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特開2024-178911車両用の走行アシストシステム及び走行アシスト方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024178911
(43)【公開日】2024-12-25
(54)【発明の名称】車両用の走行アシストシステム及び走行アシスト方法
(51)【国際特許分類】
   B60W 40/04 20060101AFI20241218BHJP
   B60W 60/00 20200101ALI20241218BHJP
   B60W 30/08 20120101ALI20241218BHJP
   G08G 1/16 20060101ALI20241218BHJP
【FI】
B60W40/04
B60W60/00
B60W30/08
G08G1/16 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024080062
(22)【出願日】2024-05-16
(31)【優先権主張番号】10 2023 115 297.1
(32)【優先日】2023-06-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(71)【出願人】
【識別番号】398037767
【氏名又は名称】バイエリシエ・モトーレンウエルケ・アクチエンゲゼルシヤフト
(74)【代理人】
【識別番号】100069556
【弁理士】
【氏名又は名称】江崎 光史
(74)【代理人】
【識別番号】100111486
【弁理士】
【氏名又は名称】鍛冶澤 實
(74)【代理人】
【識別番号】100191835
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 真介
(74)【代理人】
【識別番号】100221981
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 大成
(74)【代理人】
【識別番号】100191938
【弁理士】
【氏名又は名称】高原 昭典
(72)【発明者】
【氏名】ヨハネス・エヒトラー
【テーマコード(参考)】
3D241
5H181
【Fターム(参考)】
3D241BA31
3D241BA62
3D241BC01
3D241BC02
3D241CD05
3D241DC01Z
3D241DC02Z
3D241DC04Z
3D241DC21Z
3D241DC22Z
3D241DC23Z
3D241DC25Z
3D241DC31Z
3D241DC32Z
5H181AA01
5H181AA21
5H181BB20
5H181CC03
5H181CC04
5H181CC14
5H181LL01
5H181LL02
5H181LL04
5H181LL09
(57)【要約】
【課題】交通弱者を、信頼性をもって認識することを可能とする。
【解決手段】車両用の走行アシストシステム200であって、車両の周囲センサ210の周囲データに基づき車両周囲における物体認識を実行するように構成された物体認識モジュール220と、該物体認識モジュール220によって行われる、より下位の交通参加者としての物体の分類の妥当性確認を行うように構成された解析モジュール230であって、該解析モジュール230は、物体の移動特性に基づき妥当性確認を行うように構成されている前記解析モジュール230と、妥当性確認に基づき自動化された走行のための走行アシストを実行するように構成された走行アシストモジュール240とを含んでいる。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両(20)用の走行アシストシステム(100,200)であって、
車両(10)の周囲センサ(12、210)の周囲データに基づき車両周囲における物体認識を実行するように構成された物体認識モジュール(220)と、
該物体認識モジュール(220)によって行われる、より下位の交通参加者としての物体(30A,30B)の分類の妥当性確認を行うように構成された解析モジュール(230)であって、該解析モジュール(230)は、前記物体(30A,30B)の少なくとも1つの移動特性に基づき妥当性確認を行うように構成されている前記解析モジュール(230)と、
妥当性確認に基づき自動化された走行のための走行アシストを実行するように構成された走行アシストモジュール(240)と
を含んでいることを特徴とする走行アシストシステム(100,200)。
【請求項2】
前記少なくとも1つの移動特性が、
-前記車両(10)に対する前記物体(30A,30B)の相対位置、及び/又は
-時間にわたる、特に前記周囲センサ(12,110)の複数のフレームにわたる前記物体(30A,30B)の移動経路、及び/又は
-前記物体(30A,30B)の速度(OBG1,OBG2)、及び/又は
-前記物体(30A,30B)の絶対位置
を含んでいることを特徴とする請求項1に記載の走行アシストシステム(100,200)。
【請求項3】
前記解析モジュールが、
-前記少なくとも1つの移動特性がより下位の交通参加者の特徴的な移動態様と異なっている場合に、前記物体識別モジュールによって行われる、より下位の交通参加者としての前記物体(30A,30B)の分類を破棄するように、及び
-前記少なくとも1つの移動特性がより下位の交通参加者の特徴的な移動態様に対応する場合に、前記物体認識モジュールによって行われる、より下位の交通参加者としての前記物体(30A,30B)の分類を確認するように
構成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の走行アシストシステム(100,200)。
【請求項4】
前記走行アシストモジュールが、
-前記物体認識モジュール(220)によって行われる、より下位の交通参加者としての前記物体(30A,30B)の分類が解析モジュール(230)によって確認される場合に、自動化された走行のための走行アシストを非作動とし、又は作動について阻止するように、及び
-前記物体認識モジュール(220)によって行われる、より下位の交通参加者としての前記物体(30A,30B)の分類が前記解析モジュール(230)によって破棄される場合に、自動化された走行のための走行アシストを作動させ、又は作動を許容するように、
構成されていることを特徴とする請求項3に記載の走行アシストシステム(100,200)。
【請求項5】
前記解析モジュール(230)が、前記物体(30A,30B)の物体速度(OBG1)が閾値以上であり、前記物体(30A,30B)が前記車両(10)から離れるように移動するか、又は前記車両(10)へ向けて移動する場合に、前記物体認識モジュール(220)によって行われる、より下位の交通参加者としての前記物体(30A,30B)の分類を破棄するように構成されており、前記閾値が、30km/h以上、35km/h以上、40km/h以上、45km/h以上又は50km/h以上であることを特徴とする請求項1~4のいずれか1項に記載の走行アシストシステム(100,200)。
【請求項6】
前記解析モジュール(230)が、物体認識において認識されたより下位の交通参加者が前記車両(10)の走行態様に関連するより下位の交通参加者として妥当性確認される場合に、より下位の交通参加者が前記車両(10)の走行態様に関連するより下位の交通参加者であるかどうかを妥当性確認において決定するように構成されていることを特徴とする請求項1~5のいずれか1項に記載の走行アシストシステム(100,200)。
【請求項7】
前記より下位の交通参加者が、歩行者、自転車運転者、車いす利用者及び電動スクータから成る一群から選択されており、特に、前記より下位の交通参加者が交通弱者であることを特徴とする請求項1~6のいずれか1項に記載の走行アシストシステム(100,200)。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか1項に記載の走行アシストシステム(100,200)を含む車両(10)、特に原動機付き車両。
【請求項9】
車両(10)用の走行アシスト方法(400)であって、
前記車両(10)の周囲センサ(12,210)の周囲データに基づき車両周囲における物体認識を物体認識モジュール(220)によって実行すること(410)、
前記物体認識モジュール(220)によって行われる、より下位の交通参加者としての物体(30A,30B)の分類の妥当性確認を解析モジュール(230)によって実行すること(420)であり、このとき、該解析モジュール(230)が、前記物体(30A,30B)の少なくとも1つの移動特性に基づき妥当性確認を行うように構成されており、
妥当性確認に基づき自動化された走行のための走行アシストを実行すること(430)
を含むことを特徴とする走行アシスト方法(400)。
【請求項10】
1つ又は複数のプロセッサにおいて実行され、これにより請求項9に記載の走行アシスト方法(400)を実行するように構成されたソフトウェアプログラムを含む記憶媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、車両用の走行アシストシステムと、このような走行アシストシステムを有する車両と、車両用の走行アシスト方法と、走行アシスト方法を実行するための記憶媒体とに関するものである。本開示は、特に、歩行者及び自転車運転者のようなより下位の交通参加者の認識及び妥当性チェックのための移動パターンの評価に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば(部分的に)自律した走行のための走行アシスト機能の開発は、ますます重要となってきている。運転者アシストシステムのためのできる限り精確な周囲感知を可能とするために、例えばカメラ、ライダ(LiDAR)及びレーダのような様々なセンサタイプのセンサ測定を用いることが可能である。各センサタイプは、異なる物理的な測定原理に基づいている。車両周囲は、実際には、様々な車両タイプ、人及び動物のような非常に多くの異なる物体/対象物、ゴミ箱、交通監理システムのような静的な物体、自然の物体及び地形で構成されている。これら全ての物体/対象物の感知はそれぞれ用いられる測定原理に依存するため、精確な周囲感知を保証することは困難である。
【0003】
特に、多数のセンサにもかかわらず、所定の交通参加者を信頼性をもって検出することが困難なことがある。誤った認識に至ると、これは、走行アシストシステムの性能の低下につながり得る。例えば、歩行者又は自転車運転者が認識される場合に、渋滞アシストが走行アシストを非作動とする。しかし、例えば自動二輪車のような物体が誤って歩行者又は自転車運転者として認識されると、走行アシストは理由なく非作動とされ、ユーザが、良好でない性能により走行アシストを今後もはや利用しないこととなり得る。走行アシストは手動の運転者に比してしばしばより高い安全性を提供するものであるため、走行アシストの非作動は、道路交通における安全性にネガティブに影響し得る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示の課題は、交通参加者、特により下位の交通参加者を信頼性をもって認識することを可能とする、車両の自動化された走行のための走行アシストシステムと、このような走行アシストシステムを有する車両と、車両の自動化された走行のための走行アシスト方法と、走行アシストシステムを実行するための記憶媒体とを提供することにある。特に、本開示の課題は、走行アシストシステムの利用継続時間を最大化し、ひいては道路交通における安全性を向上させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
当該課題は、独立請求項の対象によって解決される。好ましい形態は、従属請求項に記載されている。
【0006】
本開示の1つの独立した態様によれば、車両用、特に原動機付き車両用の走行アシストシステムが提供されている。走行アシストシステムは、車両の周囲センサの周囲データに基づき車両周囲における物体認識を実行するように構成された物体認識モジュールと、物体認識モジュールによって行われる、より下位の交通参加者としての物体の分類の妥当性確認を行うように構成された解析モジュールであって、当該解析モジュールは、物体の少なくとも1つの移動特性(運動特性)に基づき妥当性確認を行うように構成されている解析モジュール230と、妥当性確認に基づき自動化された走行のための走行アシストを実行するように構成された走行アシストモジュールとを含んでいる。
【0007】
本発明によれば、物体認識につづいて、より下位の交通参加者の妥当性チェックのためのフィルタアルゴリズムが提供されている。このとき、まず、物体認識において、例えば自転車運転者又は歩行者のようなより下位の交通参加者が認識される。そして、当該認識は、物体認識において識別されるより下位の交通参加者の移動パターンに基づいて妥当性確認あるいは妥当性チェックがなされる。妥当性確認あるいは妥当性チェックにおいて、より下位の交通参加者についての移動パターンが典型的でないことが認識されると、物体認識に誤りがあったと推測(仮定)される。例えば、物体認識において識別される自転車運転者が高速(例えば45km/h)で後方から自車両に接近し得るため、当該物体は自転車運転者ではなく自動二輪車であると推測することが可能である。この場合、例えば渋滞アシストの非作動は行われなくてよい。結果として、交通参加者、特により下位の交通参加者の信頼性のある認識を行うことが可能である。
【0008】
好ましくは、周囲センサは、少なくとも1つのライダ(LiDAR)システム及び/又は少なくとも1つのレーダシステム及び/又は少なくとも1つのカメラ及び/又は少なくとも1つの超音波システムを含んでいる。周囲センサは、車両の周囲範囲を描写する周囲データ(「周辺データ」とも呼ばれる)を提供することが可能である。
【0009】
好ましくは、分類は、類別を含むか、又は類別である。特に物体認識モジュールは、物体認識において、周囲センサの周囲データに基づき車両周囲の分類を実行するように構成されることが可能である。分類とは、周囲認識において、一般的に、周囲データにおいて認識される物体及び/又は対象物のラベリング(例えば「車両」、「歩行者」、「自転車運転者」など)と理解される。
【0010】
好ましくは車両周囲の分類は、意味的な区分を用いて行われる。「意味的な区分」という概念とは、一般的に、いくつかの(一定の)数の分類への入力画像の画像セグメントあるいはピクセルの分類と理解される。特に、意味的な区分においては、例えば自動車、歩行者、自転車、道路、縁石、建物、ポール、標識などを区別するために、画像の各ピクセルに意味的な意味が割り当てられる。このとき、意味的な区分は、不可算の「物品」分類(例えば道路)についても、また可算の「物体」分類(例えば車両又は人)についても、入力画像の個々のピクセルに意味が割り当てられる。
【0011】
好ましくは、車両周囲の分類、特に意味的な区分はニューラルネットワークを用いる。
【0012】
好ましくは、より下位の交通参加者は、歩行者、自転車運転者、車いす利用者及び電動スクータを含むか、又はこれらから成るグループから選択されている。
【0013】
好ましくは、より下位の交通参加者は、交通弱者(Vulnerable Road User(VRU))であり得る。本開示において用いられるような「Vulnerable Road User(交通弱者)」という概念は、一般的に、道路交通において、例えば車室のような保護するために覆うものが周囲にないため、特にけが又は死亡のリスクを抱える交通参加者をいう。特に「Vulnerable Road User(交通弱者)」は、歩行者及び/又は自転車運転者を含む。
【0014】
好ましくは、走行アシストシステム、特に物体認識モジュール又は解析モジュールは、周囲センサの周囲データに基づき物体の少なくとも1つの移動特性(運動特性)を認識するように構成されている。
【0015】
好ましくは、少なくとも1つの移動特性は、車両に対する物体の相対位置を含む。
【0016】
これに補足して、又はこれに代えて、少なくとも1つの移動特性は、時間にわたる、特に周囲センサの複数フレームにわたる物体の移動経路あるいは移動軌道を含む。例えば、物体の移動経路は、典型的には自動二輪車運転者についてのものであり得るため(例えば原動機付き車両を追い越すための交通における蛇行ライン)、物体認識において識別されるより下位の交通参加者がそのようなものではないことを推測することが可能である。
【0017】
これに補足して、又はこれに代えて、少なくとも1つの移動特性は、物体の速度を含む。例えば、物体は、閾値以上の速度で移動することがあり得るため、物体認識において識別されるより下位の交通参加者がそのようなものではないことを推測することが可能である。閾値は、例えば30km/h以上、35km/h以上、40km/h以上、45km/h以上又は50km/h以上であり得る。
【0018】
これに補足して、又はこれに代えて、少なくとも1つの移動特性は、物体の絶対位置を含む。例えば、物体は、自動二輪車の経路にも配置され得るため、物体認識において識別される自動二輪車運転者が実際にはそのようなものではないことを妥当性チェックすることが可能である。
【0019】
好ましくは、走行アシストシステム、特に物体認識モジュール又は解析モジュールは、少なくとも1つの移動特性に基づき、物体の移動パターンを決定し、妥当性確認のために用いるように構成されている。移動パターンは、例えば移動経路(運動経路)あるいは移動軌道(運動軌道)及び物体の速度を含むことができるが、これに限定されるものではない。
【0020】
好ましくは、解析モジュールは、少なくとも1つの移動特性がより下位の交通参加者の特徴的な移動態様と異なっている場合に、物体識別モジュールによって行われる、より下位の交通参加者としての物体の分類を破棄するように、及び少なくとも1つの移動特性がより下位の交通参加者の特徴的な移動態様に対応する場合に、物体認識モジュールによって行われる、より下位の交通参加者としての物体の分類を確認するように構成されることが可能である。特徴的な移動態様は、例えば、移動経路及び/又は速度に関し得る。
【0021】
好ましくは、走行アシストモジュールは、物体認識モジュールによって行われる、より下位の交通参加者としての物体の分類が解析モジュールによって確認される場合に、自動化された走行のための走行アシストを非作動とし、又は例えばユーザによる作動について阻止するように、及び物体認識モジュールによって行われる、より下位の交通参加者としての物体の分類が解析モジュールによって破棄される場合に、自動化された走行のための走行アシストを作動させ、又は例えばユーザによる作動を許容するように、構成されることが可能である。
【0022】
好ましくは、解析モジュールは、物体の物体速度が閾値以上であり、物体が車両から離れるように移動しているか、又は車両へ向けて移動している場合に、物体認識モジュールによって行われる、より下位の交通参加者としての物体の分類を破棄するように構成されている。例えば、物体は、閾値以上の速度で車両から離れるように移動するか、又は車両へ向けて移動する(例えば後方から高速で近づく自動二輪車)ことがあり得るため、物体認識において識別されるより下位の交通参加者がそのようなものではないことを推測することが可能である。
【0023】
いくつかの実施形態では、閾値は、例えば30km/h以上、35km/h以上、40km/h以上、45km/h以上又は50km/h以上であり得る。
【0024】
好ましくは、解析モジュールは、物体認識において認識されたより下位の交通参加者が車両の走行態様に関連するより下位の交通参加者として妥当性確認される場合に、より下位の交通参加者が車両の走行態様に関連するより下位の交通参加者であるかどうかを妥当性確認において決定するように構成されている。特に、車両の走行態様(例えば走行軌道及び速度)及び物体の移動態様(例えば移動軌道及び速度)に基づき衝突のおそれが存在するような物体が関連するものとみなされる。
【0025】
一例では、解析モジュールは、物体認識において識別されるより下位の交通参加者が実際にそのようなものであり、より下位の交通参加者及び自車両が互いに離れるように移動することを決定することが可能である。この場合、関連のないより下位の交通参加者であり得るとともに、例えば、例えば渋滞アシストのような走行アシストのオフはなされないことがあり得る。
【0026】
別の一例では、解析モジュールは、物体認識において識別されるより下位の交通参加者が実際にそのようなものであり、より下位の交通参加者及び自車両が互いへ向けて移動することを決定することが可能である。この場合、関連するより下位の交通参加者であり得るとともに、例えば、例えば渋滞アシストのような走行アシストのオフがなされることがあり得る。
【0027】
本開示の別の1つの独立した態様によれば、車両、特に原動機付き車両が提供されている。車両は、本開示の実施形態による走行アシストシステムを含んでいる。
【0028】
車両という用語は、人、製品などの輸送に用いられる乗用車、貨物自動車、バス、キャンピングカー、自動二輪車などを含んでいる。特に、当該用語は、人を輸送する原動機付き車両を含んでいる。
【0029】
走行アシストシステムは、自動化された走行のために構成されている。
【0030】
「自動化された走行」という用語(概念)は、本明細書においては、自動化された長手方向運転(長手方向ガイド)及び/又は横方向運転(横方向ガイド)による走行と理解される。自動化された走行は、例えば、高速道路における時間的に比較的長い走行又は駐車における時間的に限定された走行であり得る。「自動化された走行」という用語は、適宜の自動化度合いを有する自動化された走行を含む。例示的な自動化度合いは、(自動化度合いが順に大きくなるように)アシストされた走行、部分的に自動化された走行、条件付きの自動化された走行、高度に自動化された走行及び完全に自動化された走行である。上記5つの自動化度合いは、2021年4月30日付けの規格SAE J3016(SAE:Society of Automotive Engineering)のSAEレベル1~5に対応している。
【0031】
アシストされた走行(SAEレベル1)では、システムは、所定の走行状況において長手方向運転又は横方向運転を実行する。部分的に自動化された走行(SAEレベル2)では、システムが所定の走行状況において長手方向運転及び横方向運転を担い、運転者は、アシストされた走行のようにシステムを継続的に監視する必要がある。条件付きの自動化された走行(SAEレベル3)では、運転者がシステムを継続的に監視する必要なく、システムが所定の走行状況において長手方向運転及び横方向運転を担うが、運転者は、ある程度の時間、システムによる要求に応じて車両運転を担うことができるようになっている必要がある。高度に自動化された走行(SAEレベル4)では、運転者が介入の要求に応じて応答しなくともシステムが所定の走行状況において車両運転を担うため、予備レベルとしての運転者が省略される。完全に自動化された走行(SAEレベル5)では、人間の運転者によっても対応されるあらゆる道路条件下及び周囲条件下において動的な走行タスクの全ての態様がシステムによって実行されることが可能である。
【0032】
さらに、本明細書における「少なくとも部分的に自動化された走行あるいは操縦」という用語は、部分的に自動化された走行、条件付きの自動化された走行、高度に自動化された走行、完全に自動化された走行と理解される。したがって、換言すれば、「少なくとも部分的に自動化された走行」は、SAEレベル2以上の自動化度合いと理解される。
【0033】
好ましくは、走行アシストシステムは、SAEレベル2による自動化された走行に対して構成されている。走行アシストシステムは、例えば、渋滞アシストであり得るか、又は渋滞アシストを実装することが可能である。
【0034】
本開示の別の1つの独立した態様によれば、車両用、特に原動機付き車両用の走行アシスト方法が提供されている。走行アシスト方法は、車両の周囲センサの周囲データに基づき車両周囲における物体認識を物体認識モジュールによって実行することと、物体認識モジュールによって行われる、より下位の交通参加者としての物体の分類の妥当性確認を解析モジュールによって実行することと、このとき、当該解析モジュールが、物体の少なくとも1つの移動特性に基づき妥当性確認を行うように構成されており、妥当性確認に基づき自動化された走行のための走行アシストを実行することとを含む。
【0035】
車両用の走行アシスト方法は、本明細書において説明される走行アシストシステムの態様を実装することが可能である。
【0036】
本開示の別の1つの独立した態様によれば、ソフトウェア(SW)プログラムが提供されている。ソフトウェア(SW)プログラムは、1つ又は複数のプロセッサにおいて実行されるように、及びこれにより本明細書で説明される車両用の走行アシスト方法を実行するように構成されることが可能である。
【0037】
本開示の別の1つの独立した態様によれば、記憶媒体が提供されている。記憶媒体は、1つ又は複数のプロセッサにおいて実行されるように、及びこれにより本明細書で説明される車両用の走行アシスト方法を実行するように構成されたソフトウェア(SW)プログラムを含むことが可能である。
【0038】
本開示の別の1つの独立した態様によれば、プログラムコードを有するソフトウェアが提供されている。ソフトウェアは、当該ソフトウェアが1つ又は複数のソフトウェア制御される装置において作動するときに車両用の走行アシスト方法を実行するように構成されている。
【0039】
本開示の別の1つの独立した態様によれば、車両用の走行アシストシステムが提供されている。走行アシストシステムは、1つ又は複数のプロセッサと、当該1つ又は複数のプロセッサに接続されて、本明細書で説明される車両用の走行アシスト方法を実行するために1つ又は複数のプロセッサによって実行され得る指示を受け取る少なくとも1つのメモリとを含んでいる。
【0040】
プロセッサあるいはプロセッサモジュールは、プログラム可能な演算ユニット、すなわち、伝達されるコマンドに従い他の要素を制御し、その際アルゴリズム(プロセス)を進行させる機械又は電子回路である。
【0041】
開示の実施例は、図面に図示されているとともに、以下において詳細に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0042】
図1】本開示の実施形態による自動化された走行のための走行アシストシステムを有する車両を概略的に示す図である。
図2】本開示の実施形態による車両用の走行アシストシステムを概略的に示す図である。
図3A】本開示の実施形態による車両及び物体を概略的に示す図である。
図3B】本開示の別の実施形態による車両及び物体を概略的に示す図である。
図4】本開示の実施形態による走行アシスト方法のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0043】
以下では、特に言及しない限り、同一及び同様に作用する要素には同一の符号が用いられる。
【0044】
図1には、本開示の実施形態による自動化された走行のための走行アシストシステム100を有する車両10が概略的に示されている。
【0045】
自動化された走行時には、車両10の長手方向運転(長手方向ガイド)及び/又は横方向運転(横方向ガイド)が自動的に行われる。したがって、走行アシストシステム100は、車両運転(車両ガイド)を引き受ける。このために、走行アシストシステム100は、駆動部20と、トランスミッション22と、(例えば油圧式の)フットブレーキ24と、操舵部26とを不図示の中間ユニットを介して制御する。
【0046】
自動化された走行の計画及び実行のために、車両周囲を監視する周囲センサの周囲情報が走行アシストシステム100によって受け取られる。特に、車両は、車両周囲を表す周囲データを受け取るように構成された少なくとも1つの周囲センサ12を含むことが可能である。当該少なくとも1つの周囲センサ12は、例えば、1つ若しくは複数のライダ(LiDAR)システム、1つ若しくは複数のレーダシステム、1つ若しくは複数の超音波センサ及び/又は1つ若しくは複数のカメラを含むことができる。
【0047】
好ましくは、走行アシストシステム100は、SAEレベル2による自動化された走行に対して構成されている。走行アシストシステム100は、例えば、渋滞アシストであり得るか、又は渋滞アシストを実装することが可能である。
【0048】
図2には、本開示の実施形態による走行アシストシステム200が概略的に示されている。走行アシストシステム200は、図1に関して説明した走行アシストシステムであってよい。
【0049】
走行アシストシステム200は、車両の周囲センサ210の周囲データに基づき車両周囲における物体認識を実行するように構成された物体認識モジュール220と、物体認識モジュール220によって行われる、より下位の交通参加者としての物体の分類の妥当性確認を行うように構成された解析モジュール230であって、当該解析モジュール230は、物体の少なくとも1つの移動特性(運動特性)に基づき妥当性確認を行うように構成されている解析モジュール230と、妥当性確認に基づき自動化された走行のための走行アシストを実行するように構成された走行アシストモジュール240とを含んでいる。
【0050】
物体認識モジュール220及び/又は解析モジュール230及び/又は走行アシストモジュール240は、共通のソフトウェアモジュール及び/又はハードウェアモジュールにおいて実現されることが可能である。これに代えて、物体認識モジュール220及び/又は解析モジュール230及び/又は走行アシストモジュール240は、それぞれ別々のソフトウェアモジュール及び/又はハードウェアモジュールにおいて実現されることが可能である。
【0051】
より下位の交通参加者は、例えば、歩行者、自転車運転者、車いす利用者又は電動スクータであり得る。特に、より下位の交通参加者は、交通弱者(Vulnerable Road User(VRU))であり得る。
【0052】
走行アシストシステム200は、周囲センサ210の周囲データに基づき物体の少なくとも1つの移動特性を認識するように構成されることが可能である。走行アシストシステム200は、少なくとも1つの移動特性に基づき、例えば物体の移動パターン(運動パターン)を決定し、妥当性確認に用いることが可能である。移動パターンは、例えば移動経路(運動経路)あるいは移動軌道(運動軌道)及び物体の速度を含むことができるが、これに限定されるものではない。
【0053】
好ましくは、少なくとも1つの移動特性は、車両に対する物体の相対位置を含む。
【0054】
これに補足して、又はこれに代えて、少なくとも1つの移動特性は、時間にわたる、特に周囲センサ210の複数フレームにわたる物体の移動経路あるいは移動軌道を含む。例えば、物体の移動経路は、典型的には自動二輪車運転者についてのものであり得るため(例えば原動機付き車両を追い越すための交通における蛇行ライン)、物体認識において識別されるより下位の交通参加者がそのようなものではないことを推測することが可能である。
【0055】
これに補足して、又はこれに代えて、少なくとも1つの移動特性は、物体の速度を含む。例えば、物体は、閾値以上の速度で移動することがあり得るため、物体認識において識別されるより下位の交通参加者がそのようなものではないことを推測することが可能である。閾値は、例えば30km/h以上、35km/h以上、40km/h以上、45km/h以上又は50km/h以上であり得る。
【0056】
これに補足して、又はこれに代えて、少なくとも1つの移動特性は、物体の絶対位置を含む。例えば、物体は、自動二輪車の経路にも配置され得るため、物体認識において識別される自動二輪車運転者が実際にはそのようなものではないことを妥当性チェックすることが可能である。
【0057】
いくつかの実施形態では、解析モジュール230は、少なくとも1つの移動特性がより下位の交通参加者の特徴的な移動態様と異なっている場合に、物体識別モジュール220によって行われる、より下位の交通参加者としての物体の分類を破棄するように、及び少なくとも1つの移動特性がより下位の交通参加者の特徴的な移動態様に対応する場合に、物体認識モジュール220によって行われる、より下位の交通参加者としての物体の分類を確認するように構成されることが可能である。特徴的な移動態様は、例えば、移動経路及び/又は速度に関し得る。
【0058】
いくつかの実施形態では、走行アシストモジュール240は、物体認識モジュール220によって行われる、より下位の交通参加者としての物体の分類が解析モジュール230によって確認される場合に、自動化された走行のための走行アシストを非作動とし、又は例えばユーザによる作動について阻止するように、及び物体認識モジュール220によって行われる、より下位の交通参加者としての物体の分類が解析モジュール230によって破棄される場合に、自動化された走行のための走行アシストを作動させ、又は例えばユーザによる作動を許容するように、構成されることが可能である。
【0059】
好ましくは、さらに、解析モジュール230は、物体認識において認識されたより下位の交通参加者が車両の走行態様に関連するより下位の交通参加者として妥当性確認される場合に、より下位の交通参加者が車両の走行態様に関連するより下位の交通参加者であるかどうかを妥当性確認において決定するように構成されている。特に、車両の走行態様(例えば走行軌道及び速度)及び物体の移動態様(例えば移動軌道及び速度)に基づき衝突のおそれが存在するような物体が関連するものとみなされる。
【0060】
一例では、解析モジュール230は、物体認識において識別されるより下位の交通参加者が実際にそのようなものであり、より下位の交通参加者及び自車両が互いに離れるように移動することを決定することが可能である。この場合、関連のないより下位の交通参加者であり得るとともに、例えば、例えば渋滞アシストのような走行アシストのオフはなされないことがあり得る。
【0061】
別の一例では、解析モジュール230は、物体認識において識別されるより下位の交通参加者が実際にそのようなものであり、より下位の交通参加者及び自車両が互いへ向けて移動することを決定することが可能である。この場合、関連するより下位の交通参加者であり得るとともに、例えば、例えば渋滞アシストのような走行アシストのオフがなされることがあり得る。
【0062】
図3Aには、本開示の実施形態による車両10及び物体30Aが概略的に示されている。
【0063】
いくつかの実施形態では、走行アシストシステムは、物体30Aの物体速度OBG1が閾値以上であり、物体30Aが車両10へ向けて走行している場合に、物体認識において行われる、より下位の交通参加者としての物体30Aの分類を破棄するように構成されることが可能である。閾値は、例えば30km/h以上、35km/h以上、40km/h以上、45km/h以上又は50km/h以上であり得る。
【0064】
例えば、図3Aにおいて示された後方から高速で近づく自動二輪車のように、物体30Aは、閾値以上の速度OBG1で車両10へむけて移動し得る。したがって、物体認識において識別されるより下位の交通参加者はこのようなものでないと推測することが可能である。この場合、例えば渋滞アシストのような走行アシストのオフはなされないことがあり得る。
【0065】
図3Bには、本開示の別の実施形態による車両10及び物体30Bが概略的に示されている。
【0066】
いくつかの実施形態では、走行アシストシステムは、物体30Bの物体速度OBG2が閾値以下である場合に、物体認識において行われる、より下位の交通参加者としての物体30Bの分類を確認するように構成されることが可能である。閾値は、例えば30km/h以下、35km/h以下又は40km/h以下であり得る。
【0067】
例えば、図3Bにおいて示された自動二輪車のように、物体30Bは、閾値以下の速度OBG2で車両10の前方に存在し得る。したがって、物体認識において識別されるより下位の交通参加者は実際にこのようなものであると推測することが可能である。この場合、例えば渋滞アシストのような走行アシストのオフ及び運転者への車両運転の引継ぎがなされ得る。
【0068】
図4には、本開示の実施形態による走行アシスト方法400のフローチャートが示されている。走行アシスト方法400は、1つ又は複数のプロセッサ(例えばCPU)によって実行可能な対応するソフトウェアによって実装されることが可能である。
【0069】
走行アシスト方法400は、ブロック410における、車両の周囲センサの周囲データに基づき車両周囲における物体認識を物体認識モジュールによって実行することと、ブロック420における、物体認識モジュールによって行われる、より下位の交通参加者としての物体の分類の妥当性確認を解析モジュールによって実行することと、このとき、当該解析モジュールが、物体の少なくとも1つの移動特性に基づき妥当性確認を行うように構成されており、ブロック430における、妥当性確認に基づき自動化された走行のための走行アシストを実行することとを含む。
【0070】
本発明によれば、物体認識につづいて、より下位の交通参加者の妥当性チェックのためのフィルタアルゴリズムが提供されている。このとき、まず、物体認識において、例えば自転車運転者又は歩行者のようなより下位の交通参加者が認識される。そして、当該認識は、物体認識において識別されるより下位の交通参加者の移動パターンに基づいて妥当性確認あるいは妥当性チェックがなされる。妥当性確認あるいは妥当性チェックにおいて、より下位の交通参加者についての移動パターンが典型的でないことが認識されると、物体認識に誤りがあったと推測(仮定)される。例えば、物体認識において識別される自転車運転者が高速(例えば45km/h)で後方から自車両に接近し得るため、当該物体は自転車運転者ではなく自動二輪車であると推測することが可能である。この場合、例えば渋滞アシストの非作動は行われなくてよい。結果として、交通参加者、特により下位の交通参加者の信頼性のある認識を行うことが可能である。
【0071】
本発明を好ましい実施例によって詳細に図示及び説明したが、本発明は、開示された例に限定されず、本発明の保護範囲を逸脱することなく、当業者により他の変形例が導出されることが可能である。したがって、多数の変形例の可能性が存在することが明らかである。同様に、例示的に挙げた実施形態は単なる例であることが明確であり、当該例は、いかなる態様でも例えば本発明の保護範囲、用途又は構成を制限するものとして理解されるべきではない。むしろ、上述の説明及び図面の説明(図面による説明)により、当業者は、例示的な実施形態を具体的に実行することができ、当業者は、開示された本発明の思想を知ったうえで、特許請求の範囲及び明細書における更なる説明のようなその法的な対応物で規定される保護範囲を逸脱することなく、例えば例示的な実施形態で挙げた個々の要素の機能又は配置に関する様々な変更を行うことが可能である。
図1
図2
図3A
図3B
図4
【外国語明細書】