(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024178965
(43)【公開日】2024-12-26
(54)【発明の名称】除雪機
(51)【国際特許分類】
E01H 5/04 20060101AFI20241219BHJP
【FI】
E01H5/04 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023097393
(22)【出願日】2023-06-14
(71)【出願人】
【識別番号】000223698
【氏名又は名称】フジイコーポレーション株式会社
(72)【発明者】
【氏名】藤井 大介
(72)【発明者】
【氏名】栗原 信
(72)【発明者】
【氏名】中川 勝己
(57)【要約】 (修正有)
【課題】小型歩行型除雪機は昔から、オーガ及びそれを駆動するパワートレインの過負荷や衝撃などによる故障や破損から保護する為、シャーボルト機構が使用されてきたが、
シャーボルトが切れても操縦者が気がつかない場合が多々ある。オーガのシャーボルトが切れた場合、一刻も早く交換し復旧しないと、雪の付着または氷結などで詰まった雪の取り除きが困難になり、シャーボルトの交換が非常な難作業になってしまう。
【解決手段】オーガケース左右のほぼ中央部に、ほぼ四角形の穴を開口し、板状の非磁性体カバーを設け、オーガ翼に対し反対側、オーガーケース背面側に、磁気式近接センサをオーガ翼に対向して設け、鋼板製オーガ翼の回転動作を検出できるように構成した。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
原動機を搭載し、雪を削雪し収集するオーガと、雪を吐出させるブロワと、投雪方向を定めるシュータとによって除雪部が構成される歩行型ロータリー式除雪機において、オーガを構成するオーガケースの左右それぞれの略中央部に略四角形の穴を開口し、該開口部に相当する略四角形の板状の非磁性体によるカバーを設け(非磁性体カバー)、該非磁性体カバーのオーガ翼に対し反対側、即ちオーガーケース背面側非磁性体カバー部に、磁気式近接センサを、オーガ翼に対向して配設し、鋼板製オーガ翼の左右それぞれの回転動作を検出できるように構成した除雪機。
【請求項2】
前記近接センサの信号により左右それぞれのオーガ翼の回転動作を制御ユニット(コンピュータユニット)で監視し、回転停止、又は不連続回転、となった場合、オーガ翼をオーガシャフトに固定しているシャーボルトが切断したと左右それぞれに判断し、直ちに操縦者にブザー、又は操作レバーの振動で知らせるようにし、又はランプ表示、又はモニタ表示で左右それぞれの警報表示で知らせるよう構成した請求項1に記載する除雪機。
【請求項3】
前記磁気式近接センサを誘導式、又は渦電流検知式の磁気式近接センサとする請求項1または請求項2に記載する除雪機。
【請求項4】
前記非磁性体を超高分子ポリエチレン、又は高分子ポリエチレン、又はポリカーボネードとする請求項1又は請求項2又は請求項3に記載する除雪機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は主に、個人、農家、店舗、事務所、中小事業所などで使用されるロータリー式の小形歩行型除雪機で、その除雪作業能率と作業快適性の向上に関するものである。
【背景技術】
【0002】
小型歩行型除雪機は国や県が管理する公道、公共設備などで使用される大型除雪機とは別に、雪国地域の個別小口用に今では広く普及している。中でも螺旋状の回転刃、即ちオーガにより、積もった雪を掻き崩し、削雪して、雪を吐出させるブロワに収集し、吐出方向を定める半円筒状のシュータから放出するロータリー式除雪機は除雪能力が他方式より高く、普及台数も圧倒的に多い。この方式の除雪機では昔から小型、大型の別なく、オーガ及びそれを駆動するパワートレインの過負荷や衝撃などによる故障や破損から保護する為、シャーボルト機構が使用されてきた(特許文献1)。即ちオーガ回転中、堅雪、しまり雪などの雪壁に突入してオーガ翼の変形や、ミッション、駆動シャフトなどパワートレイン破損の恐れのあるとき、またはオーガ翼が路面上の石、岩、道路縁石などにぶつかりオーガ、パワートレインを破損する恐れのあるとき、オーガ翼を固定しているシャーボルトを剪断させ、故障、破損から保護する。現在では、オーガの過負荷防止に数々の工夫があるものの、ほとんどは基本的には本出願人が50年程前に出願している特許文献1のシャーボルトの構成を取っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開昭50-104430
【特許文献2】特開平10-298939
【特許文献3】実新第3132846
【特許文献4】特開2020-143487
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】News Reiease消費者庁 令和3年12月23日
【非特許文献2】News Reiease関東経済産業局 令和4年12月22日
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが除雪作業中、過負荷や衝撃などで、このシャーボルトが切れても操縦者が気がつかない場合が多々ある。左右両方が切れた場合はわかるが、片方だけ切れた場合、まだもう片方で、ある程度除雪が続けられるからである。とくに環境の厳しい厳冬期の降雪中とか、一刻を争う除雪繁忙中とか、また初心者の場合は全く気がつかない場合の方が多い。気がつかないまま除雪作業を続けると、切れた側のオーガはもちろん切れてない方も、雪付着によりオーガ翼全体に雪が団子状になっていき、さらには削雪力、吐出力の低下によりブロワ、シュータへと雪が団子状に詰まっていく。ここまで来て、シュータから雪が吐出しなくなったのを見て初めてオーガが空回りしていることに気づくのが初心者である。熟練者は片オーガの除雪動作になった時点で投雪状況の異変で気づく場合もある。
【0006】
オーガのシャーボルトが切れた場合、一刻も早く交換し復旧しないと、雪が団子状に付着し(時には氷結)詰まった雪の取り除きが困難になる。またこれとは別にシャーボルトが綺麗に剪断してくれればよいが中途半端な切れ方でバリや切れカス(ちぎれカス)などが残った場合、そのまま空転(連れ回り)を続けるとフランジのボルト穴から抜き取ることさえ困難になり、その場での修復作業が非常な難作業になる。そしてそのこと以上に、除雪動作異常になると人間どうしてもオーガ回転動作の様子を正面オーガ側から見ようとしてしまい、重大事故を誘発する(オーガーによる巻き込まれ、機体の下敷きになるなど死亡事故 非特許文献1、2)非常に危険な状態になる。それも停止状態ではわからないから運転状態のままで。デットマン装置のある近年の型式では操縦者が操作器から手を離すと動力断になり安全の為停止するが、逆にこのことが危険なデットマン機能を無効化しようとするきっかけもなっている。これまでシャーボルトによる保護機構を見直す試みが幾つかあったが(特許文献2、3、4)、現在まで製品実現されていない。最も単純な機構であるが故に、このシャーボルト安全機構を凌ぐ機構は未だ実現されていない。
【0007】
本願発明はロータリー式除雪機の以上のような課題、即ちシャーボルトが切れた場合、まず第一に安全最優先でその状況を一刻も早く操縦者に知らせ、危険な行動を取らせないようにし、且つ即交換させるようにして、オーガのシャーボルト切れによるトラブルを最小限にとどめるようにした。切れた直後であれば苦労せず寒中ではあるが容易に普通のボルト交換と同様に交換できる。そして作業中断時間も最小限で済ませることが出来る。これにより除雪作業における安全性を一段と向上させると共に、シャーボルト切れによる付加的多重トラブルを解消し、作業メインテナンス性を向上させ、安全性に優れ、除雪作業能率を飛躍的に向上させた優れた除雪機を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するために本発明において講じた手段は、原動機を搭載し、雪を削雪し収集するオーガと、雪を吐出させるブロワと、投雪方向を定めるシュータとによって除雪部が構成される歩行型ロータリー式除雪機において、オーガを構成するオーガケース左右のほぼ中央部に、ほぼ四角形の穴を開口し、その開口部の大きさにほぼ相当するほぼ四角形の板状の非磁性体によるカバーを設け(非磁性体カバー)、その非磁性体カバーのオーガ翼に対し反対側、即ちオーガーケース背面側非磁性体カバー部に、磁気式近接センサを、オーガ翼に対向して配設し、鋼板製オーガ翼の左右それぞれの回転動作を検出できるように構成した。
【0009】
そして近接センサの信号によりシャーボルト検知ユニット(コンピュータユニット)で左右それぞれのオーガ翼の回転動作を監視し、回転停止、又は不連続回転、となった場合、オーガ翼をオーガシャフトに固定しているシャーボルトが切断したと左右それぞれに判断し、直ちに操縦者にランプ表示、又はモニタパネルなどで、左右それぞれの警報表示で知らせ、同時に、ブザーを鳴らし、常時操作している除雪部クロスレバーやHSTレバーなどの操作レバーを振動させ、視覚だけでなく、聴覚、体感にも幾重にも訴え、一刻も早く操縦者に気がつかせるように構成した。
【発明の効果】
【0010】
本発明は上記手段を施したことにより以下の効果を有する。
【0011】
除雪作業中、過負荷、衝撃負荷などによるオーガのシャーボルト切れアクシデントがあった場合、検知制御システムが即座に、幾重にも知らせてくれるので、操縦者が即座に気がつくことが出来、素早い対応が可能であり、オーガ動作を見みようとする操縦者の危険行為を未然防止することが出来、安全性が向上すると共に、シャーボルト切れ故障修復の作業性が向上する。
【0012】
シャーボルトが切れたとき即対応できる為、オーガ、ブロワ、シュータ等への雪詰まりや、ボルトのフランジからの抜き取り困難、などのシャーボルト切れによる付加的多重トラブルもほとんど無くなり、故障復旧時間も最小限で済むため、除雪作業性、作業能率が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】歩行型ロータリー除雪機を示す全体図である。
【
図2】歩行型ロータリー除雪機のオーガ部を示す正面図である。
【
図3】オーガ翼のオーガミッション-オーガシャフトへのシャーボルトによるフランジ締結の機構を示す図である。
【
図4】シャーボルト位置及びオーガケースの非磁性体による非磁性体カバー位置を示すオーガ部正面図と近接センサの取り付け位置を示すオーガー部側面図である。
【
図5】オーガケース背面の左側に近接センサを固定した状態を示す図である。
【
図6】オーガケース背面の右側に近接センサを固定した状態を示す図である。
【
図7】シャーポルト切れを検知した場合の警報を示す図である。
【
図8】シャーボルト切れ検知警報の制御フローチャート図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
オーガ翼の回転動作を近接センサで検知しようとするとオーガ翼とオーガケースへの雪付着に左右されない磁気式か超音波式(透過可能20KHz以下)しかない。更にオーガ翼端面とオーガケースとの間の間隙は設計上15mmで(即ち製造直後)、除雪するにつれオーガ翼端面は減っていくため、近接とはいっても検出可能ギャップは20mm以上を必要とする。又オーガ翼の回転検知とはいっても鋼板面ではなく鋼板厚み面(板厚約4.5mm)の検出になる為、可能ではあるが超音波のバースト波反射は不安定になり性能安定性に問題が残る。磁気式でも車輪回転数検知や高速ラインのワーク検知用などに使用される電磁ピックアップ式(又は磁石式)は応答性が高くとも検出可能ギャップが数mmしかなく対象外となり誘導式が残るが、検出可能ギャップと鋼板厚み面の検出条件から通常の高周波(数KHz)励磁とは異なる低周波(1~数百Hz)励磁タイプのものがこの2条件を満たす最適なセンサ方式といえる。
【実施例0015】
本願発明の実施例を添付図面に基づいて説明する。
図1は実施例の除雪機で除雪部側から見た斜視図(上図)と除雪部側真正面(下図)から見た正面図である。除雪機は通常オーガ(1)の左右のオーガ翼L-R(11-12)により積雪を掻き崩したり削雪したりして中央部に収集し取り込み、オーガ翼L-R(11-12)の中央部奥にあるブロワ(図省略)で高速回転の上、ブロワ周速で吐出させ、シュータ(3)によって操縦者の意図する場所に投雪させる。除雪部は手動操作の場合、操縦パネル(6)上の除雪部クロスレバースイッチ(61)でオーガ(1)のリフト位置と左右ローリング位置を操作する(
図7)。投雪も同様にシュータクロスレバースイッチ(62)でシュータ(3)の左右方向や投雪遠近を操作する。除雪機の移動はクローラ(51)や走行ミッション(図省略)などで行い。HSTレバー(64)で前後進とその速度を操縦する。
【0016】
オーガ1を中心した正面図を
図2に、その構成機構を
図3に示す。オーガ(1)はオーガ翼L-R(11-12)の回転中空軸をベベルギヤ式オーガミッション(13)の左右両出力軸であるオーガシャフトL-R(133-134)に回転自在に挿入され、左右一対且つ左右対称にフランジ固定している。ここで左右方向は説明の都合上、オーガ(1)側から見た場合をいう。オーガ翼L-R(11-12)は積もり雪を削雪すれば良いことから、路面保護、パワートレイン保護、などの意味からいたずらに強度や硬度を上げることはせず、軟鋼板で作られており消耗部品扱いにしている。オーガ翼L-R(11-12)は積もり雪を削雪したり掻き崩したりする翼刃として以外に、削雪した雪をオーガ中央、オーガミッション(13)奥のブロワ(2)へ、オーガケース(14)面と除雪進行する削雪面をガイドとして移送する螺旋コンベアとしての働きをする(
図2)。削接された雪はオーガーケース14面に沿って中央のオーガミッション(13)側に移動し、オーガ回転と機体前進の作用によりブロワケース(21)内に送り込まれる。ここでオーガ翼は左右対称ではあるが回転位相差90°になるよう固定し、回転による振動共振を打ち消すようにしており(水泳クロールの手の動き)、ブロワ(2)へも左右から交互に間断なく連続して送り込まれる。ブロワ(2)はオーガ翼L-R(11-12)により削雪、収集した雪を回転遠心力と遠心圧縮機としての圧縮送風力とによりブロワケース(21)の周方向出口に吐出させ半円筒状のシュータ(3)をガイドとして投雪させる。シュータ(3)は左右、上下(遠近)方向の調整が出来、自由に投雪場所を設定できる。
【0017】
図3に左側オーガ機構とシャーボルト機構を詳細に示す。左側オーガ翼L(11)のオーガミッション13側に左オーガ翼側のフランジ、フランジaL(111)を形成し、左側オーガシャフトL(133)に挿入後、オーガミッション(13)の左側フランジ、フランジbL(131)にシャーボルト(112)で固定しフランジ結合している。雪中のオーガ翼L(11)の回転による除雪作業中、このシャーボルト(112)に剪断応力以上のトルクが加わった場合、これが切れオーガ翼L(11)は空転し、オーガ翼やパワートレインを過負荷荷重による破損から守る。右側オーガ翼R(12)についても同様である。除雪過負荷でこれら両方切れる場合は珍しく、通常はどちらか片方が切れるのが普通で、気づかずにそのまま作業を続けると付加的多重トラブルの元になるのは前記の通りである。この保護機能を決めるシャーボルト(112)のサイズは当然のことながら除雪機の大きさに応じて選定される。
図3では保護機構の説明の為、最も基本的な円筒形フランジ形状で示したが、フランジ形状は、フランジ面の凍結固着防止とか、ボルト交換容易性とかで製造元により種々工夫がみられる。しかしシャーボルト切れによる保護機構は基本的には
図3に示すとおりである。
【0018】
図4、
図5、
図6に近接センサの装着機構を示す。
図4、
図5にオーガ翼R(12)の回転を検知する近接センサR(S2)の装着機構を、
図6にオーガ翼L(11)の回転を検知する近接センサL(S1)の装着機構を示す。どちらもオーガケース(14)に固着したセンサブラケットL-R(145-146)に、近接センサL-R(S1-S2)をオーガ翼L-R(145-146)の鋼板厚み面に対向するよう、オーガケース(14)面に接触スレスレに固定している。
図4の下段図にこの状態を真横から見た図を示す。オーガ翼R(12)に対向して近接センサR(S2)をオーガーケース(14)面にセンサブラケットR(146)に固定している。そしてオーガーケース(14)のこの対向部分にセンサから発生する誘導磁束が貫通するようスリット状の穴を空け、そこにオーガーケース鋼板に変わる非磁性体による板状の壁、非磁性体カバーR(142)をケース面に沿って固定するようにした。非磁性体カバーには鋼板と同程度の強度を必要とすることから、今回は加工が比較的容易なポリカーボネート板、板厚4mmのものを使用したが、他に高分子、超高分子ポリエチレン板も使用できる。
【0019】
図4上段図に左右の非磁性体カバーL-R(141-142)をオーガ正面から見た構成を示す。近接センサの選定と合わせて何回か試作試験の末、最適形状を決定した。オーガ翼R(12)の回転検知の場合、翼は上から下へ手前側に回転し螺旋状になっている為、検知スリット壁R(142)に対しては右から左へ鋼板厚み面が通過する。且つ翼は軸対象に2条になっているため1回転で2回通過する。これをオーガーケース(14)背面の近接センサR(S2)で検出する。オーガ翼L(11)の場合は逆に非磁性体カバー(141)に対し鋼板厚み面が左から右へ通過し、それをを近接センサL(S1)で検出する。
【0020】
以上の構成でオーガ翼L-R(11-12)の外周鋼板厚み面と近接センサL-R(S1-S2)との間隙は設計見込みで約25mmになる。20mm以上の間隙で検知出来る近接センサ(もう近接ではない)は方式では限られ、特に磁気式では非常に少ない。今回使用を決めた近接センサは低周波誘導型(渦電流検知型)で性能は、検知可能最大間隙=40mm、安定検知間隙=30mm、発振周波数100Hz、駆動電流0.2A、と通常とは常識外のものである。検知可能間隙が約30mm有るとは言っても励磁周波数100Hzではもはや動体検知用ではなく静止体検知用といえる。しかしオーガ翼L-R(11-12)の回転数はエンジンフルスロットルの時約120rpmで2Hzであり、2条翼からセンサに対しては4Hzであり、今回は正確な回転数検知をすることが目的ではない為ほぼ充分といえる。又検知用スリット壁が当初より大きくなったのは、センサの100Hz発振では、他のビーム磁束(数KHz発振、磁気シールド機構)とは異なり放射(発散)磁束であることに帰因する。更に鋼板厚み面を検出できたのは、検出は鋼板の磁区、磁壁方向にはほとんど影響されず、面というよりその近傍一帯の検知になっている為である。
【0021】
オーガ翼L-R(11-12)の除雪時の回転が見た目ほど高速回転でなかったことが近接検知としては常識外れの構成で回転検知出来た大きな要因である。自動車の車輪回転検知に似た機構ではあるが検出原理は全く異なるロータリー除雪機独自のものといえる。この構成で検出可能間隙5~10mmの余裕があり製造バラツキ、オーガ翼端面の減りは相殺できる。特にオーガ翼の減りについては、掻き崩し能力、削雪能力、排出能力など除雪能力が低下して新品翼への交換時期(人にもよるが)になるまでは回転検知性能は維持出来る。
【0022】
この近接センサのもう一つの問題は駆動電流0.2Aという大電流である。コイル巻き数以外に駆動電流も大幅に上げていることで検出可能間隙が大きくとれているのであろうが、センサの発熱の問題がある。しかし使用場所は常時、雪上、雪中のほぼ外気温5°C以下の積雪環境で天然の冷却環境下にあり、且つ連続除雪作業時間は、方向転換や移動の際、オーガ翼回転は一端停止する為、長くても数分程度で、検知回路もその間停止になり、連続使用とはならず断続使用になる為、より冷却効果は高い。
【0023】
以上の構成で除雪作業中のオーガ翼L-R(11-12)の回転動作を近接センサL-R(S1-S2)で検知し、左右それぞれ、正常回転しているかどうか、左右の回転位相差は正常かどうか、をシャーボルト検知ユニット(U1)が監視し、回転停止、不連続回転(連れ回り)、左右回転位相差異常、などの異常になった場合、シャーボルトL-R(112-122)が切断したと判断し警報を発する。
図7に除雪機の操縦パネル6を示す。オーガ翼L-R(11-12)の回転動作を検知する近接センサL-R(S1-S2)の出力を入力するコンピュータユニットであるシャーボルト検知ユニット(U1)は、機体の内側でこのパネルの裏側に防振機構で配設している。シャーボルト検知ユニット(U1)がシャーボルトL(112)、またはシャーボルトR(122)、または両方が、切れたと判断すると、モニタ&スイッチ操作パネル(63)のモニタ表示部のシャーボルト警報表示(631)をそれぞれ点灯させ、操縦者に知らせる。
【0024】
点灯はより視認性を上げる為、点滅させるようにし、より操縦者が気がつきやすいようにした。又ブザー(65)を鳴らし聴覚にも訴え、常時操作している操作レバーを振動させ体感にも訴えるようにし、一刻も早く操縦者に気がつかせるようにした。
図7右下に除雪部クロスレバー(61)に、バイブレーション発生用振動モーターを内蔵した状態を示す。初心者から熟練者まで人により若干違いはあるものの、除雪作業中は左手でHSTレバー(64)を操作し進行速度を、右手で除雪部クロスレバースイッチ(61)でオーガ(除雪部)(1)を上下左右に調節して除雪負荷をコントロールする。振動モーターは携帯電話やスマホに使われるもので充分内蔵可能である。初心者の中には操縦ハンドル(7)を握りながら除雪進行する者もいるので、これにも振動モーターを装着するようにした。但し鋼管で剛性の高いハンドル(7)ではなく共に握る板金の(デットマン)ハンドルレバー(71)の方に装着するようにした。(図省略)
【0025】
図8にシャーボルト切れ検知制御のフローチャートを示す。除雪機のエンジンが始動され、オーガー(1)の動力クラッチを動作させる照光式押しボタンスイッチであるオーガクラッチスイッチ(632)(
図7)が投入され、除雪作業状態に入ると、シャーボルト検知ユニット(U1)は検知動作を開始し、再度オーガクラッチスイッチ(632)が押され、オーガクラッチが切られ作業が中断するまで検知を継続する。シャーボルト検知ユニット(U1)はこの間、近接センサL-R(S1-S2)から送られるパルス信号をそれぞれ監視し、シャーボルトが切れたと判断したとき、即警報を発する。
【0026】
以上、本願発明により冬季の降積雪時期、厳しい環境の中、一刻を争う除雪作業中に、シャーボルト切れのトラブルから操縦者の危険行為を未然防止し安全性を確保すると共に
作業の大幅な中断に見舞われることが無くなり、不安無く除雪作業が出来るようになった。冬季の除雪作業は厳しい作業であるがこの発明によりトラブルからの安全性の向上と、冬季降雪環境下での作業性と快適性の向上に貢献することが出来た。
検出可能間隙20mm以上というかなりラフな回転体検知方式(但し低速)であり、劣悪な使用環境でも利用できる為、低速の農機(トラクタ、田植機など)、建機などに利用出来る。