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特開2024-179002芳香放出システム、制御装置および濃度制御方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024179002
(43)【公開日】2024-12-26
(54)【発明の名称】芳香放出システム、制御装置および濃度制御方法
(51)【国際特許分類】
   A61M 21/02 20060101AFI20241219BHJP
   F24F 8/50 20210101ALI20241219BHJP
   F24F 11/70 20180101ALI20241219BHJP
   A61L 9/01 20060101ALN20241219BHJP
   A61L 9/14 20060101ALN20241219BHJP
   F24F 120/00 20180101ALN20241219BHJP
   F24F 120/14 20180101ALN20241219BHJP
【FI】
A61M21/02 A
F24F8/50
F24F11/70
A61L9/01 Q
A61L9/14
F24F120:00
F24F120:14
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023097474
(22)【出願日】2023-06-14
(71)【出願人】
【識別番号】000002853
【氏名又は名称】ダイキン工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104880
【弁理士】
【氏名又は名称】古部 次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100206405
【弁理士】
【氏名又は名称】岸 真太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100173598
【弁理士】
【氏名又は名称】高梨 桜子
(72)【発明者】
【氏名】竹下 剛司
(72)【発明者】
【氏名】三木 早苗
(72)【発明者】
【氏名】山田 望
【テーマコード(参考)】
3L260
4C180
【Fターム(参考)】
3L260BA26
3L260CA04
3L260CA07
3L260CA15
3L260CA28
3L260FC26
4C180AA13
4C180CA01
4C180CB01
4C180GG06
4C180GG09
4C180KK02
4C180KK04
4C180LL06
4C180MM06
(57)【要約】
【課題】対象者が入眠するまでの期間に対象者が存在する空間に芳香物質を放出する場合に、対象者が芳香物質による香りを感じることによる入眠導入効果を得やすくする。
【解決手段】芳香放出システムは、対象者が存在する空間に芳香物質を放出する放出部と、制御開始から対象者が入眠するまでの期間、空間における芳香物質の濃度が上昇傾向となるように、放出部による芳香物質の放出を制御する制御部とを備える。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象者が存在する空間に芳香物質を放出する放出部と、
制御開始から前記対象者が入眠するまでの期間、前記空間における前記芳香物質の濃度が上昇傾向となるように、前記放出部による当該芳香物質の放出を制御する制御部と
を備える芳香放出システム。
【請求項2】
前記制御部は、前記空間における前記芳香物質の濃度が、当該芳香物質の種類ごとに定められた6段階臭気強度表示法による臭気強度において、前記期間に0.5段階/60分以上0.5段階/10分以下の変動量で上昇するように、当該芳香物質の放出を制御する請求項1に記載の芳香放出システム。
【請求項3】
前記制御部は、前記空間における前記芳香物質の濃度が、当該芳香物質の種類ごとに定められた6段階臭気強度表示法による臭気強度において、前記期間に0.5段階/15分の変動量で上昇するように、当該芳香物質の放出を制御する請求項2に記載の芳香放出システム。
【請求項4】
前記制御部は、前記期間の前に、前記空間における前記芳香物質の濃度を予め定められた基準濃度まで上昇させる事前期間を含むように、前記放出部による当該芳香物質の放出を制御し、
前記期間における前記上昇傾向による前記芳香物質の濃度の変動量は、前記事前期間における当該芳香物質の濃度の変動量よりも小さい請求項1に記載の芳香放出システム。
【請求項5】
前記制御部は、前記空間に関する情報、前記芳香物質の種類、および当該芳香物質に対する対象者の嗅覚順応パターンのいずれかに基づいて、前記芳香物質の放出を制御する請求項1乃至4のいずれか1項に記載の芳香放出システム。
【請求項6】
前記制御部は、前記空間に関する情報として、前記空間の体積に関する情報、または当該空間における換気に関する情報を取得する請求項5に記載の芳香放出システム。
【請求項7】
前記制御部は、前記芳香物質の種類ごとに予め定められた複数の前記嗅覚順応パターンの中から、前記空間に存在する対象者ごとに一の当該嗅覚順応パターンを選択し、前記芳香物質の放出を制御する請求項5に記載の芳香放出システム。
【請求項8】
前記放出部は、微粒化噴霧方式により前記空間に前記芳香物質を放出する請求項1に記載の芳香放出システム。
【請求項9】
前記制御部は、対象者による入眠に関する動作が行われた場合に、前記制御開始とする請求項1に記載の芳香放出システム。
【請求項10】
芳香物質を対象者が存在する空間に放出する芳香装置の制御装置であって、
制御開始から前記対象者が入眠するまでの期間、前記空間における前記芳香物質の濃度が上昇傾向となるように、前記芳香装置による当該芳香物質の放出を制御する制御装置。
【請求項11】
対象者が存在する空間における芳香物質の濃度が、制御開始から前記対象者が入眠するまでの期間、上昇傾向となるように、当該空間における当該芳香物質の濃度を制御する濃度制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、芳香放出システム、制御装置および濃度制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、芳香発生部が設けられた通路を開閉する開閉装置の動作間隔および同動作時間を制御する芳香制御部を有する空気清浄装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平3-139360号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
対象者が存在する空間に芳香物質を放出する芳香放出システム等では、例えば、空間における芳香物質の濃度が一定であったり、濃度の変動量が小さかったりすると、対象者が芳香物質による香りを感じることによる入眠導入効果が得にくい場合がある。
本開示は、対象者が入眠するまでの期間に対象者が存在する空間に芳香物質を放出する場合に、対象者が芳香物質による香りを感じることによる入眠導入効果を得やすくすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の第1の観点の芳香放出システムは、対象者が存在する空間に芳香物質を放出する放出部と、制御開始から前記対象者が入眠するまでの期間、前記空間における前記芳香物質の濃度が上昇傾向となるように、前記放出部による当該芳香物質の放出を制御する制御部とを備える。この場合、対象者が入眠するまでの期間に対象者が存在する空間に芳香物質を放出する場合に、対象者が芳香物質による香りを感じることによる入眠導入効果を得やすくすることができる。
ここで、第2の観点の芳香放出システムは、第1の観点の芳香放出システムであって、前記制御部は、前記空間における前記芳香物質の濃度が、当該芳香物質の種類ごとに定められた6段階臭気強度表示法による臭気強度において、前記期間に0.5段階/60分以上0.5段階/10分以下の変動量で上昇するように、当該芳香物質の放出を制御する。この場合、対象者が芳香物質による香りを感じることによる入眠導入効果をより得やすくなる。
また、第3の観点の芳香放出システムは、第2の観点の芳香放出システムであって、前記制御部は、前記空間における前記芳香物質の濃度が、当該芳香物質の種類ごとに定められた6段階臭気強度表示法による臭気強度において、前記期間に0.5段階/15分の変動量で上昇するように、当該芳香物質の放出を制御する。この場合、対象者が芳香物質による香りを感じることによる入眠導入効果をより得やすくなる。
また、第4の観点の芳香放出システムは、第1の観点の芳香放出システムであって、前記制御部は、前記期間の前に、前記空間における前記芳香物質の濃度を予め定められた基準濃度まで上昇させる事前期間を含むように、前記放出部による当該芳香物質の放出を制御し、前記期間における前記上昇傾向による前記芳香物質の濃度の変動量は、前記事前期間における当該芳香物質の濃度の変動量よりも小さい。この場合、芳香物質の濃度を基準濃度まで上昇させる事前期間を含まない場合と比べて、対象者が存在する空間における芳香物質の濃度を入眠に適した濃度にしやすくなる。
また、第5の観点の芳香放出システムは、第1の観点~第4の観点の芳香放出システムであって、前記制御部は、前記空間に関する情報、前記芳香物質の種類、および当該芳香物質に対する対象者の嗅覚順応パターンのいずれかに基づいて、前記芳香物質の放出を制御する。この場合、空間の体積に関する情報、空間における換気に関する情報、芳香物質の種類、および芳香物質に対する対象者の嗅覚順応パターンによらずに芳香物質を空間に放出するタイミング、または芳香物質の放出量を制御する場合と比べて、対象者が芳香物質による香りを感じることによる入眠導入効果をより得やすくなる。
また、第6の観点の芳香放出システムは、第5の観点の芳香放出システムであって、前記制御部は、前記空間に関する情報として、前記空間の体積に関する情報、または当該空間における換気に関する情報を取得する。この場合、空間の体積に関する情報および空間における換気に関する情報を取得しない場合と比べて、対象者が芳香物質による香りを感じることによる入眠導入効果をより得やすくなる。
また、第7の観点の芳香放出システムは、第5の観点の芳香放出システムであって、前記制御部は、前記芳香物質の種類ごとに予め定められた複数の前記嗅覚順応パターンの中から、前記空間に存在する対象者ごとに一の当該嗅覚順応パターンを選択し、前記芳香物質の放出を制御する。この場合、対象者ごとに選択された一の嗅覚順応パターンに基づいて芳香物質の放出を制御しない場合と比べて、対象者が芳香物質による香りを感じることによる入眠導入効果をより得やすくなる。
また、第8の観点の芳香放出システムは、第1の観点の芳香放出システムであって、前記放出部は、微粒化噴霧方式により前記空間に前記芳香物質を放出する。この場合、放出部が微粒化噴霧方式以外の方式で空間に芳香物質を放出する場合と比べて、空間における芳香物質の濃度を精度よく制御することができる。
また、第9の観点の芳香放出システムは、第1の観点の芳香放出システムであって、前記制御部は、対象者による入眠に関する動作が行われた場合に、前記制御開始とする。この場合、対象者が入眠するタイミングに合わせて、対象者が存在する空間における芳香物質の濃度を入眠に適した濃度にしやすくなる。
【0006】
また、他の観点から捉えると、本開示の第10の観点の制御装置は、芳香物質を対象者が存在する空間に放出する芳香装置の制御装置であって、制御開始から前記対象者が入眠するまでの期間、前記空間における前記芳香物質の濃度が上昇傾向となるように、前記芳香装置による当該芳香物質の放出を制御する。この場合、対象者が入眠するまでの期間に対象者が存在する空間に芳香物質を放出する場合に、対象者が芳香物質による香りを感じることによる入眠導入効果を得やすくすることができる。
【0007】
また、他の観点から捉えると、本開示の第11の観点の濃度制御方法は、対象者が存在する空間における芳香物質の濃度が、制御開始から前記対象者が入眠するまでの期間、上昇傾向となるように、当該空間における当該芳香物質の濃度を制御する。この場合、対象者が入眠するまでの期間に対象者が存在する空間に芳香物質を放出する場合に、対象者が芳香物質による香りを感じることによる入眠導入効果を得やすくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本実施形態が適用される環境制御システムの構成の一例を示す図である。
図2】本実施形態が適用される制御装置により実現される機能の一例を示すブロック図である。
図3】環境制御システムの制御装置による処理の一例を示したフローチャートである。
図4】対象空間における芳香物質の濃度の時間変化の一例を、放出部の動作とともに示した図である。
図5】(a)~(b)は、対象空間における芳香物質の濃度の上昇傾向の一例を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照して、本開示の実施形態について説明する。
図1は、本実施形態が適用される芳香放出システム1の構成の一例を示す図である。芳香放出システム1は、空間内にいる人を睡眠状態へ促すために、空間における芳香物質の濃度を制御するシステムである。
芳香放出システム1により芳香物質の濃度を制御する空間としては、壁や床等で囲われ、人が睡眠をとることができる体積を有する空間であれば特に限定されない。このような空間としては、人が睡眠をとるベッドマットや布団等の寝具が置かれた室内等を例示することができる。なお、以下では、芳香放出システム1により芳香物質の濃度を制御する対象となる空間を、対象空間と表記する場合がある。また、以下では、芳香放出システム1により芳香物質の濃度が制御される対象空間に存在する人を対象者と表記する場合がある。
【0010】
本実施形態の芳香放出システム1は、対象空間に芳香物質を放出する芳香装置10と、芳香装置10の動作を制御する制御部の一例としての制御装置20とを備えている。また、芳香放出システム1は、対象空間における対象者の存在を検知する人感センサ30を備えている。さらに、芳香放出システム1は、対象空間の明るさ(輝度)を検知する輝度センサ40を備えている。さらにまた、芳香放出システム1は、対象者が使用する端末装置50を備えている。
【0011】
芳香装置10は、芳香物質を収容する収容部11と、収容部11に収容されている芳香物質を空間に放出する放出部12とを備えている。
収容部11は、例えば、液体状の芳香物質を収容する。収容部11は、1種類の芳香物質を収容してもよく、複数種類の芳香物質を収容してもよい。芳香物質とは、人が感じることができる香りを有する物質を意味する。本実施形態の芳香装置10では、収容部11は、芳香物質の香りを感じた対象者を睡眠状態へ促す効果(以下、入眠導入効果と表記する。)を有する芳香物質を収容する。
【0012】
人感センサ30は、対象空間における対象者の存在を検知する。より具体的には、人感センサ30は、対象者が対象空間に設置された寝具に入ったことを検知する。なお、本実施形態では、対象者が寝具に入ったことを「入床」と表記する場合がある。すなわち、人感センサ30は、対象者の入床を検知する。そして、人感センサ30は、対象空間における対象者の存在を検知した結果である対象者存在信号を、制御装置20に出力する。
【0013】
人感センサ30としては、対象空間に設置されたベッドマットや布団等の寝具の下に設置された圧力センサを例示することができる。圧力センサは、寝具にかかる圧力に応じた電気信号を制御装置20に出力する。
また、人感センサ30としては、対象空間の寝具の周囲に設置された赤外線センサを例示することができる。赤外線センサは、寝具の周囲から発せられる赤外線、例えば寝具に入った対象者から発せられる赤外線に応じた電気信号を制御装置20に出力する。
なお、人感センサ30としては、対象者の入床を検知することができれば、圧力センサや赤外線センサには限定されない。
【0014】
輝度センサ40は、対象空間の明るさ(輝度)を検知する。そして、輝度センサ40は、対象空間の輝度に応じた電気信号(以下、輝度信号と表記する。)を制御装置20に出力する。
本実施形態の輝度センサ40は、対象空間に設置された寝具の周囲に配置され、寝具の枕元や寝具に入った対象者の周囲等の、対象空間の予め定められた特定の箇所における輝度を検知する。
【0015】
端末装置50は、通信機能および表示機能を備える情報機器により構成される。端末装置50としては、例えば、スマートフォン、タブレット型端末、スマートウォッチ等のウェアラブル端末等が挙げられる。
端末装置50は、例えば、Bluetooth(登録商標)やWi-Fi、インターネット等のネットワークを介して、制御装置20と通信可能に構成されている。
また、端末装置50は、端末装置50の傾きを検知する機能を備える。付言すると、端末装置50は、例えば、加速度センサ、ジャイロスコープ、磁気センサ等により、端末装置50の傾きを検知する。そして、端末装置50は、検知した端末装置50の傾きに関する情報である傾き情報を、制御装置20に出力する。
さらに、端末装置50は、対象者等により端末装置50に対して行われた操作に関する情報である操作情報を、制御装置20に出力する。
【0016】
制御装置20は、情報を処理する情報処理部21と、情報を記憶する記憶装置22と、通信を実現する通信部23とを備えている。また、制御装置20では、情報処理部21、記憶装置22および通信部23は、不図示のバスに接続されており、このバスを介してデータの授受を行う。
【0017】
情報処理部21は、CPU(Central Processing Unit)21A、ROM(Read Only Memory)21B、RAM(Random Access Memory)21Cを有するコンピュータ装置である。CPU21Aは、ROM21Bや不図示の記憶装置等に記憶された各種プログラムをRAM21Cにロードして実行することにより、制御装置20の後述する各機能を実現する。RAM21Cは、CPU21Aの作業用メモリ等として用いられるメモリであり、ROM21Bは、CPU21Aが実行する各種プログラム等を記憶するメモリである。
ここで、CPU21Aによって実現されるプログラムは、磁気記録媒体(磁気テープ、磁気ディスクなど)、光記録媒体(光ディスクなど)、光磁気記録媒体、半導体メモリ等のコンピュータが読取可能な記録媒体に記憶した状態で提供しうる。また、CPU21Aによって実行されるプログラムは、インターネットなどの通信手段を用いて提供してもよい。
【0018】
記憶装置22は、例えば、HDD(Hard Disk Drive)により構成され、各種のデータを記憶する。本実施形態の記憶装置22は、収容部11に収容され放出部12により放出される芳香物質に関する情報を記憶する。また、記憶装置22は、後述する対象者の入床が行われた時刻や、対象者の入眠準備動作が行われた時刻に関する情報を記憶する。さらに、記憶装置22は、対象者が入床してから入眠準備動作を行うまでに要した時間(後述する入眠準備時間)に関する情報を記憶する。
【0019】
また、記憶装置22は、対象者が入眠準備動作を行った後、入眠するまでに要する時間に関する情報を記憶する。なお、本実施形態の説明では、対象者が入眠準備動作を行った後、入眠するまでに要する時間を、「入眠所要時間」と表記する場合がある。
ここで、入眠所要時間は、対象者ごとに異なる場合がある。記憶装置22は、芳香放出システム1を利用する対象者が複数存在する場合、対象者ごとに異なる入眠所要時間を、それぞれの対象者に対応付けて記憶してもよい。
また、入眠所要時間は、対象者が行う入眠準備動作ごとに異なる場合がある。記憶装置22は、入眠準備動作ごとに異なる入眠所要時間を、それぞれの入眠準備動作に対応付けて記憶してもよい。
なお、記憶装置22は、複数の対象者または複数種類の入眠準備動作に対し一律に設定された入眠所要時間を記憶してもよい。
【0020】
また、記憶装置22は、芳香物質に対する対象者の嗅覚順応パターンに関する情報を記憶する。一般に、芳香物質が放出された空間にいる対象者は、時間の経過とともに芳香物質の香りに慣れて、芳香物質の香りを感じにくくなる嗅覚順応が起こる。嗅覚順応が起こるまでの期間は、対象者や芳香物質の種類ごとに異なる。記憶装置22は、芳香物質により嗅覚順応が起こるまでの期間に関する情報を、嗅覚順応パターンとして記憶する。
より具体的には、本実施形態の記憶装置22は、芳香物質の種類ごとに予め定められた複数の嗅覚順応パターンを記憶する。
【0021】
通信部23は、上述した人感センサ30、輝度センサ40、端末装置50等と通信し、各種のデータの授受を行う。
【0022】
続いて、本実施形態の制御装置20の機能について説明する。制御装置20は、制御部の一例であって、制御開始から対象者が入眠するまでの期間、対象空間における芳香物質の濃度が上昇傾向となるように、芳香装置10の放出部12による芳香物質の放出を制御する。
図2は、本実施形態が適用される制御装置20により実現される機能の一例を示すブロック図である。図2の各機能は、制御装置20の主に情報処理部21によって実現される。
【0023】
制御装置20は、放出部12の制御に用いる情報を取得する取得部201と、対象空間における対象者の動作を判断する動作判断部203と、放出部12が芳香物質を放出する条件を決定する条件決定部205と、条件決定部205にて決定された条件に基づいて放出部12を駆動させる駆動部207とを備えている。なお、以下では、条件決定部205が決定する、放出部12が芳香物質を放出する条件を、放出部12による放出条件と表記する場合がある。
【0024】
取得部201は、人感センサ30、輝度センサ40および端末装置50から出力された各種の情報を取得する。具体的には、取得部201は、人感センサ30から出力された、対象空間における対象者の存在を検知した結果である対象者存在信号を取得する。また、取得部201は、輝度センサ40から出力された、対象空間における輝度を検知した結果である輝度信号を取得する。さらに、取得部201は、端末装置50から出力された、端末装置50の傾きを検知した結果である傾き情報、対象者が端末装置50に対して行った操作に関する操作情報等を取得する。
【0025】
さらにまた、取得部201は、芳香物質を放出する対象空間に関する情報である空間情報を取得してもよい。空間情報としては、対象空間における体積に関する情報、対象空間における換気に関する情報等が挙げられる。詳細については後述するが、取得部201が取得した空間情報(対象空間における体積に関する情報、対象空間における換気に関する情報等)は、放出部12から放出される芳香物質の対象空間における濃度の制御に用いることができる。
取得部201は、例えば、端末装置50等を介して、ユーザによる空間情報の入力を受け付けることができる。また、取得部201は、対象空間に設置され、対象空間の温度や湿度などの環境を調整する空気調和装置(不図示)のリモートコントローラ等から空間情報を取得してもよい。
【0026】
取得部201は、対象空間における体積に関する情報として、例えば、対象空間の体積の入力を直接、受け付けてもよい。また、取得部201は、対象空間の体積に関する情報として、対象空間の体積を類推可能な他の情報の入力を受け付け、これらの情報から対象空間の体積を取得してもよい。対象空間の体積を類推可能な他の情報としては、対象空間の床面積、畳数等の情報が挙げられる。
【0027】
取得部201は、対象空間の換気に関する情報として、対象空間の換気回数や換気1回当たりの換気量等の入力を直接、受け付けてもよい。また、取得部201は、対象空間の換気に関する情報として、対象空間の換気回数や換気1回当たりの換気量を類推可能な他の情報の入力を受け付け、これらの情報から対象空間の換気回数や換気1回当たりの換気量等を取得してもよい。対象空間の換気回数等を類推可能な他の情報としては、例えば、空間の種別(住宅、ホテル、オフィスビル等)に関する情報、空間を構成する建物の工法(RC(Reinforced Concrete)造、S(Steel)造、SRC(Steel Reinforced Concrete)造、木造等)に関する情報、空間を構成する建物の建築年に関する情報、空間が位置する地域に関する情報等が挙げられる。
【0028】
また、取得部201は、芳香装置10で使用する芳香物質が複数種類存在する場合、放出部12に放出させる芳香物質の種類に関する情報を取得してもよい。付言すると、取得部201は、通信部23を介して制御装置20に接続される端末装置50等を介して、ユーザによる芳香物質の種類の入力を受け付けてもよい。
【0029】
動作判断部203は、取得部201にて取得した各種の情報、および記憶装置22に記憶されている情報に基づいて、対象者の動作を判断する。そして、動作判断部203は、対象者の動作の判断結果から、対象者の入床と睡眠の間に発生する入眠準備動作を認識する。
ここで、入眠準備動作とは、対象者が寝具に入った後(すなわち、対象者が入床した後)、対象者が入眠するまでの間に対象者が行う動作であって、入眠しようとする対象者が、入眠に先立って行う動作を意味する。また、入眠とは、人が覚醒状態から睡眠状態へ移行する際の、睡眠状態の直前の状態を意味する。
【0030】
動作判断部203は、人感センサ30から出力された対象者存在信号に基づき、対象者の入床を認識する。
また、動作判断部203は、輝度センサ40から出力された輝度信号に基づき、対象者の入床を認識してもよい。さらに、動作判断部203は、例えば通信部23を介して制御装置20に接続される不図示の入力装置や端末装置50等に対する対象者の入力に基づき、対象者の入床を認識してもよい。付言すると、動作判断部203は、入力装置や端末装置50を介して対象者の入床の自己申告を受け付け、受け付けた自己申告に基づき、対象者の入床を認識してもよい。また、入力装置や端末装置50は、例えば、ボタンやタッチパネルの操作やマイクに対する音声入力等により、対象者の入床の自己申告を受け付けることができる。
【0031】
そして、動作判断部203は、対象者の入床を認識した後、輝度センサ40から出力された輝度信号、端末装置50から出力された傾き情報、および端末装置50から出力された操作情報等に基づき、対象者の入眠準備動作を認識する。動作判断部203は、例えば、輝度センサ40から出力された輝度信号、端末装置50から出力された傾き情報および操作情報等に基づき、対象者が予め定められた動作を行ったと判断した場合に、この動作を入眠準備動作として認識する。また、動作判断部203は、例えば、輝度センサ40から出力された輝度信号等に基づき、対象空間における環境に予め定められた変化があった場合に、この変化を入眠準備動作として認識する。
また、動作判断部203は、対象者の動作の他、対象者が入床した後、対象者が入眠するまでの間の対象者の生体情報の変動を、入眠準備動作として認識してもよい。このような対象者の生体情報としては、特に限定されないが、例えば、対象者の心拍、体温、呼吸数、血圧等が挙げられる。これらの生体情報は、例えば、寝具や対象者に取り付けられた生体センサや端末装置50の機能等により取得することができる。
さらにまた、動作判断部203は、対象者の動作、対象空間における環境の変化、および対象者の生体情報の変動を組み合わせて、入眠準備動作を認識してもよい。
なお、動作判断部203が行う処理については、後段にて詳細に説明する。
【0032】
条件決定部205は、動作判断部203による対象者の判断に基づいて、放出部12による放出条件を決定する。
本実施形態の条件決定部205は、動作判断部203が対象者の入眠準備動作を認識した場合に、制御開始時間を決定する。そして、条件決定部205は、制御開始から対象者が入眠するまでの期間、対象空間における芳香物質の濃度が上昇傾向となるように、放出部12による放出条件を決定する。
また、条件決定部205は、動作判断部203が対象者の入眠準備動作を認識しない場合には、対象者が入眠しようとしていないものとして、対象空間における芳香物質の濃度が予め定められた濃度となるように、放出部12による放出条件を決定する。
なお、以下では、動作判断部203が対象者の入眠準備動作を認識した場合に、条件決定部205が決定する放出部12による放出条件を、入眠時の放出条件と表記し、動作判断部203が対象者の入眠準備動作を認識しない場合に、条件決定部205が決定する放出部12による放出条件を、通常時の放出条件と表記する場合がある。
【0033】
駆動部207は、条件決定部205により決定された放出部12による放出条件に基づいて、放出部12を駆動させる。付言すると、駆動部207は、条件決定部205により決定された放出部12による放出条件に基づいて、放出部12を、オン状態およびオフ状態に切り替える。オン状態とは、放出部12が芳香物質を放出する状態であり、オフ状態とは、放出部12が芳香物質の放出を停止している状態である。
なお、条件決定部205により決定される放出部12による放出条件(入眠時の放出条件)、および条件決定部205により決定された放出部12による放出条件により駆動部207が行う放出部12の駆動については、後段にて詳細に説明する。
【0034】
続いて、本実施形態の芳香放出システム1の動作について、制御装置20が行う処理を中心として説明する。
図3は、芳香放出システム1の制御装置20による処理の一例を示したフローチャートである。なお、以下で説明する制御装置20による処理は、制御装置20の情報処理部21に設けられたCPU21Aが行う。
【0035】
本実施形態の芳香放出システム1では、人感センサ30が、寝具の上の対象者の存在を検知し、検知結果である対象者存在信号を制御装置20に出力する。また、芳香放出システム1では、輝度センサ40が、対象空間の予め定められた特定の箇所における輝度を検知し、検知結果である輝度信号を制御装置20に出力する。また、芳香放出システム1では、端末装置50が、端末装置50の傾きを検知し、検知結果である傾き情報を制御装置20に出力する。また、芳香放出システム1では、端末装置50が、対象者が端末装置50に対して行った操作に関する操作情報を制御装置20に出力する。ここで、人感センサ30、輝度センサ40、端末装置50は、各種の情報を、予め定められたタイミングで制御装置20に出力してもよいし、制御装置20からの出力指示に応じて制御装置20に出力してもよい。
【0036】
制御装置20は、取得部201が、人感センサ30から出力された対象者存在信号を取得する(ステップ101)。付言すると、人感センサ30が圧力センサである場合、取得部201は、対象者存在信号として、寝具にかかる圧力に応じた電気信号を取得する。また、人感センサ30が赤外線センサである場合、取得部201は、対象者存在信号として、寝具の周囲から発せられる赤外線に応じた電気信号を取得する。
【0037】
次いで、制御装置20は、動作判断部203が、人感センサ30から出力された対象者存在信号に基づき、対象者が対象空間に設置された寝具に入ったか否か、すなわち対象者が入床したか否かの判定を行う(ステップ102)。
例えば人感センサ30が圧力センサである場合、対象者が入床すると、対象者が入床する前と比べて寝具にかかる圧力が大きくなり、出力される電気信号が変化する。また、例えば人感センサ30が赤外センサである場合、対象者が入床すると、入床した対象者から発せられる赤外線が検知され、出力される電気信号が変化する。動作判断部203は、対象者存在信号の一例である電気信号の変化に基づいて、対象者が入床したか否かを判定する。
動作判断部203が、対象者存在信号に基づき対象者が入床していないと判定した場合(ステップ102でNO)、制御装置20は、ステップ101に戻り、処理を継続する。
【0038】
一方、動作判断部203が、対象者存在信号に基づき対象者が入床していると判定した場合(ステップ102でYES)、制御装置20は、取得部201が、輝度センサ40から出力された輝度信号、端末装置50から出力された傾き情報、および端末装置50から出力された操作情報を取得する(ステップ103)。なお、取得部201は、後述するステップ104において動作判断部203が行う処理に応じて、輝度信号、傾き情報および操作情報の全てを取得してもよく、輝度信号、傾き情報および操作情報の中から選択された少なくとも1つを取得してもよい。
【0039】
次いで、制御装置20は、動作判断部203が、輝度センサ40から出力された輝度信号、端末装置50から出力された傾き情報、および端末装置50から出力された操作情報に基づいて、予め定められた入眠準備動作が行われたか否かを判定する(ステップ104)。
なお、ステップ104において動作判断部203が行う処理については、入眠準備動作の具体例を挙げて後段にて詳細に説明する。
【0040】
動作判断部203が、入眠準備動作が行われていないと判断した場合(ステップ104でNO)、すなわち、動作判断部203が入眠準備動作を認識しない場合、制御装置20は、条件決定部205が、放出部12による放出条件として、通常時の放出条件を決定する(ステップ106)。ステップ106において、条件決定部205は、例えば、対象空間における芳香物質の濃度が予め定められた範囲内で変化するように、放出部12による通常時の放出条件を決定する。
【0041】
一方、動作判断部203が、入眠準備動作が行われていると判定した場合(ステップ104でYES)、すなわち、動作判断部203が入眠準備動作を認識した場合、制御装置20は、条件決定部205が、放出部12による放出条件として、入眠時の放出条件を決定する(ステップ105)。ステップ105において、条件決定部205は、制御開始から対象者が入眠するまでの期間、対象空間における芳香物質の濃度が上昇傾向となるように、放出部12による入眠時の放出条件を決定する。
【0042】
次いで、制御装置20は、駆動部207が、ステップ105またはステップ106において決定した放出部12による放出条件により、芳香装置10の放出部12を駆動し、芳香物質を放出させる(ステップ107)。
これにより、対象空間における芳香物質の濃度が、予め定められた濃度に制御される。
以上により、芳香放出システム1による一連の処理が終了する。
【0043】
続いて、入眠準備動作、および動作判断部203による入眠準備動作の認識について説明する。上述したように、入眠準備動作とは、対象者が入床した後、入眠しようとする対象者が、入眠に先立って行う動作である。
例えば、入床した後に寝具で入眠する前にスマートフォンやタブレット型端末等の端末装置50の操作を行う対象者は、入眠しようとする際に、端末装置50の表示を切り、端末装置50を寝具の枕元等に置く等の動作を行う場合がある。このように、対象者が入眠しようとする際に行う、端末装置50の表示を切る動作、端末装置50を置く動作が、入眠準備動作に当たる。
【0044】
動作判断部203は、例えば、端末装置50から出力された傾き情報に基づいて、入眠準備動作の一例である対象者が端末装置50を寝具の枕元等に置く動作を認識することができる。
具体的に説明すると、例えば、対象者が寝具に座って端末装置50の操作を行う場合、端末装置50は、対象者が表示画面を見ることができるように、表示画面が水平方向に対して傾斜した状態となることが多い。これに対し、対象者が入眠しようとする際に、端末装置50を寝具の枕元等に置くと、端末装置50は、表示画面が水平方向に沿った状態となる。
【0045】
動作判断部203は、端末装置50から出力された傾き情報に基づき、端末装置50が、表示画面が水平方向に対して傾斜した状態であるか、表示画面が水平方向に沿った状態であるかを判断する。そして、動作判断部203は、端末装置50が、表示画面が水平方向に対して傾斜した状態から水平方向に沿った状態へ変化した場合に、対象者により端末装置50を置く動作が行われたと判断する。さらに、動作判断部203は、対象者が入床した後に、端末装置50を置く動作が行われたと判断した場合、この対象者が端末装置50を置く動作を、入眠準備動作として認識する。
【0046】
また、動作判断部203は、例えば、端末装置50から出力された操作情報に基づいて、入眠準備動作の一例である対象者が端末装置50の表示を切る動作を認識することができる。そして、動作判断部203は、対象者が入床した後に、端末装置50の表示を切る動作が行われたと判断した場合、この対象者が端末装置50の表示を切る動作を、入眠準備動作として認識する。
なお、動作判断部203が端末装置50から出力された操作情報に基づいて入眠準備動作として認識する対象者の動作は、端末装置50の表示を切る動作に限られない。動作判断部203は、例えば、対象者が入床した後に行う、端末装置50の電源を切る動作、端末装置50に設けられたスピーカの音量を下げる動作、端末装置50の表示画面の明るさを下げる動作、端末装置50によりアラームを設定する動作、端末装置50において特定のアプリケーション(例えば睡眠導入用のアプリケーション)を起動する動作等を、入眠準備動作として認識してもよい。
【0047】
また、例えば、入床した後に寝具で読書を行う対象者は、読書が可能なように入床の前後に、対象空間に設けられた照明を点灯させる場合がある。そして、この対象者は、読書をした後、入眠しようとした際に、照明の電源を切ったり照明の明るさを低下させたりする等の動作を行う場合がある。このように、対象者が入眠しようとする際に行う、照明の電源を切る動作、照明の明るさを低下させる動作が、入眠準備動作に当たる。
【0048】
動作判断部203は、例えば、輝度センサ40から出力された輝度信号に基づいて、入眠準備動作の一例である対象者が照明の電源を切る動作、または照明の明るさを低下させる動作を認識することができる。
具体的に説明すると、例えば、対象者が照明の電源を切ったり明るさを低下させたりすると、対象空間の輝度が低下する。動作判断部203は、輝度センサ40から出力された輝度信号に基づいて、対象空間の輝度が低下した場合に、対象者により照明の電源を切る動作、または照明の明るさを低下させる動作が行われたと判断する。さらに、動作判断部203は、対象者が入床した後に、照明の電源を切る動作、または照明の明るさを低下させる動作が行われたと判断した場合、この対象者が照明の電源を切る動作、または照明の明るさを低下させる動作を、入眠準備動作として認識する。言い換えると、動作判断部203は、対象者が入床した後に、対象空間における環境の一例である対象空間の明るさ(輝度)が低下するという変化があった場合に、この変化を入眠準備動作として認識する。
【0049】
本実施形態の制御装置20は、動作判断部203が入眠準備動作を認識した場合、対象者が入床してから入眠準備動作を行うまでに要した時間を、記憶装置22に記憶する。なお、以下では、対象者が入床してから入眠準備動作を行うまでに要した時間を、入眠準備時間と表記する場合がある。
そして、動作判断部203は、対象者の入床を認識した場合に、記憶装置22に記憶されている過去の入眠準備時間に基づいて、入眠準備動作を認識してもよい。具体的に説明すると、動作判断部203は、対象者の入床を認識した後、過去の入眠準備時間の平均時間が経過した場合に、入眠準備動作が行われたと判断してもよい。本実施形態では、記憶装置22に記憶されている過去の入眠準備時間が、対象者の入眠準備動作の履歴の一例である。
【0050】
続いて、動作判断部203が入眠準備動作を認識した場合に、条件決定部205が決定する放出部12による放出条件(入眠時の放出条件)、条件決定部205が決定した放出条件による放出部12の動作、および対象空間における芳香物質の濃度の変化の一例について説明する。
図4は、対象空間における芳香物質の濃度の時間変化の一例を、放出部12の動作とともに示した図である。図4では、横軸が時間経過を表しており、縦軸が対象空間における芳香物質の濃度を示している。
【0051】
上述したように、条件決定部205は、制御開始から対象者が入眠するまでの期間、対象空間における芳香物質の濃度が上昇傾向となるように、放出部12による入眠時の放出条件を決定する。
この例では、条件決定部205は、動作判断部203が入眠準備動作を認識した場合に、第1の期間TAと、第1の期間TAに引き続く第2の期間TBとを含むように、入眠時の放出条件を決定する。
【0052】
第1の期間TAは、対象空間における芳香物質の濃度を、予め定められた基準濃度P1まで上昇させる期間である。付言すると、第1の期間TAは、放出部12を継続してオン状態とすることで、対象空間における芳香物質の濃度を基準濃度P1まで上昇させる期間である。第1の期間TAは、第2の期間の前に、対象空間における芳香物質の濃度を基準濃度P1まで上昇させる事前期間の一例である。
【0053】
第2の期間TBは、第1の期間TAの後、対象者が入眠するまでの期間であって、対象空間における芳香物質の濃度が上昇傾向となるように放出部12を制御する期間である。付言すると、第2の期間TBは、放出部12を予め定められた放出時間(以下、放出時間T1と表記する。)のオン状態と、予め定められた停止時間(以下、停止時間T2と表記する。)のオフ状態とに交互に切り替えることで、対象空間における芳香物質の濃度が上昇傾向となるように制御する期間である。
第2の期間TBの長さは、入眠所要時間等によっても異なるが、例えば、5分以上60分以下とすることができ、10分以上20分以下であることが好ましい。
なお、以下では、制御装置20が、対象空間における芳香物質の濃度が上昇傾向となるように行う放出部12の制御を、上昇制御と表記する場合がある。すなわち、第2の期間TBは、制御装置20が放出部12を上昇制御する期間である。
【0054】
条件決定部205は、動作判断部203が対象者の入眠準備動作を認識した場合、入眠準備動作が行われた時刻(以下、準備動作時刻SAと表記する。)と、記憶装置22に記憶されている入眠所要時間とに基づいて、対象者が入眠すると予測される時刻(以下、入眠予測時刻SBと表記する。)を算出する。
また、条件決定部205は、第1の期間TAが開始される時刻であって、放出部12をオン状態にして放出部12により芳香物質の放出を開始する時刻(以下、放出開始時刻S1と表記する。)を決定する。
また、条件決定部205は、第1の期間TAを終了し、第2の期間TBを開始する時刻であって、放出部12による動作を第1の期間TAにおける動作から第2の期間TBにおける動作に切り替える時刻(以下、動作切替時刻S2と表記する。)を決定する。本実施形態では、動作切替時刻S2が、放出部12の上昇制御を開始する制御開始に相当する。
【0055】
本実施形態では、条件決定部205は、第2の期間TBにおいて、対象空間における芳香物質の濃度が、予め定められた基準濃度P1から予め定められた目標濃度P2まで上昇するように、放出部12による放出条件を決定する。
ここで、基準濃度P1は、例えば、対象者が芳香物質の香りを知覚できる濃度(検知閾値)、または対象者が芳香物質の香りが何の香りであるか分かる濃度(認知閾値)とすることができる。
また、目標濃度P2は、例えば、対象者の入眠に適した芳香物質の濃度である。より具体的には、人が入眠に適した芳香物質の香りを感じることで、副交感神経が優位になり、呼吸が深くなったり、興奮を和らげたり、体の緊張が取れたりする等の入眠を促進する入眠導入効果が得られる。目標濃度P2は、対象空間にいる人に対する入眠導入効果が最も大きくなるような芳香物質の濃度である。
【0056】
基準濃度P1および目標濃度P2は、芳香物質の種類ごとに異なる。芳香物質の基準濃度P1および目標濃度P2は、官能試験等により得ることができる。付言すると、基準濃度P1は、複数の人に対し、芳香物質の濃度を異ならせて、香りを感じるか否かを判定する試験を行い、試験結果に基づいて得ることができる。また、目標濃度P2は、複数の人に対し、芳香物質の濃度を異ならせて、入眠導入効果を測定する試験を行い、試験結果に基づいて得ることができる。また、基準濃度P1および目標濃度P2は、臭気判定士による三点比較式臭袋法等の公知の方法により取得してもよい。
【0057】
本実施形態の芳香放出システム1では、芳香装置10で使用する芳香物質ごとに基準濃度P1および目標濃度P2を予め取得し、芳香物質ごとの基準濃度P1および目標濃度P2を、芳香物質に関する情報として記憶装置22に記憶している。
なお、基準濃度P1は、芳香物質の種類や人による芳香物質の感受性の差等によっても変化するが、例えば、6段階臭気強度表示法により表される香りの強度で、1段階~2段階程度に相当する濃度とすることができる。また、目標濃度P2は、芳香物質の種類や人による芳香物質の感受性の差等によっても変化するが、例えば、6段階臭気強度表示法により表される香りの強度で、2.5段階程度に相当する濃度とすることができる。
【0058】
本実施形態では、第2の期間TBにおける芳香物質の濃度の変動量(上昇量)が、第1の期間TAにおける芳香物質の濃度の変動量よりも小さい。
また、本実施形態では、第2の期間TBにおける芳香物質の濃度の変動量が、上述した6段階臭気強度表示法による臭気強度を用いて、0.5段階/60分以上0.5段階/15分以下となるように、放出部12による入眠条件を決定することが好ましく、0.5段階/15分程度となるように、放出部12による入眠条件を決定することがより好ましい。
ここで、第2の期間TBにおける芳香物質の濃度の変動量とは、第2の期間TBの開始時刻(すなわち、動作切替時刻S2)と終了時刻(すなわち、入眠予測時刻SB)との対象空間における芳香物質の濃度の差分(この例では、基準濃度P1と目標濃度P2との差分)を、第2の期間TBの長さで除した量である。
【0059】
また、本実施形態では、条件決定部205は、取得部201により取得された対象空間に関する空間情報、取得部201により取得された芳香物質の種類に関する情報、および記憶装置22に記憶されている芳香物質に対する対象者の嗅覚順応パターンに関する情報に基づいて、放出部12による入眠時の放出条件を決定することが好ましい。これにより、空間情報、芳香物質の種類に関する情報、および芳香物質に対する対象者の嗅覚順応パターンに関する情報によらずに放出部12による入眠時の放出条件を決定する場合と比べて、対象空間における芳香物質の濃度を対象者の入眠を促しやすい濃度に制御しやすくなる。
【0060】
上述したように、記憶装置22は、芳香物質の種類ごとに複数の嗅覚順応パターンを記憶している。条件決定部205は、記憶装置22に記憶されている複数の嗅覚順応パターンの中から、対象者に応じて一の嗅覚順応パターンを選択する。そして、選択した嗅覚順応パターンに関する情報に基づいて、放出部12による入眠時の放出条件を決定する。
例えば、選択した嗅覚順応パターンが、嗅覚順応が起こるまでの期間が短いパターンである場合、第2の期間TBにおける芳香物質の濃度の変動量(上昇量)を大きくすることで、嗅覚順応を起こりにくくすることができる。この場合、入眠予測時刻SBにおいて、対象者が芳香物質の香りによって入眠導入効果を得やすくなる。
【0061】
続いて、図4を用いて、放出部12の動作、および対象空間における芳香物質の濃度変化について説明する。
動作判断部203により準備動作時刻SAに入眠準備動作が認識された後、条件決定部205により決定された放出開始時刻S1になると、第1の期間TAが開始され、放出部12がオン状態に切り替えられる。これにより、放出部12により対象空間に芳香物質が放出される。上述したように、放出部12は、予め定められた一定の放出量で芳香物質を放出する。したがって、第1の期間TAにおいて放出部12がオン状態に切り替えられ、放出部12により芳香物質が放出されると、対象空間における芳香物質の濃度が、一定の速度で上昇する。
【0062】
次いで、条件決定部205により決定された動作切替時刻S2になり、対象空間における芳香物質の濃度が基準濃度P1に到達すると、第2の期間TBが開始される。第2の期間TBでは、放出部12は、予め定められた放出時間T1のオン状態と、予め定められた停止時間T2のオフ状態とに交互に切り替えられる。
具体的に説明すると、第2の期間TBにおいて、放出部12がオフ状態に切り替えられ、放出部12による芳香物質の放出が停止されると、停止時間T2の間、対象空間の換気に伴う芳香物質の排出等により、対象空間における芳香物質の濃度が一定の速度で下降する。その後、停止時間T2が経過すると、放出部12が再びオン状態に切り替えられ、放出部12による芳香物質の放出が再開される。これにより、放出時間T1の間、対象空間における芳香物質の濃度が、再び一定の速度で上昇する。
【0063】
本実施形態では、放出時間T1の間、放出部12により芳香物質が放出されることによる対象空間における芳香物質の濃度の上昇量が、停止時間T2の間、放出部12による芳香物質の放出が停止されることによる対象空間における芳香物質の濃度の下降量よりも大きくなるように、放出時間T1および停止時間T2が定められている。
そして、第2の期間TB全体では、放出部12が放出時間T1のオン状態と停止時間T2のオフ状態とに交互に切り替えられることで、図4に示すように、対象空間における芳香物質の濃度が上昇傾向となる。付言すると、第2の期間TBでは、制御開始である動作切替時刻S2から対象者が入眠する入眠予測時刻SBまでの期間、対象空間における芳香物質の濃度が上昇傾向となる。
【0064】
本実施形態では、制御開始である動作切替時刻S2から対象者が入眠する入眠予測時刻SBまでの第2の期間TBにおいて、対象空間における芳香物質の濃度が上昇傾向であることで、第2の期間TBにおいて芳香物質の濃度が上昇しない場合と比べて、対象者が芳香物質の香りを感じることによる入眠導入効果を得やすくなる。
具体的に説明すると、例えば、第2の期間TBにおいて対象空間における芳香物質の濃度が変動しない場合、対象者が芳香物質の香りに慣れて芳香物質の香りを感じにくくなる嗅覚順応が起こる場合がある。この場合、入眠予測時刻SBにおいて、対象者が芳香物質の香りを感じることによる入眠導入効果を得にくくなる。
これに対し、本実施形態では、第2の期間TBにおいて、対象空間における芳香物質の濃度が上昇傾向であることで、対象者に嗅覚順応が起こりにくくなり、入眠予測時刻SBにおいて芳香物質による入眠導入効果を得やすくなる。
【0065】
その後、入眠予測時刻SBになると、対象空間における芳香物質の濃度が、予め定められた目標濃度P2になる。上述したように、目標濃度P2は、対象空間にいる人に対する入眠導入効果が最も大きくなるような芳香物質の濃度である。本実施形態の芳香放出システム1では、対象者が入眠すると予測される入眠予測時刻SBに、対象空間における芳香物質の濃度が目標濃度P2となることで、対象者が入眠するタイミングに合わせて、対象空間を入眠に適した環境とすることができる。
【0066】
入眠予測時刻SBを経過し、第2の期間TBが終了した後は、放出部12がオフ状態に切り替えられ、放出部12による芳香物質の放出が停止される。そして、対象空間における芳香物質の濃度が目標濃度P2から徐々に下降する。ここで、対象者が入眠した後は、対象者は芳香物質による香りを感じにくく、芳香物質による効果を得にくい。本実施形態では、入眠予測時刻SBの経過後に放出部12をオフ状態に切り替えることで、例えば、入眠予測時刻SBを経過し、対象者が入眠した後も放出部12を継続してオン状態とする場合に比べ、芳香物質の消費量を少なくすることができる。
【0067】
続いて、対象空間における芳香物質の濃度の上昇傾向について、具体的に説明する。
上述したように、本実施形態の芳香放出システム1では、制御装置20が、制御開始から対象者が入眠するまでの期間の一例である第2の期間TBにおいて、対象空間における芳香物質の濃度が上昇傾向となるように、芳香装置10の放出部12による芳香物質の放出を制御する。
ここで、第2の期間TBにおいて、対象空間における芳香物質の濃度が上昇傾向であるとは、必ずしも第2の期間TBの全ての期間において対象空間における芳香物質の濃度が上昇していなくてもよい。付言すると、第2の期間TBには、対象空間における芳香物質の濃度が変化しない期間や、上述した停止時間T2のように対象空間における芳香物質の濃度が下降する期間が含まれていてもよい。
【0068】
図5(a)~(b)は、対象空間における芳香物質の濃度の上昇傾向の一例を説明する図である。図5(a)~(b)では、横軸が時間経過を表しており、縦軸が対象空間における芳香物質の濃度を示している。また、図5(a)~(b)では、対象空間における芳香物質の濃度の時間変化を、実線で示している。
第2の期間TBにおいて、対象空間における芳香物質の濃度が上昇傾向であるとは、例えば、対象空間における芳香物質の濃度が以下のような場合を含む。
すなわち、第2の期間TBを複数の期間に分割し、分割したそれぞれの期間における芳香物質の平均濃度を算出する。この平均濃度が、より後の期間ほど大きくなっている場合に、第2の期間TBにおいて、対象空間における芳香物質の濃度が上昇傾向であるといえる。
【0069】
図5(a)では、第2の期間TBを、3つの期間TB1、TB2、TB3に分割している。この例では、期間TB1と比べて期間TB2における芳香物質の平均濃度が大きく、期間TB2と比べて期間TB3における芳香物質の平均濃度が大きい場合に、第2の期間TBにおいて、対象空間における芳香物質の濃度が上昇傾向であるといえる。言い換えると、芳香物質の平均濃度の関係が、期間TB1<期間TB2<期間TB3である場合に、第2の期間TBにおいて、対象空間における芳香物質の濃度が上昇傾向であるといえる。
【0070】
第2の期間TBを、芳香物質の平均濃度を算出する複数の期間に分割する方法としては、特に限定されないが、以下の方法を例示することができる。
例えば、第2の期間TBを、予め定められた3以上の任意の期間に分割してもよい。
また、例えば、第2の期間TBを、予め定められた特定の時間(例えば1分間等)ごとに複数の期間に分割してもよい。
さらに、上述したように、第2の期間TBにおいて、放出部12を放出時間T1のオン状態と停止時間T2のオフ状態とに交互に切り替える間欠制御を行う場合、第2の期間TBを、放出時間T1と停止時間T2とを合わせた芳香物質の放出間隔で複数の期間に分割してもよい。
【0071】
また、図5(b)に示すように、第2の期間TBにおいて、対象空間における芳香物質の濃度変化から、予め定められた特定周波数以上の高周波成分を除去した濃度変化(図5(b)の破線で示す。)を用いて、対象空間における芳香物質の濃度が上昇傾向であるか否かを判断してもよい。具体的には、対象空間における芳香物質の濃度の時間変化から高周波成分を除去した濃度変化が、第2の期間TBの時間経過に伴って上昇している場合に、第2の期間TBにおいて、対象空間における芳香物質の濃度が上昇傾向であるといえる。
【0072】
以上、本開示の実施形態について説明したが、本開示の技術的範囲は上記実施形態に限定されない。
例えば、上記の実施形態では、第2の期間TBにおいて、放出部12を予め定められた放出時間T1のオン状態と、予め定められた停止時間T2のオフ状態とに交互に切り替えることで、対象空間における芳香物質の濃度が上昇傾向となるように制御している。これに対し、放出部12を継続してオン状態とすることにより、対象空間における芳香物質の濃度が上昇傾向となるように制御してもよい。この場合、放出部12による単位時間当たりの放出量を調整することで、対象空間における芳香物質の濃度が、予め定められた変動量で増加するように制御することができる。
【0073】
また、上記の実施形態では、制御装置20は、対象者の入眠準備動作が行われた場合に、制御開始から対象者が入眠するまでの期間である第2の期間TBに、対象空間における芳香物質の濃度が上昇傾向となるように放出部12を制御している。言い換えると、本実施形態では、対象者による入眠に関する動作の一例として、対象者の入眠準備動作が行われた場合に、対象空間における芳香物質の濃度が上昇傾向とする制御の、制御開始としている。
しかしながら、対象空間における芳香物質の濃度を上昇傾向とする制御の制御開始とする対象者による入眠に関する動作は、対象者の入眠準備動作に限られない。対象者による入眠に関する動作は、例えば、対象者の入床であってもよい。言い換えると、制御装置20は、対象者による入床を認識した場合に、対象空間における芳香物質の濃度が上昇傾向となるように放出部12を制御してもよい。
例えば、図3に示したフローチャートでは、制御装置20は、ステップ102において対象者が入床していると判定した場合(ステップ102でYES)に、入眠準備動作が行われたか否かを判定する処理を行うことなく、ステップ105において入眠時の放出条件を決定してもよい。付言すると、制御装置20は、ステップ102において対象者が入床していると判定した場合に、ステップ105において、制御開始から対象者が入眠するまでの期間、対象空間における芳香物質の濃度が上昇傾向となるように、入眠時の放出条件を決定してもよい。
【0074】
また、上記の実施形態では、制御装置20は、対象者による入眠準備動作を認識した場合に、対象空間における芳香物質の濃度を基準濃度P1まで上昇させる事前期間の一例である第1の期間TAと、対象空間における芳香物質の濃度が上昇傾向となるように放出部12を制御する期間の一例である第2の期間TBとを含むように、放出部12を制御しているが、これに限られない。制御装置20は、例えば、対象者による入眠準備動作を認識した後、第1の期間TAを含まずに、対象空間における芳香物質の濃度が上昇傾向となるように放出部12を制御する期間を開始してもよい。
【0075】
また、上記の実施形態では、制御装置20は、条件決定部205が、第2の期間TBにおいて対象空間における芳香物質の濃度が上昇傾向となるように、放出部12による芳香物質の放出条件(入眠時の放出条件)を決定している。そして、駆動部207が、個の放出条件に従って放出部12を駆動することで、対象空間における芳香物質の濃度が上昇傾向となるように制御される。これに対し、制御装置20は、対象空間における芳香物質の濃度を取得し、取得した芳香物質の濃度に基づいて、対象空間における芳香物質の濃度が上昇傾向となるように放出部12を駆動してもよい。
具体的には、制御装置20は、対象空間に設置されたVOCセンサ等のガスセンサにより、対象空間における芳香物質の濃度を検知する。そして、制御装置20は、対象空間における芳香物質の濃度の検知結果に基づいて、対象空間における芳香物質の濃度が上昇傾向となるように放出部12を駆動してもよい。
また、制御装置20は、取得部201により取得された対象空間に関する空間情報、および放出部12による単位時間当たりの芳香物質の放出量等に基づいて、対象空間における芳香物質の濃度推移を予測する。そして、制御装置20は、予測した対象空間における芳香物質の濃度推移に基づいて、対象空間における芳香物質の濃度が上昇傾向となるように放出部12を駆動してもよい。
【0076】
また、上記の実施形態では、制御装置20は、対象者が入眠するまでの期間として、条件決定部205により決定された入眠予測時刻SBまでの第2の期間TBに、対象空間における芳香物質の濃度が上昇傾向となるように放出部12を制御したが、これに限られない。例えば、端末装置50が有する機能、人感センサ30、不図示の生体センサ等を用いて対象者の入眠を検出することが可能である場合、制御装置20は、対象者の入眠を検出した結果を用いて、放出部12を制御してもよい。付言すると、制御装置20は、対象者が入眠するまでの期間として、対象者の入眠を検出するまでの期間、対象空間における芳香物質の濃度が上昇傾向となるように放出部12を制御してもよい。
【0077】
また、上記の実施形態では、放出部12が、微粒化噴霧方式により芳香物質を放出するが、これに限られない。放出部12は、例えば、液体状の芳香物質を気化させる気化式、超音波により液体状の芳香物質を霧状にして拡散させる超音波式、液体状の芳香物質を液滴状にして吐出するインクジェット方式等により、芳香物質を放出してもよい。
なお、微粒化噴霧方式は、例えば、気化式等と比べて、対象空間の温度や湿度等の環境条件の違いによる芳香物質の濃度への影響が少ない傾向がある。また、微粒化噴霧方式は、例えば、インクジェット方式等と比べて、単位時間当たりの芳香物質の放出量のばらつきが小さい傾向がある。このような観点からは、放出部12は、微粒化噴霧方式により芳香物質を放出することが好ましい。
【0078】
ここで、上記にて説明した実施形態は、以下のように捉えることができる。本開示の芳香放出システム1は、対象者が存在する空間に芳香物質を放出する放出部12と、制御開始から対象者が入眠するまでの第2の期間TB、空間における芳香物質の濃度が上昇傾向となるように、放出部12による芳香物質の放出を制御する制御装置20とを備える。
この場合、対象者が入眠するまでの期間に対象者が存在する空間に芳香物質を放出する場合に、対象者が芳香物質による香りを感じることによる入眠導入効果を得やすくすることができる。
【0079】
ここで、制御装置20は、空間における芳香物質の濃度が、芳香物質の種類ごとに定められた6段階臭気強度表示法による臭気強度において、第2の期間TBに0.5段階/60分以上0.5段階/10分以下の変動量で上昇するように、芳香物質の放出を制御する。
この場合、対象者が芳香物質による香りを感じることによる入眠導入効果をより得やすくなる。
【0080】
また、制御装置20は、空間における芳香物質の濃度が、芳香物質の種類ごとに定められた6段階臭気強度表示法による臭気強度において、第2の期間TBに0.5段階/15分の変動量で上昇するように、芳香物質の放出を制御する。
この場合、対象者が芳香物質による香りを感じることによる入眠導入効果をより得やすくなる。
【0081】
また、制御装置20は、第2の期間TBの前に、空間における芳香物質の濃度を予め定められた基準濃度P1まで上昇させる第1の期間TAを含むように、放出部12による芳香物質の放出を制御し、第2の期間TBにおける上昇傾向による芳香物質の濃度の変動量は、第1の期間TAにおける芳香物質の濃度の変動量よりも小さい。
この場合、芳香物質の濃度を基準濃度まで上昇させる第1の期間TAを含まない場合と比べて、対象者が存在する空間における芳香物質の濃度を入眠に適した濃度にしやすくなる。
【0082】
また、制御装置20は、空間に関する情報、芳香物質の種類、および芳香物質に対する対象者の嗅覚順応パターンのいずれかに基づいて芳香物質の放出を制御する。
この場合、空間の体積に関する情報、空間における換気に関する情報、芳香物質の種類、および芳香物質に対する対象者の嗅覚順応パターンによらずに芳香物質を空間に放出するタイミング、または芳香物質の放出量を制御する場合と比べて、対象者が芳香物質による香りを感じることによる入眠導入効果をより得やすくなる。
【0083】
また、制御装置20は、空間に関する情報として、空間の体積に関する情報、または空間における換気に関する情報を取得する。
この場合、空間の体積に関する情報および空間における換気に関する情報を取得しない場合と比べて、対象者が芳香物質による香りを感じることによる入眠導入効果をより得やすくなる。
【0084】
また、制御装置20は、芳香物質の種類ごとに予め定められた複数の嗅覚順応パターンの中から、空間に存在する対象者ごとに一の嗅覚順応パターンを選択し、芳香物質の放出を制御する。
この場合、対象者ごとに選択された一の嗅覚順応パターンに基づいて芳香物質の放出を制御しない場合と比べて、対象者が芳香物質による香りを感じることによる入眠導入効果をより得やすくなる。
【0085】
また、放出部12は、微粒化噴霧方式により空間に芳香物質を放出する。
この場合、放出部が微粒化噴霧方式以外の方式で空間に芳香物質を放出する場合と比べて、空間における芳香物質の濃度を精度よく制御することができる。
【0086】
また、制御装置20は、対象者による入眠に関する動作が行われた場合に、制御開始とする。
この場合、対象者が入眠するタイミングに合わせて、対象者が存在する空間における芳香物質の濃度を入眠に適した濃度にしやすくなる。
【0087】
また、他の観点から捉えると、本開示の制御装置20は、芳香物質を対象者が存在する空間に放出する芳香装置10の制御装置20であって、制御開始から対象者が入眠するまでの期間、空間における芳香物質の濃度が上昇傾向となるように、芳香装置10による芳香物質の放出を制御する。
この場合、対象者が入眠するまでの期間に対象者が存在する空間に芳香物質を放出する場合に、対象者が芳香物質による香りを感じることによる入眠導入効果を得やすくすることができる。
【0088】
また、他の観点から捉えると、本開示の濃度制御方法は、対象者が存在する空間における芳香物質の濃度が、制御開始から対象者が入眠するまでの期間、上昇傾向となるように、空間における芳香物質の濃度を制御する。
この場合、対象者が入眠するまでの期間に対象者が存在する空間に芳香物質を放出する場合に、対象者が芳香物質による香りを感じることによる入眠導入効果を得やすくすることができる。
【符号の説明】
【0089】
1…芳香放出システム、10…芳香装置、11…収容部、12…放出部、20…制御装置、21…情報処理部、22…記憶装置、23…通信部、30…人感センサ、40…輝度センサ、50…端末装置、201…取得部、203…動作判断部、205…条件決定部、207…駆動部
図1
図2
図3
図4
図5