(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024178912
(43)【公開日】2024-12-25
(54)【発明の名称】エレベータ装置の制御盤
(51)【国際特許分類】
B66B 1/34 20060101AFI20241218BHJP
【FI】
B66B1/34 C
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024080886
(22)【出願日】2024-05-17
(62)【分割の表示】P 2023097136の分割
【原出願日】2023-06-13
(71)【出願人】
【識別番号】390025265
【氏名又は名称】東芝エレベータ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100211502
【弁理士】
【氏名又は名称】富田 祥弘
(72)【発明者】
【氏名】鹿島 将
【テーマコード(参考)】
3F502
【Fターム(参考)】
3F502HB15
3F502NA02
3F502NA03
(57)【要約】
【課題】
カバーの開閉にスライド構造を適用することで、カバーと乗りかごとの接触を防止できるエレベータ装置の制御盤を提供する。
【解決手段】
乗りかごが昇降する昇降路内に配置され、開口部と、前記乗りかごが昇降する昇降方向に沿って延在する溝部と、を有している制御盤本体と、前記開口部が開いている開位置から閉じられる閉位置まで前記溝部内をスライド可能なカバーと、を備え、前記カバーは、前記開位置から前記閉位置までの範囲をスライドして前記開口部を開閉する、エレベータ装置の制御盤。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
乗りかごが昇降する昇降路内の壁面に配置され、開口部と、前記乗りかごが昇降する昇降方向に沿って延在する溝部と、を有している制御盤本体と、
前記開口部が開いている開位置から閉じられる閉位置まで前記溝部内をスライド可能なカバーと、を備え、
前記溝部は、前記制御盤本体に設けられ開口が互いに対向するガイド部により構成され、
前記カバーは、前記溝部に案内されて前記開位置から前記閉位置までの範囲をスライドして前記開口部を開閉する、
エレベータ装置の制御盤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、エレベータ装置の制御盤に関する。
【背景技術】
【0002】
機械室を必要としないエレベータ装置において、制御盤は、昇降路内に配置されている。制御盤を点検する場合、保守員は、乗りかごの上で作業を行う。このとき、保守員は、制御盤本体からカバーを取外し、取外したカバーを乗りかご又はホールに置く。この場合、保守員がカバーの取外し及び取付けを行うため、手を滑らせてカバーを落下させてしまうことがある。
また、カバーを乗りかご側に開く構造を有する制御盤が知られている。上記の構造では、カバーの閉じ忘れにより、カバーと乗りかごとの接触が生じる場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第5944008号公報
【特許文献2】特許第5572131号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本実施形態は、カバーの開閉にスライド構造を適用することで、カバーと乗りかごとの接触を防止できるエレベータ装置の制御盤を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
一実施形態に係るエレベータ装置の制御盤は、乗りかごが昇降する昇降路内の壁面に配置され、開口部と、前記乗りかごが昇降する昇降方向に沿って延在する溝部と、を有している制御盤本体と、前記開口部が開いている開位置から閉じられる閉位置まで前記溝部内をスライド可能なカバーと、を備え、前記溝部は、前記制御盤本体に設けられ開口が互いに対向するガイド部により構成され、前記カバーは、前記溝部に案内されて前記開位置から前記閉位置までの範囲をスライドして前記開口部を開閉する。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】
図1は、第1実施形態に係るエレベータ装置の構成を示す概略図である。
【
図2】
図2は、第1実施形態に係る制御盤の正面図である。
【
図7】
図7は、係合部と被係合部との係合を解除した状態を示す平面図である。
【
図8】
図8は、
図3の状態からカバーを上方に移動させた状態の一例を示す斜視図である。
【
図9】
図9は、
図8の状態からカバーを上方に移動させた状態の一例を示す斜視図である。
【
図10】
図10は、
図4の状態からカバーを下方に移動させた状態の一例を示す斜視図である。
【
図11】
図11は、第2実施形態に係るエレベータ装置の制御盤を拡大して示す斜視図である。
【
図12】
図12は、第3実施形態に係るエレベータ装置の制御盤を拡大して示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下に、本発明の各実施の形態について、図面を参照しつつ説明する。なお、開示はあくまで一例にすぎず、当業者において、発明の趣旨を保っての適宣変更について容易に想到し得るものについては、当然に本発明の範囲に含有されるものである。また、図面や説明をより明確にするため、実際の様態に比べ、各部の幅、厚さ、形状等について模式的に表される場合があるが、あくまで一例であって、本発明の解釈を限定するものではない。また、本明細書と各図において、既出の図に関して前述したものと同様の要素には、同一の符号を付して、詳細な説明を適宣省略することがある。
以下、図面を参照しながら一実施形態に係るエレベータ装置の制御盤について詳細に説明する。
【0008】
図1は、第1実施形態に係るエレベータ装置10の構成を示す概略図である。なお、
図1では、作業員(保守員)が制御盤14の点検をしている状態を示している。
図1に示すように、エレベータ装置10は、壁部12と、乗りかご13と、制御盤14と、扉15と、を備えている。壁部12は、昇降方向Yに沿って延在し、昇降路11を規定する。
乗りかご13は、上部13aを有する箱状に形成され、乗客を乗せて昇降路11内を昇降する。なお、乗りかご13の上部13aは、制御盤14の故障時や保守点検時に保守員の足場として利用される。
【0009】
制御盤14は、昇降路11内に配置され、壁部12に固定された支持部材16に支持されている。制御盤14は、昇降方向Yにおいて、乗りかご13と対向していない。言い換えると、制御盤14は、昇降方向Yに直交する方向において、乗りかご13から離間している。また、制御盤14は、扉15に対向し、制御盤本体17とカバー18とを備えている。制御盤本体17は、乗りかご13の移動など、エレベータ装置10の各種の機器の動作を制御するための電子機器や電子・電気回路などを内部に収容している。
扉15は、乗客が乗りかご13とフロア(ホール)19とを行き来するため扉であり、乗客が乗りかご13からフロア19に降りる場合、又はフロア19から乗りかご13に乗る場合に開く。
【0010】
エレベータ装置10は、壁部12、乗りかご13、制御盤14、及び扉15の他に、図示しない巻上機や巻上機のロープに巻き付けられた釣合い錘などの乗りかご13を昇降させるための種々の機器を備えている。
保守や点検を行う場合、作業員は、上部13aの位置がフロア19とほぼ同一になるように乗りかご13を移動させ、扉15を開いてから上部13aに乗る。その後、作業員は、制御盤14のカバー18を開いてから制御盤本体17内に収容された電子機器などの保守や点検を行う。
【0011】
次に、制御盤14の構成について、
図2乃至
図6を参照して説明する。
図2は、第1実施形態に係る制御盤14の正面図である。
図3は、
図2のA部を拡大して示す斜視図である。
図4は、
図2のB部を拡大して示す斜視図である。
図5は、
図3の線分C-Cに沿った断面図である。
図6は、
図3のD部を拡大して示す斜視図である。
図2乃至
図6に示すように、制御盤14は、正面に開口部28を有する箱型状の制御盤本体17と、複数枚のカバー18a,18b,18c,18dで構成されたカバー18と、複数のストッパST1,ST2,ST3,ST4,ST5,ST6と、を備えている。
図2乃至
図6で示される例において、カバー18は開口部28を塞いでおり、全てのカバー18a,18b,18c,18dが開口部28を閉じる閉位置に位置している。
【0012】
制御盤本体17は、一対の側壁20と、複数の被係合部22と、を有している。一対の側壁20は、昇降方向Yに延在して矩形状に形成され、隙間を置いて対向している。側壁20は、正面側の一端に左右方向Xに延在して形成されたガイド部21を有している(
図5参照)。
複数の被係合部22は、一対の側壁20に設けられ、昇降方向Yに並んで位置している。また、複数の被係合部22は、左右方向Xに重ねて設けられている(
図5参照)。各々の被係合部22は、略L字形状に形成され、側壁20又は被係合部22に固定される固定部24と、固定部24から左右方向Xに延出して形成されたガイド部26と、を有している。
【0013】
図5に示す例において、一方の被係合部22の固定部24が側壁20に固定され、他方の被係合部22の固定部24が一方の被係合部22の固定部24に固定されている。また、一方の被係合部22のガイド部26は、側壁20のガイド部21に隙間を置いて対向し、他方の被係合部22のガイド部26は、一方の被係合部22のガイド部26に隙間を置いて対向している。
上記のように被係合部22が構成されているため、制御盤本体17は、ガイド部21及びガイド部26の間、及び一方のガイド部26と他方のガイド部26との間に溝部29を有している。ガイド部26には、左右方向Xに窪めて形成された複数の窪みDEが形成されている。一例において、窪みDEは、昇降方向Yに並んで位置している。
【0014】
複数のカバー18a,18b,18c,18dは、板状部材30a,30b,30c,30dと、係合部32a,32b,32c,32dと、取手34と、をそれぞれ有している。板状部材30a,30b,30c,30dは、溝部29内に収容され、昇降方向Yに延在して矩形状に形成されている。板状部材30a,30b,30c,30dは、一対の側壁20間の距離とほぼ同じ大きさの幅を有している。
【0015】
図5に示す例において、板状部材30aは、被係合部22のガイド部26で規定された溝部29内に収容され、板状部材30bは、側壁20のガイド部21と被係合部22のガイド部26とで規定された溝部29内に収容されている。
同様に、板状部材30cは、側壁20のガイド部21と被係合部22のガイド部26とで規定された溝部29内に収容され、板状部材30dは、被係合部22のガイド部26で規定された溝部29内に収容されている。
板状部材30a,30b,30c,30dが上記のように構成されているため、板状部材30a,30b,30c,30dは、溝部29の内部を移動(スライド)可能であり、カバー18a,18b,18c,18dは、昇降方向Y(以下、「スライド方向」とも称する)に移動可能である。
【0016】
複数の係合部32a,32b,32c,32dは、それぞれ同一の構成を有している。そのため、係合部32aを例として、係合部32a,32b,32c,32dの構成について説明する。
図6に示す例において、係合部32aは、一対の係合突起38と、複数のガイドピン40と、一対の留め具42と、一対の付勢部材44と、を有している。一対の係合突起38は、左右方向Xに隙間を置いて位置している。各々の係合突起38は、略L字形状に形成され、板状部材30aに接触しているスライド部46と、スライド部46から垂直に延出して形成された取付け部48と、左右方向Xに延びる長孔Hと、を有している。長孔Hは、スライド部46を貫通して形成され、左右方向Xに並んで位置している。
【0017】
ガイドピン40は、長孔Hに挿通され、板状部材30aに固定されている。一例において、ガイドピン40は、1つの係合突起38に対して2つ設けられている。留め具42は、2つのガイドピン40の間に位置し、長孔Hに挿通され、板状部材30aに固定されている。
付勢部材44は、一対の係合突起38の各々に設けられ、取付け部48に固定された一端と、留め具42に固定された他端と、を有している。付勢部材44は、コイルばねであり、スライド部46が窪みDEに収容されている状態で自然長又は自然長より伸びた状態である。つまり、
図6に示す付勢部材44は、一方(右側)の係合突起38を一方(右側)の窪みDEに付勢し、他方(左側)の係合突起38を他方(左側)の窪みDEに付勢している。
【0018】
係合部32aが上記のように構成されているため、一対の係合突起38は、板状部材30aに対して長孔Hに沿って左右方向Xに移動可能である。
図6に示す例では、係合部32aは、被係合部22に係合している状態であり、係合突起38(スライド部46)の端部が窪みDEに収容されている。このとき、スライド方向Yにおいて、スライド部46の側面は、窪みDEの内面に対向し、板状部材30aの移動は、制限されている。つまり、係合部32aが被係合部22に係合している場合、カバー18のスライド方向Yにおける移動は、制限される。
【0019】
複数の取手34は、それぞれ、係合部32a,32b,32c,32dの下方に位置している。取手34は、左右方向Xに延出して形成された把持部341と、把持部341の両端から板状部材30a,30b,30c,30dに延出して形成された固定部342と、を有している。固定部342は、板状部材30a,30b,30c,30dに固定されている。
【0020】
複数のストッパST1,ST2,ST3は、一対の側壁20に設けられている。ストッパST1は、板状に形成され、側壁20(より詳細にはガイド部21)に固定されている。ストッパST1は、スライド方向Yにおいてカバー18a(板状部材30a)よりも下方に位置し、板状部材30aと対向する対向部O1を有している。
ストッパST2は、スライド方向Yにおいてカバー18bよりも下方に位置し、略L字形状に形成されている。ストッパST2は、側壁20に固定された固定部F2と、スライド方向Yにおいて板状部材30bと対向する対向部O2と、を有している。
ストッパST3は、ストッパST6よりも下方に位置し、略L字形状に形成されている。ストッパST3は、側壁20に固定された固定部F3と、スライド方向YにおいてストッパST6と対向する対向部O3と、を有している。
【0021】
複数のストッパST4,ST5,ST6は、板状部材30a,30c,30dに設けられている。ストッパST4は、スライド方向Yにおいて板状部材30bよりも下方に位置している。ストッパST4は、板状部材30aに固定された固定部F4と、板状部材30bと対向する対向部O4と、対向部O4から上方に延出して形成された延出部Pと、を有している。
ストッパST5は、スライド方向Yにおいて板状部材30dよりも上方に位置し、略L字形状に形成されている。ストッパST5は、板状部材30cに固定された固定部F5と、スライド方向Yにおいて板状部材30dと対向する対向部O5と、を有している。
ストッパST6は、ストッパST3よりも上方に位置し、略L字形状に形成されている。ストッパST6は、板状部材30dに固定された固定部F6と、ストッパST3と対向する対向部O6と、を有している。
第1実施形態に係る制御盤14は、上記のように構成されている。
【0022】
次に、カバー18の動作について説明する。
まず、カバー18a,18bを開く場合について、
図3、
図7、
図8、
図9を参照して説明する。
図7は、係合部32bと被係合部22との係合を解除した状態を示す平面図である。
図8は、
図3の状態からカバー18bを上方に移動させた状態の一例を示す斜視図である。
図9は、
図8の状態からカバー18aを上方に移動させた状態の一例を示す斜視図である。
【0023】
図3に示すように、カバー18a,18bは、閉位置に位置している。板状部材30aは、ストッパST1の対向部O1に接触し、板状部材30bは、ストッパST2の対向部O2に接触している。つまり、カバー18a及びカバー18bは、ストッパST1,ST2により下方への移動が制限されている。
図3の状態からカバー18a,18bを上方へ移動させるためには、係合部32a,32bの被係合部22への係合を解除する必要がある。以下、係合部32a,32b,32c,32dの被係合部22への係合を解除する方法について、係合部32bを例に説明する。
【0024】
図7に示すように、係合部32bの被係合部22への係合を解除する場合、一対の係合突起38を左右方向Xに移動させて、スライド部46を窪みDEから引き抜く。より詳細には、作業員が取付け部48を指で摘まみ、一対の係合突起38の間の隙間を縮めるように、係合突起38を移動させる。係合部32bの被係合部22への係合が解除されると、スライド部46と窪みDEとがスライド方向Yにおいて対向しない。そのため、作業員は、係合部32bの係合が解除された状態を保ちながら(取付け部48を摘まみながら)、カバー18bを上方に移動させることができる。
【0025】
図8に示すように、カバー18bは、任意の位置まで上方に移動された後、係合部32bの被係合部22への係合により、任意の位置に保持されている。つまり、作業員は、保守や点検に必要な開口部28の開口が得られる位置までカバー18bを上方に移動させ、このときの係合突起38よりも高い位置にある窪みDEに係合突起38を収容している。また、作業員は、取付け部48を摘まんでいる手と反対の手で取手34の把持部341を把持し、カバー18bの高さを維持した状態で取付け部48から手を離すことで、安全に係合部32bを被係合部22に係合することができる。係合部32dを被係合部22に係合することで、カバー18bを任意の位置(高さ)に維持することができ、作業員は、電子機器の保守や点検を行うことができる。
【0026】
図9に示すように、カバー18aは、任意の位置まで上方に移動された後、係合部32aの被係合部22への係合により、任意の位置に保持されている。カバー18aを上方へ移動させる際、板状部材30aが収容されている溝部29と板状部材30bが収容されている溝部29とが異なるため、板状部材30aが板状部材30bに接触することはない(
図5参照)。
作業員は、係合部32aを被係合部22に係合した後、電子機器の保守や点検を行うことができる。
【0027】
ここで、
図9の状態から、付勢部材44の劣化や破損などにより、係合部32a,32bの被係合部22への係合が意図せず解除された場合について説明する。
係合部32bの被係合部22への係合が解除された場合、カバー18bは、下方に落下するが、板状部材30bがストッパST2及びストッパST4に衝突し、ストッパST2及びストッパST4に支持される。なお、カバー18aの位置が
図9に示す位置よりも上方に位置している場合、カバー18bは、ストッパST4のみに支持される。一方、カバー18aが
図9に示す位置よりも下方に位置している場合、カバー18bは、ストッパST2のみに支持される。
係合部32aの被係合部22への係合が解除された場合、カバー18aは、下方に落下するが、板状部材30aがストッパST1に衝突し、ストッパST1に支持される。
【0028】
次に、カバー18c,18dを開く場合について、
図4及び
図10を参照して説明する。
図10は、
図4の状態からカバー18c,18dを下方に移動させた状態の一例を示す斜視図である。
図4に示すように、カバー18c,18dは、閉位置に位置している。このとき、ストッパST5は、板状部材30dから離間し、ストッパST6は、ストッパST3から離間している。係合部32cの係合突起38は、対応する被係合部22のうち最も上方に位置する窪みDEに収容されている。
図4の状態から、カバー18dを下方に移動させ、係合部32dを被係合部22に係合した後、カバー18cを下方に移動させ、係合部32cを被係合部22に係合することで
図10の状態になる。
【0029】
図10に示すように、カバー18c,18dは、任意の位置まで移動された後、係合部32c,32dの被係合部22への係合により、任意の位置に保持されている。一例において、係合突起38が対応する被係合部22のうち最も下方に位置する窪みDEに収容され、カバー18c,18dは、開口部28を完全に開いている開位置に位置している。このとき、ストッパST5の対向部O5が板状部材30dに接触し、ストッパST6の対向部O6がストッパST3の対向部O3に接触している。
【0030】
ここで、
図4の状態から、付勢部材44の劣化や破損などにより、係合部32c,32dの被係合部22への係合が意図せず解除された場合について説明する。
係合部32cの被係合部22への係合が解除された場合、カバー18cは、下方に落下するが、ストッパST5の対向部O5が板状部材30dに衝突し、板状部材30dに支持される。
係合部32dの被係合部22への係合が解除された場合、カバー18dは、下方に落下するが、ストッパST6の対向部O6がストッパST3の対向部O3に衝突し、ストッパST3に支持される。
【0031】
まとめると、カバー18a,18b,18c,18dは、係合部32a,32b,32c,32dを被係合部22に係合することで、任意の位置(高さ)に維持することができる。
さらに、カバー18aはストッパST1により下限位置が規定され、カバー18bはストッパST2,ST4により下限位置が規定され、カバー18cはストッパST5により下限位置が規定され、カバー18dはストッパST3,ST6により下限位置が規定されている。
【0032】
つまり、カバー18a,18b,18c,18dは、開位置から閉位置までの範囲を超えないように、ストッパST1,ST2,ST3,ST4,ST5,ST6により移動が制限されている。
上記のことから、制御盤14は、制御盤本体17からカバー18を外すことなく開口部28が開かれた状態を維持し、且つ、ストッパST1,ST2,ST3,ST4,ST5,ST6により板状部材30a,30b,30c,30dが溝部29内に収容された状態を維持可能な非着脱式のカバー構造を有している。
【0033】
第1実施形態の効果について説明する。
第1実施形態に係るエレベータ装置10の制御盤14によれば、制御盤14は、カバー18a,18b,18c,18dを閉位置から開位置まで移動(スライド)して開口部28を開閉できる。カバー18が移動する範囲が乗りかご13が移動する範囲と異なるため、カバー18が乗りかご13などの機器に接触することを防止できる。例えば、カバー18を閉め忘れた場合であっても、カバー18は、乗りかご13に接触しない。
【0034】
制御盤14は、ストッパST1,ST1,ST2,ST3,ST4,ST5,ST6を備えている。そのため、カバー18が開位置から閉位置までの範囲を超えることを防止することができる。
また、ストッパST1,ST1,ST2,ST3,ST4,ST5,ST6は、カバー18a,18b,18c,18dが移動可能な範囲の下限位置を規定している。そのため、カバー18が落下することを防止できる。
【0035】
カバー18a,18b,18c,18dは、係合部32a,32b,32c,32dを有している。制御盤本体17は、被係合部22を有している。係合部32a,32b,32c,32dを被係合部22に係合すると、カバー18a,18b,18c,18dのスライド方向Yにおける移動は、制限される。そのため、カバー18を制御盤本体17から取外すことなく開口部28を開いた状態を維持することができる。
【0036】
係合部32a,32b,32c,32dは左右方向Xに移動可能な係合突起38を有し、被係合部22は左右方向Xに窪めて形成された窪みDEを有している。そのため、ボルトなどの締結部材を使用しないでカバー18a,18b,18c,18dを任意の位置に維持できる。
さらに、係合部32a,32b,32c,32dは、係合突起38を窪みDEに付勢する付勢部材44を有し、一対の係合突起38のそれぞれが窪みDEに向かって付勢されている。そのため、作業員は、片手で係合部32a,32b,32c,32dの被係合部22への係合を解除することができ、作業性を向上できる。
【0037】
第1実施形態において、制御盤14は、カバー18a,18bを上方に移動することで開く構造とカバー18c,18dを下方に移動することで開く構造との両方の構造を有しているが、両方の構造を有していなくともよい。
例えば、制御盤14がエレベータ装置10の天井付近に設置されている場合、天井とカバー18との接触を避けられるように、下方に移動させる構造のみを有してもよい。
【0038】
次に、第2実施形態に係るエレベータ装置10の制御盤14について説明する。以下に述べる第2実施形態及び第3実施形態において、前述した第1実施形態と同一の部分には、同一の符号を付してその詳細な説明を省略あるいは簡略化し、第1実施形態と異なる部分を中心に説明する。
(第2実施形態)
図11は、第2実施形態に係るエレベータ装置10の制御盤14を拡大して示す斜視図である。なお、
図11は、制御盤14のうち
図2のA部を示している。
【0039】
図11に示すように、係合部32aが一対の第1連結部材50をさらに有し、係合部32bが一対の第2連結部材52をさらに有している。一対の第1連結部材50は、スライド方向Yに沿って延出して柱状に形成され、一端が係合部32aにおけるスライド部46に固定されている。
一対の第2連結部材52は、スライド方向Yに沿って筒状に形成され、係合部32bにおけるスライド部46に固定されている。第2連結部材52は、スライド方向Yに沿って貫通して形成された貫通孔を有し、上記貫通孔には第1連結部材50が挿通されている。
【0040】
つまり、係合部32aは、第1連結部材50及び第2連結部材52を介して係合部32bに連結されている。そのため、係合部32aの被係合部22への係合を解除すると、係合部32bの被係合部22への係合も解除される。より具体的には、係合部32aの係合突起38に作用させた左右方向Xの力は、第1連結部材50の外周面から第2連結部材52の内周面に伝わり、係合部32bの係合突起38に作用し、係合部32bのスライド部46が溝部DEの外に移動する。
【0041】
図11に示す例において、カバー18bは、ストッパST2に支持されているため、係合部32bの被係合部22への係合が解除されても下方に移動しない。係合部32a及び係合部32bの被係合部22への係合が解除された状態でカバー18aを上方に移動させているとき、カバー18bは、ストッパST4が板状部材30bに接触するまで移動しない。ストッパST4が板状部材30bに接触すると、カバー18bは、カバー18aと連動して一体的に上方に移動する。任意の位置で係合部32aを被係合部22に係合すると、係合を解除したときと同様に力が伝わり、係合部32bが被係合部22に係合する。
【0042】
第2実施形態の効果について説明する。
第2実施形態に係るエレベータ装置10の制御盤14によれば、係合部32aが第1連結部材50を有し、係合部32bが第2連結部材52を有している。第1連結部材50及び第2連結部材52は、係合部32aと係合部32bとを連結する。そのため、一方の係合部32a,32bの被係合部22への係合を解除することで、他方の係合部32a,32bの被係合部22への係合を解除することができ、開口部28の開閉を容易に行える制御盤14を得ることができる。
【0043】
なお、第2実施形態では、複数のカバー18a,18b,18c,18dのうち、上方に開くカバー18a,18bの構造についてのみ説明したが、下方に開くカバー18c,18dの構造に対しても適用可能である。例えば、第1連結部材50を係合部32cのスライド部46に固定し、第2連結部材52を係合部32dのスライド部46に固定する構成とすることで適用可能である。
【0044】
次に、第3実施形態に係るエレベータ装置10の制御盤14について説明する。
(第3実施形態)
図12は、第3実施形態に係るエレベータ装置10の制御盤14を拡大して示す斜視図である。なお、
図12は、制御盤14のうち
図2のA部を示している。また、
図12では、第1係止部60が第2係止部64に係止している状態を拡大して示している。
【0045】
図12に示すように、係合部32a,32bは、一対の第1制限部材54と、一対の第2制限部材56と、を有している。第1制限部材54は、略L字形状に形成され、係合突起38の取付け部48に連結された連結部58と、左右方向Xに直交する向きに延出して形成された第1係止部60と、を有している。第1制限部材54は、連結部58を中心として回転可能に取付け部48に連結されている。
【0046】
一対の第2制限部材56は、左右方向Xに隙間を置いて位置している。第2制限部材56は、略L字形状に形成され、板状部材30a,30bに固定された固定部62と、左右方向X及びスライド方向Yに直交する向きに延出して形成された第2係止部64と、を有している。
一対の第2係止部64は、係合部32a,32bが被係合部22に係合している場合、一対の第1係止部60の左右方向Xにおける内側に位置し、係合部32a,32bの被係合部22への係合が解除されている場合、一対の第1係止部60の左右方向Xにおける外側に位置している。
【0047】
第3実施形態では、第1制限部材54及び第2制限部材56により、係合部32a,32bの被係合部22への係合が解除された状態を維持することができる。以下、係合が解除された状態を維持するための手順について、係合部32aを例に説明する。
まず、係合部32aの被係合部22への係合を解除し、第1係止部60が一対の第2係止部64の間に配置されるように第1制限部材54を回転させる。その後、係合突起38(取付け部48)から手を離すと、付勢部材44の付勢力により第1係止部60が第2係止部64に係止する。このとき、係合突起38の左右方向Xの移動が制限されているため、係合部32aの被係合部22への係合が解除された状態を維持できる。
【0048】
上述した方法で係合部32a及び係合部32bの被係合部22への係合が解除されている状態で、カバー18aを上方に移動させると、ストッパST4が板状部材30bに接触するまでカバー18aのみが移動し、ストッパST4が板状部材30bに接触すると、カバー18bがカバー18aと一体的に上方に移動する。任意の位置までカバー18a及びカバー18bを移動させた後、カバー18aの取手34を把持した状態で、第1係止部60の第2係止部64への係止が解除されるように、一対の第1制限部材54を回転させると、付勢部材44の付勢力により係合突起38が窪みDEに収容され、係合部32a,32bが被係合部22に係合する。
【0049】
第3実施形態の効果について説明する。
第3実施形態に係るエレベータ装置10の制御盤14によれば、係合部32a,32bは、第1係止部60を有する第1制限部材54と、第2係止部64を有する第2制限部材56と、有している。これにより、上記第2実施形態よりも簡単な構成で、複数のカバー18a,18bが一体的に移動可能な制御盤14を得ることができる。
なお、第3実施形態では、上方に開くカバー18a,18bの構造についてのみ説明したが、下方に開くカバー18c,18dの構造に対しても適用可能であり、係合部32c,32dが第1制限部材54及び第2制限部材56を有してもよい。
【0050】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。必要に応じて、複数の実施形態を組み合わせることも可能である。
【符号の説明】
【0051】
10…エレベータ装置、14…制御盤、17…制御盤本体、18,18a,18b,18c,18d…カバー、22…被係合部、28…開口部、29…溝部、30a,30b,30c,30d…板状部材、32a,32b,32c,32d…係合部、38…係合突起、44…付勢部材、DE…溝部、ST1,ST2,ST3,ST4,ST5,ST6…ストッパ、X…左右方向、Y…昇降方向。