(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024178893
(43)【公開日】2024-12-25
(54)【発明の名称】樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
C08L 101/00 20060101AFI20241218BHJP
C08L 1/00 20060101ALI20241218BHJP
C08L 101/16 20060101ALN20241218BHJP
【FI】
C08L101/00 ZBP
C08L1/00
C08L101/16
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024049634
(22)【出願日】2024-03-26
(31)【優先権主張番号】P 2023097313
(32)【優先日】2023-06-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000005496
【氏名又は名称】富士フイルムビジネスイノベーション株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】西岡 紗知子
(72)【発明者】
【氏名】八百 健二
(72)【発明者】
【氏名】高木 慎平
【テーマコード(参考)】
4J002
4J200
【Fターム(参考)】
4J002AA001
4J002AB012
4J002AB021
4J002AB022
4J002CF031
4J002CF181
4J002GC00
4J002GG00
4J002GN00
4J002GQ00
4J200AA04
4J200BA05
4J200BA07
4J200BA11
4J200BA14
4J200BA38
4J200DA17
4J200DA18
4J200DA24
4J200DA28
4J200EA05
4J200EA11
4J200EA21
(57)【要約】
【課題】生分解性及び耐熱性に優れた樹脂成形体が得られる脂組成物の提供。
【解決手段】生分解性樹脂と、セルロース及びセルロース誘導体の少なくとも一方を主成分として含むセルロース構造体と、を含み、前記生分解性樹脂中に、前記セルロース構造体が平均径50μm以下で存在している樹脂組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
生分解性樹脂と、
セルロース及びセルロース誘導体の少なくとも一方を主成分として含むセルロース構造体と、
を含み、
前記生分解性樹脂中に、前記セルロース構造体が平均径50μm以下で存在している樹脂組成物。
【請求項2】
前記セルロース構造体が、セルロース多孔質構造体である請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項3】
前記セルロース及び前記セルロース誘導体の数平均分子量が15000以上50000以下である請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項4】
前記セルロース誘導体が、セルロースアセテートである請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項5】
前記生分解性樹脂に対するセルロース構造体の含有量が、0.1質量%以上10質量%以下である請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項6】
荷重たわみ温度(HDT)が、140℃以上である請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項7】
ISO 14855-1:2012に準ずる方法で測定した生分解率が28日間で30%以上である請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項8】
生分解性樹脂が、ポリ乳酸、ポリブチレンサクシネート、ポリブチレンサクシネートアジペート、セルロースアセテート、及びセルロースアセテートプロピオネートよりなる群から選択される少なくとも1種である請求項1に記載の樹脂組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、「核剤が結晶性の多糖類からなり、核剤の粒子径が500μm以下で、キチン、キトサンまたはカニ殻からなり、ポリ乳酸系または脂肪族ポリエステル系樹脂(a)100重量部に対し核剤(b)が0.1から10重量部の範囲にあることを特徴とする乳酸系または脂肪族ポリエステル樹脂系樹脂組成物。」が提案されている。
【0003】
特許文献2には、「多糖類及び/又は単糖類を含む生分解促進剤であって、該生分解促進剤中のキシロースの含有量が15質量%以上である生分解促進剤。生分解性樹脂100質量部に対して、この生分解促進剤を1質量部以上250質量部以下含む生分解性樹脂組成物。」が提案されている。
【0004】
特許文献3には、「ポリ乳酸(a1)と、融点が50~250℃の生分解性を有する脂肪族ポリエステル(a2)を含有する高分子成分(A)からなる樹脂組成物であって、前記ポリ乳酸(a1)と前記脂肪族ポリエステル(a2)の合計重量を基準として、前記ポリ乳酸(a1)を90~50重量%、及び、前記脂肪族ポリエステル(a2)を10~50重量%含有し、かつ、前記高分子成分(A)100重量部に対して、生分解性を有する天然物(B)を0.1~100重量部含有することを特徴とするポリ乳酸系樹脂組成物」が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008-8158号
【特許文献2】特開2022-21326号
【特許文献3】特開平11-241009号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、生分解性樹脂と、セルロース及びセルロース誘導体の少なくとも一方を主成分として含むセルロース構造体と、を含む樹脂組成物において、生分解性樹脂中に、セルロース構造体が平均径50μm超えで存在している場合に比べ、生分解性及び耐熱性に優れた樹脂成形体が得られる樹脂組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するための手段は、下記態様を含む。
<1>
生分解性樹脂と、
セルロース及びセルロース誘導体の少なくとも一方を主成分として含むセルロース構造体と、
を含み、
前記生分解性樹脂中に、前記セルロース構造体が平均径50μm以下で存在している樹脂組成物。
<2>
前記セルロース構造体が、セルロース多孔質構造体である<1>に記載の樹脂組成物。<3>
前記セルロース及び前記セルロース誘導体の数平均分子量が15000以上50000以下である<1>又は<2>に記載の樹脂組成物。
<4>
前記セルロース誘導体が、セルロースアセテートである<1>~<3>のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
<5>
前記生分解性樹脂に対するセルロース構造体の含有量が、0.1質量%以上10質量%以下である<1>~<4>のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
<6>
荷重たわみ温度(HDT)が、140℃以上である<1>~<5>のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
<7>
ISO 14855-1:2012に準ずる方法で測定した生分解率が28日間で30%以上である<1>~<6>のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
<8>
生分解性樹脂が、ポリ乳酸、ポリブチレンサクシネート、ポリブチレンサクシネートアジペート、セルロースアセテート、及びセルロースアセテートプロピオネートよりなる群から選択される少なくとも1種である<1>~<7>のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
【発明の効果】
【0008】
<1>、<6>、<7>又は<8>に係る発明によれば、生分解性樹脂と、セルロース及びセルロース誘導体の少なくとも一方を主成分として含むセルロース構造体と、を含む樹脂組成物において、生分解性樹脂中に、セルロース構造体が平均径50μm超えで存在している場合に比べ、生分解性及び耐熱性に優れた樹脂成形体が得られる樹脂組成物が提供される。
【0009】
<2>に係る発明によれば、セルロース構造体がセルロース非多孔質構造体である場合に比べ、生分解性及び耐熱性に優れた樹脂成形体が得られる樹脂組成物が提供される。
<3>に係る発明によれば、セルロース及び前記セルロース誘導体の数平均分子量が15000未満又は50000超えである場合に比べ、生分解性及び耐熱性に優れた樹脂成形体が得られる樹脂組成物が提供される。
<4>に係る発明によれば、セルロース誘導体がセルロースアセテートプロピオネートである場合に比べ、生分解性及び耐熱性に優れた樹脂成形体が得られる樹脂組成物が提供される。
【0010】
<5>に係る発明によれば、生分解性樹脂に対するセルロース構造体の含有量が、0.1質量%未満又は10質量%超えである場合に比べ、生分解性及び耐熱性に優れた樹脂成形体が得られる樹脂組成物が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の一例である実施形態について説明する。これらの説明および実施例は、実施形態を例示するものであり、発明の範囲を制限するものではない。
本明細書中に段階的に記載されている数値範囲において、一つの数値範囲で記載された上限値又は下限値は、他の段階的な記載の数値範囲の上限値又は下限値に置き換えてもよい。また、本明細書中に記載されている数値範囲において、その数値範囲の上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。
【0012】
各成分は該当する物質を複数種含んでいてもよい。
組成物中の各成分の量について言及する場合、組成物中に各成分に該当する物質が複数種存在する場合には、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数種の物質の合計量を意味する。
【0013】
<樹脂組成物>
本実施形態に係る樹脂組成物は、
生分解性樹脂と、
セルロース及びセルロース誘導体の少なくとも一方を主成分として含むセルロース構造体と、
を含み、
生分解性樹脂中に、前記セルロース構造体が平均径50μm以下で存在している。
樹脂組成物。
なお、セルロース構造体は、例えば、セルロース及びセルロース誘導体の少なくとも一方を主成分として含む粉体である。
【0014】
本実施形態に係る樹脂組成物は、上記構成により、生分解性及び耐熱性に優れた樹脂成形体が得られる。その理由は、次の通り推測される。
近年、SDGs(Sustainable Development Goals)に代表される環境意識から、生分解性樹脂への関心が高まっている。特に、生分解性樹脂の中でも、ポリ乳酸は、カーボンニュートラルな生分解性が高い樹脂であり、石油由来プラスチックの代替として期待されている。しかし、生分解性樹脂、特にポリ乳酸は、耐熱性が低く、用途が限定される。
生分解性樹脂に、石油系樹脂及び改質剤を複合化すれば、耐熱性を改善できるが、そうするとバイオマス度が低下し、CO2排出削減、石油資源節減などの環境効果が小さくなる。それだけでなく、益々、生分解性が損なわれる。
【0015】
そこで、本実施形態に係る樹脂組成物では、生分解性樹脂中に、セルロース構造体を平均径50μm以下で微細に存在させる。
生分解性の高いセルロース構造体を生分解性樹脂中に含ませることで、樹脂組成物全体の生分解速度が向上する。セルロース構造体の生分解が先行して起き、分解酵素及
び微生物が生分解性樹脂全体に濃縮されるため、生分解性樹脂の生分解速度が速くなると考えられる。
加えて、生分解性樹脂中に微細に存在するセルロース構造体は、生分解性樹脂中で結晶核剤として機能し、生分解性樹脂の結晶化を促進し、それにより、耐熱性も向上すると考えられる。
【0016】
以上から、本実施形態に係る樹脂組成物は、生分解性及び耐熱性に優れた樹脂成形体が得られると推測される。
【0017】
以下、本実施形態に係る樹脂組成物の詳細について説明する。
【0018】
(生分解性樹脂)
生分解性樹脂は、微生物により、水と二酸化炭素に分解される樹脂である。具体的には、本実施形態に限っては、生分解性樹脂とは、ISO 14855-1:2012に準じた方法で好気条件生分解率が、28日間で5%以上となる樹脂を意味する。
【0019】
生分解性樹脂としては、ポリエステル樹脂、天然高分子、ポリビニルアルコール等が挙げられる。
【0020】
ポリエステル樹脂としては、脂肪族ポリエステル樹脂、脂肪族芳香族ポリエステル樹脂等が挙げられる。
脂肪族ポリエステル樹脂としては、ポリ乳酸(PLA)、ポリグリコール酸(PGA)、ポリヒドロキシアルカノエート(PHA)、ポリカプロラクトン、ポリブチレンサクシネート(PBS)、ポリブチレンサクシネート/アジペート(PBSA)、ポリエチレンサクシネート(PBA)等のポリヒドロキシアルカン酸;等が挙げられる。
脂肪族芳香族ポリエステル樹脂としては、ポリブチレンアジペート/テレフタレート共重合樹脂(PBAT)、ポリテトラメチレンアジペート/テレフタレート共重合樹脂、等が挙げられる。
【0021】
天然高分子としては、デンプン、セルロース、キチン、キトサン、グルテン、ゼラチン、ゼイン、大豆タンパク、コラーゲン、ケラチン、等が挙げられる。
【0022】
生分解性樹脂としては、セルロース誘導体(セルロースアシレート、セルロースエーテル、ヒドロキシアルキルセルロース、カルボキシメチルセルロース)も挙げられる。
なお、セルロースアシレートとしては、セルロースアセテート(セルロースモノアセテート、セルロースジアセテート(DAC)、セルローストリアセテート)、セルロースアセテートプロピオネート(CAP)、セルロースアセテートブチレート(CAB)等が挙げられる。
【0023】
これらの生分解性の中でも、環境適正の観点から、生分解性としては、ポリ乳酸、ポリエチレンサクシネート、ポリブチレンサクシネートアジペート、ポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-3-ヒドロキシペンタノエート)、ポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-3-ヒドロキシヘキサノエート)、セルロースアセテート、及びセルロースアセテートプロピオネートよりなる群から選択される少なくとも1種が好適に挙げられ、特に、バイオマス樹脂及び生分解性樹脂の双方に該当する樹脂(特に、ポリ乳酸)が好ましい。
【0024】
これらの生分解性樹脂は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0025】
生分解性樹脂の含有量は、樹脂組成物に対して、50質量%以上99.9質量%以下が好ましく、90質量%以上99.9質量%以下がより好ましい。
【0026】
(セルロース構造体)
セルロース構造体は、セルロース及びセルロース誘導体の少なくとも一方を主成分として含む。
ここで、「セルロース及びセルロース誘導体の少なくとも一方を主成分とする」とは、セルロース構造体に対する、セルロース及びセルロース誘導体の合計含有量が90質量%以上であること、好ましくは、95質量%以上、98質量%以上、又は100質量%であることをいう。
【0027】
セルロースは、多数のβ-グルコース分子がグリコシド結合により直鎖状に重合した高分子化合物である。
一方、セルロース誘導体としては、セルロースアシレート、セルロースエーテル、ヒドロキシアルキルセルロース、カルボキシメチルセルロースなどが挙げられる。
これらの中でも、生分解性が高い観点から、セルロース誘導体としては、セルロースアシレートが好ましい。
【0028】
セルロースアシレートは、セルロースにおけるヒドロキシ基の少なくとも一部がアシル基により置換(アシル化)されたセルロース誘導体である。アシル基とは、-CO-RAC(RACは、水素原子又は炭化水素基を表す。)の構造を有する基である。
【0029】
セルロースアシレートは、例えば、下記の一般式(CA)で表されるセルロース誘導体である。
【0030】
【0031】
一般式(CA)中、A1、A2及びA3はそれぞれ独立に、水素原子又はアシル基を表し、nは2以上の整数を表す。ただし、n個のA1、n個のA2及びn個のA3のうちの少なくとも一部はアシル基を表す。分子中にn個あるA1は、全て同一でも一部同一でも互いに異なっていてもよい。同様に、分子中にn個あるA2及びn個あるA3もそれぞれ、全て同一でも一部同一でも互いに異なっていてもよい。
【0032】
A1、A2及びA3が表すアシル基は、当該アシル基中の炭化水素基が、直鎖状、分岐状及び環状のいずれであってもよいが、直鎖状又は分岐状であることが好ましく、直鎖状であることがより好ましい。
【0033】
A1、A2及びA3が表すアシル基は、当該アシル基中の炭化水素基が、飽和炭化水素基でも不飽和炭化水素基でもよいが、飽和炭化水素基であることがより好ましい。
【0034】
A1、A2及びA3が表すアシル基は、炭素数1以上6以下のアシル基が好ましい。すなわち、セルロースアシレートとしては、アシル基の炭素数が1以上6以下であるセルロースアシレートが好ましい。
【0035】
A1、A2及びA3が表すアシル基は、当該アシル基中の水素原子がハロゲン原子(例えば、フッ素原子、臭素原子、ヨウ素原子)、酸素原子、窒素原子などで置換された基でもよいが、無置換であることが好ましい。
【0036】
A1、A2及びA3が表すアシル基としては、ホルミル基、アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基(ブタノイル基)、プロペノイル基、ヘキサノイル基等が挙げられる。これらの中でもアシル基としては、樹脂粒子の生分解速度向上の観点から、炭素数2以上4以下のアシル基がより好ましく、炭素数2又は3のアシル基が更に好ましい。
【0037】
セルロースアシレートとしては、セルロースアセテート(セルロースモノアセテート、セルロースジアセテート(DAC)、セルローストリアセテート)、セルロースアセテートプロピオネート(CAP)、セルロースアセテートブチレート(CAB)等が挙げられる。
【0038】
セルロースアシレートは、生分解性が高い観点から、セルロースアセテートが好ましい。
【0039】
セルロースアシレートの置換度は、生分解性の観点から、1.7以上2.9以下が好ましく、置換度1.9以上2.6以下がより好ましく、2.0以上2.5以下が更に好まし
く、2.1以上2.4以下が特に好ましい。
【0040】
セルロースアシレートの置換度とは、セルロースが有するヒドロキシ基がアシル基により置換されている程度を示す指標である。つまり、置換度は、セルロースアシレートのアシル化の程度を示す指標となる。具体的には、置換度は、セルロースアシレートのD-グルコピラノース単位に3個あるヒドロキシ基がアシル基で置換された置換個数の分子内平均を意味する。置換度は、1H-NMR(JMN-ECA/JEOL RESONANCE社製)にて、セルロース由来水素とアシル基由来水素とのピークの積分比から求める。
【0041】
これらセルロース誘導体は、1種単独で使用してもよいし、複数種使用してもよい。
【0042】
-セルロース及びセルロース誘導体の数平均分子量-
セルロース及びセルロース誘導体の数平均分子量は、5000以上50000以下が好ましく、10000以上50000以下がより好ましく、15000以上30000以下がさらに好ましい。
セルロース及びセルロース誘導体の数平均分子量が15000以上であると、樹脂との混練前に、セルロース構造体が微細粉砕されるのが抑制される。その結果、粉砕後の二次凝集が抑制され、樹脂への微細な均一に近い分散が実現され易く、樹脂成形体の生分解性及び耐熱性が向上し易くなる。
セルロース及びセルロース誘導体の数平均分子量が50000以下であると、生分解性の低下が抑制される。
【0043】
セルロース及びセルロース誘導体の数平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー法(示差屈折率計 Optilab T-rEX/ Wyatt Technology社製、多角度光散乱検出器 DAWN HELEOS II/ Wyatt Technology社製、カラム TSKgel α-M、α-3000各1本/東ソー社製)にて、ジメチルアセトアミド(0.1M 塩化リチウム添加)を溶媒として測定される。
【0044】
セルロース構造体は、その他の成分を含んでもよい。
【0045】
(セルロース構造体の特性)
-生分解性樹脂中のセルロース構造体の平均径-
セルロース構造体は、生分解性樹脂中に、平均径50μm以下で存在しており、平均径5μm以下で存在することがより好ましく、平均径1μm以下で存在することがさらに好ましい。
生分解性樹脂中にセルロース構造体が平均径50μm以下で存在すると、樹脂への微細な分散となり、樹脂組成物の生分解性及び耐熱性が向上する。
なお、セルロース樹脂の改質能を十分発揮させ、樹脂組成物の生分解性及び耐熱性向上の観点から、セルロース構造体は、生分解性樹脂中に、平均径0.05μm以上で存在することが好ましい。
【0046】
生分解性樹脂中のセルロース構造体の平均径は、次の通り測定する。
樹脂組成物を切断する。走査型顕微鏡(SEM)により、樹脂組成物の切断面のセルロース構造体を倍率1000倍で観測し、SEM画像を得る。SEM画像を画像処理ソフトウェア「ImageJ」に取り込み、セルロース構造体の面積から円相当径を求める。そして、20個のセルロース構造体の円相当径の平均値を求め、平均径とする。
【0047】
-多孔質構造体-
セルロース構造体は、多孔質構造体であってもよいし、非多孔質構造体であってもよい。
ただし、セルロース多孔質構造体を適用すると、生分解性樹脂との接触面積が増え、生分解性が向上し易くなる。また、改質能も高まり、耐熱性も向上し易くなる。
【0048】
-比表面積-
セルロース構造体の比表面積は、1m2/g以上150m2/g以下が好ましく、より好ましくは、10m2/g以上150m2/g以下であり、さらに好ましくは、20m2/g以上100m2/g以下である。
セルロース構造体の比表面積が0.1m2/g以上であると、セルロース構造体の改質能が十分となり、耐熱性が向上する。
セルロース構造体の比表面積が150m2/g以下であると、樹脂との混練前に、セルロース構造体が微細崩壊されるのが抑制される。その結果、崩壊後の二次凝集が抑制され、樹脂への微細な均一に近い分散が実現され、樹脂成形体の生分解性及び耐熱性が向上する。
【0049】
セルロース構造体の比表面積は、BET比表面積であり、比表面積/細孔分布測定装置(BELSORP MAXII マイクロトラックベル社)を用いた、多点法の自動測定により測定された値である。測定温度は77Kとし、吸着ガスとして窒素ガスを用いる。
ただし、測定前に、試料(つまりセルロース構造体)に前処理として100℃で24時間の真空乾燥を実施し、試料の細孔内に吸着している水を取り除く。
【0050】
-空隙率-
セルロース構造体の空隙率は、10%以上50%以下が好ましく、より好ましくは、15%以上50%以下であり、さらに好ましくは、20%以上50%以下である。
セルロース構造体の比表面積が20%以上であると、セルロース構造体の改質能が十分となり、耐熱性が向上する。
セルロース構造体の空隙率が50%以下であると、樹脂との混練前に、セルロース構造体が微細に崩壊されるのが抑制される。その結果、崩壊後の二次凝集が抑制され、樹脂への微細な均一に近い分散が実現され、樹脂成形体の生分解性及び耐熱性が向上する。
【0051】
セルロース構造体の空隙率は、次の通り測定する。
走査型顕微鏡(SEM)により、セルロース構造体を倍率25000倍で観測し、閾SEM画像を得る。SEM画像を画像処理ソフトウェア「ImageJ」に取り込み、二値化処理して、セルロース構造体の全体及び空隙の面積を求める。そして、セルロース構造体全体の面積に対する、セルロース構造体の空隙の割合を求め、セルロース構造体の空隙率を求める。
この操作を、10回実施し、平均値を求める。
【0052】
-比重-
セルロース構造体の比重は、0.5g/cm3以上1.15g/cm3以下が好ましく、0.6g/cm3以上1g/cm3以下がより好ましく、0.7g/cm3以上0.9g/cm3以下がさらに好ましい。
セルロース構造体の比重が上記範囲であると、樹脂にセルロース構造体を混練したとき、樹脂への微細な均一に近い分散が実現され易くなり、樹脂成形体の生分解性及び耐熱性が向上する。
【0053】
セルロース構造体の比重の測定方法は、次の通りである。
構造体30gをサンプルとし、自動比重計(東洋精機製作所社製、DSG-1)を用いて、測定用液体を水からエタノールに変更した以外は、水中置換法で3回測定し、平均値を測定値とした
【0054】
(セルロース構造体の製造方法)
本実施形態に係るセルロース構造体は、例えば、次の方法により得られる。
(1)セルロース誘導体をセルロース誘導体に対する良溶媒に添加した後、加熱して、良溶媒にセルロース誘導体を溶解させた溶液Aを得る。
(2)溶液Aに、セルロース誘導体に対する貧溶媒を添加し、溶液Bを得る。
(3)溶液Bを急冷し、相分離により、セルロース誘導体のゲル状物質を生成する。
(4)ゲル状物質を洗浄した後、乾燥することで、セルロース誘導体を主成分とするセルロース多孔質構造体を得る。
(5)得られたセルロース多孔質構造体は、必要に応じて、解砕、篩分により、粗大粒子及び凝集物の除去を行ってもよい。解砕方法は、特に限定されないが、例えば、ジェットミル、振動ミル、ボールミル、ピンミルなどの乾式粉砕装置により行う。篩分方法は、例えば、振動篩、風力篩分機など公知のものにより行う。
【0055】
ここで、ゲル状物質を鹸化することで(つまりセルロース誘導体を鹸化することで)、鹸化の程度により、セルロース、又はセルロース及びセルロース誘導体を主成分とするセルロース多孔質構造体を得る。
【0056】
また、セルロース非多孔質構造体を得るには、例えば、懸濁乳化法によりセルロース粒子を得る方法、セルロースアセテート(DAC)原料の解砕などの方法がある。
【0057】
(セルロース構造体の含有量)
セルロース構造体の含有量は、生分解性樹脂に対して0.1質量%以上20質量%以下が好ましく、0.1質量%以上10質量%以下がより好ましく、1質量%以上5質量%以下がさらに好ましい。
セルロース構造体の含有量が上記範囲であると、十分に生分解性及び耐熱性が高い樹脂成形体が得られ易くなる。
【0058】
(その他成分)
本実施形態に係る樹脂組成物は、その他の成分を含んでもよい。
その他の成分としては、例えば、可塑剤、難燃剤、相溶化剤、離型剤、耐光剤、耐候剤、着色剤、顔料、改質剤、ドリップ防止剤、帯電防止剤、加水分解防止剤、充填剤、補強剤(ガラス繊維、炭素繊維、タルク、クレー、マイカ、ガラスフレーク、ミルドガラス、ガラスビーズ、結晶性シリカ、アルミナ、窒化ケイ素、窒化アルミニウム、ボロンナイトライド等)、受酸剤(酸化マグネシウム、酸化アルミニウム等の酸化物;水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化アルミニウム、ハイドロタルサイト等の金属水酸化物;炭酸カルシウム;タルク;など)、反応性トラップ剤(例えば、エポキシ化合物、酸無水物化合物、カルボジイミド等)などが挙げられる。
その他の成分の含有量は、樹脂組成物全量に対してそれぞれ、0質量%以上5質量%以下であることが好ましい。ここで、「0質量%」とはその他の成分を含まないことを意味する。
【0059】
(樹脂組成物の特性)
-荷重たわみ温度(HDT)-
本実施形態に係る樹脂組成物における、荷重たわみ温度(HDT)は、125℃以上が好ましく、140℃以上がより好ましく、150℃以上がさらに好ましい。ただし、成形加工性の観点から、荷重たわみ温度(HDT)は、例えば、200℃以下である。
荷重たわみ温度(HDT)が上記範囲であると、十分に耐熱性が高い樹脂成形体が得られる。
【0060】
(生分解率)
本実施形態に係る樹脂組成物における、ISO 14855-1:2012 JIS 14855-1に準ずる方法で測定した生分解率は、28日間で、30%以上が好ましく、50%以上がより好ましく、70%以上がさらに好ましい。ただし、形状維持性の観点から、生分解率は、例えば、100%以下である。
生分解率が上記範囲であると、十分に生分解性が高い樹脂成形体が得られ易くなる。
【0061】
ここで、荷重たわみ温度(HDT)及び生分解率は、後述する「実施例」で記載した方法で測定された値である。
【0062】
(樹脂組成物の製造方法)
本実施形態に係る樹脂組成物の製造方法としては、例えば、原料セルロース構造体と生分解性樹脂とを混合し、溶融混練する方法;などが挙げられる。溶融混練の手段としては、特に制限されず、例えば、二軸押出機、ヘンシェルミキサー、バンバリーミキサー、単軸スクリュー押出機、多軸スクリュー押出機、コニーダ等が挙げられる。
そして、混練条件を制御することで、原料セルロース構造体と生分解性樹脂との混練により原料セルロース構造体が崩壊した崩壊物(つまりセルロース構造体)と、を含む樹脂組成物が得られる。
【0063】
ここで、原料セルロース構造体は、平均径1μm以上500μm以下(好ましくは1μm以上355μm以下、より好ましくは1μm以上150μm以下)の構造体を適用することがよい。
原料セルロース構造体の平均径が1μm以上であると、樹脂に原料セルロース構造体を混練したとき、セルロース多孔質構造体が崩壊し、樹脂への微細な均一に近い分散が実現され易くなり、樹脂成形体の生分解性及び耐熱性が向上する。
原料セルロース構造体の平均径が500μm以下であると、樹脂との混練前に、セルロース多孔質構造体が微細に崩壊されるのが抑制される。その結果、崩壊後の二次凝集が抑制され、樹脂への微細な均一に近い分散が実現され易くなり、樹脂成形体の生分解性及び耐熱性が向上する。
【0064】
原料セルロース構造体の平均径の測定方法は、次の通りである。
走査型顕微鏡(SEM)により、セルロース多孔質構造体を倍率250倍で観測し、閾SEM画像を得る。SEM画像を画像処理ソフトウェア「ImageJ」に取り込み、セルロース多孔質構造体の面積から円相当径を求める。そして、20個のセルロース多孔質構造体の円相当径の平均値を求め、平均径とする。
【0065】
なお、原料セルロース構造体の構成は、上記平均径以外は、上記セルロース構造体と同じ構成であり、説明を省略する。
【0066】
<樹脂成形体>
本実施形態に係る樹脂成形体は、本実施形態に係る樹脂組成物を含む。つまり、本実施形態に係る樹脂成形体は、本実施形態に係る樹脂組成物と同じ組成で構成されている。
【0067】
本実施形態に係る樹脂成形体の成形方法としては、形状の自由度が高い観点から、射出成形によって得られた射出成形体が挙げられる。
本実施形態に係る樹脂成形体の射出成形は、例えば、日精樹脂工業社製NEX500、日精樹脂工業社製NEX150、日精樹脂工業社製NEX7000、日精樹脂工業社製PNX40、住友機械社製SE50D等の市販の装置を用いて行ってもよい。
【0068】
本実施形態に係る樹脂成形体は、他の成形方法によって得られた樹脂成形体であって
もよい。他の成形方法としては、例えば、押し出し成形、ブロー成形、熱プレス成形、カレンダ成形、コーティング成形、キャスト成形、ディッピング成形、真空成形、トランスファ成形などを適用してよい。
【0069】
本実施形態に係る樹脂成形体の用途として、電子・電気機器又は家電製品の筐体;電子・電気機器又は家電製品の各種部品;自動車の内装部品;ブロック組み立て玩具;プラスチックモデルキット;CD-ROM又はDVDの収納ケース;食器;飲料ボトル;食品トレイ;ラップ材;フィルム;シート;などが挙げられる。
【実施例0070】
以下に実施例について説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。なお、以下の説明において、特に断りのない限り、「部」及び「%」はすべて質量基準である。
【0071】
<セルロース構造体の作製>
(セルロース構造体CS(1))
容器に、セルロースアセテートDAC(1)5質量部をジメチルホルムアミド20質量部に添加した溶液Aを、90℃下で1時間攪拌する。溶液A中で、ジメチルホルムアミドにセルロースアセテート溶解したのち、溶液Aに、ヘキサノール25質量部を攪拌しながらゆっくり添加し、得られた溶液Bを1時間攪拌する。その後、溶液Bを容器ごと氷水中に浸漬急冷し、相分離による、セルロース構造体のゲル生成物を得た。生成したゲル生成物をエタノール200質量部で洗浄し、50℃24時間で真空乾燥して、セルロース構造体を得た。その後、構造体をミルミキサーで解砕、106μm篩網での篩分を実施し、微粉砕したセルロース構造体を得た。
【0072】
(セルロース構造体CS(2))
篩分網のメッシュ径を38μmにした以外は、セルロース構造体CS(1)と同様にして、セルロース構造体CS(2)を得た。
【0073】
(セルロース構造体CS(3))
セルロースアセテートを7.5質量部にした以外は、セルロース構造体CS(1)と同様にして、セルロース構造体CS(3)を得た。
【0074】
(セルロース構造体CS(4))
セルロースアセテートを3.5質量部にした以外は、セルロース構造体CS(1)と同様にして、セルロース構造体CS(4)を得た。
【0075】
(セルロース構造体CS(5))
セルロースアセテートDAC(1)をDAC(2)に変更した以外は、セルロース構造体CS(1)と同様にして、セルロース構造体CS(5)を得た。
【0076】
(セルロース構造体CS(6))
セルロースアセテートDAC(1)をDAC(3)に変更した以外は、セルロース構造体CS(1)と同様にして、セルロース構造体CS(6)を得た。
【0077】
(セルロース構造体CS(7))
セルロースアセテートDAC(1)をDAC(4)に変更した以外は、セルロース構造体CS(1)と同様にして、セルロース構造体CS(7)を得た。
【0078】
(セルロース構造体CS(8))
セルロースアセテートをトリアセチルセルロースに変更した以外は、セルロース構造体CS(1)と同様にして、セルロース構造体CS(8)を得た。
【0079】
(セルロース構造体CS(9))
セルロースアセテートをセルロースアセテートプロピオネートに変更した以外は、セルロース構造体CS(1)と同様にして、セルロース構造体CS(9)を得た。
【0080】
(セルロース構造体CS(10))
セルロースアセテートをセルロースアセテートブチレートに変更した以外は、セルロース構造体CS(1)と同様にして、セルロース構造体CS(10)を得た。
【0081】
(セルロース構造体CS(11))
ゲル生成物のエタノール洗浄前にアルカリけん化した以外は、セルロース構造体CS(1)と同様にして、セルロース構造体CS(11)を得た。
【0082】
(セルロース構造体CS(12))
篩分網のメッシュ径を212μmにした以外は、セルロース構造体CS(1)と同様にして、セルロース構造体CS(12)を得た。
【0083】
(セルロース構造体CS(13))
セルロースアセテートを10.0質量部にした以外は、セルロース構造体CS(1)と同様にして、セルロース構造体CS(13)を得た。
【0084】
(セルロース構造体CS(14))
セルロースアセテートを12.5質量部にした以外は、セルロース構造体CS(1)と同様にして、セルロース構造体CS(12)を得た。
【0085】
(セルロース構造体CS(15))
ジメチルホルムアミドを120質量部、ヘキサノールを370質量部に変更した以外は、セルロース構造体CS(1)と同様にして、セルロース構造体CS(15)を得た。
【0086】
(セルロース構造体CS(16))
セルロースアセテートDAC(1)をDAC(5)に変更した以外は、セルロース構造体CS(1)と同様にして、セルロース構造体CS(16)を得た。
【0087】
(セルロース構造体CS(17))
解砕後の篩分をしなかった以外は、セルロース構造体CS(1)と同様にして、セルロース構造体CS(17)を得た。
【0088】
(セルロース構造体CS(C1))
セルロースアセテートDAC(1)をミルミキサーで解砕後、106μm篩分網で篩い、セルロース構造体(C1)を得た。
【0089】
(セルロース構造体CS(C2))
セルロースアセテートDAC(1)130質量部を酢酸エチル870質量部に溶解した。これを炭酸カルシウム50質量部で純水500質量部に分散させた分散液に加え、3時間攪拌した。これにカルボキシメチルセルロース4質量部とメチルエチルケトン200質量部を純水600質量部に分散させた分散液に加え、高速乳化機で5分間攪拌した。これに10gの水酸化ナトリウムを加え、80℃で3時間攪拌し、酢酸エチルとメチルエチルケトンを除去した。これに10gの希塩酸を加え、残渣をろ過し非多孔質セルロース粒子を得た。
【0090】
(セルロース構造体の特性)
得られたセルロース構造体の下記特性について、既述の方法に従って測定した。
・セルロース構造体の平均径
・セルロース構造体の比表面積(表中「BET」と表記)
・セルロース構造体の空隙率
・セルロース構造体の比重
【0091】
<実施例1~25、比較例1~3>
表1に示す、組成、シリンダ温度及び混練トルクの条件で、各成分を2軸押出装置(芝浦機械社製、TEM58SS)に仕込み、各成分を混練、冷却及び裁断して樹脂ペレット(樹脂組成物に相当)を得た。
【0092】
<評価>
(分散径)
生分解性樹脂中に存在するセルロース構造体の平均径(表中「分散径」と表記)を、既述の方法に従って測定した。
【0093】
(生分解率)
ラボミル(ダルトン製、LM-05)により、得られた樹脂ペレットを粉砕した後、100μmメッシュで篩分し、通過分を回収した。回収物に対して、ISO 14855-1:2012に準ずる方法で、好気性生分解測定を実施し、28日間後の生分解率を求めた。
【0094】
(荷重たわみ温度(HDT))
表1に示すシリンダ温度、金型温度及び金型内保持時間の条件で、各例の樹脂ペレットを射出成形装置(日精樹脂工業製、NEX500)に仕込み、ISO多目的ダンベル試験片(試験部 幅8mm×厚さ4mm×長さ110mm)を成形した。
得られた試験片に対して、HDT測定装置(東洋精機製作所製、HDT-3)を用いて、ISO75-1:2020に準じ、荷重0.45MPaにおける荷重たわみ温度(HDT)を測定した。
【0095】
<使用材料>
以下、使用材料の詳細について、説明する。
-添加剤の原料-
・DAC(1):イーストマンケミカル(株)製「商品名CA398-3」、セルロースジアセテート、数平均分子量Mn=15000
・DAC(2):(株)ダイセル製「商品名L20」、セルロースジアセテート、数平均分子量Mn=15000
・DAC(3):(株)ダイセル製「商品名L50」、セルロースジアセテート、数平均分子量Mn=50000
・DAC(4):(株)ダイセル製「商品名L70」、セルロースジアセテート、数平均分子量Mn=75000
・DAC(5):自社合成セルロースジアセテート、数平均分子量Mn=13000
・TAC :(株)ダイセル製「商品名LT-35」、セルローストリアセテート、数平均分子量Mn=50000
・CAP :イーストマンケミカル(株)製「商品名CAP482-20」、セルロースアセテートプロピオネート、数平均分子量Mn=72000
・CAB :イーストマンケミカル(株)製「商品名CAB381-20」、セルロースアセテートブチレート、数平均分子量Mn=85000
・CNF 」スギノマシン(株)製「商品名BiNFIS DRY」、セルロースナノファイバー
【0096】
-生分解性樹脂-
・PLA :ポリ乳酸(ネイチャーワークス製、Ingeo3001D)
・PBS :ポリブチレンサクシネート(PTT MCC Biochem製 Bio-PBS)
・PBSA:ポリブチレンサクシネートアジペート(PTT MCC Biochem
Bio-PBSA)
・CAP :セルロースアセテートプロピオネート(イーストマンケミカル製、CAP482-20)
【0097】
【0098】
【0099】
上記結果から、本実施例では、比較例に比べ、生分解性及び耐熱性が高い樹脂成形体(つまり樹脂組成物)が得られることがわかる。
なお、実施例1において、生分解性樹脂を「ポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-3-ヒドロキシペンタノエート)」、又は「ポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-3-ヒドロキシヘキサノエート)」に置き換えても、実施例1と同様に、生分解性及び耐熱性が高い結果が得られた。
【0100】
本実施形態は、下記態様を含む。
(((1)))
生分解性樹脂と、
セルロース及びセルロース誘導体の少なくとも一方を主成分として含むセルロース構造体と、
を含み、
前記生分解性樹脂中に、前記セルロース構造体が平均径50μm以下で存在している樹脂組成物。
(((2)))
前記セルロース構造体が、セルロース多孔質構造体である(((1)))に記載の樹脂組成物。
(((3)))
前記セルロース及び前記セルロース誘導体の数平均分子量が15000以上50000以下である(((1)))又は(((2)))に記載の樹脂組成物。
(((4)))
前記セルロース誘導体が、セルロースアセテートである(((1)))~(((3)))のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
(((5)))
前記生分解性樹脂に対するセルロース構造体の含有量が、0.1質量%以上10質量%以下である(((1)))~(((4)))のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
(((6)))
荷重たわみ温度(HDT)が、140℃以上である(((1)))~(((5)))のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
(((7)))
ISO 14855-1:2012に準ずる方法で測定した生分解率が28日間で30%以上である(((1)))~(((6)))のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
(((8)))
生分解性樹脂が、ポリ乳酸、ポリブチレンサクシネート、ポリブチレンサクシネートアジペート、セルロースアセテート、及びセルロースアセテートプロピオネートよりなる群から選択される少なくとも1種である(((1)))~(((7)))のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
【0101】
上記態様の効果は、次の通りである。
(((1)))、(((6)))、(((7)))又は(((8)))に係る発明によれば、生分解性樹脂と、セルロース及びセルロース誘導体の少なくとも一方を主成分として含むセルロース構造体と、を含む樹脂組成物において、生分解性樹脂中に、セルロース構造体が平均径50μm超えで存在している場合に比べ、生分解性及び耐熱性に優れた樹脂成形体が得られる樹脂組成物が提供される。
【0102】
(((2)))に係る発明によれば、セルロース構造体がセルロース非多孔質構造体である場合に比べ、生分解性及び耐熱性に優れた樹脂成形体が得られる樹脂組成物が提供される。
(((3)))に係る発明によれば、セルロース及び前記セルロース誘導体の数平均分子量が15000未満又は50000超えである場合に比べ、生分解性及び耐熱性に優れた樹脂成形体が得られる樹脂組成物が提供される。
(((4)))に係る発明によれば、セルロース誘導体がセルロースアセテートプロピオネートである場合に比べ、生分解性及び耐熱性に優れた樹脂成形体が得られる樹脂組成物が提供される。
【0103】
(((5)))に係る発明によれば、生分解性樹脂に対するセルロース構造体の含有量が、0.1質量%未満又は10質量%超えである場合に比べ、生分解性及び耐熱性に優れた樹脂成形体が得られる樹脂組成物が提供される。