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特開2024-1789761液型接着剤組成物およびそれを用いた接着構造物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024178976
(43)【公開日】2024-12-26
(54)【発明の名称】1液型接着剤組成物およびそれを用いた接着構造物
(51)【国際特許分類】
   C09J 175/04 20060101AFI20241219BHJP
   C08G 18/42 20060101ALI20241219BHJP
   C08G 18/32 20060101ALI20241219BHJP
   C08G 18/65 20060101ALI20241219BHJP
   C08G 18/72 20060101ALI20241219BHJP
   C08G 18/12 20060101ALI20241219BHJP
【FI】
C09J175/04
C08G18/42 008
C08G18/32 006
C08G18/65 011
C08G18/72
C08G18/12
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023097416
(22)【出願日】2023-06-14
(71)【出願人】
【識別番号】000222417
【氏名又は名称】トーヨーポリマー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100142365
【弁理士】
【氏名又は名称】白井 宏紀
(74)【代理人】
【識別番号】100146064
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 玲子
(72)【発明者】
【氏名】厳本 朋哉
【テーマコード(参考)】
4J034
4J040
【Fターム(参考)】
4J034CA04
4J034CB03
4J034CC03
4J034DA01
4J034DB04
4J034DC02
4J034DC43
4J034DF01
4J034DF21
4J034DF22
4J034HA01
4J034HA07
4J034HA08
4J034HA15
4J034HB07
4J034HC03
4J034HC12
4J034HC22
4J034HC46
4J034HC52
4J034HC61
4J034HC64
4J034HC71
4J034HC73
4J034QA05
4J034QB12
4J034RA08
4J040EF051
4J040EF111
4J040EF131
4J040EF281
4J040EF282
4J040JA13
4J040KA16
4J040KA23
4J040LA01
4J040LA06
4J040LA08
4J040MA08
4J040MA10
4J040NA06
(57)【要約】
【課題】 低温環境下でも凍結せず、被覆対象の凹凸部や角部におけるシート等の浮きを抑制することができ、接着剤として良好な接着強度を有する1液型接着剤組成物およびそれを用いた接着構造物を提供する。
【解決手段】 ポリウレタン樹脂(A)、有機溶剤(B)および架橋剤(C)を含み、ポリウレタン樹脂(A)は、ポリエステルポリオール(a-1)、水酸基を2個以上含むとともに分岐が2つ以上ある分岐ポリオール(a-2)およびイソシアネート(a-3)の反応物であって、末端がイソシアネート基であるポリウレタン樹脂であり、ポリエステルポリオール(a-1)は、イソフタル酸およびテレフタル酸のいずれか一方または両方と、ジオールとの反応物を含み、架橋剤(C)は、多官能イソシアネートおよび多官能イソシアネートのアダクト体の少なくとも一方を含むことを特徴とする1液型接着剤組成物。
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリウレタン樹脂(A)、有機溶剤(B)および架橋剤(C)を含み、
前記ポリウレタン樹脂(A)は、ポリエステルポリオール(a-1)、水酸基を2個以上含むとともに分岐が2つ以上ある分岐ポリオール(a-2)およびイソシアネート(a-3)の反応物であって、末端がイソシアネート基であるポリウレタン樹脂であり、
前記ポリエステルポリオール(a-1)は、イソフタル酸およびテレフタル酸のいずれか一方または両方と、ジオールとの反応物を含み、
前記架橋剤(C)は、多官能イソシアネートおよび多官能イソシアネートのアダクト体の少なくとも一方を含むことを特徴とする、1液型接着剤組成物。
【請求項2】
前記有機溶剤(B)は、メチルエチルケトン、カルボン酸エステルとメチルエチルケトンとの混合物、または、アセトンとメチルエチルケトンとの混合物である、請求項1記載の1液型接着剤組成物。
【請求項3】
前記架橋剤(C)は、トルエンジイソシアネートアダクト体であり、
前記ポリウレタン樹脂(A)および前記有機溶剤(B)の合計量に対する前記架橋剤(C)の割合が、1重量%から10重量%の範囲内にある、請求項1記載の1液型接着剤組成物。
【請求項4】
前記分岐ポリオール(a-2)は、ネオペンチルグリコールおよびブチルエチルプロパンジオールのいずれか一方または両方である、請求項1記載の1液型接着剤組成物。
【請求項5】
前記ジオールは、3-メチル-1,5-ペンタンジオールである、請求項1記載の1液型接着剤組成物。
【請求項6】
前記ポリウレタン樹脂(A)の数平均分子量は、18,000以上49,000以下の範囲内にある、請求項1記載の1液型接着剤組成物。
【請求項7】
前記ポリエステルポリオール(a-1)に対する前記分岐ポリオール(a-2)のモル比が、0.5以上4未満の範囲内にある、請求項1記載の1液型接着剤組成物。
【請求項8】
第1被着体と第2被着体とが1液型接着剤組成物によって接着された接着構造物であって、
前記第1被着体は、長手方向に延びる角部を有する柱状の金属、木材、または、樹脂であり、
前記第2被着体は、塩化ビニルシートまたはオレフィンシートであり、
前記1液型接着剤組成物は、
ポリウレタン樹脂(A)、有機溶剤(B)および架橋剤(C)を含み、
前記ポリウレタン樹脂(A)は、ポリエステルポリオール(a-1)、水酸基を2個以上含むとともに分岐が2つ以上ある分岐ポリオール(a-2)およびイソシアネート(a-3)の反応物であって、末端がイソシアネート基であるポリウレタン樹脂であり、
前記ポリエステルポリオール(a-1)は、イソフタル酸およびテレフタル酸のいずれか一方または両方と、ジオールとの反応物を含み、
前記架橋剤(C)は、多官能イソシアネートおよび多官能イソシアネートのアダクト体の少なくとも一方を含む
ことを特徴とする、接着構造物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、1液型接着剤組成物それを用いた接着構造物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、金属、木材、プラスチック等の各種材料に樹脂製の化粧シートをラッピングする場合、熱可塑性ポリウレタン樹脂と溶剤とを含む主剤と、ポリイソシアネート硬化剤とを混合して用いる2液型接着剤が使用されてきた。ラッピング用途においては、被覆対象に凹凸部や角部がある場合、接着後の当該部分において樹脂シートの浮きが発生しやすい。そのため、接着剤の初期接着性や常態接着強度を向上させる検討が行われている(例えば、特許文献1、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2016-88957号公報
【特許文献2】特開平09-241606号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、各特許文献に開示されたラッピング用の2液型接着剤は、熱可塑性ポリウレタン樹脂の分子量が大きく、冬期等の低温環境下で、凍結したり析出したりする場合がある。凍結した場合、昇温させて溶かす手間が必要になる。また、2液型接着剤は、現場における一定混合比での混合が必要であり、作業の効率化や接着特性の安定化といった観点から、1液型の接着剤が求められている。
【0005】
本発明は上記課題を解決するものであり、低温環境下でも凍結せず、被覆対象の凹凸部や角部におけるシート等の浮きを抑制することができ、接着剤として良好な接着強度を有する1液型接着剤組成物およびそれを用いた接着構造物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の1液型接着剤組成物は、
ポリウレタン樹脂(A)、有機溶剤(B)および架橋剤(C)を含み、
前記ポリウレタン樹脂(A)は、ポリエステルポリオール(a-1)、水酸基を2個以上含むとともに分岐が2つ以上ある分岐ポリオール(a-2)およびイソシアネート(a-3)の反応物であって、末端がイソシアネート基であるポリウレタン樹脂であり、
前記ポリエステルポリオール(a-1)は、イソフタル酸およびテレフタル酸のいずれか一方または両方と、ジオールとの反応物を含み、
前記架橋剤(C)は、多官能イソシアネートおよび多官能イソシアネートのアダクト体の少なくとも一方を含むことを特徴とする。
【0007】
本発明の1液型接着剤組成物において、前記有機溶剤(B)は、メチルエチルケトン、カルボン酸エステルとメチルエチルケトンとの混合物、または、アセトンとメチルエチルケトンとの混合物であることが好ましい。
【0008】
本発明の1液型接着剤組成物において、前記架橋剤(C)は、トルエンジイソシアネートアダクト体であり、
前記ポリウレタン樹脂(A)および前記有機溶剤(B)の合計量に対する前記架橋剤(C)の割合が、1重量%から10重量%の範囲内にあることが好ましい。
【0009】
本発明の1液型接着剤組成物において、前記分岐ポリオール(a-2)は、ネオペンチルグリコールおよびブチルエチルプロパンジオールのいずれか一方または両方であることが好ましい。
【0010】
本発明の1液型接着剤組成物において、前記ジオールは、3-メチル-1,5-ペンタンジオールであることが好ましい。
【0011】
本発明の1液型接着剤組成物において、前記ポリウレタン樹脂(A)の数平均分子量は、18,000以上49,000以下の範囲内にあることが好ましい。
【0012】
本発明の1液型接着剤組成物において、前記ポリエステルポリオール(a-1)に対する前記分岐ポリオール(a-2)のモル比が、0.5以上4未満の範囲内にあることが好ましい。
【0013】
本発明の接着構造物は、第1被着体と第2被着体とが1液型接着剤組成物によって接着された接着構造物であって、
前記第1被着体は、長手方向に延びる角部を有する柱状の金属、木材、または、樹脂であり、
前記第2被着体は、塩化ビニルシートまたはオレフィンシートであり、
前記1液型接着剤組成物は、
ポリウレタン樹脂(A)、有機溶剤(B)および架橋剤(C)を含み、
前記ポリウレタン樹脂(A)は、ポリエステルポリオール(a-1)、水酸基を2個以上含むとともに分岐が2つ以上ある分岐ポリオール(a-2)およびイソシアネート(a-3)の反応物であって、末端がイソシアネート基であるポリウレタン樹脂であり、
前記ポリエステルポリオール(a-1)は、イソフタル酸およびテレフタル酸のいずれか一方または両方と、ジオールとの反応物を含み、
前記架橋剤(C)は、多官能イソシアネートおよび多官能イソシアネートのアダクト体の少なくとも一方を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、低温環境下でも凍結せず、被覆対象の凹凸部や角部におけるシート等の浮きを抑制することができ、接着剤として良好な接着強度を有する1液型接着剤組成物およびそれを用いた接着構造物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
従来、ラッピング用途のウレタン接着剤には、接着力等を勘案して、2液型接着剤が用いられている。接着力の確保のため、一方の液には、分子量が例えば10万以上の化合物(樹脂)や粘着付与樹脂が含有されている。しかし、分子量が大きい化合物や粘着付与樹脂は、低温環境下にて、凍結および溶剤からの分離(析出)が生じやすい。使用するには、時間をかけて、凍結した接着剤を温めた上、2液の混合にまつわる手間が必要となるため、生産性の面で非効率である。ここで、今までラッピング用途の一液型接着剤は実用化されていなかった。本発明の発明者は、材料を問わずに良好な接着強度を有し、低温環境下での凍結、析出がなく、実用的な1液型接着剤組成物の構成を見出した。
【0016】
本発明の実施形態に係る1液型接着剤組成物は、ポリウレタン樹脂(A)と有機溶剤(B)と架橋剤(C)とを含んでいる。前記ポリウレタン樹脂(A)は、ポリエステルポリオール(a-1)、水酸基を2個以上含むとともに分岐が2つ以上ある分岐ポリオール(a-2)およびイソシアネート(a-3)の反応物であって、末端がイソシアネート基であるポリウレタン樹脂である。
【0017】
ポリエステルポリオールは、多塩基酸と二価アルコールとを縮合反応することによって得られる。本発明におけるポリエステルポリオール(a-1)は、イソフタル酸およびテレフタル酸のいずれか一方または両方と、ジオールとの反応物を含んでいる。前記ジオールは、分岐を有する非晶性のポリオールである。例えば、前記ジオールは、1つの分岐を有する。例えば、前記ジオールは、3-メチル-1,5-ペンタンジオールであることが好ましい。ポリエステルポリオール(a-1)が、非晶性のフタル酸と、非晶性の3-メチル-1,5-ペンタンジオールとを含むと、結晶化しづらくなる。そのため、1液型接着剤組成物は、冬季の屋外でも凍らず、不溶物が析出しない。
【0018】
本発明における分岐ポリオール(a-2)は、水酸基を2個以上含むとともに分岐を2つ以上有するポリオールである。分岐ポリオール(a-2)は、前記ジオールよりも分岐が多くてもよい。例えば、分岐ポリオール(a-2)は、2,2-ジメチル-1,3-プロパンジオール(ネオペンチルグリコール、NPG)、2,2-ジエチル-1,3-プロパンジオール、2-メチル-2-プロピル-1,3-プロパンジオール、2-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオール(ブチルエチルプロパンジオール、BEPG)、2,2-ジブチル-1,3-プロパンジオール、2,3-ジメチル-2,3-ブタンジオール(ピナコール)、2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオール、(2S,4S)-(+)-2,4-ペンタンジオール等の群から1または複数選ばれる。(a-2)成分としては、硬くて(室温で固体で)非晶質のものだと、貼り合わせ直後の浮きを抑制することができる。入手容易性、価格等の観点から、分岐ポリオール(a-2)は、ネオペンチルグリコールおよびブチルエチルプロパンジオールのいずれか一方または両方であることが好ましい。
【0019】
イソシアネート(a-3)は、4,4-ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、2,4-ジフェニルメタンジイソシアネートまたはポリメリックジフェニルメタンジイソシアネート、メチレンジイソシアネート、エチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、ドデカメチレンジイソシアネート、2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート(LDI)、1,3,6-ヘキサメチレントリイソシアネート等の脂肪族イソシアネート、水素添加-4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート(水添MDI)、水素添加-キシリレンジイソシアネート(水添XDI)、1,4-シクロヘキサンジイソシアネート、水素添加-2,4-トリレンジイソシアネート(水添TDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)等の脂環族イソシアネート、キシリレンジイソシアネート(XDI)、テトラメチルキシリレンジイソシアネート(TMXDI)等の芳香脂肪族イソシアネート等、1,4-ジフェニルジイソシアネート、2,4-または2,6-トリレンジイソシアネート(TDI)、1,5-ナフタレンジイソシアネート(NDI)、3,3’-ジメチル-4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、O-トリジンジイソシアネート、粗製TDI、ポリフェニルメタンポリイソシアネート(粗MDI)、トリフェニルメタントリイソシアネート、トリス(イソシアネートフェニル)チオホスフェート等芳香族イソシアネート等の群から1または複数選ばれる。接着剤の濡れ性および接着強度を高めることができるので、これらの中でも、4,4-ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)を含むことが、好ましい。4,4-ジフェニルメタンジイソシアネートは、例えば、ミリオネートMT、MT-F、MTNBP、NM等として東ソー株式会社から販売されている。なお、ポリメリックジフェニルメタンジイソシアネートが用いられてもよい。ポリメリックジフェニルメタンジイソシアネートは、例えば、ミリオネートMR-100、MR-200、MR-400等として東ソー株式会社から、「ルプラネート」(登録商標)M20S等としてBASF社から販売されている。
【0020】
本発明の1液型接着剤組成物において、前記ポリウレタン樹脂(A)の数平均分子量は、18,000以上49,000以下の範囲内にあることが好ましい。一般に、分子量が大きいほど、低温時に、樹脂が析出しやすくなる傾向にあるが、前記ポリウレタン樹脂(A)の平均分子量が前記範囲内に抑えられていることで、低温での析出が抑制される。前記分子量は、22,000以上48,000以下の範囲内にあることがより好ましい。
【0021】
本発明の1液型接着剤組成物において、前記ポリエステルポリオール(a-1)に対する前記分岐ポリオール(a-2)のモル比は、0.5以上4未満の範囲内にあることが好ましい。一般的に、接着剤は、耐熱性を追求すると、冬期等の低温環境下では凍結しやすくなり、さらに、分子量が大きい化合物が析出する場合がある。しかし、前記モル比を0.5以上4未満の範囲内とすることで、高い耐熱性を有する接着剤が得られ、低温環境下での凍結の抑制が可能となる。さらには、硬化後の塗膜の硬さを、接着に好適な硬さとすることができ、これにより、例えば、基材と樹脂シートとを十分に接着することができる。接着しづらい被着体を、角材等の形状の接着しづらい基材に巻き付けて接着する場合、被着体の弾性等に起因して、基材の角部等において基材と被着体との間に、隙間ができる場合がある。本発明の1液型接着剤組成物によると、このような隙間が生じない、または、生じ難くすることができる。以降、この隙間が生じないまたは生じ難い状態を「収まり性が良い」という場合がある。
【0022】
前記有機溶剤(B)は、メチルエチルケトン、カルボン酸エステルとメチルエチルケトンとの混合物、または、アセトンとメチルエチルケトンとの混合物であることが好ましい。発明者らは、度重なる実験の結果、メチルエチルケトン、カルボン酸エステルおよびアセトンが、本願におけるポリウレタン樹脂(A)をよく溶解し、相性がよいことを見出した。前記カルボン酸エステルは、例えば、酢酸メチルおよび酢酸エチルである。ポリウレタン樹脂(A)が溶剤によく溶けることで、1液型接着剤組成物が低温時に凍りにくく、析出しづらくすることができ、また、1液型接着剤組成物を低粘度化することもできる。さらに、よく溶けるので、ポリウレタン樹脂(A)が溶剤に分散されている状態が保たれ、1液型接着剤組成物の塗布対象への濡れ性を高めることができる。
【0023】
前記架橋剤(C)は、多官能イソシアネートおよび多官能イソシアネートのアダクト体の少なくとも一方を含んでいる。前記多官能イソシアネートは、例えば、ポリメリックジフェニルメタンジイソシアネート(ポリメリックMDI)でもよい。前記多官能イソシアネートのアダクト体は、例えば、トルエンジイソシアネートアダクト体でもよい。前記トルエンジイソシアネートアダクト体には、「デスモジュールL75」(住化コベストロウレタン株式会社製、Nv50%TDIアダクト)、「タケネートD-268」(三井化学株式会社製、Nv50%、TDIヌレート/酢酸ブチル)、「タケネートD-262(三井化学株式会社製、Nv50%、TDIヌレート/酢酸ブチル)が使用可能である。また、前記多官能イソシアネートのアダクト体は、チオリン酸-トリス-(p-イソシアナト-フェニルエステル)のように、チオリン酸由来の化合物でもよい。例えば、前記架橋剤(C)は、トルエンジイソシアネートアダクト体であることが好ましい。
【0024】
架橋剤(C)がポリウレタン樹脂(A)を架橋する。前記ポリウレタン樹脂(A)および前記有機溶剤(B)の合計量に対する前記架橋剤(C)の割合は、1重量%から10重量%の範囲内にあることが好ましい。前記割合の範囲内であることで、1液型接着剤組成物の強度および耐熱クリープ性(耐熱性)を向上させることができ、接着強度と耐熱性とを両立させることができる。ここで、1液型接着剤組成物には、前記架橋剤(C)が1重量%から5重量%の範囲内で含まれていることがより好ましく、1重量%から2重量%の範囲内で含まれていることがさらに好ましい。
【0025】
本発明の1液型接着剤組成物は、本発明の趣旨を損なわない範囲で充填剤、硬化触媒、希釈剤、安定剤、顔料、酸化防止剤、脱水剤、その他の添加剤を含有させてもよい。
【0026】
充填剤としては、炭酸カルシウム、カーボンブラック、クレー、タルク、マイカ、酸化チタン、ゼオライト、珪藻土、シリカ等があげられ、単独または混合して使用することができる。炭酸カルシウムとしては、重質炭酸カルシウム、表面処理炭酸カルシウム等が挙げられる。シリカおよび表面処理炭酸カルシウムは、チクソ性付与剤として用いることができる。また、1液型接着剤組成物は、粒子の形状が球状、または、平板状の充填剤を含んでもよい。
【0027】
硬化触媒としては、金属系触媒としては、ジブチルチンジラウレート、ナフテン酸コバルト、塩化第1スズ、テトラ-n-ブチルチン等を使用することができる。アミン系触媒としては、トリエチルアミン、トリエチレンジアミン、モルホリノエーテル系、イミダゾール系、DBU塩系等を使用することができる。アミン系触媒は、金属系触媒に比べて、低温硬化性が良好であるため、アミン系触媒を用いることが好ましい。なお、本発明の1液型接着剤組成物において、硬化触媒は、全量に対して0.1質量%以上2.0質量%未満の範囲内を占めていることが好ましい。なお、触媒が少なすぎれば、硬化が弱く、触媒が多すぎれば、貯蔵安定性が阻害される。この触媒添加量の範囲は、硬化触媒として3級アミンである2,2-ジモルホリノジエチルエーテルが用いられる際に、硬化および貯蔵安定性の両点で問題がなく、特に有効である。
【0028】
その他添加剤としては、シランカップリング剤、チタネート系カップリング剤、表面調整剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、乾燥剤、粘着付与剤等があげられ、単独または混合して使用することができる。
【0029】
1液型接着剤組成物の製造方法としては、公知の方法を用いることができる。製造された1液型接着剤組成物が本発明の目的を損なわない限りにおいて、製造方法は、特に限定されないが、例えば次の方法を用いることができる。ポリエステルポリオール(a-1)および分岐ポリオール(a-2)を、溶剤(B)とともに反応容器に投入し、その内容物を加熱しながら十分に撹拌する。均一に溶解した後に、その内容物に対して、イソシアネート(a-3)を加え、それらを反応させ、末端イソシアネート基ポリウレタン樹脂(ポリウレタン樹脂(A))を得る。このとき、反応中に維持する温度は、60℃~100℃の範囲内で、使用する材料や組成に応じて設定すればよい。また、反応時間は、2時間~24時間程度である。続いて、架橋剤(C)を溶剤(B)とともに加えて撹拌し、末端イソシアネート基ポリウレタン樹脂(ポリウレタン樹脂(A))と均一に溶解し、本実施例の1液型ウレタン接着剤組成物を得ることができる。
【0030】
本発明の1液型接着剤組成物の使用用途として特に好適であるのは、基材(第1被着体)に化粧シート(第2被着体)を貼り合わせるラッピング用途である。前記第1被着体としては、長手方向に延びる角部を有する柱状の金属、木材、または、樹脂等を、好適に用いることができる。また、基材(第1被着体)は、板状(シート状)の前記金属、前記木材、または、前記樹脂であってもよい。板状の前記基材(第1被着体)に、第2被着体が貼り付けられてもよい。具体的には、アルミニウム、「ボンデ鋼板」等の電気亜鉛メッキ鋼板、CFRP、MDF(中質繊維板)等の基材が挙げられる。前記第2被着体としては、塩化ビニルシートまたはオレフィンシート等の化粧シートを挙げることができる。前記本発明の1液型接着剤組成物を、ラッピングに用いることにより、第1被着体の角部と第2被着体との間に隙間のない接着構造物を得ることができる。
【実施例0031】
以下、本発明について、実施例および比較例に基づいてより具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0032】
[実施例1]
1.1液型接着剤組成物の作製
ポリエステルポリオール(a-1)として69.72質量部のイソフタル酸/MPD(3-メチル-1,5-ペンタンジオール)含有ポリエステルポリオール(Mn:2,000)(P-2030、株式会社クラレ製)、および、分岐ポリオール(a-2)として5.43質量部のネオペンチルグリコール(NPG)、さらに、0.10質量部の酸化防止剤JPP-100(城北化学工業株式会社製)を、溶剤とともに反応容器に投入し、その内容物を加熱しながら十分に撹拌した。均一に溶解した後に、その内容物に対して、イソシアネート(a-3)として23.56質量部のミリオネートMT(東ソー株式会社製、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート)(MDI)を加えた。それらを反応させ、末端イソシアネート基ポリウレタン樹脂(ポリウレタン樹脂(A))を得た。なお、この末端イソシアネート基ポリウレタン樹脂(ポリウレタン樹脂(A))のR値は1.08、ポリスチレン換算数平均分子量(GPU実測値)は33,721であった。続いて、0.20質量部の酸化防止剤GA-80(住友化学株式会社製)、0.99質量部の脱水剤p-トルエンスルホニルイソシアネート(PTSI)、架橋剤(C)として、4.21質量部のトルエンジイソシアネート(TDI)アダクト体である「デスモジュールL75」(住化コベストロウレタン株式会社製、Nv75%;TDIアダクト体/酢酸エチル)を溶剤とともに加えて撹拌し、得られた末端イソシアネート基ポリウレタン樹脂(ポリウレタン樹脂(A))と均一に溶解し、本実施例の1液型ウレタン接着剤組成物を得た。なお、本実施例においては、溶剤として、合計110.53質量部のメチルエチルケトン(MEK)を用い、反応容器中および生成された末端イソシアネート基ポリウレタン樹脂に、適宜投入した。
【0033】
2.評価
(1)化粧シートの収まり性の評価
a.試験片の作製
23℃、50%RHの環境下にて、幅25mm×長さ160mm×厚み140μmのPVC製化粧シート上に、得られた1液型ウレタン接着剤組成物を、塗布厚み100~150μmとなるようコーターで塗布した後、80℃に加温した熱循環式乾燥機内に静置し10秒間乾燥した。その後、化粧シートを乾燥機から取出し、10秒以内にアルマイト処理されたアルミ平角パイプ(30mm×50mm角)に巻き付けるように貼り合わせた後、23℃、50%RHの環境下にて24時間養生し試験片を得た。
【0034】
b.測定方法
上述の試験片の外観を目視し、化粧シートの接着状態を判定した。アルミ平角パイプの角部において、角部の化粧シートの浮きが発生していない場合または化粧シートの浮きが基材表面より2mm未満であった場合を判定「良」とし、角部の化粧シートの浮きが基材表面より2mm以上発生した場合を判定「不良」とした。
【0035】
本実施例にかかる1液型ウレタン接着剤組成物では、前記の浮きが2mm未満であり、本評価では「良」と判定された。
【0036】
(2)常態剥離接着強度評価
a.試験片の作製
23℃、50%RHの環境下にて、幅25mm×長さ160mm×厚み140μmのPVC製化粧シート上に、端から長さ80mmの範囲に、得られた1液型ウレタン接着剤組成物を塗布厚み100~150μmとなるようコーターで塗布した後、80℃に加温した熱循環式乾燥機内に静置し10秒間乾燥した。その後、化粧シートを乾燥機から取出し、10秒以内に被着体であるアルマイト処理されたアルミ基材に貼り合わせ、ハンドローラーで3往復し圧着後、23℃、50%RHの環境下にて1週間養生した。
【0037】
b.測定方法
養生後、得られた試験片の化粧シートとアルミ基材を180度剥離状態にし、各々の端部を対向する2つのチャックに試験片が垂直状態となるよう固定し、23℃、50RHの環境下において200mm/分の速度で化粧シートを引っ張り、常態剥離接着強度を測定した。また測定値は、化粧シートの10mm剥離毎に測定し、計50mm剥離分の平均値または化粧シート破断時は破断強度も含めた平均値として算出した。なお、本測定方法についてはJIS K6854-2に準じた。あわせて、破壊状態として、接着剤(A)、基材(G)、化粧シート(F)のうちの破壊箇所を記録した。「GA」は接着剤と基材との間の界面での剥離、「A」は接着剤層での凝集破壊、「G」は基材破壊、「F」は化粧シートが破断したことを示す。
【0038】
本実施例にかかる1液型ウレタン接着剤組成物では、常態剥離接着強度は57.9Nであり、「GA」(接着剤と基材との間の界面での剥離)であった。
【0039】
(3)耐熱クリープ性評価
a.試験片の作製
上述の「(2)常態剥離接着強度評価」の欄の「a.試験片の作製」に記載のとおりに試験片を作製した。
【0040】
b.測定方法
上述の試験片を60℃、0%RHの恒温恒湿器内で、化粧シートを180度剥離させた状態で接着剤を塗布していないシート先端が下側になるように試験片を垂直に保持し、接着剤を塗布していないシート先端に500gの錘を吊るし、24時間静置した。試験後に化粧シートの接着部分の剥離が5mm未満で接着状態を保持している場合を判定「良」とし、接着部分が5mm以上剥離しているが錘が落下していない場合を「可」とし、錘が落下するまで剥離した場合を判定「不良」とした。なお、本測定においてはJIS K6833に準じた。
【0041】
本実施例にかかる1液型ウレタン接着剤組成物では、前記接着部分の剥離が5mm未満で接着状態を保持しており、本評価では「良」と判定された。
【0042】
(4)低温安定性評価
得られた1液型ウレタン接着剤組成物を密閉容器に充填し、-5℃の温度環境下にて72時間静置し、外観状態を目視で判定した。外観状態に変化がみられない場合を判定「良」とし、固化や濁り等の変化が発生した場合を判定「不良」とした。本実施例にかかる1液型ウレタン接着剤組成物では、外観状態に変化がみられず、本評価では「良」と判定された。
【0043】
(5)貯蔵安定性評価
得られた1液型ウレタン接着剤組成物を密閉容器に充填し、45℃の温度環境下にて1か月間静置し、固化がみられない場合を判定「良」とし、固化が発生した場合を判定「不良」とした。本実施例にかかる1液型ウレタン接着剤組成物では、固化がみられず、本評価では「良」と判定された。
【0044】
(6)総合判定
常態剥離接着強度が20N以上または基材破壊/25mm、その他の全評価項目が判定「良」または「可」の場合、総合評価を「良」とした。1つでも「不良」の項目があれば、総合評価は「不良」とした。本実施例では、「良」と判定された。
【0045】
実施例1について、上記(2)常態剥離接着強度評価および上記(3)耐熱クリープ性評価を、PVC製化粧シートおよびオレフィン製化粧シートについて、被着体をアルミニウム基材に加えてボンデ鋼板、CFRP、MDF(中質繊維板)を使用して行った結果を表1に示す。いずれの化粧シートおよび被着体でも、常態剥離接着強度は27N以上であり、基材破壊を除けば、約40N以上である。さらに、全ての場合において、耐熱クリープ性は「良」である。このように、接着強度および耐熱性に関して良好な結果が得られている。
【0046】
【表1】
【0047】
[実施例2]
溶剤として、55.27質量部のメチルエチルケトン(MEK)および55.27質量部の酢酸エチルを用いた以外は、実施例1と同様にして、本実施例の1液型ウレタン接着剤組成物を得た。
【0048】
[実施例3]~[実施例6]
酢酸メチルに代えて、表2に記載の溶剤を使用した以外は、実施例2と同様にして、各実施例の1液型ウレタン接着剤組成物を得た。
【0049】
実施例1~実施例6の配合組成および評価結果を表2に示す。実施例2~実施例6の結果からは、溶剤を、カルボン酸エステルとメチルエチルケトンとの混合物、または、アセトンとメチルエチルケトンとの混合物とした場合においても、化粧シートの収まり性、常態剥離接着強度、耐熱クリープ性、低温安定性、貯蔵安定性のいずれの評価についても良好な結果となっていることがわかる。
【0050】
【表2】
【0051】
[実施例7]~[実施例10]
架橋剤(C)として、表3に記載の架橋剤を使用した以外は、実施例1と同様にして、各実施例の1液型ウレタン接着剤組成物を得た。架橋剤(C)としては、実施例7では「タケネートD-268」(三井化学株式会社製、Nv50%;TDIヌレート高分子量型/酢酸ブチル)、実施例8では「タケネートD-262」(三井化学株式会社製、Nv50%;TDIヌレート/酢酸ブチル)、実施例9では「TOP100」(東ソー株式会社製、クルードMDI)を用いた。
【0052】
実施例7~実施例10の配合組成および評価結果を表3に示す。実施例7~実施例10の結果からは、架橋剤(C)の種類または添加量を、実施例1から変更した場合においても、架橋剤(C)が多官能イソシアネートおよび多官能イソシアネートのアダクト体の少なくとも一方を含んでいれば、化粧シートの収まり性、常態剥離接着強度、耐熱クリープ性、低温安定性、貯蔵安定性のいずれの評価についても良好な結果となっていることがわかる。
【0053】
【表3】
【0054】
[実施例11]~[実施例14]
ポリエステルポリオール(a-1)としてイソフタル酸/MPD(3-メチル-1,5-ペンタンジオール)含有ポリエステルポリオール(Mn:2,000)(株式会社クラレ製)、および、分岐ポリオール(a-2)としてネオペンチルグリコール(NPG)、イソシアネート(a-3)としてミリオネートMT(東ソー株式会社製、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート)(MDI)を用い、(a-1)、(a-2)および(a-3)の配合比率を表4のとおりに変更したこと、および、当該変更によってR値(NCO基/OH基のモル比)を調整して数平均分子量を異ならせたこと以外は、実施例1と同様にして、各実施例の1液型ウレタン接着剤組成物を得た。
【0055】
[比較例1]
分岐ポリオール(a-2)を添加せず、(a-1)および(a-3)の配合比率を表4のとおりに変更した以外は、実施例1と同様にして、本比較例の1液型ウレタン接着剤組成物を得た。
【0056】
[比較例2]
分岐ポリオール(a-2)を添加せず、(a-1)および(a-3)の配合比率を表4のとおりに変更し、架橋剤(C)の添加量を増加させた以外は、実施例1と同様にして、本比較例の1液型ウレタン接着剤組成物を得た。
【0057】
[比較例3]
従来品であるウレタン系2液型接着剤(「エバーグリップ」1330-1(東亞合成株式会社製)、硬化剤:クルードMDI)を比較例3とした。
【0058】
実施例11~実施例14および比較例1~3の配合組成および評価結果を表4に示す。実施例11~実施例14の結果からは、(a-1)、(a-2)および(a-3)の配合比率を、実施例1から変更した場合においても、化粧シートの収まり性、常態剥離接着強度、耐熱クリープ性、低温安定性、貯蔵安定性のいずれの評価についても良好な結果となっていることがわかる。分岐ポリオール(a-2)を用いていない比較例1および比較例2では、常態剥離接着強度、耐熱クリープ性、低温安定性については問題はなかったものの、化粧シートの収まり性、貯蔵安定性について、「不良」との結果となった。比較例3では、化粧シートの収まり性、常態剥離接着強度、耐熱クリープ性、貯蔵安定性については問題はなかったものの、低温安定性について、「不良」との結果となった。
【0059】
ここで、十分な接着強度を得るには、ポリウレタン樹脂(A)の数平均分子量をある程度大きくする必要があることが経験的にわかっている。一方、ポリウレタン樹脂(A)の数平均分子量が大きすぎると、貯蔵安定性が低下すること、冬季に接着剤の成分が析出しやすくなること、粘度の過度な増大によって使用感が低下することなどが経験的にわかっている。本実施形態の1液型接着剤組成物では、上述したように、ポリウレタン樹脂(A)の数平均分子量は、18,000以上49,000以下の範囲内が好ましい。イソシアネートの量およびR値(NCO基/OH基のモル比)を調整することによって、ポリウレタン樹脂(A)の数平均分子量が、18,000以上49,000以下の範囲内に収まるように、ポリウレタン樹脂(A)の数平均分子量を異ならせている例が実施例11~実施例14に開示されている。そのため、実施例11~実施例14では、化粧シートの収まり性、常態剥離接着強度、耐熱クリープ性、低温安定性、貯蔵安定性のいずれの評価についても良好な結果が得られている。
【0060】
【表4】
【0061】
[実施例15]~[実施例24]
表5の配合比率で、溶剤がMEKの実施例については、実施例1と同様にして、各実施例の1液型ウレタン接着剤組成物を得た。溶剤がMEKおよび酢酸メチルの実施例については、実施例2と同様にして、各実施例の1液型ウレタン接着剤組成物を得た。実施例15および実施例16は、ポリエステルポリオール(a-1)に対する分岐ポリオール(a-2)のモル比が4である。実施例17から実施例19は、ポリエステルポリオール(a-1)に対する分岐ポリオール(a-2)のモル比が3であり、溶剤の量が表5に基づき調整されている。また、実施例20から実施例22は、ポリエステルポリオール(a-1)に対する分岐ポリオール(a-2)のモル比が2である。実施例23および実施例24は、ポリエステルポリオール(a-1)に対する分岐ポリオール(a-2)のモル比が1.5である。また、実施例20は、分岐ポリオール(a-2)として2-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオール(BEPG)を用いた。実施例23は、ポリエステルポリオール(a-1)としてテレフタル酸/MPD(3-メチル-1,5-ペンタンジオール)含有ポリエステルポリオール(Mn:2,000)(P-2020、株式会社クラレ製)を用いた。実施例24は、ポリエステルポリオール(a-1)としてイソフタル酸/MPD(3-メチル-1,5-ペンタンジオール)含有ポリエステルポリオール(Mn:1,000)(P-1030、株式会社クラレ製)を用いた。
【0062】
[比較例4]
分岐ポリオール(a-2)に代えて、MPD(3-メチル-1,5-ペンタンジオール)を用い、表5の配合比率で、実施例2と同様にして、本比較例の1液型ウレタン接着剤組成物を得た。
【0063】
[比較例5]
架橋剤(C)を添加せずに、表5の配合比率で、実施例2と同様にして、本比較例の1液型ウレタン接着剤組成物を得た。
【0064】
実施例15~実施例24および比較例4、5の配合組成および評価結果を表5に示す。実施例15および実施例16では、耐熱クリープ性が「可」の結果であり、化粧シートの収まり性、常態剥離接着強度、低温安定性、貯蔵安定性についても問題はなく、本発明における用途においては高温環境下を除けば好適に使用できることがわかる。実施例17~実施例24では、化粧シートの収まり性、常態剥離接着強度、耐熱クリープ性、低温安定性、貯蔵安定性のいずれの評価についても良好な結果となっていることがわかる。一方、比較例4については、化粧シートの収まり性が、比較例5については、化粧シートの収まり性および耐熱クリープ性が、「不良」との結果となった。
【0065】
【表5】
【0066】
以上のように、本発明では、低温環境下でも凍結せず、さらには、接着剤として良好な接着強度を有し、特にラッピング用途において、凹凸部や角部での樹脂シートの浮きを抑制することができる、1液型接着剤組成物が得られることがわかる。