の技術をもってしても個々の化学結合の走査型近接場顕微鏡像を得ることはまだ不可能である。その理由は現在の走査型近接場顕微鏡の測定の原理が光の反射あるいは散乱を用い、外部に反射あるいは散乱光の検出器を設けているため、光の検出ダイナミックレンジが狭いことにある。光の検出器を走査プローブから離れた場所に設置している従来の走査型プローブ顕微鏡に課題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】WO2014―033844 A1号公報,走査プローブ顕微鏡およびそれを用いた計測方法
【特許文献2】特許第6949673号公報,近接場走査プローブ顕微鏡、走査プローブ顕微鏡用プローブおよび試料観察方法
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】Nano Letters(米), 2022年, 22巻, 4号, P1525-1533,Vibrational Properties in Highly Strained Hexagonal Boron Nitride Bubbles,
【非特許文献2】Nature Communications(米),2022年,13巻, 論文番号:2586,On-chip nanophotonic topological rainbow
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1、特許文献2,非特許文献1,非特許文献2をもってしても、分子を構成する原子と原子の間の化学結合を化学結合一つのオーダーで精度よく識別することはできなかった。
【0006】
本発明は上記を鑑みてなされたものであり、その目的は、検出対象における化学結合を高精度に識別可能な走査型プローブ顕微鏡装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1) 本発明は、検出対象における化学結合を高精度に識別可能な走査型プローブ顕微鏡装置であって、前記検出対象に対して、接触あるいは非接触で配置される少なくとも一つのプローブを有する検出部と、前記検出部を制御する制御部と、を備え、前記プローブは電磁波を電気信号に変化する機能を備え、前記プローブは前記制御部により制御され、前記対象物近傍の電磁波を捕捉して電気信号に変換することにより、前記対象物における化学結合を高精度に識別可能な走査型プローブ顕微鏡装置を提供する。
【0008】
(2)(1)の検出対象物近傍の電磁波信号が光源部より照射された電磁波の二次を含む二次以上の高次高調波であることを特徴とする。
【0009】
(3)(1)の走査型プローブ顕微鏡において、前記電磁波を電気信号に変化する機能を備えたプローブは、少なくとも先端部は外側から、導電体層と、光電変換体層と、導電体層とを含んで構成される。
【0010】
(4) (3)の光電変換体層がシリコン、ゲルマニウムから選ばれた少なくとも1種のP型層とシリコン、ゲルマニウムから選ばれた少なくとも1種のN型層のPN接合から構成されることが望ましい.
【0011】
(5) (3)の光電変換体層がセレン化銅インジウム[CuInSe2]、セレン化銅インジウムガリウム[Cu(InGa)Se2]から選ばれる少なくとも1種のP型層と硫化カドミウム(CdS)、硫化亜鉛(ZnS)、酸化亜鉛(ZnO)から選ばれる少なくとも1種のN型層のPN接合から構成されることが望ましい.
【0012】
(1)
(2)
(3)
(4)
(5)
(6)(1)の走査型プローブ顕微鏡において、前記電磁波を電気信号に変化する機能を備えたプローブは、少なくとも先端部は外側から、導電層と、焦電体層と、導電層とを含んで構成される。
【0013】
(6)
(7)
(8)
(9)
(10)
(7)(6)の焦電体層がチタン酸ジルコン酸鉛(PZT)、チタン酸鉛(PbTiO3)、チタン酸バリウム(BaTiO3)、L-アラニンドープ重水素化硫酸三グリシン(DLaTGS)から選ばれる少なくとも1種の層から構成されることが望ましい。
【0014】
(8)(1)の走査型プローブ顕微鏡において、前記電磁波を電気信号に変化する機能を備えたプローブは、少なくとも先端部は外側から、導電層と、光伝導体層と、導電層とを含んで構成される。
【0015】
(9)(8)の光伝導体層が硫化カドミウム(CdS)、セレン化カドミウム(CdSe)、硫化亜鉛(ZnS)、酸化亜鉛(ZnO)、硫化鉛(PbS)、カドミウム水銀テルル(CdHgTe)、セレン(Se)から選ばれる少なくとも1種の層から構成されることが望ましい。
【0016】
(10)(8)の走査型プローブ顕微鏡において、前記電磁波を電気信号に変化する機能を備えたプローブは、前記光伝導体層が量子井戸型構造を含んで構成される。
【0017】
(11)(8)の走査型プローブ顕微鏡において、前記電磁波を電気信号に変化する機能を備えたプローブは、前記光伝導体層が量子ドット型構造を含んで構成される。
【0018】
(12)(8)の走査型プローブ顕微鏡において、前記電磁波を電気信号に変化する機能を備えたプローブは、前記光伝導体層がタイプ二超格子型構造を含んで構成される。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、検出対象の形状、電磁波の吸収、電磁波の放出の少なくとも一つの情報を精度良く検出可能な検出装置を提供できる。
【0020】
また、公知の走査型プローブ顕微鏡では、プローブと試料間に流れる電流や原子間力を測定することにより試料表面を観察するものであったが、本発明の電磁波検出装置によれば、検出対象の形状、電磁波の吸収、電磁波の放出現象の少なくとも一つを高い精度で検出できる。
【0021】
また、本発明によれば、プローブの位置を制御しながら測定すれば、電磁波の散乱を利用する必要がないため、検出対象の微小領域の形状、電磁波の吸収、電磁波の放出の少なくとも一つの挙動を精度良く検出可能である。したがって、分子の結合を結合ごとに区別することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本発明の一実施形態に係る走査型プローブ顕微鏡装置の構成を示す図である。
【0023】
【
図2】本発明の一実施形態に係る走査型プローブ顕微鏡装置用プローブの構成を示す図であり、先端部が外側から、導電体層と、光電変換体層と、導電体層とを含んで構成される構造を示す図である。
【0024】
【
図3】本発明の一実施形態に係る走査型プローブ顕微鏡装置用プローブの構成を示す図であり、先端部が外側から、導電層と、焦電体層と、導電層とを含んで構成される構造を示す図である。
【0025】
【
図4】本発明の一実施形態に係る走査型プローブ顕微鏡装置用プローブの構成を示す図であり、先端部が外側から、導電層と、光伝導体層と、導電層とを含んで構成される構造を示す図である。
【0026】
【
図5】本発明の一実施形態に係る走査型プローブ顕微鏡装置用プローブの構成を示す図であり、先端部が外側から、導電層と、光伝導体層と、導電層とを含んで構成され,前記光伝導体層が量子井戸型構造を含んで構成される構造を示す図である。
【0027】
【
図6】本発明の一実施形態に係る走査型プローブ顕微鏡装置用プローブの構成を示す図であり、先端部が外側から、導電層と、光伝導体層と、導電層とを含んで構成され,前記光伝導体層が量子ドット型構造を含んで構成される構造を示す図である。
【0028】
【
図7】本発明の一実施形態に係る走査型プローブ顕微鏡装置用プローブの構成を示す図であり、先端部が外側から、導電層と、光伝導体層と、導電層とを含んで構成され,前記光伝導体層がタイプ二超格子型構造を含んで構成される構造を示す図である。
【0029】
【
図8】本発明の一実施形態に係る走査型プローブ顕微鏡装置の構成を示す図であり、少なくともプローブ100と、試料保持部500と、検出対象600をチャンバーに収納し、温度、雰囲気、真空度の内の少なくとも一つを制御できるようにするための構造を示す図である。
【0030】
【
図9】本発明の一実施形態に係る走査型プローブ顕微鏡装置の構成を示す図であり、電磁波照射を試料保持部の裏側から実施するための構造を示す図である。
【0031】
【
図10】本発明の一実施形態に係る走査型プローブ顕微鏡装置の構成を示す図であり、試料保持部の表面に金属ナノ粒子の薄膜を設置する構造を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、本発明の一実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0033】
[走査型プローブ顕微鏡]
図1は、本発明の一実施形態に係る走査型プローブ顕微鏡の構成を示す図であり、プローブ100は検出対象600と接触している、あるいは接触していない状態のいずれかでも良い。装置は少なくとも検出用のプローブ100、照射用光源200、プローブの位置を制御する制御部300、プローブが電磁波を電気信号に変換した電気信号を検出する検出部400、検出対象を保持する試料保持部500、および検出対象600から構成される。本発明の一つの実施形態は、光源200から電磁波がプローブ100と試料保持部500の間に照射され、プローブ100と試料保持部500の間にエバネッセント波が形成される。プローブ100の先端が形成されたエバネッセント波を電気信号に変換し、検出部400が電気信号を検出する。エバネッセント波の中に配置された検出対象600が特定の波長の電磁波を吸収し、エバネッセント波の強度が弱くなり、プローブが受信するエバネッセント波が弱くなるため、検出部400で検出する電気信号も弱くなる。電磁波の波長を掃引することにより、検出対象の電磁波吸収スペクトルが化学結合1本レベルで検出できる。
【0034】
プローブ100が変換する電磁波は、照射用光源200から照射される電磁波の2次以上の高調波であることでも良い。エバネッセント波は輝度が高いため、2次以上の高調波が励起されやすい。本発明によれば、プローブが入射波の2次以上の高調波を電気信号に変換するため、入射波の影響を受けずに変換できるため、信号/ノイズ比が高い特徴を持つ。
【0035】
本発明のもう一つの形態は、
図1の中でプローブ100と試料保持部500の間にエバネッセント波が形成されるところまでは上記と同じであるが、検出対象600が特定の波長の電磁波を吸収してから、吸収した電磁波と異なる波長の電磁波を放出する。プローブ100が放出した電磁波を電気信号に変換し、検出部400が電気信号を検出する。本形態により、電磁波放出を化学結合1本レベルの検出ができる。
【0036】
検出対象600が吸収する電磁波の波長が入射波の2次以上の高調波であっても良い。
【0037】
[プローブ]
図2は本発明のプローブ100の一つの形態を説明している。プローブ100の断面を示している。プローブ100は外側から、導電層110と、光電変換体層120と、導電層130とを含んで構成される。前記光電変換体層120がプローブ近傍の電磁波を電気信号に変換し、前記検出部400に伝達する。前記光電変換体層120の構成は半導体のPN接合から構成することができる。半導体の素材は限定されるものではない。例として,シリコン(Si)、ゲルマニウム(Ge)などの単体,CuInSe2,Cu(InGa)Se2、ZnSe、GaAs、GaN、InP、InGaAlP、InGaN、CdS、ZnSe、ZnS、SiC、SiGeなどの化合物半導体が挙げられる。
【0038】
前記光電変換層120を構成する素材の中でも,シリコン(Si)、ゲルマニウム(Ge)から選ばれる少なくとも1種のP型層とシリコン(Si)、ゲルマニウム(Ge)から選ばれる少なくとも1種のN型のPN接合から構成されることが望ましい.
【0039】
中でも前記光電変換層120を構成する素材が,セレン化銅インジウム[CuInSe2]、セレン化銅インジウムガリウム[Cu(InGa)Se2]から選ばれる少なくとも1種のP型層と硫化カドミウム(CdS)、硫化亜鉛(ZnS)、酸化亜鉛(ZnO)から選ばれる少なくとも1種のN型層のPN接合から構成されることが望ましい。
【0040】
図3は本発明のプローブ100の一つの形態を説明している。プローブ100の断面を示している。プローブ100は外側から、導電層110と、焦電体層125と、導電層130とを含んで構成される。前記焦電体層125がプローブ近傍の電磁波を電気信号に変換し、前記検出部400に伝達する。前記焦電体層の素材は限定されるものではない。例として,チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)、チタン酸鉛(PbTiO
3)、チタン酸バリウム(BaTiO
3)、L-アラニンドープ重水素化硫酸三グリシン(DLaTGS)、コバルトフタロシアニン、タンタル酸リチウム、ポリフッ化ビニル、GaN、トルマリンなどが挙げられる.
【0041】
中でも前記焦電体層125を構成する材料が、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)、チタン酸鉛(PbTiO3)、チタン酸バリウム(BaTiO3)、L-アラニンドープ重水素化硫酸三グリシン(DLaTGS)から選ばれる少なくとも1種の材料から構成されることが望ましい。
【0042】
図4は本発明のプローブ100の一つの形態を説明している。プローブ100の断面を示している。プローブ100は外側から、導電層110と、光伝導体層126と、導電層130とを含んで構成される。前記光伝導体層126がプローブ近傍の電磁波を電気信号に変換し、前記検出部400に伝達する。前記光伝導体を構成する材料は限定されるものではない。例として,硫化カドミウム(CdS)、セレン化カドミウム(CdSe)、硫化亜鉛(ZnS)、酸化亜鉛(ZnO)、硫化鉛(PbS)、カドミウム水銀テルル(CdHgTe)、などの化合物,セレン(Se)、硫黄(S)、テルル(Te),リン(P)、ヒ素(As)、ホウ素(B)、ケイ素(Si)、ゲルマニウム(Ge)、錫(Sn)などの単体元素、リチウムドープゲルマニウムなどのドープ型半導体が挙げられる.
【0043】
中でも前記光伝導体層126を構成する材料が硫化カドミウム(CdS)、セレン化カドミウム(CdSe)、硫化亜鉛(ZnS)、酸化亜鉛(ZnO)、硫化鉛(PbS)、カドミウム水銀テルル(CdHgTe)、セレン(Se)、リチウムドープゲルマニウムから選ばれる少なくとも1種の材料から構成されることが望ましい。
【0044】
図5は本発明のプローブ100の一つの形態を説明している。プローブ100の断面を示している。プローブ100は外側から、導電層110と、光伝導体層と、導電層130とを含んで構成され、前記光伝導体層が量子井戸型構造127を含んで構成される。
【0045】
図6は本発明のプローブ100の一つの形態を説明している。プローブ100の断面を示している。プローブ100は外側から、導電層110と、光伝導体層と、導電層130とを含んで構成され、前記光伝導体層が量子ドット型構造128を含んで構成される。
【0046】
図7は本発明のプローブ100の一つの形態を説明している。プローブ100の断面を示している。プローブ100は外側から、導電層110と、光伝導体層と、導電層130とを含んで構成され、前記光伝導体層がタイプ二超格子型構造129を含んで構成される。
【0047】
図8は本発明の一実施形態に係る走査型プローブ顕微鏡の構成を示す図であり、温度、雰囲気、真空の少なくとも一つを制御できるチャンバー700を説明している。少なくともプローブ100と、試料保持部500と、検出対象600を前述チャンバー700に収納し、温度、雰囲気、真空度の内の少なくとも一つを制御できるようにする。本実施形態によれば、プローブの検出要件、検出対象の状態の内の少なくとも一つを最適状態に保持でき、検出感度を高めることができる。
【0048】
図9は本発明の測定例の一つの形態を示す。電磁波の照射は試料保持部500の裏側からでもよい。試料保持部の形状は特に限定されない.一般的には台形,三角柱,半円筒形,半球形などが挙げられる.本実施形態によれば、前記裏側からの照射によって入射電磁波の影響を排除することができ、検出部400がより精度よく検出することができる。
【0049】
試料保持部500の表面には,金属ナノ粒子の薄膜510を設置しても良い.
図10は前記金属ナノ粒子層の例を示す.前記金属ナノ粒子の金属組成は特に限定されない.一般的には,金,白金,銀,銅,ニッケル,マンガン,鉄,亜鉛およびそれらの合金が挙げられる.薄膜510の厚さは特に限定されない.一般的には5ナノメートル以上,1000ナノメートル以下の範囲内が望ましい.本実施形態によれば,金属ナノ粒子によってエバネッセント波がより増強され,プローブの検出精度がより高くすることができる.
【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明の走査型プローブ顕微鏡装置ならびにプローブは,高精度分析機器産業,物質の高精度分析業務に利用することができる.本発明の走査型プローブ顕微鏡装置を用いれば,化合物の種類,化合物の立体構造,化合物のキラリティを同定でき、化学工業,製薬工業,検査産業において新規な検査手法として応用できる。
【0051】
なお,本発明は上記実施形態に限定されるものではなく,本発明の目的を達成できる範囲での変形,改良は本発明に含まれる。
【符号の説明】
【0052】
10 走査型プローブ顕微鏡装置
100 プローブ
110 導電層
120 光電変換体層
125 焦電体層
126 光伝導体層
127 量子井戸型構造光伝導体層
128 量子ドット型構造光伝導体層
129 タイプ二超格子型構造光伝導体層
130 導電層
200 光源
300 制御部
400 検出部
500 試料保持部
510 金属ナノ粒子の薄膜
600 検出対象
700 チャンバー