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特開2024-178971導波管型電力分配器、導波管型電力合成器、アンテナ装置、及びレーダー
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  • 特開-導波管型電力分配器、導波管型電力合成器、アンテナ装置、及びレーダー 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024178971
(43)【公開日】2024-12-26
(54)【発明の名称】導波管型電力分配器、導波管型電力合成器、アンテナ装置、及びレーダー
(51)【国際特許分類】
   H01P 5/12 20060101AFI20241219BHJP
   H01P 1/207 20060101ALI20241219BHJP
【FI】
H01P5/12 D
H01P1/207 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023097409
(22)【出願日】2023-06-14
(71)【出願人】
【識別番号】000166247
【氏名又は名称】古野電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100125645
【弁理士】
【氏名又は名称】是枝 洋介
(74)【代理人】
【識別番号】100145609
【弁理士】
【氏名又は名称】楠屋 宏行
(74)【代理人】
【識別番号】100149490
【弁理士】
【氏名又は名称】羽柴 拓司
(72)【発明者】
【氏名】飯尾 憲一
【テーマコード(参考)】
5J006
【Fターム(参考)】
5J006LA01
5J006LA21
5J006NA06
(57)【要約】
【課題】小型化の実現を図ることが可能な導波管型電力分配器を提供する。
【解決手段】導波管型電力分配器は、電波が入力される第1導波管型共振器と、H面間に形成されたアイリスを通じて第1導波管型共振器に接続された第2導波管型共振器と、H面間に形成されたアイリスを通じて第1導波管型共振器に接続された第3導波管型共振器と、H面間に形成されたアイリスを通じて第2導波管型共振器に接続された第1出力用導波管型線路と、H面間に形成されたアイリスを通じて第2導波管型共振器に接続された第2出力用導波管型線路と、H面間に形成されたアイリスを通じて第3導波管型共振器に接続された第3出力用導波管型線路と、H面間に形成されたアイリスを通じて第3導波管型共振器に接続された第4出力用導波管型線路と、を備える。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電波が入力される第1導波管型共振器と、
H面間に形成されたアイリスを通じて前記第1導波管型共振器に接続された第2導波管型共振器と、
H面間に形成されたアイリスを通じて前記第1導波管型共振器に接続された第3導波管型共振器と、
H面間に形成されたアイリスを通じて前記第2導波管型共振器に接続された第1出力用導波管型線路と、
H面間に形成されたアイリスを通じて前記第2導波管型共振器に接続された第2出力用導波管型線路と、
H面間に形成されたアイリスを通じて前記第3導波管型共振器に接続された第3出力用導波管型線路と、
H面間に形成されたアイリスを通じて前記第3導波管型共振器に接続された第4出力用導波管型線路と、
を備える、導波管型電力分配器。
【請求項2】
H面間に形成されたアイリスを通じて前記第1導波管型共振器に接続された入力用導波管型線路をさらに備える、
請求項1に記載の導波管型電力分配器。
【請求項3】
前記第2導波管型共振器及び前記第3導波管型共振器が接続された前記第1導波管型共振器のH面は、前記入力用導波管型線路が接続された前記第1導波管型共振器のH面の反対側に位置する、
請求項2に記載の導波管型電力分配器。
【請求項4】
前記第1出力用導波管型線路及び前記第2出力用導波管型線路が接続された前記第2導波管型共振器のH面は、前記第1導波管型共振器が接続された前記第2導波管型共振器のH面の反対側に位置する、
請求項1に記載の導波管型電力分配器。
【請求項5】
前記第3出力用導波管型線路及び前記第4出力用導波管型線路が接続された前記第3導波管型共振器のH面は、前記第1導波管型共振器が接続された前記第3導波管型共振器のH面の反対側に位置する、
請求項1に記載の導波管型電力分配器。
【請求項6】
前記第1導波管型共振器、前記第2導波管型共振器、前記第3導波管型共振器、前記第1出力用導波管型線路、前記第2出力用導波管型線路、前記第3出力用導波管型線路、及び前記第4出力用導波管型線路は、共通のE面を有する、
請求項1に記載の導波管型電力分配器。
【請求項7】
前記第1導波管型共振器、前記第2導波管型共振器、前記第3導波管型共振器、前記第1出力用導波管型線路、前記第2出力用導波管型線路、前記第3出力用導波管型線路、及び前記第4出力用導波管型線路となる凹部が一の面に形成されたブロックと、
前記ブロックの前記一の面と接触して前記凹部を覆うカバーと、
をさらに備える、
請求項1に記載の導波管型電力分配器。
【請求項8】
H面間に形成されたアイリスを通じて前記第1導波管型共振器に接続された第4導波管型共振器をさらに備える、
請求項1に記載の導波管型電力分配器。
【請求項9】
H面間に形成されたアイリスを通じて前記第4導波管型共振器に接続された入力用導波管型線路をさらに備える、
請求項8に記載の導波管型電力分配器。
【請求項10】
電波が入力される第1入力用導波管型線路と、
電波が入力される第2入力用導波管型線路と、
電波が入力される第3入力用導波管型線路と、
電波が入力される第4入力用導波管型線路と、
H面間に形成されたアイリスを通じて前記第1入力用導波管型線路及び前記第2入力用導波管型線路に接続された第1導波管型共振器と、
H面間に形成されたアイリスを通じて前記第3入力用導波管型線路及び前記第4入力用導波管型線路に接続された第2導波管型共振器と、
H面間に形成されたアイリスを通じて前記第1導波管型共振器及び前記第2導波管型共振器に接続された第3導波管型共振器と、
を備える、導波管型電力合成器。
【請求項11】
請求項1に記載の導波管型電力分配器または請求項10に記載の導波管型電力合成器を備えるアンテナ装置。
【請求項12】
請求項11に記載のアンテナ装置を備えるレーダー。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導波管型電力分配器、導波管型電力合成器、アンテナ装置、及びレーダーに関する。
【背景技術】
【0002】
非特許文献1には、E面で分岐する分岐回路を利用した導波管アンテナが開示されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】A. Rogers, "Wideband Squintless Linear Arrays", The Marconi Review, No.187, Fourth Quarter 1972, p.221-243
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記非特許文献1の導波管アンテナは、大型であるという課題を抱えている。
【0005】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、その主な目的は、小型化の実現を図ることが可能な導波管型電力分配器、導波管型電力合成器、アンテナ装置、及びレーダーを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明の一の態様の導波管型電力分配器は、電波が入力される第1導波管型共振器と、H面間に形成されたアイリスを通じて前記第1導波管型共振器に接続された第2導波管型共振器と、H面間に形成されたアイリスを通じて前記第1導波管型共振器に接続された第3導波管型共振器と、H面間に形成されたアイリスを通じて前記第2導波管型共振器に接続された第1出力用導波管型線路と、H面間に形成されたアイリスを通じて前記第2導波管型共振器に接続された第2出力用導波管型線路と、H面間に形成されたアイリスを通じて前記第3導波管型共振器に接続された第3出力用導波管型線路と、H面間に形成されたアイリスを通じて前記第3導波管型共振器に接続された第4出力用導波管型線路と、を備える。これによれば、H面間に形成されたアイリスを利用することで、小型化の実現を図ることが可能となる。
【0007】
上記態様において、H面間に形成されたアイリスを通じて前記第1導波管型共振器に接続された入力用導波管型線路をさらに備えてもよい。これによれば、入力用導波管型線路から第1導波管型共振器に電波を入力することが可能となる。
【0008】
上記態様において、前記第2導波管型共振器及び前記第3導波管型共振器が接続された前記第1導波管型共振器のH面は、前記入力用導波管型線路が接続された前記第1導波管型共振器のH面の反対側に位置してもよい。これによれば、入力用導波管型線路の反対側に第2導波管型共振器及び第3導波管型共振器を配置することが可能となる。
【0009】
上記態様において、前記第1出力用導波管型線路及び前記第2出力用導波管型線路が接続された前記第2導波管型共振器のH面は、前記第1導波管型共振器が接続された前記第2導波管型共振器のH面の反対側に位置してもよい。これによれば、第1導波管型共振器の反対側に第1出力用導波管型線路及び第2出力用導波管型線路を配置することが可能となる。
【0010】
上記態様において、前記第3出力用導波管型線路及び前記第4出力用導波管型線路が接続された前記第3導波管型共振器のH面は、前記第1導波管型共振器が接続された前記第3導波管型共振器のH面の反対側に位置してもよい。これによれば、第1導波管型共振器の反対側に第3出力用導波管型線路及び第4出力用導波管型線路を配置することが可能となる。
【0011】
上記態様において、前記第1導波管型共振器、前記第2導波管型共振器、前記第3導波管型共振器、前記第1出力用導波管型線路、前記第2出力用導波管型線路、前記第3出力用導波管型線路、及び前記第4出力用導波管型線路は、共通のE面を有してもよい。これによれば、構造の簡易化を実現することが可能となる。
【0012】
上記態様において、前記第1導波管型共振器、前記第2導波管型共振器、前記第3導波管型共振器、前記第1出力用導波管型線路、前記第2出力用導波管型線路、前記第3出力用導波管型線路、及び前記第4出力用導波管型線路となる凹部が一の面に形成されたブロックと、前記ブロックの前記一の面と接触して前記凹部を覆うカバーと、をさらに備えてもよい。これによれば、構造の簡易化を実現することが可能となる。
【0013】
上記態様において、H面間に形成されたアイリスを通じて前記第1導波管型共振器に接続された第4導波管型共振器をさらに備えてもよい。これによれば、導波管型共振器をさらに多段に配置することが可能となる。
【0014】
上記態様において、H面間に形成されたアイリスを通じて前記第4導波管型共振器に接続された入力用導波管型線路をさらに備えてもよい。これによれば、入力用導波管型線路から第4導波管型共振器に電波を入力することが可能となる。
【0015】
また、本発明の他の態様の導波管型電力合成器は、電波が入力される第1入力用導波管型線路と、電波が入力される第2入力用導波管型線路と、電波が入力される第3入力用導波管型線路と、電波が入力される第4入力用導波管型線路と、H面間に形成されたアイリスを通じて前記第1入力用導波管型線路及び前記第2入力用導波管型線路に接続された第1導波管型共振器と、H面間に形成されたアイリスを通じて前記第3入力用導波管型線路及び前記第4入力用導波管型線路に接続された第2導波管型共振器と、H面間に形成されたアイリスを通じて前記第1導波管型共振器及び前記第2導波管型共振器に接続された第3導波管型共振器と、を備える。これによれば、H面間に形成されたアイリスを利用することで、小型化の実現を図ることが可能となる。
【0016】
また、本発明の他の態様のアンテナ装置は、上記の導波管型電力分配器または上記に記載の導波管型電力合成器を備える。これによれば、アンテナ装置の小型化の実現を図ることが可能となる。
【0017】
また、本発明の他の態様のレーダーは、上記のアンテナ装置を備える。これによれば、小型化が実現したアンテナ装置を備えるレーダーを実現することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】レーダーの例を示す図である。
図2】導波管型電力分配器の例を示す分解斜視図である。
図3】アンテナ指向性の例を示す図である。
図4】導波管型電力分配器の例を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。なお、本明細書と各図において、既出の図に関して前述したものと同様の要素には、同一の符号を付して、詳細な説明を適宜省略することがある。
【0020】
[レーダー]
図1は、実施形態に係るレーダー100の構成例を示すブロック図である。レーダー100は、実施形態に係るアンテナ装置10を備えている。レーダー100は、アンテナ装置10の他に、送受信部11、信号処理部12、及び制御部13をさらに備えている。
【0021】
送受信部11は、変調部及びマグネトロンを含み、信号処理部12からのトリガー信号に応じて変調部で生成されたパルス電圧でマグネトロンを間欠駆動し、送信信号を生成する。アンテナ装置10は、送受信部11からの送信信号を電波パルスとして送信する。
【0022】
また、アンテナ装置10は、受信した反射波を受信信号に変換する。アンテナ装置10からの受信信号は、送受信部11に含まれる周波数変換・増幅回路及び検波回路などを経て、信号処理部12で信号処理され、デジタル信号として制御部13に送り込まれる。
【0023】
レーダー100は、例えばマイクロ波を送受信する船舶用レーダーである。これに限らず、レーダー100は、例えばミリ波を送受信する障害物検知又は衝突防止用の車載レーダー等であってもよい。
【0024】
アンテナ装置10は、以下に説明する実施形態に係る導波管型電力分配器1を備えている。なお、導波管型電力分配器1は、実施形態に係る導波管型電力合成器を兼ねている。すなわち、入出力関係を入れ替えることが可能である。
【0025】
[第1実施形態]
図2は、第1実施形態に係る導波管型電力分配器1Aの例を示す分解斜視図である。導波管型電力分配器1Aは、上面23に凹部20が形成されたブロック2と、ブロック2の上面23と接触して凹部20を覆うカバー3と、を備えている。ブロック2及びカバー3は、例えばアルミニウム等の導電性を有する金属材料で形成されている。
【0026】
導波管型電力分配器1Aは、入力用導波管型線路40、第1導波管型共振器51、第2導波管型共振器52、第3導波管型共振器53、第1出力用導波管型線路61、第2出力用導波管型線路62、第3出力用導波管型線路63、及び第4出力用導波管型線路64を備えている。これらは、ブロック2の凹部20によって構成される。
【0027】
図2中のX方向は、入力用導波管型線路40に対して出力用導波管型線路61-64が配置される方向であり、以下の説明ではX方向を「前方向」、その反対方向を「後方向」ともいう。
【0028】
Y方向は、出力用導波管型線路61-64が配列する方向であり、以下の説明ではY方向を「右方向」、その反対方向を「左方向」ともいう。
【0029】
Z方向は、ブロック2に対してカバー3が配置される方向であり、以下の説明ではZ方向を「上方向」、その反対方向を「下方向」ともいう。上下方向は、導波管型電力分配器1A内を伝搬する電波の電界方向である。電波は、TEモードで伝搬する。
【0030】
本明細書では、電界方向と直交する面を「E面」といい、E面と直交する面を「H面」という。すなわち、ブロック2の凹部20の底面25及びカバー4の下面が「E面」となり、凹部20の側面27が「H面」となる。
【0031】
入力用導波管型線路40(以下、単に「入力用線路40」ともいう)には、送受信部11(図1参照)からの電波が入力される。
【0032】
第1導波管型共振器51(以下、単に「第1共振器51」ともいう)は、アイリス5aを通じて入力用線路40に接続されており、入力用線路40から電波が入力される。
【0033】
第2導波管型共振器52(以下、単に「第2共振器52」ともいう)は、アイリス5bを通じて第1共振器51に接続されており、第1共振器51から電波が入力される。
【0034】
第3導波管型共振器53(以下、単に「第3共振器53」ともいう)も、アイリス5cを通じて第1共振器51に接続されており、第1共振器51から電波が入力される。
【0035】
第1共振器51に入力された電波は、第1共振器51から第2共振器52と第3共振器53に分配される。
【0036】
第1出力用導波管型線路61(以下、単に「第1出力用線路61」ともいう)は、アイリス6aを通じて第2共振器52に接続されており、第2共振器52から電波が入力される。
【0037】
第2出力用導波管型線路62(以下、単に「第2出力用線路62」ともいう)も、アイリス6bを通じて第2共振器52に接続されており、第2共振器52から電波が入力される。
【0038】
第2共振器52に入力された電波は、第2共振器52から第1出力用線路61と第2出力用線路6に分配される。
【0039】
第3出力用導波管型線路63(以下、単に「第3出力用線路63」ともいう)は、アイリス6cを通じて第3共振器53に接続されており、第3共振器53から電波が入力される。
【0040】
第4出力用導波管型線路64(以下、単に「第4出力用線路64」ともいう)も、アイリス6dを通じて第3共振器53に接続されており、第3共振器53から電波が入力される。
【0041】
第3共振器53に入力された電波は、第3共振器53から第3出力用線路63と第4出力用線路64に分配される。
【0042】
出力用線路61-64は、前方に向けて開口しており、アンテナ装置10(図1参照)のアンテナエレメントとして機能する。これに限らず、出力用線路61-64は、別体のアンテナエレメントに電波を出力してもよい。
【0043】
なお、導波管型電力分配器1Aを導波管型電力合成器として使用する場合には、入力用線路40が出力用線路として使用され、出力用線路61-64が入力用線路として使用される。
【0044】
入力用線路40、第1共振器51、第2共振器52、第3共振器53、第1出力用線路61、第2出力用線路62、第3出力用線路63、及び第4出力用線路64は、共通のE面を有している。すなわち、それぞれのE面が同一平面に含まれている。共通のE面は、凹部20の底面25及びカバー3の下面によって構成される。
【0045】
アイリス5a-5c,6a-6dは、H面間に形成されている。すなわち、アイリス5a-5c,6a-6dは、ブロック2Aに形成された凹部20の側面27を貫通するように形成されている。
【0046】
アイリス5aは、入力用線路40の前側のH面と、第1共振器51の後側のH面との間に形成されている。
【0047】
アイリス5bは、第1共振器51の前側のH面と、第2共振器52の後側のH面との間に形成されている。詳しくは、アイリス5bは、第1共振器51の前側のH面の左部と、第2共振器52の後側のH面の右部との間に形成されている。
【0048】
アイリス5cは、第1共振器51の前側のH面と、第3共振器53の後側のH面との間に形成されている。詳しくは、アイリス5cは、第1共振器51の前側のH面の右部と、第3共振器53の後側のH面の左部との間に形成されている。
【0049】
アイリス6aは、第2共振器52の前側のH面と、第1出力用線路61の後側のH面との間に形成されている。詳しくは、アイリス6aは、第2共振器52の前側のH面の左部に形成されている。第1出力用線路61は、前方に向けて開口している。
【0050】
アイリス6bは、第2共振器52の前側のH面と、第2出力用線路62の後側のH面との間に形成されている。詳しくは、アイリス6bは、第2共振器52の前側のH面の右部に形成されている。第2出力用線路62は、前方に向けて開口している。
【0051】
アイリス6cは、第3共振器53の前側のH面と、第3出力用線路63の後側のH面との間に形成されている。詳しくは、アイリス6cは、第3共振器53の前側のH面の左部に形成されている。第3出力用線路63は、前方に向けて開口している。
【0052】
アイリス6dは、第3共振器53の前側のH面と、第4出力用線路64の後側のH面との間に形成されている。詳しくは、アイリス6dは、第3共振器53の前側のH面の右部に形成されている。第4出力用線路64は、前方に向けて開口している。
【0053】
このように、H面間に形成されたアイリスにより互いに接続された複数の導波管を含む平面状の回路、すなわちE面の面内方向に配列した複数の導波管を含む平面状の回路を「H面導波管回路」という。
【0054】
第1共振器51の後側のH面には入力用線路40が接続されており、第1共振器51の前側のH面には第2共振器52及び第3共振器53が接続されている。すなわち、第2共振器52及び第3共振器53が接続された第1共振器51のH面は、入力用線路40が接続された第1共振器51のH面の反対側に位置している。
【0055】
第2共振器52の後側のH面には第1共振器51が接続されており、第2共振器52の前側のH面には第1出力用線路61及び第2出力用線路62が接続されている。すなわち、第1出力用線路61及び第2出力用線路62が接続された第2共振器52のH面は、第1共振器51が接続された第2共振器52のH面の反対側に位置している。
【0056】
第3共振器53の後側のH面には第1共振器51が接続されており、第3共振器53の前側のH面には第3出力用線路63及び第4出力用線路64が接続されている。すなわち、第3出力用線路63及び第4出力用線路64が接続された第3共振器53のH面は、第1共振器51が接続された第3共振器53のH面の反対側に位置している。
【0057】
以上に説明した導波管型電力分配器1Aでは、3つの共振器51-53及び4つの出力用線路61-64がH面で分岐してツリー構造状(又はトーナメント状)に配置されているため、小型化を実現することができる。
【0058】
また、導波管型電力分配器1Aでは、入力用線路40と4つの出力用線路61-64との間に、3つの共振器51-53がツリー構造状に配置されているため、入力用線路40と4つの出力用線路61-64との間の各入出力経路は、3つの共振器51-53のうちの2つを経由する。
【0059】
これら3つの共振器51-53のうちの2つを結ぶ結合係数、及び入出力経路の外部Qというエネルギー比によって求まる量を所望の値に選ぶことによって、入力用線路40に入力された電力は、所望の電力分配比をもって出力用線路61-64に分配される。さらに、これらの共振器51-53がフィルタ機能を有するように設計することで、不要なノイズ輻射を抑えることができる。
【0060】
図3に、導波管型電力分配器1Aのアンテナ構造を24GHz帯で設計したときのアンテナ指向性の例を示す。出力用線路61-64のアンテナ開口からの輻射は、等価回路的にほぼ同位相である。同図によれば、導波管型電力分配器1Aは簡便な構造ながら、良好なアンテナ特性を示すことが分かる。
【0061】
[第2実施形態]
図4は、第2実施形態に係る導波管型電力分配器1Bの例を示す平面図である。導波管型電力分配器1Bは、入力用線路40、第1ないし第8共振器51-56,71,72、及び第1ないし第8出力用線路61-68を備えている。
【0062】
このうち、第1ないし第3共振器51-53及び第1ないし第4出力用線路61-64については、上記導波管型電力分配器1Aで説明したとおりである。また、第4ないし第6共振器54-56及び第5ないし第8出力用線路65-68についても、これと同様である。
【0063】
第1共振器51は、アイリス5dを通じて第7共振器71に接続されており、第7共振器71から電波が入力される。第7共振器71は、アイリス7aを通じて入力用線路40に接続されており、入力用線路40から電波が入力される。
【0064】
アイリス5dは、第7共振器71の前側のH面と、第1共振器51の後側のH面との間に形成されている。詳しくは、アイリス5dは、第7共振器71の前側のH面の左部と、第1共振器51の後側のH面の右部との間に形成されている。
【0065】
アイリス7aは、入力用線路40の前側のH面と、第7共振器71の後側のH面との間に形成されている。詳しくは、アイリス7aは、入力用線路40の前側のH面の左部と、第7共振器71の後側のH面の右部との間に形成されている。
【0066】
第4共振器54は、アイリス5eを通じて第8共振器72に接続されており、第8共振器72から電波が入力される。第8共振器72は、アイリス7bを通じて入力用線路40に接続されており、入力用線路40から電波が入力される。
【0067】
アイリス5eは、第8共振器72の前側のH面と、第4共振器54の後側のH面との間に形成されている。詳しくは、アイリス5eは、第8共振器72の前側のH面の右部と、第4共振器54の後側のH面の左部との間に形成されている。
【0068】
アイリス7bは、入力用線路40の前側のH面と、第8共振器72の後側のH面との間に形成されている。詳しくは、アイリス7bは、入力用線路40の前側のH面の右部と、第8共振器72の後側のH面の右部との間に形成されている。
【0069】
入力用線路40に入力された電力は、入力用線路40から第7共振器71と第8共振器72に分配される。これに限らず、第7共振器71と第8共振器72は、1つの共振器であってもよい。
【0070】
第7共振器71の後側のH面には入力用線路40が接続されており、第7共振器71の前側のH面には第1共振器51が接続されている。すなわち、第1共振器51が接続された第7共振器71のH面は、入力用線路40が接続された第7共振器71のH面の反対側に位置している。
【0071】
第8共振器72の後側のH面には入力用線路40が接続されており、第8共振器72の前側のH面には第4共振器54が接続されている。すなわち、第4共振器54が接続された第8共振器72のH面は、入力用線路40が接続された第8共振器72のH面の反対側に位置している。
【0072】
以上に説明したように、導波管型電力分配器1Bでは、入力用線路40と8つの出力用線路61-68との間に、8つの共振器51-56,71,72がツリー構造状に配置されている。このため、入力用線路40と8つの出力用線路61-68との間の各入出力経路は、8つの共振器51-56,71,72のうちの3つを経由する。
【0073】
これにより、導波管型電力分配器1Bでは、上記導波管型電力分配器1Aと比べて、さらなる高周波数選択制及びビーム幅狭小化が可能となる。
【0074】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は以上に説明した実施形態に限定されるものではなく、種々の変更が当業者にとって可能であることはもちろんである。
【0075】
カバー3の形状は、板状に限られない。ブロック2の凹部20と面対称の凹部をカバー3にも形成し、凹部同士を合わせることで導波管を構成してもよい。
【0076】
また、出力用線路61-68の数は、4本又は8本に限られない。共振器のツリー構造状の配置を利用して出力用線路をさらに増やしてもよい。
【0077】
以下、本発明の代表的な実施形態を列挙する。
【0078】
(1)
電波が入力される第1導波管型共振器と、
H面間に形成されたアイリスを通じて前記第1導波管型共振器に接続された第2導波管型共振器と、
H面間に形成されたアイリスを通じて前記第1導波管型共振器に接続された第3導波管型共振器と、
H面間に形成されたアイリスを通じて前記第2導波管型共振器に接続された第1出力用導波管型線路と、
H面間に形成されたアイリスを通じて前記第2導波管型共振器に接続された第2出力用導波管型線路と、
H面間に形成されたアイリスを通じて前記第3導波管型共振器に接続された第3出力用導波管型線路と、
H面間に形成されたアイリスを通じて前記第3導波管型共振器に接続された第4出力用導波管型線路と、
を備える、導波管型電力分配器。
【0079】
(2)
H面間に形成されたアイリスを通じて前記第1導波管型共振器に接続された入力用導波管型線路をさらに備える、
(1)に記載の導波管型電力分配器。
【0080】
(3)
前記第2導波管型共振器及び前記第3導波管型共振器が接続された前記第1導波管型共振器のH面は、前記入力用導波管型線路が接続された前記第1導波管型共振器のH面の反対側に位置する、
(2)に記載の導波管型電力分配器。
【0081】
(4)
前記第1出力用導波管型線路及び前記第2出力用導波管型線路が接続された前記第2導波管型共振器のH面は、前記第1導波管型共振器が接続された前記第2導波管型共振器のH面の反対側に位置する、
(1)ないし(3)の何れかに記載の導波管型電力分配器。
【0082】
(5)
前記第3出力用導波管型線路及び前記第4出力用導波管型線路が接続された前記第3導波管型共振器のH面は、前記第1導波管型共振器が接続された前記第3導波管型共振器のH面の反対側に位置する、
(1)ないし(4)の何れかに記載の導波管型電力分配器。
【0083】
(6)
前記第1導波管型共振器、前記第2導波管型共振器、前記第3導波管型共振器、前記第1出力用導波管型線路、前記第2出力用導波管型線路、前記第3出力用導波管型線路、及び前記第4出力用導波管型線路は、共通のE面を有する、
(1)ないし(5)の何れかに記載の導波管型電力分配器。
【0084】
(7)
前記第1導波管型共振器、前記第2導波管型共振器、前記第3導波管型共振器、前記第1出力用導波管型線路、前記第2出力用導波管型線路、前記第3出力用導波管型線路、及び前記第4出力用導波管型線路となる凹部が一の面に形成されたブロックと、
前記ブロックの前記一の面と接触して前記凹部を覆うカバーと、
をさらに備える、
(1)ないし(6)の何れかに記載の導波管型電力分配器。
【0085】
(8)
H面間に形成されたアイリスを通じて前記第1導波管型共振器に接続された第4導波管型共振器をさらに備える、
(1)、(4)ないし(8)の何れかに記載の導波管型電力分配器。
【0086】
(9)
H面間に形成されたアイリスを通じて前記第4導波管型共振器に接続された入力用導波管型線路をさらに備える、
(8)に記載の導波管型電力分配器。
【0087】
(10)
電波が入力される第1入力用導波管型線路と、
電波が入力される第2入力用導波管型線路と、
電波が入力される第3入力用導波管型線路と、
電波が入力される第4入力用導波管型線路と、
H面間に形成されたアイリスを通じて前記第1入力用導波管型線路及び前記第2入力用導波管型線路に接続された第1導波管型共振器と、
H面間に形成されたアイリスを通じて前記第3入力用導波管型線路及び前記第4入力用導波管型線路に接続された第2導波管型共振器と、
H面間に形成されたアイリスを通じて前記第1導波管型共振器及び前記第2導波管型共振器に接続された第3導波管型共振器と、
を備える、導波管型電力合成器。
【0088】
(11)
(1)ないし(9)の何れかに記載の導波管型電力分配器または(10)に記載の導波管型電力合成器を備えるアンテナ装置。
【0089】
(12)
(11)に記載のアンテナ装置を備えるレーダー。
【符号の説明】
【0090】
1 導波管型電力分配器(導波管型電力合成器)、2 ブロック、20 凹部、23 上面、25 底面、27 側面、3 カバー、40 入力用導波管型線路、51-56 導波管型共振器、5a-5g アイリス、61-68 出力用導波管型線路、6a-6h アイリス、71,72 導波管型共振器、7a,7b アイリス、10 アンテナ装置、11 送受信部、12 信号処理部、13 制御部、100 レーダー

図1
図2
図3
図4