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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024178892
(43)【公開日】2024-12-25
(54)【発明の名称】冷却衣服
(51)【国際特許分類】
   A41D 13/005 20060101AFI20241218BHJP
   A41D 1/00 20180101ALI20241218BHJP
【FI】
A41D13/005 103
A41D1/00 E
A41D13/005 108
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024042539
(22)【出願日】2024-03-18
(31)【優先権主張番号】P 2023096666
(32)【優先日】2023-06-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】593161375
【氏名又は名称】山真製鋸株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098936
【弁理士】
【氏名又は名称】吉川 晃司
(74)【代理人】
【識別番号】100098888
【弁理士】
【氏名又は名称】吉川 明子
(72)【発明者】
【氏名】山本 剛
【テーマコード(参考)】
3B030
3B211
【Fターム(参考)】
3B030AA01
3B030AA03
3B030AA06
3B030AB08
3B030AB12
3B211AA01
3B211AB01
3B211AC01
3B211AC21
(57)【要約】      (修正有)
【課題】面倒な作業を必要とせずに、持続可能な冷却効果や衛生面での問題をクリアできる、新規且つ有用な冷却衣服を提供する。
【解決手段】衣服本体に一片の冷却裏地47をスナップボタンで取り付ける。冷却裏地は、2枚の同じサイズ及び形状の防水性で柔軟な合成樹脂シートが、ヒートシールにより接合されて一体化されている。ほぼ平行に2本のシール線53、53が延びており、その2本のシール線に挟まれて細長い空間ができている。この空間で流路55が構成されている。冷却裏地を衣服本体から取り外して、押し潰して流路を扁平にすれば、流路に残っていた水の殆どを抜くことができる。後は、吊り下げて干しておいたりすれば残りも自然に抜け、水垢等の汚れは付き難くなる。また、冷却裏地表面は拭くことで汚れを落とすことができる。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上半身を包む衣服本体と、前記衣服本体の内面側に着脱自在に取付けられ、前記衣服本体と相似状の一片の冷却裏地を有する冷却衣服において、
前記冷却裏地は、2枚の防水性シートが接合されて一体化されたものであり、
前記2枚の防水性シートの間で接合されずに残された空間を冷却流体の循環経路の一部を構成する流路としたことを特徴とする冷却衣服。
【請求項2】
請求項1に記載した冷却衣服において、
衣服本体と冷却裏地は肩部分で後身ごろと前身ごろが連なっていることを特徴とする冷却衣服。
【請求項3】
請求項2に記載した冷却衣服において、
流路は蛇行部分を有して一筆書き状に連なっていることを特徴とする冷却衣服。
【請求項4】
請求項3に記載した冷却衣服において、
流路の両端部は冷却裏地の後身ごろの下端側の衣服本体と合わせられる面で開口して、冷却流体の冷却部と、可撓性チューブを介して着脱自在に接続されて密閉された循環経路が形成されることを特徴とする冷却衣服。
【請求項5】
請求項4に記載した冷却衣服において、
冷却裏地はスナップボタンで衣服本体の内面側に着脱自在に取付けられることを特徴とする冷却衣服。
【請求項6】
請求項4に記載した冷却衣服において、
冷却裏地は面ファスナで衣服本体の内面側に着脱自在に取付けられることを特徴とする冷却衣服。
【請求項7】
請求項4に記載した冷却衣服において、
冷却部は冷却流体が溜められ、且つ冷却材が出し入れ自在に収容される防水性の袋体で構成されていることを特徴とする冷却衣服。
【請求項8】
請求項7に記載した冷却衣服において、
袋体は冷却材としての凍結可能な液体が封入されたペットボトルやプラスチック容器が出し入れ自在に収容可能になっていることを特徴とする冷却衣服。
【請求項9】
請求項8に記載した冷却衣服において、
冷却部は衣服本体側に設けられていることを特徴とする冷却衣服。
【請求項10】
請求項8に記載した冷却衣服において、
冷却部は腰ベルトに取付けられていることを特徴とする冷却衣服。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高温環境の作業現場等での使用に適した冷却衣服に関するものである。
【背景技術】
【0002】
夏場等の高温環境下での作業に対応するため、特許文献1に記載のように、衣服本体にチューブを取付け、そのチューブに冷却液を循環させて冷却する液体循環式冷却衣服が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2023-11483号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
冷却効果を高めるためにはできるだけチューブどうしの間の隙間を小さくして衣服本体に取付ける必要があり、特許文献1ではチューブをかなりの数の挿通型ガイド部に順次挿通させて蛇行状に這い回した状態で衣服本体に取り付けている。
ところで、冷却液として通常は手軽な水道水を使用しているため、ある程度の期間使用されると、チューブに常時水が入った状態になっていることもあって、水垢等が付着して汚れてくるので、衛生上の問題が出てくる。更に、そのまま放置すれば、詰まって水が循環し難くなり、冷却効果にも悪影響が出てくる。
しかしながら、チューブは上記したようにかなりの数の挿通型ガイド部に挿通されているのでチューブを衣服本体から取り外したり再び装着したりするのはかなり面倒な作業になっている。
【0005】
本発明は上記従来の問題点に着目して為されたものであり、面倒な作業を必要とせずに、持続可能な冷却効果や衛生面での問題をクリアできる、新規且つ有用な冷却衣服の提供を、その目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は上記課題を解決するために為されたものであり、上半身を包む衣服本体と、前記衣服本体の内面側に着脱自在に取付けられ、前記衣服本体と相似状の一片の冷却裏地を有する冷却衣服において、前記冷却裏地は、2枚の防水性シートが接合されて一体化されたものであり、前記2枚の防水性シートの間で接合されずに残された空間を冷却流体の循環経路の一部を構成する流路としたことを特徴とする冷却衣服である。
【0007】
好ましくは、衣服本体と冷却裏地は肩部分で後身ごろと前身ごろが連なっている。
好ましくは、流路は蛇行部分を有して一筆書き状に連なっている。
好ましくは、流路の両端部は冷却裏地の後身ごろの下端側の衣服本体と合わせられる面で開口して、冷却流体の冷却部と、可撓性チューブを介して着脱自在に接続されて密閉された循環経路が形成される。
好ましくは、冷却裏地はスナップボタンで衣服本体の内面側に着脱自在に取付けられる。
好ましくは、冷却裏地は面ファスナで衣服本体の内面側に着脱自在に取付けられる。
好ましくは、冷却部は冷却流体が溜められ、且つ冷却材が出し入れ自在に収容される防水性の袋体で構成されている。
好ましくは、袋体は冷却材としての凍結可能な液体が封入されたペットボトルやプラスチック容器が出し入れ自在に収容可能になっている。
【0008】
ある態様では、冷却部は衣服本体側に設けられており、別の態様では、冷却部は腰ベルトに取付けられている。
【発明の効果】
【0009】
本発明の冷却衣服は、面倒な作業を必要とせずに、持続可能な冷却効果や衛生面での問題をクリアできる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の第1の実施の形態に係る冷却ベストの前身ごろを開いて、平面状に展開した状態の正面図である。
図2図1の背面図である。
図3図2の冷却裏地を取り外した状態の背面図である。
図4図2の冷却裏地の平面図である。
図5図1の冷却ベストの分解斜視図である。
図6図1の冷却ベストの着用状態を示す図である。
図7】本発明の第2の実施の形態に係る冷却ベストの正面図である。
図8図7の冷却ベストの着用状態を示す図である。
図9】本発明の第3実施の形態に係る冷却ベストの斜視図である。
図10図9の冷却ベストの前身ごろを開いて、平面状に展開した状態の正面図である。
図11図10の背面図である。
図12図11の冷却裏地を取り外した状態の背面図である。
図13図11の冷却裏地の平面図である。
図14図10の袋体に容器を入れた状態の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の第1の実施の形態に係る冷却衣服を図面にしたがって説明する。
図1図6に示すように、冷却衣服はベスト型の冷却ベスト1になっており、その衣服本体3は、ナイロン、ポリエステル等の合成繊維の生地で構成されている。
後身ごろ5と左右の前身ごろ7、9とは肩部11を介して連なっており、通気性のよいメッシュ状の生地で構成されている。
左前身ごろ7と後身ごろ5の間の脇下部分は、ベルト13を利用して連結される。右前身ごろ9と後身ごろ5の間の脇下部分も同様に、ベルト13を利用して連結される。
左前身ごろ7と右前身ごろ9の間はベルト15を利用して連結される。
【0012】
左前身ごろ7の中間から下側にかけて、二枚の袋布が外面側から重ね合されて縁側が縫着されてポケット17が形成されている。ポケット17の上側には、左前身ごろ7を横断するように、太めの帯シートの両端が左前身ごろ7に対して縫着されて、挿通型ガイド部19が設けられている。
右前身ごろ9側でも同様に構成されている。
【0013】
後身ごろ5には、二枚の袋布21a、21b(図5)が外面側から重ね合されて縁側が縫着されて大きなポケット21が構成されている。
ポケット21は後身ごろ5の形状に対応して肩部11に近づく部分はU形になって左右に分岐しており、それぞれの上端部は袋布21b側が袋布21aに対して縫着されておらず、そこがポケット21の小開口21c、21cになっている。
このポケット21の主な開口は袋布21bを横方向に分断した部分であり、そこをファスナ23で開閉するようになっている。このファスナ23は分岐部分に近い上側に位置している。
ポケットの21の袋布21bの下側の内面には別の袋布25aが縫着されており、袋布21bと共にポケット25が構成されている。ポケット25の開口は袋布21bを横方向に分断した部分であり、そこをファスナ27で開閉するようになっている。
【0014】
ポケット21の内面、すなわち袋布21aと、袋布21b及び袋布25aの対向面にはそれぞれは断熱シート29、29が縫着されて覆われている。この断熱シート29はポリエチレンの基材シートにアルミ蒸着されたものになっており、アルミ面が露出するように縫着されて覆われている。
後身ごろ5とポケット21の袋布21aの重ね部位に挿通穴21dが開けられており、ポケット21の内部が後身ごろ5側で開口している。この挿通穴21dは後身ごろ5の下端部に位置している。
また、ポケット25にも、袋布25aと断熱シート29の重ね部位に挿通穴25b、25cが開けられており、ポケット25の内部がポケット21側で開口している。
【0015】
ポケット21の内部には、防水性の合成樹脂シートで構成された縦長平袋状の収容部31が収められている。この収容部31は一方の面には大きな円形の穴が形成されており、そこが収容部31の主な開口部になっている。
ポケット21の袋布21bにも同じサイズの穴が形成されており、穴縁どうしが揃えられた状態で重ね合され、その重ね合された穴縁に口金33が取り付けられて、収容部31は口金33を介してポケット21に結合しており、収容部31はポケット21の内ポケットになっている。
口金33で作られた開口部は蓋体35により閉じられる。収容部31は可撓性で中間部が膨らむことが可能になっており、200~700mL容量のペットボトルPを立ったような姿勢で収容することができる。また、開口部は上記ペットボトルPを出し入れ可能なサイズになっている。
【0016】
収容部31の上側と下側にそれぞれ接続部が設けられており、これらに可撓性のチューブ37が接続されている。下側で一端部が接続されたチューブ37aは、挿通穴25bを通されてポケット25の内部に入り込んでいる。ポケット25の内部はポンプ39が収容されており、このポンプ39にチューブ37aが取付けられている。その先側では、チューブ37aが挿通穴25bを再び通されてポケット21の内部に戻っている。
この戻されたチューブ37aは、上側で一端部が接続されたチューブ37bと共に、挿通穴21dに通されて衣服本体3の後身ごろ5の外に引き出されている。
【0017】
ポンプ39のコード39aは、挿通穴25cを通されて、ポケット21の内部に入り込み、左側の小開口21cから外に引き出されている。左前身ごろ7の挿通型ガイド部19を引き出されたコード39aは通り抜けて、ポケット17に収容可能なコントローラ41に脱着自在に接続されている。
このコントローラ41は、ON/OFFスイッチを備えており、このスイッチの押下によりポンプ39が作動し、再度の押下により停止する。充電用にUSBコネクタが設けられている。
【0018】
衣服本体3の内面側には、図3に示すように、縁に適度な間隔をあけて複数の取付片43が取付けられている。取付片43は合成樹脂製で柔軟な薄シートで構成されて長方形をなしており、その長方形の一方の短辺側が衣服本体3の縁取りテープ3aに挟まれて縫着されて取付けられている。
この取付片43にスナップボタン45の雄部材45aが取付けられている。この雄部材45aは、凸部が取付片43の衣服本体3の内面と重なる面とは反対側の面から突設されている。
雄部材45aは、後身ごろ5から左右の前身ごろ7、9に跨りながら、衣服本体3を囲むようにその縁の全周にわたって分散配置されている。
【0019】
図2に示すように、衣服本体3の内面側には、一片の冷却裏地47が重ね合わせた状態で取付けられる。この冷却裏地47は衣服本体3と相似状で僅かに小さくなっており、衣服本体3の後身ごろ5、左右の前身ごろ7、9に相当する部位47a、47b、47cがある。
冷却裏地47は、2枚の同じサイズ及び形状の防水性で柔軟な合成樹脂シート49、49が、それぞれ縁を揃えて重ね合わされ、縁がヒートシールにより接合されて一体化されている。縁シール部51は二重線状になっており、縁の全周にわたって連なって閉環状になっている。
【0020】
縁シール部51には、適度な間隔をあけてスナップボタン45の雌部材45bが複数取付けられている。
雌部材45bは、凹部が冷却裏地47のうち衣服本体3に重ね合われる側の合成樹脂シート49側にくるように設けられており、衣服本体3側の雄部材45aが嵌り込んで留められるようになっている。
雌部材45bと雄部材45aは、衣服本体3の内面側に冷却裏地47を重ね合わせたときに一対一対応する位置に設けられており、これらを留めることで、冷却裏地47が衣服本体3に取付けられ、雌部材45bと雄部材45aを離すことで、冷却裏地47が衣服本体3から取り外される。
【0021】
図4に示すように、合成樹脂シート49、49の縁より内方側でもヒートシールされている。このヒートシールは線状になっており、ほぼ平行に2本のシール線53、53が延びており、その2本のシール線53、53に挟まれて細長い空間ができている。この空間は合成樹脂シート49、49に囲まれてシール間は封止されているので、両端側が閉鎖されれば密封空間になる。この空間で冷却流体の流路55が構成されている。
【0022】
この流路55は、一筆書きで長く延びており、部位47aの左部の下側から蛇行しながら上方に延び、部位47bに移り、中間まで下方に向かって直線状に延びた後、更に蛇行しながら下方に向かって延び、その下端からは折り返して上方に向かって直線状に延びている。そして、部位47aに戻って、左右方向中間で下方に向かって直線状に延びている。
流路55は左右対称に延びており、上記したように左右方向中間で下方に向かって直線状に延びて下端に至った後は折返して上方に向かって並列状態で直線状に延びている。
このように蛇行部分55aと直線状部分55bとの組み合わせにより、部位47a、47b、47cに跨ってその全体に流路55が万遍なく適度な密度で配置された状態が実現されている。
【0023】
この流路55の一筆書きで延びた端部55cは、流路幅が拡大されて円状になっている。
両端部55c、55cは、部位47aの下側で共に中央側に寄った位置にある。この端部55cにはチューブ接続部57の基部が一体成形されて連通している。このチューブ接続部57はL形になっており、先端管57aは冷却裏地47上に僅かに間隔をあけて平行に延びている。
【0024】
チューブ接続部57、57のそれぞれの先端管57a、57aに、外に引き出されたチューブ37a、37bがそれぞれ外嵌されて接続され、チューブ37b~収容部31~チューブ37a~一筆書き流路55~チューブ37bと連なる閉鎖路が構築され、この閉鎖路はポンプ39の作動より、中に供給された冷却流体である水Wの循環経路になる。
チューブ37は先端管57aに外嵌めされて接続されており、チューブ37は弾性的に拡げられて先端管57a側と圧接されているので、上記循環経路には密封性が確保されている。
その一方、チューブ37を引っ張れば、先端管57aから容易に引き剥がすことができる。
【0025】
収容部31の開口部から水Wと冷却材として凍結させた飲料入りの500mL容量のペットボトルPを入れて、ペットボトルPは立たせた姿勢で収容する。収容部31はペットボトルPに接触させて水Wを冷却させる冷却部としての機能を担っている。
ポンプ39の作動により上記のように循環経路が形成されると、収容部31内に流入してきた水Wが水滴となってペットボトルPの外面に当たって滑落しながら垂れ落ちていく。その落下過程で熱が奪われて冷やされ、下側の水溜まりに合流する。下の冷やされた水溜まりはポンプ39の吸込み作用によりチューブ37側に戻される。
水Wは循環経路に空気が混入されない程度あれば良いので、水位は収容部31の下側のチューブ接続部よりも上側にあれば十分である。
【0026】
冷却ベスト1は、上記のように構成されており、軽量且つ薄肉で、嵩張りはペットボトルP分だけになっている。従って、図6に示すように着用したときに着用者の動きの邪魔にはならない。
【0027】
また、冷却裏地47側の流路55はヒートシールで構成されており、チューブを這わせた場合よりも密度は高く配置でき、且つ、合成樹脂シート49の厚さはチューブの肉厚よりも薄く設定できる。更には、流路55は水Wが循環しているときには膨らむが、着用者と衣服本体3の間で押さえられてカーブが緩くなった側が着用者に当たるので、変形しないチューブを這わせた場合よりも、流路55と合成樹脂シート49を介した着用者との接触面積が大きくなる。そのため、チューブを這わせた場合よりも冷却効果が高くなっている。
【0028】
更に、チューブ37は接続箇所が露出していると、着用者の動きによってはその箇所で抜ける恐れがあるが、このチューブ37は冷却裏地47と衣服本体3との間でだけ外に露出しており、しかも冷却裏地47側の接続箇所は衣服本体3の後身ごろ5の下側で、着用者の動きが伝わり難い箇所で、且つ、冷却裏地47に対して平行に引っ張らないと脱着しない接続構成になっている。そのため、不用意に抜けることはない。
【0029】
着用しない場合には、衣服本体3から冷却裏地47を容易に取り外すことができる。スナップボタン45を開き、更にチューブ37を外して、衣服本体3と冷却裏地47は完全に別体になる。
チューブ37は、チューブ接続部57に外嵌めされた部位を手で引っ張ることで容易に脱着させることができる。
【0030】
冷却裏地47を押し潰して流路55を扁平にすれば、流路55に残っていた水Wの殆どを抜くことができる。後は、吊り下げて干しておいたりすれば残りも自然に抜け、水垢等の汚れは付き難くなる。また、冷却裏地47表面は拭くことで汚れを落とすことができる。
着用するときに、再びスナップボタン45を留めて、チューブを接続すれば、冷却裏地47を衣服本体3に取付けることができる。
【0031】
冷却裏地47が古くなったりして汚れが上記の作業では除去が難しくなれば、別の新しい冷却裏地47に交換すればよい。冷却裏地47は合成樹脂シート49、49の貼り合わせの一体成形で容易で製作でき、安い価格で提供できることから、消耗品として利用することができる。
【0032】
本発明の第2の実施の形態に係る冷却ベスト61を図面にしたがって説明する。
図7に示すように、冷却ベスト61の衣服本体63は、冷却ベスト1の衣服本体3と同様な形状になっているが、一枚のシートで構成されており、収容部31を収めるためのポケット21は設けられていない。
その代わりに、別体の外袋65を腰ベルト67で吊下げるようになっている。この外袋65はポケット21に相当するものになっており、収容部31が内ポケットとして取付けられている。
【0033】
建設工事の現場作業等、作業内容や作業状況によっては、安全を考慮して、上記した冷却衣服をインナーとして、その上に保護ジャケットを着用する場合がある。また、立って動き回るだけでなく、フォークリフトの操作のように椅子に座りながらの作業もある。オートバイに乗るような場合でも、通常は保護ジャケットを着用する。
このような場合に、ペットボトルPを背負っていると嵩張りが気になるが、上記のように腰ベルト67で吊るす形にすれば、インナーとしても快適に着用でき、図8に示すように、立ち姿勢であっても座り姿勢であっても、常に快適な冷却効果を長時間にわたって維持できる。
【0034】
本発明の第3の実施の形態に係る冷却ベスト71を図面にしたがって説明する。
図9図10に示すように、冷却ベスト71の衣服本体73は、若干デザインに変更はあるが、第1の実施の形態に係る冷却ベスト1の衣服本体3と大部分は同じように構成されており、同じような構成部分は同じ符号を付すことで説明を省略する。
但し、ポケット21に代えてポケット75が設けられている。このポケット75は、外面側がフラップ状蓋部75aになっており、線ファスナ75bで開閉するようになっている。ポケット75の内部の上端には、左右方向に間隔をあけてそれぞれ短尺のベルト75c、75cの一端側が縫着されている。それぞれのベルト75cの中間側と他端側にはスナップボタン75dの凹部と凸部が取付けられている。この凹凸係合により、ベルト75cがリング状の吊下げ部となる。
【0035】
ポケット75には収容部としてプラスチック製の柔軟な素材で構成されて上側が開口した冷却袋77が収容されている。
図14に示すように、この冷却袋77は収容部31と同様に縦長長方形の平袋状に製袋化されている。但し、この冷却袋77の上側の袋口がジッパー77aと閉止具77bにより閉じるようになっている。
閉止部77bは、棒部とC字状のクリップ部に分かれて、一方の袋面部のジッパー77aの下側に平行に棒部が固着されており、この棒部を包む方向で2枚の袋面部で折り返し、更に、クリップ部で挟むことで、2枚の袋面部は折り返された箇所で挟持されて密着されるので、袋口は閉止される。ジッパー77aと併用されて冷却袋77は二重にロックされる。
【0036】
他方の袋面部にはフラップ片77cが設けられており、このフラップ片77cに形成された穴に吊下げ部を挿通させることで、冷却袋77は吊下げられた状態でポケット75に収容される。
この冷却袋77には、収容部31と同様の位置関係で、チューブ37が接続されている。
冷却袋77に、容器79が収容される。この容器79は凍結可能な液体(この実施の形態では水)が封入されてネジ式の蓋79aで閉じられている。容器79は、剛性のプラスチック製(この実施の形態では、ポリエチレン(PE)製)で、扁平な四角形の箱状に薄肉で成形されている。容器79の形状は工夫されており、水が凍結して氷になっても、変形しないようになっている。
従って、この冷却ベスト71では、背中側が膨らまないので、壁や椅子の背もたれに背中側を付けても違和感が無い。
【0037】
図11に示すように、冷却裏地83は冷却裏地47と同様に構成されているが、流路55のパターンが異なっている。この流路55は後身ごろ5側の中央で、上下方向に並列して直線状に延びる2本の直線状部分55d、55dが横方向に直線状に延びる直線状部分55e、55e、……で短絡しており、左右の前身ごろ7、9側では蛇行部分55fの数が減っている。
このように、冷却裏地83のサイズや形状に合わせて流路55のパターンを自在に変更できる。また、上記したように、直線状部分55e、55e、……で短絡して、流路が複数に分岐しており、その分だけ流路密度が高くなっている。厳密な一筆書き状にはなっていないが、ポンプ作用により循環させているので、途中で水Wが溜まることはない。
【0038】
衣服本体73の内面側には、図12に示すように、スナップボタン45の雄部材45aに代わって、縁に適度な間隔をあけて複数の面ファスナ81のループ面81aが縫着により取付けられている。
それに対応して、図13に示すように、冷却裏地83の合わせ面側の縁にもフック面81bが取付けられている。
従って、ループ面81aとフック面81aが相対して、ループ面81aのループにフック面81bのフックが掛止されることで、冷却裏地83は衣服本体73に取付けられる。
【0039】
以上、本発明の実施の形態について詳述してきたが、具体的構成は、この実施の形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における設計の変更などがあっても発明に含まれる。
流路55のデザインは、衣服本体3、63、73の身ごろのサイズ等に応じて最適なものを採用すればよい。また、流路55のデザインは、身ごろのサイズが同じでも変更可能であり、流路55を密にすればそれだけ冷やす力が強くなる。
更に、冷却材は凍結した飲料入りのペットボトルには限定されず、容器に水を入れて凍結させたり、容器に氷等を入れたりしてもよい。
【符号の説明】
【0040】
1…冷却ベスト(第1の実施の形態)
3…衣服本体 3a…縁取りテープ 5…後身ごろ
7…左前身ごろ 9…右前身ごろ 11…肩部
13…ベルト 15…ベルト 17…ポケット
19…挿通型ガイド部 21…ポケット 21a、21b…袋布
21c…小開口 21d…挿通穴 23…ファスナ
25…ポケット 25a…袋布 25b、25c…挿通穴
27…ファスナ 29…断熱シート 31…収容部
33…口金 35…蓋体 37a、37b…チューブ
39…ポンプ 39a…コード 41…コントローラ
43…取付片 45…スナップボタン 45a…雄部材
45b…雌部材 47a、47b、47c…冷却裏地
49…合成樹脂シート 51…縁シール部 53…シール線
55…流路 55a…蛇行部分 55b…直線状部分
55c…端部 57…チューブ接続部 57a…先端管
61…冷却ベスト(第2の実施の形態)
63…衣服本体 65…外袋 67…腰ベルト
71…冷却ベスト(第3の実施の形態)
73…衣服本体 75…ポケット 75a…フラップ状蓋部
75b…線ファスナ 75c…ベルト 75d…スナップボタン
77…冷却袋 77a…ジッパー 77b…閉止具
77c…フラップ片 79…容器 79a…蓋
81…面ファスナ 81a…ループ面 81b…フック面
83…冷却裏地 55d、55e…直線状部分
55f…蛇行部分
P…ペットボトル W…水


図1
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