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  • 特開-抗菌性酸化表面 図1A
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  • 特開-抗菌性酸化表面 図2B
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024178933
(43)【公開日】2024-12-25
(54)【発明の名称】抗菌性酸化表面
(51)【国際特許分類】
   C25D 11/34 20060101AFI20241218BHJP
   C25D 11/04 20060101ALI20241218BHJP
   C25D 11/26 20060101ALI20241218BHJP
   C25D 11/30 20060101ALI20241218BHJP
   C23C 26/00 20060101ALI20241218BHJP
   C23C 28/00 20060101ALI20241218BHJP
【FI】
C25D11/34 302
C25D11/04 305
C25D11/26 303
C25D11/26 302
C25D11/26 A
C25D11/30
C23C26/00 D
C23C28/00 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】37
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024094956
(22)【出願日】2024-06-12
(31)【優先権主張番号】63/472,623
(32)【優先日】2023-06-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】521359944
【氏名又は名称】ベイパー テクノロジーズ インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ブライス ランドルフ アントン
(72)【発明者】
【氏名】アウグスト クンラス
【テーマコード(参考)】
4K044
【Fターム(参考)】
4K044AA03
4K044AA06
4K044AB02
4K044BA02
4K044BA06
4K044BA10
4K044BA12
4K044BA13
4K044BB03
4K044CA17
4K044CA34
(57)【要約】
【課題】従来技術の課題のうちの1つ又は複数を解決する、又は現在の抗菌材料に代わるものを提供する抗菌コーティングを提供する。
【解決手段】抗菌コーティングでコーティングされた物品を形成する方法が、混合金属層を基材の上に堆積させるステップを含む。特徴的には、混合金属層は、銅及び易酸化性金属を含む。陽極酸化によって、又は十分な電圧を混合金属層の表面に加えて混合金属層の少なくとも一部を酸化させる放電を十分に形成することによって、混合金属層を電解質溶液中で酸化させて、銅及び易酸化性金属の酸化物の混合物を含む抗菌性銅含有層を形成する。
【選択図】図1A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
抗菌コーティングでコーティングされた物品を形成する方法であって、
混合金属層を基材の上に堆積させることであって、前記混合金属層は、銅及び易酸化性金属を含むことと、
陽極酸化によって、又は十分な電圧を前記混合金属層の表面に加えて前記混合金属層の少なくとも一部を酸化させる放電を十分に形成することによって、前記混合金属層を電解質溶液中で酸化させて、銅及び前記易酸化性金属の酸化物の混合物を含む抗菌性銅含有層を形成することと、
を含む、方法。
【請求項2】
前記混合金属層を、前記混合金属層の一部が酸化していないままである十分な時間にわたって酸化させる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記基材は、前記易酸化性金属、又は前記易酸化性金属を含む合金から構成される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記易酸化性金属は、Mg、Ti、Al、Zr、又はNbである、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記混合金属層を、前記基材の一部を酸化させる十分な時間にわたって酸化させる、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記基材は、耐酸化性金属又は金属合金から構成される、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記耐酸化性金属又は前記金属合金は、ステンレス鋼である、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記基材は、クロムめっきされる、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記混合金属層を、陽極酸化によって酸化させる、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記混合金属層を、マイクロアーク酸化又はプラズマ電解酸化によって酸化させる、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記易酸化性金属は、0V未満の標準電極電位を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記易酸化性金属は、Mg、Ti、Al、Zr、又はNbである、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記抗菌性銅含有層は、zが2.2~0.6である、式CuOを有する化合物を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記抗菌性銅含有層は、酸化第二銅を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記抗菌性銅含有層は、酸化第一銅を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
前記抗菌性銅含有層は、約0.5ミクロンよりも大きい厚さを有する、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
前記抗菌性銅含有層は、約0.5ミクロン~約2ミクロンの厚さを有する、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
易酸化性金属から構成された基材と、
前記基材の上に配置された金属酸化物層であって、前記易酸化性金属から構成される、前記金属酸化物層と、
前記金属酸化物層の上に配置された抗菌性銅含有層であって、銅及び前記易酸化性金属の酸化物の混合物を含む、前記抗菌性銅含有層と、
を含む、コーティングされた物品。
【請求項19】
前記易酸化性金属は、0V未満の標準電極電位を有する、請求項18に記載のコーティングされた物品。
【請求項20】
前記易酸化性金属は、-0.5V未満の標準電極電位を有する、請求項18に記載のコーティングされた物品。
【請求項21】
前記易酸化性金属は、-1.0V未満の標準電極電位を有する、請求項18に記載のコーティングされた物品。
【請求項22】
前記易酸化性金属は、Ti、Al、Zr、又はNbである、請求項18に記載のコーティングされた物品。
【請求項23】
前記抗菌性銅含有層は、zが2.2~0.6である、式CuOを有する化合物を含む、請求項18に記載のコーティングされた物品。
【請求項24】
前記抗菌性銅含有層は、酸化第二銅を含む、請求項18に記載のコーティングされた物品。
【請求項25】
前記抗菌性銅含有層は、酸化第一銅を含む、請求項18に記載のコーティングされた物品。
【請求項26】
前記抗菌性銅含有層は、約0.5ミクロンよりも大きい厚さを有する、請求項18に記載のコーティングされた物品。
【請求項27】
前記抗菌性銅含有層は、約0.5ミクロン~約2ミクロンの厚さを有する、請求項18に記載のコーティングされた物品。
【請求項28】
金属又は金属合金から構成された基材と、
前記基材の上に配置された混合金属層であって、銅及び易酸化性金属を含む、前記混合金属層と、
前記混合金属層の上に配置された抗菌性銅含有層であって、銅及び前記易酸化性金属の酸化物の混合物を含む、前記抗菌性銅含有層と、
を含む、コーティングされた物品。
【請求項29】
前記基材は、前記易酸化性金属、又は前記易酸化性金属を含む合金から構成される、請求項28に記載のコーティングされた物品。
【請求項30】
前記易酸化性金属は、Ti、Al、Zr、又はNbである、請求項29に記載のコーティングされた物品。
【請求項31】
前記基材は、耐酸化性金属又は金属合金から構成される、請求項28に記載のコーティングされた物品。
【請求項32】
前記耐酸化性金属又は前記金属合金は、ステンレス鋼である、請求項31に記載のコーティングされた物品。
【請求項33】
前記抗菌性銅含有層は、zが2.2~0.6である、式CuOを有する化合物を含む、請求項28に記載のコーティングされた物品。
【請求項34】
前記抗菌性銅含有層は、酸化第二銅を含む、請求項28に記載のコーティングされた物品。
【請求項35】
前記抗菌性銅含有層は、酸化第一銅を含む、請求項28に記載のコーティングされた物品。
【請求項36】
前記抗菌性銅含有層は、約0.5ミクロンよりも大きい厚さを有する、請求項28に記載のコーティングされた物品。
【請求項37】
前記抗菌性銅含有層は、約0.5ミクロン~約2ミクロンの厚さを有する、請求項28に記載のコーティングされた物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2023年6月13日に出願された米国仮出願番号第63/472,623号の利益を主張するものであり、その開示は全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
少なくとも1つの態様では、本発明は、抗菌コーティング、及びかかるコーティングでコーティングされた物品に関する。
【背景技術】
【0003】
生物活性特性を有するコーティングは、様々な目的に有用である可能性がある。生物活性とは、生物に対して生物学的効果又は生理学的効果を有する材料を指す。例えば、生物活性材料は、生物の正常な生物学的機能又は生理学的機構の改変をもたらす材料を含む。本明細書において使用される場合の生物活性は、微生物に対する有益及び有害な効果又は微生物の正常な機能に対する改変を含む。一般的な一生物活性材料は抗菌物質である。抗菌コーティングが、多くの目的に役立つ。一般的に、抗菌コーティングは、ウィルス、細菌又は真菌のような微生物の増殖を阻止するか又はそのような微生物を死滅させる。特に関連する一例は、抗菌材料の使用によって伝染病の蔓延を防ぐことを含む。抗菌材料はまた、衛生目的に役立ち得る。病気の蔓延を防ぐこと及び衛生向上の要望は、抗菌材料を開発するための著しい努力をもたらした。保健医療施設及び医療治療における抗菌材料の使用は、大幅な利益を提供することができる。病院などの医療施設は、高濃度の細菌と脆弱な免疫を有する個人とを併せ持つ独特の環境を呈する。したがって、病院などの施設は、抗菌性表面から多大な恩恵を受ける。医療機器用の抗菌材料は、消毒の負担を減らし、病気の蔓延を防ぐことができる。さらに、手頃な抗菌性表面は、生物と接触するあらゆる表面に対して利点を呈し得る。例えば、調理に関係する表面又はドアノブのような一般的に触られる表面が、抗菌特性から多大な恩恵を受け得る。主として装飾的表面であっても、手頃であれば、抗菌特性から恩恵を受け、有害又は望ましくない抗菌生命の蔓延及び増殖を抑制するのに役立ち得る。
【0004】
抗菌材料を製造することは、困難で費用がかかる可能性がある。さらに、抗菌特性は、他の望ましくない特性を有する場合がある。例えば、一部の抗菌材料は、柔らかすぎる場合がある。他の抗菌材料は、耐摩耗性が不十分である場合がある。Microban(登録商標)は、有機マトリックス中に分散した銀粒子を含む抗菌コーティングである。有機マトリックスを含む抗菌コーティングは、塗料の美的外観を有し得る。いくつかの用途において、塗料の外観が望ましくない場合がある。いくつかの抗菌コーティングは、抗菌特性を有するナノ粒子をコーティングの表面に堆積させるためにナノ粒子蒸着を用いることができる。例えば、ProtecからのABACO(登録商標)が、ナノ粒子を使用する抗菌コーティングである。しかしながら、ナノ粒子の使用は、複雑で費用がかかる可能性がある。さらに、そのようなコーティングは、表面が繊細である又は耐摩耗性が不十分である場合がある。抗菌材料の別の例として、様々な金属が挙げられる。例えば、銀が抗菌特性を有することが知られている。しかしながら、上述したように、銀は費用がかかる可能性があり、その特性が多くの用途に適していない場合がある。例えば、銀の外観又は耐摩耗性は、特定の用途に適していない場合がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、これらの課題のうちの1つ又は複数を解決する、又は現在の抗菌材料に代わるものを提供する抗菌コーティングが必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
少なくとも1つの態様において、抗菌コーティングでコーティングされた物品を形成する方法が提供される。方法は、混合金属層を基材の上に堆積させるステップを含む。特徴的には、混合金属層は、銅及び易酸化性金属を含む。陽極酸化によって、又は十分な電圧を混合金属層の表面に加えて混合金属層の少なくとも一部を酸化させる放電を十分に形成することによって、混合金属層を電解質溶液中で酸化させて、銅及び易酸化性金属の酸化物の混合物を含む抗菌性銅含有層を形成する。
【0007】
別の態様において、コーティングされた物品が提供される。コーティングされた物品は、易酸化性金属から構成された基材と、基材の上に配置された金属酸化物層と、金属酸化物層の上に配置された抗菌性銅含有層と、を含む。特徴的には、金属酸化物層は易酸化性金属から構成される。有利には、抗菌性銅含有層は、銅及び易酸化性金属の酸化物の混合物を含む。
【0008】
別の態様において、コーティングされた物品が提供される。コーティングされた物品は、金属又は金属合金から構成された基材と、基材の上に配置された混合金属層と、混合金属層の上に配置された抗菌性銅含有層と、を含む。特徴的には、混合金属層は、銅及び易酸化性金属を含む。有利には、抗菌性銅含有層は、銅及び易酸化性金属の酸化物の混合物を含む。
【0009】
上述の概要は単に例示的であり、決して限定することを意図するものではない。上記の例示的な態様、実施の形態、及び特徴に加え、さらなる態様、実施の形態、及び特徴が、図面及び以下の詳細な説明を参照することによって明らかとなる。
【0010】
本開示の性質、目的、及び利点のさらなる理解のために、以下の詳細な説明を参照し、以下の図面と併せて読む必要があるものとし、同様の参照番号は同様の要素を示す。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1A】抗菌コーティングでコーティングされた物品を形成する方法を描くフローチャートである。
図1B】抗菌コーティングでコーティングされた物品を形成する方法を描くフローチャートである。
図2A】コーティングされた物品の概略図である。
図2B】コーティングされた物品の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
次に、本発明者らに現在知られている、本発明を実施する最良の形態を構成する、本発明の現在好ましい構成、実施の形態及び方法を詳細に参照する。図は必ずしも縮尺通りではない。しかしながら、開示される実施の形態は、様々な且つ代替的な形態で具現することができる、本発明の単なる例示にすぎないことが理解されるべきである。したがって、本明細書において開示される特定の詳細は、限定するものと解釈されるのではなく、単に本発明の任意の態様のための代表的な基礎として、及び/又は本発明を様々に用いることを当業者に教示するための代表的な基礎として解釈されるべきである。
【0013】
例、又は別段に明示された場合を除き、材料量又は反応条件及び/又は使用条件を示す、本説明におけるすべての数量は、本発明の最も広い範囲を説明する際に「約」という語によって修飾されると理解されるべきである。記載されている数値限度内の実施が一般的に好ましい。また、そうでないことが明記されていない限り、パーセント、「部」及び比の値は重量によるものであり、任意のポリマーに提供される分子量は、別段に示されていない限り重量平均分子量を指し、本発明に関連して所与の目的に適した又は好ましいものとしての材料の群又はクラスの説明は、群又はクラスの要素のうちの任意の2つ以上の要素の混合物が等しく適している又は好ましいことを示唆し、化学的用語での構成要素の説明は、説明において指定された任意の組み合わせへの添加時の構成要素を指し、一度混合された混合物の構成要素間の化学的相互作用を必ずしも排除するものではなく、頭字語又は他の略語の最初の定義が、同じ略語の本明細書におけるすべてのその後の使用に適用され、必要な変更を加えて、最初に定義された略語の通常の文法的変形例に適用され、そうでないことが明示されていない限り、特性の測定は、同じ特性について以前又は後で言及したのと同じ技法によって決定される。
【0014】
特定の構成要素及び/又は条件は当然のことながら様々とすることができるため、本発明は、以下で説明される特定の実施の形態及び方法に限定されないことも理解されるべきである。さらに、本明細書において使用される術語は、本発明の特定の実施の形態を説明するためにのみ使用され、決して限定することを意図するものではない。
【0015】
本明細書及び添付の特許請求の範囲において使用される場合、単数形の「1つの(a)」、「1つの(an)」、及び「その(the)」は、文脈がそうでないことを明らかに示していない限り、複数の指示対象を含むことにも留意せねばならない。例えば、単数の構成要素への言及は、複数の構成要素を含むことを意図している。
【0016】
「備える(comprising)」という用語は、「含む(including)」、「有する(having)」、「含有する(containing)」、又は「によって特徴付けられる(characterized by)」と同義である。これらの用語は、包括的且つオープンエンドであり、さらなる列挙されていない要素又は方法ステップを除外しない。
【0017】
「からなる(consisting of)」という語句は、請求項において指定されていない要素、ステップ、又は成分をいっさい除外する。この語句は、プリアンブルの直後でなく請求項の本文の節内に現われる場合、その節に記載されている要素のみを限定し、他の要素は全体として請求項から除外されない。
【0018】
「から本質的になる(consisting essentially of)」という語句は、請求項の範囲を、特定の材料又はステップに加え、特許請求された主題の基本的且つ新規の特徴(複数可)に実質的に影響しないものに限定する。
【0019】
「備える(comprising)」、「からなる(consisting of」、及び「から本質的になる(consisting essentially of」という用語に関して、これら3つの用語のうちの1つが本明細書において使用される場合、現在開示されているとともに特許請求されている主題は、他の2つの用語のうちのどちらかの使用を含むことができる。
【0020】
「から構成された(composed of)」という語句は、「含む(including)」又は「備える(comprising)」を意味する。典型的には、この語句は、対象が或る材料から形成されることを示すために使用される。
【0021】
整数範囲は、すべての介在する整数を明示的に含むことも理解されるべきである。例えば、1~10の整数範囲は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、及び10を明示的に含む。同様に、1~100の範囲は、1、2、3、4・・・・97、98、99、100を含む。同様に、任意の範囲が要求された場合、上限と下限との差を10で除算した増分である介在する数値を、代わりの上限又は下限とみなすことができる。例えば、範囲が1.1~2.1である場合、以下の数値1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9、及び2.0を下限又は上限として選択することができる。本明細書に記載の特定の例では、濃度、温度、及び反応条件(例えば、圧力、pHなど)を、有効数字3桁に四捨五入して示された値のプラス又はマイナス50パーセントで実施することができる。一改良例では、濃度、温度、及び反応条件(例えば、圧力、pHなど)を、例において提示された値の有効数字3桁に四捨五入して示された値のプラス又はマイナス30パーセントで実施することができる。別の改良例では、濃度、温度、及び反応条件(例えば、pHなど)を、例において提示された値の有効数字3桁に四捨五入して示された値のプラス又はマイナス10パーセントで実施することができる。
【0022】
「酸化銅」という用語は、xが2.2~0.6である、式CuOを有する化合物を意味する。一改良例では、zは、少なくとも0.6、0.7、0.9、又は0.95であり、多くとも2.2、2.0、1.8、1.6、1.4又は1.2である。
【0023】
「酸化ジルコニウム」という用語は、yが1.7~2.3である、式ZrOを有する化合物を意味する。酸化ジルコニウムの一例は、ZrOである。
【0024】
「酸化チタン」という用語は、zが1.7~2.3である、式TiOを有する化合物を意味する。一改良例では、酸化チタンは、zが1.7~1.9である、式TiOを有する化合物を意味する。別の改良例では、酸化チタンは、zが1.8~2.0である、式TiOを有する化合物を意味する。別の改良例では、酸化チタンは、zが1.9~2.1である、式TiOを有する化合物を意味する。別の改良例では、酸化チタンは、zが2.0~2.2である、式TiOzを有する化合物を意味する。別の改良例では、酸化チタンは、zが2.1~2.3である、式TiOzを有する化合物を意味する。別の改良例では、酸化チタンは、zが1.7~2.0である、式TiOzを有する化合物を意味する。別の改良例では、酸化チタンは、zが1.8~2.1である、式TiOzを有する化合物を意味する。別の改良例では、酸化チタンは、zが1.9~2.2である、式TiOzを有する化合物を意味する。別の改良例では、酸化チタンは、zが2.0~2.3である、式TiOzを有する化合物を意味する。別の改良例では、酸化チタンは、zが1.7~2.1である、式TiOzを有する化合物を意味する。別の改良例では、酸化チタンは、zが1.8~2.2である、式TiOzを有する化合物を意味する。別の改良例では、酸化チタンは、zが1.9~2.3である、式TiOzを有する化合物を意味する。酸化チタンの一例は、TiOである。
【0025】
「酸化アルミニウム」という用語は、wが2.7~3.3である、式Alを有する化合物を意味する。一改良例では、酸化アルミニウムは、wが2.7~2.9である、化合物Alを意味する。別の改良例では、酸化アルミニウムは、wが2.8~3.0である、化合物Alを意味する。別の改良例では、酸化アルミニウムは、wが2.9~3.1である、化合物Alを意味する。別の改良例では、酸化アルミニウムは、wが3.0~3.2である、化合物Alを意味する。別の改良例では、酸化アルミニウムは、wが3.1~3.3である、化合物Alを意味する。別の改良例では、酸化アルミニウムは、wが2.7~3.0である、化合物Alを意味する。別の改良例では、酸化アルミニウムは、wが2.8~3.1である、化合物Alを意味する。別の改良例では、酸化アルミニウムは、wが2.9~3.2である、化合物Alを意味する。別の改良例では、酸化アルミニウムは、wが3.0~3.3である、化合物Alを意味する。別の改良例では、酸化アルミニウムは、wが2.7~3.1である、化合物Alを意味する。別の改良例では、酸化アルミニウムは、wが2.8~3.2である、化合物Alを意味する。別の改良例では、酸化アルミニウムは、wが2.9~3.3である、化合物Alを意味する。酸化アルミニウムの一例は、Alである。
【0026】
「酸化ニオブ」という用語は、wが0.8~2.3である、式NOを有する化合物を意味する。一改良例では、酸化ニオブは、wが0.8~1.0である、式NOを有する化合物を意味する。別の改良例では、酸化ニオブは、wが0.9~1.1である、式NOを有する化合物を意味する。別の改良例では、酸化ニオブは、wが1.0~1.2である、式NOを有する化合物を意味する。別の改良例では、酸化ニオブは、wが1.1~1.3である、式NOを有する化合物を意味する。別の改良例では、酸化ニオブは、wが1.2~1.4である、式NOを有する化合物を意味する。別の改良例では、酸化ニオブは、wが1.3~1.5である、式NOを有する化合物を意味する。別の改良例では、酸化ニオブは、wが1.4~1.6である、式NOを有する化合物を意味する。別の改良例では、酸化ニオブは、wが1.5~1.7である、式NOを有する化合物を意味する。別の改良例では、酸化ニオブは、wが1.6~1.8である、式NOを有する化合物を意味する。別の改良例では、酸化ニオブは、wが1.7~1.9である、式NOを有する化合物を意味する。別の改良例では、酸化ニオブは、wが1.8~2.0である、式NOを有する化合物を意味する。別の改良例では、酸化ニオブは、wが1.9~2.1である、式NOを有する化合物を意味する。別の改良例では、酸化ニオブは、wが2.0~2.2である、式NOを有する化合物を意味する。別の改良例では、酸化ニオブは、wが2.1~2.3である、式NOを有する化合物を意味する。酸化ニオブの例は、NbO、NbO、及びNbOである。
【0027】
「標準電極電位」という用語は、溶質が1モル/リットルの有効濃度にある標準状態での可逆電極の電位(すなわち、発生した電圧)を意味し、各純粋固体、純粋液体、又は水(溶媒)について活量が1であり、各ガス状試薬の圧力が1atmであり、温度が25℃である。標準電極電位は、還元電位である。標準電極電位は、温度、圧力、及びイオン濃度の標準条件(例えば、25℃、1atm、1M濃度)での半電池と標準水素電極(SHE:standard hydrogen electrode)との電圧差である。
【0028】
「抗菌性の」という用語は、細菌、ウィルス、及び/又は真菌を死滅させる又はそれらの増殖を阻止する材料又は材料表面を意味する。
【0029】
以下の略語、
「MAO(MAO:micro-arc oxidation)」は、マイクロアーク酸化を意味し、
「PEO(PEO:plasma electrolytic oxidation)」は、プラズマ電解酸化を意味する。
【0030】
図1A及び図1Bを参照すると、抗菌コーティングでコーティングされた物品を形成する方法を描くフローチャートが提示されている。ステップa)において、混合金属層10を基材12の上に堆積させる。混合金属層10は、易酸化性金属を含む。典型的には、混合金属層10は、銅及び易酸化性金属を含む。ステップb)において、十分な電圧を混合金属層の表面に加えて混合金属層の少なくとも一部を酸化させる放電を十分に形成することによって、混合金属層10を電解質溶液中で酸化させて、銅及び易酸化性金属の酸化物の混合物を含む抗菌性銅含有層14を形成する。一改良例では、混合金属層10を略完全に酸化させる。加えられる電圧は、プロセスの特定の要件に応じて様々とすることができる。例えば、易酸化性金属の酸化物は、酸化ニオブ、酸化ジルコニウム、酸化アルミニウム、及び/又は酸化チタンとすることができる。銅の酸化物は酸化銅とすることができる。一態様では、抗菌性銅含有層14は、易酸化性金属の酸化物の金属酸化物マトリックス中に分散されているものとみなすことができる。これは、量に対するよりよい制御を提供し、より優れた耐久性を有すると考えられる。加えて、多様な基材材料に適用することができる。
【0031】
図1Aは、混合金属層10を、基材の一部を酸化させて金属酸化物層16にする十分な時間にわたって酸化させて、コーティングされた物品18を形成する、変形例を描いている。一改良例では、混合金属層10を略完全に酸化させる。一改良例では、基材は、易酸化性金属、又は易酸化性金属を含む合金から構成される。さらなる改良例では、易酸化性金属は、Mg、Ti、Al、Zr、又はNbである。
【0032】
図1Bは、混合金属層10を、混合金属層の一部が混合金属中間層20として酸化していないままである十分な時間にわたって酸化させて、コーティングされた物品22を形成する、変形例を示している。一改良例では、基材は、耐酸化性金属又は金属合金から構成される。金属合金用の耐酸化性金属の例として、ステンレス鋼が挙げられる。別の改良例では、基材は、易酸化性金属、又は易酸化性金属を含む合金から構成される。さらなる改良例では、易酸化性金属は、Mg、Ti、Al、Zr、又はNbである。別の改良例では、基材は、クロムめっきされる。
【0033】
1つの変形例では、混合金属層を、陽極酸化によって酸化させる。陽極酸化プロセスでは、金属基材を、酸素イオンを含む電解質溶液(例えば、水溶液)と接触させる。電解質溶液は典型的に、酸化物層の形成を容易にするために酸化剤(例えば、硫酸又はクロム酸)を含む。酸化物層を形成するために金属基材にDC電源の正端子が接続される。
【0034】
別の態様では、混合金属層を、プラズマ電解酸化によって酸化させる。プラズマ電解酸化プロセスでは、金属基材を、酸素イオンを含む電解質溶液(例えば、水溶液)と接触させる。十分な電圧で高電圧を金属表面に連続的に加えてプラズマ放電を形成させる。高電圧は典型的に、200Vよりも大きい。高電圧の有用な範囲は、300V~800Vである。
【0035】
別の態様では、混合金属層を、マイクロアーク酸化によって酸化させる。マイクロアーク酸化プロセスでは、金属基材を、酸素イオンを含む電解質溶液(例えば、水溶液)と接触させる。十分な電圧で高電圧を金属表面に加えて一連のマイクロ放電を形成させる。マイクロアーク酸化は、アルミニウム、マグネシウム、チタン、及びそれらの合金などの金属に酸化物コーティングを形成するのに使用される電気化学的表面処理プロセスである。このプロセスは、硬度、耐摩耗性、及び耐腐食性などの、金属の表面特性を高めることができる。マイクロアーク酸化では、金属ワークが陽極として作用し、電解質溶液中に浸漬される。一改良例では、電解液は、水酸化カリウム(KOH)又はケイ酸ナトリウム(NaSiO)のようなアルカリ性物質を含むことができる。従来の陽極酸化プロセスにおいて用いられる電圧よりも著しく高い高電圧(数百~数千ボルト)が、陽極(ワーク)と陰極(対電極)との間に加えられる。例えば、高電圧は典型的に、1000Vよりも高い。高電圧の有用な範囲は、10kV~30kVである。マイクロアーク酸化では、電圧は、短い高強度バーストで加えることができる。高電圧で、酸化物層の絶縁破壊が起こり、金属の表面にマイクロ放電又はプラズマ・アークの形成をもたらす。これらのマイクロ放電は、局在化した高い温度及び圧力を生じさせる。高エネルギーのマイクロ放電は、金属を電解液と反応させ、厚い緻密な酸化物層を形成する。酸化物層は、元の金属表面に対して内側及び外側の両方に成長する。
【0036】
上述したように、混合金属層10は、易酸化性金属から構成されることができる。同様に、基材は、易酸化性金属から構成されることができる。一改良例では、易酸化性金属は、0V未満の標準電極電位を有する。いくつかの改良例では、易酸化性金属は、0V、-0.2V、-0.5V、-0.8V、-1.0V、又は-1.2V未満の標準電極電位を有する。易酸化性金属の例として、Mg、Ti、Al、Zr、又はNbが挙げられる。
【0037】
一変形例では、抗菌性銅含有層は、酸化銅を含む。一改良例では、抗菌性銅含有層は、zが2.2~0.8である、式CuOを有する化合物を含む。一改良例では、抗菌性銅含有層は、酸化第二銅(すなわち、CuO)を含む。さらなる改良例では、抗菌性銅含有層は、酸化第一銅(すなわち、CuO)を含む。
【0038】
一変形例では、抗菌性銅含有層は、約0.5ミクロンよりも大きい厚さを有する。一改良例では、抗菌性銅含有層は、約0.5ミクロン~約2ミクロンの厚さを有する。
【0039】
図2Aを参照すると、コーティングされた物品の概略図が提示されている。コーティングされた物品18は、易酸化性金属から構成された基材12と、基材の上に配置されているとともに任意選択的に基材と接触する金属酸化物層16と、金属酸化物層の上に配置されているとともに任意選択的に金属酸化物層と接触する抗菌性銅含有層14と、を含む。特徴的には、金属酸化物層は、易酸化性金属から構成される。有利には、抗菌性銅含有層は、銅及び易酸化性金属の酸化物の混合物を含む。
【0040】
図2Bを参照すると、コーティングされた物品の概略図が提示されている。コーティングされた物品22は、金属又は金属合金から構成された基材12と、基材12の上に配置された混合金属層20と、混合金属層の上に配置された抗菌性銅含有層14と、を含む。特徴的には、混合金属層は、銅及び易酸化性金属を含む。有利には、抗菌性銅含有層は、銅及び易酸化性金属の酸化物の混合物を含む。
【0041】
例示的な実施の形態を上記で説明しているが、これら実施の形態が本発明のすべての可能な形態を説明することを意図するものではない。むしろ、本明細書において使用される語は、限定ではなく説明の語であり、本発明の趣旨及び範囲から逸脱することなく様々な変更を行うことができることが理解されるべきである。特徴的には、混合金属層は、銅及び易酸化性金属を含む。有利には、抗菌性銅含有層は、銅及び易酸化性金属の酸化物の混合物を含む。
図1A
図1B
図2A
図2B
【外国語明細書】