(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024178874
(43)【公開日】2024-12-25
(54)【発明の名称】発熱体前駆体、発熱体、及び、温灸具
(51)【国際特許分類】
A61F 7/03 20060101AFI20241218BHJP
A61H 39/06 20060101ALI20241218BHJP
【FI】
A61F7/08 334C
A61H39/06 314
【審査請求】有
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023103517
(22)【出願日】2023-06-23
(62)【分割の表示】P 2023097308の分割
【原出願日】2023-06-13
(71)【出願人】
【識別番号】000112509
【氏名又は名称】フェリック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100113402
【弁理士】
【氏名又は名称】前 直美
(74)【代理人】
【識別番号】100105315
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 温
(72)【発明者】
【氏名】宮下 洋一
(72)【発明者】
【氏名】宮下 永二
【テーマコード(参考)】
4C099
4C101
【Fターム(参考)】
4C099AA01
4C099CA19
4C099EA08
4C099EA09
4C099GA02
4C099GA03
4C099GA04
4C099HA02
4C099JA04
4C099LA01
4C099LA21
4C101CA03
4C101CA16
4C101CB01
(57)【要約】
【課題】従来と同じ発熱組成物を使用しても発熱時間をより長く持続させることができる発熱体前駆体、発熱体、及び、温灸具を提供する。
【解決手段】液体成分が存在する状況下にて空気中の酸素と反応して発熱する発熱組成物を形成し得る発熱組成物前駆体100であって、該液体成分が添加される前の発熱組成物前駆体10aと、前記発熱組成物前駆体10aが収容可能な収容部24と、前記発熱組成物前駆体10を収容するための開口部25と、を有する第1の被覆部であって、非透気性包材で構成された第1の被覆部20aと、前記開口部25を平坦状に覆う第2の被覆部であって、透気性包材で構成された第2の被覆部20bと、を有する被覆体20と、を備える発熱体前駆体100。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体成分が存在する状況下にて空気中の酸素と反応して発熱する発熱組成物を形成し得る発熱組成物前駆体であって、該液体成分が添加される前の発熱組成物前駆体と;
前記発熱組成物前駆体が収容可能な収容部と、前記発熱組成物前駆体を収容するための開口部と、を有する第1の被覆部であって、非透気性包材で構成された第1の被覆部と、
前記開口部を平坦状に覆う第2の被覆部であって、透気性包材で構成された第2の被覆部と、を有する被覆体と;を備える発熱体前駆体。
【請求項2】
液体成分が存在する状況下にて空気中の酸素と反応して発熱する発熱組成物を形成し得る発熱組成物前駆体であって、該液体成分が添加される前の発熱組成物前駆体と;
発熱組成物前駆体が収容可能な凹状の収容部と、発熱組成物前駆体を収容するための開口部と、を有する第1の被覆部であって、非透気性包材で構成された第1の被覆部と、
前記開口部を平坦状に覆う第2の被覆部であって、透気性包材で構成された第2の被覆部と、を有する被覆体と;を備える発熱体前駆体。
【請求項3】
液体成分が存在する状況下にて空気中の酸素と反応して発熱する発熱組成物を形成し得る発熱組成物前駆体であって、該液体成分が添加される前の発熱組成物前駆体と;
発熱組成物前駆体を収容可能で且つ第1の深さを有する第1の収容部と、発熱組成物前駆体を収容するための開口部と、を有する第1の被覆部であって、非透気性包材で構成された第1の被覆部と、
前記開口部を覆う第2の被覆部であって、第1の深さとは異なる第2の深さを有する第2の収容部を有し、透気性包材で構成された第2の被覆部と、を有する被覆体と;を備える発熱体前駆体。
【請求項4】
液体成分が存在する状況下にて空気中の酸素と反応して発熱する発熱組成物を形成し得る発熱組成物前駆体であって、該液体成分が添加される前の発熱組成物前駆体と;
易変形性である、非透気性包材で構成された第1の被覆部と;
透気性包材で構成された第2の被覆部と;を備え、
発熱組成物前駆体が、第1の被覆部と第2の被覆部との間に、第1の被覆部が発熱組成物前駆体により変形した状態で収容されている発熱体前駆体。
【請求項5】
前記第1の被覆部は、少なくとも1つの通気孔を有する、請求項1~4のいずれか一項に記載の発熱体前駆体。
【請求項6】
前記発熱組成物前駆体は、液体成分を吸収可能な膨潤剤を含み、
前記膨潤剤は、前記液体成分を吸収したときに前記収容部内で膨潤可能である、請求項1~4のいずれか一項に記載の発熱体前駆体。
【請求項7】
前記収容部の容積に対する発熱組成物前駆体の体積の比が、0.2以上である、請求項1~4のいずれか一項に記載の発熱体前駆体。
【請求項8】
前記第2の被覆部が加熱対象物と向かい合ったときに、前記第2の被覆部と前記加熱対象物との間に生ずる間隙から前記開口部に空気が導入される、請求項1~4のいずれか一項に記載の発熱体前駆体。
【請求項9】
前記第2の被覆部に適用され前記開口部の一部と重畳する粘着体を、更に備える、請求項1~4のいずれか一項に記載の発熱体前駆体。
【請求項10】
請求項1~4のいずれか一項記載の発熱体前駆体の収容部内に、前記第2の被覆部を介して前記液体成分が導入された発熱体。
【請求項11】
前記発熱組成物前駆体が、成形された固形形態であり、
前記液体成分が前記収容部に導入されることで、前記固体形態にある前記発熱組成物前駆体が、亀裂が生じた形態にある前記発熱組成物となる、請求項10に記載の発熱体。
【請求項12】
発熱温度が40℃以上である時間が、20分超である、請求項10に記載の発熱体。
【請求項13】
前記第2の被覆部は、前記発熱組成物前駆体の膨潤により、少なくとも一部が外側に向かって膨出する、請求項10に記載の発熱体。
【請求項14】
請求項10に記載の発熱体を含む、温灸具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発熱体前駆体、発熱体、及び、温灸具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
被酸化金属粉の酸化反応を利用した発熱体は、温湿布や経絡刺激用温熱具のような医療機器において、又は、使い捨てカイロのような日用品等において、広く用いられている。
【0003】
ここで、発熱体は、酸素と反応すると発熱する発熱組成物(例えば、鉄粉、水、塩類、活性炭等を含有)を含む。そして、該発熱体の使用時においては、該発熱組成物を外気に晒すことで、外気中の酸素と発熱組成物とが接触して被酸化金属粉の酸化反応が進行する。具体的には、上記例の組成の場合、水及び塩類は、鉄粉の酸化スピードを速めるよう機能し、活性炭は、空気中の酸素を多く取り込み酸化反応を持続させるよう機能する。
【0004】
ところで、発熱体の発熱性能の劣化抑制の観点からは、発熱体使用前においては、被酸化金属の酸化反応が抑制される又は起こらないことが望ましい。これを踏まえ、発熱組成物前駆体(鉄粉、塩類、活性炭及び保水材等の、発熱組成物の非水溶性成分を含む混合物)を錠剤(タブレット)型に成形し、包材で構成される容器に充填した後に、注射器で水を注入する製造方法(特許文献1)や透水性包材を通して水を注入する製造方法(特許文献2)が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】WO2016/063815号公報
【特許文献2】WO2022/034827号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、発熱時間をより長く持続させることができる発熱体及びその前駆体を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明(1)は、
液体成分が存在する状況下にて空気中の酸素と反応して発熱する発熱組成物を形成し得る発熱組成物前駆体であって、該液体成分が添加される前の発熱組成物前駆体と;
発熱組成物前駆体が収容可能な収容部と、発熱組成物前駆体を収容するための開口部と、を有する第1の被覆部であって、非透気性包材で構成された第1の被覆部と、
前記開口部を平坦状に覆う第2の被覆部であって、透気性包材で構成された第2の被覆部と、を有する被覆体と;を備える発熱体前駆体である。
【0008】
本発明(2)は、
液体成分が存在する状況下にて空気中の酸素と反応して発熱する発熱組成物を形成し得る発熱組成物前駆体であって、該液体成分が添加される前の発熱組成物前駆体と;
発熱組成物前駆体が収容可能な凹状(又は凸状)の収容部と、発熱組成物前駆体を収容するための開口部と、を有する第1の被覆部であって、非透気性包材で構成された第1の被覆部と、
前記開口部を平坦状に覆う第2の被覆部であって、透気性包材で構成された第2の被覆部と、を有する被覆体と;を備える発熱体前駆体である。ここで、収容部は、開口部から視認した場合(収容部の内側を視認した場合)には、凹状の形状を有する。また、収容部は、上面から視認した場合(収容部の外側を視認した場合)には、凸状の形状を有する。収容部は、発熱組成物前駆体を収容できる空間を有する。
【0009】
本発明(3)は、
液体成分が存在する状況下にて空気中の酸素と反応して発熱する発熱組成物を形成し得る発熱組成物前駆体であって、該液体成分が添加される前の発熱組成物前駆体と;
発熱組成物前駆体を収容可能で且つ第1の深さを有する第1の収容部(後述する収容部24)と、発熱組成物前駆体を収容するための開口部と、を有する第1の被覆部であって、非透気性包材で構成された第1の被覆部と、
前記開口部を覆う第2の被覆部であって、第1の深さとは異なる第2の深さを有する第2の収容部(後述する開口部25の面を基準とした深さ)を有し、透気性包材で構成された第2の被覆部と、を有する被覆体と;を備える発熱体前駆体である。第1の被覆部は、第1の収容部(収容部24)を有する。第1の収容部は、第1の深さを有する。第2の被覆部は、第2の収容部を有する。第2の収容部は、第2の深さを有する。第1の深さと第2の深さとは異なる。ここで、使用時には第2の被覆部側が被着体への適用部となることから、第1の深さが第2の深さよりも大きい(第1の深さ>第2の深さ)ことが好適である。また、第1の深さ>第2の深さの関係にあればよいので、第2の深さは0でもよい。
【0010】
本発明(4)は、
液体成分が存在する状況下にて空気中の酸素と反応して発熱する発熱組成物を形成し得る発熱組成物前駆体であって、該液体成分が添加される前の発熱組成物前駆体と;
易変形性である、非透気性包材で構成された第1の被覆部と;
透気性包材で構成された第2の被覆部と;を備え、
発熱組成物前駆体が、第1の被覆部と第2の被覆部との間に、第1の被覆部が発熱組成物前駆体により変形した状態で収容されている発熱体前駆体である。ここで、「易変形性」とは、第1の被覆部の面に発熱組成物前駆体を押し付けたとき、押し付けられた該面が(押し付けられていない面を基準として)押し付けられた方向に変形し得る程度の変形性をいう。該第1の被覆部の素材として、例えば、伸性(伸びるだけ)や伸縮性のエラストマーフィルムを挙げることができる。
【0011】
本発明(5)は、
第1の被覆部は、少なくとも1つの通気孔を有する、本発明(1)~(4)のいずれか一つの発熱体前駆体である。
【0012】
本発明(6)は、
発熱組成物前駆体は、液体成分を吸収可能な膨潤剤を含み、
前記膨潤剤は、前記液体成分を吸収したときに前記収容部内で膨潤可能である、本発明(1)~(5)のいずれか一つの発熱体前駆体である。
【0013】
本発明(7)は、
前記収容部の容積に対する発熱組成物前駆体の体積の比が、0.2以上である、本発明(1)~(6)のいずれか一つの発熱体前駆体である。
【0014】
本発明(8)は、
前記第2の被覆部が加熱対象物と向かい合ったときに、前記第2の被覆部と前記加熱対象物との間に生ずる間隙から前記開口部に空気が導入される、本発明(1)~(7)のいずれか一つの発熱体前駆体である。
【0015】
本発明(9)は、
前記第2の被覆部に適用され前記開口部の一部と重畳する粘着体を、更に備える、本発明(1)~(8)のいずれか一つの発熱体前駆体である。
【0016】
本発明(10)は、
発明(1)~(9)のいずれか一つの発熱体前駆体の収容部内に、前記第2の被覆部を介して液体成分が導入された、発熱体である。
【0017】
本発明(11)は、
発熱組成物前駆体が、成形された固形形態であり、
前記液体成分が前記収容部に導入されることで、前記固体形態にある前記発熱組成物前駆体が、亀裂が生じた形態にある前記発熱組成物となる、本発明(10)の発熱体である。
【0018】
本発明(12)は、
発熱温度が40℃以上である時間(40℃になった後に、次に40℃となるまでの時間)が、20分超(より好適には、30分以上、40分以上、50分以上、60分以上、70分以上、上限は特に限定されず、例えば、200分以下)である、本発明(10)~(11)のいずれか一つの発熱体である。また、最高温度は、特に限定されず、例えば、70℃以下、65℃以下、60℃以下、55℃以下である。
【0019】
本発明(13)は、
第2の被覆部は、発熱組成物前駆体の膨潤により、少なくとも一部が外側に向かって膨出する、本発明(10)~(12)のいずれか一つの発熱体である。
【0020】
本発明(14)は、本発明(10)~(13)のいずれか一つを含む、温灸具である。
【発明の効果】
【0021】
まず、本発明に係る発熱体は、発熱組成物を収納する被覆体の包材に関し、第1の被覆部が非透気性包材で構成されている一方で第2の被覆部が透気性包材で構成されている。したがって、使用時には、第2の被覆部を通じ、内部の発熱組成物に酸素供給されることになる。この際、第2の被覆部側を加熱対象物に適用した場合、本発明の構成によれば、第2の被覆部/加熱対象物の間の隙間が小さいか殆ど無くなる。そのため、酸素が少量ずつ発熱組成物に供給され続ける結果、長期間に亘り発熱反応が持続することになる。更に、発熱組成物の発熱により、発熱組成物内の液体成分が蒸発するところ、第1の被覆部が非透気性包材により構成されているため、該液体成分の外部への蒸発が抑制でき、蒸発により奪われる気化熱を内部に留めることができることに加え、反応に必要な十分量の液体成分を被覆体内に保持できる。以上のことから、本発明に係る発熱体は、発熱時間をより長く持続させることができる、という効果を奏する。
【0022】
また、本発明に係る発熱体前駆体は、前述のような効果を奏する発熱体を得るための中間製品として有用である、という効果を奏する。更に、本発明に係る発熱体前駆体は、液体成分を実質的に含まないため、酸化反応が実質的に進行せず、密閉しなくてもこの状態で長期間保存可能である、という効果も奏する。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】
図1は、本実施形態に係る発熱体前駆体/発熱体の一例を示す斜視図である。
【
図2】
図2は、本実施形態に係る発熱体前駆体の
図1における矢印A-A断面を模式的に示す断面図である。
【
図3】
図3は、本実施形態に係る発熱体前駆体の
図1における矢印A-A断面を模式的に示す断面図である(但し、
図2の発熱組成物前駆体とは形状が異なるものの例)。
【
図4】
図4は、本実施形態に係る発熱体の
図1における矢印A-A断面を模式的に示す断面図である。
【
図5】
図5は、
図4における本実施形態に係る発熱体において、第2の被覆部を剥がして、下面(貼付面)側から見たときの状態を模式的に示す平面図である。
【
図6】
図6は、本実施形態に係る発熱体前駆体において、第1の被覆部に通気孔が形成された例を模式的に示す断面図である。
【
図7】
図7は、本実施形態に係る発熱体に塗布される粘着体の種々のパターンを例示する図である。斜線部分は粘着体が存在する部分、白抜きの部分は粘着体が形成されていない部分を示す。点線は開口部の周縁部との境界を示す。点線で囲った内側が開口部、外側が周縁部である。
【
図8】
図8は、本実施形態に係る発熱体の製造方法の流れを示す図である。
【
図9】
図9は、実施例1及び比較例1~2に係る発熱体の発熱パターンを示す図である。
【
図10】
図10は、実施例2及び比較例1~2に係る発熱体の発熱パターンを示す図である。
【
図11】
図11は、実施例3及び比較例1~2に係る発熱体の発熱パターンを示す図である。
【
図12】
図12は、実施例4及び比較例1~2に係る発熱体の発熱パターンを示す図である。
【
図13】
図13は、実施例5及び比較例1~2に係る発熱体の発熱パターンを示す図である。
【
図14】
図14は、実施例6及び比較例1~2に係る発熱体の発熱パターンを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の一実施形態に係る「発熱体前駆体」及び「発熱体」を詳述する。ここで、概略、「発熱体」は、発熱組成物が被覆体(以下で詳述)に収納されたもの(更に、外袋で包装されたものも含む)であり、「発熱体前駆体」は、前記発熱組成物に液体成分が導入される前の状態のもの(発熱組成物前駆体)が被覆体(以下で詳述)に収納されたものである。
【0025】
以下、「発熱体前駆体」及び「発熱体」を詳述する。ここで、本形態に係る「発熱体前駆体」又は「発熱体」は、身体、衣類、又は温熱を与えるべき他の対象物(加熱対象物)に適用される面(以下、便宜上「下面」又は「貼付面」ともいう)と、少なくとも1つのそれと反対側の面(以下、便宜上「上面」ともいう)とを有する。尚、説明を簡便にするために、本明細書において、身体、衣類、その他温熱を与えるべき他の対象物(加熱対象物)を、「身体」又は「身体等」ということがある。但し、本発明に係る発熱体前駆体、発熱体、又は、温灸具を適用する対象が身体に限定されるものではない。
【0026】
以下、本形態の「発熱体前駆体」及び「発熱体」の形状等、製造方法、用途等について具体的に整理して説明する。
【0027】
≪1.形状・構造・大きさ・厚み≫
<1-1.形状>
本形態に係る発熱体前駆体/発熱体の全体形状は、第1の被覆部(上面)の開口部が第2の被覆部(下面)に平坦状に覆われていることが好適である以外、特に限定されない。ここで、本明細書及び本特許請求の範囲における「平坦状」とは、完全に平坦である場合のみならず外側に向かって(第1の被覆部とは反対側に向かって)多少膨出している略平坦(第2の被覆部が収容部を有しているともいえる)であるものをも含む、ここで、「略平坦」とは、第1の被覆部の収容部高さに対して、例えば、100%以内、75%以内、50%以内、40%以内、30%以内で膨出(例えば
図4参照)していることをいう。ここで、「収容部高さ」とは、
図2のように高さが一定であれば図中の「h」、図示しないが高さが一定でない場合には平均高さ(ここで、「平均高さ」は、「第1の被覆部の収容部」の容積を「第1の被覆部の開口部」の面積で除した値である)をいう。ここで、発熱体前駆体の第2の被覆部は、完全に平坦であることが好適である。このように構成することで、発熱体前駆体の第2の被覆部を介して内部に液体成分を導入する際、該第2の被覆部が平坦であるため、液体成分を面(第2の被覆部)に対して均一に導入させることが可能となる(この結果、発熱体前駆体に対して略均一に液体成分が導入可能)。他方、発熱体の第2の被覆部は、多少膨出している略平坦状であることが好適である。このように構成することで、特に、加熱対象物が柔軟体(例えば、肌)である場合、第2の被覆部の膨出部分が柔軟体にめり込んで当接するため、第2の被覆部/加熱対象物の間の隙間をより低減させることができる。更に、加熱対象物とより密着した状態となるので、発熱が逃げにくくなる。以上のことから、発熱時間をより引き延ばすことが可能となる。
【0028】
因みに、温灸具という用途を考慮した場合には、
図1(本形態に係る発熱体前駆体/発熱体の一例を示す斜視図)に示すように、本形態に係る発熱体前駆体/発熱体は、凸状の立体形状であることが好適である(お灸形状)。尚、本形態に係る発熱体前駆体/発熱体の上面又は下面から見たときの形状は、特に限定されず、例えば、略円形状、楕円形状、多角形状等が挙げられる。但し、肌へ直接貼付して使用することを考慮すれば、角のない形状である略円形状、楕円形状が好適である。
【0029】
<1-2.構造>
本形態に係る発熱体前駆体/発熱体は、発熱組成物前駆体/発熱組成物;発熱組成物前駆体/発熱組成物が収容可能な収容部と、発熱組成物前駆体を収容するための開口部と、を有する第1の被覆部と、該開口部を平坦状に覆う第2の被覆部と、を有する被覆体;及び、好適には、第2の被覆部に適用され該開口部の一部と重畳する粘着体;を有する。尚、本形態に係る発熱体前駆体/発熱体は、これら要素の他、例えば、粘着体の表面を被覆するための剥離部(例えば、剥離紙)等、必要に応じて他の要素を有していてもよい。以下、発熱体前駆体と発熱体とに適宜分けて説明する。
【0030】
(1-2-1.全体構造:発熱体前駆体)
図2及び
図3は、本形態の一例に係る発熱体前駆体100を模式的に示す断面図である。
図2及び
図3に示すように、本形態の一例に係る発熱体前駆体100は、発熱組成物前駆体10aと、被覆体20と、粘着体30と、を備える。ここで、
図2の発熱組成物前駆体10aの形状は円柱状(底面が平面)であり、
図3の発熱組成物前駆体10aの形状は錠剤状(底面が曲面)である。
【0031】
また、
図6は、本形態に係る発熱体前駆体100において、第1の被覆部20aに通気孔40が形成された例を模式的に示す断面図である(
図2に係る発熱体前駆体の変更例)。
図6に示すように、第1の被覆部20aは、通気孔40を少なくとも1つ有する。通気孔40が形成されていると、発熱体前駆体100に液体成分を導入した際に、収容部24内の空気が外部へ導出しやすくなる(内部空気の逃げ道になる)。この結果、発熱組成物前駆体10全体に亘ってかなり均一に液体成分が導入されるので、注入した液体成分が製造ライン上で溢れることなく製造できる。加えて、第1の被覆部に少なくとも1つの通気孔を有する場合、第1の被覆部の通気孔から液体成分を導入してもよい。
【0032】
(1-2-2.全体構造:発熱体)
図4は、本形態の一例に係る発熱体200を模式的に示す断面図である。
図4に示すように、本形態の発熱体200は、発熱組成物10bと、被覆体20と、粘着体30と、を備える。
【0033】
(1-2-3.要素:発熱組成物前駆体/発熱組成物)
・発熱組成物前駆体
本形態に係る発熱組成物前駆体は、後述する組成を有する限り、構造的には限定されない。但し、本形態に係る発熱組成物前駆体は、成形体であることが好適であり、成形体の中でも加圧成形体(例えば、打錠成形体)であることが特に好適である。成形体や加圧成形体を用いることで、成形されていない粉末状の発熱組成物前駆体を用いる場合と比較して、より多量の発熱組成物前駆体を被覆体内に導入することが可能となる。これに加え、成形体である発熱組成物前駆体を用いることで、発熱体製造時に液体成分を第2の被覆部から導入する際、成形体である発熱組成物前駆体の表面を這うように内部に導入された液体成分が広がる結果、液体成分を発熱組成物前駆体内により万遍なく導入させることが可能になる。そのため、発熱体の使用時における、発熱組成物中での反応非関与部分(液体成分が導入されていないため、酸素との反応が期待できない部分)を低減させることが可能となる結果、発熱時間をより長く持続させることができる。加えて、成形体である発熱組成物前駆体を用いた場合、エアや磁石で錠剤搬送、設置し易くなる。尚、成形体である発熱組成物前駆体の形状は、特に限定されない。例えば、成形体である発熱組成物前駆体の形状としては、円盤、錠剤型、角柱、ピラミッド型、立方体、直方体、円柱、円錐及び楕円柱、中央部に穴の開いたトローチ形状、球等を挙げることができる。
【0034】
・発熱組成物
本形態に係る発熱組成物は、発熱組成物前駆体に液体成分を導入することにより得られたものである。ここで、
図4に示すように、成形された発熱組成物前駆体10a(
図2)に液体成分を導入すると、該発熱組成物前駆体中の液体吸収成分(例えば膨潤剤)が液体成分を吸収することで、該液体吸収成分の体積が急増する。発熱組成物前駆体からの体積膨張率(発熱組成物の体積/発熱組成物前駆体の体積×100%)は、下限値としては、例えば、150%以上、175%以上、200%以上、225%以上、250%以上であり、上限値としては、例えば、500%以下、450%以下、400%以下、350%以下、300%以下である。加えて、該体積の急増の結果、
図4に示すように、成形された形状に亀裂11が生じ、形状がやや崩壊した発熱組成物となる。この点を詳述すると、液体吸収成分を含有する発熱組成物前駆体に液体成分を添加した場合、該液体旧成分の膨潤により、通常、発熱組成物前駆体は粉々になる傾向にある。他方、本形態のように、発熱組成物前駆体が被覆体内に収納されている場合、液体成分の添加による発熱組成物前駆体の膨潤が、被覆体の内壁により規制される。このため、粉々になれないことによる内部応力が原因で亀裂が生じるものと推定される。
図5は、
図3における本形態の一例に係る発熱体200において、第2の被覆部20bを剥がして、下面(貼付面)側から見たときの状態を模式的に示す平面図である。
図4及び
図5に示すように、亀裂11が発熱組成物11bに生じることで、発熱組成物10bの外部のみならず内部に至るまで空気が供給される結果、反応する発熱組成物量が実質的に増加し、発熱時間をより長く持続させることができる。
【0035】
(1-2-4.要素:被覆体)
本形態に係る被覆体は、前述のように、第1の被覆部と第2の被覆部とを有する。ここで、
図2及び
図4を参照しながら、本形態に係る被覆体を詳述する。
【0036】
・被覆体全体
図2及び
図4に示すように、本形態に係る被覆体20は、第1の被覆部20aと第2の被覆部20bとを有する。第1の被覆部20aは、身体側の面以外の面、すなわち上面21を含む。第2の被覆部20bは、身体等と向かい合うように(例えば、粘着剤30を介して)身体等に適用される。ここで、第2の被覆部20bは、身体等に適用される面、即ち下面(貼付面)22を含む。被覆体20は、外側に突出する周縁部23を有する。周縁部23で、第1の被覆部20aと第2の被覆部20bとが接合している。以下、第1の被覆部20a及び第2の被覆部20bについて説明する。
【0037】
・第1の被覆部
第1の被覆部20aは、発熱組成物前駆体10a/発熱組成物10bを収容可能な凹状(
図2を逆から眺めた場合)の収容部24を有する。第1の被覆部20aは、発熱組成物前駆体10を収容可能な開口部25を有する。第1の被覆部20aは、例えば樹脂シートを熱成形や真空成形等の方法により加工することで製造可能である。尚、第1の被覆部として、易変形性の素材を用いてもよい。ここで、「易変形性」とは、前述したように、第1の被覆部の面に発熱組成物前駆体を押し付けたとき、押し付けられた該面が(押し付けられていない面を基準として)押し付けられた方向に変形し得る程度(例えば、発熱組成物前駆体の厚みの1/3以上、1/2以上、2/3以上、1以下、押し付けられた方向に変形)の変形性をいう。このような素材を用いた場合、前述したような、熱成形や真空成形等といった、第1の被覆部を変形させた後、該変形部(即ち、収容部や開口部)内に発熱組成物前駆体を収容させるといったプロセスが不要となる。即ち、第1の被覆部の変形と発熱組成物前駆体の収納とが、第1の被覆部の面に対して発熱組成物前駆体を押し付けることを通じ、同時に実施される。その後、第1の被覆部内に発熱組成物が収納された状態で、第2の被覆部を第1の被覆部に接合させることで、発熱体前駆体を得ることができる。
【0038】
・第2の被覆部
第2の被覆部20bは、第1の被覆部20aの開口部25を平坦状に覆うようにして第1の被覆部20aに接合している。
【0039】
(1-2-5.要素:粘着体)
本形態に係る発熱体前駆体及び発熱体は、第2の被覆部の、第1の被覆部側とは反対側の面に粘着体を有することが好適である。例えば、
図2に示すように、粘着体30は、第2の被覆部20bの貼付面に適用される。粘着体30により、第2の被覆部20bが身体等と向かい合うようにして、身体等に適用される。粘着体30は、例えば、第1の被覆部20aの開口部25の一部と重畳するように第2の被覆部20bに塗布される。このため、粘着体30を塗布する位置、形状、大きさを変えることで、第1の被覆部20aが開口部25の一部と重畳する領域の面積を調整することができる。これにより、開口部25のうち第1の被覆部20aと重畳していない領域、即ち、開口部25のうち実質的に通気が可能となる領域(通気領域26)の面積も制御することができる。このように粘着剤の面積を制御することでも、発熱温度、発熱時間をコントロールすることが可能となる。また、粘着体30を設けることで、第2被覆部2bと身体等との間の間隙を安定して保持することができる。この結果、内部への空気導入量も少量にコントロールできるため、酸化反応時間をより長く持続させることが可能となる。
【0040】
図7は、本形態に係る発熱体前駆体及び発熱体200の粘着体30の種々のパターンを例示する図である。斜線部分は粘着体30が存在する部分、白抜きの部分は粘着体30が形成されていない部分を示す。点線は開口部25と周縁部23との境界を示す。点線で囲った内側が開口部25、外側が周縁部23である。粘着体30の位置、大きさ、形状は、特に限定されない。例えば、
図7に示すように、粘着体30は、ストライプ、円形、矩形等の任意の位置、大きさ、形状に塗布することができる。ここで、前述のように、発熱体の第2被覆部が外側に向かってやや膨らんでいる場合(例えば
図4参照)、これを被着体に適用すると、発熱体が被着体から剥がれ易くなる傾向にある。この場合を踏まえると、発熱体裏面(被着面)の略中央部に粘着体が存在することが好適である(例えば、
図7の例の場合、上段左から3番目と5番目、下段1番目~3番目)。
【0041】
<1-3.大きさ・厚み>
(1-3-1.発熱組成物前駆体)
本形態に係る発熱組成物前駆体の大きさは、特に限定されず、発熱体の用途に応じたサイズ及び形態とすることができる。例えば、温灸具として使用される発熱体を製造する場合、発熱組成物前駆体は、幅2mm~30mm(円柱の場合には直径)、高さ2mm~15mmの固形形態であることが好適である。例えば、
図2のように発熱組成物前駆体が円柱状の場合、図中のAが幅・Bが高さであり、
図3のように発熱組成物前駆体が錠剤状の場合、図中のCが幅・Dが高さである。尚、
図3のように幅や高さが一定でない場合、幅は最大長部分での幅とし、高さは最大高さ部分での高さとする。
【0042】
(1-3-2.被覆体)
本形態に係る被覆体の大きさは、特に限定されず、内部に収納する発熱組成物前駆体の量や加熱対象面積等を踏まえ、適宜決定すればよい。例えば、
図2及び
図4に示すように、発熱組成物前駆体10aが膨潤剤を含有している場合、液体成分の注入後に該膨潤剤が膨潤する結果、発熱組成物10bの体積は元の発熱組成物前駆体10aの体積より大きくなる。加えて、被覆体の容積が小さすぎると、液体成分を注入する際に、液体成分が発熱組成物前駆体10aに吸収される前に溢れる恐れがある。これらを考慮すると、
図2に示すように、少なくとも発熱体前駆体100に関しては、収容部24内に空間(発熱組成物前駆体10aと第1の被覆部20aとの隙間)があることが好適である。即ち、
図2に示すように、第1の被覆部20aの収容部上面21の直径及び/又は収容部高さhは、それぞれ、発熱組成物前駆体10aの直径及び/又は高さよりも若干大きいことが好適である。例えば、温灸具として使用される発熱体を製造する場合、第1の被覆部20aの上面21の直径は、5mm~40mmが好適である。第1の被覆部20aの収容部高さhは、5mm~20mmが好適である。また、第1の被覆部及び第2の被覆部の厚さは、特に限定されず、一般的には6~800μm程度であり、好適には20~700μm程度である。
【0043】
(1-3-3.体積比)
収容部24の容積に対する発熱組成物前駆体10aの体積の比は、下限については、0.1以上が好ましく、0.2以上がより好ましく、0.3以上が更に好ましく、上限については、0.7以下が好ましく、0.6以下がより好ましく、0.5以下が更に好ましい。該体積比を好適範囲とすれば、液体成分を発熱組成物前駆体に導入する際、発熱組成物全体に亘って液体成分を略均一に導入でき、且つ、発熱体の有効量(液体成分が導入された発熱組成物前駆体部分)を最大化できるため、酸化反応時間をより長くすることができる。
【0044】
(1-3-4.粘着体)
本形態に係る粘着体を発熱体に適用する場合には、開口部25の面積に対する通気領域26の面積の比が、下限に関しては、好適には0.05以上となるよう、より好適には0.1以上となるよう、更に好適には0.2以上となるよう、上限に関しては、1以下となるよう、好適には0.95以下となるよう、より好適には0.9以下となるよう、更に好適には0.85以下となるよう、第2の被覆部20bに粘着体を適用する。該好適範囲とすることで、発熱体を加熱対象物に適用した際、発熱体内部に導入される酸素量を好適範囲まで引き下げることができる結果、酸化反応時間をより長くすることができる。また、粘着体の厚さは、一般的には5~250μmが好適であり、10~220μmがより好適であり、20~200μmが更に好適である。
【0045】
≪2.材質・成分・配合≫
(2-1.発熱組成物前駆体)
本形態に係る発熱組成物前駆体は、被酸化金属粉、1種以上の塩類と、活性炭と、膨潤剤と、必要に応じ付加的な各種成分と、を含有する。以下、各成分を詳述する。
【0046】
・被酸化金属粉
本形態に係る被酸化金属粉は、酸化熱を生じる金属粉であれば特に限定されず、一般的には鉄粉である。被酸化金属粉の具体例としては、鉄粉(還元鉄、鋳鉄、アトマイズ鉄、硫酸鉄)、アルミニウム粉、亜鉛粉、マンガン粉、マグネシウム粉、カルシウム粉等が挙げられる。ここで、発熱組成物前駆体は、発熱組成物前駆体の全質量を基準として、約10質量%~約80質量%、好ましくは約15質量%~約70質量%の範囲で、被酸化金属粉を含有する。尚、本明細書において「%」は特記しない限り「質量%」を示す。
【0047】
・塩類
本形態に係る塩類は、液体成分に溶解して電離する電解質であればよい。本形態に係る塩類の具体例としては、アルカリ金属(例えば、ナトリウム、カリウム等)、アルカリ土類金属(例えば、マグネシウム、カルシウム等)、他の金属(例えば、マンガン、銅等)の無機酸との塩(例えば、塩化物、硫酸塩、炭酸塩、硝酸塩等)や有機酸との塩(例えば、酢酸塩等)又はそれらの混合物を挙げることができる。これらの塩類のうち、塩化ナトリウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、塩化第二銅、及びそれらを含む混合物が好ましい。ここで、発熱組成物前駆体は、発熱組成物前駆体の全質量を基準として、好適には約0.5質量%~約10質量%、より好適には約1質量%~約5質量%の範囲で、塩類を含有する。
【0048】
・活性炭
本形態に係る活性炭は、特に限定されない。本形態に係る活性炭の具体例としては、ヤシ殼、木材等の植物性原料由来のもの、動物性原料その他の原料由来のものを挙げることができる。ここで、発熱組成物前駆体は、発熱組成物前駆体の全質量を基準として、好適には約0.5質量%~約25質量%、より好適には約0.5質量%~約20質量%、更に好適には約1質量%~約15質量%の範囲で、活性炭を含有する。
【0049】
・膨潤剤
本形態に係る膨潤剤は、液体成分を吸収して体積が膨張する限り、特に限定されない(典型的には吸水性ポリマー)。本形態に係る膨潤剤の具体例としては、乾燥ゲル、ゼラチン、寒天等の親水性高分子、無機塩類で膨潤が抑制されにくい疎水性高分子を挙げることができる。特に好適な膨潤剤は、疎水性アクリル酸ポリマーである。ここで、発熱組成物前駆体は、発熱組成物前駆体の全質量を基準として、好適には約45質量%未満であり、より好適には約0.1質量%~約30質量%、更に好適には約0.5質量%~約20質量%、特に好適には約1質量%~約10質量%の範囲で、膨潤剤を含有する。
【0050】
・付加的な各種成分
本形態に係る付加的な各種成分は、結合剤、温度制御剤、pH調整剤、酸化反応促進剤、水素ガス抑制剤、増量剤、充填剤、凝結防止剤、増粘剤、界面活性剤等である。これらの一以上を必要に応じて適宜用いる。これらの内、結合剤、温度制御剤及びpH調整剤を詳述する。まず、本形態に係る結合剤は、粉体原料を固形形態に成形するための剤である。本形態に係る結合剤の具体例としては、セルロース(たとえば結晶セルロース)、でんぷん、デキストリン、ショ糖エステル、テフロン(登録商標)、乳糖、ポチレングリコール、カルボキシメチルセルロース、ケイ酸カルシウム、合成ヒドロタルサイト、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム、乾燥水酸化アルミニウムゲル、コーンスターチ、炭酸カルシウム、アラビアゴム、ゼラチン、グァーガム、カオリン第二リン酸カルシウム、第三リン酸カルシウム、ポリエチレンオキシド、キサンタンガム、メタアクリル酸アンモニウムコポリマー、酢酸ビニル共重合物、シロップ、ポビドン、ラクチトール、硫酸カルシウム、アルギン、アルギン酸等を挙げることができる。ここで、成形(例えば打錠成形)する場合、発熱組成物前駆体は、発熱組成物前駆体の全質量を基準として、好適には約5質量%~約50質量%、より好適には約5質量%~約45質量%、更に好適には約10質量%~約40質量%の範囲で、結合剤を含有する。また、本形態に係る温度制御剤は、発熱温度の上限を制御する剤である。本形態に係る温度制御剤の具体例としては、35℃以上70℃以下の融点を有し20℃での水溶解度が5g/100mL以下の脂肪族化合物、より具体的には、高級α-オレフィン重合体(炭素数10~35のα-オレフィン2種以上のコポリマー又は炭素数10~35のα-オレフィン1種以上と他のオレフィン1種以上とのコポリマー、好ましくは一定の長鎖α-オレフィンを側鎖に有する側鎖結晶性ポリオレフィン)、植物性、動物性又は石油系などの各種パラフィンワックス、ミリスチン酸ミリスチル、ポリエステルポリオール、ポリオキシエチレン脂肪酸ジエステル等を挙げることができる。発熱組成物前駆体は、発熱組成物前駆体の全質量を基準として、好適には0~約40質量%、より好適には約0.1質量%~約35質量%、更に好適には約0.5質量%~約30質量%の範囲で、温度制御剤を含有する。更に、本形態に係るpH調整剤は、保存期間中に外袋が水素ガスで膨らまないよう機能する剤であれば、特に限定されない。本形態に係るpH調整剤の具体例としては、亜硫酸ナトリウムやポリリン酸ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム等を挙げることができる。発熱組成物前駆体は、発熱組成物前駆体の全質量を基準として、好適には約0.01質量%~約5質量%、より好適には約0.1質量%~約2質量%の範囲で、pH調整剤を含有する。
【0051】
(2-2.発熱体組成物)
本形態に係る発熱体組成物は、前述した発熱組成物前駆体に液体成分が添加されたものである。以下、液体成分を説明する。
【0052】
・液体成分
本形態に係る液体成分は、塩類を溶解してイオン化させ、鉄の酸化反応継続のために鉄の酸化被膜を壊す役割と、発熱組成物中で電気を通す役割と、を担う液体を形成し得る媒体となるものであれば、特に限定されない。本形態に係る液体成分の好適例は、水である。水としては、例えば、イオン交換水、純水、水道水、工業用水等を挙げることができる。また、該液体成分は、必要に応じて他の成分{例えば、塩類、pH調整剤(例えば、亜硫酸ナトリウム)}を含有していてもよい。ここで、発熱組成物前駆体への液体成分の注液量は、発熱組成物前駆体の100質量部に対し、好適には10~50質量部、より好適には15~40質量部、更に好適には17.5質量部~35質量部、最も好適には20質量部~30質量部である。また、発熱組成物中の液体成分の含有量との観点では、発熱組成物は、発熱組成物前駆体の全質量を基準として、好適には約1質量%~約40質量%、より好適には約10質量%~約30質量%の範囲で、液体成分を含有する。
【0053】
・発熱組成物の好適配合
以上を整理すると、本形態に係る発熱組成物の好適配合は、発熱組成物の全質量を基準として、被酸化金属粉15質量%~60質量%、塩類1質量%~4質量%、活性炭2質量%~10質量%、液体成分(例えば水)10質量%~40質量%、膨潤剤1質量%~10質量%、結合剤12質量%~20質量%、温度制御剤0質量%~25質量%である。
【0054】
(2-3.第1の被覆部)
第1の被覆部は、非透気性包材で構成される。これによって、発熱組成物中の液体成分(例えば、水又は水蒸気)が第1の被覆部の内面に滞留結露し、発熱組成物内から放出されにくくなる。この結果、高温での発熱持続時間がより長い発熱体又は温灸具を提供することができる。ここで、「非透気性」とは、例えば、通気度が80000秒/100cc以上であることを指す。尚、通気度は、JIS P8117:2009(ガーレー法)で測定される値である。また、第1の被覆部に通気孔がある場合、該通気孔を塞いだときの通気度とする。非透気性包材の素材の具体例としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリアミド、ポリビニルアルコール、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリウレタン、ポリスチレン、エチレン-酢酸ビニル共重合体、ポリカーボネート、塩酸ゴム等の単独又は組合せが挙げられる。また、非透気性包材として、紙、アルミシート、発泡ポリウレタン、ポリ塩化ビニル等の人工繊維、綿、麻、絹等の布、これらの積層品も使用することができる。尚、第1の被覆部の素材選定においては、第2の被覆部との接合手法としてヒートシールを用いる場合、第2の被覆部の素材との関係で決定することが好適である。また、第1の被覆部は、非透気性包材のみから構成される必要はなく、例えば非透気性包材と不織布との複合体であってもよい。更に、第1の被覆部として上述した易変形性のものを用いる場合、第1の被覆部の素材としては、好適には、伸性材料や伸縮性材料を挙げることができる。具体例としては、オレフィン系エラストマー、ウレタン系エラストマー、ゴム系エラストマー等が挙げられる。
【0055】
(2-4.第2の被覆部)
第2の被覆部は、透気性包材で構成される。これによって、発熱体使用時、発熱体組成物に外部から酸素供給が可能となる。また、この透気性包材が液体成分透過性(例えば、透水性)の場合、発熱体の製造時においても、この透気性包材の、第1の被覆部と対向する面とは反対面に、例えば液体成分を噴射することで、該液体成分が第2の被覆部を通じて該液体媒体を包材内部に導入可能となる。ここで、該透気性包材は、発熱体外部の空気を該発熱体内部に導入可能であれば特に限定されず、例えば、通気度が100秒/100cc以下(JIS P8117:2009、ガーレー法)の包材(例えば、50秒以下、25秒以下、10秒以下、5秒以下、1秒以下、0.5秒以下)を挙げることができる。また、第2の被覆部の構造例としては、不織布、織布、単層又は積層の多孔質フィルム又はシート、針孔を開けた単層又は積層の無孔フィルム又はシート、これらの組み合わせを挙げることができる。透気性包材の具体例(不織布や織布)としては、発熱体及び医療用温熱用具等の技術分野で用いられるものを好適に使用でき、例えば、ナイロン、ビニロン、ポリエステル、レーヨン、アセテート、アクリル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル等の人工繊維、綿、麻、絹、ウール等の天然繊維を含むものが挙げられ、スパンボンド、サーマルボンド、スパンレース等の形態の不織布を挙げることができる。これらの内、第2の被覆部の側面(被着体に付けたとき、該被着体面と並行方向)からも空気が導入可能という点で、不織布が好適である。尚、不織布(第2の被覆部)における該側面からの通気性が担保できている場合には、発熱体の裏面全面に粘着剤層を設ける態様も想定できる。ここで、不織布の目付けは、一般に約10g/m2~約800g/m2程度のものが好適であり、約20g/m2~約500g/m2のものが好適である。また、透気性包材の具体例(全面又は部分的に透気性を有するフィルム又はシート)としては、延伸フィルム(好適には、延伸された多孔質フィルム又はそれを含むシート)を挙げることができる。延伸多孔質フィルムは、一般に無機質充填剤を含み、延伸によって連通孔が形成されることにより透気性が発現する。以上のように、透気性包材としてどのような通気度の素材を採用するかは、使用する発熱組成物、求める必要発熱量、温度、発熱時間に基づき、適宜決定する。また、第2の被覆部の素材選定においては、第1の被覆部との接合手法としてヒートシールを用いる場合、第1の被覆部の素材との関係で決定することが好適である。
【0056】
更に、第2の被覆部は、可撓性を有している、即ち、柔軟であり折り曲げ可能であることが好適である。本形態に係る発熱体の製造時、液体成分の注入後、発熱組成物が膨張する。この場合、第2の被覆部は、発熱組成物が膨潤した形状に沿って、少なくとも一部が外側に向かって膨出した状態となる。可撓性を有していることが該膨出を許容する。
【0057】
加えて、第2の被覆部を構成する透気性包材は、液体成分の注入時の液体圧よりも高い耐水圧を有するものが好適である。後述する注入時の液体圧との関係で、透気性包材の耐水圧(耐液圧)は、好適には0.1~100KPa、より好適には0.1~30KPa、更に好適には0.5~30KPa、最も好適には1~30KPaである。
【0058】
(2-5.粘着体)
本形態に係る粘着体は、特に限定されず、いわゆる溶剤タイプ、エマルジョンタイプやホットメルトタイプのみならず、ゲルタイプ(例えばポリアクリル酸ナトリウム)等でもよい。粘着剤の具体例としては、アクリル系粘着剤、ゴム系粘着剤、ウレタン系粘着剤(アクリルウレタン系粘着剤)、シリコーン系粘着剤、エチレン-酢酸ビニル共重合体系粘着剤、ポリエステル系粘着剤、ポリアミド系粘着剤、エポキシ系粘着剤等を挙げることができる。
【0059】
≪3.発熱体の製造方法≫
図8を参照しながら、本形態に係る発熱体の製造方法を説明する。
図8は、本形態に係る発熱体の製造方法の一例(S1)の流れの一例を示した図である。尚、
図8におけるS10~S30が、本形態に係る発熱体前駆体の製造方法に相当する。
図8に示すように、本形態に係る発熱体の製造方法S1は、発熱組成物前駆体の製造工程S10、第1の被覆部の製造工程S20、発熱組成物前駆体の封入工程S30、液体成分の注入工程S40、外袋への封入工程S50、を有する。以下、本形態に係る発熱体の製造方法の一例(S1)を各工程に分けて説明する。
【0060】
<3-1.発熱組成物前駆体の製造工程S10>
発熱組成物前駆体の製造工程S10は、発熱組成物前駆体の構成成分を混合、成形{例えば加圧成形(例えば打錠)}する工程である。尚、構成成分は前述の通りである。ところで、発熱組成物の構成成分は、固体成分(常温)と液体成分(常温)とに分けられる。前者は更に、液体成分(例えば、水)に対して不溶性又は難溶性の非可溶性成分(例えば、非水溶性成分;例えば、被酸化金属粉、活性炭、膨潤剤、温度制御剤等)と、液体成分(例えば、水)に対して易溶解性の可溶性成分(例えば、水溶性成分;例えば、塩類、pH調整剤等)とに分けられる。これらの内、発熱組成物前駆体の製造工程S10では、非可溶性成分(例えば、非水溶性成分)のみ、又は、非可溶性成分(例えば、非水溶性成分)及び1以上の可溶性成分(例えば、水溶性成分)を混合し、発熱組成物前駆体を製造する。即ち、好適な発熱組成物前駆体は、非可溶性成分(例えば、非水溶性成分)からなる、又は、非可溶性成分(例えば、非水溶性成分)及び1以上の可溶性成分(例えば、水溶性成分)を含む、発熱組成物原料の常温で固体の成分の混合物であって、液体成分(例えば、水のみ、一部又は全部の水溶性成分の水溶液、又は、一部又は全部の水溶性成分及び水以外の常温で液体の成分を含む水溶液)を実質的に含まないものである。ここで、「不溶性又は難溶性」とは、常温(25℃)で、100gの液体成分に対し、溶解量が1g未満である成分を指す。他方、「易溶解性」とは、常温(25℃)で、100gの液体成分に対し、溶解量が1g以上である成分を指す。ここで、より具体的な例をもって発熱組成物前駆体の製造工程S10を説明すると、発熱組成物前駆体の成分である固体成分(非可溶性成分及び可溶性成分)として、鉄粉、活性炭、塩、膨潤剤として吸水性ポリマー、結合剤として結晶セルロースを用意する。上記固体成分を計量し、ポリエチレン袋に封入後、口を閉じて混合する。得られた混合物を成形{例えば加圧成形(例えば卓上型打錠機等で打錠)}し、円柱形状の発熱組成物前駆体が製造される。
【0061】
<3-2.第1の被覆部の製造工程S20>
第1の被覆部の製造工程S20は、発熱組成物前駆体の製造工程S10の前又は後に或いは並行して、第1の被覆部を製造する工程である。尚、発熱組成物前駆体が製造された直後に袋又は容器に封入できるように、第1の被覆部の製造工程S20は、発熱組成物前駆体の製造工程S10の前に実施するか並行して実施することが好適である。ここで、より具体的な例をもって第1の被覆部の製造工程S20を説明すると、非透気性包材(例えば、ポリエステル)を成形(例えば、加熱した凸型ステンレス製押し型と凹型のステンレス製受け型との間に非透気性包材を挟み込み、押圧)することで、深さのある収容部(凹部)と周縁部とを有する第1の被覆部を得ることができる。
【0062】
<3-3.発熱組成物前駆体の封入工程S30>
発熱組成物前駆体の封入工程S30は、発熱組成物前駆体を被覆体に封入することで、発熱体前駆体を製造する工程である。ここで、より具体的な例をもって発熱組成物前駆体の封入工程S30を説明すると、第1の被覆部の製造工程S20で製造した第1の被覆部の収容部内に、発熱組成物前駆体の製造工程S10で製造した発熱組成物前駆体を(第1の被覆部の開口部から)入れた後、第2の被覆部(例えば、透気性を有するポリエステル不織布)を第1の被覆部に被せる。次に、第1の被覆部と第2の被覆部とを接合(例えば、熱圧着;具体例としては、加熱したステンレス製ヒートシールバーで、第2の被覆部側から圧力をかけて熱圧着)し、発熱組成物前駆体を封入する。以上までの工程が、発熱体前駆体の製造プロセスである。尚、S10~S30までの製造工程を、深絞り包装により実施してもよい。具体的には、例えば、該深絞り包装工程は、第1の被覆部の原料となるボトム材(例えばロール状)を真空成形(例えば加熱真空成形)により凹み(収容部)を作るステップ、その中に発熱組成物前駆体を入れるステップ、その後に第2の被覆部の原料となるトップ材(例えばロール状)を上からシール(例えば真空で実施)するステップ、カットするステップ、を含む。尚、以下で説明するS40に係る液体成分の注入工程は、カットするステップの前でも後でもよい。この深絞り包装工程を採用すると、成形の高さが安定する結果、製品間での性能ばらつきをより防止できる。
【0063】
<3-4.液体成分の注入工程S40>
液体成分の注入工程S40は、発熱組成物前駆体の封入工程S30で製造した発熱体前駆体に封入されている発熱組成物前駆体に液体成分を注入する工程である。ここで、より具体的な例をもって液体成分の注入工程S40を説明すると、第2の被覆部(第1の被覆部の開口部を覆っている部分)に対し、圧力を印加した状態で液体成分を適用する{例えば、プランジャーポンプの噴出口の下に(第2の被覆部が上になるように)発熱体前駆体を配置し、該噴出口から液体成分(例えば、水)を噴出させると、該噴出圧により該液体成分が発熱体前駆体内に注入される}。尚、第1の被覆部に通気孔がある場合は、第1の被覆部の通気孔から液体成分を注入してもよい。液体成分の注入により、液体成分が発熱組成物前駆体と接触し、発熱組成物に含まれる膨潤剤が膨潤する。その結果、成形{例えば加圧成形(例えば打錠)}された発熱組成物前駆体の複数個所で亀裂が生じる。以上までの工程が、発熱体の製造プロセスである。
【0064】
<3-5.外袋への封入工程S50>
外袋への封入工程S50は、液体成分の注入工程S40で製造した発熱体を外袋に封入する工程である。ここで、外袋は、実質的に酸素透過性のない気密性を有するものが好適である(例えば、透明アルミナ蒸着ポリエステル、低密度ポリエチレン等)。
【0065】
<3-6.その他>
発熱体に粘着体を設ける場合、発熱体に粘着体を付着させる工程(例えば、コンマコーターやグラビアコーター、ホットメルトT ダイコーター等を使用)、粘着体に剥離体を付着させる工程(又は、剥離体を備えた粘着体を発熱体に付着させる工程)を有していてもよい。更には、発熱組成物前駆体の封入工程S30で使用する第2の被覆部として、表面に粘着体と剥離体とを備えたものを用いてもよい。
【0066】
≪4.用途≫
本形態に係る発熱体は、温湿布や経絡刺激用温熱具のような医療機器において、又は、使い捨てカイロや温灸具のような日用品等に広く使用可能である。
【実施例0067】
≪発熱体の製造≫
<発熱組成物前駆体の製造>
発熱組成物前駆体の常温で固体の成分(非水溶性成分及び水溶性成分)である原料として、鉄粉(パウダーテック株式会社 還元鉄粉「RDH-3M」)、活性炭(ダイネン株式会社 木粉活性炭「PL-1P」)、塩類(日本海水株式会社 粉末塩「EF-300」)、膨潤剤として吸水性ポリマー(三洋化成株式会社 ポリアクリル酸系樹脂「ST-500D*」)、結合剤として結晶セルロース(旭化成ケミカルズ株式会社 結晶セルロース「セオラスTG-101」)、温度制御剤としてα-オレフィン共重合体(豊国製油株式会社 「HSクリスタ-6100P」)を使用した。ここで、鉄粉45.0質量部、活性炭7.0質量部、塩類3.5質量部、結晶セルロース30.0質量部、温度制御剤25.0質量部、吸水性ポリマー5.0質量部を基本処方として使用した。計量した上記固体成分原料をポリエチレン袋に封入し、充分に空気が入った状態で口を閉じて3分間混合した。この混合原料を1.2g計量し、打錠機(株式会社エステック 「卓上型ロータリー式打錠機 PICCOLA 標準機」)で打錠した(打錠圧10KN)。押す側金型は直径13.9mm、受け側金型内径は14mmを使用し、直径14mm、厚み5mmの円柱型の発熱組成物前駆体を製造した。
【0068】
<第1の被覆部の成形>
ナイロン/ポリエチレンフィルム(クリロン化成社 総厚180μm 測定不可、即ち、通気度>80000秒/100cc)を、110℃に加熱した凸型ステンレス製押し型と冷却エアが出る凹型のステンレス製受け型の間に挟み込み、4秒間押して、0.5秒後から、エアで4秒間冷却して内径21mm、外径26mm、高さ7mmの収納部が形成されたカップ状の第1の被覆部を作製した。
【0069】
<被覆体への封入>
上記で作製した第1の被覆部内に発熱組成物前駆体を1個入れ、その上から第2の被覆部としてポリエステル/ポリエチレン積層スパンボンド不織布(シンワ株式会社 「HST40」、目付=40g/m2、通気度=0.2秒/100cc)を、第1の被覆部の開口部を覆うように被せた。180℃に加熱したステンレス製ヒートシールバーで、セパレーター側から圧力(10MPa)を10秒間適用し、第2の被覆部と第1の被覆部とを周縁部で熱圧着して発熱組成物前駆体を封入した。封入後、直径26mmにトムソン刃で打ち抜き、発熱体前駆体を製造した。
【0070】
<液体成分の注入>
被覆体の貼付面側が上側となるよう、水の噴出口の下に被覆体を設置した。水は、流路入口内径2mm、出口内径0.8mmのポンプ(HIBER社 「ハイバーポンプ」)を用いて4.5mmのストロークで供給した。注水ヘッドの金属管の先端に取り付けてある直径6mmのシリコーン製緩衝部材の縁(噴出口)を、前記で製造した発熱組成物前駆体が封入された被覆体の貼付面側(第2の被覆部側)(被覆体の不織布表面)に接触させて、発熱体1個当たり0.4gの水を注入し、発熱体を製造した。
【0071】
<外袋への封入>
得られた発熱体を、製造後速やかに透明アルミナ蒸着ポリエステル12μm/低密度ポリエチレン40μmの外袋に封入し、室温放置した。
【0072】
(実施例1)
上述した通りの製造方法で実施例1に係る発熱体を作製した。
【0073】
(実施例2)
第1の被覆部の上面の中心部に1個の通気孔(直径1.0mmφ)を形成したこと以外は、実施例1と同様の製造方法で実施例2に係る発熱体を作製した。尚、水は上記の通り、第2の被覆部側から注入した。
【0074】
(実施例3)
第1の被覆部の上面の中心部に1個の通気孔(直径1.0mmφ)を形成し、第2の被覆部の貼付面に4点の粘着体{直径4mmφ、厚み1mmの糊を4点塗布(糊の塊をアイロンで圧着)}を形成(
図7の上段左から2番目参照;糊の直径4mmφの内、3mmが開口部にかかる位置に配置)したこと以外は、実施例1と同様の製造方法で実施例3に係る発熱体を作製した。尚、水は上記の通り、第2の被覆部側から注入した。
【0075】
(実施例4)
第2の被覆部の貼付面の中央部に塗布量90μm、幅が6mm粘着体を形成(
図7の上段左から5番目参照)したこと以外は、実施例1と同様の製造方法で実施例4に係る発熱体を作製した。
【0076】
(実施例5)
第1の被覆部の上面の直径に対して均等な距離に2個の通気孔(直径1mmφ)を形成し、第2の被覆部の貼付面の中央部に塗布量90μm、幅が6mm粘着体を形成(
図7の上段左から5番目参照)したこと以外は、実施例1と同様の製造方法で実施例5に係る発熱体を作製した。尚、水は上記の通り、第2の被覆部側から注入した。
【0077】
(実施例6)
第1の被覆部の上面の中心部に1個の通気孔(直径1mmφ)を形成し、第2の被覆部の貼付面の中央部に塗布量90μm、幅が10mm粘着体(
図7の上段左から5番目参照)を形成したこと以外は、実施例1と同様の製造方法で実施例5に係る発熱体を作製した。尚、水は上記の通り、第2の被覆部側から注入した。
【0078】
(比較例1)
第1の被覆部に透気性包材である不織布(旭化成株式会社 「スマッシュ Y65230」)を用い、第2の被覆部に非透気性包材である粘着資材(粘着体90μm / PETスパンレース不織布30g/m2 / PETフィルム12μm / PEフィルム30μm)を用いたこと以外は、実施例1と同様の製造方法で比較例1の発熱体を作製した。
【0079】
(比較例2)
発熱組成物前駆体の成分である鉄粉にヘガネスジャパン社「InSIP」を用い、第1の被覆部に透気性包材である不織布(旭化成株式会社 「スマッシュ Y65230」)を用い、第2の被覆部に非透気性包材である粘着資材(粘着体90μm / PETスパンレース不織布30g/m2 / PETフィルム12μm / PEフィルム30μm)を用いたこと以外は、実施例1と同様の製造方法で比較例1に係る発熱体を作製した。
【0080】
≪発熱試験≫
発熱試験は、JIS S4100「使いすてかいろ」の方法に準じて、温熱器を水平にして実施した。発熱試験には、室温20℃、湿度65%の恒温室に設置した、W615×D410×H60mm(8mm厚の塩化ビニル板を使用)のタンク状温熱器を用いた。該タンク状温熱器に併設した循環式恒温水槽から8L/minの温水を循環させ、温熱器(塩化ビニル板)の表面温度を30℃に制御した。該温熱器表面の塩化ビニル板上に、各発熱体サンプルを、第2の被覆部の貼付面を下にして貼付した。ここで、該貼付の際、第2の被覆部の底面のほぼ中央に温度測定用のセンサーを両面テープで貼ることで、発熱体の温度を経時的に測定した。温度測定機は(株)チノーグラフィックレコーダKR2S00、センサーは安立計器(株)、「ST-22E-005」を使用した。
【0081】
結果を
図9~
図14及び表1に示す。「立ち上がり」は31.5℃を超えてから40℃を超えるまでの時間、「持続時間」は40℃に到達してから次に40℃となるまでの時間と定義した。
【0082】
【0083】
実施例1~6に係る発熱体は、良好な発熱特性を示した。即ち、実施例1~6に係る発熱体は、比較例1及び2の発熱体と比較し、顕著に持続時間が長いことが分かる。
前記第2の被覆部が加熱対象物と向かい合ったときに、前記第2の被覆部と前記加熱対象物との間に生ずる間隙から前記開口部に空気が導入される、請求項1~4のいずれか一項に記載の発熱体前駆体。
前記第2の被覆部が加熱対象物と向かい合ったときに、前記第2の被覆部と前記加熱対象物との間に生ずる間隙から前記開口部に空気が導入される、請求項1~4のいずれか一項に記載の発熱体前駆体。