IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 三菱自動車工業株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-車両の走行制御装置 図1
  • 特開-車両の走行制御装置 図2
  • 特開-車両の走行制御装置 図3
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024178966
(43)【公開日】2024-12-26
(54)【発明の名称】車両の走行制御装置
(51)【国際特許分類】
   B60W 50/12 20120101AFI20241219BHJP
   F16H 61/02 20060101ALI20241219BHJP
【FI】
B60W50/12
F16H61/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023097396
(22)【出願日】2023-06-14
(71)【出願人】
【識別番号】000006286
【氏名又は名称】三菱自動車工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002664
【氏名又は名称】弁理士法人相原国際知財事務所
(72)【発明者】
【氏名】阿式 俊和
(72)【発明者】
【氏名】酒井 昌司
【テーマコード(参考)】
3D241
3J552
【Fターム(参考)】
3D241BA00
3D241CC11
3D241CE04
3D241DA13Z
3D241DA14Z
3D241DB01Z
3D241DB02Z
3D241DB05Z
3D241DB16Z
3D241DC40Z
3D241DD13Z
3J552MA01
3J552MA06
3J552MA12
3J552NA01
3J552NB01
3J552PA18
3J552PA37
3J552RB00
3J552SA01
3J552SA31
3J552SB13
3J552TB13
3J552UA07
3J552VB12Z
3J552VD02Z
3J552VE03Z
(57)【要約】
【課題】アクセル踏み間違いによる意図しない加速を容易な制御で抑制する車両の走行制御装置を提供する。
【解決手段】内燃機関の出力により変速機を介して走行駆動輪を駆動する車両に備えられ、変速機の変速比を制御するトランスミッション制御部12を有する車両の駆動制御システム1であって、アクセル操作量等の車両情報に基づいて車両の運転者によるアクセルの踏み間違いを検出する踏み間違い判定部21と、踏み間違いが検出された場合に変速機における変速比を固定する変速比設定部22を有する加速抑制制御部11を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関の出力により変速機を介して走行駆動輪を駆動する車両に備えられ、前記変速機の変速比を制御する変速制御部を有する車両の走行制御装置であって、
前記車両の運転者によるアクセルの踏み間違いを検出する踏み間違い検出部と、
前記踏み間違い検出部により前記踏み間違いを検出された場合に、前記変速機における変速比を固定する制御部と、を有する
ことを特徴とする車両の走行制御装置。
【請求項2】
前記車両の走行速度である車速を取得する車速取得部を備え、
前記制御部は、前記踏み間違いが検出されたときに、前記車速が所定速度以下の低速時には前記変速比を所定低速比に固定し、前記車速が前記所定速度より高い高速時には前記変速比を前記所定低速比より減速比の小さい所定高速比に固定する
ことを特徴とする請求項1に記載の車両の走行制御装置。
【請求項3】
前記車両の走行速度である車速を取得する車速取得部を備え、
前記制御部は、前記踏み間違いが検出されたときに、前記車速が前記変速機において最も減速比が高い最低速比での許容最高車速以下である場合には、前記変速比を前記最低速比に固定する
ことを特徴とする請求項1に記載の車両の走行制御装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記踏み間違いが検出されたときに、前記車速が前記許容最高車速より高い場合には、前記変速比を前記変速機において最も減速比の低い最高速比に固定する
ことを特徴とする請求項3に記載の車両の走行制御装置。
【請求項5】
前記車両の走行速度である車速を取得する車速取得部を備え、
前記制御部は、前記踏み間違いが検出されたときに、前記車速が前記変速機において最も減速比の低い最高速比での許容最低車速以上である場合には、前記変速比を前記最高速比に固定する
ことを特徴とする請求項1に記載の車両の走行制御装置。
【請求項6】
前記車両の走行速度である車速を取得する車速取得部と、
前記車両の走行道路環境を取得する道路環境取得部と、を備え、
前記制御部は、前記踏み間違いが検出されたときに、前記車速が前記変速機において最も減速比の高い最低速比での許容最高車速以下であり、かつ前記車速が前記変速機において最も減速比の低い最高速比での許容最低車速以上である場合には、前記走行道路環境に基づいて前記変速比を前記最高速比または前記最低速比のいずれかに固定する
ことを特徴とする請求項1に記載の車両の走行制御装置。
【請求項7】
前記制御部は、前記踏み間違いが検出され、前記車速が前記許容最低車速以上であって、前記変速比を前記最高速比に固定した後に、前記車速が前記変速機において最も減速比の高い最低速比での許容最高車速に達した場合には、前記変速比を前記最低速比に固定する
ことを特徴とする請求項5に記載の車両の走行制御装置。
【請求項8】
前記車両の走行速度である車速を取得する車速取得部を備え、
前記制御部は、前記踏み間違いが検出されたときには、前記変速比を最も減速比の低い最高速比と最も減速比の高い低速比との間で所定時間毎に切り替える
ことを特徴とする請求項1に記載の車両の走行制御装置。
【請求項9】
前記制御部は、前記踏み間違いが検出されたときには、前記変速機におけるキックダウン制御を禁止させる
ことを特徴とする請求項1に記載の車両の走行制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はアクセル誤操作による意図しない加速を抑制する車両の走行制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、アクセルの踏み間違い、すなわち運転者のアクセル誤操作による意図しない車両の加速を抑制する技術が開発されている。
例えば特許文献1には、車両と車両前方の障害物との距離、車両と障害物との相対速度、車両の走行速度、または車両と障害物との相対加速度等に基づいて、車両と障害物との衝突の危険度を算出し、危険度に基づいてアクセル操作量の閾値を設定し、アクセル操作量が閾値を超えた場合に車両の加速を抑制する制御装置が提案されている。特許文献1では、アクセル操作量が閾値を超えた場合、則ちアクセルの踏み間違いであると判定された場合には、エンジンの出力を抑制したりブレーキ装置を作動させたりして車速の上昇を抑える。
【0003】
また、特許文献2には、制限車速と自車速との差に基づいて制限加速度を設定する制御装置が開示されている。更に、特許文献2では、周囲認識カメラから取得した周囲画像やGPS装置により取得した車両の現在位置に基づいて制限車速を設定するとともに、高速道路での走行時での加速不足を回避するために、制限車速が高いほど加速度制限値を大きく設定する制御装置が提案されている。特許文献2では、車両の走行駆動源としてエンジンを搭載した車両において、エンジンの出力を制御して加速抑制が行われることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2013-209056号公報
【特許文献2】国際公開WO2019/008649号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、エンジンの出力制御を行って加速抑制を行うようにすると、他のエンジン制御との影響を考慮する必要があり、制御が複雑化する可能性がある。
また、特許文献2のように車両の周辺環境に基づいてエンジンの出力を抑えるように制御することは、高速走行時や追い越し時以外においてアクセルの踏み間違いが発生することを予測することが難しい状況において適用することが困難である。
【0006】
したがって、エンジンの出力制御を行わずに簡易な制御により、効果的にアクセル踏み間違いによる意図しない加速を抑制する技術が要求されている。
本発明はこのような課題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、アクセル踏み間違いによる意図しない加速を容易な制御で抑制することが可能になる車両の駆動制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するため、本発明の車両の走行制御装置は、内燃機関の出力により変速機を介して走行駆動輪を駆動する車両に備えられ、前記変速機の変速比を制御する変速制御部を有する車両の走行制御装置であって、前記車両の運転者によるアクセルの踏み間違いを検出する踏み間違い検出部と、前記踏み間違い検出部により前記踏み間違いを検出された場合に、前記変速機における変速比を固定する制御部と、を有することを特徴とする。
【0008】
これにより、アクセルの踏み間違いが発生した場合に、変速機における変速比を固定することで、車速の上昇を抑えることができる。
好ましくは、前記車両の走行速度である車速を取得する車速取得部を備え、前記制御部は、前記踏み間違いが検出されたときに、前記車速が所定速度以下の低速時には前記変速比を所定低速比に固定し、前記車速が前記所定速度より高い高速時には前記変速比を前記所定低速比より減速比の小さい所定高速比に固定するとよい。
【0009】
これにより、車両の低速時にアクセルの踏み間違いが起こった場合には、変速比を減速比の高い所定低速比に固定することで、車速を所定低速比での最高車速以下に抑えることができる。
また、車両の高速時にアクセルの踏み間違いが起こった場合には、変速比を所定高速比に固定することで、車両の加速を抑制することができる。
【0010】
好ましくは、前記車両の走行速度である車速を取得する車速取得部を備え、前記制御部は、前記踏み間違いが検出されたときに、前記車速が前記変速機において最も減速比が高い最低速比での許容最高車速以下である場合には、前記変速比を前記最低速比に固定する
とよい。
これにより、車速が最低速比での許容最高車速以下であるときにアクセルの踏み間違いが起こった場合には、変速比を最も減速比の高い最低速比に固定することで、車速が許容最高車速より超えることを抑制することができる。
【0011】
好ましくは、前記制御部は、前記踏み間違いが検出されたときに、前記車速が前記許容最高車速より高い場合には、前記変速比を前記変速機において最も減速比の低い最高速比に固定するとよい。
これにより、車速が最低速比での許容最高車速より高いときにアクセルの踏み間違いが起こった場合には、変速比を最も減速比の低い最高速比に固定することで、車両の加速を抑制することができる。
【0012】
好ましくは、前記車両の走行速度である車速を取得する車速取得部を備え、前記制御部は、前記踏み間違いが検出されたときに、前記車速が前記変速機において最も減速比の低い最高速比での許容最低車速以上である場合には、前記変速比を前記最高速比に固定する
とよい。
これにより、車速が最高速比での許容最低車速以上であるときにアクセルの踏み間違いが起こった場合には、変速比を最も減速比の低い最高速比に固定することで、車両の加速を抑制することができる。
【0013】
好ましくは、前記車両の走行速度である車速を取得する車速取得部と、前記車両の走行道路環境を取得する道路環境取得部と、を備え、前記制御部は、前記踏み間違いが検出されたときに、前記車速が前記変速機において最も減速比の高い最低速比での許容最高車速以下であり、かつ前記車速が前記変速機において最も減速比の低い最高速比での許容最低車速以上である場合には、前記走行道路環境に基づいて前記変速比を前記最高速比または前記最低速比のいずれかに固定するとよい。
【0014】
これにより、アクセルの踏み間違いが起こった場合に走行道路環境に対応して、変速比を最高速比または最低速比のいずれかに固定することで、車速の抑制あるいは加速の抑制を適切に行うことができる。
好ましくは、前記制御部は、前記踏み間違いが検出され、前記車速が前記許容最低車速以上であって、前記変速比を前記最高速比に固定した後に、前記車速が前記変速機において最も減速比の高い最低速比での許容最高車速に達した場合には、前記変速比を前記最低速比に固定するとよい。
【0015】
これにより、アクセルの踏み間違いが起こった場合に低速時では変速比を最高速比に固定することで加速を抑制し、その後車速が上昇した後は変速比を最低速比に固定して車速さらなる上昇を抑制することができる。
好ましくは、前記車両の走行速度である車速を取得する車速取得部を備え、前記制御部は、前記踏み間違いが検出されたときには、前記変速比を最も減速比の低い最高速比と最も減速比の高い低速比との間で所定時間毎に切り替えるとよい。
【0016】
これにより、アクセルの踏み間違いが起こった場合に変速比を所定時間毎に切り替えることで、運転者に異常を認識させることができる。
好ましくは、前記制御部は、前記踏み間違いが検出されたときには、前記変速機におけるキックダウン制御を禁止させるとよい。
これにより、アクセルの踏み間違いが起こった場合にキックダウン制御を禁止させることで、車両の加速を抑制することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明の車両の運転制御装置によれば、アクセルの踏み間違いが発生した場合に、変速機における変速比を固定することで、車速の上昇を抑えることができる。これにより、内燃機関の出力制御を不要として、アクセル踏み間違いによる意図しない加速を容易な制御で効果的に抑制することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の実施形態に係る車両の駆動制御システムの構成図である。
図2】第1実施形態の加速抑制制御の制御手順を示すフローチャートである。
図3】第2実施形態の加速抑制制御の制御手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面に基づき本発明の一実施形態について説明する。
図1は、本発明の実施形態に係る車両の駆動制御システム1(走行制御装置)の構成図である。
本実施形態の駆動制御システム1は、走行駆動源としてエンジン(内燃機関)を搭載し、自動変速機を介してエンジン出力を走行駆動輪に伝達する車両に搭載されている。自動変速機は、トルクコンバータ式やCVT等の各種自動変速機が適用可能である。
【0020】
車両には、走行速度を調節するために運転者が操作するアクセルペダルが備えられている。
アクセルペダルの操作信号は、エンジンや自動変速機等の車両の走行駆動装置の作動制御をするメインコントロールユニット5に入力される。
メインコントロールユニット5は、入出力装置、記憶装置(ROM、RAM、不揮発性RAM等)、中央演算処理装置(CPU)及びタイマ等を含んで構成される制御装置である。
【0021】
図1に示すように、駆動制御システム1は、メインコントロールユニット5内に備えられた加速抑制制御部11と、トランスミッション制御部12(変速制御部)と、エンジン制御部13と、を有している。
トランスミッション制御部12は、車両の変速機における変速比を制御する。
エンジン制御部13は、エンジンにおけるスロットルバルブ等を制御してエンジンの出力を制御する。
【0022】
なお、トランスミッション制御部12及びエンジン制御部13は、メインコントロールユニット5内に備えられていてもよい。
また、車両には、車両前方を撮影する車載カメラ7(道路環境取得部)、及びナビゲーションシステムのような道路の制限車速が記憶された地図データベース8(道路環境取得部)が備えられている。
【0023】
加速抑制制御部11は、各種車両情報を入力し、トランスミッション制御部12に対しキックダウン禁止指示や変速比の指示を行う、また、トランスミッション制御部12への指示に伴い、トランスミッション制御部12からエンジン制御部13に出力抑制指示等が行われる。
車両情報は、例えば車速、アクセル開度、アクセル操作速度、車両加速度、車両傾斜角度、ウインカー(方向指示器)の操作信号、地図情報、車載カメラ情報等である。車両情報は、車両に搭載されたアクセルポジションセンサ4、車速センサ9(車速取得部)等のセンサ、車載カメラ7、地図データベース8等の各種装置から入力した車両の状態、運転操作情報等である。
【0024】
加速抑制制御部11は、踏み間違い判定部21(踏み間違い検出部)と、変速比設定部22を有している。
踏み間違い判定部21は、上記の車両情報を入力し、アクセルの踏み間違い、則ち意図しないアクセルの所定以上の操作を判定する。
踏み間違い判定部21では、例えば車載カメラ7及び地図データベース8より、車両が現在位置する道路(走行道路)の制限車速Vrimを取得し、制限車速Vrimに基づいて、アクセル操作量が100%付近の所定量以上で継続可能な継続許容時間Tfaを設定し、アクセル操作量が所定量以上で継続許容時間Tfa以上継続しているか否かによって、アクセルが踏み間違いか否かを判別すればよい。なお、踏み間違い判定部21におけるアクセル踏み間違い判定については、上記の方法に限定されない。
【0025】
踏み間違い判定部21は、アクセル踏み間違いであることを判定した場合に、メーターパネルやブザー等の警報装置14を作動させて、運転者に警報や注意喚起をする。
変速比設定部22は、踏み間違い判定部21によりアクセル踏み間違いが判定された場合に、トランスミッション制御部12にキックダウン禁止指示及び変速比指示を行う加速抑制制御を実行する。
【0026】
次に、図2図3を用いて、加速抑制制御の詳細を説明する。
図2は、第1実施形態の加速抑制制御の制御手順を示すフローチャートである。
第1実施形態の加速抑制制御は、車両の電源オン時に繰り返し行われる。
始めに、ステップS10では、上記の各種車両情報を取得する。そして、ステップS20に進む。
【0027】
ステップS20では、踏み間違い判定部21において、ステップS10で入力した車両情報に基づいて、車両の走行中においてアクセルの踏み間違いを検知(判定)したか否かを判別する。走行中において踏み間違いを検知した場合には、ステップS30に進む。走行中における踏み間違いを検知していない場合には、ステップS70に進む。
ステップS30では、トランスミッション制御部12にキックダウン制御を禁止する指示を行う。そして、ステップS40に進む。
【0028】
ステップS40では、車速センサ9から現在の車速Vを入力し、現在の車速Vが最低速ギヤの最高速度Vlowgear max(所定速度)以下であるか否かを判別する。最低速ギヤの最高速度Vlowgear maxは、最も減速比の大きい低車速用の変速比(ローギヤ)での最高車速(許容最高車速)である。最低速ギヤの最高速度Vlowgear maxは、エンジンの許容最大回転速度等に基づいてあらかじめ適宜設定すればよい。車速Vが最低速ギヤの最高速度Vlowgear max以下である場合には、ステップS50に進む。車速Vが最低速ギヤの最高速度Vlowgear maxより高い場合には、ステップS60に進む。
【0029】
ステップS50ででは、変速比を最も低速側の変速比(ローギヤ:所定低速比)に固定するように、トランスミッション制御部12に指示をする。そして、本ルーチンを終了する。
ステップS60では、変速比を最も高速側の変速比(ハイギヤ:所定高速比)に固定するように、トランスミッション制御部12に指示をする。そして、本ルーチンを終了する。
【0030】
ステップS70では、変速比を固定しない。すなわち、変速比の固定指示がされている場合には固定指示を解除する。そして、本ルーチンを終了する。
以上により、第1実施形態の加速抑制制御では、車両走行中にアクセルの踏み間違いを検出した場合に、変速機における変速比を固定することで、車速の上昇を抑えることができる。また、キックダウン制御を禁止するので車両の加速を抑制することができる。
【0031】
したがって、エンジンの出力制御を不要として、各種状況においてアクセル踏み間違いによる意図しない加速を容易な制御で抑制することが可能になる。
踏み間違いが検出されたときに、車速Vが最低速ギヤの最高速度Vlowgear max以下の低速時には変速比を最低速比に固定し、車速Vが最低速ギヤの最高速度Vlowgear maxより高い高速時には変速比を最高速比に固定する。
【0032】
これにより、車両の低速時にアクセルの踏み間違いが起こった場合には、変速比を減速比の高い低速ギヤに固定することで、車速の上昇を抑制することができる。また、車両の高速時にアクセルの踏み間違いが起こった場合には、変速比を減速比の小さい高速ギヤに固定することで、車両の加速を抑制することができる。
特に、踏み間違いが検出されたときに、車速Vが最も減速比が高い最低速ギヤの最高速度Vlowgear max以下である場合には、変速比を最低速比(最低速ギヤ)に固定するので、車速を最低速ギヤの最高速度Vlowgear max以下に抑えることができる。
【0033】
また、踏み間違いが検出されたときに、車速Vが最も減速比が高い最低速ギヤの最高速度Vlowgear maxより高い場合には、変速比を最高速比(最高速ギヤ)に固定するので、車両の加速を十分に抑制することができる。
図3は、第2実施形態の加速抑制制御の制御手順を示すフローチャートである。
以下、第1実施形態の加速抑制制御と異なる箇所のみ説明する。
【0034】
ステップS40において、車速Vが最低速ギヤの最高速度Vlowgear max以下である場合には、ステップS110に進む。
ステップS110では、車速センサ9から現在の車速Vを入力し、現在の車速Vが、最高速ギヤの最低速度Vhighgear min以上であるか否かを判別する。最高速ギヤの最低速度Vhighgear minは、最も減速比の小さい高車速用の変速比(ハイギヤ)での最低車速(許容最低車速)である。最高速ギヤの最低速度Vhighgear minは、ノッキングを起こさないようなエンジンの許容最低回転速度等に基づいて適宜設定すればよく、最低速ギヤの最高速度Vlowgear maxよりも低い値である。車速Vが最高速ギヤの最低速度Vhighgear min以上である場合には、ステップS120に進む。車速Vが最低速ギヤの最高速度Vlowgear max未満である場合には、ステップS60に進む。
【0035】
ステップS120では、ステップS60と同様に、変速比を最も高速に固定するように、トランスミッション制御部12に指示をする。そして、ステップS130に進む。
ステップS130では、車速センサ9から現在の車速Vを入力し、現在の車速Vが、最低速ギヤの最高速度Vlowgear max以上であるか否かを判別する。車速Vが最低速ギヤの最高速度Vlowgear max以上である場合には、ステップS50に進む。車速Vが最低速ギヤの最高速度Vlowgear max未満である場合には、ステップS60に進む。
【0036】
以上のように、第2実施形態の加速抑制制御では、アクセルの踏み間違いが検出されたときに、車速Vが最低速ギヤの最高速度Vlowgear max以下であるとともに、最高速ギヤの最低速度V highgear min以上である場合には、まず変速比を最も高速側の変速比に固定する。そして、車速Vが上昇して、車速Vが最低速ギヤの最高速度Vlowgear maxに達した(以上になった)場合には、変速比を最も低速側の変速比に固定する。
【0037】
これにより、アクセルの踏み間違いが起こった場合に、車速Vが最高速ギヤの最低速度V highgear min以上である場合では変速比を最高速比に固定することで、ノッキングを回避しつつ加速を抑制することができる。そして、その後車速が上昇して、車速Vが最低速ギヤの最高速度Vlowgear max以上に達した後は変速比を最低速比に固定して車速のさらなる上昇を抑制することができる。したがって、アクセルの踏み間違いが起こった場合に効果的に車両の加速及び速度上昇を抑えることができる。
【0038】
なお、車速Vが最低速ギヤの最高速度Vlowgear max以下であるとともに、最高速ギヤの最低速度V highgear min以上であることを判定した場合に、更に走行道路環境情報を入力して、変速比の固定制御を行ってもよい。走行道路環境情報は、例えば加速抑制制御部11において、車載カメラ7や地図データベース8から取得した車両の位置情報により、市街地や交差点を走行しているか、あるいは郊外や自動車専用道路を走行しているかを判定した判定結果の情報である。
【0039】
加速抑制制御部11は、車速Vが最低速ギヤの最高速度Vlowgear max以下であるとともに、最高速ギヤの最低速度V highgear min以上であることを判定したときに、市街地や交差点を走行していると判定した場合には、上記ステップS50のように変速比を最も低速側の変速比に固定させる。これにより、車速の上昇を抑えるとともに、エンジンの回転速度を上昇させて騒音の発生を促して、市街地や交差点において車両周辺の歩行者や自転車などへの認知性を高め、車両からの回避する猶予を増大させることができる。
【0040】
また、加速抑制制御部11は、車速Vが最低速ギヤの最高速度Vlowgear max以下であるとともに、最高速ギヤの最低速度V highgear min以上であることを判定したときに、郊外や自動車専用道路を走行していると判定した場合には、上記ステップS60のように変速比を最も高速側の変速比に固定させる。これにより、車両の加速度を抑制することができるので、運転者のパニックの発生を抑制し、アクセル踏み間違いの是正を促すことができるとともに、衝突が発生してしまった場合での被害を軽減させることができる。
【0041】
以上で本発明の説明を終了するが、本発明は上記の実施形態に限定するものではない。
上記の各種制御における詳細について適宜変更してもよい。
例えば加速抑制制御部11は、踏み間違い判定部21においてアクセルの踏み間違いを判定した場合に、変速比を最も減速比の低い最高速比(ハイギヤ)と最も減速比の高い最低速比(ローギヤ)との間で所定時間(例えば2秒程度)毎に切り替えるようにしてもよい。これにより、運転者に異常を認識させることができ、合わせて警報装置14によりアクセルの踏み間違いをしていることを表示、警告することで、運転者のアクセルの踏み込みの解除を促すことができる。
【0042】
また、上記実施形態では、加速抑制制御部11を車両のメインコントロールユニット5に備えているが、メインコントロールユニット5とは別体に備えてもよい。
本発明は変速機を有しアクセルにより走行速度を操作する自走車両に対して広く適用することができる。
【符号の説明】
【0043】
1 駆動制御システム(走行制御装置)
7 車載カメラ(道路環境取得部)
8 地図データベース(道路環境取得部)
9 車速センサ(車速取得部)
12 トランスミッション制御部(変速制御部)
21 踏み間違い判定部(踏み間違い検出部)
22 変速比設定部(制御部)
図1
図2
図3