(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024178989
(43)【公開日】2024-12-26
(54)【発明の名称】軌条車両用空気調和装置
(51)【国際特許分類】
B61D 27/00 20060101AFI20241219BHJP
【FI】
B61D27/00 F
B61D27/00 T
B61D27/00 N
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023097453
(22)【出願日】2023-06-14
(71)【出願人】
【識別番号】000005108
【氏名又は名称】株式会社日立製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000062
【氏名又は名称】弁理士法人第一国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】豊田 浩之
(72)【発明者】
【氏名】川崎 彰徳
(72)【発明者】
【氏名】明丸 大祐
(57)【要約】 (修正有)
【課題】熱交換器とフィルタが同一流路上に配置されているときに、熱交換器とフィルタの埃詰まりに起因する圧力損失増加について場所を区別して検出できる軌条車両用空気調和装置を提供する。
【解決手段】鉄道車両向け空気調和装置であって、フィルタは、室内側熱交換器の風上に設置されている。熱交換器の温度と、熱交換器を通過する前後の空気の温度と湿度情報から、ファン電力を用いず風量低下を検出する風量低下評価システムを有し、かつその風量低下の要因が熱交換器またはフィルタまたはその両方の埃蓄積であるかを判断する、埃堆積場所識別システムを有し、かつ前記風量低下評価システムが所定の風量低下を検出した場合に、前記埃堆積場所識別システムにて埃堆積場所を識別し、その場所を指示することで熱交換器またはフィルタの清掃を促す表示を行う。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
室外側熱交換器と圧縮機と室内側熱交換器とが配管により接続され、該配管内を冷媒が通過する冷凍サイクルと、
前記室内側熱交換器の空気の流れ方向上流側に設置されたフィルタと、
前記フィルタから前記室内側熱交換器に向かう空気の流れを創成する室内ファンと、
前記室内側熱交換器の上流の空気温度と湿度を検出する第1センサと、
前記室外側熱交換器の上流の空気温度を検出する第2センサと、
前記室内側熱交換器に流入する冷媒の温度を検出する第3センサと、
前記室外側熱交換器から流出する冷媒の温度を検出する第4センサと、
前記第1センサ~前記第4センサからの信号を入力する空調制御装置と、を有し、
前記空調制御装置は、前記室内側熱交換器に流入する冷媒の温度の情報(Teva)と、前記室内側熱交換器の上流の空気温度の情報(Ta-in)と、前記室内側熱交換器の上流の湿度の情報(RHa-in)と、前記室外側熱交換器の上流の空気の温度の情報(To-in)と、前記室外側熱交換器から流出する冷媒の温度の情報(Tsc)とに基づいて風量特徴量(R)を求め、前記風量特徴量(R)が第1の閾値(α1)より小さいと判断したときは、前記フィルタ又は前記室内側熱交換器の少なくとも一方に埃が付着した可能性があると判断する、
ことを特徴とする軌条車両用空気調和装置。
【請求項2】
請求項1に記載の軌条車両用空気調和装置において、
前記室内側熱交換器3の入り口と出口での空気の圧力差を検出する第5センサ、を有し、
前記第5センサからの信号を入力した前記空調制御装置は、
前記風量特徴量(R)から、前記フィルタと前記室内側熱交換器を通過することにより低下した風量(Q2)を推定し、
前記低下した風量(Q2)での埃がないときの前記室内側熱交換器の空気通過にともなう圧力損失に相当する基準圧力損失(PHEX_CAL)と、前記第5センサにより得られた実測差圧(PHEX_EXP)との差圧である熱交換器差圧(ΔPHEX)を第2の閾値(β1)と比較して、前記熱交換器差圧(ΔPHEX)が第2の閾値(β1)より小さいと判断したときは、前記室内側熱交換器に付着した埃の量が許容範囲内であると判断する、
ことを特徴とする軌条車両用空気調和装置。
【請求項3】
請求項2に記載の軌条車両用空気調和装置において、
前記空調制御装置は、前記低下した風量(Q2)と前記室内ファンの特性とに基づいて、前記低下した風量(Q2)に対応するファン圧力(PFAN_2)を推定し、さらに前記ファン圧力(PFAN_2)に基づいて、前記室内ファンの前後で生じているファン差圧を求め、
前記ファン差圧(PFAN_2)から、前記室内側熱交換器の基準圧力損失(PHEX_CAL)とフィルタ圧損(Pfilter)を差し引いた総合差圧(ΔPTotal)を算出し、
前記総合差圧(ΔPTotal)が第3の閾値(β2)よりも小さい場合は、前記室内側熱交換器および前記フィルタに付着した埃の量が許容範囲内であると判断し、
前記総合差圧(ΔPTotal)が第3の閾値(β2)に等しいかより大きい場合は、前記フィルタに付着した埃の量が許容範囲外であると判断する、
ことを特徴とする軌条車両用空気調和装置。
【請求項4】
請求項3に記載の軌条車両用空気調和装置において、
前記空調制御装置は、
前記熱交換器差圧(ΔPHEX)が前記第2の閾値(β1)に等しいかより大きいと判断したときは、さらに前記総合差圧(ΔPTotal)値から前記熱交換器差圧(ΔPHEX)を差し引いたフィルタ差圧を、第4の閾値(β3)と比較し、
前記フィルタ差圧が第4の閾値(β3)より小さい場合は、前記室内側熱交換器に付着した埃の量が許容範囲外であると判断し、
前記フィルタ差圧が第4の閾値(β3)に等しいかより大きい場合は、前記室内側熱交換器および前記フィルタに付着した埃の量が許容範囲外であると判断する、
ことを特徴とする軌条車両用空気調和装置。
【請求項5】
請求項1に記載の軌条車両用空気調和装置において、
前記室外側熱交換器の空気の流れ方向上流側に設置された室外フィルタと、
前記室外フィルタから前記室外側熱交換器に向かう空気の流れを創成する室外ファンと、
前記室外側熱交換器の上流の空気温度と湿度を検出する第6センサと、
前記室内側熱交換器の上流の空気温度を検出する第7センサと、
前記室外側熱交換器に流入する冷媒の温度を検出する第8センサと、
前記室内側熱交換器から流出する冷媒の温度を検出する第9センサと、
前記第6センサ~前記第9センサからの信号を入力する空調制御装置と、を有し、
前記空調制御装置は、前記室外側熱交換器に流入する冷媒の温度の情報(Teva)と、前記室外側熱交換器の上流の空気温度の情報(Ta-in)と、前記室外側熱交換器の上流の湿度の情報(RHa-in)と、前記室内側熱交換器の上流の空気の温度の情報(To-in)と、前記室内側熱交換器から流出する冷媒の温度の情報(Tsc)とに基づいて風量特徴量(R)を求め、前記風量特徴量(R)が第5の閾値(α2)より小さいと判断したときは、前記室外フィルタ又は前記室外側熱交換器の少なくとも一方に埃が付着した可能性があると判断する、
ことを特徴とする軌条車両用空気調和装置。
【請求項6】
請求項1に記載の軌条車両用空気調和装置において、
前記フィルタと前記室内側熱交換器の間に、車内から照射される光の照度を検出する第1の光センサが配置され、前記室内側熱交換器と前記室内ファンの間に、車内から照射される光の照度を検出する第2の光センサが配置されており、
前記空調制御装置は、前記第1の光センサと前記第2の光センサの検出した照度を経時的にモニターすることにより、前記室内側熱交換器又は前記フィルタに付着した埃の量が許容範囲外となったと判断することを特徴とする軌条車両用空気調和装置。
【請求項7】
請求項1~請求項6のいずれか一項に記載の軌条車両用空気調和装置において、
前記空調制御装置は、
前記室内側熱交換器又は前記室外側熱交換器に付着した埃の量、および前記フィルタ又は室外フィルタに付着した埃の量の少なくとも一方が許容範囲内であるか否かに関する情報をディスプレイに表示する、
ことを特徴とする軌条車両用空気調和装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軌条車両用空気調和装置に関する。
【背景技術】
【0002】
目詰まりによるフィルタの異常と熱交換器の異常とを区別して検知可能な浴室暖房乾燥機を提供する技術の一例が、特許文献1に示されている。
【0003】
特許文献1に記載の技術は、熱源機によって加熱された熱媒が通流する熱交換器と、浴室の空気の吸入口に装着されるフィルタと、ファンモータを有し、熱交換器によって加熱された空気を浴室内に循環させる循環ファンからなる浴室乾燥機において、熱交換器の熱媒入口側に設けられ熱媒の温度を検出する第一温度センサと、熱交換器の熱媒出口側に設けられ熱媒の温度を検出する第二温度センサとの温度差から、熱交換性能が一定以下であることを検出するものである。空気風量が所定の値になるように循環ファンの回転数制御するフィードバック制御がなされた状態において、ファン電力が通常値に対して大きく上昇していればフィルタ詰まりであり、ファン電力の上昇が小さければ熱交換器の詰まりであると判断している。
【0004】
また一方で、鉄道車両用空気調和装置の故障診断に関する技術の一例が、特許文献2に示されている。
【0005】
特許文献2に記載の技術は、熱交換器を通過する空気の入口出口間のエンタルピ差と、送風機の動作電流値から算出した風量より熱交換器の交換熱量を求め、この値が正常範囲か否かによって故障を判断するものである。故障と判断した時にはファン電力、冷媒圧力、冷媒温度パラメータ変化の組み合わせによって、要因を切り分けることができるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2021-156469号公報
【特許文献2】特許第5787604号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
鉄道車両用空気調和装置では、熱交換器に流れる冷媒は一般的に液とガスが同時に存在している二相状態であり、その熱交換器が蒸発器であれば液体が蒸発しガス化し、その熱交換器が凝縮器であればガスが凝縮して液化される。この二相状態の熱交換においては、冷媒の温度変化は内部の圧力が変化しない限りほとんどない。したがって、熱交換器入口と出口の冷媒温度差からは、交換熱量を正確に把握することが難しい場合がある。
【0008】
また鉄道車両用空気調和装置では、空気風量を測定するセンサが組み込まれておらず、風量が所定の値になるように回転数を制御するフィードバック制御はなされていないものもある。加えてファンを駆動するための電力は、風量と昇圧量およびファン効率によって変わる。このファン効率は風量によって変化するものであり、ファンを駆動するための電力が分かっても風量が特定できないファンも存在する。
【0009】
鉄道車両用空気調和装置では一般に、フィルタまたは熱交換器またはその両方に埃が蓄積されると、通風抵抗が増加し、それに伴って風量が低下する。一般にファンを駆動するための電力は、ファン効率が一定であれば風量と昇圧量の積によって決まるが、圧損が増えると同時に風量も低下しているため、風量が低下していてもファンを駆動するための電力が大きく変化しない場合がある。またファン効率も変化するため、ファンの風量が減っているにも関わらずファンを駆動するための電力が増加する場合もありうる。
【0010】
したがって鉄道車両用空気調和装置では、特許文献1で示される技術をもちいて、風量低下を検出できない場合があり、熱交換器とフィルタの埃詰まりを分離して判断することが難しいと推認される。
【0011】
また特許文献2の技術においても、風量低下の検知および、熱交換器の埃詰まり検知にファンを駆動するための電流を用いているが、ファンを駆動するための電流とファンの風量との相関が得られない場合には検出ができないと推認される。
【0012】
加えて、フィルタへの埃の堆積を、そのフィルタの前後差圧を差圧計で測定することで検出する従来技術もあるが、かかる従来技術も通過風量を一定とする制御、または風量を検出する装置が必要である。さらに、鉄道車両空調において、フィルタを車内側から交換できるように設計されている場合、差圧計の設置によって交換性の低下を招く可能性があることに加え、空調機とは別に設計されることもあるので、熱交換器との情報接続性が常に確保されるものではない。つまり空調機側でフィルタの差圧情報を得たくとも、フィルタ側の設計に差圧センサが組み込まれてない、またはセンサが組み込まれていたとしても、その情報を熱交換器と共有するためには、別途、機器間における通信の設計が必要になることがある。
【0013】
したがって、フィルタの差圧情報ではなく、空調装置内で圧力損失の要因として大きい、熱交換器の差圧を測りたいという要請は、フィルタの詰まり検出を精度良く行うために当然に生じうる。しかしながら、蒸発器として熱交換器を使用する場合、熱交換器の前後差圧は、風量変化だけでなく、その表面に付着する結露水の量や状態で変化するため、通過風量が既知であったとしても、そのときの圧力損失の増加が埃によるものか結露によるものかを判断することが難しかった。
【0014】
本発明は、上記の課題に対応するものであり、熱交換器とフィルタが同一流路上に配置されているときに、熱交換器とフィルタの埃詰まりに起因する圧力損失増加について場所を区別して検出できる軌条車両用空気調和装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上述の課題を解決するために、代表的な本発明の軌条車両用空気調和装置の一つは、
室外側熱交換器と圧縮機と室内側熱交換器とが配管により接続され、該配管内を冷媒が通過する冷凍サイクルと、
前記室内側熱交換器の空気の流れ方向上流側に設置されたフィルタと、
前記フィルタから前記室内側熱交換器に向かう空気の流れを創成する室内ファンと、
前記室内側熱交換器の上流の空気温度と湿度を検出する第1センサと、
前記室外側熱交換器の上流の空気温度を検出する第2センサと、
前記室内側熱交換器に流入する冷媒の温度を検出する第3センサと、
前記室外側熱交換器から流出する冷媒の温度を検出する第4センサと、
前記第1センサ~前記第4センサからの信号を入力する空調制御装置と、を有し、
前記空調制御装置は、前記室内側熱交換器に流入する冷媒の温度の情報(Teva)と、前記室内側熱交換器の上流の空気温度の情報(Ta-in)と、前記室内側熱交換器の上流の湿度の情報(RHa-in)と、前記室外側熱交換器の上流の空気の温度の情報(To-in)と、前記室外側熱交換器から流出する冷媒の温度の情報(Tsc)とに基づいて風量特徴量(R)を求め、前記風量特徴量(R)が第1の閾値(α1)より小さいと判断したときは、前記フィルタ又は前記室内側熱交換器の少なくとも一方に埃が付着した可能性があると判断する、ことにより達成される。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、熱交換器とフィルタが同一流路上に配置されているときに、熱交換器とフィルタの埃詰まりに起因する圧力損失増加について場所を区別して検出できる鉄道車両用空気調和装置を提供することができる。
上記した以外の課題、構成及び効果は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】
図1は、鉄道車両用空気調和装置の配置断面図である。
【
図2】
図2は、鉄道車両用空気調和装置の配置断面図である。
【
図3】
図3は、本発明の実施形態1となる冷房運転サイクルのサイクル系統図である。
【
図4】
図4は、本発明の実施形態1のフィルタのみに埃堆積時の概略図である。
【
図5】
図5は、本発明の実施形態1の熱交換器のみに埃堆積時の概略図である。
【
図6】
図6は、本発明の実施形態1のフィルタ、熱交換器ともに埃堆積時の概略図である。
【
図7】
図7は、本発明の実施形態1となる制御フロー図である。
【
図8】
図8は、本発明の実施形態1で使用するファンの特性曲線の一例である。
【
図9】
図9は、本発明の実施形態2となる冷房運転サイクルのサイクル系統図である。
【
図10】
図10は、本発明の実施形態2となる暖房運転サイクルのサイクル系統図である。
【
図11】
図11は、本発明の実施形態3となる鉄道車両用空気調和装置の配置断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図を参照しながら本発明を適用する上で基本となる構造について説明する。なお軌条車両とは、敷設された軌道に沿って運行される車両の総称であり、鉄道車両、路面電車、新交通システム車両、モノレール車両等を意味する。軌条車両の代表例として、鉄道車両を例示して、本発明の実施の形態を説明する。
【0019】
図1は、鉄道車両用空気調和装置を搭載可能な鉄道車両の断面図を示しており、特に車両空調装置1が車体101の天井側に設置されている例における主要部品の配置を示している。
図1では、車内の空気は図中の矢印で示すように、グリル51を介して天井の車両空調装置1へ流れ込む。この空気はさらにフィルタ5を通過し、その後に車内側熱交換器3を通過し、室内側ファン4に進入し、室内側ファン4の昇圧によって、グリル51を介して車内側へ戻される。
【0020】
この車両空調装置1を冷房として使用する場合、熱交換器3には室内空気温度よりも低温の冷媒が供給され、この熱交換器3を通過した空気の温度を低下させる。このとき、熱交換器3表面には、空気中の水蒸気が結露し液滴または液膜が形成される場合がある。またこの車両空調装置1を暖房として使う場合には、熱交換器3には室内空気温度よりも高温の冷媒が供給され、この熱交換器3を通過した空気の温度を上昇させる。
【0021】
室内側ファン4によって噴出(創成)された空気は、ダクトを介して車体101の全体に分配されるため、高静圧型のファンが使われることが多く、例えば遠心ファン、シロッコファンなどが好適に使われる。
【0022】
図2は、鉄道車両用空気調和装置を上から見た断面配置図である。車両空調装置1は、大きく二つのブロックに分けられる。具体的に、
図2においては、圧縮機21やアキュムレータ22が仕切り板52により挟まれており、この仕切り板52より上側が室外の空気を扱うダクトのブロックになっており、仕切り板52より下側が
図1でも説明した室内の空気を扱うダクトのブロックになっている。
図2中のA-A’断面が
図1に相当する。
【0023】
図2の下側のブロックにおいて、ケーシング内部に、フィルタ5、車内側熱交換器3、室内側ファン4が配置されている。車内の空気はフィルタ5を介して
図2の紙面奥側から手前に流れ込む。左右のフィルタ5から流れ込んだ空気は、中央側の室内側熱交換器3を通過し、さらに中央に配置された室内側ファン4より車内へ戻される。
【0024】
図2の中央には、圧縮機21やアキュムレータ22が配置されている。圧縮機21は、吸い込み側の冷媒を圧縮することで昇圧し送り出す。またアキュムレータ22は、この圧縮機21へ液冷媒が大量に戻ることを抑制している。
【0025】
図2の上側のブロックにおいて、ケーシング内部に、室外側熱交換器12、室外側ファン13が配置され構成されている。車外の空気は、ケーシングの一部が開口している室外吸気口11より取り込まれ、室外側熱交換器12を通過し、室外側ファン13により再び車外へ噴出される。
【0026】
また図示していないが室内側ファン4、室外側ファン13、圧縮機21へ電力供給するための配線が設けられている。また冷媒として、圧縮機21で昇圧された冷媒ガスが室外側熱交換器12へ流れ、ここで凝縮し液化した冷媒は、室内側熱交換器3の分配器6へ流れ、ここで複数のパスに分岐し室内側熱交換器3に減圧されて流れ、ここで蒸発した冷媒は、アキュムレータ22を介して圧縮機21へ戻る。この冷媒の流れが実現するように冷媒配管が接続されている。
【0027】
[実施形態1]
図3は、本実施形態1の鉄道車両用空気調和装置にかかるサイクル系統図である。尚、以下の実施形態によって、本発明が限定されるものではない。
図3のサイクル系統図において、
図1および
図2で示した車両用空気調和装置と、空気の流れおよび冷媒の流れは同様である。空気の流れは、室内側においては、車内からの空気がフィルタ5を通過し、車内側熱交換器3を通過し、室内側ファン4により再び車内へ戻る。室外側においては、車外の空気が室外側熱交換器12を通過し、室外側ファン13により再び室外へ放出される。ここでは模式的に室内側のみダクト2があるように書かれているが、ダクト2は室外側にもある。また室内側ファン4も軸流ファンのような形状で記載しているが、遠心ファン、シロッコファンといわれる高静圧タイプのファンが好適に使用される。
【0028】
図3では冷房専用の車両用空気調和装置となっており、室内側熱交換器3は常に蒸発器として、室外側熱交換器12は凝縮器として使われる。冷媒の流れは、圧縮機21から吐出された高温高圧のガス冷媒が、室外側熱交換器ガスヘッダ14へ経て室外側熱交換器12へ流れる。ここで凝縮した液冷媒が分配器6を経て、さらにキャピラリーチューブ7を経ることで減圧し、低温低圧となり一部ガス化した冷媒が室内側熱交換器3へ流れる。ここで蒸発しほぼガス化した冷媒が室内側熱交換器ガスヘッダ8を経て、アキュムレータ22へ流れ、ふたたび圧縮機21へ吸い込まれる。
【0029】
本実施形態では、この室内側熱交換器3とフィルタ5に埃が蓄積された場合の検出態様について説明する。ただし、これは室外側熱交換器12にも適用可能である。
【0030】
本実施形態では、ダクト2における室内側熱交換器3の空気流れ方向上流に室内側熱交器吸い込み空気センサ31が配置され、また室内側熱交換器3の下流に室内側熱交換器吐き出し空気センサ32が配置されている。室内側熱交換器3によって温度調整されるまえの空気の温度と湿度を、室内側熱交換器吸い込み空気センサ(第1センサ)31にて測定することができる。また室内側熱交換器3によって温度調整された後の空気の温度、場合によっては湿度を室内側熱交換器吐き出し空気センサ32によって測定することができる。
【0031】
さらに、室内側熱交換器3の冷媒流入側の温度を、室内側熱交換器冷媒入口センサ(第3センサ)33にて測定することができる。この室内側熱交換器冷媒入口センサ33は、冷媒温度を直接的に測定してもよいが、室内側熱交換器3の配管表面温度を測定してもよいし、場合によっては室内側熱交換器3の配管へ冷媒を導くキャピラリーチューブ7のような分配管の表面に取り付けても良い。
【0032】
また、室外側熱交換器12を通過する空気のダクト(不図示)において、室外側熱交換器12の流れ方向上流に室外側熱交換器吸い込み空気センサ(第2センサ)36が配置され、室外側熱交換器12の下流に室外側熱交換器吐き出し空気センサ37が配置されている。室外側熱交換器12を通過する前の空気の温度(室外気温相当)と湿度を、室外側熱交換器吸い込み空気センサ36にて測定し、室外側熱交換器12通過後の空気の温度と湿度を室外側熱交換器吐き出し空気センサ37にて測定することができる。
【0033】
加えて、室外側熱交換器12の冷房使用時では出口側に相当する冷媒の温度を、室外側熱交換器冷媒入口センサ38にて測定することができる。室外側熱交換器冷媒入口センサ38は、冷媒温度でなくとも、室外側熱交換器12の配管表面温度を測定してもよく、場合によっては室外側熱交換器12の分配管の表面に取り付けても良い。また、冷房専用の空気調和装置に限った場合、室外側熱交換器冷媒入口センサ(第4センサ)38にて測定したい冷媒の温度は、室外側熱交換器12にて冷却されて液化された冷媒の温度であるので、室外側熱交換器12の分配管が合流した後の配管の温度を測定して代用することが可能である。ただし膨張弁やキャピラリーチューブなど大きな減圧要素を通過する前の配管に限る。
【0034】
これら温度センサの情報により、本実施形態では空調制御装置が風量の低下を取得する。具体的には、たとえば、室内側熱交換器冷媒入口センサ33の温度情報Teva(°C)、室内側熱交器吸い込み空気センサ31の温度情報Ta-in(°C)と湿度情報RHa-in(%)、室外側熱交換器吸い込み空気センサ36の温度情報To-in(°C)および、室外側熱交換器冷媒入口センサ38の温度情報Tsc(°C)を用い、風量特徴量Rを、熱交換器及びフィルタに埃がないと判断される清掃直後の数日間から数週間のデータより学習させる定数C1からC4を用いて、風量特徴量Rを下記(1)式にて求めることができる。
R=[Teva]+C1×[Ta-in]+C2×[RHa-in]+C3×[To-in]+C4×[Tsc]
(1)
【0035】
またこれに加えて、空調制御装置が長期間の学習より風量低下していると判断できる閾値(第1の閾値)α1を予め求めておき、風量特徴量Rがこの閾値α1より低下した場合を風量低下したと判断するようにする。
【0036】
ここで示した風量特徴量Rは、一例であり上記センサ類をより使うことで、または特徴量算出式である(1)式と、その係数学習方法を変えることで、より外乱に強い風量特徴量Rを形成することが可能である。また定数や閾値の学習に関しては、実運転に限らず試験的な運転やシミュレーションで得たデータで作成してもかまわない。
【0037】
本実施形態では、上記センサに加えて、ダクト2に室内側熱交換器3の入り口・出口での空気の圧力差を測定する室内側熱交換器差圧センサ(第5センサ)34を加えている。これにより室内側熱交換器3を通過する空気の流れの圧力損失を測定できる。この圧力損失は、室内側熱交換器3に汚れと熱交換器表面の結露が無ければ、風量が増えれば大きくなるし、風量が低下すれば小さくなる。
【0038】
図4は、本実施形態の鉄道車両用空気調和装置における室内側の構成を抽出して示す模式図である。
図4では特に、フィルタ5にのみ埃61が堆積している状態を示している。このような熱交換器に埃がたまっていないと判断できる場合には、熱交換器表面に結露が生じない送風モードで空気を流し、室内側熱交換器差圧センサ34の圧力損失の変化から風量の変化が把握できる。くわえて、この風量低下は熱交換器の埃が起因ではないので、フィルタ5での埃61が要因であると判断できる。
【0039】
図5は、本実施形態の鉄道車両用空気調和装置における室内側の構成を抽出して示す模式図であり、
図5では特に、室内側熱交換器3にのみ埃61が堆積した場合を示している。このとき、この室内側を流れる空気の風量は、埃61がない場合に比べて低下している。しかしながら、室内側熱交換器3の風上に埃61が堆積しており、これが圧力損失の増加につながるので、室内側熱交換器差圧センサ34の圧力損失は変化しないことが考えられる。ここで図示はしていないが、フィルタ5の前後に差圧センサを設ければ、こちらの圧力損失変化から風量低下が検出できる。しかしながらフィルタ5は、空気調和装置とは別に、車内側から交換できるように設計されていることが多い。このため、フィルタ5の前後に差圧センサを設けても、別設計のセンサと、空気調和装置とで情報をやり取りするために追加の配線が必要となってしまう。また差圧センサ自体も安価ではないため極力数を少なくすることが望ましい。
【0040】
図6は本実施形態の鉄道車両用空気調和装置における室内側の構成を抽出して示す模式図であり、室内側熱交換器3とフィルタ5の両方に埃61が堆積した場合を示している。実際の運用では、このように双方に埃が同時に蓄積することが一般的であると考えられる。
図5の説明でも述べたように、図示はしていないが、フィルタ5の前後に差圧センサを設ければ、室内側熱交換器差圧センサ34の圧力損失と合わせることで、かつ室内側ファン4の圧力―風量特性カーブから風量低下が検出できる。加えて熱交換器表面に結露が生じない送風モードで空気を流し、低下した風量が特定できれば、フィルタ5の前後に差圧センサと、室内側熱交換器差圧センサ34の圧力損失から、それぞれの埃堆積量を通風抵抗の増加分として検出することが可能である。
【0041】
ただし本実施形態では、フィルタ5の前後に上述のような差圧センサを設けずとも、室内側熱交換器3とフィルタ5それぞれの埃の堆積状態を検出が可能である。
図6に示すように、フィルタ5は室内側熱交換器3の上流側に配置されており、このフィルタ5で捕捉できなかった細かい埃が室内側熱交換器3へ流れることとなる。室内側熱交換器3は、一般に、冷媒が流れる金属製の配管とその表面に板状の金属製フィンが取り付けられたフィンチューブタイプのものが用いられる。したがって、このフィンの上流側に、先に述べたフィルタ5を通過した埃が衝突し付着する。さらにこの付着した埃に衝突した、次の埃が付着し、熱交換器の風上側を覆うように埃が堆積する。
【0042】
本実施形態では、空気調和装置はとくに冷房専用の構成となっており、室内側熱交換器3は、蒸発器として使われるため、熱交換器表面に空気中の水分が結露する。これによって埃がない状態であっても、熱交換器通過に伴う通風抵抗が増加するため、通過風量は低下する。
【0043】
図7に、このような条件で、空気調和装置の特に室内側熱交換器3とフィルタ5のそれぞれの埃の堆積量を識別する処理にかかるフローを示す。なお、以下のフローにおける判断は、各センサの出力を入力して演算を行い、内蔵したメモリに閾値α1等を記憶した不図示の空調制御装置(清掃時期診断装置)が行うものとする。
【0044】
まず
図7のステップS01で、不図示のスイッチの投入により空気調和装置として冷房運転を開始する。これによってファンや圧縮機が運転を開始する。ここで図示はしていないが起動から所定時間を置き、運転がある程度安定したところで、空調制御装置が風量特徴量Rを算出すると好ましい。この算出の過程において、室内側熱交換器3及びフィルタ5に埃がないと判断できる場合、たとえば清掃直後から数日~数週間以内であれば、それに応じて、この風量特徴量Rの係数を学習させることもできる。すなわち、清掃直後から短い期間であれば、閾値α1との比較は行わず、正常つまり風量低下はないとして冷房運転を継続することができる。
【0045】
係数および閾値が学習済(または既知)であるとして、ステップS02で(1)式より風量特徴量Rを算出した後に、空調制御装置は、ステップS03でこの風量特徴量Rと閾値α1とを比較する。ここで風量特徴量Rは、小さいほど風量低下を示しているという前提のもと、この風量特徴量Rが、既知の閾値α1よりも小さいかどうかを判断するものとする。風量特徴量Rが閾値α1と同じかより大きければ、空調制御装置は風量低下がないと判断し、運転継続可能な正常と認識して処理を進め、ステップS04で例えば不図示のディスプレイにフィルタ5と室内側熱交換器3は正常である(埃が付着していないから洗浄の必要がない)旨の情報を表示させる。このときは、ステップS05で冷房運転の停止指令がない限り、さらにステップS02に戻って冷房運転を継続する。
【0046】
これに対し、この風量特徴量Rが、既知の閾値α1よりも小さい場合は、空調制御装置は風量が低下しているため、フィルタ5と室内側熱交換器3の少なくとも一方に許容範囲外の埃が付着している可能性があると判断し、フローをステップS06へと進める。
【0047】
ステップS06では、空調制御装置は、この風量特徴量Rから低下した風量の値Q2を推定し、低下した風量Q2での埃がなく通常運転する際のフィルタ5と室内側熱交換器3の空気通過にともなう合計基準圧力損失を求める。この合計基準圧力損失は、設計スペックから送風抵抗係数を算出することで求めてもよいし、正常時つまり埃の堆積がない期間のデータから通常の風量での抵抗係数を出しておいて求めてもよい。また、室内側熱交換器3の基準圧力損失については、結露を考慮して算出する必要があり、これには室内側熱交換器吸い込み空気センサ31により検出される熱交換器上流側の空気の温度と湿度、そして室内側熱交換器冷媒入口センサ33により検出される室内側熱交換器3の冷媒の蒸発温度を用いて、凝縮水量を推定する。もちろん室内側熱交換器吸い込み空気センサ31と室内側熱交換器吐き出し空気センサ32の温度湿度の変化から結露量を算出し、これを用いて室内側熱交換器の基準圧力損失を計算してもよい。
【0048】
また空調制御装置は、この算出した結露の影響込みの室内側熱交換器3の基準圧力損失PHEX_CALと、室内側熱交換器差圧センサ34で得られた実測差圧PHEX_EXPの差をとる。ここで基準圧力損失PHEX_CALと実測差圧PHEX_EXPがほぼ同じであれば、室内側熱交換器3の空気通過による圧力損失が、ほぼ埃がない状態のままで推定可能であったことを示し、これは室内側熱交換器3に埃がない、または検出できるほど蓄積されていないことを示す。このための判断値として、室内側熱交換器3の圧損の計算値(基準圧力損失PHEX_CAL)と実測値(実測差圧PHEX_EXP)の熱交換器差圧ΔPHEXを算出する。
【0049】
さらに空調制御装置は、低下した風量Q2と室内側ファン4の[圧力―風量特性カーブ]から、低下した風量Q2に対応するファン圧力PFAN_2を推定する。風量が低下していれば、たいていの場合、圧力は上昇する。このファン圧力PFAN_2から室内側熱交換器3の実測差圧PHEX_EXPとフィルタ5以外の送風系の損失を差し引いた値が、室内側ファン4の前後で生じている差圧となる。この差圧と、さきほど計算した埃なし時のフィルタ圧損Pfilterが同じであれば、フィルタ5に埃がないもしくは検出できないほど少ないと判断できる。このための判断値として、空調制御装置は、風量Q2の低下が生じた際のファン昇圧に相当するファン圧力PFAN_2から、埃がない場合の室内側熱交換器3の圧力損失PHEX_CALとフィルタ圧損Pfilterを差し引いた総合差圧ΔPTotalを算出する。
【0050】
各値を算出した後、空調制御装置は、ステップS07でまず初めに室内側熱交換器3の埃の有無を熱交換器差圧ΔPHEXが閾値(第2の閾値)β1よりも小さいか否か両者を比較することで判断する。先にも述べたが、熱交換器差圧ΔPHEXは、埃なし時の圧力損失と実測値の差であり、これが閾値β1よりも小さければ、埃なし時の計算値(基準圧力損失)が、実測した室内側熱交換器3の圧力損失に相当することとなり、すなわち室内側熱交換器3に埃がほとんどない(付着した埃の量は許容範囲内である)ことを示すこととなる。逆に、熱交換器差圧ΔPHEXが閾値β1に等しいかよりも大きい場合には、結露だけでは室内側熱交換器3の圧損上昇に対応できないことを示しており、すなわち室内側熱交換器3に埃が堆積していることを示している。
【0051】
ここで、空調制御装置は、埃がないつまり熱交換器差圧ΔPHEXが閾値β1よりも小さいときは、空調制御装置は、ステップS08で風量低下の要因が結露によるものだけかを判断する。先にも述べた総合差圧ΔPTOTALは、低下した風量Q2に相当する室内側ファン4の静圧から、埃がない場合の室内側熱交換器3とフィルタ5の総合基準圧力損失を差し引いたものである。
【0052】
この総合差圧ΔPTotalの値が閾値(第3の閾値)β2よりも小さい場合は、風量の低下が、埃がない状態の室内側熱交換器3とフィルタ5の総合基準圧力損失に起因すると推定できることを示しており、風量低下の要因が室内側熱交換器3の結露による圧力損失増加によるものと推定できることを示している。したがってこの場合、空調制御装置は、室内側熱交換器3もフィルタ5も埃が蓄積しておらず正常であると判断し、フローをステップS04へと移行させる。
【0053】
これに対し総合差圧ΔPTotalの値が閾値β2に等しいかよりも大きい場合、これは結露だけでは圧力損失の上昇が生じないと推定できることを示しており、空調制御装置は、要因として残るフィルタ5に圧力損失増加の要因つまり埃の蓄積があるものと判断し、ステップS09にて不図示のディスプレイに、フィルタ5に埃が付着しているから洗浄が必要である旨の情報を表示させ、その後フローをステップS05に移行する。
【0054】
次に熱交換器差圧ΔPHEXが閾値β1よりも等しいか大きい場合には、これは室内側熱交換器3に埃が堆積していることを示している。この場合、空調制御装置は、ステップS10にて、先に述べた総合差圧ΔPTotalの値から熱交換器差圧ΔPHEXの値を差し引いた値(フィルタ差圧)が、閾値(第4の閾値)β3よりも小さいかを確認する。
【0055】
ファン風量低下にともなう静圧上昇(総合差圧ΔPTotal)と、熱交換器の埃なし時の圧力損失と実測値の差(熱交換器差圧ΔPHEX)との差が、閾値β3より小さければ、風量低下の要因が室内側熱交換器3の圧力損失であるとほぼ推定できることとなり、空調制御装置は、ステップS12にて不図示のディスプレイに、室内側熱交換器3に埃が付着しているから洗浄が必要である旨の情報を表示させ、その後フローをステップS05に移行する。
【0056】
これに対し、該差が閾値β3に等しいかより大きいときは、風量低下の要因が室内側熱交換器3以外にあることを示しており、これは残る要因であるフィルタ5にも埃が堆積していると推定することができる。したがって、空調制御装置は、ステップS11にて不図示のディスプレイに、室内側熱交換器3とフィルタ5に埃が付着しているから洗浄が必要である旨の情報を表示させ、その後フローをステップS05に移行する。
【0057】
以上の判断により、「正常」、「フィルタのみ洗浄要」、「室内側熱交換器の洗浄要」、「フィルタと室内側熱交換器の両方の洗浄要」の4種の情報を表示することが可能であり、それに応じて作業者が空調の洗浄を行うことができる。また、閾値β1~β3は、フィルタ5および室内側熱交換器3以外の圧力損失を考慮した値であり、この値もフィルタ5および室内側熱交換器3が汚れていない状態のときにデータより決定する。このデータは営業運転中でもそれ以外のデータでもよい。
【0058】
図8には、本発明の実施形態1で使用する室内側ファン4の特性曲線の一例を示すグラフであり、縦軸に静圧、横軸に風量をとって示す。フィルタ5および室内側熱交換器3に埃がないときの室内側ファン4の風量がQ1であるとき、このファンは静圧P
FAN_1を発揮することを意味しており、この静圧と車内から吸い込まれた空気が、フィルタ5、室内側熱交換器3、室内側ファン4を介して再び車内へ戻るまでの空気調和装置全体の送風抵抗と等しくなる。ここで
図8のようなファン特性であったとすると、風量が低下しQ2となった場合には、ファンの出力静圧はP
FAN_2となり、
図8上ではP
FAN_1よりも静圧が高いこととなる。この静圧が空気調和装置全体の送風抵抗と同じなので、送風抵抗が増加していることを意味する。このように、
図8のようにファン特性があらかじめ得られていれば、風量低下量を求めることで、空気調和装置全体の送風抵抗の増加量を知ることができる。
【0059】
[実施形態2]
図9および
図10は、本実施形態2の鉄道車両用空気調和装置にかかるサイクル系統図である。
図9および
図10のサイクル系統図において、
図1および
図2で示した車両用空気調和装置と空気の流れは同様である。空気の流れは、室内側においては、車内からの空気がフィルタ5を通過し、室内側熱交換器3を通過し、室内側ファン4により再び車内へ戻る。室外側においては、車外の空気が、不図示の室外フィルタを経て室外側熱交換器12を通過し、室外側ファン13により再び室外へ放出される。ここでは模式的に室内側のみダクト2があるように書かれているが、ダクト2は室外側にもある。また室内側ファン4も軸流ファンのような形状で記載しているが、遠心ファン、シロッコファンといわれる高静圧タイプのファンが好適に使用される。
【0060】
実施形態1との相違点は、本実施形態2では図示する冷凍サイクルが四方弁23を有し、冷房と暖房を切り替えて使用することが可能である点である。
図9には、室内側熱交換器3を蒸発器として使用する冷房時の冷媒の流れを示し、
図10には、室内側熱交換器3を凝縮器として使用する暖房時の冷媒の流れを示す。
【0061】
図9に示す冷房時には、圧縮機21から吐出された高温のガス冷媒が、四方弁23を通過し、室外熱交換器ガスヘッダ14から室外側熱交換器12へ流れ、ここで冷媒は外気によって冷却され液化する。液化した冷媒は室外側分配器15より膨張弁24へ流れ、この膨張弁24にて減圧されることで液冷媒の一部がガス化し、冷媒の温度が低下する。膨張弁24にて減圧、低温化した冷媒は、分配器6からキャピラリーチューブ7を経て室内側熱交換器3に至る。すでに膨張弁24で冷媒は減圧されているので、ここでキャピラリーチューブ7は、分配器6で分配された冷媒を室内側熱交換器3内の冷媒パスに冷媒を流すためのもので、ここで冷媒圧力の低下すなわち減圧を行う必要はない。室内側熱交換器3にて車内の空気を冷却することで蒸発しガス化した冷媒は、室内側熱交換器ガスヘッダ8を経て四方弁23へ至り、ここからアキュムレータ22を経て圧縮機21へ戻る。ここで低温低圧のガス冷媒は圧縮機21に吸い込まれ、圧縮、昇圧されて高温高圧のガス化し吐出され、再び四方弁23へ流れる。
【0062】
一方、
図10に示す暖房時には、圧縮機21から吐出された高温のガス冷媒は、四方弁23を通過し、室内側熱交換器ガスヘッダ8に向かい、室内側熱交換器3に流れて、ここで車内の空気を暖めることで、冷媒自体は冷却され液化する。液化した冷媒は、キャピラリーチューブ7を介し分配器6より膨張弁24へ流れ、この膨張弁24にて減圧されることで液冷媒の一部がガス化し、冷媒の温度がさらに低下する。膨張弁24にて減圧、低温化した冷媒は、室外側分配器15を経て室外側熱交換器12に至る。室外側熱交換器12にて室外空気から吸熱することで蒸発しガス化した冷媒は、室外熱交換器ガスヘッダ14を経て四方弁23へ至り、ここからアキュムレータ22を経て圧縮機21へ戻る。ここで低温低圧のガス冷媒は圧縮機21に吸い込まれ、圧縮、昇圧されて高温高圧のガス化し吐出され、再び四方弁23へ流れる。
【0063】
このように四方弁23の配管が切り替えられることで、同じ配管を維持しながら冷房と暖房を切り替えることができる。このような構成の冷凍サイクルにおいて、本実施形態では、室内側のケーシング内で、車内からの空気が吸い込まれる側に室内側熱交換器吸い込み空気センサ(第7センサ)31を設け、室内側熱交換器3にて温度調整される前の空気温度および湿度を測定する。また室内側熱交換器3にて温度調整された後の空気温度を室内側熱交換器吐き出し空気センサ32にて測定する。この室内側熱交換器吐き出し空気センサ32にて湿度も測定してもよい。
【0064】
加えて室内側熱交換器3での冷媒の蒸発温度を測定するために、冷房時に分配器6を通過した後の冷媒温度を測定すべく、キャピラリーチューブ7に室内側熱交換器冷媒入口センサ(第9センサ)33を設けた。蒸発温度は室内側熱交換器3の内部の冷媒の飽和温度を測定するものだが、室内側熱交換器3の場所によっては、冷媒が過熱ガス化しており飽和温度よりも高温である場合があるため、熱交換器の入口に当たるキャピラリーチューブ7に温度センサを取り付けた。この蒸発温度は、室内側熱交換器3近傍に冷媒の圧力を測定するセンサを設けてもよいが、コストが高くなるという課題がある。
【0065】
室外側についても同様に、車外の空気が吸い込まれる側に室外側熱交換器吸い込み空気センサ(第6センサ)36を設け、室外側熱交換器12にて温度調整される前の空気温度および湿度を測定する。また室外側熱交換器12にて温度調整された後の空気温度を室外側熱交換器吐き出し空気センサ37にて測定する。この室外側熱交換器吐き出し空気センサ37にて湿度も測定してもよい。
【0066】
加えて室外側熱交換器12での冷媒の蒸発温度を測定するために、暖房時に室外側分配器15を通過後の冷媒温度を測定するように室外側熱交換器冷媒入口センサ(第8センサ)38を設けた。蒸発温度は室外側熱交換器12の内部の冷媒の飽和温度を測定するものだが、室外側熱交換器12の場所によっては、冷媒が過熱ガス化しており飽和温度よりも高温である場合があるため、熱交換器の入口に当たる場所に温度センサを取り付けた。この蒸発温度は、室外側熱交換器12近傍に冷媒の圧力を測定するセンサを設けてもよい。
【0067】
また冷凍サイクルの冷媒循環量を把握するために圧縮機の吸い込み側の冷媒圧力を測定し、冷媒の密度を把握することが望ましい。そこで圧縮機の吸い込み側の冷媒圧力と温度を測定するために圧縮機吸い込み側冷媒センサ35を設けた。
【0068】
さらに他の実施形態でも示したように室内側熱交換器3前後の送風にともなう空気の圧力変化を室内側熱交換器差圧センサ34にて測定した。これらの構成をとることで、空調制御装置は、冷房時において室内側熱交換器3とフィルタ5に堆積した埃の蓄積を、
図7に示したフローの処理によって同様に検出することができる。
【0069】
より具体的に、冷凍サイクルにおいて暖房運転を行うときは、
図7のステップS03を参照し、空調制御装置は、第6センサ~第9センサからの信号を入力し、室外側熱交換器12に流入する冷媒の温度の情報(Teva)と、室外側熱交換器12の上流の空気温度の情報(Ta-in)と、室外側熱交換器12の上流の湿度の情報(RHa-in)と、室内側熱交換器3の上流の空気の温度の情報(To-in)と、室内側熱交換器3から流出する冷媒の温度の情報(Tsc)とに基づいて風量特徴量(R)を求め、風量特徴量(R)が第5の閾値(α2)より小さいと判断したときは、室外フィルタ又は室外側熱交換器12の少なくとも一方に埃が付着した可能性があると判断する。第5の閾値(α2)は、第1の閾値(α1)と同様な態様で求めることができる。以下、
図7のフローに沿って、空調制御装置は同様に、室外フィルタ又は室外側熱交換器12に埃が堆積しているか否かを判断できる。また、空調制御装置は、室外フィルタ又は室外側熱交換器12に埃が堆積しているか否かに関する情報を、ディスプレイに表示できる。
【0070】
また、冷房時の室外側熱交換器12は凝縮器として使用されるため、この熱交換器表面で結露が生じることはない。また埃が蓄積するようなフィルタを設けていない場合が多いので、フィルタと熱交換器の埃堆積を区別する必要ながなく、よって測定した温度・湿度・圧力データから、室外側熱交換器12の風量低下を検出できれば、その要因として室外側熱交換器12の埃、または室外であるので土などの粉塵の堆積による圧力損失の増加が容易に推定できる。
【0071】
風量低下の検出方法としては、圧縮機吸い込み側冷媒センサ35、室外側熱交換器冷媒入口センサ38、室外側熱交換器吸い込み空気センサ36、室外側熱交換器吐き出し空気センサ37を用い、清掃後など正常運転時のデータを基に学習することで、検出してもよい。熱交換器の埃堆積をなしと判断できる期間を、清掃直後から何日~何週間と判断するかは、その列車の運行状態を含めた学習が必要となる。
【0072】
また図示はしていないが、圧縮機21の吐出側冷媒圧力を測定できていれば、圧縮機吸い込み側冷媒センサ35を基に、圧縮機の吸い込みおよび吐出側の冷媒エンタルピ、加えて室外側熱交換器冷媒入口センサ38と吐出側冷媒圧力から室外側熱交換器12の出口側の冷媒エンタルピがわかるので、これに圧縮機21の吸い込み側の冷媒密度と推定する圧縮機21の体積効率などから室外側熱交換器12で空気側に放熱する熱量を推定することができる。この放熱する熱量と、室外側熱交換器吸い込み空気センサ36、室外側熱交換器吐き出し空気センサ37から得られる空気側のエンタルピ変化量と風量の積がエンタルピを利用して風量を推定することは可能である。
【0073】
この風量低下の検出については、実施形態に示したエンタルピを求めるために様々な手段が考えられるので上記の手段に限定するものではない。
【0074】
暖房時には、室内側熱交換器3が凝縮器として使用されるため結露をすることがなくなる。したがって、
図7のフローにおいて、結露の影響を無くすことでより容易に熱交換機とフィルタの埃堆積を分離して検出することができる。
【0075】
一方で暖房時には、室外側熱交換器12は結露または着霜することが考えられる。結露の影響については、室外側熱交換器吸い込み空気センサ36にて、室外側熱交換器12に吸い込まれる空気の湿度を把握し、室外側熱交換器冷媒入口センサ38にて蒸発温度を把握することで結露量を推定し圧損の上昇を推定することが可能である。しかし着霜してしまった場合については、圧損の推定が困難であり、室外側熱交換器冷媒入口センサ38にて得られた蒸発温度が、例えば0℃以下の場合には、判断をスキップする処理を加えることが考えられる。この着霜を判断する蒸発温度については、各車両や運行条件などによって調整する必要がある。
【0076】
[実施形態3]
図11は、本実施形態3の鉄道車両用空気調和装置の配置断面図である。本実施形態では、車両空調装置1の内部において、フィルタ5と室内側熱交換器3との間に熱交換器吸い込み側照度(第1の光センサ)センサ39を設け、室内側熱交換器3と室内側ファン4の間に熱交換器吹き出し側照度センサ(第2の光センサ)40を設けた。各照度センサは、車体101内部、車内に設置された車内照明9から照射された光の、グリル51、フィルタ5、室内側熱交換器3を通過、または透過して各センサに届いた照度、明るさなどを測定するセンサである。
【0077】
これらのセンサが検出する光の量は、熱交換器吸い込み側照度センサ39はフィルタ5に埃が堆積した場合には、その埃の量によって低下すると推認される。また熱交換器吹き出し側照度センサ40は、熱交換器吸い込み側照度センサ39に届く光からさらに、室内側熱交換器3に堆積した埃によって低下すると推認される。
【0078】
したがって、この熱交換器吸い込み側照度センサ39の値を空調制御装置が経時的にモニターすることでフィルタ5に堆積した埃の量を推定することができ、さらに熱交換器吸い込み側照度センサ39と熱交換器吹き出し側照度センサ40の変化量を空調制御装置が経時的にモニターすることで室内側熱交換器3に堆積した埃の量を推定することができる。
【0079】
これらのセンサの検出値は、車外の明るさ、センサ位置や車内照明9の状態によって影響される。したがって、車外の明るさの影響を、測定するタイミング、例えば夜間の営業運転後に限ることなどによって低減する。またセンサ位置や車内照明9の状態の車体ごとのばらつきなどによる影響は、特に清掃後などの埃が無いときのデータを学習しキャリブレーションをかけることで低減することができる。近年は車内照明9にはLEDが使用されることが多く、経年劣化の影響は少なく、しいて挙げるならば、車内の空気温度を測定し、この値を学習の要素に加えることで影響低減の効果がより得られる可能性がある。
【0080】
この実施形態の手段をもちいれば、実施形態1や実施形態2で示した冷凍サイクルにセンサを配置せずとも、またはそれに加えて、フィルタ5と室内側熱交換器3の埃の堆積を区別しながら、付着した埃の量が許容範囲外となったことを検出することが可能となる。
【0081】
本明細書は、以下の発明の開示を含む。
(第1の態様)
室外側熱交換器と圧縮機と室内側熱交換器とが配管により接続され、該配管内を冷媒が通過する冷凍サイクルと、
前記室内側熱交換器の空気の流れ方向上流側に設置されたフィルタと、
前記フィルタから前記室内側熱交換器に向かう空気の流れを創成する室内ファンと、
前記室内側熱交換器の上流の空気温度と湿度を検出する第1センサと、
前記室外側熱交換器の上流の空気温度を検出する第2センサと、
前記室内側熱交換器に流入する冷媒の温度を検出する第3センサと、
前記室外側熱交換器から流出する冷媒の温度を検出する第4センサと、
前記第1センサ~前記第4センサからの信号を入力する空調制御装置と、を有し、
前記空調制御装置は、前記室内側熱交換器に流入する冷媒の温度の情報(Teva)と、前記室内側熱交換器の上流の空気温度の情報(Ta-in)と、前記室内側熱交換器の上流の湿度の情報(RHa-in)と、前記室外側熱交換器の上流の空気の温度の情報(To-in)と、前記室外側熱交換器から流出する冷媒の温度の情報(Tsc)とに基づいて風量特徴量(R)を求め、前記風量特徴量(R)が第1の閾値(α1)より小さいと判断したときは、前記フィルタ又は前記室内側熱交換器の少なくとも一方に埃が付着した可能性があると判断する、
ことを特徴とする軌条車両用空気調和装置。
【0082】
(第2の態様)
第1の態様の軌条車両用空気調和装置において、
前記室内側熱交換器3の入り口と出口での空気の圧力差を検出する第5センサ、を有し、
前記第5センサからの信号を入力した前記空調制御装置は、
前記風量特徴量(R)から、前記フィルタと前記室内側熱交換器を通過することにより低下した風量(Q2)を推定し、
前記低下した風量(Q2)での埃がないときの前記室内側熱交換器の空気通過にともなう圧力損失に相当する基準圧力損失(PHEX_CAL)と、前記第5センサにより得られた実測差圧(PHEX_EXP)との差圧である熱交換器差圧(ΔPHEX)を第2の閾値(β1)と比較して、前記熱交換器差圧(ΔPHEX)が第2の閾値(β1)より小さいと判断したときは、前記室内側熱交換器に付着した埃の量が許容範囲内であると判断する、
ことを特徴とする軌条車両用空気調和装置。
【0083】
(第3の態様)
第3の態様の軌条車両用空気調和装置において、
前記空調制御装置は、前記低下した風量(Q2)と前記室内ファンの特性とに基づいて、前記低下した風量(Q2)に対応するファン圧力(PFAN_2)を推定し、さらに前記ファン圧力(PFAN_2)に基づいて、前記室内ファンの前後で生じているファン差圧を求め、
前記ファン差圧(PFAN_2)から、前記室内側熱交換器の基準圧力損失(PHEX_CAL)とフィルタ圧損(Pfilter)を差し引いた総合差圧(ΔPTotal)を算出し、
前記総合差圧(ΔPTotal)が第3の閾値(β2)よりも小さい場合は、前記室内側熱交換器および前記フィルタに付着した埃の量が許容範囲内であると判断し、
前記総合差圧(ΔPTotal)が第3の閾値(β2)に等しいかより大きい場合は、前記フィルタに付着した埃の量が許容範囲外であると判断する、
ことを特徴とする軌条車両用空気調和装置。
【0084】
(第4の態様)
第2の態様の軌条車両用空気調和装置において、
前記空調制御装置は、
前記熱交換器差圧(ΔPHEX)が前記第2の閾値(β1)に等しいかより大きいと判断したときは、さらに前記総合差圧(ΔPTotal)値から前記熱交換器差圧(ΔPHEX)を差し引いたフィルタ差圧を、第4の閾値(β3)と比較し、
前記フィルタ差圧が第4の閾値(β3)より小さい場合は、前記室内側熱交換器に付着した埃の量が許容範囲外であると判断し、
前記フィルタ差圧が第4の閾値(β3)に等しいかより大きい場合は、前記室内側熱交換器および前記フィルタに付着した埃の量が許容範囲外であると判断する、
ことを特徴とする軌条車両用空気調和装置。
【0085】
(第5の態様)
第1の態様~第4の態様のいずれかの軌条車両用空気調和装置において、
前記室外側熱交換器の空気の流れ方向上流側に設置された室外フィルタと、
前記室外フィルタから前記室外側熱交換器に向かう空気の流れを創成する室外ファンと、
前記室外側熱交換器の上流の空気温度と湿度を検出する第6センサと、
前記室内側熱交換器の上流の空気温度を検出する第7センサと、
前記室外側熱交換器に流入する冷媒の温度を検出する第8センサと、
前記室内側熱交換器から流出する冷媒の温度を検出する第9センサと、
前記第6センサ~前記第9センサからの信号を入力する空調制御装置と、を有し、
前記空調制御装置は、前記室外側熱交換器に流入する冷媒の温度の情報(Teva)と、前記室外側熱交換器の上流の空気温度の情報(Ta-in)と、前記室外側熱交換器の上流の湿度の情報(RHa-in)と、前記室内側熱交換器の上流の空気の温度の情報(To-in)と、前記室内側熱交換器から流出する冷媒の温度の情報(Tsc)とに基づいて風量特徴量(R)を求め、前記風量特徴量(R)が第5の閾値(α2)より小さいと判断したときは、前記室外フィルタ又は前記室外側熱交換器の少なくとも一方に埃が付着した可能性があると判断する、
ことを特徴とする軌条車両用空気調和装置。
【0086】
(第6の態様)
第1の態様~第5の態様のいずれかの軌条車両用空気調和装置において、
前記フィルタと前記室内側熱交換器の間に、車内から照射される光の照度を検出する第1の光センサが配置され、前記室内側熱交換器と前記室内ファンの間に、車内から照射される光の照度を検出する第2の光センサが配置されており、
前記空調制御装置は、前記第1の光センサと前記第2の光センサの検出した照度を経時的にモニターすることにより、前記室内側熱交換器又は前記フィルタに付着した埃の量が許容範囲外となったと判断することを特徴とする軌条車両用空気調和装置。
【0087】
(第7の態様)
第1の態様~第6の態様のいずれかの軌条車両用空気調和装置において、
前記空調制御装置は、
前記室内側熱交換器又は前記室外側熱交換器に付着した埃の量、および前記フィルタ又は室外フィルタに付着した埃の量の少なくとも一方が許容範囲内であるか否かに関する情報をディスプレイに表示する、
ことを特徴とする軌条車両用空気調和装置。
【符号の説明】
【0088】
1 車両空調装置
2 ダクト
3 室内側熱交換器
4 室内側ファン
5 フィルタ
6 分配器
7 キャピラリーチューブ
8 室内熱交換器ガスヘッダ
9 車内照明
11 室外吸気口
12 室外側熱交換器
13 室外側ファン
14 室外熱交換器ガスヘッダ
15 室外側分配器
21 圧縮機
22 アキュムレータ
23 四方弁
24 膨張弁
31 室内側熱交換器吸い込み空気センサ
32 室内側熱交換器吐き出し空気センサ
33 室内側熱交換器冷媒入口センサ
34 室内側熱交換器差圧センサ
35 圧縮機吸い込み側冷媒センサ
36 室外側熱交換器吸い込み空気センサ
37 室外側熱交換器吐き出し空気センサ
38 室外側熱交換器冷媒入口センサ
39 熱交換器吸い込み側照度センサ
40 熱交換器吹き出し側照度センサ
51 グリル
52 仕切り板
61 埃
101 車体