IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ザ・ボーイング・カンパニーの特許一覧

特開2024-178920多層ナノ粒子コーティング繊維材料の製造方法及び製造装置
<>
  • 特開-多層ナノ粒子コーティング繊維材料の製造方法及び製造装置 図1
  • 特開-多層ナノ粒子コーティング繊維材料の製造方法及び製造装置 図2A-B
  • 特開-多層ナノ粒子コーティング繊維材料の製造方法及び製造装置 図2C-D
  • 特開-多層ナノ粒子コーティング繊維材料の製造方法及び製造装置 図3
  • 特開-多層ナノ粒子コーティング繊維材料の製造方法及び製造装置 図4
  • 特開-多層ナノ粒子コーティング繊維材料の製造方法及び製造装置 図5
  • 特開-多層ナノ粒子コーティング繊維材料の製造方法及び製造装置 図6
  • 特開-多層ナノ粒子コーティング繊維材料の製造方法及び製造装置 図7
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024178920
(43)【公開日】2024-12-25
(54)【発明の名称】多層ナノ粒子コーティング繊維材料の製造方法及び製造装置
(51)【国際特許分類】
   D01F 11/12 20060101AFI20241218BHJP
   D06M 11/74 20060101ALI20241218BHJP
【FI】
D01F11/12
D06M11/74
【審査請求】未請求
【請求項の数】24
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024090581
(22)【出願日】2024-06-04
(31)【優先権主張番号】18/333,866
(32)【優先日】2023-06-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】500520743
【氏名又は名称】ザ・ボーイング・カンパニー
【氏名又は名称原語表記】The Boeing Company
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】ツォチス, トーマス ケー.
【テーマコード(参考)】
4L031
4L038
【Fターム(参考)】
4L031AA27
4L031AB01
4L031AB31
4L031BA02
4L031CB00
4L031DA11
4L038AA28
4L038BA02
4L038BB02
4L038CA08
4L038DA10
(57)【要約】      (修正有)
【課題】レイヤー・バイ・レイヤー・ナノ粒子堆積システムを使用した多層ナノ粒子コーティング繊維材料の製造方法を提供する。
【解決手段】製造方法は、繊維基板を第1のタイプのナノ粒子でコーティングして、多層ナノ粒子コーティング繊維材料の第1のコーティング層を提供することを含む。製造方法はまた、第1のコーティング層を第2のタイプのナノ粒子でコーティングして、多層ナノ粒子コーティング繊維材料の第2のコーティング層を提供することを含む。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
レイヤー・バイ・レイヤーナノ粒子堆積システム(10)を使用して、多層ナノ粒子コーティング繊維材料(150)を製造するための製造方法(400)であって、
繊維基板(102)を第1のタイプのナノ粒子(114)でコーティングして、前記多層ナノ粒子コーティング繊維材料(150)の第1のコーティング層(116)を提供すること(410)、及び
前記第1のコーティング層(116)を第2のタイプのナノ粒子(134)でコーティングして、前記多層ナノ粒子コーティング繊維材料(150)の第2のコーティング層(136)を提供すること(420)
を含む製造方法(400)。
【請求項2】
前記第2のコーティング層(136)を第3のタイプのナノ粒子(164)でコーティングして、前記多層ナノ粒子コーティング繊維材料(150)の第3のコーティング層(166)を提供すること(420)
をさらに含む、請求項1に記載の製造方法(400)。
【請求項3】
前記第1のタイプのナノ粒子(114)及び前記第2のタイプのナノ粒子(134)の一方又は両方が、高温ナノ粒子を含む、請求項1に記載の製造方法(400)。
【請求項4】
(i)前記高温ナノ粒子がグラフェンナノ粒子を含み、(ii)前記繊維基板(102)が炭素繊維材料を含む、請求項3に記載の製造方法(400)。
【請求項5】
レイヤー・バイ・レイヤーナノ粒子堆積が、前記繊維基板(102)を含む繊維の表面上にナノ粒子を堆積させるように実施される、請求項1に記載の製造方法(400)。
【請求項6】
前記レイヤー・バイ・レイヤー堆積(10)が、周囲条件で又は周囲条件近傍で実施される、請求項1に記載の製造方法(400)。
【請求項7】
前記第1のコーティング層(116)を洗浄して、前記第1のコーティング層(116)の単層を形成すること、及び
前記第2のコーティング層(136)を洗浄して、前記第2のコーティング層(136)の単層を形成すること
をさらに含む、請求項1に記載の製造方法(400)。
【請求項8】
前記第1のコーティング層(116)及び前記第2のコーティング層(136)の各層が、約5ナノメートルと約1000ナノメートルの間の厚さを有する、請求項7に記載の製造方法(400)。
【請求項9】
前記第2のコーティング層(136)を第3のタイプのナノ粒子(164)でコーティングして、前記多層ナノ粒子コーティング繊維材料(150)の第3のコーティング層(166)を提供すること
をさらに含む、請求項1に記載の製造方法(400)。
【請求項10】
前記第3のタイプのナノ粒子(164)が、前記第1のタイプのナノ粒子(114)と同じタイプである、請求項9に記載の製造方法(400)。
【請求項11】
請求項1の製造方法(400)に従って製造された炭素繊維。
【請求項12】
繊維基板(102)の複数の繊維の各々の表面を処理して、前記表面にイオン電荷極性を付与すること(510)、
前記繊維基板(102)の前記複数の繊維の各々の前記表面を、前記繊維基板(102)の前記複数の繊維の各々の前記表面の前記イオン電荷極性と反対のイオン電荷極性を有するナノ粒子(114)でコーティングして、多層ナノ粒子コーティング繊維材料(150)の第1の層(116)を提供すること(520)、及び
前記第1の層(116)を、前記第1の層(116)の前記イオン電荷極性と反対のイオン電荷極性を有するナノ粒子(134)でコーティングして、前記多層ナノ粒子コーティング繊維材料(150)の第2の層(136)を提供すること(530)
を含む製造方法(500)。
【請求項13】
前記第1の層(116)を洗浄して、前記第1の層(116)の単層を形成すること、及び
前記第2の層(136)を洗浄して、前記第2の層(136)の単層を形成すること
をさらに含み、
前記第1の層(116)及び前記第2の層(136)の単層の各々が、約5ナノメートルと約1000ナノメートルの間の厚さを有する、請求項12に記載の製造方法(500)。
【請求項14】
前記繊維基板(102)の前記複数の繊維を広げて、ナノ粒子でコーティングできる表面積を最大にすること
をさらに含む、請求項12に記載の製造方法(500)。
【請求項15】
前記第1の層(116)及び前記第2の層(136)の各々を乾燥させて、前記多層ナノ粒子コーティング繊維材料(150)の取り扱い特性と使用特性の組み合わせを改変すること
をさらに含む、請求項12に記載の製造方法(500)。
【請求項16】
請求項12に記載の製造方法(500)に従って作製されたセラミック-マトリックス複合材。
【請求項17】
多層ナノ粒子コーティング繊維材料(150)の製造装置(100)であって、
第1のナノ粒子ベースの溶液(112)を収容する第1のコーティング容器(110)であって、これを繊維基板(102)が通過することで、ナノ粒子(114)の第1のコーティングを繊維基板(102)に付与することのできる、第1のコーティング容器(110);及び
第2のナノ粒子ベースの溶液(132)を収容する第2のコーティング容器(130)であって、これをナノ粒子(114)の前記第1のコーティングを有する前記繊維基板(102)が通過することで、ナノ粒子(114)の前記第1のコーティングでコーティングされた前記繊維基板(102)に、ナノ粒子(134)の第2のコーティングを付与し、それによって前記多層ナノ粒子コーティング繊維材料(150)を提供することのできる、第2のコーティング容器(130)
を備える製造装置(100)。
【請求項18】
(i)前記繊維基板(102)がイオン電荷極性を有し、(ii)前記第1のコーティング容器(110)に収容されたナノ粒子が、前記繊維基板(102)の前記イオン電荷極性と反対のイオン電荷極性を有し、(iii)前記第2のコーティング容器(130)に収容されたナノ粒子が、前記繊維基板(102)の前記イオン電荷極性と同様のイオン電荷極性を有する、請求項17に記載の製造装置(100)。
【請求項19】
(i)前記第1のナノ粒子ベースの溶液(112)が、前記第1のコーティング容器(110)に収容されたナノ粒子の運搬剤として働くポリマーを含み、(ii)前記第2のナノ粒子ベースの溶液(132)が、前記第2のコーティング容器(130)に収容された前記ナノ粒子の運搬剤として働くポリマーを含む、請求項17に記載の製造装置(100)。
【請求項20】
前記第1のコーティング容器(110)及び前記第2のコーティング容器(130)の各々に収容されるナノ粒子が、グラフェン、BN、SiN、TiC、及びTiOの組み合わせから選択される、請求項17に記載の製造装置(100)。
【請求項21】
ナノ粒子(114)の前記第1のコーティングが付与された前記繊維基板(102)を洗浄してナノ粒子(114)の前記第1のコーティングの単層を形成するための洗浄溶液(122)を収容する第1の洗浄容器(120)、及び
ナノ粒子(134)の前記第2のコーティングでコーティングされた前記繊維基板(102)を洗浄してナノ粒子(134)の前記第2のコーティングの単層を形成するための洗浄溶液(142)を収容する第2の洗浄容器(140)
をさらに備える、請求項17に記載の製造装置(100)。
【請求項22】
ナノ粒子(114)の前記第1のコーティングの前記単層及びナノ粒子(134)の前記第2のコーティングの前記単層の各々が、約5ナノメートルと約100ナノメートルの間の厚さを有する、請求項21に記載の製造装置(100)。
【請求項23】
第3のナノ粒子ベースの溶液(162)を収容する第3のコーティング容器(160)であって、これをナノ粒子(114)の前記第1のコーティングとナノ粒子(134)の前記第2のコーティングとを有する前記繊維基板(102)が通過することで、ナノ粒子(114)の前記第1のコーティングとナノ粒子(134)の前記第2のコーティングとでコーティングされた前記繊維基板(102)に、ナノ粒子(164)の第3のコーティングを付与し、それによって、より厚い多層ナノ粒子コーティング繊維材料(152)を提供することのできる、第3のコーティング容器(160)
をさらに備える、請求項21に記載の製造装置(100)
【請求項24】
ナノ粒子(164)の前記第3のコーティングでコーティングされた前記繊維基板(102)を洗浄してナノ粒子(164)の前記第3のコーティングの単層を形成するための洗浄溶液(172)を収容する第3の洗浄容器(170)
をさらに備える、請求項23に記載の製造装置(100)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[0001]本開示は、概してコーティング材料に関し、より詳細には、多層ナノ粒子コーティング繊維材料の製造方法及び製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
[0002]既知の製造方法によって作製された、コーティング繊維のような1つ又は複数のコーティング層を含む材料は、1つ又は複数のコーティング層にムラを生じやすい。
【0003】
[0003]一例として、繊維上の熱分解炭素(pyC)コーティングは、1つ又は複数のコーティングにムラを生じやすく、その結果、コーティング繊維をセラミックマトリックスと組み合わせてセラミック-マトリックス複合材(CMC)を作製すると、複合材料の強度にばらつきが生じる。CMCにおけるpyCコーティングの意図は、マトリックスと繊維の間に弱い界面を生成し、ある一定の荷重下で繊維がマトリックスに対して動くことを可能にし、それによって複合材が変形して強い繊維-マトリックス界面で可能であるよりも大きな荷重を担えるようにすることである。
【0004】
[0004]さらに、pyCコーティングは化学蒸着(CVD)を使用して適用する必要があり、これには特殊な装置と制御された温度及び圧力が必要とされる。
【0005】
[0005]しかしながら、pyCコーティングのもう一つの欠点は、このようなコーティングを連続的に適用できないことである。バッチ処理が使用されなければならず、このことは、コーティングされうる線維の長さがCVDチャンバのサイズによって制限されることを意味する。
【0006】
[0006]その結果、製造コストが高くなり、また、その後でCMCを作製するためにセラミックマトリックスと組み合わされる繊維に、CVDを使用してpyCコーティングを適用するとき、繊維を連続的にコーティングすることができない。
【0007】
[0007]既に進歩しているにもかかわらず、当業者は、CMCの作製に使用されるコーティング繊維材料などのコーティング材料の製造分野における研究開発の努力を続けている。
【発明の概要】
【0008】
[0008]多層ナノ粒子コーティング繊維の製造方法が開示される。
【0009】
[0009]一実施例では、開示される製造方法は、繊維基板を第1のタイプのナノ粒子でコーティングして、多層ナノ粒子コーティング繊維材料の第1のコーティング層を提供することを含む。製造はまた、第1のコーティング層を第2のタイプのナノ粒子でコーティングして、多層ナノ粒子コーティング繊維材料の第2のコーティング層を提供することを含む。
【0010】
[0010]別の実施例では、開示される製造方法は、複数の繊維の各々の表面を処理して、表面にイオン電荷極性を付与することを含む。製造はまた、複数の繊維の各々の表面を、複数の繊維の各々の表面のイオン電荷極性と反対のイオン電荷極性を有するナノ粒子でコーティングして、ナノ粒子でコーティングされた多層状の複数の繊維の第1の層を提供することを含む。製造はさらに、第1の層を、第1の層のイオン電荷極性と反対のイオン電荷極性を有するナノ粒子でコーティングして、ナノ粒子でコーティングされた多層状の複数の繊維の第2の層を提供することを含む。
【0011】
[0011]さらに開示されるのは、製造により作製された炭素繊維及びセラミック-マトリックス複合材である。
【0012】
[0012]さらに開示されるのは、多層ナノ粒子コーティング繊維材料の製造装置である。
【0013】
[0013]一実施例では、製造装置は、第1のナノ粒子ベースの溶液を収容する第1のコーティング容器を含み、この容器を基板が通過することで、基板に第1のナノ粒子コーティングを付与することができる。製造装置はまた、第2のナノ粒子ベースの溶液を収容する第2のコーティング容器を含み、この容器を、第1のナノ粒子コーティングを有する基板が通過することで、第1のナノ粒子コーティングでコーティングされた基板に第2のナノ粒子コーティングを付与し、それによって多層ナノ粒子コーティング繊維材料を提供することができる。
【0014】
[0014]開示される製造方法及び装置の他の実施例は、以下の詳細な説明、添付図面及び特許請求の範囲から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】[0015]多層ナノ粒子コーティング繊維材料の製造装置を具現化するレイヤー・バイ・レイヤー(LBL)堆積システムの概略ブロック図である。
図2A-B】[0016]図2Aは、例示的実施態様に従って構築された図1の製造装置の概略図である。[0017]図2Bは、図2Aの製造装置のコーティング容器と洗浄容器との例示的関係を示す模式図である。
図2C-D】[0018]図2Cは、図2Aの製造装置の例示的な最小サイズの生産ラインのセットアップの模式図である。[0019]図2Dは、図2Aの製造装置に続いて使用できる例示的な後処理セットアップである。
図3】[0020]Aは、製造された多層ナノ粒子コーティング繊維材料の異なる層の概略立面図である。[0021]Bは、製造された別の多層ナノ粒子コーティング繊維材料の異なる層の概略立面図である。
図4】[0022]例示的一実装態様による製造方法を示すフロー図である。
図5】[0023]別の例示的な実施態様による製造方法を示すフロー図である。
図6】[0024]航空機の製造及び保守方法論のブロック図である。
図7】[0025]航空機の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
[0026]本出願は、レイヤー・バイ・レイヤー(LBL)堆積システムを使用する製造装置及び製造方法を対象としている。装置及びそのための方法の具体的な構造と、装置及び方法が実施される業界は様々である。以下の開示は、種々の実施形態の異なる特徴を実施するための複数の実施形態又は実施例を提供するものと理解されたい。本開示を簡略化するために、構成要素及び構成の具体な実施例が記載される。これらは単なる例であり、限定することを意図したものではない。
【0017】
[0027]例として、本開示は、航空宇宙部品の製造に使用される多層ナノ粒子コーティング繊維材料の製造装置及び製造方法を記載する。装置及び方法は、軍事及び宇宙規制に準拠する相手先商標製品製造業会社(OEM)によって実施され得る。開示される装置及び方法は、他の多くの産業でも実施されうると考えられる。
【0018】
[0028]図1を参照すると、レイヤー・バイ・レイヤー堆積システム10の概略ブロック図が示されている。レイヤー・バイ・レイヤー堆積システム10は、多層ナノ粒子コーティング繊維材料を製造するための装置100を具現化したものであり、例示的一実施態様に従って構築されている。繊維材料の例には、炭素繊維材料が含まれる。他のタイプの繊維素材も可能である。
【0019】
[0029]図2Aを参照すると、製造装置100の概略図が示されている。製造装置100は、第1のナノ粒子ベースの溶液112を収容する第1のコーティング容器110を含み、この容器を繊維基板102(例えば、炭素繊維材料)が経路104(例えば、繊維生産ライン又はロールツーロール処理を使用する繊維処理経路)に沿って通過することで、ナノ粒子114の第1のコーティングを繊維基板102に付与し、第1のコーティング基板116を提供することができる。換言すれば、繊維基板102は、ナノ粒子114の第1のコーティングを付与されて、ナノ粒子114の第1のコーティングの単層を形成する。繊維基板102は、イオン電荷極性(すなわち、カチオン電荷又はアニオン電荷)を有し、そのようなイオン電荷を付与するために処理(例えば、酸若しくは塩基洗浄、又はプラズマ)することができる。第1のコーティング容器110に収容されるナノ粒子は、繊維基板102のイオン電荷極性と反対のイオン電荷極性を有する。第1のコーティング容器110に収容されるナノ粒子は、グラフェン、BN、SiN、TiC、TiO、並びにそれらの組み合わせ及び混合物から選択され得る。他のタイプのナノ粒子材料も可能である。第1のナノ粒子ベースの溶液112は、第1のコーティング容器110に収容されるナノ粒子の運搬剤として働くポリマーを含む。
【0020】
[0030]製造装置100はまた、第1のコーティング基板116を洗浄して第1の洗浄済みコーティング基板124を提供するための洗浄溶液122(例えば、水溶液)を収容する第1の洗浄容器120を含み、この第1の洗浄容器120は、次いで乾燥させる。乾燥は、周囲条件又は高温で実施され得る。第1のコーティング容器110と第1の洗浄容器120の間の例示的な関係が図2Bに示されており、そこでは、生産ラインタイプのセットアップを提供するために、複数のローラー125が使用されている。
【0021】
[0031]具体的には、第1の洗浄容器120は、ナノ粒子を有しない溶液を収容し、この容器をナノ粒子114の第1のコーティングを有する繊維基板102が通過することで、ナノ粒子114の第1のコーティングからの過剰なナノ粒子を繊維基板102から除去し、繊維基板102に付着したナノ粒子のみを残すことができる。第1の洗浄済みコーティング基板124は、ナノ粒子114の第1のコーティングの単層を形成する。ナノ粒子114の第1のコーティングの単層は、約5ナノメートルと約1000ナノメートルの間、例えば約100ナノメートルから約500ナノメートル、又は約200ナノメートルから約400ナノメートルの厚さを有する。
【0022】
[0032]製造装置100は、第2のナノ粒子ベースの溶液132を収容する第2のコーティング容器130をさらに含み、この容器を第1の洗浄済みコーティング基板124が通過することで、ナノ粒子134の第2のコーティングを第1の洗浄済みコーティング基板124に付与し、第2のコーティング基板136を提供することができる。第2のコーティング容器130に収容されたナノ粒子は、繊維基板102(例えば、炭素繊維)のイオン電荷極性と同様のイオン電荷極性を有し、したがって、第1のコーティング容器110に収容されたナノ粒子のイオン電荷極性と反対のイオン電荷極性を有する。第2のコーティング容器130に収容されるナノ粒子は、グラフェン、BN、SiN、TiC、TiO、及びそれらの混合物又は組み合わせのうちの少なくとも1つから選択され得る。他のタイプのナノ粒子材料も可能である。第2のナノ粒子ベースの溶液132は、第2のコーティング容器130に収容されたナノ粒子の運搬剤として働くポリマーを含む。
【0023】
[0033]製造装置100はまた、第2のコーティング基板136を洗浄して第2の洗浄済みコーティング基板144を提供するための洗浄溶液142(例えば、水溶液)を収容する第2の洗浄容器140を含み、第2の洗浄済みコーティング基板144は、その後、(例えば、周囲条件又は高温で)乾燥させる。
【0024】
[0034]具体的には、第2の洗浄容器140は、ナノ粒子を含まない第2の溶液を収容し、この容器をナノ粒子114、134の第1及び第2のコーティングを有する繊維基板102が通過することで、ナノ粒子114の第1のコーティングでコーティングされた繊維基板102からナノ粒子134の第2のコーティングからの余分な粒子を除去し、繊維基板102に付着している第1のコーティングからのナノ粒子に付着している第2のコーティングからのナノ粒子のみを残すことができる。第2の洗浄済みコーティング基板144は、ナノ粒子134の第2のコーティングの単層を形成する。ナノ粒子134の第2のコーティングの単層は、約5ナノメートルと約1000ナノメートルの間、例えば約100ナノメートルから約500ナノメートル、又は約200ナノメートルから約400ナノメートルの厚さを有する。繊維基板102が、上述のように、第1のコーティング容器110、第1の洗浄容器120、第2のコーティング容器130、及び第2の洗浄容器140を通過した後、製造された多層ナノ粒子コーティング繊維材料150(すなわち、乾燥後の第2の洗浄済みコーティング基板144)が得られる。
【0025】
[0035]図3Aを参照すると、製造された多層ナノ粒子コーティング繊維材料150の異なる層の概略立面図が示されている。ナノ粒子114の第1コーティングの単層は繊維基板102上に配置され、ナノ粒子134の第2のコーティングの単層はナノ粒子114の第1のコーティング上に配置される。ナノ粒子114の第1のコーティングの単層は、繊維基板102のイオン電荷極性及びナノ粒子134の第2コーティングのイオン電荷極性と反対のイオン電荷極性を有するので、上下の層との強力な結合が得られる。
【0026】
[0036]上記にはコーティングと洗浄という2つのサイクルのみが記載されたが、このプロセスは、所望の堆積層の数、繊維材料又は繊維材料の織物の所望のコーティング密度及び/又は取り扱い性を達成するために、所望の回数にわたって繰り返すことができる。例えば、再び図2Aを参照すると、製造装置100は、第3のナノ粒子ベースの溶液162を収容する第3のコーティング容器160をさらに含み、この容器を第2の洗浄済みコーティング基板144が通過することで、ナノ粒子164の第3のコーティングを第2の洗浄済みコーティング基板144に付与し、第3のコーティング基板166を提供することができる。製造装置100はまた、第3のコーティング基板166を洗浄して第3の洗浄済みコーティング基板174を提供するための洗浄溶液172(例えば、水溶液)を収容する第3の洗浄容器170を含み、このコーティング基板174は次いで乾燥させる。乾燥させた、第3の洗浄済みコーティング基板174は、より厚い多層ナノ粒子コーティング繊維材料152を含む。図3Bに示すように、より厚い多層ナノ粒子コーティング繊維材料152は、繊維基板102上のナノ粒子114の第1のコーティングの単層及びナノ粒子134の第2のコーディングの単層に加えて、ナノ粒子の別の単層(すなわち、ナノ粒子164の第3のコーティング)を有する。
【0027】
[0037]上記に生産ラインのセットアップを記載したが、繊維が同じナノ粒子溶液又は同じ洗浄溶液に複数回曝露され得るように生産経路及び容器を配置して、セットアップのサイズを最小化するために必要な溶液容器及び洗浄容器の数を最小化することが想定され得る。例示的な最小サイズの生産ラインのセットアップを図2Cに示す。図2Cに示すように、第1のコーティング容器110、第1の洗浄容器120、第2のコーティング容器130、及び第2の洗浄容器140は、円形状の生産ラインセットアップに配置され、所望の回数にわたって繰り返すことができる。加えて、洗浄容器に収容される余分なナノ粒子を除去してリサイクルすることで、コストを最小限に抑えることができる。
【0028】
[0038]レイヤー・バイ・レイヤー堆積システムは、層間に所望の界面コーティングを生成するために、繊維に複数のナノ粒子コーティング層を付与するように配置されることが明らかであろう。一実施例として、コーティング層は、繊維をセラミックマトリックスと結合させてセラミックマトリックス複合材を形成するとき、望ましい弱い界面コーティングを生成するために、グラフェン・ナノプレートレットなどの高温材料を含むことができる。
【0029】
[0039]各コーティング層は、粒子の形状と電荷により自己組織化され、前のコーティング層の上に個別に堆積される。コーティングの堆積の回数は、希望又は必要に応じて何回でも、例えば3回又は5回にわたって繰り返すことができる。他のコーティング層数も可能である。各コーティング層はまた、各層の長さに沿ってばらつきの少ない、実質的に均一な強度を提供するために、全体にわたって実質的に均一な厚さである。
【0030】
[0040]図3A及び3Bに示されるような、本開示に従って製造された多層ナノ粒子コーティング繊維材料は、その後の使用のために後処理することができる。後処理には、未処理の繊維材料よりも望ましい取り扱い特性又は望ましい使用特性を有するようにコーティングを改変するための、熱、紫外線、又は他の手段への曝露が含まれ得る。一実施例として、製造された多層ナノ粒子コーティング繊維材料150、152は、ナノ粒子でコーティングされた繊維を含む織物を生成するために、クリールにかけてもよい。別の実施例として、製造された多層ナノ粒子コーティング繊維材料150、152は、複合材を作製するためのセラミックマトリックス中の補強材として使用され得る。後処理装置は、図2Aに示すような繊維生産ラインの終端に配置しても、繊維生産ラインから離れた場所に配置してもよい。
【0031】
[0041]図2Dを参照すると、図2Aの製造装置100に続いて使用することのできる例示的な後処理セットアップ180が示されている。ブロック182において、図3A又は図3Bの製造された多層ナノ粒子コーティング繊維材料150、152は、所望の部品形状に形成された後、ブロック184において熱分解プロセスに供される。次いでブロック186において、化学蒸気浸透/化学蒸着(CVI/CVD)プロセスを、必要なサイクル数にわたって適用した後、ブロック188に示される別の熱分解プロセスに供することができる。ブロック186のプロセス及びブロック188のプロセスはまた、後処理セットアップ180によって完全に高密度化された部品190が提供される前に、所望の又は必要な回数にわたって繰り返すことができる。
【0032】
[0042]図4を参照すると、例示的な実施態様による、レイヤー・バイ・レイヤーのナノ粒子堆積を使用する多層ナノ粒子コーティング繊維のための製造方法のフロー図400が示されている。ブロック410では、繊維基板を第1のタイプのナノ粒子でコーティングして、多層ナノ粒子コーティング繊維材料の第1のコーティング層を提供する。このプロセスはブロック420に進み、第1のコーティング層を第2のタイプのナノ粒子でコーティングして、多層ナノ粒子コーティング繊維材料の第2のコーティング層を提供する。次いで、プロセスは終了する。
【0033】
[0043]いくつかの実施形態では、第1のタイプのナノ粒子及び第2のタイプのナノ粒子の一方又は両方が、高温ナノ粒子を含む。いくつかの実施形態では、高温ナノ粒子は、グラフェンナノ粒子を含む。
【0034】
[0044]いくつかの実施形態では、レイヤー・バイ・レイヤー堆積は、ナノ粒子を、織物を構成する繊維の表面上に堆積させるように実施される。
【0035】
[0045]いくつかの実施形態では、レイヤー・バイ・レイヤー堆積は、周囲条件で又は周囲条件近傍で実施される。
【0036】
[0046]いくつかの実施形態では、製造は、第1のコーティング層を洗浄して第1のコーティング層の単層を形成することと、第2のコーティング層を洗浄して第2のコーティング層の単層を形成することとをさらに含む。
【0037】
[0047]いくつかの実施形態では、第1及び第2のコーティング層の単層の各々は、約5ナノメートルと約100ナノメートルの間の厚さを有する。
【0038】
[0048]いくつかの実施形態では、製造は、第2のコーティング層を第3のタイプのナノ粒子でコーティングして、多層ナノ粒子コーティング材料の第3のコーティング層を提供することをさらに含む。いくつかの実施形態では、第3のタイプのナノ粒子は、第1のタイプのナノ粒子と同じタイプである。
【0039】
[0049]いくつかの実施形態では、炭素繊維は、図4に開示される製造方法に従って形成される。
【0040】
[0050]図5を参照すると、別の例示的実施態様による製造方法のフロー図500が示されている。ブロック510では、複数の繊維の各々の表面を処理して、表面にイオン電荷極性を付与する。プロセスはブロック520に進み、複数の繊維の各々の表面を、複数の繊維の各々の表面のイオン電荷極性と反対のイオン電荷極性を有するナノ粒子でコーティングして、ナノ粒子でコーティングされた多層状の複数の繊維の第1の層を提供する。次いでブロック530では、第1の層を、第1の層のイオン電荷極性と反対のイオン電荷極性を有するナノ粒子でコーティングして、ナノ粒子でコーティングされた多層状の複数の繊維の第2の層を提供する。次いで、プロセスは終了する。
【0041】
[0051]いくつかの実施形態では、製造は、第1の層を洗浄して第1の層の単層を形成することと、第2の層を洗浄して第2の層の単層を形成することとをさらに含む。第1及び第2の層の単層の各々は、約5ナノメートルと約100ナノメートルの間の厚さを有する。
【0042】
[0052]いくつかの実施形態では、製造は、複数の繊維を広げて、ナノ粒子でコーティングすることのできる表面積を最大にすることをさらに含む。
【0043】
[0053]いくつかの実施形態では、製造は、第1及び第2の層の各々を乾燥させて、ナノ粒子でコーティングされた多層状の複数の繊維の取り扱い特性と使用特性との組み合わせを改変することをさらに含む。
【0044】
[0054]いくつかの実施形態では、セラミック-マトリックス複合材は、図5に開示される製造方法に従って作製される。
【0045】
[0055]本明細書で開示される多層ナノ粒子コーティング繊維材料を製造することにより、複数の利点が提供される。1つの利点は、高温のナノ粒子を周囲条件で又は周囲条件近傍で繊維に適用できることである。
【0046】
[0056]別の利点は、ナノ粒子の極めて緻密なコーティングを繊維上に形成できることである。
【0047】
[0057]さらに別の利点は、本明細書に開示される多層ナノ粒子コーティング繊維の製造に、特殊な(したがって、通常は高価な)装置も、高度に制御された条件(例えば、温度及び圧力)も、不要であることである。
【0048】
[0058]さらに別の利点は、図2Aに示されるような生産ラインのセットアップに沿って必要とされる多層ナノ粒子コーティング繊維材料の量を得ることができるため、バッチ処理が不要であることである。
【0049】
[0059]本開示の実施例は、図6に示される航空機の製造及び保守方法1100、並びに図7に示される航空機1102に関して説明され得る。航空機の製造及び保守方法1100は、製造前段階において、航空機1102の仕様及び設計1104と、材料の調達1106とを含み得る。製造段階では、航空機1102のコンポーネント/サブアセンブリの製造1108と、システムインテグレーション1110とが行われる。その後、航空機1102は、認可及び納品1112を経て運航1114に供される。顧客により運航される間に、航空機1102には、定期的な整備及び保守1116が予定され、これには、改造、再構成、改修なども含まれ得る。
【0050】
[0060]図7に示すように、例示的な方法1100によって製造された航空機1102は、複数のシステム1120及び内装1122を備えた機体1118を含み得る。複数のシステム1120の例には、推進システム1124、電気システム1126、油圧システム1128、及び環境システム1130のうちの1つ又は複数が含まれ得る。任意の数の他のシステムが含まれてよい。
【0051】
[0061]開示される装置及び方法は、航空機の製造及び保守方法1100の段階のいずれか1つ又は複数で採用されうる。一実施例として、コンポーネント/サブアセンブリの製造1108、システムインテグレーション1110、及び/又は整備及び保守1116に対応するコンポーネント又はサブアセンブリが、開示される装置及び方法を使用して組み立てられ得る。別の実施例として、機体1118は、開示される装置及び方法を使用して構築され得る。また、1つ又は複数の装置の例、方法の例、又はこれらの組み合わせは、例えば、機体1118及び/又は内装1122といった航空機1102の組み立てを大幅に効率化すること又はコストを大幅に削減することにより、コンポーネント/サブアセンブリの製造1108、及び/又はシステムインテグレーション1110において利用されうる。同様に、1つ又は複数の装置の例、方法の例、又はそれらの組み合わせは、航空機1102が運航される間に、例えば、限定しないが、整備及び保守1116に利用され得る。
【0052】
[0062]本明細書に開示される装置及び方法の異なる実施例には、様々な構成要素、特徴、及び機能性が含まれる。本明細書に開示される装置及び方法の種々の実施例は、本明細書に開示される装置及び方法の他の実施例の構成要素、特徴、及び機能性のいずれをも任意の組み合わせで含むことができ、そのような可能性のすべてが本開示の範囲内にあることが意図されると理解されたい。
【0053】
[0063]上述の装置及び方法は、航空機に関して記載されている。しかしながら、当業者であれば、開示される装置及び方法が様々な用途に適しており、本開示が航空機製造の用途に限定されないことを容易に認識するであろう。例えば、開示される装置及び方法は、例えば、再突入航空宇宙ビークル、高速航空宇宙ビークル、ヘリコプター、客船、自動車、海洋製品(ボート、モーターなど)を含む種々のタイプのビークルに実装され得る。ビークル以外への適用も企図される。
【0054】
[0064]上記は、軍事及び宇宙規制に従って航空産業における多層ナノ粒子コーティング繊維材料を製造するための装置及び方法について記載されているが、本装置及び方法は、適用される工業標準に従ってあらゆる産業において多層ナノ粒子コーティング繊維材料を製造することを容易にするために実施され得ることが想定されている。具体的な装置及び方法は、特定の用途に応じて選択し、調整することができる。
【0055】
[0065]さらに、開示される実施形態の種々の実施例が示され、記載されたが、本明細書を読んだ当業者であれば、修正例を想起するであろう。本出願は、そのような修正例を含み、特許請求の範囲によってのみ限定される。
図1
図2A-B】
図2C-D】
図3
図4
図5
図6
図7
【外国語明細書】