(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024178962
(43)【公開日】2024-12-26
(54)【発明の名称】転写装置、画像形成装置、転写方法
(51)【国際特許分類】
G03G 15/16 20060101AFI20241219BHJP
【FI】
G03G15/16 103
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023097379
(22)【出願日】2023-06-14
(71)【出願人】
【識別番号】000006150
【氏名又は名称】京セラドキュメントソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100167302
【弁理士】
【氏名又は名称】種村 一幸
(74)【代理人】
【識別番号】100135817
【弁理士】
【氏名又は名称】華山 浩伸
(72)【発明者】
【氏名】菊地 英之介
(72)【発明者】
【氏名】笠間 健一
【テーマコード(参考)】
2H200
【Fターム(参考)】
2H200FA18
2H200GA23
2H200GA34
2H200GA44
2H200GB22
2H200HA02
2H200HB12
2H200JA02
2H200JA28
2H200JA29
2H200JB10
2H200JC04
2H200JC18
2H200JC19
2H200NA02
2H200NA03
2H200NA06
2H200PA03
2H200PA10
2H200PA22
2H200PB17
2H200PB29
(57)【要約】
【課題】シートへのトナー像の転写性を向上させるとともに、トナー像に含まれる文字の可読性の低下を抑制可能な転写装置、画像形成装置、及び転写方法を提供すること。
【解決手段】中間転写装置26は、それぞれがCMYのいずれかの色のトナー像を中間転写ベルト45に転写する一次転写ローラー41~43と、一次転写ローラー41~43よりも中間転写ベルト45のベルト回転方向D5の下流側であって二次転写位置P1よりもベルト回転方向D5の上流側でKの色のトナー像を中間転写ベルト45に転写する一次転写ローラー44と、画像形成処理が実行される場合に、一次転写ローラー43に交流成分を含む第1転写電圧を印加するとともに一次転写ローラー44に交流成分を含まない第2転写電圧を印加する印加処理部と、を備える。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転駆動され、トナー像を担持する像担持体と、
前記像担持体の回転方向に沿って並んで設けられ、それぞれがCMYのいずれかの色の前記トナー像を前記像担持体に転写する3つの第1転写部と、
3つの前記第1転写部よりも前記回転方向の下流側であって前記像担持体に担持された前記トナー像がシートに転写される転写位置よりも前記回転方向の上流側でKの色の前記トナー像を前記像担持体に転写する第2転写部と、
前記シートに画像を形成する画像形成処理が実行される場合に、3つの前記第1転写部のいずれか一つ又は複数に交流成分を含む第1転写電圧を印加するとともに前記第2転写部に交流成分を含まない第2転写電圧を印加する印加処理部と、
を備える転写装置。
【請求項2】
前記印加処理部は、前記画像形成処理が実行される場合に、3つの前記第1転写部のうち前記第2転写部よりも前記回転方向の上流側で前記第2転写部と隣接する特定第1転写部に前記第1転写電圧を印加する、
請求項1に記載の転写装置。
【請求項3】
前記シートに転写されたCMYのいずれか一色又は複数色を含む特定トナー像の濃度を検出する検出処理部と、
前記検出処理部によって検出される前記特定トナー像の濃度に基づいて、前記第1転写電圧に含まれる交流成分を調整する第1調整処理部と、
を備える請求項1に記載の転写装置。
【請求項4】
CMYのいずれか一色又は複数色に対応する一又は複数のトナーの帯電量を取得する取得処理部と、
前記取得処理部によって取得される一又は複数の前記トナーの帯電量に基づいて、前記第1転写電圧に含まれる交流成分を調整する第2調整処理部と、
を備える請求項1に記載の転写装置。
【請求項5】
請求項1~4のいずれかに記載の転写装置を備える画像形成装置。
【請求項6】
回転駆動され、トナー像を担持する像担持体と、前記像担持体の回転方向に沿って並んで設けられ、それぞれがCMYのいずれかの色の前記トナー像を前記像担持体に転写する3つの第1転写部と、3つの前記第1転写部よりも前記回転方向の下流側であって前記像担持体に担持された前記トナー像がシートに転写される転写位置よりも前記回転方向の上流側でKの色の前記トナー像を前記像担持体に転写する第2転写部と、を備える転写装置で実行される転写方法であって、
前記シートに画像を形成する画像形成処理が実行される場合に、3つの前記第1転写部のいずれか一つ又は複数に交流成分を含む第1転写電圧を印加するとともに前記第2転写部に交流成分を含まない第2転写電圧を印加する、
転写方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真方式の画像形成装置、転写装置、及び転写方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式で画像を形成可能な画像形成装置が知られている。例えば、前記画像形成装置は、トナー像を担持する中間転写ベルトなどの像担持体と、CMYKの各色に対応する4つの一次転写部と、二次転写部とを備える。前記一次転写部各々は、対応する色の前記トナー像を前記像担持体に転写する。4つの前記一次転写部は、前記像担持体の回転方向に沿って、所定の順序で並んで配置される。前記二次転写部は、4つの前記一次転写部により前記像担持体に転写された前記トナー像をシートに転写する。
【0003】
また、前記シートへの前記トナー像の転写性を向上させるために、4つの前記一次転写部よりも前記回転方向の下流側であって前記二次転写部よりも前記回転方向の上流側で、前記像担持体に担持された前記トナー像に交流電圧を印加する前記画像形成装置が関連技術として知られている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述の関連技術に係る前記画像形成装置では、交流電圧が印加される前記トナー像が文字を含む場合に、交流電圧の印加によって当該文字の輪郭が不鮮明になり、当該文字の可読性が低下する。
【0006】
本発明の目的は、シートへのトナー像の転写性を向上させるとともに、トナー像に含まれる文字の可読性の低下を抑制可能な転写装置、画像形成装置、及び転写方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一の局面に係る転写装置は、像担持体と、3つの第1転写部と、第2転写部と、印加処理部とを備える。前記像担持体は、回転駆動され、トナー像を担持する。3つの前記第1転写部は、前記像担持体の回転方向に沿って並んで設けられ、それぞれがCMYのいずれかの色の前記トナー像を前記像担持体に転写する。前記第2転写部は、3つの前記第1転写部よりも前記回転方向の下流側であって前記像担持体に担持された前記トナー像がシートに転写される転写位置よりも前記回転方向の上流側でKの色の前記トナー像を前記像担持体に転写する。前記印加処理部は、前記シートに画像を形成する画像形成処理が実行される場合に、3つの前記第1転写部のいずれか一つ又は複数に交流成分を含む第1転写電圧を印加するとともに前記第2転写部に交流成分を含まない第2転写電圧を印加する。
【0008】
本発明の他の局面に係る画像形成装置は、前記転写装置を備える。
【0009】
本発明の他の局面に係る転写方法は、回転駆動され、トナー像を担持する像担持体と、前記像担持体の回転方向に沿って並んで設けられ、それぞれがCMYのいずれかの色の前記トナー像を前記像担持体に転写する3つの第1転写部と、3つの前記第1転写部よりも前記回転方向の下流側であって前記像担持体に担持された前記トナー像がシートに転写される転写位置よりも前記回転方向の上流側でKの色の前記トナー像を前記像担持体に転写する第2転写部と、を備える転写装置で実行され、前記転写方法では、前記シートに画像を形成する画像形成処理が実行される場合に、3つの前記第1転写部のいずれか一つ又は複数に交流成分を含む第1転写電圧が印加されるとともに前記第2転写部に交流成分を含まない第2転写電圧が印加される。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、シートへのトナー像の転写性を向上させるとともに、トナー像に含まれる文字の可読性の低下を抑制可能である。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、本発明の第1実施形態に係る画像形成装置の構成を示す断面図である。
【
図2】
図2は、本発明の第1実施形態に係る画像形成装置のシステム構成を示すブロック図である。
【
図3】
図3は、本発明の第1実施形態に係る画像形成装置の画像形成ユニット、及び中間転写装置の構成を示す断面図である。
【
図4】
図4は、本発明の第1実施形態に係る画像形成装置の画像形成ユニット、及び中間転写装置の構成を示す断面図である。
【
図5】
図5は、本発明の第1実施形態の変形例に係る画像形成装置のシステム構成を示すブロック図である。
【
図6】
図6は、本発明の第2実施形態に係る画像形成装置のシステム構成を示すブロック図である。
【
図7】
図7は、本発明の第2実施形態の変形例に係る画像形成装置のシステム構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、添付図面を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。なお、以下の実施形態は、本発明を具体化した一例であって、本発明の技術的範囲を限定するものではない。
【0013】
[第1実施形態]
まず、
図1、及び
図2を参照しつつ、本発明の第1実施形態に係る画像形成装置100Aの構成について説明する。
【0014】
なお、説明の便宜上、画像形成装置100Aが使用可能な設置状態(
図1に示される状態)で鉛直方向を上下方向D1と定義する。また、
図1に示される画像形成装置100Aの紙面左側の面を正面(前面)として前後方向D2を定義する。また、前記設置状態の画像形成装置100Aの正面を基準として左右方向D3を定義する。
【0015】
画像形成装置100Aは、原稿の画像を読み取るスキャン機能、及び画像データに基づいて画像を形成するプリント機能とともに、ファクス機能、及びコピー機能などの複数の機能を有する複合機である。なお、本発明は、プリンター、ファクス装置、及びコピー機などの画像形成装置に適用されてもよい。
【0016】
図1、及び
図2に示されるように、画像形成装置100Aは、ADF(Auto Document Feeder)1、画像読取部2、画像形成部3、給紙部4、操作表示部5、記憶部6、及び制御部7を備える。
【0017】
ADF1は、前記スキャン機能による読取対象の原稿を搬送する。ADF1は、原稿セット部、複数の搬送ローラー、原稿押さえ、及び排紙部を備える。
【0018】
画像読取部2は、前記スキャン機能を実現する。画像読取部2は、原稿台、光源、複数のミラー、光学レンズ、及びCCD(Charge Coupled Device)を備える。
【0019】
画像形成部3は、前記プリント機能を実現する。具体的に、画像形成部3は、電子写真方式に従って、給紙部4から供給されるシートにカラー、又はモノクロの画像を形成する。
【0020】
給紙部4は、画像形成部3にシートを供給する。給紙部4は、給紙カセット、手差しトレイ、及び複数の搬送ローラーを備える。
【0021】
操作表示部5は、画像形成装置100Aのユーザーインターフェイスである。操作表示部5は、制御部7からの制御指示に応じて各種の情報を表示する液晶ディスプレーなどの表示部、及びユーザーの操作に応じて制御部7に各種の情報を入力する操作キー、又はタッチパネルなどの操作部を有する。
【0022】
記憶部6は、不揮発性の記憶装置である。例えば、記憶部6は、フラッシュメモリーなどの不揮発性メモリー、SSD(Solid State Drive)、又はHDD(Hard Disk Drive)などの記憶装置である。
【0023】
制御部7は、画像形成装置100Aを統括的に制御する。
図2に示されるように、制御部7は、CPU11、ROM12、及びRAM13を備える。CPU11は、各種の演算処理を実行するプロセッサーである。ROM12は、CPU11に各種の処理を実行させるための制御プログラムなどの情報が予め格納される不揮発性の記憶装置である。RAM13は、CPU11が実行する各種の処理の一時記憶メモリー(作業領域)として使用される揮発性、又は不揮発性の記憶装置である。CPU11は、ROM12に予め格納された各種の制御プログラムを実行することにより、画像形成装置100Aを統括的に制御する。
【0024】
なお、制御部7は、画像形成装置100Aを統括的に制御するメイン制御部とは別に設けられた制御部であってもよい。また、制御部7は、集積回路(ASIC)などの電子回路で構成されたものであってもよい。
【0025】
[画像形成部3の構成]
次に、
図1~
図4を参照しつつ、画像形成部3の構成について説明する。ここで、
図3は、一次転写ローラー41~43、及び可動ローラー50が中間転写ベルト45を3つの感光体ドラム31に接触させる接触位置に配置された状態を示す図である。また、
図4は、一次転写ローラー41~43、及び可動ローラー50が中間転写ベルト45を3つの感光体ドラム31から離間させる離間位置に配置された状態を示す図である。
【0026】
図1に示されるように、画像形成部3は、4つの画像形成ユニット20、光走査装置25、中間転写装置26、二次転写ローラー27、定着装置28、及び排紙トレイ29を備える。また、
図2に示されるように、画像形成部3は、第1電源部51、第1電源部52、第1電源部53A、第1電源部54、第2電源部55、濃度センサー56、及び第3電源部58を備える。
【0027】
4つの画像形成ユニット20のうち、画像形成ユニット21(
図3参照)は、Y(イエロー)のトナー像を形成する。4つの画像形成ユニット20のうち、画像形成ユニット22(
図3参照)は、C(シアン)のトナー像を形成する。4つの画像形成ユニット20のうち、画像形成ユニット23(
図3参照)は、M(マゼンタ)のトナー像を形成する。4つの画像形成ユニット20のうち、画像形成ユニット24(
図3参照)は、K(ブラック)のトナー像を形成する。つまり、画像形成部3は、CMYK各々のトナーを用いてシートに画像を形成する。
図1、及び
図3に示されるように、4つの画像形成ユニット20は、前後方向D2に沿って、画像形成装置100Aの前方側からイエロー、シアン、マゼンタ、及びブラックの順に併設される。
【0028】
図3に示されるように、画像形成ユニット20各々は、感光体ドラム31、帯電ローラー32、現像装置33、及びドラム清掃部34を備える。また、画像形成ユニット20各々は、
図1に示されるトナーコンテナ35を備える。
【0029】
感光体ドラム31は、表面に静電潜像が形成される。例えば、感光体ドラム31は、アモルファスシリコンによって形成された感光層を有する。感光体ドラム31は、不図示のモーターから供給される回転駆動力を受けて、
図3に示されるドラム回転方向D4に回転する。これにより、感光体ドラム31は、表面に形成される静電潜像を搬送する。
【0030】
帯電ローラー32は、予め設定された帯電電圧の印加を受けて、感光体ドラム31の表面を帯電させる。例えば、帯電ローラー32は、感光体ドラム31の表面を正極性に帯電させる。帯電ローラー32によって帯電された感光体ドラム31の表面には、光走査装置25から射出される画像データに基づく光が照射される。これにより、感光体ドラム31の表面に静電潜像が形成される。
【0031】
現像装置33は、感光体ドラム31の表面に形成された静電潜像を現像する。現像装置33は、一対の撹拌部材、マグネットローラー、及び現像ローラーを備える。前記一対の撹拌部材は、現像装置33の内部に収容されたトナー及びキャリアを含む現像剤を撹拌する。これにより、前記現像剤に含まれるトナーは、前記現像剤に含まれるキャリアとの摩擦によって正極性に帯電する。前記マグネットローラーは、前記一対の撹拌部材によって撹拌された前記現像剤を汲み上げて、当該現像剤に含まれるトナーを前記現像ローラーに供給する。前記現像ローラーは、前記マグネットローラーから供給されたトナーを感光体ドラム31との対向位置へ搬送する。また、前記現像ローラーは、予め設定された現像バイアス電圧の印加を受けて、前記対向位置へ搬送されたトナーを感光体ドラム31へ供給する。これにより、感光体ドラム31の表面に形成された静電潜像が可視化(現像)される。なお、現像装置33には、トナーコンテナ35からトナーが供給される。
【0032】
感光体ドラム31の表面に形成されたトナー像は、中間転写装置26により、中間転写装置26の中間転写ベルト45に転写される。
【0033】
ドラム清掃部34は、中間転写装置26によるトナー像転写後の感光体ドラム31の表面に残存するトナーを除去する。
【0034】
光走査装置25は、画像形成ユニット20各々の感光体ドラム31の表面へ向けて、画像データに基づく光を射出する。
【0035】
中間転写装置26は、画像形成ユニット20各々の感光体ドラム31の表面に形成されたトナー像を中間転写ベルト45に転写する。
【0036】
図3に示されるように、中間転写装置26は、一次転写ローラー41~44、中間転写ベルト45、駆動ローラー46、3つの第1張架ローラー47、ベルト清掃部48、及び第2張架ローラー49を備える。
【0037】
一次転写ローラー41~43は、中間転写ベルト45のベルト回転方向D5(
図3参照)に沿って並んで設けられ、それぞれがCMYのいずれかの色のトナー像を中間転写ベルト45に転写する。具体的に、一次転写ローラー41は、中間転写ベルト45を挟んで画像形成ユニット21の感光体ドラム31と対向して設けられ、予め定められた第1転写電圧の印加を受けて当該感光体ドラム31の表面に形成されたYの色のトナー像を中間転写ベルト45に転写する。また、一次転写ローラー42は、中間転写ベルト45を挟んで画像形成ユニット22の感光体ドラム31と対向して設けられ、予め定められた第2転写電圧の印加を受けて当該感光体ドラム31の表面に形成されたCの色のトナー像を中間転写ベルト45に転写する。また、一次転写ローラー43は、中間転写ベルト45を挟んで画像形成ユニット23の感光体ドラム31と対向して設けられ、予め定められた第3転写電圧の印加を受けて当該感光体ドラム31の表面に形成されたMの色のトナー像を中間転写ベルト45に転写する。一次転写ローラー41~43は、本発明の3つの第1転写部の一例である。また、ベルト回転方向D5は、本発明の回転方向の一例である。
【0038】
一次転写ローラー44は、一次転写ローラー41~43よりもベルト回転方向D5(
図3参照)の下流側であって中間転写ベルト45に担持されたトナー像がシートに転写される二次転写位置P1(
図3参照)よりもベルト回転方向D5の上流側でKの色のトナー像を中間転写ベルト45に転写する。具体的に、一次転写ローラー44は、中間転写ベルト45を挟んで画像形成ユニット24の感光体ドラム31と対向して設けられ、予め定められた第4転写電圧の印加を受けて当該感光体ドラム31の表面に形成されたKの色のトナー像を中間転写ベルト45に転写する。一次転写ローラー44は、本発明の第2転写部の一例である。また、二次転写位置P1は、本発明の転写位置の一例である。
【0039】
中間転写ベルト45は、回転駆動され、トナー像を担持する。具体的に、中間転写ベルト45は、前後方向D2(
図3参照)に沿って引き延ばされた無端のベルト部材である。一次転写ローラー41~44は、中間転写ベルト45の内側で前後方向D2に沿って並んで配置される。中間転写ベルト45は、一次転写ローラー41~44、駆動ローラー46、及び3つの第1張架ローラー47によって所定のテンションで張架される。中間転写ベルト45は、不図示のモーターから供給される回転駆動力を受けて駆動ローラー46が回転することで、
図3に示されるベルト回転方向D5に回転する。これにより、中間転写ベルト45は、外周面に転写されたトナー像を二次転写ローラー27による二次転写位置P1(
図3参照)へ搬送する。なお、二次転写ローラー27によってトナー像が転写された後の中間転写ベルト45の外周面は、
図3に示されるベルト清掃部48によって清掃される。中間転写ベルト45は、本発明の像担持体の一例である。また、前後方向D2は、本発明の特定方向の一例である。
【0040】
ここで、中間転写装置26において、一次転写ローラー41~43、及び3つの第1張架ローラー47のうちの可動ローラー50(
図3参照)は、上下方向D1に沿って一体に移動可能に設けられる。
図3に示されるように、可動ローラー50は、3つの第1張架ローラー47のうち、一次転写ローラー41のベルト回転方向D5の上流側で一次転写ローラー41に隣接する第1張架ローラー47である。
【0041】
具体的に、一次転写ローラー41~43、及び可動ローラー50は、中間転写ベルト45を張架して中間転写ベルト45を一次転写ローラー41~43と対向する3つの感光体ドラム31に接触させる前記接触位置(
図3参照)と、中間転写ベルト45を3つの感光体ドラム31から離間させる前記離間位置(
図4参照)との間を移動可能に設けられる。前記接触位置は、本発明の第1位置の一例である。また、前記離間位置は、本発明の第2位置の一例である。
【0042】
例えば、中間転写装置26では、一次転写ローラー41~43、および可動ローラー50の各々の軸受けが共通の支持部(不図示)によって支持されている。また、前記支持部は、画像形成装置100Aの筐体によって、前記接触位置に対応する位置と、前記離間位置に対応する位置との間を移動可能に支持されている。前記支持部は、不図示の駆動部から供給される駆動力によって前記接触位置に対応する位置と、前記離間位置に対応する位置との間を移動する。例えば、前記駆動部は、モーター及び前記モーターの駆動軸の回転運動を前記支持部の移動方向に沿った直線運動に変換するカム部材などを含む。
【0043】
第2張架ローラー49は、一次転写ローラー41~43、および可動ローラー50が前記離間位置に配置された場合に中間転写ベルト45を張架する。
図3に示されるように、第2張架ローラー49は、一次転写ローラー43と一次転写ローラー44との間に配置される。例えば、第2張架ローラー49は、一次転写ローラー41~44よりもわずかに上側に配置される。第2張架ローラー49を設けることにより、一次転写ローラー41~43、および可動ローラー50が前記離間位置に配置された場合の一次転写ローラー44と中間転写ベルト45との接触部における中間転写ベルト45の変形量(屈曲角度)が抑制される。
【0044】
二次転写ローラー27は、中間転写ベルト45の外周面に転写されたトナー像を給紙部4から供給されるシートに転写する。
図3に示されるように、二次転写ローラー27は、中間転写ベルト45を挟んで駆動ローラー46と対向して設けられる。二次転写ローラー27は、予め定められた第5転写電圧の印加を受けて、中間転写ベルト45に形成されたトナー像をシートに転写する。二次転写ローラー27は、中間転写ベルト45と接触する二次転写位置P1(
図3参照)で、中間転写ベルト45に形成されたトナー像をシートに転写する。
【0045】
定着装置28は、二次転写ローラー27によってシートに転写されたトナー像を当該シートに定着させる。定着装置28は、定着ローラー、及び加圧ローラーを備える。前記定着ローラーは、不図示のヒーターによって予め設定された定着温度に加熱される。前記加圧ローラーは、予め定められたニップ圧で前記定着ローラーと接触するように、不図示の付勢部材によって前記定着ローラーに向けて付勢される。前記定着ローラーと前記加圧ローラーとの間には、シートを加熱及び加圧する定着ニップ部P2(
図1参照)が形成される。シートに転写されたトナー像は、当該シートが定着ニップ部P2を通過する際に加熱及び加圧されて、当該シートに定着する。
【0046】
排紙トレイ29には、定着装置28によってトナー像が定着されたシートが排出される。
【0047】
第1電源部51は、一次転写ローラー41に前記第1転写電圧を印加する電源である。前記第1転写電圧は、直流電圧である。例えば、第1電源部51は、予め定められた第1転写電流を一次転写ローラー41に供給する定電流源である。つまり、前記第1転写電圧は、一次転写ローラー41に前記第1転写電流を供給可能な電圧である。例えば、前記第1転写電流は、15μA(マイクロアンペア)~50μA(マイクロアンペア)の範囲内の電流である。
【0048】
第1電源部52は、一次転写ローラー42に前記第2転写電圧を印加する電源である。前記第2転写電圧は、直流電圧である。例えば、第1電源部52は、予め定められた第2転写電流を一次転写ローラー42に供給する定電流源である。つまり、前記第2転写電圧は、一次転写ローラー42に前記第2転写電流を供給可能な電圧である。例えば、前記第2転写電流は、15μA(マイクロアンペア)~50μA(マイクロアンペア)の範囲内の電流である。
【0049】
第1電源部53Aは、一次転写ローラー43に前記第3転写電圧を印加する電源である。前記第3転写電圧は、直流電圧である。例えば、第1電源部53Aは、予め定められた第3転写電流を一次転写ローラー43に供給する定電流源である。つまり、前記第3転写電圧は、一次転写ローラー43に前記第3転写電流を供給可能な電圧である。例えば、前記第3転写電流は、15μA(マイクロアンペア)~50μA(マイクロアンペア)の範囲内の電流である。
【0050】
第1電源部54は、一次転写ローラー44に前記第4転写電圧を印加する電源である。前記第4転写電圧は、直流電圧である。例えば、第1電源部54は、予め定められた第4転写電流を一次転写ローラー44に供給する定電流源である。つまり、前記第4転写電圧は、一次転写ローラー44に前記第4転写電流を供給可能な電圧である。例えば、前記第4転写電流は、15μA(マイクロアンペア)~50μA(マイクロアンペア)の範囲内の電流である。
【0051】
第2電源部55は、二次転写ローラー27に前記第5転写電圧を印加する電源である。前記第5転写電圧は、直流電圧である。例えば、第2電源部55は、予め定められた第5転写電流を二次転写ローラー27に供給する定電流源である。つまり、前記第5転写電圧は、二次転写ローラー27に前記第5転写電流を供給可能な電圧である。例えば、前記第5転写電流は、15μA(マイクロアンペア)~50μA(マイクロアンペア)の範囲内の電流である。
【0052】
濃度センサー56は、二次転写ローラー27によってシートに転写されたトナー像の濃度を検出する。
図1に示されるように、濃度センサー56は、前記給紙カセットから二次転写位置P1(
図1参照)、及び定着ニップ部P2(
図1参照)を経由して排紙トレイ29へ至るシートの搬送経路R1(
図1の矢印付きの二点鎖線参照)における二次転写位置P1の下流側で、シートに転写されたトナー像の濃度を検出する。例えば、濃度センサー56は、シートへ向けて光を射出する光射出部と、前記光射出部から射出されてシートに転写されたトナー像で反射された反射光の光量を検出する受光部とを含む。濃度センサー56は、前記受光部において検出された前記反射光の光量に応じた電気信号を制御部7に入力する。
【0053】
ところで、シートへのトナー像の転写性を向上させるために、一次転写ローラー41~44よりもベルト回転方向D5の下流側であって二次転写位置P1よりもベルト回転方向D5の上流側で、中間転写ベルト45に担持されたトナー像に交流電圧を印加する画像形成装置が関連技術として知られている。
【0054】
しかしながら、上述の関連技術に係る画像形成装置では、交流電圧が印加されるトナー像が文字を含む場合に、交流電圧の印加によって当該文字の輪郭が不鮮明になり、当該文字の可読性が低下する。
【0055】
これに対し、本発明の第1実施形態に係る画像形成装置100Aは、以下に説明するように、シートへのトナー像の転写性を向上させるとともに、トナー像に含まれる文字の可読性の低下を抑制可能である。
【0056】
具体的に、中間転写装置26は、
図3に示される加振部57を備える。
【0057】
加振部57は、一次転写ローラー41~43よりもベルト回転方向D5の下流側であって、一次転写ローラー44よりもベルト回転方向D5の上流側で、中間転写ベルト45に担持されたトナー像を加振する。
【0058】
例えば、加振部57は、予め定められた交流電圧の印加に応じて、中間転写ベルト45に担持されたトナー像を加振する交流電界を形成する。
【0059】
例えば、加振部57は、一次転写ローラー41~43が前記離間位置に配置された場合に、中間転写ベルト45を張架する第2張架ローラー49を兼ねる。第2張架ローラー49は、本発明の張架部材の一例である。なお、加振部57は、第2張架ローラー49とは別に設けられた部材であってもよい。
【0060】
第3電源部58は、加振部57として機能する第2張架ローラー49に前記交流電圧を印加する電源である。例えば、前記交流電圧は、予め定められた振幅、及び周波数を有する正弦波である。なお、前記交流電圧は、矩形波であってもよい。
【0061】
第2張架ローラー49に前記交流電圧が印加されることにより、中間転写ベルト45における第2張架ローラー49との対向部に前記交流電界が発生する。これにより、中間転写ベルト45に担持されたトナー像に含まれるトナー各々が加振されて、中間転写ベルト45に対するトナー各々の付着力が低下する。そのため、二次転写ローラー27によるシートへのトナー像の転写性能が向上する。
【0062】
また、中間転写装置26では、一次転写ローラー41~43よりもベルト回転方向D5の下流側であって、一次転写ローラー44よりもベルト回転方向D5の上流側で、中間転写ベルト45に担持されたトナー像が加振される。これにより、シートに転写されるトナー像のうち、文字を含む可能性が最も高いKの色のトナー像(通常、文字はKの色で表現される)以外のトナー像だけを加振することが可能である。そのため、トナー像に含まれる文字の可読性の低下を抑制可能である。
【0063】
なお、中間転写装置26は、中間転写ベルト45を挟んで第2張架ローラー49と対向する対向部材を備えていてもよい。例えば、前記対向部材は、導電性を有するローラーである。これにより、上下方向D1に沿って前記交流電界が形成されるため、中間転写ベルト45に対するトナーの付着力を効果的に低下させることが可能である。
【0064】
ところで、トナー像に含まれるトナーの帯電量が変化すると、前記交流電界におけるトナーの振動量も変化する。つまり、トナーの帯電量が変化すると、二次転写ローラー27によるシートへのトナー像の転写性能が変化し、シートに形成される画像の濃度が変化する。これに対し、本発明の第1実施形態に係る画像形成装置100Aは、以下に説明するように、トナーの帯電量の変化に伴う、シートに形成される画像の濃度変化を抑制可能である。
【0065】
[制御部7の構成]
次に、
図2を参照しつつ、制御部7の構成について説明する。
【0066】
図2に示されるように、制御部7は、検出処理部61、及び第1調整処理部62Aを含む。中間転写装置26、及び制御部7を含む装置は、本発明の転写装置の一例である。
【0067】
具体的に、制御部7のROM12には、CPU11を上述の各部として機能させるための交流電圧調整プログラムが予め格納されている。そして、CPU11は、ROM12に格納された前記交流電圧調整プログラムを実行することにより、上述の各部として機能する。
【0068】
なお、前記交流電圧調整プログラムは、CD、DVD、及びフラッシュメモリーなどのコンピューター読み取り可能な記録媒体に記録されており、前記記録媒体から読み取られて記憶部6などの記憶装置に格納されてもよい。また、検出処理部61、及び第1調整処理部62Aの一部又は全部は、集積回路(ASIC)などの電子回路で構成されたものであってもよい。
【0069】
検出処理部61は、シートに転写されたCMYのいずれか一色又は複数色を含む特定トナー像の濃度を検出する。
【0070】
例えば、前記特定トナー像は、矩形の形状を有するYの色のトナー像である。
【0071】
例えば、検出処理部61は、画像形成ユニット21、及び中間転写装置26を用いて中間転写ベルト45に前記特定トナー像を転写する。また、検出処理部61は、加振部57を用いて、前記特定トナー像を加振する。また、検出処理部61は、二次転写ローラー27、及び給紙部4を用いて、前記特定トナー像をシートに転写させる。そして、検出処理部61は、濃度センサー56を用いて、シートに転写された前記特定トナー像の濃度を検出する。
【0072】
第1調整処理部62Aは、検出処理部61によって検出される前記特定トナー像の濃度に基づいて、加振部57に印加される前記交流電圧を調整する。
【0073】
例えば、第1調整処理部62Aは、検出処理部61によって検出される前記特定トナー像の濃度と予め定められた基準濃度との差に応じて、前記交流電圧の振幅を調整する。換言すると、第1調整処理部62Aは、もう一度前記特定トナー像を形成した場合に当該特定トナー像の濃度が前記基準濃度となるように、前記交流電圧の振幅を調整する。ここで、前記基準濃度は、予め定められた基準帯電量のYの色のトナーを用いて形成された前記特定トナー像の濃度である。
【0074】
具体的に、第1調整処理部62Aは、検出処理部61によって検出される前記特定トナー像の濃度が前記基準濃度よりも高い場合に、前記振幅を減少させる。また、第1調整処理部62Aは、検出処理部61によって検出される前記特定トナー像の濃度が前記基準濃度よりも低い場合に、前記振幅を増加させる。
【0075】
これにより、トナーの帯電量の変化に伴う、シートに形成される画像の濃度変化を抑制することが可能である。
【0076】
なお、第1調整処理部62Aは、検出処理部61によって検出される前記特定トナー像の濃度と前記基準濃度との差に応じて、前記交流電圧の周波数を調整してもよい。また、第1調整処理部62Aは、検出処理部61によって検出される前記特定トナー像の濃度と前記基準濃度との差に応じて、前記交流電圧の振幅、及び周波数の両方を調整してもよい。
【0077】
また、検出処理部61は、互いに加振部57による加振量が異なる複数の前記特定トナー像の濃度を検出してもよい。この場合、第1調整処理部62Aは、検出処理部61によって検出される前記特定トナー像各々の濃度に基づいて、加振部57による加振量と前記特定トナー像の濃度との関係を示す関係式を取得すればよい。そして、第1調整処理部62Aは、取得された関係式を用いて、もう一度前記特定トナー像を形成した場合に当該特定トナー像の濃度が前記基準濃度となるように、加振部57による加振量、つまり前記交流電圧の振幅、及び周波数のいずれか一方又は両方を調整すればよい。
【0078】
また、濃度センサー56は、二次転写位置P1(
図3参照)よりもベルト回転方向D5の下流側であって、ベルト清掃部48よりもベルト回転方向D5の上流側で、二次転写ローラー27によるトナー像の転写後に中間転写ベルト45に残る残存トナーの濃度を検出してもよい。この場合、検出処理部61は、中間転写ベルト45における前記特定トナー像が形成されていた領域の前記残存トナーの濃度を検出すればよい。また、第1調整処理部62Aは、検出処理部61によって検出される前記残存トナーの濃度と所定の濃度との差に応じて、前記交流電圧の振幅、及び周波数のいずれか一方又は両方を調整すればよい。
【0079】
また、制御部7は、シートに画像を形成する画像形成処理が実行される場合において、画像の形成に用いられるシートの種類が予め定められた特定種類のシートである場合にだけ、加振部57を用いて、トナー像を加振してもよい。例えば、前記特定種類のシートは、エンボス紙である。
【0080】
このように、画像形成装置100Aでは、一次転写ローラー41~43よりもベルト回転方向D5の下流側であって、一次転写ローラー44よりもベルト回転方向D5の上流側で、中間転写ベルト45に担持されたトナー像が加振される。これにより、シートに転写されるトナー像のうち、文字を含む可能性が最も高いKの色のトナー像(通常、文字はKの色で表現される)以外のトナー像だけを加振することが可能である。従って、シートへのトナー像の転写性を向上させるとともに、トナー像に含まれる文字の可読性の低下を抑制することが可能である。
【0081】
[変形例]
なお、検出処理部61、及び第1調整処理部62Aに替えて、
図5に示される取得処理部63、及び第2調整処理部64Aが設けられてもよい。
【0082】
取得処理部63は、CMYのいずれか一色又は複数色に対応する一又は複数のトナーの帯電量を取得する。
【0083】
例えば、取得処理部63は、Yの色のトナーの帯電量を取得する。
【0084】
例えば、取得処理部63は、以下の手順でYの色のトナーの帯電量を取得する。
【0085】
まず、取得処理部63は、画像形成ユニット21の感光体ドラム31の表面に予め定められた検出用トナー像を形成する。次に、取得処理部63は、不図示の電流計を用いて、前記検出用トナー像の現像時に前記現像ローラーに流れる現像電流を検出する。次に、取得処理部63は、一次転写ローラー41を用いて、画像形成ユニット21の感光体ドラム31の表面に形成された前記検出用トナー像を中間転写ベルト45に転写する。次に、取得処理部63は、不図示の濃度センサーを用いて、中間転写ベルト45の表面に転写された前記検出用トナー像の濃度を検出する。そして、取得処理部63は、前記現像電流の電流値と、前記検出用トナー像の濃度値とに基づいて、Yの色のトナーの帯電量を取得する。例えば、取得処理部63は、前記検出用トナー像の濃度値に基づいて、前記検出用トナー像の現像に用いられたYの色のトナーの量を算出する。そして、取得処理部63は、前記現像電流の電流値を、算出されたYの色のトナー量で除算することにより、当該トナーの帯電量を算出する。
【0086】
なお、取得処理部63によるトナーの帯電量の取得方法は、以上に述べた方法に限られず、他の周知の方法が用いられてよい。
【0087】
第2調整処理部64Aは、取得処理部63によって取得される一又は複数のトナーの帯電量に基づいて、加振部57に印加される前記交流電圧を調整する。
【0088】
例えば、第2調整処理部64Aは、取得処理部63によって取得されるYの色のトナーの帯電量に基づいて、加振部57に印加される前記交流電圧を調整する。なお、第2調整処理部64Aは、取得処理部63によって取得される複数のトナーの帯電量の平均値に基づいて、加振部57に印加される前記交流電圧を調整してもよい。
【0089】
例えば、画像形成装置100Aでは、トナーの帯電量と前記交流電圧の振幅との対応関係を示すテーブルデータが予め記憶部6に格納されている。前記テーブルデータでは、トナーの帯電量が多くなるほど、前記交流電圧の振幅が小さくなるように、トナーの帯電量と前記交流電圧の振幅との対応関係が定められている。
【0090】
例えば、第2調整処理部64Aは、前記テーブルデータを用いて、取得処理部63によって取得されるYの色のトナーの帯電量に対応する前記交流電圧の振幅を取得する。そして、第2調整処理部64Aは、加振部57に印加される前記交流電圧の振幅を、特定された振幅に設定する。
【0091】
なお、第2調整処理部64Aは、前記テーブルデータに替えて、トナーの帯電量と前記交流電圧の振幅との対応関係を示す計算式を用いて、取得処理部63によって取得されるYの色のトナーの帯電量に対応する前記交流電圧の振幅を取得してもよい。また、第2調整処理部64Aは、加振部57に印加される前記交流電圧の周波数を調整してもよい。
【0092】
これにより、検出処理部61、及び第1調整処理部62Aを備える構成と同様に、トナーの帯電量の変化に伴う、シートに形成される画像の濃度変化を抑制することが可能である。
【0093】
また、加振部57は、中間転写ベルト45に担持されたトナー像を加振する超音波を発信してもよい。具体的に、加振部57は、一次転写ローラー41~43よりもベルト回転方向D5の下流側であって、一次転写ローラー44よりもベルト回転方向D5の上流側に配置された超音波発信装置であってもよい。前記超音波の振幅、及び周波数は、前記特定トナー像の濃度が前記基準濃度となるように、適宜設定されればよい。これにより、トナーの電気的特性に影響を与えることなくトナー像を加振可能である。加振部57が前記超音波を発信する場合、制御部7は、検出処理部61、及び第1調整処理部62A、又は取得処理部63、及び第2調整処理部64Aを含んでいなくてよい。
【0094】
[第2実施形態]
次に、
図6を参照しつつ、本発明の第2実施形態に係る画像形成装置100Bの構成について説明する。
【0095】
画像形成装置100Bは、画像形成部3、及び制御部7の構成が、画像形成装置100Aとは異なる。なお、その他の構成は、画像形成装置100Aと画像形成装置100Bとで共通である。以下、画像形成装置100Bの構成のうち、画像形成装置100Aとは異なる構成についてのみ説明する。
【0096】
画像形成装置100Bの画像形成部3は、
図2に示される第1電源部53Aに替えて、
図6に示される第1電源部53Bを備える。また、画像形成装置100Bの画像形成部3は、第3電源部58(
図2参照)を備えていない。そのため、画像形成装置100Bにおいて、第2張架ローラー49は、加振部57として機能しない。なお、画像形成部3のその他の構成は、画像形成装置100Aと画像形成装置100Bとで共通である。
【0097】
第1電源部53Bは、一次転写ローラー43に予め定められた第6転写電圧を印加する電源である。前記第6転写電圧は、前記第3転写電圧に前記交流電圧が重畳された電圧である。前記第6転写電圧は、前記交流電圧を交流成分として含む。
【0098】
画像形成装置100Bの制御部7は、第1調整処理部62A(
図2参照)に替えて、
図6に示される第1調整処理部62Bを備える。また、画像形成装置100Bの制御部7は、印加処理部65を備える。なお、制御部7のその他の構成は、画像形成装置100Aと画像形成装置100Bとで共通である。
【0099】
印加処理部65は、シートに画像を形成する前記画像形成処理が実行される場合に、一次転写ローラー41~43のうち一次転写ローラー44よりもベルト回転方向D5の上流側で一次転写ローラー44と隣接する一次転写ローラー43(本発明の特定第1転写部の一例)に交流成分を含む前記第6転写電圧(本発明の第1転写電圧の一例)を印加するとともに、一次転写ローラー44に交流成分を含まない前記第4転写電圧(本発明の第2転写電圧の一例)を印加する。
【0100】
具体的に、印加処理部65は、前記画像形成処理が実行される場合に、第1電源部53Bを用いて、一次転写ローラー43に前記第6転写電圧を印加する。また、印加処理部65は、前記画像形成処理が実行される場合に、第1電源部54を用いて、一次転写ローラー44に前記第4転写電圧を印加する。
【0101】
一次転写ローラー43に前記第6転写電圧が印加されることにより、中間転写ベルト45における一次転写ローラー43との対向部に前記交流電界が発生する。これにより、中間転写ベルト45に担持されたトナー像に含まれるトナー各々が加振されて、中間転写ベルト45に対するトナー各々の付着力が低下する。そのため、二次転写ローラー27によるシートへのトナー像の転写性能が向上する。
【0102】
また、画像形成装置100Bの中間転写装置26では、中間転写ベルト45における一次転写ローラー43との対向部で、中間転写ベルト45に担持されたトナー像が加振される。これにより、シートに転写されるトナー像のうち、文字を含む可能性が最も高いKの色のトナー像(通常、文字はKの色で表現される)以外のトナー像だけを加振することが可能である。そのため、トナー像に含まれる文字の可読性の低下を抑制可能である。
【0103】
第1調整処理部62Bは、検出処理部61によって検出される前記特定トナー像の濃度に基づいて、前記第6転写電圧に含まれる交流成分を調整する。
【0104】
例えば、第1調整処理部62Bは、第1調整処理部62Aと同様に、検出処理部61によって検出される前記特定トナー像の濃度と前記基準濃度との差に応じて、前記交流電圧の振幅を調整する。
【0105】
これにより、トナーの帯電量の変化に伴う、シートに形成される画像の濃度変化を抑制することが可能である。
【0106】
なお、第1調整処理部62Bは、検出処理部61によって検出される前記特定トナー像の濃度と前記基準濃度との差に応じて、前記交流電圧の周波数を調整してもよい。また、第1調整処理部62Bは、検出処理部61によって検出される前記特定トナー像の濃度と前記基準濃度との差に応じて、前記交流電圧の振幅、及び周波数の両方を調整してもよい。
【0107】
また、検出処理部61は、互いに一次転写ローラー43による加振量が異なる複数の前記特定トナー像の濃度を検出してもよい。この場合、第1調整処理部62Bは、検出処理部61によって検出される前記特定トナー像各々の濃度に基づいて、一次転写ローラー43による加振量と前記特定トナー像の濃度との関係を示す関係式を取得すればよい。そして、第1調整処理部62Bは、取得された関係式を用いて、もう一度前記特定トナー像を形成した場合に当該特定トナー像の濃度が前記基準濃度となるように、一次転写ローラー43による加振量、つまり前記交流電圧の振幅、及び周波数のいずれか一方又は両方を調整すればよい。
【0108】
また、濃度センサー56は、二次転写位置P1(
図3参照)よりもベルト回転方向D5の下流側であって、ベルト清掃部48よりもベルト回転方向D5の上流側で、二次転写ローラー27によるトナー像の転写後に中間転写ベルト45に残る前記残存トナーの濃度を検出してもよい。この場合、検出処理部61は、中間転写ベルト45における前記特定トナー像が形成されていた領域の前記残存トナーの濃度を検出すればよい。また、第1調整処理部62Bは、検出処理部61によって検出される前記残存トナーの濃度と所定の濃度との差に応じて、前記交流電圧の振幅、及び周波数のいずれか一方又は両方を調整すればよい。
【0109】
また、印加処理部65は、前記画像形成処理が実行される場合において、画像の形成に用いられるシートの種類が前記特定種類のシートである場合にだけ、一次転写ローラー43を用いて、トナー像を加振してもよい。
【0110】
また、第1電源部51は、一次転写ローラー41に前記交流電圧が重畳された前記第1転写電圧を印加してもよい。また、第1電源部52は、一次転写ローラー42に前記交流電圧が重畳された前記第2転写電圧を印加してもよい。この場合、印加処理部65は、前記画像形成処理が実行される場合に、一次転写ローラー41~43のうちのいずれか一つ又は複数に前記交流電圧が重畳された電圧(本発明の第1転写電圧の他の一例)を印加してもよい。
【0111】
このように、画像形成装置100Bでは、前記画像形成処理が実行される場合に、一次転写ローラー43に交流成分を含む前記第6転写電圧が印加されるとともに、一次転写ローラー44に交流成分を含まない前記第4転写電圧が印加される。これにより、シートに転写されるトナー像のうち、文字を含む可能性が最も高いKの色のトナー像(通常、文字はKの色で表現される)以外のトナー像だけを加振することが可能である。従って、シートへのトナー像の転写性を向上させるとともに、トナー像に含まれる文字の可読性の低下を抑制することが可能である。
【0112】
[変形例]
なお、検出処理部61、及び第1調整処理部62Bに替えて、
図7に示される取得処理部63、及び第2調整処理部64Bが設けられてもよい。
【0113】
取得処理部63の機能は、画像形成装置100Aの取得処理部63と同じである。
【0114】
第2調整処理部64Bは、取得処理部63によって取得される一又は複数のトナーの帯電量に基づいて、一次転写ローラー43に印加される前記第6転写電圧に含まれる交流成分を調整する。
【0115】
例えば、第2調整処理部64Bは、取得処理部63によって取得されるYの色のトナーの帯電量に基づいて、前記第6転写電圧に含まれる交流成分を調整する。なお、第2調整処理部64Bは、取得処理部63によって取得される複数のトナーの帯電量の平均値に基づいて、前記第6転写電圧に含まれる交流成分を調整してもよい。
【0116】
例えば、第2調整処理部64Bは、前記テーブルデータを用いて、取得処理部63によって取得されるYの色のトナーの帯電量に対応する前記交流電圧の振幅を取得する。そして、第2調整処理部64Bは、一次転写ローラー43に印加される前記第6転写電圧に含まれる前記交流電圧の振幅を、特定された振幅に設定する。
【0117】
なお、第2調整処理部64Bは、前記テーブルデータに替えて、トナーの帯電量と前記交流電圧の振幅との対応関係を示す計算式を用いて、取得処理部63によって取得されるYの色のトナーの帯電量に対応する前記交流電圧の振幅を取得してもよい。また、第2調整処理部64Bは、前記交流電圧の周波数を調整してもよい。
【0118】
これにより、検出処理部61、及び第1調整処理部62Bを備える構成と同様に、トナーの帯電量の変化に伴う、シートに形成される画像の濃度変化を抑制することが可能である。
【0119】
[発明の付記]
以下、上述の実施形態から抽出される発明の概要について付記する。なお、以下の付記で説明する各構成及び各処理機能は取捨選択して任意に組み合わせることが可能である。
【0120】
<付記1>
回転駆動され、トナー像を担持する像担持体と、前記像担持体の回転方向に沿って並んで設けられ、それぞれがCMYのいずれかの色の前記トナー像を前記像担持体に転写する3つの第1転写部と、3つの前記第1転写部よりも前記回転方向の下流側であって前記像担持体に担持された前記トナー像がシートに転写される転写位置よりも前記回転方向の上流側でKの色の前記トナー像を前記像担持体に転写する第2転写部と、前記シートに画像を形成する画像形成処理が実行される場合に、3つの前記第1転写部のいずれか一つ又は複数に交流成分を含む第1転写電圧を印加するとともに前記第2転写部に交流成分を含まない第2転写電圧を印加する印加処理部と、を備える転写装置。
【0121】
<付記2>
前記印加処理部は、前記画像形成処理が実行される場合に、3つの前記第1転写部のうち前記第2転写部よりも前記回転方向の上流側で前記第2転写部と隣接する特定第1転写部に前記第1転写電圧を印加する、付記1に記載の転写装置。
【0122】
<付記3>
前記シートに転写されたCMYのいずれか一色又は複数色を含む特定トナー像の濃度を検出する検出処理部と、前記検出処理部によって検出される前記特定トナー像の濃度に基づいて、前記第1転写電圧に含まれる交流成分を調整する第1調整処理部と、を備える付記1又は2に記載の転写装置。
【0123】
<付記4>
CMYのいずれか一色又は複数色に対応する一又は複数のトナーの帯電量を取得する取得処理部と、前記取得処理部によって取得される一又は複数の前記トナーの帯電量に基づいて、前記第1転写電圧に含まれる交流成分を調整する第2調整処理部と、を備える付記1又は2に記載の転写装置。
【0124】
<付記5>
付記1~4のいずれかに記載の転写装置を備える画像形成装置。
【0125】
<付記6>
回転駆動され、トナー像を担持する像担持体と、前記像担持体の回転方向に沿って並んで設けられ、それぞれがCMYのいずれかの色の前記トナー像を前記像担持体に転写する3つの第1転写部と、3つの前記第1転写部よりも前記回転方向の下流側であって前記像担持体に担持された前記トナー像がシートに転写される転写位置よりも前記回転方向の上流側でKの色の前記トナー像を前記像担持体に転写する第2転写部と、を備える転写装置で実行される転写方法であって、前記シートに画像を形成する画像形成処理が実行される場合に、3つの前記第1転写部のいずれか一つ又は複数に交流成分を含む第1転写電圧を印加するとともに前記第2転写部に交流成分を含まない第2転写電圧を印加する、転写方法。
【符号の説明】
【0126】
1 ADF
2 画像読取部
3 画像形成部
4 給紙部
5 操作表示部
6 記憶部
7 制御部
20 画像形成ユニット
25 光走査装置
26 中間転写装置
27 二次転写ローラー
28 定着装置
41 一次転写ローラー
42 一次転写ローラー
43 一次転写ローラー
44 一次転写ローラー
45 中間転写ベルト
49 第2張架ローラー
51 第1電源部
52 第1電源部
53A 第1電源部
53B 第1電源部
54 第1電源部
55 第2電源部
56 濃度センサー
57 加振部
58 第3電源部
61 検出処理部
62A 第1調整処理部
62B 第1調整処理部
63 取得処理部
64A 第2調整処理部
64B 第2調整処理部
65 印加処理部
100A 画像形成装置
100B 画像形成装置