(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024178897
(43)【公開日】2024-12-25
(54)【発明の名称】水位予測モデル構築方法、水位予測モデル構築プログラム、水位予測データ出力方法、水位予測データ出力プログラム、テストデータ補間方法、テストデータ補間プログラム、水位予測的中率算出方法及び水位予測的中率算出プログラム
(51)【国際特許分類】
G01W 1/10 20060101AFI20241218BHJP
G01W 1/00 20060101ALI20241218BHJP
E02B 3/00 20060101ALI20241218BHJP
【FI】
G01W1/10 P
G01W1/00 Z
E02B3/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024054178
(22)【出願日】2024-03-28
(31)【優先権主張番号】P 2023097254
(32)【優先日】2023-06-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2023203810
(32)【優先日】2023-12-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000004330
【氏名又は名称】日本無線株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100119677
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 賢治
(74)【代理人】
【識別番号】100160495
【弁理士】
【氏名又は名称】畑 雅明
(74)【代理人】
【識別番号】100173716
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 真理
(74)【代理人】
【識別番号】100115794
【弁理士】
【氏名又は名称】今下 勝博
(72)【発明者】
【氏名】置田 耕大
(72)【発明者】
【氏名】小松 知滉
(72)【発明者】
【氏名】小礒 康正
(72)【発明者】
【氏名】小井▲土▼ 亜希
(72)【発明者】
【氏名】山本 裕晃
(72)【発明者】
【氏名】福島 佑樹
(72)【発明者】
【氏名】大▲がんな▼ 洸太
(57)【要約】 (修正有)
【課題】本開示は、機械学習を用いて、支流の背水区間の水位を予測するにあたり、支流の背水区間の水位の学習の精度が高くなり、支流の背水区間の水位の予測を適切に実行することができるように、訓練用データ及びテストデータを適切に抽出する。
【解決手段】本開示は、支流の背水区間の水位予測地点でのある時刻の水位の学習に必要な訓練用データLとして、(1)水位予測地点及び水位予測地点より支流の上流地点での、当該時刻より過去の雨量及び水位を示す支流上流データと、(2)支流と本流との合流地点及び合流地点より本流の上流地点での、当該時刻より過去の雨量及び水位を示す本流上流データと、を抽出する訓練用データ抽出ステップと、支流上流データ及び本流上流データを用いて、水位予測地点での水位を予測するための水位予測モデルMを構築する水位予測モデル構築ステップと、を備えることを特徴とする水位予測モデル構築方法である。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
支流の背水区間の水位予測地点でのある時刻の水位の学習に必要な訓練用データとして、(1)前記水位予測地点及び前記水位予測地点より前記支流の上流地点のうちの少なくともいずれかでの、当該時刻より過去の雨量及び水位のうちの少なくともいずれかを示す支流上流データと、(2)前記支流と本流との合流地点及び前記合流地点より前記本流の上流地点のうちの少なくともいずれかでの、当該時刻より過去の雨量及び水位のうちの少なくともいずれかを示す本流上流データと、を抽出する訓練用データ抽出ステップと、
前記支流上流データ及び前記本流上流データを用いて、前記水位予測地点での水位を予測するための水位予測モデルを構築する水位予測モデル構築ステップと、
を備えることを特徴とする水位予測モデル構築方法。
【請求項2】
前記訓練用データ抽出ステップは、前記訓練用データとして、前記支流上流データ及び前記本流上流データに加えて、(3)前記合流地点より前記本流の下流地点での、当該時刻より過去の雨量及び水位のうちの少なくともいずれかを示す本流下流データを抽出し、
前記水位予測モデル構築ステップは、前記支流上流データ、前記本流上流データ及び前記本流下流データを用いて、前記水位予測モデルを構築する
ことを特徴とする、請求項1に記載の水位予測モデル構築方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の水位予測モデル構築方法が備える各処理ステップを、順にコンピュータに実行させるための水位予測モデル構築プログラム。
【請求項4】
請求項1に記載の水位予測モデル構築方法により構築された前記水位予測モデルに、前記水位予測地点でのある時刻の水位の予測に必要なテストデータとして、前記支流上流データ及び前記本流上流データを入力し、前記水位予測地点での当該時刻の水位の予測データを出力する水位予測データ出力ステップ、
を備えることを特徴とする水位予測データ出力方法。
【請求項5】
請求項2に記載の水位予測モデル構築方法により構築された前記水位予測モデルに、前記水位予測地点でのある時刻の水位の予測に必要なテストデータとして、前記支流上流データ、前記本流上流データ及び前記本流下流データを入力し、前記水位予測地点での当該時刻の水位の予測データを出力する水位予測データ出力ステップ、
を備えることを特徴とする水位予測データ出力方法。
【請求項6】
請求項4又は5に記載の水位予測データ出力方法が備える前記水位予測データ出力ステップを、コンピュータに実行させるための水位予測データ出力プログラム。
【請求項7】
請求項4に記載の水位予測データ出力方法を用いるなかで、前記水位予測地点での水位の前記支流上流データが欠測したときに、前記水位予測地点での欠測時刻の水位の前記支流上流データを補間するにあたり、前記水位予測データ出力ステップが欠測時刻より任意時間前の予測時刻に出力した、前記水位予測地点での予測時刻より前記任意時間後の欠測時刻の水位の前記予測データで補間するテストデータ補間ステップ、
を備えることを特徴とするテストデータ補間方法。
【請求項8】
請求項5に記載の水位予測データ出力方法が備える前記水位予測データ出力ステップは、前記支流の上流地点、前記合流地点、前記本流の上流地点及び前記本流の下流地点のうちの少なくともいずれかでの水位も予測するための前記水位予測モデルに、前記テストデータとして、前記支流上流データ、前記本流上流データ及び前記本流下流データのうちの少なくともいずれかを入力し、当該地点での当該時刻の水位の前記予測データも出力し、
請求項5に記載の水位予測データ出力方法を用いるなかで、当該地点での水位の前記テストデータが欠測したときに、当該地点での欠測時刻の水位の前記テストデータを補間するにあたり、請求項5に記載の水位予測データ出力方法が備える前記水位予測データ出力ステップが欠測時刻より任意時間前の予測時刻に出力した、当該地点での予測時刻より前記任意時間後の欠測時刻の水位の前記予測データで補間するテストデータ補間ステップ、
を備えることを特徴とするテストデータ補間方法。
【請求項9】
前記テストデータ補間ステップは、前記水位予測地点、前記支流の上流地点、前記合流地点、前記本流の上流地点及び前記本流の下流地点のうちの少なくともいずれかでの雨量の前記テストデータが欠測したときに、当該地点での欠測時刻の雨量の前記テストデータを補間するにあたり、当該地点での欠測時刻の雨量予報データで補間する
ことを特徴とする、請求項7又は8に記載のテストデータ補間方法。
【請求項10】
前記テストデータ補間ステップが設定している前記任意時間は、前記水位予測データ出力ステップが水位の前記予測データを出力する時間間隔に等しい時間である
ことを特徴とする、請求項7又は8に記載のテストデータ補間方法。
【請求項11】
請求項7又は8に記載のテストデータ補間方法が備える各処理ステップを、コンピュータに実行させるためのテストデータ補間プログラム。
【請求項12】
請求項1に記載の水位予測モデル構築方法が構築した前記水位予測モデルの検証のための検証用データとして、水位、過去観測雨量及び検証対象時刻より将来の予報雨量を示す前記支流上流データ及び前記本流上流データを抽出する検証用データ抽出ステップと、
前記水位予測モデルに前記検証用データとして、前記水位予測地点での複数時刻の水位を検証するための水位、過去観測雨量及び予報雨量を示す前記支流上流データ及び前記本流上流データを入力し、前記水位予測地点での当該複数時刻の水位の予測データを出力する水位予測データ出力ステップと、
前記水位予測地点での当該複数時刻の水位の予測データのうちの、前記水位予測地点での当該複数時刻の水位の観測データの周りの誤差幅内に収まるものの割合を、前記水位予測地点での水位の予測的中率として算出する水位予測的中率算出ステップと、
を順に備えることを特徴とする水位予測的中率算出方法。
【請求項13】
前記検証用データ抽出ステップは、前記検証用データとして、当該検証対象時刻より将来の将来観測雨量を示す前記支流上流データ及び前記本流上流データも抽出し、
前記水位予測モデルに前記検証用データとして、前記水位予測地点での当該複数時刻の水位を検証するための水位、過去観測雨量及び将来観測雨量を示す前記支流上流データ及び前記本流上流データを入力し、前記水位予測地点での水位の予測誤差の確率分布を算出し、前記水位予測的中率算出ステップでの水位の観測データに対する水位の予測データの誤差幅を設定する水位予測誤差幅設定ステップ、
を前記検証用データ抽出ステップと前記水位予測データ出力ステップとの間に備える
ことを特徴とする、請求項12に記載の水位予測的中率算出方法。
【請求項14】
前記水位予測的中率算出ステップは、前記水位予測地点での水位警戒のための各発令基準毎に、及び/又は、前記水位予測データ出力ステップでの予測出力時刻から各予測対象時刻までの各期間長さ毎に、前記水位予測地点での水位の予測的中率を算出する
ことを特徴とする、請求項12又は13に記載の水位予測的中率算出方法。
【請求項15】
前記水位予測的中率算出ステップは、水位、過去観測雨量及び予報雨量を示す前記支流上流データ及び前記本流上流データに基づく前記水位予測地点での予測対象時刻の水位の予測時に、前記水位予測地点での当該予測対象時刻の水位の予測データとともに、前記水位予測地点での水位の予測的中率を出力する
ことを特徴とする、請求項12又は13に記載の水位予測的中率算出方法。
【請求項16】
請求項12又は13に記載の水位予測的中率算出方法が順に備える各処理ステップを、コンピュータに順に実行させるための水位予測的中率算出プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、機械学習を用いて、支流の背水区間の水位を予測する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
機械学習を用いて、河川の水位を予測する技術が、特許文献1等に開示されている。訓練段階では、水位学習のための訓練用データを用いて、ニューラルネットワーク等の水位予測モデルを構築する。検証段階では、水位予測モデルの検証のための検証用データを水位予測モデルに入力し、水位予測モデルの汎化性能を評価する。予測段階では、水位予測のためのテストデータを水位予測モデルに入力し、河川の水位を予測する。
【0003】
特許文献1では、水位予測地点でのある時刻の水位の学習に必要な訓練用データとして、水位予測地点及び水位予測地点より上流地点のうちの少なくともいずれかでの、当該時刻より過去の雨量及び水位のうちの少なくともいずれかを示す上流データを抽出する。そして、水位予測地点でのある時刻の水位の予測に必要なテストデータとして、水位予測地点及び水位予測地点より上流地点のうちの少なくともいずれかでの、当該時刻より過去の雨量及び水位のうちの少なくともいずれかを示す上流データを抽出する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、洪水時では、本流の水位が高いときに、支流の水が下流へ流れにくくなり、本流の水が支流へ逆流することもあり、支流の背水区間の水位が高くなる。つまり、支流の背水区間の水位は、背水区間より支流の上流での雨量及び水位の影響を受けるのみならず、支流と本流との合流地点より本流の上流での雨量及び水位の影響を受けるとともに、支流と本流との合流地点より本流の下流での雨量及び水位の影響を受けることもある。
【0006】
従来技術の訓練用データ及びテストデータの抽出処理を
図1に示す。従来技術では、支流の背水区間の水位予測地点P1でのある時刻の水位の学習に必要な訓練用データとして、水位予測地点P1及び水位予測地点P1より支流の上流地点P2、P3のうちの少なくともいずれかでの、当該時刻より過去の雨量及び水位のうちの少なくともいずれかを示す支流上流データを抽出する。そして、支流の背水区間の水位予測地点P1でのある時刻の水位の予測に必要なテストデータとして、水位予測地点P1及び水位予測地点P1より支流の上流地点P2、P3のうちの少なくともいずれかでの、当該時刻より過去の雨量及び水位のうちの少なくともいずれかを示す支流上流データを抽出する。
【0007】
しかし、支流の背水区間の水位に対して、背水区間より支流の上流での雨量及び水位の影響を考慮するのみであり、支流と本流との合流地点より本流の上流での雨量及び水位の影響を考慮しておらず、支流と本流との合流地点より本流の下流での雨量及び水位の影響も考慮していないため、支流の背水区間の水位の学習の精度が低くなり、支流の背水区間の水位の予測を適切に実行することができない。
【0008】
そこで、前記課題を解決するために、本開示は、機械学習を用いて、支流の背水区間の水位を予測するにあたり、支流の背水区間の水位の学習の精度が高くなり、支流の背水区間の水位の予測を適切に実行することができるように、訓練用データ及びテストデータを適切に抽出することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決するために、支流の背水区間の水位に対して、背水区間より支流の上流での雨量及び水位の影響を考慮するのみならず、第1の影響として、支流と本流との合流地点より本流の上流での雨量及び水位の影響を考慮するとともに、第2の影響として、支流と本流との合流地点より本流の下流での雨量及び水位の影響も考慮することとした。
【0010】
具体的には、本開示は、支流の背水区間の水位予測地点でのある時刻の水位の学習に必要な訓練用データとして、(1)前記水位予測地点及び前記水位予測地点より前記支流の上流地点のうちの少なくともいずれかでの、当該時刻より過去の雨量及び水位のうちの少なくともいずれかを示す支流上流データと、(2)前記支流と本流との合流地点及び前記合流地点より前記本流の上流地点のうちの少なくともいずれかでの、当該時刻より過去の雨量及び水位のうちの少なくともいずれかを示す本流上流データと、を抽出する訓練用データ抽出ステップと、前記支流上流データ及び前記本流上流データを用いて、前記水位予測地点での水位を予測するための水位予測モデルを構築する水位予測モデル構築ステップと、を備えることを特徴とする水位予測モデル構築方法である。
【0011】
この構成によれば、支流の背水区間の水位の学習の精度が高くなるように、訓練用データとして支流上流及び本流上流のデータを適切に抽出することができる。
【0012】
また、本開示は、前記訓練用データ抽出ステップは、前記訓練用データとして、前記支流上流データ及び前記本流上流データに加えて、(3)前記合流地点より前記本流の下流地点での、当該時刻より過去の雨量及び水位のうちの少なくともいずれかを示す本流下流データを抽出し、前記水位予測モデル構築ステップは、前記支流上流データ、前記本流上流データ及び前記本流下流データを用いて、前記水位予測モデルを構築することを特徴とする水位予測モデル構築方法である。
【0013】
この構成によれば、支流の背水区間の水位の学習の精度が高くなるように、訓練用データとして支流上流、本流上流及び本流下流のデータを適切に抽出することができる。
【0014】
また、本開示は、以上に記載の水位予測モデル構築方法が備える各処理ステップを、順にコンピュータに実行させるための水位予測モデル構築プログラムである。
【0015】
この構成によれば、以上に記載の効果を有するプログラムを提供することができる。
【0016】
また、本開示は、以上に記載の水位予測モデル構築方法により構築された前記水位予測モデルに、前記水位予測地点でのある時刻の水位の予測に必要なテストデータとして、前記支流上流データ及び前記本流上流データを入力し、前記水位予測地点での当該時刻の水位の予測データを出力する水位予測データ出力ステップ、を備えることを特徴とする水位予測データ出力方法である。
【0017】
この構成によれば、支流の背水区間の水位の予測を適切に実行することができるように、テストデータとして支流上流及び本流上流のデータを適切に抽出することができる。
【0018】
また、本開示は、以上に記載の水位予測モデル構築方法により構築された前記水位予測モデルに、前記水位予測地点でのある時刻の水位の予測に必要なテストデータとして、前記支流上流データ、前記本流上流データ及び前記本流下流データを入力し、前記水位予測地点での当該時刻の水位の予測データを出力する水位予測データ出力ステップ、を備えることを特徴とする水位予測データ出力方法である。
【0019】
この構成によれば、支流の背水区間の水位の予測を適切に実行することができるように、テストデータとして支流上流、本流上流及び本流下流のデータを適切に抽出することができる。
【0020】
また、本開示は、以上に記載の水位予測データ出力方法が備える前記水位予測データ出力ステップを、コンピュータに実行させるための水位予測データ出力プログラムである。
【0021】
この構成によれば、以上に記載の効果を有するプログラムを提供することができる。
【0022】
さらなる課題を解決するために、テストデータとして、水位予測地点での水位の支流上流データが欠測したときに、水位予測地点での欠測時刻の水位の支流上流データを補間するにあたり、欠測時刻より任意時間前の予測時刻に降雨・実水位状況を反映させたうえで出力した、水位予測地点での予測時刻より任意時間後の欠測時刻の水位の予測データで補間することとした。
【0023】
具体的には、本開示は、以上に記載の水位予測データ出力方法を用いるなかで、前記水位予測地点での水位の前記支流上流データが欠測したときに、前記水位予測地点での欠測時刻の水位の前記支流上流データを補間するにあたり、前記水位予測データ出力ステップが欠測時刻より任意時間前の予測時刻に出力した、前記水位予測地点での予測時刻より前記任意時間後の欠測時刻の水位の前記予測データで補間するテストデータ補間ステップ、を備えることを特徴とするテストデータ補間方法である。
【0024】
この構成によれば、水位予測地点での水位テストデータが欠測したときでも、降雨・実水位状況を反映させたうえで、水位予測地点での水位テストデータを補間することにより、水位予測地点での水位予測精度を向上させることができる。
【0025】
また、本開示は、以上に記載の水位予測データ出力方法が備える前記水位予測データ出力ステップは、前記支流の上流地点、前記合流地点、前記本流の上流地点及び前記本流の下流地点のうちの少なくともいずれかでの水位も予測するための前記水位予測モデルに、前記テストデータとして、前記支流上流データ、前記本流上流データ及び前記本流下流データのうちの少なくともいずれかを入力し、当該地点での当該時刻の水位の前記予測データも出力し、以上に記載の水位予測データ出力方法を用いるなかで、当該地点での水位の前記テストデータが欠測したときに、当該地点での欠測時刻の水位の前記テストデータを補間するにあたり、以上に記載の水位予測データ出力方法が備える前記水位予測データ出力ステップが欠測時刻より任意時間前の予測時刻に出力した、当該地点での予測時刻より前記任意時間後の欠測時刻の水位の前記予測データで補間するテストデータ補間ステップ、を備えることを特徴とするテストデータ補間方法である。
【0026】
この構成によれば、支流の上流地点、合流地点、本流の上流地点及び本流の下流地点での水位テストデータが欠測したときでも、降雨・実水位状況を反映させたうえで、支流の上流地点、合流地点、本流の上流地点及び本流の下流地点での水位テストデータを補間することにより、水位予測地点での水位予測精度を向上させることができる。
【0027】
また、本開示は、前記テストデータ補間ステップは、前記水位予測地点、前記支流の上流地点、前記合流地点、前記本流の上流地点及び前記本流の下流地点のうちの少なくともいずれかでの雨量の前記テストデータが欠測したときに、当該地点での欠測時刻の雨量の前記テストデータを補間するにあたり、当該地点での欠測時刻の雨量予報データで補間することを特徴とするテストデータ補間方法である。
【0028】
この構成によれば、水位予測地点、支流の上流地点、合流地点、本流の上流地点及び本流の下流地点での雨量テストデータが欠測したときでも、雨量予報データを反映させたうえで、水位予測地点、支流の上流地点、合流地点、本流の上流地点及び本流の下流地点での雨量テストデータを補間することにより、水位予測地点での水位予測精度を向上させることができる。
【0029】
また、本開示は、前記テストデータ補間ステップが設定している前記任意時間は、前記水位予測データ出力ステップが水位の前記予測データを出力する時間間隔に等しい時間であることを特徴とするテストデータ補間方法である。
【0030】
この構成によれば、欠測時刻より短時間(水位予測の時間間隔)前の予測時刻に、降雨・実水位状況を反映させたうえで出力した、水位予測地点での予測時刻より短時間(水位予測の時間間隔)後の欠測時刻の、水位の予測データで補間することができる。
【0031】
また、本開示は、以上に記載のテストデータ補間方法が備える各処理ステップを、コンピュータに実行させるためのテストデータ補間プログラムである。
【0032】
この構成によれば、以上に記載の効果を有するプログラムを提供することができる。
【0033】
実運用上、テストデータとして、水位、「過去観測」雨量及び「予報」雨量を示す支流上流データ及び本流上流データを抽出する。しかし、「予報」雨量を示す支流上流データ及び本流上流データは、「将来観測」雨量を示す支流上流データ及び本流上流データと比べて、精度が低いため、水位の「予測」データは、水位の「観測」データと比べて、大きく外れることがある。
【0034】
前記課題を解決するために、検証段階では、検証用データとして、水位、「過去観測」雨量及び「将来観測」雨量を示す支流上流データ及び本流上流データを抽出し、水位の予測誤差の確率分布を算出し、水位の観測データに対する水位の予測データの誤差幅を設定する。そして、検証用データとして、「将来観測」雨量を示す支流上流データ及び本流上流データを、「予報」雨量を示す支流上流データ及び本流上流データに置き換え、水位の予測データのうちの水位の観測データの周りの誤差幅内に収まるものの割合を、水位の予測的中率として算出する。
【0035】
予測段階では、テストデータとして、実運用上は水位、「過去観測」雨量及び「予報」雨量を示す支流上流データ及び本流上流データを抽出し、水位の予測データとともに、水位の予測的中率を出力する。ここで、各発令基準毎に、及び/又は、各N時間後予測毎に、水位の予測的中率を出力する。
【0036】
具体的には、本開示は、以上に記載の水位予測モデル構築方法が構築した前記水位予測モデルの検証のための検証用データとして、水位、過去観測雨量及び検証対象時刻より将来の予報雨量を示す前記支流上流データ及び前記本流上流データを抽出する検証用データ抽出ステップと、前記水位予測モデルに前記検証用データとして、前記水位予測地点での複数時刻の水位を検証するための水位、過去観測雨量及び予報雨量を示す前記支流上流データ及び前記本流上流データを入力し、前記水位予測地点での当該複数時刻の水位の予測データを出力する水位予測データ出力ステップと、前記水位予測地点での当該複数時刻の水位の予測データのうちの、前記水位予測地点での当該複数時刻の水位の観測データの周りの誤差幅内に収まるものの割合を、前記水位予測地点での水位の予測的中率として算出する水位予測的中率算出ステップと、を順に備えることを特徴とする水位予測的中率算出方法である。
【0037】
この構成によれば、機械学習を用いて、支流の背水区間の水位を予測するにあたり、テストデータとして、「予報」雨量を示す支流上流データ及び本流上流データを抽出するときでも、検証段階において、水位の予測的中率を算出することにより、水位の予測データの信頼性を可視化することができる。
【0038】
また、本開示は、前記検証用データ抽出ステップは、前記検証用データとして、当該検証対象時刻より将来の将来観測雨量を示す前記支流上流データ及び前記本流上流データも抽出し、前記水位予測モデルに前記検証用データとして、前記水位予測地点での当該複数時刻の水位を検証するための水位、過去観測雨量及び将来観測雨量を示す前記支流上流データ及び前記本流上流データを入力し、前記水位予測地点での水位の予測誤差の確率分布を算出し、前記水位予測的中率算出ステップでの水位の観測データに対する水位の予測データの誤差幅を設定する水位予測誤差幅設定ステップ、を前記検証用データ抽出ステップと前記水位予測データ出力ステップとの間に備えることを特徴とする水位予測的中率算出方法である。
【0039】
この構成によれば、機械学習を用いて、支流の背水区間の水位を予測するにあたり、検証段階において、水位の予測誤差の確率分布を算出し、水位の観測データに対する水位の予測データの誤差幅を設定し、水位の予測的中率を算出することができる。
【0040】
また、本開示は、前記水位予測的中率算出ステップは、前記水位予測地点での水位警戒のための各発令基準毎に、及び/又は、前記水位予測データ出力ステップでの予測出力時刻から各予測対象時刻までの各期間長さ毎に、前記水位予測地点での水位の予測的中率を算出することを特徴とする水位予測的中率算出方法である。
【0041】
この構成によれば、機械学習を用いて、支流の背水区間の水位を予測するにあたり、テストデータとして、「予報」雨量を示す支流上流データ及び本流上流データを抽出するときでも、検証段階において、水位の予測的中率を算出することにより、各発令基準の到達判断を支援することができる。
【0042】
また、本開示は、前記水位予測的中率算出ステップは、水位、過去観測雨量及び予報雨量を示す前記支流上流データ及び前記本流上流データに基づく前記水位予測地点での予測対象時刻の水位の予測時に、前記水位予測地点での当該予測対象時刻の水位の予測データとともに、前記水位予測地点での水位の予測的中率を出力することを特徴とする水位予測的中率算出方法である。
【0043】
この構成によれば、機械学習を用いて、支流の背水区間の水位を予測するにあたり、テストデータとして、「予報」雨量を示す支流上流データ及び本流上流データを抽出するときでも、予測段階において、水位の予測的中率を出力することにより、水位の予測データの信頼性を可視化することができる。
【0044】
また、本開示は、以上に記載の水位予測的中率算出方法が順に備える各処理ステップを、コンピュータに順に実行させるための水位予測的中率算出プログラムである。
【0045】
この構成によれば、以上に記載の効果を有するプログラムを提供することができる。
【0046】
なお、上記各開示の発明は、可能な限り組み合わせることができる。
【発明の効果】
【0047】
このように、本開示は、機械学習を用いて、支流の背水区間の水位を予測するにあたり、支流の背水区間の水位の学習の精度が高くなり、支流の背水区間の水位の予測を適切に実行することができるように、訓練用データ及びテストデータを適切に抽出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【
図1】従来技術の訓練用データ及びテストデータの抽出処理を示す図である。
【
図2】本開示の水位予測装置の構成を示す図である。
【
図3】本開示の水位予測処理の手順を示す図である。
【
図4】本開示の訓練用データ及びテストデータの抽出処理を示す図である。
【
図5】従来技術及び本開示の水位予測処理の実例を示す図である。
【
図6】従来技術及び本開示の水位予測処理の実例を示す図である。
【
図7】比較例の水位テストデータ補間処理の具体例を示す図である。
【
図8】本開示の水位予測装置の構成を示す図である。
【
図9】本開示のテストデータ補間処理の手順を示す図である。
【
図10】本開示の水位テストデータ補間処理の具体例を示す図である。
【
図11】本開示の雨量テストデータ補間処理の具体例を示す図である。
【
図12】本開示の水位予測装置の構成を示す図である。
【
図13】本開示の水位予測的中率算出処理の手順を示す図である。
【
図14】本開示の水位予測誤差幅設定処理の具体例を示す図である。
【
図15】本開示の水位予測的中率算出処理の具体例を示す図である。
【
図16】本開示の水位予測的中率出力処理の実例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0049】
添付の図面を参照して本開示の実施形態を説明する。以下に説明する実施形態は本開示の実施の例であり、本開示は以下の実施形態に制限されるものではない。
【0050】
(本開示の水位予測処理の概要)
本開示の水位予測装置の構成を
図2に示す。本開示の水位予測処理の手順を
図3に示す。本開示の訓練用データ及びテストデータの抽出処理を
図4に示す。
【0051】
水位予測装置Wは、水位予測モデルM、訓練用データ抽出部1、水位予測モデル構築部2、テストデータ抽出部3及び水位予測データ出力部4を備え、
図3に示した水位予測プログラムをコンピュータにインストールし実現することができる。
【0052】
洪水時では、本流の水位が高いときに、支流の水が下流へ流れにくくなり、本流の水が支流へ逆流することもあり、支流の背水区間の水位が高くなる。つまり、支流の背水区間の水位は、背水区間より支流の上流での雨量及び水位の影響を受けるのみならず、支流と本流との合流地点より本流の上流での雨量及び水位の影響を受けるとともに、支流と本流との合流地点より本流の下流での雨量及び水位の影響を受けることもある。
【0053】
本開示では、支流の背水区間の水位に対して、背水区間より支流の上流での雨量及び水位の影響を考慮するのみならず、第1の影響として、支流と本流との合流地点より本流の上流での雨量及び水位の影響を考慮するとともに、第2の影響として、支流と本流との合流地点より本流の下流での雨量及び水位の影響も考慮することとした。以下では、訓練用データの抽出処理の詳細を説明した後に、テストデータの抽出処理の詳細を説明する。
【0054】
(本開示の訓練用データの抽出処理の詳細)
訓練用データ抽出部1は、雨量データRF及び水位データWLを取得し、支流の背水区間の水位予測地点P1でのある時刻の水位の学習に必要な訓練用データLとして、以下に示すデータを抽出する(ステップS1):(1)水位予測地点P1及び水位予測地点P1より支流の上流地点P2、P3のうちの少なくともいずれかでの、当該時刻より過去の雨量及び水位のうちの少なくともいずれかを示す支流上流データ、(2)支流と本流との合流地点P4及び合流地点P4より本流の上流地点P5、P6のうちの少なくともいずれかでの、当該時刻より過去の雨量及び水位のうちの少なくともいずれかを示す本流上流データ、(3)合流地点P4より本流の下流地点P7での、当該時刻より過去の雨量及び水位のうちの少なくともいずれかを示す本流下流データ。ただし、本流の下流地点P7は、支流の背水区間の水位に対して影響を及ぼす程度に、合流地点P4に近いことが望ましい。
【0055】
水位予測モデル構築部2は、訓練用データL(基本的には支流上流データ及び本流上流データ、より良くは本流下流データも)を用いて、水位予測地点P1での水位を予測するための水位予測モデルM(ニューラルネットワーク等)を構築する(ステップS2)。
【0056】
ここで、訓練用データ抽出部1は、訓練用データLとして、支流の背水区間の水位予測地点P1での洪水時の水位と比べて、相関が高い期間の雨量及び水位のデータを抽出することが望ましく、相関が低い期間の雨量及び水位のデータを棄却することが望ましい。
【0057】
例えば、訓練用データ抽出部1は、訓練用データLとして、(1)水位不変動期間を棄却する水位ピーク判別閾値を設定したうえで、水位のデータの抽出期間を選択してもよく、(2)水位不変動期間を棄却する水位ピーク抽出幅を設定したうえで、水位のデータの抽出期間を選択してもよく、(3)水位上昇・下降期間を抽出する所定水位期間を設定したうえで、水位のデータの抽出期間を選択してもよく、(4)降雨が水位予測地点P1に到達する時間を考慮した所定雨量期間を設定したうえで、雨量のデータの抽出期間を選択してもよく、(5)降雨が土壌内又は貯水池等から河川へと流出する時間を考慮した所定累加期間を設定したうえで、雨量のデータの抽出期間を選択してもよい(特許文献1を参照)。
【0058】
このように、支流の背水区間の水位の学習の精度が高くなるように、訓練用データLとして、基本的には支流上流及び本流上流の雨量及び水位のデータを適切に抽出することができ、より良くは本流下流の雨量及び水位のデータも適切に抽出することができる。
【0059】
(本開示のテストデータの抽出処理の詳細)
テストデータ抽出部3は、雨量データRF及び水位データWLを取得し、支流の背水区間の水位予測地点P1でのある時刻の水位の予測に必要なテストデータTとして、以下に示すデータを抽出する(ステップS3):(1)水位予測地点P1及び水位予測地点P1より支流の上流地点P2、P3のうちの少なくともいずれかでの、当該時刻より過去の雨量及び水位のうちの少なくともいずれかを示す支流上流データ、(2)支流と本流との合流地点P4及び合流地点P4より本流の上流地点P5、P6のうちの少なくともいずれかでの、当該時刻より過去の雨量及び水位のうちの少なくともいずれかを示す本流上流データ、(3)合流地点P4より本流の下流地点P7での、当該時刻より過去の雨量及び水位のうちの少なくともいずれかを示す本流下流データ。ただし、本流の下流地点P7は、支流の背水区間の水位に対して影響を及ぼす程度に、合流地点P4に近いことが望ましい。
【0060】
テストデータ抽出部3は、水位予測モデルM(ニューラルネットワーク等)に、テストデータT(基本的には支流上流データ及び本流上流データ、より良くは本流下流データも)を入力する。そして、水位予測データ出力部4は、水位予測モデルMから、水位予測地点P1での当該時刻の水位予測データPを出力する(ステップS4)。
【0061】
このように、支流の背水区間の水位の予測を適切に実行することができるように、テストデータTとして、基本的には支流上流及び本流上流の雨量及び水位のデータを適切に抽出することができ、より良くは本流下流の雨量及び水位のデータも適切に抽出することができる。
【0062】
(従来技術及び本開示の水位予測処理の実例)
従来技術及び本開示の水位予測処理の実例を
図5及び
図6に示す。従来技術では、支流の背水区間の水位予測地点P1での水位の学習及び予測に必要な、訓練用データL及びテストデータTとして、支流上流データのみを抽出している。本開示では、支流の背水区間の水位予測地点P1での水位の学習及び予測に必要な、訓練用データL及びテストデータTとして、支流上流データ、本流上流データ及び本流下流データすべてを抽出している。
【0063】
図5の上段に示した従来技術では、降雨後の洪水時において、水位予測地点P1での予測水位は、水位予測地点P1での実水位と比べて、低くなるとともに、遅めの上昇を示す。
図5の下段に示した本開示では、降雨後の洪水時において、水位予測地点P1での予測水位は、水位予測地点P1での実水位と比べて、ほぼ等しくなるとともに(上振れしているのは、そのような水位予測モデルMを選定したためである。)、適切な上昇を示す。
【0064】
図6の上段に示した従来技術では、降雨後の洪水時において、水位予測地点P1での予測水位は、水位予測地点P1での実水位と比べて、低くなる(上昇速度はほぼ同程度)。
図6の下段に示した本開示では、降雨後の洪水時において、水位予測地点P1での予測水位は、水位予測地点P1での実水位と比べて、ほぼ等しくなる(上昇速度はほぼ同程度)。
【0065】
(比較例の水位テストデータ補間処理の手順)
ところで、テストデータTとして、水位予測地点P1での水位の支流上流データが欠測することがあり得る。これは、水位観測所のテレメータからの入力データについて、符号エラーが検出されることがあり、正常な受信がされないからである。すると、テストデータTを水位予測モデルMに入力することができず、水位予測地点P1での水位を予測することができない。そこで、水位予測地点P1での水位の支流上流データを補間することが考えられる。
【0066】
比較例の水位テストデータ補間処理の具体例を
図7に示す。水位予測地点P1での水位の支流上流データが欠測したときに、水位予測地点P1での欠測時刻の水位の支流上流データを補間するにあたり、水位観測所のテレメータが欠測時刻より前の時刻及び/又は後の時刻に送信した、水位予測地点P1での欠測時刻より前の時刻及び/又は後の時刻の水位の支流上流データを参照する。
【0067】
図7の第1段では、現時刻の30分後の12時30分の水位を予測するために、現時刻の1時間前の11時の水位データ3.0mと、現時刻の30分前の11時30分の水位データ4.0mと、現時刻である12時の水位データ5.0mと、をテストデータとして抽出する。
図7の第2~4段では、テストデータとして、一部の水位データが欠測する。
【0068】
図7の第2段では、11時の水位データ3.0mと、11時30分の水位データ4.0mと、が欠測しており、12時の水位データ5.0mが観測されている。そこで、11時の水位データ3.0mと、11時30分の水位データ4.0mと、として、12時の水位データ5.0mを時間シフトして、水位データ5.0mを大きく誤って補間する。
【0069】
図7の第3段では、11時30分の水位データ4.0mと、12時の水位データ5.0mと、が欠測しており、11時の水位データ3.0mが観測されている。そこで、11時30分の水位データ4.0mと、12時の水位データ5.0mと、として、11時の水位データ3.0mを時間シフトして、水位データ3.0mを大きく誤って補間する。
【0070】
図7の第4段では、11時30分の水位データ4.0mが欠測しており、11時の水位データ3.0mと、12時の水位データ5.0mと、が観測されている。そこで、11時30分の水位データ4.0mとして、11時の水位データ3.0mと、12時の水位データ5.0mと、の間の線形補間をして、水位データ4.0mをほぼ正しく補間する。
【0071】
図7の第4段では、欠測時刻より前の時刻及び後の時刻の両方の水位の支流上流データを参照するため、降雨状況が反映される。
図7の第2、3段では、欠測時刻より前の時刻及び後の時刻の一方の水位の支流上流データを参照するため、降雨状況が反映されない。
【0072】
(本開示の水位テストデータ補間処理の手順)
本開示の水位予測装置の構成を
図8にも示す。本開示のテストデータ補間処理の手順を
図9に示す。本開示の水位テストデータ補間処理の具体例を
図10に示す。水位予測装置Wは、テストデータ補間部5も備え、
図9に示したテストデータ補間プログラムもコンピュータにインストールし実現することができる。
【0073】
本開示の水位テストデータ補間処理(特に、ステップS14)を行なうにあたり、支流の上流地点P2、P3、合流地点P4、本流の上流地点P5、P6及び本流の下流地点P7のうちの少なくともいずれかでの、水位も予測するための水位予測モデルMは、テストデータTとして、支流上流データ、本流上流データ及び本流下流データのうちの少なくともいずれかを入力し、当該地点での当該時刻の水位予測データPも出力する。
【0074】
テストデータ補間部5は、水位予測地点P1での水位の支流上流データが欠測したときに(ステップS11)、水位予測地点P1での欠測時刻の水位の支流上流データを補間する(ステップS12)。
【0075】
ここで、テストデータ補間部5は、水位予測データ出力部4が欠測時刻より任意時間前の予測時刻に出力した、水位予測地点P1での予測時刻より任意時間後の欠測時刻の水位予測データPで補間する(ステップS12)。
【0076】
テストデータ補間部5は、支流の上流地点P2、P3、合流地点P4、本流の上流地点P5、P6及び本流の下流地点P7のうちの少なくともいずれかでの、水位のテストデータTが欠測したときに(ステップS13)、当該地点での欠測時刻の水位のテストデータTを補間する(ステップS14)。
【0077】
ここで、テストデータ補間部5は、水位予測データ出力部4が欠測時刻より任意時間前の予測時刻に出力した、支流の上流地点P2、P3、合流地点P4、本流の上流地点P5、P6及び本流の下流地点P7のうちの少なくともいずれかでの、予測時刻より任意時間後の欠測時刻の水位予測データPで補間する(ステップS14)。
【0078】
なお、支流の上流地点P2、P3、合流地点P4、本流の上流地点P5、P6及び本流の下流地点P7のうちの少なくともいずれかでの、水位のテストデータTが欠測したときには、水位予測地点P1での水位のテストデータTが欠測していなくても、水位予測地点P1での水位予測データPを出力できないため、支流の上流地点P2、P3、合流地点P4、本流の上流地点P5、P6及び本流の下流地点P7のうちの少なくともいずれかでの、欠測時刻の水位のテストデータTを、当該地点での水位予測データPで補間する。
【0079】
また、テストデータ補間部5が設定している任意時間は、水位予測データ出力部4が水位予測データPを出力する時間間隔に等しい時間である。つまり、短時間後の雨量予報は高精度であり、テストデータ補間部5が設定している任意時間は短時間である。
【0080】
テストデータ抽出部3は、水位予測モデルMに、テストデータT(テストデータ補間部5が補間した、欠測時刻の水位のテストデータTを含み、欠測時刻の雨量のテストデータTは後述)を入力する(ステップS17)。水位予測データ出力部4は、水位予測モデルMから、水位予測地点P1での当該時刻の水位予測データPを出力する(ステップS18)。水位予測データ出力部4は、水位予測モデルMから、支流の上流地点P2、P3、合流地点P4、本流の上流地点P5、P6及び本流の下流地点P7のうちの少なくともいずれかでの、当該時刻の水位予測データPも出力する(ステップS18)。
【0081】
図10の第1段では、現時刻の30分後の12時30分の水位を予測するために、現時刻の1時間前の11時の水位データ3.0mと、現時刻の30分前の11時30分の水位データ4.0mと、現時刻である12時の水位データ5.0mと、をテストデータとして抽出する。
図10の第3~5段では、テストデータとして、一部の水位データが欠測する。
【0082】
図10の第2段では、その時々の現時刻の30分後の水位を予測した結果として、現時刻の1時間前の11時の水位予測データ2.9mと、現時刻の30分前の11時30分の水位予測データ3.9mと、現時刻である12時の水位予測データ4.8mと、を出力する。
図10の第2段では、テストデータ補間部5が設定している任意時間は30分である。
【0083】
図10の第3段では、11時の水位データ3.0mと、11時30分の水位データ4.0mと、が欠測しており、12時の水位データ5.0mが観測されている。そこで、11時の水位データ3.0mと、11時30分の水位データ4.0mと、として、11時の水位予測データ2.9mと、11時30分の水位予測データ3.9mと、でそれぞれ補間して、水位データ2.9m及び3.9mをそれぞれほぼ正しく補間する。
【0084】
図10の第4段では、11時30分の水位データ4.0mと、12時の水位データ5.0mと、が欠測しており、11時の水位データ3.0mが観測されている。そこで、11時30分の水位データ4.0mと、12時の水位データ5.0mと、として、11時30分の水位予測データ3.9mと、12時の水位予測データ4.8mと、でそれぞれ補間して、水位データ3.9m及び4.8mをそれぞれほぼ正しく補間する。
【0085】
図10の第5段では、11時30分の水位データ4.0mが欠測しており、11時の水位データ3.0mと、12時の水位データ5.0mと、が観測されている。そこで、11時30分の水位データ4.0mとして、11時30分の水位予測データ3.9mで補間して、水位データ3.9mをほぼ正しく補間する。
【0086】
このように、水位予測地点での水位テストデータが欠測したときでも、降雨・実水位状況を反映させたうえで、水位予測地点での水位テストデータを補間することにより、水位予測地点での水位予測精度を向上させることができる。
【0087】
そして、支流の上流地点、合流地点、本流の上流地点及び本流の下流地点での水位テストデータが欠測したときでも、降雨・実水位状況を反映させたうえで、支流の上流地点、合流地点、本流の上流地点及び本流の下流地点での水位テストデータを補間することにより、水位予測地点での水位予測精度を向上させることができる。
【0088】
さらに、欠測時刻より短時間(水位予測の時間間隔)前の予測時刻に、降雨・実水位状況を反映させたうえで出力した、水位予測地点での予測時刻より短時間(水位予測の時間間隔)後の欠測時刻の、水位予測データで補間することができる。
【0089】
(本開示の雨量テストデータ補間処理の手順)
本開示の雨量テストデータ補間処理の具体例を
図11に示す。テストデータ補間部5は、水位予測地点P1、支流の上流地点P2、P3、合流地点P4、本流の上流地点P5、P6及び本流の下流地点P7のうちの少なくともいずれかでの、雨量のテストデータTが欠測したときに(ステップS15)、当該地点での欠測時刻の雨量のテストデータTを補間する(ステップS16)。
【0090】
ここで、テストデータ補間部5は、水位予測地点P1、支流の上流地点P2、P3、合流地点P4、本流の上流地点P5、P6及び本流の下流地点P7のうちの少なくともいずれかでの、欠測時刻の雨量予報データRDで補間する(ステップS16)。
【0091】
なお、支流の上流地点P2、P3、合流地点P4、本流の上流地点P5、P6及び本流の下流地点P7のうちの少なくともいずれかでの、雨量のテストデータTが欠測したときには、水位予測地点P1での雨量のテストデータTが欠測していなくても、水位予測地点P1での水位予測データPを出力できないため、支流の上流地点P2、P3、合流地点P4、本流の上流地点P5、P6及び本流の下流地点P7のうちの少なくともいずれかでの、欠測時刻の雨量のテストデータTを、当該地点での雨量予報データRDで補間する。
【0092】
テストデータ抽出部3は、水位予測モデルMに、テストデータT(テストデータ補間部5が補間した、欠測時刻の雨量のテストデータTを含み、欠測時刻の水位のテストデータTは前述)を入力する(ステップS17)。水位予測データ出力部4は、水位予測モデルMから、水位予測地点P1での当該時刻の水位予測データPを出力する(ステップS18)。水位予測データ出力部4は、水位予測モデルMから、支流の上流地点P2、P3、合流地点P4、本流の上流地点P5、P6及び本流の下流地点P7のうちの少なくともいずれかでの、当該時刻の水位予測データPも出力する(ステップS18)。
【0093】
図11の第1段では、現時刻の30分後の12時30分の水位を予測するために、現時刻の1時間前の11時の雨量データ30mmと、現時刻の30分前の11時30分の雨量データ40mmと、現時刻である12時の雨量データ50mmと、をテストデータとして抽出する。
図11の第3~5段では、テストデータとして、一部の雨量データが欠測する。
【0094】
図11の第2段では、雨量予報データRD(降水短時間予報)として、現時刻の1時間前の11時の雨量予測データ29mmと、現時刻の30分前の11時30分の雨量予測データ39mmと、現時刻である12時の雨量予測データ48mmと、を入力する。
【0095】
図11の第3段では、11時の雨量データ30mmと、11時30分の雨量データ40mmと、が欠測しており、12時の雨量データ50mmが観測されている。そこで、11時の雨量データ30mmと、11時30分の雨量データ40mmと、として、11時の雨量予測データ29mmと、11時30分の雨量予測データ39mmと、でそれぞれ補間して、雨量データ29mm及び39mmをそれぞれほぼ正しく補間する。
【0096】
図11の第4段では、11時30分の雨量データ40mmと、12時の雨量データ50mmと、が欠測しており、11時の雨量データ30mmが観測されている。そこで、11時30分の雨量データ40mmと、12時の雨量データ50mmと、として、11時30分の雨量予測データ39mmと、12時の雨量予測データ48mmと、でそれぞれ補間して、雨量データ39mm及び48mmをそれぞれほぼ正しく補間する。
【0097】
図11の第5段では、11時30分の雨量データ40mmが欠測しており、11時の雨量データ30mmと、12時の雨量データ50mmと、が観測されている。そこで、11時30分の雨量データ40mmとして、11時30分の雨量予測データ39mmで補間して、雨量データ39mmをほぼ正しく補間する。
【0098】
このように、水位予測地点、支流の上流地点、合流地点、本流の上流地点及び本流の下流地点での雨量テストデータが欠測したときでも、雨量予報データを反映させたうえで、水位予測地点、支流の上流地点、合流地点、本流の上流地点及び本流の下流地点での雨量テストデータを補間することにより、水位予測地点での水位予測精度を向上させることができる。
【0099】
(本開示の水位予測装置の構成)
本開示の水位予測装置の構成を
図12に示す。本開示の水位予測的中率算出処理の手順を
図13に示す。水位予測装置Wは、
図2、8に加えて、検証用データ抽出部6、水位予測誤差幅設定部7及び水位予測的中率算出部8を備える。検証用データ抽出部6、水位予測誤差幅設定部7及び水位予測的中率算出部8は、
図13に示した水位予測的中率算出プログラムを、コンピュータにインストールし実現することができる。
【0100】
訓練用データ抽出部1(
図12に不図示)は、水位予測地点でのある時刻の水位の学習に必要な訓練用データLとして、水位予測地点に対して支流上流、本流上流及び本流下流での、当該時刻及び当該時刻より過去のうちの少なくともいずれかの水位データWL及び過去の観測雨量データROと、当該時刻より将来の観測雨量データROと、を抽出する。ここで、訓練用データ抽出部1は、水位変動時等の支流上流、本流上流及び本流下流での水位データWL、過去の観測雨量データRO及び将来の観測雨量データROを抽出してもよく、水位変動時の直前及び直後の水位不変動時等の支流上流、本流上流及び本流下流での水位データWL、過去の観測雨量データRO及び将来の観測雨量データROを抽出してもよい。水位予測モデル構築部2は、訓練用データLを用いて、水位予測モデルMを構築する。
【0101】
テストデータ抽出部3は、水位予測地点でのある時刻の水位の予測に必要なテストデータTとして、水位予測地点に対して支流上流、本流上流及び本流下流での、当該時刻及び当該時刻より過去のうちの少なくともいずれかの水位データWL及び過去の観測雨量データROと、当該時刻より将来の予報雨量データRPと、を抽出する。ここで、テストデータ抽出部3は、実運用上、水位予測地点に対して支流上流、本流上流及び本流下流での将来の観測雨量データROを抽出しないで、水位予測地点に対して支流上流、本流上流及び本流下流での予報雨量データRPを抽出している。水位予測データ出力部4は、水位予測モデルMを用いて、水位予測データPを出力する。
【0102】
しかし、支流上流、本流上流及び本流下流での「予報」雨量データRPは、支流上流、本流上流及び本流下流での「将来の観測」雨量データROと比べて、精度が低いため、水位「予測」データPは、水位「観測」データと比べて、大きく外れることがある。そこで、本開示では、水位「予測」データPの信頼性を可視化する。
【0103】
検証段階では、検証用データVとして、支流上流、本流上流及び本流下流での水位データWL、「過去の観測」雨量データRO及び「将来の観測」雨量データROを抽出し、水位の予測誤差確率分布Eを算出し、水位観測データに対する水位予測データPの誤差幅を設定する。そして、検証用データVとして、支流上流、本流上流及び本流下流での「将来の観測」雨量データROを、支流上流、本流上流及び本流下流での「予報」雨量データRPに置き換え、水位予測データPのうちの水位観測データの周りの誤差幅内に収まるものの割合を、水位予測的中率Hとして算出する。
【0104】
予測段階では、テストデータTとして、実運用上は支流上流、本流上流及び本流下流での水位データWL、「過去の観測」雨量データRO及び「予報」雨量データRPを抽出し、水位予測データPとともに、水位予測的中率Hを出力する。ここで、各発令基準毎に、及び/又は、各N時間後予測毎に、水位予測的中率Hを出力する。
【0105】
ここで、訓練用データLは、水位学習のための既知のデータであり、水位予測的中率Hをほぼ100%とするため、水位予測的中率Hの算出に適用することができない。そして、テストデータTは、水位予測のための未知のデータであるが、特定の降雨の状況に特化したデータであるため、水位予測的中率Hの算出に適用することができない。一方で、検証用データVは、水位予測モデルMの検証のための未知のデータであり、特定の降雨の状況に特化しないデータであるため、水位予測的中率Hの算出に適用することができる。
【0106】
(本開示の水位予測誤差幅設定処理の具体例)
本開示の水位予測誤差幅設定処理の具体例を
図14に示す。検証用データ抽出部6は、本開示の水位予測モデル構築処理で構築した水位予測モデルMの検証のための検証用データVとして、支流上流、本流上流及び本流下流での水位データWL及び過去の観測雨量データROと、検証対象時刻より将来の観測雨量データROと、を抽出する(ステップS21)。ここで、検証用データ抽出部6は、水位変動時等の支流上流、本流上流及び本流下流での水位データWL、過去の観測雨量データRO及び将来の観測雨量データROを抽出してもよく、水位変動時の直前及び直後の水位不変動時等の支流上流、本流上流及び本流下流での水位データWL、過去の観測雨量データRO及び将来の観測雨量データROを抽出してもよく、水位予測誤差幅設定処理では、支流上流、本流上流及び本流下流での予報雨量データRPを抽出していない。
【0107】
検証用データ抽出部6は、水位予測モデルMに検証用データVとして、水位予測地点での複数時刻の水位を検証するための支流上流、本流上流及び本流下流での水位データWL、過去の観測雨量データRO及び将来の観測雨量データROを入力する(ステップS22)。そして、水位予測誤差幅設定部7は、水位予測地点での水位の予測誤差確率分布Eを算出し、水位予測的中率算出ステップS25での水位観測データに対する水位予測データPの誤差幅を設定する(ステップS23)。ここで、水位予測誤差幅設定部7は、水位予測地点での水位警戒のための各発令基準毎に、及び/又は、水位予測データ出力ステップS22での予測出力時刻から各予測対象時刻までの各期間長さ毎に、予測誤差確率分布Eを算出し、水位予測データPの誤差幅を設定する(ステップS23)。
【0108】
図14の「各N時間後の予測誤差」の欄では、0m以上発令基準水位A未満の観測水位と、発令基準水位A以上発令基準水位B未満の観測水位と、発令基準水位B以上の観測水位と、について、水位予測地点での水位の予測誤差確率分布Eが算出される。
図14の「各N時間後の誤差幅」の欄では、0m以上発令基準水位A未満の観測水位と、発令基準水位A以上発令基準水位B未満の観測水位と、発令基準水位B以上の観測水位と、について、予測誤差確率分布Eのうちの、e
lоw-min以上e
lоw-max以下と、e
mid-min以上e
mid-max以下と、e
high-min以上e
high-max以下と、が誤差幅内となるように、水位観測データに対する水位予測データPの誤差幅が設定される。ここで、予測誤差確率分布Eの最小値及び最大値を0%及び100%として、0.1%≦e
high-min≦e
mid-min≦e
lоw-min≦20%と、80%≦e
lоw-max≦e
mid-max≦e
high-max≦99.9%と、が満たされる。つまり、水位予測データPの誤差幅は、高水位ほど広く設定され、低水位ほど狭く設定され、中水位では中間に設定される。水位予測データPの誤差幅の上振れ幅及び下振れ幅は、予測誤差確率分布Eの分布形状に応じて、等しくてもよく異なってもよい。
【0109】
なお、ehigh-min、emid-min、elоw-min、elоw-max、emid-max、ehigh-maxは、暫定的には以上のように設定されるが、最終的には以下のように設定される。まず、水位予測モデルMにテストデータとして、支流上流、本流上流及び本流下流での水位データ及び解析雨量データ(レーダを雨量計で補間)が入力される。次に、高水位、低水位及び中水位のそれぞれについて、水位予測データのうちの80%以上が、水位予測データの誤差幅内に収まるように、ehigh-min、emid-min、elоw-min、elоw-max、emid-max、ehigh-maxが設定される。
【0110】
このように、機械学習を用いて、支流の背水区間の水位を予測するにあたり、検証段階において、水位の予測誤差確率分布Eを算出し、水位観測データに対する水位予測データPの誤差幅を設定し、水位予測的中率Hを算出する準備をすることができる。
【0111】
そして、機械学習を用いて、支流の背水区間の水位を予測するにあたり、テストデータTとして、支流上流、本流上流及び本流下流での「予報」雨量データRPを抽出するときでも、検証段階において、水位予測的中率Hを算出する準備をすることにより、各発令基準の到達判断を支援する準備ができる。
【0112】
(本開示の水位予測的中率算出処理の具体例)
本開示の水位予測的中率算出処理の具体例を
図15に示す。検証用データ抽出部6は、本開示の水位予測モデル構築処理で構築した水位予測モデルMの検証のための検証用データVとして、支流上流、本流上流及び本流下流での水位データWL及び過去の観測雨量データROと、検証対象時刻より将来の予報雨量データRPと、を抽出する(ステップS21)。ここで、検証用データ抽出部6は、水位変動時等の支流上流、本流上流及び本流下流での水位データWL、過去の観測雨量データRO及び予報雨量データRPを抽出してもよく、水位変動時の直前及び直後の水位不変動時等の支流上流、本流上流及び本流下流での水位データWL、過去の観測雨量データRO及び予報雨量データRPを抽出してもよく、水位予測的中率算出処理では、支流上流、本流上流及び本流下流での将来の観測雨量データROを抽出していない。
【0113】
検証用データ抽出部6は、水位予測モデルMに検証用データVとして、水位予測地点での複数時刻の水位を検証するための支流上流、本流上流及び本流下流での水位データWL、過去の観測雨量データRO及び予報雨量データRPを入力する(ステップS24)。そして、水位予測モデルMは、水位予測地点での当該複数時刻の水位予測データPを出力する。さらに、水位予測的中率算出部8は、水位予測地点での当該複数時刻の水位予測データPのうちの、水位予測地点での当該複数時刻の水位観測データの周りの誤差幅内に収まるものの割合を、水位予測地点での水位予測的中率Hとして算出する(ステップS25)。ここで、水位予測的中率算出部8は、水位予測地点での水位警戒のための各発令基準毎に、及び/又は、水位予測データ出力ステップS24での予測出力時刻から各予測対象時刻までの各期間長さ毎に、水位予測的中率Hを算出する(ステップS25)。
【0114】
図15の「各N時間後の予測データ」の欄では、0m以上発令基準水位A未満の観測水位と、発令基準水位A以上発令基準水位B未満の観測水位と、発令基準水位B以上の観測水位と、について、水位予測地点での当該複数時刻の水位予測データPが出力される。0m以上発令基準水位A未満の観測水位について、誤差幅内に収まるデータは80個であり、誤差幅を下回るデータは10個であり、誤差幅を上回るデータは10個である。発令基準水位A以上発令基準水位B未満の観測水位について、誤差幅内に収まるデータは30個であり、誤差幅を下回るデータは15個であり、誤差幅を上回るデータは15個である。発令基準水位B以上の観測水位について、誤差幅内に収まるデータは10個であり、誤差幅を下回るデータは10個であり、誤差幅を上回るデータは10個である。
【0115】
図15の「各N時間後の予測的中率」の欄では、0m以上発令基準水位A未満の観測水位と、発令基準水位A以上発令基準水位B未満の観測水位と、発令基準水位B以上の観測水位と、について、水位予測地点での水位予測的中率Hが算出される。0m以上発令基準水位A未満の観測水位について、水位予測的中率は80/(80+10+10)×100=80%である。発令基準水位A以上発令基準水位B未満の観測水位について、水位予測的中率は30/(30+15+15)×100=50%である。発令基準水位B以上の観測水位について、水位予測的中率は10/(10+10+10)×100=33%である。
【0116】
なお、テストデータTが蓄積されたとしても、水位予測モデルMは更新されないため、水位予測的中率Hは更新の必要がない。また、訓練用データLが蓄積されたときには、水位予測モデルMは更新されてもよく、水位予測的中率Hも更新されてもよい。
【0117】
このように、機械学習を用いて、支流の背水区間の水位を予測するにあたり、テストデータTとして、支流上流、本流上流及び本流下流での「予報」雨量データRPを抽出するときでも、検証段階において、水位予測的中率Hを算出することにより、水位予測データPの信頼性を可視化することができる。
【0118】
そして、機械学習を用いて、支流の背水区間の水位を予測するにあたり、テストデータTとして、支流上流、本流上流及び本流下流での「予報」雨量データRPを抽出するときでも、検証段階において、水位予測的中率Hを算出することにより、各発令基準の到達判断を支援することができる。
【0119】
(本開示の水位予測的中率出力処理の実例)
本開示の水位予測的中率出力処理の実例を
図16に示す。水位予測的中率算出部8は、支流上流、本流上流及び本流下流での水位データWL、過去の観測雨量データRO及び予報雨量データRPに基づく水位予測地点での予測対象時刻の水位の予測時に、水位予測地点での当該予測対象時刻の水位予測データPとともに、水位予測地点での水位予測的中率Hを出力する(ステップS26)。ここで、水位予測的中率算出部8は、水位予測地点での水位警戒のための各発令基準毎に、及び/又は、予測出力時刻から各予測対象時刻までの各期間長さ毎に、水位予測的中率Hを出力する(ステップS26)。
【0120】
図16では、発令基準水位として、L
0、L
1、L
2、L
3、L
4、L
5が設定される。検証段階では、発令基準水位L
0~L
1、L
1~L
2、L
2~L
3、L
3~L
4、L
4~L
5の観測水位について、水位予測的中率はそれぞれH
01%、H
12%、H
23%、H
34%、H
45%と算出される。予測段階では、1日目の12時頃、2日目の14時頃、3日目の8時頃、4日目の12時頃の予測水位(6時間後予測)について、水位予測的中率はそれぞれH
01%(的中)、H
23%(はずれ)、H
45%(的中)、H
01%(的中)と出力される。
【0121】
このように、機械学習を用いて、支流の背水区間の水位を予測するにあたり、テストデータTとして、支流上流、本流上流及び本流下流での「予報」雨量データRPを抽出するときでも、予測段階において、水位予測的中率Hを出力することにより、水位予測データPの信頼性を可視化することができる。
【0122】
そして、機械学習を用いて、支流の背水区間の水位を予測するにあたり、テストデータTとして、支流上流、本流上流及び本流下流での「予報」雨量データRPを抽出するときでも、予測段階において、水位予測的中率Hを出力することにより、各発令基準の到達判断を支援することができる。
【産業上の利用可能性】
【0123】
本開示の水位予測モデル構築方法、水位予測モデル構築プログラム、水位予測データ出力方法及び水位予測データ出力プログラムは、機械学習を用いて、支流の背水区間の水位を予測するにあたり、支流の背水区間の水位の学習の精度が高くなり、支流の背水区間の水位の予測を適切に実行することができるように、訓練用データ及びテストデータを適切に抽出することができる。
【符号の説明】
【0124】
W:水位予測装置
M:水位予測モデル
1:訓練用データ抽出部
2:水位予測モデル構築部
3:テストデータ抽出部
4:水位予測データ出力部
5:テストデータ補間部
6:検証用データ抽出部
7:水位予測誤差幅設定部
8:水位予測的中率算出部
RF:雨量データ
WL:水位データ
RО:観測雨量データ
RP:予報雨量データ
L:訓練用データ
V:検証用データ
T:テストデータ
E:予測誤差確率分布
P:水位予測データ
H:水位予測的中率
RD:雨量予報データ
P1:水位予測地点
P2、P3:支流の上流地点
P4:合流地点
P5、P6:本流の上流地点
P7:本流の下流地点