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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024178905
(43)【公開日】2024-12-25
(54)【発明の名称】圧縮機及び冷凍装置
(51)【国際特許分類】
   F04B 39/04 20060101AFI20241218BHJP
   F04C 29/02 20060101ALI20241218BHJP
【FI】
F04B39/04 D
F04C29/02 351B
【審査請求】有
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024078201
(22)【出願日】2024-05-13
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2024-12-11
(31)【優先権主張番号】P 2023096940
(32)【優先日】2023-06-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000002853
【氏名又は名称】ダイキン工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000202
【氏名又は名称】弁理士法人新樹グローバル・アイピー
(72)【発明者】
【氏名】堤 慧
(72)【発明者】
【氏名】松川 和彦
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 健
(72)【発明者】
【氏名】姫田 晃
【テーマコード(参考)】
3H003
3H129
【Fターム(参考)】
3H003AA05
3H003AB03
3H003AC03
3H003BH03
3H129AA02
3H129AA14
3H129AB03
3H129BB05
3H129BB35
3H129CC05
3H129CC45
(57)【要約】      (修正有)
【課題】潤滑油の排出を低減する。
【解決手段】圧縮機(100)は、ケーシング(10)と、モータ(20)と、圧縮機構(40)と、油溜まり(14)と、クランクシャフト(30)と、回転部材(60)と、第1空間(S1)と、第2空間(S2)と、吐出管(17)と、を備える。第1空間(S1)は、圧縮機構(40)とモータ(20)の間に形成される。第2空間(S2)は、モータ(20)と油溜まり(14)の間に形成される。吐出管(17)は、第1空間(S1)に配置される。冷媒下降通路は、冷媒(R)を第1空間(S1)から第2空間(S2)へ通過させる。冷媒上昇通路は、冷媒(R)を第2空間(S2)から第1空間(S1)へ通過させる。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部空間(S)を有するケーシング(10)と、
円筒状のステータ(21)、前記ステータの中に配置されるロータ(25)、冷媒下降通路(54)、及び冷媒上昇通路(50)を有し、前記内部空間の中に配置されるモータ(20)と、
前記内部空間の中かつ前記モータの上方に配置され、前記モータとの間に第1空間(S1)を形成し、かつ、冷媒(R)を圧縮する圧縮機構(40)と、
前記内部空間の中かつ前記モータの下方に配置され、かつ、前記モータとの間に第2空間(S2)を形成する油溜まり(14)と、
前記ロータの回転を前記圧縮機構へ伝達するクランクシャフト(30)と、
前記第2空間に配置され、前記ロータとともに回転し、かつ、前記ステータの内径(Y)よりも大きい外径(X)を有する回転部材(60)と、
前記第1空間に配置される吐出管(17)と、
を備え、
前記冷媒下降通路は、前記冷媒を前記第1空間から前記第2空間へ通過させ、
前記冷媒上昇通路は、前記冷媒を前記第2空間から前記第1空間へ通過させる、
圧縮機(100)。
【請求項2】
前記ステータは、ステータコア(22)、及び、前記ステータコアに導線を巻き付けることによって形成されるコイル(24)、を有し、
前記冷媒下降通路は、前記ステータコアの外周(E)に形成されたコアカット(54)であり、
前記回転部材は、前記コイルの下端(B)よりも低く配置される、
請求項1に記載の圧縮機。
【請求項3】
前記回転部材と前記コイルの前記下端(B)の高低差は、20mm以下である、
請求項2に記載の圧縮機。
【請求項4】
前記ステータは、前記ステータコアの下面に配置される円環状の下部インシュレータ(23b)、をさらに有し、
前記下部インシュレータは、前記下部インシュレータの外周の付近から下方へ延びる外周壁(P2)を有し、
前記回転部材は、前記外周壁の下端(T)よりも高く配置される。
請求項2に記載の圧縮機。
【請求項5】
前記回転部材は、中心から周縁に向かって径方向に延びる溝(67)を有する、
請求項1から4のいずれか1項に記載の圧縮機。
【請求項6】
前記回転部材は、中心から周縁に向かって径方向に放射状に延びる複数の溝(67)を有する、
請求項1から4のいずれか1項に記載の圧縮機。
【請求項7】
前記ロータは、前記ロータを軸方向に貫通するロータ冷媒通路(51)を有し、
前記ステータと前記ロータの間には、エアギャップ(52)が形成されており、
前記ステータは、隣接する2つの前記コイル間に位置するコイル隙間(53)を有し、
前記冷媒上昇通路(50)は、前記ロータ冷媒通路(51)、前記エアギャップ(52)、及びコイル隙間(53)を含む、
請求項1から4のいずれか1項に記載の圧縮機。
【請求項8】
前記ロータは、ロータ本体、及び、前記ロータ本体の下面に設けられた下部バランスウェイト(27)を有し、
前記回転部材は、前記下部バランスウェイトに固定される、
請求項7に記載の圧縮機。
【請求項9】
前記ロータは、ロータ本体、及び、前記ロータ本体の下面に設けられた下部バランスウェイト(27)、を有し、
前記回転部材は、前記ロータ本体に固定される、
請求項7に記載の圧縮機。
【請求項10】
前記回転部材は、前記クランクシャフトに固定される、
請求項7に記載の圧縮機。
【請求項11】
前記回転部材は、前記ロータ冷媒通路に連通する第1開口(61)、及び、前記エアギャップに連通する第2開口(62)、のうちの少なくとも1つを有する、
請求項7に記載の圧縮機。
【請求項12】
請求項1から4のいずれか1項に記載の圧縮機、
を備える、冷凍装置(101)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、圧縮機及び冷凍装置に関する。
【背景技術】
【0002】
圧縮機の外部へ排出される潤滑油の量を低減するために、特許文献1(特開2021-017849号公報)に開示されている圧縮機では、モータのロータの下面に取り付けられているバランスウェイトの寸法、及び、そのバランスウェイトの他の部品に対する相対的な位置を調節している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
モータの下方に位置する冷媒は潤滑油を含んでいる。このような状態の冷媒が圧縮機の吐出管へ到達してしまうと、潤滑油が圧縮機の外部へ排出されてしまう。潤滑油の排出を低減するためには、バランスウェイトのみならず、モータの下部付近に配置されている部品群の構造を最適化し、それによって、冷媒に含まれる潤滑油を冷媒から分離されやすくすることが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0004】
第1観点の圧縮機は、ケーシングと、モータと、圧縮機構と、油溜まりと、クランクシャフトと、回転部材と、第1空間と、第2空間と、吐出管と、を備える。ケーシングは、内部空間を有する。モータは、円筒状のステータ、ステータの中に配置されるロータ、冷媒下降通路、及び冷媒上昇通路を有する。モータは、内部空間の中に配置される。圧縮機構は、内部空間の中かつモータの上方に配置される。圧縮機構は、モータとの間に第1空間を形成する。圧縮機構は、冷媒を圧縮する。油溜まりは、内部空間の中かつモータの下方に配置される。油溜まりは、モータとの間に第2空間を形成する。クランクシャフトは、ロータの回転を圧縮機構へ伝達する。回転部材は、ロータとともに回転する。回転部材は、第2空間に配置される。回転部材は、ステータの内径よりも大きい外径を有する。吐出管は、第1空間に配置される。冷媒下降通路は、冷媒を第1空間から第2空間へ通過させる。冷媒上昇通路は、冷媒を第2空間から第1空間へ通過させる。
【0005】
この構成によれば、吐出管と油溜まりの間に回転部材が位置する。したがって、油溜まりから冷媒上昇通路を経て吐出管へ上昇する冷媒は、冷媒に対する障害物として機能する回転部材に衝突するので、冷媒に含まれる潤滑油が分離され、ひいては圧縮機からの潤滑油の排出が抑制される。
【0006】
第2観点の圧縮機は、第1観点の圧縮機であって、ステータが、ステータコア、及び、コイルを有する。コイルは、ステータコアに導線を巻き付けることによって形成される。冷媒下降通路は、ステータコアの外周に形成されたコアカットである。回転部材は、コイルの下端よりも低く配置される。
【0007】
この構成によれば、冷媒は、第1空間においてサイクロン分離を受けることにより所定量の潤滑油を分離されたのち、外周側のコアカットを経て第2空間へ下降することができる。次いで、油溜まりに隣接する第2空間からモータのコイル隙間へ上昇しようとする冷媒は、モータのコイル隙間へ到達するよりも先に、モータのコイルの下方に配置されている回転部材に衝突するので、冷媒からの潤滑油の分離がさらに促進される。上昇する冷媒流が通過する面積のうち、コイル隙間の断面積が占める割合は大きいので、潤滑油の分離は効率的になる。
【0008】
第3観点の圧縮機は、第2観点の圧縮機であって、回転部材とコイルの下端の高低差は、20mm以下である。
【0009】
この構成によれば、回転部材はコイル下端に近接して配置されている。したがって、回転部材が冷媒に対する障害物として機能できる。
【0010】
第4観点の圧縮機は、第2観点又は第3観点の圧縮機であって、ステータが、円環状の下部インシュレータ、をさらに有する。下部インシュレータは、ステータコアの下面に配置される。下部インシュレータは、下部インシュレータの外周の付近から下方へ延びる外周壁を有する。回転部材は、外周壁の下端よりも高く配置される。
【0011】
この構成によれば、コアカットを通過する冷媒の下降流は、回転部材よりも低く配置されている外周壁よりもさらに下方に移動したのち、上昇流に変わる。したがって、冷媒の上昇流が回転部材に衝突しやすい。
【0012】
第5観点の圧縮機は、第1観点から第4観点のいずれか1つの圧縮機であって、回転部材が、中心から周縁に向かって径方向に延びる溝を有する。
【0013】
この構成によれば、冷媒が回転部材の付近を移動するとき、冷媒の一部は溝の中を流れて溝の壁に衝突する。この衝突により、冷媒に含まれている潤滑油が、既に溝の内面に付着している油膜に吸収される。したがって、冷媒に含まれる潤滑油が効率的に冷媒から分離される。
【0014】
第6観点の圧縮機は、第1観点から第4観点のいずれか1つの圧縮機であって、回転部材が、中心から周縁に向かって径方向に放射状に延びる複数の溝を有する。
【0015】
この構成によれば、潤滑油を冷媒から分離する作用を奏する溝が、回転部材に複数形成されている。したがって、冷媒に含まれる潤滑油がより効率的に冷媒から分離される。
【0016】
第7観点の圧縮機は、第1観点から第6観点のいずれか1つの圧縮機であって、ロータが、ロータ冷媒通路を有する。ロータ冷媒通路は、ロータを軸方向に貫通する。ロータ冷媒通路は、冷媒を第2空間から第1空間へ通過させる。ステータとロータの間には、冷媒を第2空間から第1空間へ通過させるエアギャップが形成されている。ステータは、隣接する2つのコイル間に位置するコイル隙間を有する。コイル隙間は、冷媒を第2空間から第1空間へ通過させる。
【0017】
この構成によれば、冷媒の上昇流は、ロータ冷媒通路、エアギャップ、及び、コイル隙間を通過する。回転部材は、平面視において、ロータ冷媒通路の全部、エアギャップの全部、及びコイル隙間の少なくとも一部をさえぎる。したがって、冷媒の上昇流のうちの多くの割合が回転部材と衝突する。
【0018】
第8観点の圧縮機は、第1観点から第7観点のいずれか1つの圧縮機であって、ロータが、ロータ本体、及び、ロータ本体の下面に設けられた下部バランスウェイトを有する。回転部材は、下部バランスウェイトに固定される。
【0019】
この構成によれば、ロータは下部バランスウェイトを有する。したがって、ロータの回転時の振動を抑制できる。
【0020】
第9観点の圧縮機は、第1観点から第7観点のいずれか1つの圧縮機であって、ロータが、ロータ本体、及び、ロータ本体の下面に設けられた下部バランスウェイト、を有する。回転部材は、ロータ本体に固定される。
【0021】
この構成によれば、回転部材は、ロータ本体に固定される。したがって、冷媒上昇流の中心部を回転部材はさえぎることができる。
【0022】
第10観点の圧縮機は、第1観点から第7観点のいずれか1つの圧縮機であって、回転部材が、クランクシャフトに固定される。
【0023】
この構成によれば、回転部材は、クランクシャフトに固定される。したがって、クランクシャフト近傍の冷媒上昇流を回転部材はさえぎることができる。
【0024】
第11観点の圧縮機は、第1観点から第10観点のいずれか1つの圧縮機であって、回転部材が、ロータ冷媒通路に連通する第1開口、及び、エアギャップに連通する第2開口、のうちの少なくとも1つを有する。
【0025】
この構成によれば、回転部材は第1開口又は第2開口を有する。したがって、冷媒の上昇流の一部は第1開口又は第2開口を通過したのちにロータ冷媒通路、エアギャップ、及び、コイル隙間のいずれかを通過できるので、冷媒の上昇流の必要量を確保できる。
【0026】
第12観点の冷凍装置は、第1観点から第11観点のいずれか1つの圧縮機を備える。
【0027】
この構成によれば、圧縮機は、冷媒に対する障害物として機能する回転部材を有する。したがって、冷凍装置の冷媒回路において、圧縮機から潤滑油が排出されることが抑制される。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1図1は、第1実施形態に係る冷凍装置101の構成を示す回路図である。
図2図2は、第1実施形態に係る圧縮機100の構成を示す断面図である。
図3図3は、図2の要部を拡大した模式図である。
図4図4は、ステータコア22の平面図である。
図5図5は、圧縮機100の要部の上面又は断面を示す模式図である。
図6図6は、回転部材60の下面を示す模式図である。
図7図7は、図3の要部を拡大した模式図である。
図8図8は、回転部材60の断面図である。
図9図9は、圧縮機100の要部の下面又は断面を示す模式図である。
図10図10は、第2実施形態に係る圧縮機100の要部を拡大した模式図である。
図11図11は、第2実施形態に係る回転部材60の下面を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
<第1実施形態>
(1)冷凍装置101の構成
図1は、第1実施形態に係る冷凍装置101の構成を示す。冷凍装置101は、熱源ユニット90、利用ユニット80、及び連絡配管群85を有する。
【0030】
熱源ユニット90は、冷媒Rに対する温熱源(heat source)又は冷熱源(cold source)として機能する。熱源ユニット90は、圧縮機100、四路切換弁92、熱源熱交換器93、熱源ファン94、膨張弁95、アキュムレータ96、液閉鎖弁97、及びガス閉鎖弁98を有する。
【0031】
利用ユニット80は、冷媒Rから受け取った温熱(heat)又は冷熱(cold)をユーザに提供する。利用ユニット80は、利用熱交換器81、及び利用ファン82を有する。
【0032】
連絡配管群85は、熱源ユニット90と利用ユニット80を接続する。連絡配管群85は、液管86、及びガス管87を有する。液管86は、液閉鎖弁97と利用熱交換器81を接続する。ガス管87は、ガス閉鎖弁98と利用熱交換器81を接続する。
【0033】
熱源ユニット90の構成部品、利用ユニット80の構成部品、及び連絡配管群85は、冷媒回路を構成する。冷媒回路は、冷媒Rを循環させる。
【0034】
熱源ユニット90に搭載されている圧縮機100は、低圧ガス冷媒(つまり、低い圧力を有し、ガス状態にある冷媒R)を圧縮することによって、高圧ガス冷媒(つまり、高い圧力を有し、ガス状態にある冷媒R)を生成する。
【0035】
四路切換弁92が実線で示す接続を実現する場合、冷凍装置101は冷熱利用運転を行う。このとき、利用熱交換器81は蒸発器(evaporator)又は吸熱器(heat absorber)として機能し、冷媒Rから得た冷熱をユーザに提供する。四路切換弁92が破線で示す接続を実現する場合、冷凍装置101は温熱利用運転を行う。このとき、利用熱交換器81は凝縮器(condenser)又は放熱器(heat radiator)として機能し、冷媒Rから得た温熱をユーザに提供する。
【0036】
(2)圧縮機100の構成
図2は、圧縮機100の構成を示す。圧縮機100はスクロール圧縮機であり、ケーシング10、モータ20、クランクシャフト30、圧縮機構40、仕切部材70、支持部材77、を有する。
【0037】
(2-1)ケーシング10
ケーシング10は、互いに気密的に接合された胴部11、上蓋部12、及び下蓋部13を有する。
【0038】
ケーシング10の中には内部空間Sが存在する。内部空間Sには、圧縮機100の部品と、冷媒Rと、潤滑油Lとが存在する。
【0039】
下蓋部13の付近には、潤滑油Lを貯留するための油溜まり14が設けられている。油溜まり14は、内部空間Sの中かつモータ20の下方に配置される。
【0040】
内部空間Sは、圧縮機100の部品によって第1空間S1、第2空間S2、及び第3空間S3に分割されている。第1空間S1は、圧縮機構40とモータ20の間に形成されている。第2空間S2は、モータ20と油溜まり14の間に形成されている。第3空間S3は、圧縮機構40の上側に形成されている。
【0041】
上蓋部12には、低圧ガス冷媒を吸入するための吸入管15が取り付けられている。胴部11には、高圧ガス冷媒を吐出するための吐出管17が取り付けられている。吐出管17は、第1空間S1に配置されている。
【0042】
(2-2)モータ20
モータ20は、内部空間Sの中に配置される。モータ20は、圧縮機100の外部から供給される電力を利用して、圧縮機構40を駆動するための動力を生成する。モータ20は、ステータ21及びロータ25を有する。ステータ21及びロータ25は、共通の中心軸Cを有する円柱状又は円筒状である。ステータ21は胴部11に固定されている。ロータ25は、ステータ21の中心部の空洞に配置され、回転可能に支持されている。
【0043】
(2-3)クランクシャフト30
クランクシャフト30は、モータ20が生成した動力を圧縮機構40へ伝達する。クランクシャフト30は、主軸部31と、主軸部31に対して偏心した偏心部32と、上部バランスウェイト37とを有する。主軸部31は、ステータ21及びロータ25と中心軸Cを共有する。
【0044】
主軸部31の一部はロータ25の中心部の空洞を通過しており、ロータ25と固定されている。これにより、クランクシャフト30は、ロータ25とともに回転する。上部バランスウェイト37は、クランクシャフト30のバランスをとるためのものである。上部バランスウェイト37は、本実施形態の構成とは異なり、クランクシャフト30とは別の部材として構成されてロータ25の上面に固定されていてもよい。
【0045】
クランクシャフト30の内部には、油溜まり14の潤滑油Lを吸い上げるための主通路35が設けられている。主通路35の上端にまで吸い上げられた潤滑油Lは、圧縮機構40を潤滑するために利用される。さらに、主通路35は、クランクシャフト30の径方向に延びる複数の分岐通路36と連通している。分岐通路36は、主軸部31又は偏心部32の側面に潤滑油Lを供給する。これにより、クランクシャフト30は、圧縮機構40、仕切部材70、及び支持部材77と接触する箇所において、多くの場合には潤滑油Lを供給されるすべり軸受に支持された状態で、滑らかに回転することができる。
【0046】
(2-4)圧縮機構40
圧縮機構40は、内部空間Sの中かつモータ20の上方に配置される。圧縮機構40は、クランクシャフト30の回転によって伝達された動力を利用して、低圧ガス冷媒を圧縮することによって高圧ガス冷媒を生成する。圧縮機構40は、固定スクロール41と可動スクロール42を有する。固定スクロール41は、仕切部材70に支持されている。可動スクロール42は、ボス46を有する。ボス46の凹部には、クランクシャフト30の偏心部32がはめ込まれている。偏心部32は、多くの場合にはすべり軸受を介してボス46の凹部の内面と接触する。クランクシャフト30の回転はボス46に伝達され、それによって可動スクロール42が固定スクロール41に対して公転する。
【0047】
固定スクロール41と可動スクロール42の間には、複数の圧縮室43が形成される。クランクシャフト30が可動スクロール42を公転させることによって、圧縮室43の容積が変動し、これによって冷媒Rが圧縮される。生成された高圧ガス冷媒は、固定スクロール41に設けられた吐出孔45から第3空間S3へ吐出される。
【0048】
(2-5)仕切部材70、支持部材77
仕切部材70は、胴部11に取り付けられている。仕切部材70は、第3空間S3と第1空間S1を隔てている。仕切部材70は、主軸部31の上部を、多くの場合にはすべり軸受を介して支持する。
【0049】
仕切部材70には、冷媒通路71が設けられている。冷媒通路71は、第3空間S3から第1空間S1へ冷媒Rを通過させるためのものである。
【0050】
仕切部材70は、収容部72をさらに有する。収容部72は、可動スクロール42のボス46を収容する。収容部72は、圧縮機構40を潤滑し終えた潤滑油Lを集めるための一時貯留部としても機能する。収容部72に貯留された潤滑油Lは、図示しない経路を移動して第1空間S1に到達し、その後油溜まり14へ戻る。
【0051】
支持部材77は、胴部11に取り付けられている。支持部材77は、クランクシャフト30の主軸部31の下部を、多くの場合にはすべり軸受を介して支持する。
【0052】
(3)冷媒Rと潤滑油Lの移動
引き続き図2を参照して、冷媒Rと潤滑油Lの移動を説明する。
【0053】
圧縮機構40で圧縮を受けて高圧状態になった冷媒Rは、吐出孔45から第3空間S3へ吐出される。冷媒Rは、第3空間S3を囲んでいるケーシング10の上蓋部12に衝突し、又は上蓋部12の内面に沿って移動する。その後、冷媒Rは冷媒通路71を通過して第1空間S1へ移動する。
【0054】
通常、冷媒Rは相溶性を有している。したがって、第3空間S3に充満する冷媒Rの中には一定の潤滑油Lが含まれている。その潤滑油Lの一部も、冷媒Rとともに冷媒通路71を通過して、第1空間S1へ移動する。
【0055】
第1空間S1にも冷媒Rと潤滑油Lの混合物が充満している。ロータ25の回転は、この混合物に対し、クランクシャフト30の主軸部31を中心とする回転運動を与える。これにより、とりわけ仕切部材70とモータ20の間に位置する混合物において、潤滑油Lは遠心力によって冷媒Rから分離され、胴部11の内壁へ叩きつけられる。この現象はサイクロン分離と呼ばれる。胴部11の内壁の潤滑油Lは、最後に油溜まり14へ落下する。潤滑油Lを除去された冷媒Rは、吐出管17を通過して、圧縮機100の外部へ吐出される。
【0056】
(4)モータ20の詳細構造
図3は、図2の要部を拡大した模式図である。上部バランスウェイト37は、モータ20とともに、吐出管17の高さと支持部材77の高さの間に配置されている。
【0057】
モータ20のステータ21は、ステータコア22、上部インシュレータ23a、下部インシュレータ23b、複数のコイル24を有する。ステータコア22は、多数の積層鋼板から形成されている。上部インシュレータ23a及び下部インシュレータ23bはいずれも樹脂製の部品である。上部インシュレータ23aはステータコア22の上面に配置されている。下部インシュレータ23bはステータコア22の下面に配置されている。複数のコイル24は、ステータコア22に導線を巻き付けることによって形成されている。複数のコイル24は、受け取った電力を用いて、ロータ25と相互作用するための磁界を発生させる。
【0058】
モータ20のロータ25は、中心軸Cを中心として回転する。ロータ25は、ロータ本体26、及び下部バランスウェイト27を有している。
【0059】
ロータ本体26は、ロータコア26a、永久磁石26b、端板26cを有する。ロータコア26aは、複数の積層鋼板からなる。永久磁石26bは、ロータコア26aの内部に設けられた空間に設置される。端板26cは、ロータコア26aの上面と下面に設けられる。端板26cは、ロータコア26aの空間から永久磁石が外れることを防ぐ。
【0060】
下部バランスウェイト27は、ロータ本体26の下面に設置されている。下部バランスウェイト27は、上部バランスウェイト37と同様に、クランクシャフト30のバランスをとるためのものである。下部バランスウェイト27は、端板26cに接触している。
【0061】
回転部材60は、ロータ25とともに回転するものである。回転部材60は、下部バランスウェイト27に固定されている。
【0062】
ロータ25には、圧縮機100の軸方向にロータ25を貫通するロータ冷媒通路51が形成されている。ロータ冷媒通路51は「風穴」と呼ばれることもある。ロータ冷媒通路51は、冷媒Rを第2空間S2から第1空間S1へ通過させる。
【0063】
図4は、ステータコア22の平面図である。ステータコア22は、円環部22aを有する。円環部22aは、中心軸Cを中心とする円環形状を有する。円環部22aの外周Eには、複数の凹部が形成されている。この凹部は、コアカット54と呼ばれる。コアカット54は、冷媒Rを第1空間S1から第2空間S2へ通過させる。円環部22aの内周には、円環部22aの中心に向かって突出する複数のティース22bが形成されている。
【0064】
図5は、圧縮機100の要部の上面又は断面を示す模式図である。本図において、モータ20は平面図として描かれている。一方、ケーシング10及びクランクシャフト30は断面図として描かれている。
【0065】
ステータコア22が有する各々のティース22bは、それぞれのティース22bを覆うインシュレータ23の部位とともに巻線が巻き付けられることによって、1つのコイル24を形成している。
【0066】
ステータコア22が有する複数のコアカット54は、ケーシング10の胴部11の内周面とともに、圧縮機100の軸方向に延びる冷媒Rの通路を形成する。
【0067】
隣接するコイル24の間には、コイル隙間53が形成される。コイル隙間53もまた、圧縮機100の軸方向に延びる冷媒Rの通路として機能する。コイル隙間53は、冷媒Rを第2空間S2から第1空間S1へ通過させる。
【0068】
ステータ21とロータ25の間には、エアギャップ52と呼ばれる隙間が形成されている。エアギャップ52もまた、圧縮機100の軸方向に延びる冷媒Rの通路として機能する。ステータとロータの間には、エアギャップが形成されている。エアギャップ52は、冷媒Rを第2空間S2から第1空間S1へ通過させる。
【0069】
ロータ25が有するロータ冷媒通路51もまた、圧縮機100の軸方向に延びる冷媒Rの通路として機能する。
【0070】
図6は、回転部材60の下面を示している。回転部材60は、下部バランスウェイト27と固定される。回転部材60は、3つの取付開口67を有している。取付開口67は、回転部材60を下部バランスウェイト27に固定するための締結具が通過するためのものである。回転部材60は、複数の溝67を有している。複数の溝67は、中心軸Cから周縁Pに向かって径方向に放射状に延びている。
【0071】
図3に戻り、太い矢印で示されている通り、ロータ冷媒通路51、エアギャップ52、及びコイル隙間53は、いずれも、圧縮機100が冷媒Rの圧縮を行う際に、冷媒Rを下方から上方へと通過させる。ロータ冷媒通路51、エアギャップ52、及びコイル隙間53は、いずれも冷媒Rをモータ20の下方から上方へ通過させるので、冷媒上昇通路50と総称される。一方、コアカット54は、太い矢印で示されている通り、冷媒Rを上方から下方へと通過させるので、冷媒下降通路と別称することができる。
【0072】
(5)回転部材60の周辺の構造
図7は、図3の要部を拡大した模式図である。下部インシュレータ23bは、基部P1、外周壁P2、内周壁P3を有する。基部P1はステータコア22と接触する円環状の部位である。外周壁P2は、基部P1の外周の付近から下方へ延びる。内周壁P3は、基部P1の内周の付近から下方へ延びる。
【0073】
回転部材60は、前述した通り、下部バランスウェイト27に固定されている。回転部材60は、下部バランスウェイト27を介してロータ本体26に間接的に固定されている。下部バランスウェイト27は、ロータ本体26の端板26cに固定されている。回転部材60は、クランクシャフト30、ロータ本体26、及び下部バランスウェイト27とともに回転する。
【0074】
回転部材60は、コイル24の下端Bよりも低く配置されている。回転部材60とコイル24の下端との高低差は、例えば20mm以下であり、好ましくは15mm以下である。回転部材60の外径Xは、ステータ21の内径Yよりも大きい。これにより、回転部材60は、冷媒上昇通路50の下方における冷媒入口を覆っている。なお、図7において、外径Xと内径Yはその半分だけが示されており、それぞれ(X/2)、(Y/2)として示されている。回転部材60は、下部インシュレータ23bの外周壁P2の下端Tよりも高く配置される。
【0075】
下方から上昇してくる冷媒Rは、回転部材60に衝突したのち進行方向を変える。このとき、冷媒Rの中に油ミストの微小な粒の状態で含まれる潤滑油Lは、回転部材60の下面に既に存在する油膜に吸収される。
【0076】
図8は、回転部材60の断面図である。回転部材60の下面に設けられる溝67は、内壁68を有している。回転部材60の下方では、冷媒Rが回転部材60の周方向に流れつつ、全体としては回転部材60の径方向外向きに移動している。冷媒Rの一部は溝67の中に回り込んで渦を作り、冷媒Rの中の油ミストは冷媒Rの進行方向とは反端側に位置する内壁68やその他の箇所に衝突する。溝67の内壁68においても、冷媒Rに含まれる潤滑油Lは油膜に吸収される。
【0077】
回転部材60の下面の油膜を構成する潤滑油Lは、自身の粘性と遠心力の作用により、回転部材60の中心から径方向外側に向かって、螺旋を描くように回転部材60の表面を移動する。内壁68の油膜を構成する潤滑油Lは、溝67に沿って径方向外側へ移動する。その後、潤滑油Lは回転部材60の外周から径方向に飛び出す。次いで潤滑油Lは、ケーシング10その他の構成部品に衝突し、油溜まり14へ落下する。
【0078】
(6)特徴
(6-1)
吐出管17と油溜まり14の間に回転部材60が位置する。したがって、油溜まり14から吐出管17へ上昇する冷媒Rは、冷媒Rに対する障害物として機能する回転部材60に衝突するので、冷媒Rに含まれる潤滑油Lが分離され、ひいては圧縮機100からの潤滑油Lの排出が抑制される。
【0079】
(6-2)
回転部材60がコイル24の下方に配置される。したがって、油溜まり14からコイル隙間53へ上昇しようとする冷媒Rは、回転部材60に衝突するので、冷媒Rに含まれる潤滑油Lが分離される。上昇する冷媒流が通過する面積のうち、コイル隙間53の断面積が占める割合は大きいので、潤滑油Lの分離は効率的になる。
【0080】
(6-3)
回転部材60はコイル24の下端に近接して配置されており、その結果、回転部材60とコイル24の下端との高低差は20mm以下、又は好ましくは15mm以下である。したがって、回転部材60が冷媒Rに対する障害物として機能できる。
【0081】
(6-4)
コアカット54を通過する冷媒Rの下降流は、回転部材60よりも低く配置されている外周壁P2よりもさらに下方に移動したのち、上昇流に変わる。したがって、冷媒Rの上昇流が回転部材60に衝突しやすい。
【0082】
(6-5)
冷媒Rが回転部材60の付近を移動するとき、冷媒Rの一部は溝69の中を流れて溝69の内壁68に衝突する。この衝突により、冷媒Rに含まれている潤滑油Lが、既に溝69の内壁68に付着している油膜に吸収される場合がある。したがって、冷媒Rに含まれる潤滑油Lが効率的に冷媒Rから分離される。
【0083】
(6-6)
冷媒Rの上昇流は、ロータ冷媒通路51、エアギャップ52、及び、コイル隙間53を通過する。回転部材60は、平面視において、ロータ冷媒通路51の全部、エアギャップ52の全部、及びコイル隙間53の少なくとも一部をさえぎる。したがって、冷媒Rの上昇流のうちの多くの割合が回転部材60と衝突する。
【0084】
(6-7)
回転部材60は、ロータ本体26に間接的に固定される。したがって、冷媒上昇流の中心部を回転部材60はさえぎることができる。
【0085】
(6-8)
ロータ25は下部バランスウェイト27を有する。したがって、ロータ25の回転時の振動を抑制できる。
【0086】
(6-9)
回転部材60が、下部バランスウェイト27に固定される。したがって、回転部材60は下部バランスウェイト27を介してロータ本体26に固定される。
【0087】
(6-10)
圧縮機100が、冷媒Rに対する障害物として機能する回転部材60を有する。したがって、冷凍装置101の冷媒回路において、圧縮機100から潤滑油Lが排出されることが抑制される。
【0088】
(7)変形例
(7-1)
上述の第1実施形態に係る圧縮機100において、回転部材60は、下部バランスウェイト27を介してロータ本体26に間接的に固定されている。これに代えて、回転部材60は、クランクシャフト30に固定されていてもよい。
【0089】
この構成によれば、回転部材60は、クランクシャフト30に固定される。したがって、クランクシャフト30の近傍の冷媒上昇流を回転部材60はさえぎることができる。
【0090】
(7-2)
上述の第1実施形態に係る圧縮機100は、スクロール圧縮機である。これに代えて、圧縮機100は、スクロール圧縮機以外の圧縮機であってよい。例えば、圧縮機100は、ロータリー圧縮機、又はスクリュー圧縮機であってよい。
【0091】
(7-3)
上述の第1実施形態に係る圧縮機100において、回転部材60には、複数の溝67が設けられている。これに代えて、回転部材60には中心軸Cから周縁Pに向かって径方向に延びる1本の溝67のみが設けられていてもよい。あるいは、回転部材60には溝67が設けられていなくともよい。
【0092】
(7-4)
上述の第1実施形態に係る圧縮機100において、下部バランスウェイト27は、図6に示すように円弧形状を有している。これに代えて、下部バランスウェイト27は、図9に示すように、半円形状を有していてもよい。図9はロータ25の下面を示している。下側バランスウェイト27は、半円状のウェイト部27aと、径方向に延びる2つの脚部27bと、ウェイト部27及び脚部27bを接続する環状部27cを有している。
【0093】
この構成によれば、ウェイト部27によって支持されていない回転部材80の領域は、脚部27bによって支持される。したがって、回転部材80の変形が生じるおそれが脚部27bによって低減されるので、回転部材80は冷媒Rに含まれる潤滑油Lを安定的に分離することができる。
【0094】
<第2実施形態>
(1)構成
図10は、第2実施形態に係る圧縮機100を拡大した模式図である。本実施形態に係る圧縮機100は、回転部材60の構造が第1実施形態とは異なる。本実施形態に係る回転部材60は、第1開口61及び第2開口62を有する点において、第1実施形態の回転部材60とは相違している。
【0095】
図11は、本実施形態に係る回転部材60の平面図である。本図には、回転部材60と固定される下部バランスウェイト27の位置も示されている。回転バランスウェイト27の形状は、図7に示す第1実施形態の変形例のものと同じである。回転部材60は、複数の溝67に加え、4つの第1開口61、8つの第2開口62、及び、5つの取付開口67を有している。取付開口67は、回転部材60を下部バランスウェイト27に固定するための締結具が通過するためのものである。回転部材60の外側領域Qは、周縁Pと第2開口62に挟まれている。
【0096】
図10に戻り、第1開口61は、ロータ冷媒通路51に連通するように構成されている。第2開口62は、エアギャップ52に連通するように構成されている。外側領域Qは、コイル隙間53を通過しようとする冷媒の上昇流を、少なくとも部分的にさえぎる機能を有する。
【0097】
(2)特徴
回転部材60は第1開口61又は第2開口62を有する。したがって、冷媒Rの上昇流の一部は第1開口61又は第2開口62を通過したのちにロータ冷媒通路51、エアギャップ52、及び、コイル隙間53のいずれかを通過できるので、冷媒Rの上昇流の必要量を確保できる。
【0098】
(3)変形例
(3-1)
第1開口61、第2開口62、及び取付開口67の個数は、図11に示されている構成に限定される必要はない。回転部材60は、第1開口61及び第2開口62のうちのいずれか一方のみを有していてもよい。
【0099】
(3-2)
上述の第2実施形態に係る圧縮機100において、回転部材60は、下部バランスウェイト27を介してロータ本体26に間接的に固定されている。これに代えて、回転部材60は、ロータ本体26に直接的に固定されていてもよい。回転部材60が第1開口61又は第2開口62を通過することによって、冷媒上昇流はロータ冷媒通路51又はエアギャップ52へ到達することができる。
【0100】
(3-3)
第1実施形態又はその変形例として開示されている構成の一部を、本実施形態に適用してもよい。
【0101】
<むすび>
以上、本開示の実施形態を説明したが、特許請求の範囲に記載された本開示の趣旨及び範囲から逸脱することなく、形態や詳細の多様な変更が可能なことが理解されるであろう。
【符号の説明】
【0102】
10 :ケーシング
14 :油溜まり
15 :吸入管
17 :吐出管
20 :モータ
21 :ステータ
22 :ステータコア
23a :上部インシュレータ
23b :下部インシュレータ
24 :コイル
25 :ロータ
26 :ロータ本体
26a :ロータコア
26b :永久磁石
26c :端板
27 :下部バランスウェイト
30 :クランクシャフト
37 :上部バランスウェイト
40 :圧縮機構
50 :冷媒上昇通路
51 :ロータ冷媒通路
52 :エアギャップ
53 :コイル隙間
54 :コアカット(冷媒下降通路)
60 :回転部材
61 :第1開口
62 :第2開口
69 :溝
80 :利用ユニット
90 :熱源ユニット
100 :圧縮機
101 :冷凍装置
B :コイル下端(下端)
E :ステータコア外周(外周)
L :潤滑油
P1 :基部
P2 :外周壁
P3 :内周壁
R :冷媒
S :内部空間
S1 :第1空間
S2 :第2空間
S3 :第3空間
T :外周壁下端(下端)
X :回転部材外径(外径)
Y :ステータ内径(内径)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0103】
【特許文献1】特開2021-017849号公報
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
【手続補正書】
【提出日】2024-07-31
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部空間(S)を有するケーシング(10)と、
円筒状のステータ(21)、前記ステータの中に配置されるロータ(25)、冷媒下降通路(54)、及び冷媒上昇通路(50)を有し、前記内部空間の中に配置されるモータ(20)と、
前記内部空間の中かつ前記モータの上方に配置され、前記モータとの間に第1空間(S1)を形成し、かつ、冷媒(R)を圧縮する圧縮機構(40)と、
前記内部空間の中かつ前記モータの下方に配置され、かつ、前記モータとの間に第2空間(S2)を形成する油溜まり(14)と、
前記ロータの回転を前記圧縮機構へ伝達するクランクシャフト(30)と、
前記第2空間に配置され、前記ロータとともに回転し、かつ、前記ステータの内径(Y)よりも大きい外径(X)を有する回転部材(60)と、
前記第1空間に配置される吐出管(17)と、
を備え、
前記冷媒下降通路は、前記冷媒を前記第1空間から前記第2空間へ通過させ、
前記冷媒上昇通路は、前記冷媒を前記第2空間から前記第1空間へ通過させ
前記ステータは、ステータコア(22)、及び、前記ステータコアに導線を巻き付けることによって形成されるコイル(24)、を有し、
前記ステータは、前記ステータコアの下面に配置される円環状の下部インシュレータ(23b)、をさらに有し、
前記下部インシュレータは、前記下部インシュレータの外周の付近から下方へ延びる外周壁(P2)を有し、
前記回転部材は、前記外周壁の下端(T)よりも高く配置される、
圧縮機(100)。
【請求項2】
記冷媒下降通路は、前記ステータコアの外周(E)に形成されたコアカット(54)であり、
前記回転部材は、前記コイルの下端(B)よりも低く配置される、
請求項1に記載の圧縮機。
【請求項3】
前記回転部材と前記コイルの前記下端(B)の高低差は、20mm以下である、
請求項2に記載の圧縮機。
【請求項4】
前記回転部材は、中心から周縁に向かって径方向に延びる溝(69)を有する、
請求項1からのいずれか1項に記載の圧縮機。
【請求項5】
前記回転部材は、中心から周縁に向かって径方向に放射状に延びる複数の溝(69)を有する、
請求項1からのいずれか1項に記載の圧縮機。
【請求項6】
前記ロータは、前記ロータを軸方向に貫通するロータ冷媒通路(51)を有し、
前記ステータと前記ロータの間には、エアギャップ(52)が形成されており、
前記ステータは、隣接する2つの前記コイル間に位置するコイル隙間(53)を有し、
前記冷媒上昇通路(50)は、前記ロータ冷媒通路(51)、前記エアギャップ(52)、及びコイル隙間(53)を含む、
請求項1からのいずれか1項に記載の圧縮機。
【請求項7】
前記ロータは、ロータ本体、及び、前記ロータ本体の下面に設けられた下部バランスウェイト(27)を有し、
前記回転部材は、前記下部バランスウェイトに固定される、
請求項に記載の圧縮機。
【請求項8】
前記ロータは、ロータ本体、及び、前記ロータ本体の下面に設けられた下部バランスウェイト(27)、を有し、
前記回転部材は、前記ロータ本体に固定される、
請求項に記載の圧縮機。
【請求項9】
前記回転部材は、前記クランクシャフトに固定される、
請求項に記載の圧縮機。
【請求項10】
前記回転部材は、前記ロータ冷媒通路に連通する第1開口(61)、及び、前記エアギャップに連通する第2開口(62)、のうちの少なくとも1つを有する、
請求項に記載の圧縮機。
【請求項11】
請求項1からのいずれか1項に記載の圧縮機、
を備える、冷凍装置(101)。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0070
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0070】
図6は、回転部材60の下面を示している。回転部材60は、下部バランスウェイト27と固定される。回転部材60は、3つの取付開口67を有している。取付開口67は、回転部材60を下部バランスウェイト27に固定するための締結具が通過するためのものである。回転部材60は、複数の溝69を有している。複数の溝69は、中心軸Cから周縁Pに向かって径方向に放射状に延びている。