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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024178895
(43)【公開日】2024-12-25
(54)【発明の名称】樹脂フィルム
(51)【国際特許分類】
   C08L 101/00 20060101AFI20241218BHJP
   C08L 1/08 20060101ALI20241218BHJP
   C08J 5/18 20060101ALI20241218BHJP
   C08L 101/16 20060101ALN20241218BHJP
【FI】
C08L101/00 ZBP
C08L1/08
C08J5/18 CER
C08J5/18 CEZ
C08L101/16
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024049636
(22)【出願日】2024-03-26
(31)【優先権主張番号】P 2023097315
(32)【優先日】2023-06-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000005496
【氏名又は名称】富士フイルムビジネスイノベーション株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】西岡 紗知子
(72)【発明者】
【氏名】八百 健二
(72)【発明者】
【氏名】高木 慎平
【テーマコード(参考)】
4F071
4J002
4J200
【Fターム(参考)】
4F071AA09
4F071AA43
4F071AA43X
4F071AA78
4F071AA81
4F071AF19Y
4F071AH04
4F071AH12
4F071AH19
4F071BA01
4F071BB06
4F071BC01
4F071BC12
4J002AA001
4J002AB011
4J002AB012
4J002AB021
4J002AB022
4J002AB041
4J002AD011
4J002AD031
4J002BE021
4J002CF031
4J002CF051
4J002CF181
4J002CF191
4J002FD012
4J002GG02
4J002GP00
4J002GQ00
4J200AA04
4J200AA06
4J200BA05
4J200BA07
4J200BA11
4J200BA12
4J200BA13
4J200BA14
4J200BA17
4J200BA37
4J200BA38
4J200BA39
4J200CA01
4J200EA04
4J200EA11
(57)【要約】
【課題】生分解性に優れ、樹脂フィルム間の剥離強度が低い樹脂フィルムの提供。
【解決手段】生分解性樹脂と、粒子と、を含み、断面観察したとき、全ての前記粒子に占める、一方のフィルム表層に存在する粒子の割合が30個数%以上である樹脂フィルム。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
生分解性樹脂と、粒子と、を含み、
断面観察したとき、全ての前記粒子に占める、一方のフィルム表層に存在する前記粒子の割合が30個数%以上である樹脂フィルム。
【請求項2】
前記粒子が、セルロース及びセルロース誘導体の少なくとも一方を主成分として含むセルロース構造体である請求項1に記載の樹脂フィルム。
【請求項3】
前記セルロース構造体が、セルロース多孔質構造体である請求項2に記載の樹脂フィルム。
【請求項4】
前記セルロース構造体が平均径0.1μm以上50μm以下で存在している請求項2に記載の樹脂フィルム。
【請求項5】
前記セルロース及び前記セルロース誘導体の数平均分子量が15000以上50000以下である請求項2に記載の樹脂フィルム。
【請求項6】
前記セルロース誘導体が、セルロースアセテートである請求項2に記載の樹脂フィルム。
【請求項7】
前記生分解性樹脂に対する前記粒子の含有量が、0.1質量%以上10質量%以下である請求項1に記載の樹脂フィルム。
【請求項8】
前記樹脂フィルム間の剥離強度が2.5N以下である請求項1に記載の樹脂フィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、「酸系ポリマー100重量部に対し、滑剤0.1~2重量部及び/またはアンチブロッキング剤0.1~5重量部、防曇剤0.1~5重量部を含むことを特徴とする乳酸系ポリマーフィルム。」が提案されている。
【0003】
特許文献2には、「表面に表面処理剤からなる被覆層が形成されている炭酸カルシウム粒子からなり、BET、粒径、熱減少量を満足することを特徴する樹脂用炭酸カルシウム填料。」が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平9-286908号
【特許文献2】特開2022-103216号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、生分解性樹脂と、粒子と、を含む樹脂フィルムにおいて、断面観察したとき、全ての粒子に占める、フィルム表層に存在する粒子の割合が30個数%未満である場合に比べ、生分解性に優れ、樹脂フィルム間の剥離強度が低い樹脂フィルムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するための手段は、下記態様を含む。
<1>
生分解性樹脂と、粒子と、を含み、
断面観察したとき、全ての前記粒子に占める、一方のフィルム表層に存在する粒子の割合が30個数%以上である樹脂フィルム。
<2>
前記粒子が、セルロース及びセルロース誘導体の少なくとも一方を主成分として含むセルロース構造体である<1>に記載の樹脂フィルム。
<3>
前記セルロース構造体が、セルロース多孔質構造体である<2>に記載の樹脂フィルム。
<4>
前記セルロース構造体が平均径0.1μm以上50μm以下で存在している<2>又は<3>に記載の樹脂フィルム。
<5>
前記セルロース及び前記セルロース誘導体の数平均分子量が15000以上50000以下である<2>~<4>のいずれか1項に記載の樹脂フィルム。
<6>
前記セルロース誘導体が、セルロースアセテートである<2>~<5>のいずれか1項に記載の樹脂フィルム。
<7>
前記生分解性樹脂に対する前記粒子の含有量が、0.1質量%以上10質量%以下である<1>~<6>のいずれか1項に記載の樹脂フィルム。
<8>
前記樹脂フィルム間の剥離強度が2.5N以下である<1>~<7>のいずれか1項に記載の樹脂フィルム。
【発明の効果】
【0007】
<1>、又は<8>に係る発明によれば、粒子と、を含む樹脂フィルムにおいて、断面観察したとき、全ての粒子に占める、フィルム表層に存在する粒子の割合が30個数%未満である場合に比べ、生分解性に優れ、樹脂フィルム間の剥離強度が低い樹脂フィルムが提供される。
【0008】
<2>に係る発明によれば、粒子がセルロースナノファイバーである場合に比べ、生分解性に優れ、樹脂フィルム間の剥離強度が低い樹脂フィルムが提供される。
<3>に係る発明によれば、粒子がセルロース非多孔質構造体である場合に比べ、生分解性に優れ、樹脂フィルム間の剥離強度が低い樹脂フィルムが提供される。
<4>に係る発明によれば、セルロース構造体が平均径0.1μm未満又は50μm超えで存在している場合に比べ、生分解性に優れ、樹脂フィルム間の剥離強度が低い樹脂フィルムが提供される。
<5>に係る発明によれば、セルロース及び前記セルロース誘導体の数平均分子量が15000未満又は50000超えである場合に比べ、生分解性に優れ、樹脂フィルム間の剥離強度が低い樹脂フィルムが提供される。
<6>に係る発明によれば、セルロース誘導体がセルロースアセテートプロピオネートである場合に比べ、生分解性に優れ、樹脂フィルム間の剥離強度が低い樹脂フィルムが提供される。
<7>に係る発明によれば、生分解性樹脂に対する粒子の含有量が、0.1質量%未満又は10質量%超えである場合に比べ、生分解性に優れ、樹脂フィルム間の剥離強度が低い樹脂フィルムが提供される。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の一例である実施形態について説明する。これらの説明および実施例は、実施形態を例示するものであり、発明の範囲を制限するものではない。
本明細書中に段階的に記載されている数値範囲において、一つの数値範囲で記載された上限値又は下限値は、他の段階的な記載の数値範囲の上限値又は下限値に置き換えてもよい。また、本明細書中に記載されている数値範囲において、その数値範囲の上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。
【0010】
各成分は該当する物質を複数種含んでいてもよい。
組成物中の各成分の量について言及する場合、組成物中に各成分に該当する物質が複数種存在する場合には、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数種の物質の合計量を意味する。
【0011】
<樹脂フィルム>
本実施形態に係る樹脂フィルムは、生分解性樹脂と、粒子と、を含み、断面観察したとき、全ての前記粒子に占める、フィルム表層に存在する粒子の割合が30個数%以上である。
【0012】
本実施形態に係る樹脂フィルムは、上記構成により、生分解性に優れ、樹脂フィルム間の剥離強度が低くなる。その理由は、次の通り推測される。
【0013】
近年、SDGs(Sustainable Development Goals)に代表される環境意識から、生分解性樹脂への関心が高まっている。その一つとして、生分解性樹脂を樹脂フィルムに適用することがある。しかし、樹脂フィルムを重ねて剥離するとき、樹脂フィルム間の剥離強度が高く、剥離し難い減少が生じる。
この点、樹脂フィルムに、粒子を配合し、表面に凹凸構造を設けることで、樹脂フィルム間の接点を減少させて、樹脂フィルム間の剥離強度を低下させることが知られている。
しかし、一般に用いられている粒子は、樹脂フィルム全体に分散されており、粒子による「樹脂フィルム間の剥離強度を低下」を実現するには、配合量を多くする必要があり、生分解性樹脂由来の生分解性が低下する。
【0014】
そこで、本実施形態に係る樹脂フィルムでは、断面観察したとき、全ての前記粒子に占める、一方のフィルム表層に存在する粒子の割合が30個数%以上とし、表面に凹凸を付与する粒子を一方の表層に偏在させる。それにより、粒子による表面凹凸を付与し、樹脂フィルム間の剥離強度を低下させつつ、樹脂フィルム全体の粒子の含有量を低減できるため、生分解性樹脂の生分解性の低下も抑制される。
【0015】
以上から、本実施形態に係る樹脂フィルムは、生分解性に優れ、樹脂フィルム間の剥離強度が低くなると推測される。
【0016】
ここで、一方のフィルム表層に粒子を存在させる方法としては、粒子として多孔質構造体(特にセルロース多孔質構造体)を適用する方法、フィルム成形後、表面に粒子を添加し、プレスして埋め込む方法、ロール巻取時に粒子を表面に付着させる方法等が例示できる。
【0017】
以下、本実施形態に係る樹脂フィルムの詳細について説明する。
【0018】
(生分解性樹脂)
生分解性樹脂は、微生物により、水と二酸化炭素に分解される樹脂である。具体的には、生分解性樹脂に、期間、分解率の定量的な定義はないが本実施形態に限定して、ISO 14855-1:2012に準じた方法で好気条件生分解率が、28日間で5%以上となる樹脂を生分解性樹脂と定義する。
【0019】
生分解性樹脂としては、ポリエステル樹脂、天然高分子、ポリビニルアルコール等が挙げられる。
【0020】
ポリエステル樹脂としては、脂肪族ポリエステル樹脂、脂肪族芳香族ポリエステル樹脂等が挙げられる。
脂肪族ポリエステル樹脂としては、ポリ乳酸(PLA)、ポリグリコール酸(PGA)、ポリヒドロキシアルカノエート(PHA)、ポリカプロラクトン、ポリブチレンサクシネート(PBS)、ポリブチレンサクシネート/アジペート(PBSA)、ポリエチレンサクシネート(PBA)等のポリヒドロキシアルカン酸等が挙げられる。
脂肪族芳香族ポリエステル樹脂としては、ポリブチレンアジペート/テレフタレート共重合樹脂(PBAT)、ポリテトラメチレンアジペート/テレフタレート共重合樹脂、等が挙げられる。
【0021】
天然高分子としては、デンプン、セルロース、キチン、キトサン、グルテン、ゼラチン、ゼイン、大豆タンパク、コラーゲン、ケラチン、等が挙げられる。
【0022】
生分解性樹脂としては、セルロース誘導体(セルロースアシレート、セルロースエーテル、ヒドロキシアルキルセルロース、カルボキシメチルセルロース)も挙げられる。
なお、セルロースアシレートとしては、セルロースアセテート(セルロースモノアセテート、セルロースジアセテート(DAC)、セルローストリアセテート)、セルロースアセテートプロピオネート(CAP)、セルロースアセテートブチレート(CAB)等が挙げられる。
【0023】
これらの生分解性の中でも、環境適性の観点から、生分解性としては、ポリ乳酸、ポリブチレンサクシネート、ポリブチレンサクシネートアジペート、ポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-3-ヒドロキシペンタノエート)、ポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-3-ヒドロキシヘキサノエート)、セルロースアセテート、及びセルロースアセテートプロピオネートよりなる群から選択される少なくとも1種が好適に挙げられ、特に、バイオマス樹脂及び生分解性樹脂の双方に該当する樹脂(特に、ポリ乳酸)が好ましい。
【0024】
これらの生分解性樹脂は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0025】
生分解性樹脂の含有量は、樹脂組成物に対して、50質量%以上99.9質量%以下が好ましく、90質量%以上99.9質量%以下がより好ましい。
【0026】
(粒子)
粒子としては、セルロース構造体、シリカ構造体、アクリル構造体、ナイロン構造体、ポリオレフィン構造体等が挙げられる。
これらの中でも、生分解性向上の観点から、セルロース構造体が好ましい。なお、セルロース構造体は、例えば、セルロース及びセルロース誘導体の少なくとも一方を主成分として含む粉体である。
生分解性の高いセルロース構造体と生分解性樹脂とを樹脂フィルムに含ませることで、樹脂フィルム全体の生分解速度加速が実現される。セルロース構造体の生分解が先行して起き、分解酵素及び微生物が生分解性樹脂全体に濃縮されるため、生分解性樹脂の生分解速度が速くなると考えられる。
【0027】
(セルロース構造体)
セルロース構造体は、セルロース及びセルロース誘導体の少なくとも一方を主成分として含む。
ここで、「セルロース及びセルロース誘導体の少なくとも一方を主成分とする」とは、セルロース構造体に対する、セルロース及びセルロース誘導体の合計含有量が90質量%以上であること、好ましくは、95質量%以上、98質量%以上、又は100質量%であることをいう。
【0028】
セルロースは、多数のβ-グルコース分子がグリコシド結合により直鎖状に重合した高
分子化合物である。
一方、セルロース誘導体としては、セルロースアシレート、セルロースエーテル、ヒドロキシアルキルセルロース、カルボキシメチルセルロースなどが挙げられる。
これらの中でも、生分解性が高い観点から、セルロース誘導体としては、セルロースアシレートが好ましい。
【0029】
セルロースアシレートは、セルロースにおけるヒドロキシ基の少なくとも一部がアシル基により置換(アシル化)されたセルロース誘導体である。アシル基とは、-CO-RAC(RACは、水素原子又は炭化水素基を表す。)の構造を有する基である。
【0030】
セルロースアシレートは、例えば、下記の一般式(CA)で表されるセルロース誘導体である。
【0031】
【化1】


【0032】
一般式(CA)中、A、A及びAはそれぞれ独立に、水素原子又はアシル基を表し、nは2以上の整数を表す。ただし、n個のA、n個のA及びn個のAのうちの少なくとも一部はアシル基を表す。分子中にn個あるAは、全て同一でも一部同一でも互いに異なっていてもよい。同様に、分子中にn個あるA及びn個あるAもそれぞれ、全て同一でも一部同一でも互いに異なっていてもよい。
【0033】
、A及びAが表すアシル基は、当該アシル基中の炭化水素基が、直鎖状、分岐状及び環状のいずれであってもよいが、直鎖状又は分岐状であることが好ましく、直鎖状であることがより好ましい。
【0034】
、A及びAが表すアシル基は、当該アシル基中の炭化水素基が、飽和炭化水素基でも不飽和炭化水素基でもよいが、飽和炭化水素基であることがより好ましい。
【0035】
、A及びAが表すアシル基は、炭素数1以上6以下のアシル基が好ましい。すなわち、セルロースアシレートとしては、アシル基の炭素数が1以上6以下であるセルロースアシレートが好ましい。
【0036】
、A及びAが表すアシル基は、当該アシル基中の水素原子がハロゲン原子(例えば、フッ素原子、臭素原子、ヨウ素原子)、酸素原子、窒素原子などで置換された基でもよいが、無置換であることが好ましい。
【0037】
、A及びAが表すアシル基としては、ホルミル基、アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基(ブタノイル基)、プロペノイル基、ヘキサノイル基等が挙げられる。これらの中でもアシル基としては、樹脂粒子の生分解速度向上の観点から、炭素数2以上4以下のアシル基がより好ましく、炭素数2又は3のアシル基が更に好ましい。
【0038】
セルロースアシレートとしては、セルロースアセテート(セルロースモノアセテート、セルロースジアセテート(DAC)、セルローストリアセテート)、セルロースアセテートプロピオネート(CAP)、セルロースアセテートブチレート(CAB)等が挙げられる。
【0039】
セルロースアシレートは、生分解性が高い観点から、セルロースアセテートが好ましい。
【0040】
セルロースアシレートの置換度は、生分解性の観点から、1.7以上2.9以下が好ましく、置換度1.9以上2.6以下がより好ましく、2.0以上2.5以下が更に好ましく、2.1以上2.4以下が特に好ましい。
【0041】
セルロースアシレートの置換度とは、セルロースが有するヒドロキシ基がアシル基により置換されている程度を示す指標である。つまり、置換度は、セルロースアシレートのアシル化の程度を示す指標となる。具体的には、置換度は、セルロースアシレートのD-グルコピラノース単位に3個あるヒドロキシ基がアシル基で置換された置換個数の分子内平均を意味する。置換度は、H-NMR(JMN-ECA/JEOL RESONANCE社製)にて、セルロース由来水素とアシル基由来水素とのピークの積分比から求める。
【0042】
これらセルロース誘導体は、1種単独で使用してもよいし、複数種使用してもよい。
【0043】
-セルロース及びセルロース誘導体の数平均分子量-
セルロース及びセルロース誘導体の数平均分子量は、10000以上85000以下が好ましく、15000以上50000以下がさらに好ましい。
セルロース及びセルロース誘導体の数平均分子量が15000以上であると、樹脂との混練前に、セルロース構造体が微細粉砕されるのが抑制される。その結果、粉砕後の二次凝集が抑制され、均一に近い表面凹凸が形成され、樹脂フィルム間の剥離強度が低減し易くなる。
セルロース及びセルロース誘導体の数平均分子量が50000以下であると、生分解性の低下が抑制される。
【0044】
セルロース及びセルロース誘導体の数平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー法(示差屈折率計 Optilab T-rEX/ Wyatt Technology社製、多角度光散乱検出器 DAWN HELEOS II/ Wyatt Technology社製、カラム TSKgel α-M、α-3000各1本/東ソー社製)にて、ジメチルアセトアミド(0.1M 塩化リチウム添加)を溶媒として測定される。
【0045】
セルロース構造体は、その他の成分を含んでもよい。
その他の成分としては、例えば、可塑剤、難燃剤、相溶化剤、離型剤、耐光剤、耐候剤、着色剤、顔料、改質剤、ドリップ防止剤、帯電防止剤、加水分解防止剤、充填剤、補強剤(ガラス繊維、炭素繊維、タルク、クレー、マイカ、ガラスフレーク、ミルドガラス、ガラスビーズ、結晶性シリカ、アルミナ、窒化ケイ素、窒化アルミニウム、ボロンナイトライド等)、受酸剤(酸化マグネシウム、酸化アルミニウム等の酸化物;水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化アルミニウム、ハイドロタルサイト等の金属水酸化物;炭酸カルシウム;タルク;など)、反応性トラップ剤(例えば、エポキシ化合物、酸無水物化合物、カルボジイミド等)などが挙げられる。
その他の成分の含有量は、セルロース構造体全量に対してそれぞれ、0質量%以上5質量%以下であることが好ましい。ここで、「0質量%」とはその他の成分を含まないことを意味する。
【0046】
(セルロース構造体の特性)
-多孔質構造体-
セルロース構造体は、多孔質構造体であってもよいし、非多孔質構造体であってもよい。
ただし、セルロース多孔質構造体を適用すると、生分解性樹脂との接触面積が増え、生分解性が向上し易くなる。
また、セルロース多孔質構造体は、内部に空隙があるため、樹脂と比べて低比重となり、樹脂と混練した後、樹脂組成物を得て、樹脂フィルムを作製する過程で、樹脂との比重差で、樹脂フィルムの一方の表面に偏在し易くなる。そのため、セルロース多孔質構造体を適用すると、「断面観察したとき、全ての粒子に占める、一方のフィルム表層に存在する粒子の割合が30個数%以上」との構成が実現し易くなる。
加えて、セルロース多孔質構造体は、比表面積が大きくなるため、セルロース及びセルロース誘導体由来の低表面エネルギーが発揮され、疎水性及び低摩擦性をより発現する。
その結果、少ない量のセルロース多孔質構造体で、樹脂フィルム間の剥離強度が低減し易くなり、生分解性も向上し易くなる。
【0047】
-比表面積-
セルロース構造体の比表面積は、1m/g以上が好ましく、より好ましくは、10m/g以上であり、さらに好ましくは、20m/g以上である。
セルロース構造体の比表面積が1m/g以上であると、セルロース及びセルロース誘導体由来の低表面エネルギーが発揮され、疎水性及び低摩擦性をより発現する。それにより、樹脂フィルム間の剥離強度が低減し易くなる。
ただし、樹脂中での再凝集防止の観点から、セルロース構造体の比表面積は、例えば、150m/g以下とする。
【0048】
セルロース構造体の比表面積は、BET比表面積であり、比表面積/細孔分布測定装置(BELSORP MAXII マイクロトラックベル社)を用いた、多点法の自動測定により測定された値である。測定温度は77Kとし、吸着ガスとして窒素ガスを用いる。
ただし、測定前に、試料(つまりセルロース構造体)に前処理として100℃で24時間の真空乾燥を実施し、試料の細孔内に吸着している水を取り除く。
【0049】
-空隙率-
セルロース構造体の空隙率は、10%以上50%以下が好ましく、より好ましくは、20%以上50%以下である。
セルロース構造体の空隙率が10%以上であると、樹脂と混練した後、樹脂組成物を得て、樹脂フィルムを作製する過程で、樹脂との比重差で、樹脂フィルムの一方の表面に偏在し易くなる。そのため、「断面観察したとき、全ての粒子に占める、一方のフィルム表層に存在する粒子の割合が30個数%以上」との構成が実現し易くなる。その結果、樹脂フィルム間の剥離強度が低減し易くなる。
セルロース構造体の空隙率が50%以下であると、樹脂との混練前に、セルロース構造体が微細崩壊されるのが抑制される。その結果、崩壊後の二次凝集が抑制され、樹脂フィルム表面へ均一に近い表面凹凸の付与が実現され、樹脂フィルム間の剥離強度が低減し易くなる。
【0050】
セルロース構造体の空隙率は、次の通り測定する。
走査型顕微鏡(SEM)により、セルロース構造体を倍率25000倍で観測し、SEM画像を得る。SEM画像を画像処理ソフトウェア「ImageJ」に取り込み、二値化処理して、セルロース構造体の全体及び空隙の面積を求める。そして、セルロース構造体全体の面積対する、セルロース構造体の空隙の割合を求め、セルロース構造体の空隙率を求める。
この操作を、10回実施し、平均値を求める。
【0051】
-比重-
セルロース構造体の比重は、0.5g/cm以上1.15g/cm以下が好ましく、0.6g/cm以上1g/cm以下がより好ましく、0.7g/cm以上0.9g/cm以下がさらに好ましい。
セルロース構造体の比重が上記範囲であると、樹脂と混錬した後、樹脂組成物を得て、樹脂フィルムを作製する過程で、樹脂との比重差で、樹脂フィルムの一方の表面に偏在し易くなる。そのため、「断面観察したとき、全ての粒子に占める、一方のフィルム表層に存在する粒子の割合が30個数%以上」との構成が実現し易くなる。その結果、樹脂フィルム間の剥離強度が低減し易くなる。
【0052】
セルロース構造体の比重の測定方法は、次の通りである。
構造体30gをサンプルとし、自動比重計(東洋精機製作所社製、DSG-1)を用いて、測定用液体を水からエタノールに変更した以外は、水中置換法で測定した。
【0053】
(セルロース構造体の製造方法)
本実施形態に係るセルロース構造体は、例えば、次の方法により得られる。
(1)セルロース誘導体をセルロース誘導体に対する良溶媒に添加した後、加熱して、良溶媒にセルロース誘導体を溶解させた溶液Aを得る。
(2)溶液Aに、セルロース誘導体に対する貧溶媒を添加し、溶液Bを得る。
(3)溶液Bを急冷し、相分離により、セルロース誘導体のゲル状物質を生成する。
(4)ゲル状物質を洗浄した後、乾燥することで、セルロース誘導体を主成分とするセルロース多孔質構造体を得る。
(5)得られたセルロース多孔質構造体は、必要に応じて、解砕、篩分により、粗大粒子及び凝集物の除去を行ってもよい。解砕方法は、特に限定されないが、例えば、ジェットミル、振動ミル、ボールミル、ピンミルなどの乾式粉砕装置により行う。篩分方法は、例えば、振動篩、風力篩分機など公知のものにより行う。
【0054】
ここで、ゲル状物質を鹸化することで(つまりセルロース誘導体を鹸化することで)、鹸化の程度により、セルロース、又はセルロース及びセルロース誘導体を主成分とするセルロース多孔質構造体を得る。
【0055】
また、セルロース非多孔質構造体を得るには、懸濁乳化法によるセルロース粒子を得る方法、セルロースアセテートDAC原料の解砕などの方法がある。
【0056】
(その他成分)
本実施形態に係る樹脂フィルムは、その他の成分を含んでもよい。
その他の成分としては、例えば、可塑剤、難燃剤、相溶化剤、離型剤、耐光剤、耐候剤、着色剤、顔料、改質剤、ドリップ防止剤、帯電防止剤、加水分解防止剤、充填剤、補強剤(ガラス繊維、炭素繊維、タルク、クレー、マイカ、ガラスフレーク、ミルドガラス、ガラスビーズ、結晶性シリカ、アルミナ、窒化ケイ素、窒化アルミニウム、ボロンナイトライド等)、受酸剤(酸化マグネシウム、酸化アルミニウム等の酸化物;水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化アルミニウム、ハイドロタルサイト等の金属水酸化物;炭酸カルシウム;タルク;など)、反応性トラップ剤(例えば、エポキシ化合物、酸無水物化合物、カルボジイミド等)などが挙げられる。
その他の成分の含有量は、樹脂フィルム全量に対してそれぞれ、0質量%以上5質量%以下であることが好ましい。ここで、「0質量%」とはその他の成分を含まないことを意味する。
【0057】
(粒子の含有量)
粒子(特にセルロース構造体)の含有量は、生分解性樹脂に対して0.1質量%以上20質量%以下が好ましく、0.5質量%以上10質量%以下がより好ましく、1質量%以上5質量%以下がさらに好ましい。
粒子(特にセルロース構造体)の含有量が上記範囲であると、十分に生分解性及び樹脂フィルム間の剥離強度が低減した樹脂フィルムが得られ易くなる。
【0058】
(樹脂フィルムの特性)
-全ての粒子に占める、一方のフィルム表層に存在する粒子の割合-
本実施形態に係る樹脂フィルムにおいて、樹脂フィルムの断面観察したとき、全ての粒子に占める、一方のフィルム表層に存在する粒子の割合は、30個数%以上であるが、好ましくは35個数%以上、より好ましく40個数%以上である。
ただし、表面平滑性維持の観点から、粒子の割合は、70個数%以下が好ましい。
粒子の割合が30個数%以上とすることで、生分解性が高く、かつ樹脂フィルム間の剥離強度が低減した樹脂フィルムとなる。
【0059】
-樹脂フィルム中のセルロース構造体の平均径-
セルロース構造体は、平均径0.1μm以上50μm以下で存在することが好ましく、平均径1μm以上20μm以下で存在することがより好ましく、平均径1μm以上10μm以下で存在することがさらに好ましい。
セルロース構造体が平均径0.01μm以上で存在すると、表面凹凸による樹脂フィルム間の接点が十分低減され、樹脂フィルム間の強度が低減し易くなる。
セルロース構造体が平均径50μm以下で存在すると、微細な表面凹凸が形成され、樹脂フィルム間の剥離強度が低減し易くなる。
【0060】
一方のフィルム表層に存在する粒子の割合と樹脂フィルム中に存在するセルロース構造体の平均径の測定方法は、次の通りである。
測定対象の樹脂フィルムを厚み方向に沿って切断した切断面を有する試料片を得る。
走査型顕微鏡(SEM)により、試料片の切断面を倍率1000倍で観測し、SEM画像を得る。SEM画像は、樹脂フィルムの断面全体が観察できる画像とする。
SEM画像を画像処理ソフトウェア「ImageJ」に取り込み、樹脂フィルムの断面全体に存在する粒子の個数を求める。また、樹脂フィルムの一方の表面から深さ10μmの表層領域を樹脂フィルムの表層とし、当該表層領域に存在する粒子の個数を求める。なお、当該領域の境界に重なる粒子は、当該領域に存在する粒子としてカウントする。
そして、樹脂フィルムの断面全体に存在する粒子の個数に対する表層領域に存在する粒子の割合(個数%)を求める。そして、この操作を5回実施し、粒子の割合の平均値を求める。
また、SEM画像を画像処理ソフトウェア「ImageJ」に取り込み、樹脂フィルム中に分散しているセルロース多孔質構造体の面積から円相当径を求める。そして、20個のセルロース多孔質構造体の円相当径の平均値を求め、樹脂フィルム中に存在するセルロース構造体の平均径とする。
【0061】
なお、樹脂フィルムの断面観察したとき、全ての粒子に占める、他方のフィルム表層に存在する粒子の割合は、特に制限はないが、30個数%未満、20個数%未満、又は10個数%未満であることが好ましい。
【0062】
(生分解率)
本実施形態に係る樹脂フィルムにおける、ISO 14855-1:2012 JIS 14855-1に準ずる方法で測定した生分解率は、28日間で、30%以上が好ましく、50%以上がより好ましく、70%以上がさらに好ましい。
生分解率が上記範囲であると、十分に生分解性が高い樹脂フィルムとなる。
【0063】
(樹脂フィルム間の剥離強度)
本実施形態に係る樹脂フィルム間の剥離強度は、2.5N以下が好ましく、2N以下がより好ましく、1.5N以下がさらに好ましい。
樹脂フィルム間の剥離強度が上記範囲であると、十分に樹脂フィルム間の剥離強度が低減された樹脂フィルムとなる。
【0064】
ここで、生分解率及び樹脂フィルム間の剥離強度は、後述する「実施例」で記載した方法で測定された値である。
【0065】
(樹脂フィルムの製造方法)
本実施形態に係る樹脂組成物の製造方法としては、例えば、粒子と生分解性樹脂とを混合し、溶融混練する方法;などが挙げられる。溶融混練の手段としては、特に制限されず、例えば、二軸押出機、ヘンシェルミキサー、バンバリーミキサー、単軸スクリュー押出機、多軸スクリュー押出機、コニーダ等が挙げられる。
ここで、粒子としてセルロース構造体(特にセルロース多孔質構造体)を適用した場合、混練条件を制御することで、生分解性樹脂と、生分解性との混練により原料セルロース構造体が崩壊した崩壊物(つまりセルロース構造体)と、を含む樹脂組成物が得られる。
そして、フィルム加工装置により樹脂組成物をフィルム化し、樹脂フィルムを得る。
【0066】
ここで、原料セルロース構造体は、平均径1μm以上500μm以下(好ましくは5μm以上355μm以下、より好ましくは10μm以上100μm以下)の構造体を適用することがよい。
原料セルロース構造体の平均径が1μm以上であると、樹脂に原料セルロース構造体を混練したとき、セルロース多孔質構造体が崩壊し、表面凹凸による樹脂フィルム間の接点が十分低減され、樹脂フィルム間の剥離強度が低減し易くなる。
原料セルロース構造体の平均径が500μm以下であると、樹脂との混練前に、セルロース多孔質構造体が微細に崩壊されるのが抑制される。その結果、崩壊後の二次凝集が抑制され、樹脂フィルム表面へ均一に近い表面凹凸の付与が実現され、樹脂フィルム間の剥離強度が低減し易くなる。
【0067】
原料セルロース構造体の平均径の測定方法は、次の通りである。
走査型顕微鏡(SEM)により、セルロース多孔質構造体を倍率250倍で観測し、閾SEM画像を得る。SEM画像を画像処理ソフトウェア「ImageJ」に取り込み、セルロース多孔質構造体の面積から円相当径を求める。そして、20個のセルロース多孔質構造体の円相当径の平均値を求め、平均径とする。
【0068】
なお、原料セルロース構造体の構成は、上記平均径以外は、上記セルロース構造体と同じ構成であり、説明を省略する。
【0069】
本実施形態に係る樹脂フィルムの用途としては、梱包用フィルム、ラミネート用フィルム、光拡散フイルム、電極フィルム、装飾用フィルムなどが挙げられる。
【実施例0070】
以下に実施例について説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。なお、以下の説明において、特に断りのない限り、「部」及び「%」はすべて質量基準である。
【0071】
<セルロース構造体の作製>
(セルロース構造体CS(1))
容器に、セルロースアセテートDAC(1)5質量部をジメチルホルムアミド20質量部に添加した溶液Aを、90℃下で1時間攪拌する。溶液A中で、ジメチルホルムアミドにセルロースアセテート溶解したのち、溶液Aに、ヘキサノール25質量部を攪拌しながらゆっくり添加し、得られた溶液Bを1時間攪拌する。その後、溶液Bを容器ごと氷水中に浸漬急冷し、相分離による、セルロース構造体のゲル生成物を得た。生成したゲル生成物をエタノール200質量部で洗浄し、50℃24時間で真空乾燥して、セルロース構造体を得た。その後、構造体をミルミキサーで解砕、106μm篩網での篩分を実施し微粉砕したセルロース構造体を得た。
【0072】
(セルロース構造体CS(2))
篩分網のメッシュ径を38μmにした以外は、セルロース構造体CS(1)と同様にして、セルロース構造体CS(2)を得た。
【0073】
(セルロース構造体CS(3))
セルロースアセテートを7.5質量部にした以外は、セルロース構造体CS(1)と同様にして、セルロース構造体CS(3)を得た。
【0074】
(セルロース構造体CS(4))
セルロースアセテートを3.5質量部にした以外は、セルロース構造体CS(1)と同様にして、セルロース構造体CS(4)を得た。
【0075】
(セルロース構造体CS(5))
セルロースアセテートDAC(1)をDAC(2)に変更した以外は、セルロース構造体CS(1)と同様にして、セルロース構造体CS(5)を得た。
【0076】
(セルロース構造体CS(6))
セルロースアセテートDAC(1)をDAC(3)に変更した以外は、セルロース構造体CS(1)と同様にして、セルロース構造体CS(6)を得た。
【0077】
(セルロース構造体CS(7))
セルロースアセテートDAC(1)をDAC(4)に変更した以外は、セルロース構造体CS(1)と同様にして、セルロース構造体CS(2)を得た。
【0078】
(セルロース構造体CS(8))
セルロースアセテートをトリアセチルセルロースに変更した以外は、セルロース構造体CS(1)と同様にして、セルロース構造体CS(8)を得た。
【0079】
(セルロース構造体CS(9))
セルロースアセテートをセルロースアセテートプロピオネートに変更した以外は、セルロース構造体CS(1)と同様にして、セルロース構造体CS(9)を得た。
【0080】
(セルロース構造体CS(10))
セルロースアセテートをセルロースアセテートブチレートに変更した以外は、セルロース構造体CS(1)と同様にして、セルロース構造体CS(10)を得た。
【0081】
(セルロース構造体CS(11))
ゲル生成物のエタノール洗浄前にアルカリけん化した以外は、セルロース構造体CS(1)と同様にして、セルロース構造体CS(11)を得た。
【0082】
(セルロース構造体CS(12))
篩分網のメッシュ径を500μmにした以外は、セルロース構造体CS(1)と同様にして、セルロース構造体CS(12)を得た。
【0083】
(セルロース構造体CS(13))
解砕後の篩分をしなかった以外は、セルロース構造体CS(1)と同様にして、セルロース構造体CS(13)を得た。
【0084】
(セルロース構造体CS(14))
ジメチルホルムアミドを120質量部、ヘキサノールを370質量部に変更した以外は、セルロース構造体CS(1)と同様にして、セルロース構造体CS(14)を得た。
【0085】
(セルロース構造体CS(15))
セルロースアセテートDAC(1)をDAC(5)に変更した以外は、セルロース構造体CS(1)と同様にして、セルロース構造体CS(15)を得た。
【0086】
(セルロース構造体CS(C1))
セルロースアセテートDAC(1)をミルミキサーで解砕後、106μm篩分網で篩い、セルロース構造体(C1)を得た。
【0087】
(セルロース構造体CS(C2))
セルロースアセテートDAC(1)130質量部を酢酸エチル870質量部に溶解した。これを炭酸カルシウム50質量部で純水500質量部に分散させた分散液に加え、3時間攪拌した。これにカルボキシメチルセルロース4質量部とメチルエチルケトン200質量部を純水600質量部に分散させた分散液に加え、高速乳化機で5分間攪拌した。これに10gの水酸化ナトリウムを加え、80℃で3時間攪拌し、酢酸エチルとメチルエチルケトンを除去した。これに10gの希塩酸を加え、残渣をろ過し非多孔質セルロース粒子を得た。
【0088】
(セルロース構造体の特性)
得られたセルロース構造体の下記特性について、既述の方法に従って測定した。
・セルロース構造体の平均径
・セルロース構造体の比表面積(表中「BET」と表記)
・セルロース構造体の空隙率
・セルロース構造体の比重
【0089】
<実施例1~22、比較例1~4>
表1に示す、組成、シリンダ温度及び混練トルクの条件で、各成分を2軸押出装置(芝浦機械社製、TEM58SS)に仕込み、各成分を混練、冷却及び裁断して樹脂ペレット(樹脂組成物に相当)を得た。
そして、表1に示すシリンダ温度、ロール温度の条件で、樹脂組成物をフィルム加工装置(東洋精機製作所製、ラボプラストミル、フィルム加工ユニット)に仕込み、樹脂組成物をフィルム化して、幅50mm×厚み200μmの樹脂フィルムを得て、ロール状に巻き取り、トールフィルムを得た。トールフィルムを幅20mm×長さ70mmに切出し、短尺状の樹脂フィルムを得た。
【0090】
<評価>
(フィルム表層に存在する粒子の割合)
樹脂フィルムの断面観察したとき、全ての粒子に占める、一方のフィルム表層に存在する粒子の割合(表中、「フィルム表層に存在する粒子の割合」と表記)を、既述の方法に従って測定した。
なお、実施例の樹脂フィルムは、樹脂フィルムの断面観察したとき、全ての粒子に占める、他方のフィルム表層に存在する粒子の割合は10個数%未満であることが確認できた。
【0091】
(分散径)
樹脂フィルム中に存在するセルロース構造体の平均径(表中「分散径」と表記)を、既述の方法に従って測定した。
【0092】
(生分解率)
ラボミル(ダルトン製、LM-05)により、得られた樹脂ペレットを粉砕した後、100μmメッシュで篩分し、通過分を回収した。回収物に対して、ISO 14855-1:2012に準ずる方法で、好気性生分解測定を実施し、28日後の生分解率を求めた。
【0093】
(樹脂フィルム間の剥離強度)
得られた樹脂フィルムを2枚用い、2枚の樹脂フィルムの間に幅30mm×長さ30mmのテフロン(登録商標)シートを、2枚の樹脂フィルムが直接接触する面積が幅20mm×長さ40mmになるように挟んで、積層フィルムを得た。積層フィルムを、温度30℃、圧力2MPaでプレスし、直接接触部分だけが融着した試験フィルムを得た。
試験フィルムを用いて、万能材料試験機(東洋精機製作所製、ストログラフVG)にてフィルムの非融着部分をクランプに挟み、試験速度1mm/minで引張試験を行い、剥離した時の試験力を、樹脂フィルム間の剥離強度として測定した。
【0094】
<使用材料>
以下、使用材料の詳細について、説明する。
-添加剤の原料-
・DAC(1):イーストマンケミカル(株)製「商品名CA398-3」、セルロースジアセテート、数平均分子量Mn=15000
・DAC(2):(株)ダイセル製「商品名L20」、セルロースジアセテート、数平均分子量Mn=15000
・DAC(3):(株)ダイセル製「商品名L50」、セルロースジアセテート、数平均分子量Mn=50000
・DAC(4):(株)ダイセル製「商品名L70」、セルロースジアセテート、数平均分子量Mn=75000
・DAC(5):自社合成セルロースジアセテート、数平均分子量Mn=13000、
・TAC :(株)ダイセル製「商品名LT-35」、セルローストリアセテート、数平均分子量Mn=50000
・CAP :イーストマンケミカル(株)製「商品名CAP482-20 72000
・CAB :イーストマンケミカル(株)製「商品名CAB382-10」、セルロースアセテートブチレート、数平均分子量Mn=85000
・CNF(1): スギノマシン(株)製「商品名BinFIS DRY」、セルロースナノファイバー
・CNF(2):セルロース微粉末(大王製紙(株)性「商品名 ELLEX-P」
・CS(C3):AGCエスアイテック(株)製「商品名 サンスフェアH-51」
・CS(C4):Sigma-Aldrich(株)製「商品名 MCM41」
【0095】
-生分解性樹脂-
・PLA :ポリ乳酸(ネイチャーワークス製、Ingeo3001D)
・PBS :ポリブチレンサクシネート(PTT MCC Biochem製 Bio-PBS)
・PBSA:ポリブチレンサクシネートアジペート(PTT MCC Biochem Bio-PBSA)
・CAP :セルロースアセテートプロピオネート(イーストマンケミカル製、CAP482-20)
【0096】
【表1-1】
【0097】
【表1-2】
【0098】
上記結果から、本実施例では、比較例に比べ、生分解性に優れ、樹脂フィルム間の剥離強度が低い樹脂フィルムが得られることがわかる。
【0099】
本実施形態は、下記態様を含む。
(((1)))
生分解性樹脂と、粒子と、を含み、
断面観察したとき、全ての前記粒子に占める、一方のフィルム表層に存在する粒子の割合が30個数%以上である樹脂フィルム。
(((2)))
前記粒子が、セルロース及びセルロース誘導体の少なくとも一方を主成分として含むセルロース構造体である(((1)))に記載の樹脂フィルム。
(((3)))
前記セルロース構造体が、セルロース多孔質構造体である(((2)))に記載の樹脂フィルム。
(((4)))
前記セルロース構造体が平均径0.1μm以上50μm以下で
存在している(((2)))又は(((3)))に記載の樹脂フィルム。
(((5)))
前記セルロース及び前記セルロース誘導体の数平均分子量が15000以上50000以下である(((2)))~(((4)))のいずれか1項に記載の樹脂フィルム。
(((6)))
前記セルロース誘導体が、セルロースアセテートである(((2)))~(((5)))のいずれか1項に記載の樹脂フィルム。
(((7)))
前記生分解性樹脂に対する前記粒子の含有量が、0.1質量%以上10質量%以下である(((1)))~(((6)))のいずれか1項に記載の樹脂フィルム。
(((8)))
前記樹脂フィルム間の剥離強度が2.5N以下である(((1)))~(((7)))のいずれか1項に記載の樹脂フィルム。
【0100】
上記態様の効果は、次の通りである。
(((1)))、又は(((8)))に係る発明によれば、粒子と、を含む樹脂フィルムにおいて、断面観察したとき、全ての粒子に占める、フィルム表層に存在する粒子の割合が30個数%未満である場合に比べ、生分解性に優れ、樹脂フィルム間の剥離強度が低い樹脂フィルムが提供される。
【0101】
(((2)))に係る発明によれば、粒子がセルロースナノファイバーである場合に比べ、生分解性に優れ、樹脂フィルム間の剥離強度が低い樹脂フィルムが提供される。
(((3)))に係る発明によれば、粒子がセルロース非多孔質構造体である場合に比べ、生分解性に優れ、樹脂フィルム間の剥離強度が低い樹脂フィルムが提供される。
(((4)))に係る発明によれば、セルロース構造体が平均径0.1μm未満又は50μm超えで存在している場合に比べ、生分解性に優れ、樹脂フィルム間の剥離強度が低い樹脂フィルムが提供される。
(((5)))に係る発明によれば、セルロース及び前記セルロース誘導体の数平均分子量が15000未満又は50000超えである場合に比べ、生分解性に優れ、樹脂フィルム間の剥離強度が低い樹脂フィルムが提供される。
(((6)))に係る発明によれば、セルロース誘導体がセルロースアセテートプロピオネートである場合に比べ、生分解性に優れ、樹脂フィルム間の剥離強度が低い樹脂フィルムが提供される。
(((7)))に係る発明によれば、生分解性樹脂に対する粒子の含有量が、0.1質量%未満又は10質量%超えである場合に比べ、生分解性に優れ、樹脂フィルム間の剥離強度が低い樹脂フィルムが提供される。