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特開2024-178894セルロース多孔質構造体、及び樹脂組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024178894
(43)【公開日】2024-12-25
(54)【発明の名称】セルロース多孔質構造体、及び樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
   C08J 3/14 20060101AFI20241218BHJP
   C08L 1/00 20060101ALI20241218BHJP
   C08L 101/00 20060101ALI20241218BHJP
   C08J 3/20 20060101ALI20241218BHJP
【FI】
C08J3/14 CEP
C08J3/14 CEZ
C08L1/00
C08L101/00
C08J3/20 Z CER
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024049635
(22)【出願日】2024-03-26
(31)【優先権主張番号】P 2023097314
(32)【優先日】2023-06-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000005496
【氏名又は名称】富士フイルムビジネスイノベーション株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】西岡 紗知子
(72)【発明者】
【氏名】八百 健二
(72)【発明者】
【氏名】高木 慎平
【テーマコード(参考)】
4F070
4J002
【Fターム(参考)】
4F070AA02
4F070AA15
4F070AA18
4F070AA32
4F070AA47
4F070AB02
4F070AC36
4F070AC47
4F070AE28
4F070AE30
4F070DA24
4F070DA48
4F070DB09
4F070DC03
4F070DC06
4F070DC07
4F070DC08
4F070FC06
4J002AA002
4J002AB011
4J002AB012
4J002AB021
4J002AB022
4J002AB042
4J002AD012
4J002AD032
4J002AF022
4J002BB012
4J002BB112
4J002BC032
4J002BE022
4J002BG042
4J002BG052
4J002BG062
4J002CD002
4J002CF032
4J002CF062
4J002CF182
4J002CF192
4J002CH022
4J002CK022
4J002CL002
4J002GG01
4J002GG02
4J002GN00
4J002GQ00
(57)【要約】
【課題】透明性及び衝撃強度が高い樹脂成形体が得られるセルロース多孔質構造体の提供。
【解決手段】セルロース及びセルロース誘導体の少なくとも一方を主成分として含み、比表面積が1m/g以上150m/g以下であり、空隙率が10%以上50%以下であるセルロース多孔質構造体。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
セルロース及びセルロース誘導体の少なくとも一方を主成分として含み、
比表面積が1m/g以上150m/g以下であり、
空隙率が10%以上50%以下であるセルロース多孔質構造体。
【請求項2】
前記セルロース多孔質構造体を樹脂と混練したとき、前記セルロース多孔質構造体は、前記樹脂中に、平均径50μm以下で存在する請求項1に記載のセルロース多孔質構造体。
【請求項3】
前記セルロース及び前記セルロース誘導体の数平均分子量が15000以上である請求項1に記載のセルロース多孔質構造体。
【請求項4】
セルロース誘導体が、セルロースアセテートである請求項1に記載のセルロース多孔質構造体。
【請求項5】
透明樹脂と、
請求項1~請求項4のいずれか1項に記載のセルロース多孔質構造体と、
を含む混練物からなる樹脂組成物。
【請求項6】
前記樹脂組成物の成形体の厚さが2mmのときのヘイズ値が15%以下である請求項5に記載の樹脂組成物。
【請求項7】
シャルピー衝撃強度が2.5kJ/m以上である請求項5に記載の樹脂組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セルロース多孔質構造体、及び樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、「セルロースアセテートと、塩基性化合物と、水を含む溶媒とを含む流動性の均一組成物を準備し、セルロースアセテートの脱アセチル反応により、当該組成物をゲル化させる工程を含む、多孔質セルロース媒体の製造方法。」が提案されている。
【0003】
特許文献2には、「セルロースアセテートを含む粒子であって、前記粒子は、平均粒子径が80nm以上100μm以下、真球度が0.7以上1.0以下、表面平滑度が80%以上100%以下、及び水に対する表面接触角が100°以上であり、前記セルロースアセテートのアセチル総置換度が0.7以上2.9以下である、セルロースアセテートを含む粒子。」が提案されている。
【0004】
特許文献3には、「ポリ乳酸(a1)と、融点が50~250℃の生分解性を有する脂肪族ポリエステル(a2)を含有する高分子成分(A)からなる樹脂組成物であって、前記ポリ乳酸(a1)と前記脂肪族ポリエステル(a2)の合計重量を基準として、前記ポリ乳酸(a1)を90~50重量%、及び、前記脂肪族ポリエステル(a2)を10~50重量%含有し、かつ、前記高分子成分(A)100重量部に対して、生分解性を有する天然物(B)を0.1~100重量部含有することを特徴とするポリ乳酸系樹脂組成物」が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開公報2016/159334号
【特許文献2】国際公開公報2020/188698号
【特許文献3】特開平11-241009号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、セルロース及びセルロース誘導体の少なくとも一方を主成分として含むセルロース多孔質構造体において、比表面積が1m/g未満若しくは150m/g超え、又は空隙率が10%未満若しくは50%超えである場合に比べ、透明性及び衝撃強度が高い樹脂成形体が得られるセルロース多孔質構造体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するための手段は、下記態様を含む。
<1>
セルロース及びセルロース誘導体の少なくとも一方を主成分として含み、
比表面積が1m/g以上150m/g以下であり、
空隙率が10%以上50%以下であるセルロース多孔質構造体。
<2>
前記セルロース多孔質構造体を樹脂と混練したとき、前記セルロース多孔質構造体は、前記樹脂中に、平均径50μm以下で存在する<1>に記載のセルロース多孔質構造体。<3>
前記セルロース及び前記セルロース誘導体の数平均分子量が15000以上である<1>又は<2>に記載のセルロース多孔質構造体。
<4>
セルロース誘導体が、セルロースアセテートである<1>~<3>のいずれか1項に記載のセルロース多孔質構造体。
<5>
透明樹脂と、
<1>~<4>のいずれか1項に記載のセルロース多孔質構造体と、
を含む混練物からなる樹脂組成物。
<6>
前記樹脂組成物の成形体の厚さが2mmのときのヘイズ値が15%以下である<5>に記載の樹脂組成物。
<7>
シャルピー衝撃強度が2.5kJ/m以上である<5>又は<6>に記載の樹脂組成物。
【発明の効果】
【0008】
<1>に係る発明によれば、セルロース及びセルロース誘導体の少なくとも一方を主成分として含むセルロース多孔質構造体において、比表面積が1m/g未満若しくは150m/g超え、又は空隙率が10%未満若しくは50%超えである場合に比べ、透明性及び衝撃強度が高い樹脂成形体が得られるセルロース多孔質構造体が提供される。
【0009】
<2>に係る発明によれば、セルロース多孔質構造体を樹脂と混練したとき、セルロース多孔質構造体は、樹脂中に、平均径50μm超えで存在するである場合に比べ、透明性及び衝撃強度が高い樹脂成形体が得られるセルロース多孔質構造体が提供される。
<3>に係る発明によれば、セルロース及びセルロース誘導体の数平均分子量が15000未満である場合に比べ、透明性及び衝撃強度が高い樹脂成形体が得られるセルロース多孔質構造体が提供される。
<4>に係る発明によれば、セルロース誘導体がセルロースアセテートプロピオネートである場合に比べ、生分解性と共に、透明性及び衝撃強度が高い樹脂成形体が得られるセルロース多孔質構造体が提供される。
【0010】
<5>、<6>又は<7>に係る発明によれば、セルロース及びセルロース誘導体の少なくとも一方を主成分として含むセルロース多孔質構造体において、比表面積が1m/g未満若しくは150m/g超え、又は空隙率が10%未満若しくは50%超えであるセルロース多孔質構造体を適用した場合に比べ、透明性及び衝撃強度が高い樹脂成形体が得られる樹脂組成物が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の一例である実施形態について説明する。これらの説明および実施例は、実施形態を例示するものであり、発明の範囲を制限するものではない。
本明細書中に段階的に記載されている数値範囲において、一つの数値範囲で記載された上限値又は下限値は、他の段階的な記載の数値範囲の上限値又は下限値に置き換えてもよい。また、本明細書中に記載されている数値範囲において、その数値範囲の上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。
【0012】
各成分は該当する物質を複数種含んでいてもよい。
組成物中の各成分の量について言及する場合、組成物中に各成分に該当する物質が複数種存在する場合には、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数種の物質の合計量を意味する。
【0013】
<セルロース多孔質構造体>
本実施形態に係るセルロース多孔質構造体は、セルロース及びセルロース誘導体の少なくとも一方を主成分として含み、比表面積が1m/g以上150m/g以下であり、空隙率が10%以上50%以下である。
本実施形態に係るセルロース多孔質構造体は、例えば、セルロース及びセルロース誘導体の少なくとも一方を主成分として含む粉体である。
【0014】
本実施形態に係るセルロース多孔質構造体は、上記構成により、透明性及び衝撃強度が高い樹脂成形体が得られる。その理由は、次の通り推測される。
【0015】
セルロース及びセルロース誘導体を主成分とするセルロース構造体は、コンポスト、活性汚泥、海水のいずれの環境下でも生分解性が速く、様々な用途で実用化されている。
その用途の一つとして、衝撃強度を向上させる改質剤がある。
【0016】
しかし、透明樹脂に、セルロース構造体を混練すると、得られる樹脂組成物(つまり樹脂組成物から得られる樹脂成形体)の透明性が低下することがある。これは、セルロース構造体が透明樹脂に微細に分散され難く、分散性が低いことに起因すると考えられる。
また、セルロース構造体による、さらなる衝撃強度も求められている。
【0017】
それに対して、上記範囲の比表面積及び空隙率のセルロース多孔質構造体は、易崩壊性を有する。それにより、透明樹脂にセルロース多孔質構造体に混練すると、セルロース多孔質構造体が崩壊し、透明樹脂中に微細且つ均一に近い状態で分散される。そのため、透明樹脂の透明性低下が抑制され、透明樹脂本来の透明性が維持され易くなる。
一方、セルロース多孔質構造体が透明樹脂中に微細且つ均一に近い状態で分散されることで、透明樹脂の結晶化が高まる。それに加え、セルロース多孔質構造体の多孔質構造により、セルロース多孔質構造体と透明樹脂との接点が増加し、セルロース多孔質構造体の改質能が高まり、そのため、透明樹脂の耐衝撃性が向上すると考えられる。
【0018】
また、透明樹脂の透明性を発現するには、添加するセルロース構造体が小さなサイズで且つ均一に近くに分散することがよい。例えば、セルロースナノファイバーなど、サイズが小さなセルロース構造体は既存であるが、これらは高い水素結合性のため、混練で透明樹脂中に添加する際に、2次凝集を起こしやすく、サイズが大きくなるため、透明樹脂の透明性が大幅に低下する。一方、本実施形態に係るセルロース多孔質構造体は、混練トルクで解砕することで、樹脂中で2次凝集を起こし難く、小さなサイズで均一に分散できるため、高い透明性を発現できると考えられる。
また、衝撃強度については均一に近い分散に加え、透明樹脂との結着性(つまり接触面積)を大きくすることがよい。本実施形態に係るセルロース多孔質構造体は上述したように混練で解砕しながら透明樹脂に分散できるため、解砕面は不規則で透明樹脂との接触面積を大きくできる。従って、高い衝撃強度を得ることができる。
【0019】
以上から、本実施形態に係るセルロース多孔質構造体は、上記構成により、透明性及び衝撃強度が高い樹脂成形体が得られると推測される。
【0020】
ここで、近年、SDGs(Sustainable Development Goals)に代表される環境意識から、バイオマス樹脂又は生分解性樹脂への関心が高まっている。特に、バイオマス樹脂及び生分解性樹脂の中でも、ポリ乳酸は、カーボンニュートラルな生分解性が高い樹脂であり、石油由来プラスチックの代替として期待されている。しかし、バイオマス樹脂及び生分解性樹脂、特にポリ乳酸は、耐衝撃性が低く、用途が限定される。
バイオマス樹脂及び生分解性樹脂に、石油系樹脂及び改質剤を複合化すれば、耐衝撃性を改善できるが、そうするとバイオマス度が低下し、CO排出削減、石油資源節減などの環境効果が小さくなる。それだけでなく、改質剤により、バイオマス樹脂及び生分解性樹脂が透明樹脂(特にポリ乳酸)である場合、樹脂本来の透明性を損なってしまう。
【0021】
しかし、本実施形態に係るセルロース多孔質構造体を適用すれば、透明樹脂として、バイオマス樹脂又は生分解性樹脂を適用しても、バイオマス度又は生分解性が高く、かつ透明性及び衝撃強度も高い樹脂成形体が得られる。
【0022】
なお、例えば、生分解性樹脂及び真球度が0.9以上のセルロース粒子により、高いバイオマス度を維持したまま、優れた成形加工性、強度と可撓性が得られたことが報告されている。しかし、セルロース粒子の比表面積が小さいため、効果発現に必要な添加量が多く生分解樹脂本来の透明性及び耐衝撃性を阻害する。
また、例えば、ポリ乳酸と融点が50℃以上250℃以下の生分解性ポリエステルと天然物からなる樹脂組成物により、ポリ乳酸の特徴を維持したまま、生分解速度を改善したことが報告されている(例えば特許文献3)。しかし、脂肪族ポリエステルがバイオマス樹脂ではないためバイオマス度が低下する。また、天然物の粒径が大きく、樹脂との接触面積が小さい、更にはポリ乳酸と脂肪族ポリエステルの相溶性が低く、海島ドメインを形成してしまうため、微細に分散され難いため耐衝撃性が低い。
【0023】
以下、本実施形態に係るセルロース多孔質構造体の詳細について説明する。
【0024】
(セルロース及びセルロース誘導体)
本実施形態に係るセルロース多孔質構造体は、セルロース及びセルロース誘導体の少なくとも一方を主成分として含む。
ここで、「セルロース及びセルロース誘導体の少なくとも一方を主成分とする」とは、セルロース多孔質構造体に対する、セルロース及びセルロース誘導体の合計含有量が90質量%以上であり、好ましくは、95質量%以上、98質量%以上、又は100質量%であることをいう。
【0025】
セルロースは、多数のβ-グルコース分子がグリコシド結合により直鎖状に重合した高分子化合物である。
一方、セルロース誘導体としては、セルロースアシレート、セルロースエーテル、ヒドロキシアルキルセルロース、カルボキシメチルセルロースなどが挙げられる。
これらの中でも、生分解性が高い観点から、セルロース誘導体としては、セルロースアシレートが好ましい。
【0026】
セルロースアシレートは、セルロースにおけるヒドロキシ基の少なくとも一部がアシル基により置換(アシル化)されたセルロース誘導体である。アシル基とは、-CO-RAC(RACは、水素原子又は炭化水素基を表す。)の構造を有する基である。
【0027】
セルロースアシレートは、例えば、下記の一般式(CA)で表されるセルロース誘導体である。
【0028】
【化1】

【0029】
一般式(CA)中、A、A及びAはそれぞれ独立に、水素原子又はアシル基を表し、nは2以上の整数を表す。ただし、n個のA、n個のA及びn個のAのうちの少なくとも一部はアシル基を表す。分子中にn個あるAは、全て同一でも一部同一でも互いに異なっていてもよい。同様に、分子中にn個あるA及びn個あるAもそれぞれ、全て同一でも一部同一でも互いに異なっていてもよい。
【0030】
、A及びAが表すアシル基は、当該アシル基中の炭化水素基が、直鎖状、分岐状及び環状のいずれであってもよいが、直鎖状又は分岐状であることが好ましく、直鎖状であることがより好ましい。
【0031】
、A及びAが表すアシル基は、当該アシル基中の炭化水素基が、飽和炭化水素基でも不飽和炭化水素基でもよいが、飽和炭化水素基であることがより好ましい。
【0032】
、A及びAが表すアシル基は、炭素数1以上6以下のアシル基が好ましい。すなわち、セルロースアシレートとしては、アシル基の炭素数が1以上6以下であるセルロースアシレートが好ましい。
【0033】
、A及びAが表すアシル基は、当該アシル基中の水素原子がハロゲン原子(例えば、フッ素原子、臭素原子、ヨウ素原子)、酸素原子、窒素原子などで置換された基でもよいが、無置換であることが好ましい。
【0034】
、A及びAが表すアシル基としては、ホルミル基、アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基(ブタノイル基)、プロペノイル基、ヘキサノイル基等が挙げられる。これらの中でもアシル基としては、樹脂粒子の生分解速度向上の観点から、炭素数2以上4以下のアシル基がより好ましく、炭素数2又は3のアシル基が更に好ましい。
【0035】
セルロースアシレートとしては、セルロースアセテート(セルロースモノアセテート、セルロースジアセテート(DAC)、セルローストリアセテート)、セルロースアセテートプロピオネート(CAP)、セルロースアセテートブチレート(CAB)等が挙げられる。
【0036】
セルロースアシレートは、生分解性が高い観点から、セルロースアセテートが好ましい。
【0037】
セルロースアシレートの置換度は、生分解性の観点から、1.7以上2.9以下が好ましく、置換度1.9以上2.6以下がより好ましく、2.0以上2.5以下が更に好ましく、2.1以上2.4以下が特に好ましい。
【0038】
セルロースアシレートの置換度とは、セルロースが有するヒドロキシ基がアシル基により置換されている程度を示す指標である。つまり、置換度は、セルロースアシレートのアシル化の程度を示す指標となる。具体的には、置換度は、セルロースアシレートのD-グルコピラノース単位に3個あるヒドロキシ基がアシル基で置換された置換個数の分子内平均を意味する。置換度は、H-NMR(JMN-ECA/JEOL RESONANCE社製)にて、セルロース由来水素とアシル基由来水素とのピークの積分比から求める。
【0039】
これらセルロース誘導体は、1種単独で使用してもよいし、複数種使用してもよい。
【0040】
-セルロース及びセルロース誘導体の数平均分子量-
セルロース及びセルロース誘導体の数平均分子量は、5000以上が好ましく、10000以上がより好ましく、15000以上がさらに好ましい。
セルロース及びセルロース誘導体の数平均分子量が上記範囲であると、樹脂との混練前に、セルロース多孔質構造体が微細崩壊されるのが抑制される。その結果、崩壊後の二次凝集が抑制され、樹脂への微細な均一に近い分散が実現され易く、樹脂成形体の透明性及び耐衝撃強度が向上し易くなる。
ただし、生分解性の低下抑制の観点から、セルロース及びセルロース誘導体の数平均分子量は、50000以下が好ましく、30000以下がより好ましい。
【0041】
セルロース及びセルロース誘導体の数平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー法(示差屈折率計 Optilab T-rEX/ Wyatt Technology社製、多角度光散乱検出器 DAWN HELEOS II/ Wyatt Technology社製、カラム TSKgel α-M、α-3000各1本/東ソー社製)にて、ジメチルアセトアミド(0.1M 塩化リチウム添加)を溶媒として測定される。
【0042】
(その他成分)
本実施形態に係るセルロース多孔質構造体は、その他の成分を含んでもよい。
【0043】
(セルロース多孔質構造体の特性)
-比表面積-
本実施形態に係るセルロース多孔質構造体の比表面積は、1m/g以上150m/g以下であり、好ましくは、10m/g以上150m/g以下であり、より好ましくは、20m/g以上100m/g以下である。
セルロース多孔質構造体の比表面積が1m/g以上であると、セルロース多孔質構造体の改質能が十分となり、耐衝撃性が向上する。
セルロース多孔質構造体の比表面積が150m/g以下であると、樹脂との混練前に、セルロース多孔質構造体が粉砕されるのが抑制される。その結果、粉砕後の二次凝集が抑制され、樹脂への微細な均一に近い分散が実現され、樹脂成形体の透明性及び耐衝撃強度が向上する。
【0044】
セルロース多孔質構造体の比表面積は、BET比表面積であり、比表面積/細孔分布測定装置(BELSORP MAXII マイクロトラックベル社)を用いた、多点法の自動測定により測定された値である。測定温度は77Kとし、吸着ガスとして窒素ガスを用いる。
ただし、測定前に、試料(つまりセルロース多孔質構造体)に前処理として100℃で24時間の真空乾燥を実施し、試料の細孔内に吸着している水を取り除く。
【0045】
-空隙率-
本実施形態に係るセルロース多孔質構造体の空隙率は、10%以上50%以下であり、好ましくは、15%以上50%以下であり、より好ましくは、20%以上50%以下である。
セルロース多孔質構造体の空隙率が10%以上であると、セルロース多孔質構造体の改質能が十分となり、耐衝撃性が向上する。
セルロース多孔質構造体の空隙率が50%以下であると、樹脂との混練前に、セルロース多孔質構造体が粉砕されるのが抑制される。その結果、粉砕後の二次凝集が抑制され、樹脂への微細な均一に近い分散が実現され、樹脂成形体の透明性及び耐衝撃強度が向上する。
【0046】
セルロース多孔質構造体の空隙率は、次の通り測定する。
走査型顕微鏡(SEM)により、セルロース多孔質構造体を倍率25000倍で観測し、SEM画像を得る。SEM画像を画像処理ソフトウェア「ImageJ」に取り込み、二値化処理して、セルロース多孔質構造体の全体及び空隙の面積を求める。そして、セルロース多孔質構造体全体の面積対する、セルロース多孔質構造体の空隙の割合を求め、セルロース多孔質構造体の空隙率を求める。
この操作を、10回実施し、平均値を求める。
【0047】
-平均径-
セルロース多孔質構造体の平均径は、1μm以上500μm以下が好ましく、1μm以上355μm以下がより好ましく、1μm以上150μm以下がさらに好ましい。
セルロース多孔質構造体の平均径が1μm以上であると、樹脂にセルロース多孔質構造体を混練したとき、セルロース多孔質構造体が崩壊し、樹脂への微細な均一に近い分散が実現され易くなり、樹脂成形体の透明性及び耐衝撃強度が向上する。
セルロース多孔質構造体の平均径が500μm以下であると、樹脂との混練前に、セルロース多孔質構造体が粉砕されるのが抑制される。その結果、粉砕後の二次凝集が抑制され、樹脂への微細な均一に近い分散が実現され易くなり、樹脂成形体の透明性及び耐衝撃強度が向上する。
【0048】
セルロース多孔質構造体の平均径の測定方法は、次の通りである。
走査型顕微鏡(SEM)により、セルロース多孔質構造体を倍率250倍で観測し、閾SEM画像を得る。SEM画像を画像処理ソフトウェア「ImageJ」に取り込み、セルロース多孔質構造体の面積から円相当径を求める。そして、20個のセルロース多孔質構造体の円相当径の平均値を求め、平均径とする。
【0049】
-樹脂中のセルロース多孔質構造体の平均径-
本実施形態に係るセルロース多孔質構造体において、セルロース多孔質構造体を樹脂と混練したとき、セルロース多孔質構造体は、樹脂中に、平均径50μm以下で存在することが好ましく、平均径10μm以下で存在することがより好ましく、平均径1μm以下で存在することがさらに好ましい。
樹脂中にセルロース多孔質構造体が平均径50μm以下で存在すると、樹脂への微細な分散となり、樹脂成形体の透明性及び耐衝撃強度が向上する。
なお、セルロース樹脂の改質能を十分発揮させ、樹脂成形体の耐衝撃性向上の観点から、セルロース多孔質構造体を樹脂と混練したとき、セルロース多孔質構造体は、樹脂中に、平均径0.05μm以上で存在することが好ましい。
【0050】
樹脂中のセルロース多孔質構造体の平均径は、後述する「実施例1」における条件で、セルロース多孔質構造体を樹脂と混練したときの、セルロース多孔質構造体の平均径である。そして、セルロース多孔質構造体の平均径は、次の通り測定する。
セルロース多孔質構造体を樹脂と混練した樹脂組成物を切断する。走査型顕微鏡(SEM)により、樹脂組成物の切断面のセルロース多孔質構造体を倍率1000倍で観測し、SEM画像を得る。SEM画像を画像処理ソフトウェア「ImageJ」に取り込み、セルロース多孔質構造体の面積から円相当径を求める。そして、20個のセルロース多孔質構造体の円相当径の平均値を求め、平均径とする。
【0051】
-比重-
本実施形態に係るセルロース多孔質構造体の比重は、0.5g/cm以上1.15g/cm以下が好ましく、0.60g/cm以上1.0g/cm以下がより好ましく、0.70g/cm以上0.90g/cm以下がさらに好ましい。
セルロース多孔質構造体の比重が上記範囲であると、樹脂にセルロース多孔質構造体に混練したとき、樹脂への微細な均一に近い分散が実現され易くなり、樹脂成形体の透明性及び耐衝撃強度が向上する。
【0052】
セルロース多孔質構造体の比重の測定方法は、次の通りである。
構造体30gをサンプルとし、自動比重計(東洋精機製作所社製、DSG-1)を用いて、測定用液体を水からエタノールに変更した以外は、水中置換法で3回測定し、その平均を測定値とした。
【0053】
(セルロース多孔質構造体の製造方法)
本実施形態に係るセルロース多孔質構造体は、例えば、次の方法により得られる。
(1)セルロース誘導体をセルロース誘導体に対する良溶媒に添加した後、加熱して、良溶媒にセルロース誘導体を溶解させた溶液Aを得る。
(2)溶液Aに、セルロース誘導体に対する貧溶媒を添加し、溶液Bを得る。
(3)溶液Bを急冷し、相分離により、セルロース誘導体のゲル状物質を生成する。
(4)ゲル状物質を洗浄した後、乾燥することで、セルロース誘導体を主成分とするセルロース多孔質構造体を得る。
(5)得られたセルロース多孔質構造体は、必要に応じて、解砕、篩分により、粗大粒子及び凝集物の除去を行ってもよい。解砕方法は、特に限定されないが、例えば、ジェットミル、振動ミル、ボールミル、ピンミルなどの乾式粉砕装置により行う。篩分方法は、例えば、振動篩、風力篩分機など公知のものにより行う。
【0054】
ここで、ゲル状物質を鹸化することで(つまりセルロース誘導体を鹸化することで)、鹸化の程度により、セルロース、又はセルロース及びセルロース誘導体を主成分とするセルロース誘導体を主成分とするセルロース多孔質構造体を得る。
【0055】
<樹脂組成物>
本実施形態に係る樹脂組成物は、透明樹脂と、本実施形態に係るセルロース多孔質構造体と、を含む混練物からなる樹脂組成物である。
具体的には、本実施形態に係る樹脂組成物は、透明樹脂と、透明樹脂との混練により、本実施形態に係るセルロース多孔質構造体が崩壊した崩壊物と、を含む。
【0056】
(透明樹脂)
透明樹脂は、透明樹脂単独の成形体の厚さが2mmのときのヘイズ値が15%以下となる樹脂である。
【0057】
透明樹脂としては、例えば、スチレン類(例えば、スチレン、パラクロロスチレン、α-メチルスチレン等)、(メタ)アクリル酸エステル類(例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n-プロピル、アクリル酸n-ブチル、アクリル酸ラウリル、アクリル酸2-エチルヘキシル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n-プロピル、メタクリル酸ラウリル、メタクリル酸2-エチルヘキシル等)、エチレン性不飽和ニトリル類(例えば、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等)、ビニルエーテル類(例えば、ビニルメチルエーテル、ビニルイソブチルエーテル等)、ビニルケトン類(例えば、ビニルメチルケトン、ビニルエチルケトン、ビニルイソプロペニルケトン等)、オレフィン類(例えば、エチレン、プロピレン、ブタジエン等)、ビニルアルコール等の単量体の単独重合体、又はこれら単量体を2種以上組み合せた共重合体からなるビニル系樹脂、アモルファスポリオレフィンなどが挙げられる。
透明樹脂としては、例えば、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエーテル樹脂、変性ロジン等の非ビニル系樹脂、これらと上記ビニル系樹脂との混合物、又は、これらの共存下でビニル系単量体を重合して得られるグラフト重合体等も挙げられる。
透明樹脂としては、天然高分子等も挙げられる。
【0058】
ここで、ポリエステル樹脂としては、脂肪族ポリエステル樹脂、脂肪族芳香族ポリエステル樹脂等が挙げられる。
脂肪族ポリエステル樹脂としては、ポリ乳酸(PLA)、ポリグリコール酸(PGA)、ポリヒドロキシアルカノエート(PHA)、ポリカプロラクトン、ポリブチレンサクシネート(PBS)、ポリブチレンサクシネート/アジペート(PBSA)、ポリエチレンサクシネート(PBA)等のポリヒドロキシアルカン酸等が挙げられる。
脂肪族芳香族ポリエステル樹脂としては、ポリブチレンアジペート/テレフタレート共重合樹脂(PBAT)、ポリテトラメチレンアジペート/テレフタレート共重合樹脂、等が挙げられる。
【0059】
天然高分子としては、デンプン、セルロース、キチン、キトサン、グルテン、ゼラチン、ゼイン、大豆タンパク、コラーゲン、ケラチン、等が挙げられる。
【0060】
生分解性樹脂としては、セルロース誘導体(セルロースアシレート、セルロースエーテル、ヒドロキシアルキルセルロース、カルボキシメチルセルロース)も挙げられる。
【0061】
これらの透明樹脂の中でも、環境適正の観点から、透明樹脂としては、バイオマス樹脂、生分解性樹脂が好適に挙げられ、特に、バイオマス樹脂及び生分解性樹脂の双方に該当する樹脂(特に、ポリ乳酸)が好ましい。
なお、生分解性樹脂とは、微生物により、水と二酸化炭素に分解される樹脂であり、セルロース以外の樹脂である。具体的には、生分解性樹脂とは、本実施形態に限っては、ISO 14855-1:2012に準じた方法で測定した好気条件生分解率が、28日間で5%以上となる樹脂を意味する。
【0062】
これらの透明樹脂は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0063】
透明樹脂の含有量は、樹脂組成物に対して、90質量%以上99.9質量%以下が好ましく、95質量%以上99.9質量%以下がより好ましい。
【0064】
(セルロース多孔質構造体の含有量)
セルロース多孔質構造体の含有量は、透明樹脂に対して0.1質量%以上20質量%以下が好ましく、1質量%以上10質量%以下がより好ましく、1質量%以上5質量%以下がさらに好ましい。
セルロース多孔質構造体の含有量が上記範囲であると、十分に透明性及び耐衝撃性が高い樹脂成形体が得られ易くなる。
【0065】
(その他成分)
本実施形態に係る樹脂組成物は、その他の成分を含んでもよい。
その他の成分としては、例えば、可塑剤、難燃剤、相溶化剤、離型剤、耐光剤、耐候剤、着色剤、顔料、改質剤、ドリップ防止剤、帯電防止剤、加水分解防止剤、充填剤、補強剤(ガラス繊維、炭素繊維、タルク、クレー、マイカ、ガラスフレーク、ミルドガラス、ガラスビーズ、結晶性シリカ、アルミナ、窒化ケイ素、窒化アルミニウム、ボロンナイトライド等)、受酸剤(酸化マグネシウム、酸化アルミニウム等の酸化物;水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化アルミニウム、ハイドロタルサイト等の金属水酸化物;炭酸カルシウム;タルク;など)、反応性トラップ剤(例えば、エポキシ化合物、酸無水物化合物、カルボジイミド等)などが挙げられる。
その他の成分の含有量は、樹脂組成物全量に対してそれぞれ、0質量%以上5質量%以下であることが好ましい。ここで、「0質量%」とはその他の成分を含まないことを意味する。
【0066】
(樹脂組成物の特性)
-透明樹脂中のセルロース多孔質構造体の平均径-
本実施形態に係る樹脂組成物において、セルロース多孔質構造体(つまり上記本実施形態に係るセルロース多孔質構造体の崩壊物)は、透明樹脂中に、50μm以下で存在することが好ましく、平均径10μm以下で存在することがより好ましく、平均径1μm以下で存在することがさらに好ましい。
透明樹脂中にセルロース多孔質構造体が平均径50μm以下で存在すると、樹脂への微細な分散となり、樹脂組成物の透明性及び耐衝撃強度が向上する。
【0067】
透明樹脂中のセルロース多孔質構造体の平均径は、次の通り測定する。
樹脂組成物を切断する。走査型顕微鏡(SEM)により、樹脂組成物の切断面のセルロース多孔質構造体を倍率1000倍で観測し、SEM画像を得る。SEM画像を画像処理ソフトウェア「ImageJ」に取り込み、セルロース多孔質構造体の面積から円相当径を求める。そして、20個のセルロース多孔質構造体の円相当径の平均値を求め、平均径とする。
【0068】
-ヘイズ値-
本実施形態に係る樹脂組成物において、樹脂組成物の成形体の厚さが2mmのときのヘイズ値は、15%以下が好ましく、10%以下がより好ましく、7%以下がさらに好ましい。なお、ヘイズ値は、理想的には0%である。
ヘイズ値が上記範囲であると、十分に透明性が高い樹脂成形体が得られる。
【0069】
(シャルピー衝撃強度)
本実施形態に係る樹脂組成物のシャルピー衝撃強度は1kJ/m以上が好ましく、2kJ/m以上がより好ましく、2.5kJ/m以上がさらに好ましく、3kJ/m以上が特に好ましく、4kJ/m以上が最も好ましい。
シャルピー衝撃強度が上記範囲であると、十分に耐衝撃性が高い樹脂成形体が得られ易くなる。
【0070】
ここで、ヘイズ値及びシャルピー衝撃強度は、後述する「実施例」で記載した方法で測定された値である。
【0071】
(樹脂組成物の製造方法)
本実施形態に係る樹脂組成物の製造方法としては、例えば、各成分を混合し、溶融混練する方法;などが挙げられる。溶融混練の手段としては、特に制限されず、例えば、二軸押出機、ヘンシェルミキサー、バンバリーミキサー、単軸スクリュー押出機、多軸スクリュー押出機、コニーダ等が挙げられる。
そして、混練条件を制御することで、透明樹脂と、透明樹脂との混練により、本実施形態に係るセルロース多孔質構造体が崩壊した崩壊物と、を含む樹脂組成物が得られる。
【0072】
<樹脂成形体>
本実施形態に係る樹脂成形体は、本実施形態に係る樹脂組成物を含む。つまり、本実施形態に係る樹脂成形体は、本実施形態に係る樹脂組成物と同じ組成で構成されている。
【0073】
本実施形態に係る樹脂成形体の成形方法としては、形状の自由度が高い観点から、射出成形によって得られた射出成形体が挙げられる。
本実施形態に係る樹脂成形体の射出成形は、例えば、日精樹脂工業社製NEX500、日精樹脂工業社製NEX150、日精樹脂工業社製NEX7000、日精樹脂工業社製PNX40、住友機械社製SE50D等の市販の装置を用いて行ってもよい。
【0074】
本実施形態に係る樹脂成形体は、他の成形方法によって得られた樹脂成形体であってもよい。他の成形方法としては、例えば、押し出し成形、ブロー成形、熱プレス成形、カレンダ成形、コーティング成形、キャスト成形、ディッピング成形、真空成形、トランスファ成形などを適用してよい。
【0075】
本実施形態に係る樹脂成形体の用途として、電子・電気機器又は家電製品の筐体;電子・電気機器又は家電製品の各種部品;自動車の内装部品;ブロック組み立て玩具;プラスチックモデルキット;CD-ROM又はDVDの収納ケース;食器;飲料ボトル;食品トレイ;ラップ材;フィルム;シート;などが挙げられる。
【実施例0076】
以下に実施例について説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。なお、以下の説明において、特に断りのない限り、「部」及び「%」はすべて質量基準である。
【0077】
<セルロース多孔質構造体の作製>
(セルロース多孔質構造体CPS(1))
容器に、セルロースアセテートDAC(1)5質量部をジメチルホルムアミド20質量部に添加した溶液Aを、90℃下で1時間攪拌する。溶液A中で、ジメチルホルムアミドにセルロースアセテート溶解したのち、溶液Aに、ヘキサノール25質量部を攪拌しながらゆっくり添加し、得られた溶液Bを1時間攪拌する。その後、溶液Bを容器ごと氷水中に浸漬急冷し、相分離による、セルロース多孔質構造体のゲル生成物を得た。生成したゲル生成物をエタノール200質量部で洗浄し、50℃24時間で真空乾燥して、セルロース多孔質構造体を得た。その後、構造体をミルミキサーで解砕、106μm篩網での篩分を実施し微粉砕したセルロース構造体を得た。
【0078】
(セルロース多孔質構造体CPS(2))
篩分網のメッシュ径を53μmにした以外は、セルロース多孔質構造体CPS(1)と同様にして、セルロース多孔質構造体CPS(2)を得た。
【0079】
(セルロース多孔質構造体CPS(3))
セルロースアセテートDAC(1)を7.5質量部にした以外は、セルロース多孔質構造体CPS(1)と同様にして、セルロース多孔質構造体CPS(3)を得た。
【0080】
(セルロース多孔質構造体CPS(4))
セルロースアセテートDAC(1)を3.5質量部にした以外は、セルロース多孔質構造体CPS(1)と同様にして、セルロース多孔質構造体CPS(4)を得た。
【0081】
(セルロース多孔質構造体CPS(5))
セルロースアセテートDAC(1)をDAC(2)に変更した以外は、セルロース多孔質構造体CPS(1)と同様にして、セルロース多孔質構造体CPS(5)を得た。
【0082】
(セルロース多孔質構造体CPS(6))
セルロースアセテートDAC(1)をDAC(3)に変更した以外は、セルロース多孔質構造体CPS(1)と同様にして、セルロース多孔質構造体CPS(6)を得た。
【0083】
(セルロース多孔質構造体CPS(7))
セルロースアセテートDAC(1)をDAC(4)に変更した以外は、セルロース多孔質構造体CPS(1)と同様にして、セルロース多孔質構造体CPS(2)を得た。
【0084】
(セルロース多孔質構造体CPS(8))
セルロースアセテートをトリアセチルセルロースに変更した以外は、セルロース多孔質構造体CPS(1)と同様にして、セルロース多孔質構造体CPS(8)を得た。
【0085】
(セルロース多孔質構造体CPS(9))
セルロースアセテートをセルロースアセテートプロピオネートに変更した以外は、セルロース多孔質構造体CPS(1)と同様にして、セルロース多孔質構造体CPS(9)を得た。
【0086】
(セルロース多孔質構造体CPS(10))
セルロースアセテートをセルロースアセテートブチレートに変更した以外は、セルロース多孔質構造体CPS(1)と同様にして、セルロース多孔質構造体CPS(10)を得た。
【0087】
(セルロース多孔質構造体CPS(11))
ゲル生成物のエタノール洗浄前にアルカリけん化した以外は、セルロース多孔質構造体CPS(1)と同様にして、セルロース多孔質構造体CPS(11)を得た。
【0088】
(セルロース多孔質構造体CPS(12))
篩分網のメッシュ径を500μmにした以外は、セルロース多孔質構造体CPS(1)と同様にして、セルロース多孔質構造体CPS(12)を得た。
【0089】
(セルロース多孔質構造体CPS(13))
セルロースアセテートを12.5質量部にした以外は、セルロース多孔質構造体CPS(1)と同様にして、セルロース多孔質構造体CPS(13)を得た。
【0090】
(セルロース多孔質構造体CPS(14))
セルロースアセテートDAC(1)をDAC(5)に変更した以外は、セルロース多孔質構造体CPS(1)と同様にして、セルロース多孔質構造体CPS(14)を得た。
【0091】
(セルロース多孔質構造体CPS(15))
篩分工程を行わなかった以外は、セルロース多孔質構造体CPS(1)と同様にして、セルロース多孔質構造体CPS(15)を得た。
【0092】
(セルロース多孔質構造体CPS(16))
ジメチルホルムアミドを180質量部、ヘキサノールを450質量部に変更した以外は、セルロース構造体CS(1)と同様にして、セルロース構造体CS(16)を得た。
【0093】
(セルロース多孔質構造体CPS(17))
セルロースアセテートを15質量部にした以外は、セルロース多孔質構造体CPS(1)と同様にして、セルロース多孔質構造体CPS(17)を得た。
【0094】
(セルロース多孔質構造体CPS(18))
ジメチルホルムアミドを180質量部、ヘキサノールを450質量部に変更した以外は、セルロース多孔質構造体CPS(1)と同様にして、セルロース多孔質構造体CPS(18)を得た。
【0095】
(セルロース多孔質構造体CPS(C1))
セルロースアセテートDAC(1)をミルミキサーで解砕後、106μm篩分網で篩い、セルロース構造体(C1)を得た。
【0096】
(セルロース多孔質構造体CPS(C2))
セルロースアセテートDAC(1)130質量部を酢酸エチル870質量部に溶解した。これを炭酸カルシウム50質量部で純水500質量部に分散させた分散液に加え、3時間攪拌した。これにカルボキシメチルセルロース4質量部とメチルエチルケトン200質量部を純水600質量部に分散させた分散液に加え、高速乳化機で5分間攪拌した。これに10gの水酸化ナトリウムを加え、80℃で3時間攪拌し、酢酸エチルとメチルエチルケトンを除去した。これに10gの希塩酸を加え、残渣をろ過し非多孔質セルロース粒子を得た。
【0097】
(セルロース多孔質構造体の特性)
得られたセルロース多孔質構造体の下記特性について、既述の方法に従って測定した。・セルロース多孔質構造体の平均径
・セルロース多孔質構造体の比表面積(表中「BET」と表記)
・セルロース多孔質構造体の空隙率
・セルロース多孔質構造体の比重
・実施例1と同じ透明樹脂及び混練条件で、セルロース多孔質構造体を樹脂と混練したとき、樹脂中に存在するセルロース多孔質構造体の平均径(表中「分散径」と表記)
【0098】
<実施例1~20、比較例1~6>
表1に示す、組成、シリンダ温度及び混練トルクの条件で、各成分を2軸押出装置(芝浦機械社製、TEM58SS)に仕込み、各成分を混練、冷却及び裁断して樹脂ペレット(樹脂組成物に相当)を得た。
【0099】
<評価>
(樹脂成形体)
表1に示すシリンダ温度、金型温度及び金型内保持時間の条件で、各例の樹脂ペレットを射出成形装置(日精樹脂工業製、NEX500)に仕込み、ISO多目的ダンベル試験片(試験部 幅8mm×厚さ4mm×長さ110mm)を成形した。
【0100】
(ヘイズ値)
得られたISO多目的ダンベル試験片の試験部に、ヘイズメーター(日本電色製、TZ7700)を用いて、試験部のヘイズ値を測定した。
【0101】
(シャルピー衝撃強度)
得られたISO多目的ダンベル試験片をISO179-1:2010に準ずる方法でAノッチ加工した。
そして、衝撃強度測定装置(東洋精機製作所製、シャルピーオートインパクトテスタ)を用いて、加工後の試験片に対して、室温(25℃)条件でシャルピー衝撃強度を測定した。
【0102】
<使用材料>
以下、使用材料の詳細について、説明する。
-添加剤の原料-
・DAC(1):イーストマンケミカル(株)製「商品名CA398-3」、セルロースジアセテート、数平均分子量Mn=15000
・DAC(2):(株)ダイセル製「商品名L20」、セルロースジアセテート、数平均分子量Mn=15000
・DAC(3):(株)ダイセル製「商品名L50」、セルロースジアセテート、数平均分子量Mn=50000
・DAC(4):(株)ダイセル製「商品名L70」、セルロースジアセテート、数平均分子量Mn=75000
・DAC(5):自社合成セルロースジアセテート、数平均分子量Mn=13000
・TAC :(株)ダイセル製「商品名 LT-35 」、セルローストリアセテート、数平均分子量Mn=50000
・CAP :イーストマンケミカル(株)製「商品名CAP482-20」、セルロースアセテートプロピオネート、数平均分子量Mn=72000
・CAB :イーストマンケミカル(株)製「商品名CAB381-20」、セルロースアセテートブチレート、数平均分子量Mn=85000
・CNF 」製造元スギノマシン(株)製「商品名BiNFIS DRY」、セルロースナノファイバー
【0103】
-透明樹脂-
・PMMA:ポリメチルメタクリレート(旭化成ケミカル製、デルペット720V)
・PET :ポリエチレンテレフタレート(ロッテケミカル製、BCB80)
・PP :ポリプロピレン(日本ポリプロ製、ノバテックPP MG03BD)
・PS :ポリスチレン(PSジャパン製、GPPS-HF77)
【0104】
【表1-1】
【0105】
【表1-2】
【0106】
上記結果から、本実施例では、比較例に比べ、透明性及び衝撃強度が高い樹脂成形体(つまり樹脂組成物)が得られることがわかる。
【0107】
本実施形態は、下記態様を含む。
(((1)))
セルロース及びセルロース誘導体の少なくとも一方を主成分として含み、
比表面積が1m/g以上150m/g以下であり、
空隙率が10%以上50%以下であるセルロース多孔質構造体。
(((2)))
前記セルロース多孔質構造体を樹脂と混練したとき、前記セルロース多孔質構造体は、前記樹脂中に、平均径50μm以下で存在する(((1)))に記載のセルロース多孔質構造体。
(((3)))
前記セルロース及び前記セルロース誘導体の数平均分子量が15000以上である(((1)))又は(((2)))に記載のセルロース多孔質構造体。
(((4)))
セルロース誘導体が、セルロースアセテートである(((1)))~(((3)))のいずれか1項に記載のセルロース多孔質構造体。
(((5)))
透明樹脂と、
(((1)))~(((4)))のいずれか1項に記載のセルロース多孔質構造体と、
を含む混練物からなる樹脂組成物。
(((6)))
前記樹脂組成物の成形体の厚さが2mmのときのヘイズ値が15%以下である(((5)))に記載の樹脂組成物。
(((7)))
シャルピー衝撃強度が2.5kJ/m以上である(((5)))又は(((6)))に記載の樹脂組成物。
【0108】
上記態様の効果は、次の通りである。
(((1)))に係る発明によれば、セルロース及びセルロース誘導体の少なくとも一方を主成分として含むセルロース多孔質構造体において、比表面積が1m/g未満若しくは150m/g超え、又は空隙率が10%未満若しくは50%超えである場合に比べ、透明性及び衝撃強度が高い樹脂成形体が得られるセルロース多孔質構造体が提供される。
【0109】
(((2)))に係る発明によれば、セルロース多孔質構造体を樹脂と混練したとき、セルロース多孔質構造体は、樹脂中に、平均径50μm超えで存在するである場合に比べ、透明性及び衝撃強度が高い樹脂成形体が得られるセルロース多孔質構造体が提供される。
(((3)))に係る発明によれば、セルロース及びセルロース誘導体の数平均分子量が15000未満である場合に比べ、透明性及び衝撃強度が高い樹脂成形体が得られるセルロース多孔質構造体が提供される。
(((4)))に係る発明によれば、セルロース誘導体がセルロースアセテートプロピオネートである場合に比べ、生分解性と共に、透明性及び衝撃強度が高い樹脂成形体が得られるセルロース多孔質構造体が提供される。
【0110】
(((5)))、(((6)))又は(((7)))に係る発明によれば、セルロース及びセルロース誘導体の少なくとも一方を主成分として含むセルロース多孔質構造体において、比表面積が1m/g未満若しくは150m/g超え、又は空隙率が10%未満若しくは50%超えであるセルロース多孔質構造体を適用した場合に比べ、透明性及び衝撃強度が高い樹脂成形体が得られる樹脂組成物が提供される。