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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024179023
(43)【公開日】2024-12-26
(54)【発明の名称】樹脂金属積層材及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   B32B 15/08 20060101AFI20241219BHJP
   B32B 27/30 20060101ALI20241219BHJP
   B29C 65/02 20060101ALI20241219BHJP
【FI】
B32B15/08 N
B32B27/30 D
B29C65/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023097506
(22)【出願日】2023-06-14
(71)【出願人】
【識別番号】000135999
【氏名又は名称】株式会社ヒロテック
(71)【出願人】
【識別番号】391016554
【氏名又は名称】株式会社キグチテクニクス
(71)【出願人】
【識別番号】315003675
【氏名又は名称】弁理士法人IPRコンサルタント
(74)【代理人】
【識別番号】110001885
【氏名又は名称】弁理士法人IPRコンサルタント
(72)【発明者】
【氏名】和鹿 公則
(72)【発明者】
【氏名】宮本 伸樹
(72)【発明者】
【氏名】森貞 好昭
【テーマコード(参考)】
4F100
4F211
【Fターム(参考)】
4F100AA17C
4F100AA37
4F100AB01B
4F100AB03B
4F100AB09B
4F100AB10
4F100AB10B
4F100AB12B
4F100AB17B
4F100AB31
4F100AB31B
4F100AK01A
4F100AK01D
4F100AK04A
4F100AK04D
4F100AK07
4F100AK07A
4F100AK07D
4F100AK12A
4F100AK12D
4F100AK15A
4F100AK15D
4F100AK17
4F100AK17A
4F100AK18
4F100AK18A
4F100AK23A
4F100AK23D
4F100AK42A
4F100AK42D
4F100BA03
4F100BA05
4F100BA10A
4F100BA10D
4F100DH02
4F100DH02A
4F100DH02D
4F100EJ17
4F100EJ42
4F100EJ52
4F100EJ52C
4F100GB66
4F100GB90
4F100JK02
4F100JK06
4F100YY00A
4F100YY00B
4F100YY00D
4F211AA04
4F211AA11
4F211AA13
4F211AA15
4F211AA16
4F211AA24
4F211AA28
4F211AA29
4F211AD03
4F211AD16
4F211AG01
4F211AG03
4F211AH63
4F211AR02
4F211AR06
4F211AR12
4F211TA13
4F211TD11
4F211TH24
4F211TN31
(57)【要約】
【課題】リベット締結等の機械的接合を用いることなく、樹脂層と金属層が強固に接合され、接合界面に大きな外部応力が印加される用途においても使用でき、表面と裏面が樹脂層で被覆された長期の信頼性を有する樹脂金属接合体及びその簡便かつ効率的な製造方法を提供する。
【解決手段】樹脂層と金属層とが積層した樹脂金属積層材であって、樹脂層と金属層とが金属酸化物層を介して直接接合した接合領域を有し、最上層と最下層が樹脂層であること、を特徴とする樹脂金属積層材。最上層の樹脂層と最下層の樹脂層は異なる樹脂からなることが好ましい。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂層と金属層とが積層した樹脂金属積層材であって、
前記樹脂層と前記金属層とが金属酸化物層を介して直接接合した接合領域を有し、
最上層と最下層が前記樹脂層であること、
を特徴とする樹脂金属積層材。
【請求項2】
前記最上層の前記樹脂層と前記最下層の前記樹脂層が異なる樹脂からなること、
を特徴とする請求項1に記載の樹脂金属積層材。
【請求項3】
前記樹脂層と前記金属層とが接する全ての領域に前記接合領域が形成されていること、
を特徴とする請求項1又は2に記載の樹脂金属積層材。
【請求項4】
前記樹脂層にフッ素樹脂層を含むこと、
を特徴とする請求項1又は2に記載の樹脂金属積層材。
【請求項5】
前記樹脂層と前記金属層のせん断引張試験において、接合界面破断とならないこと、
を特徴とする請求項1又は2に記載の樹脂金属積層材。
【請求項6】
前記金属層の厚さ(T)が0.05~3.0mmであること、
を特徴とする請求項1又は2に記載の樹脂金属積層材。
【請求項7】
前記金属層の厚さ(T)と前記樹脂層の厚さ(T)がT≦T≦20Tを満たすこと、
を特徴とする請求項1又は2に記載の樹脂金属積層材。
【請求項8】
金属板の一方の表面及び他方の表面にパルスレーザを照射し、金属酸化物層を有する表面改質領域を形成させる第一工程と、
前記一方の表面における前記表面改質領域と前記他方の表面における前記表面改質領域に、樹脂板を当接させ、被接合界面を形成する第二工程と、
外部加熱手段を用いて前記被接合界面の全面を昇温すると共に、押圧手段を用いて前記被接合界面を押圧し、接合界面を形成する第三工程と、を有すること、
を特徴とする樹脂金属積層材の製造方法。
【請求項9】
最上層と最下層に異なる樹脂からなる前記樹脂板を配置すること、
を特徴とする請求項8に記載の樹脂金属積層材の製造方法。
【請求項10】
前記一方の表面と前記他方の表面の全ての領域に前記接合界面を形成させること、
を特徴とする請求項8又は9に記載の樹脂金属積層材の製造方法。
【請求項11】
少なくとも一枚のフッ素樹脂板を用いること、
を特徴とする請求項8又は9に記載の樹脂金属積層材の製造方法。
【請求項12】
前記金属層の厚さ(T)を0.05~3.0mmとすること、
を特徴とする請求項8又は9に記載の樹脂金属積層材の製造方法。
【請求項13】
前記金属板の厚さ(T)と前記樹脂板の厚さ(T)がT≦T≦20Tを満たすこと、
を特徴とする請求項8又は9に記載の樹脂金属積層材の製造方法。
【請求項14】
前記外部加熱手段及び前記押圧手段にオートクレーブを用いること、
を特徴とする請求項8又は9に記載の樹脂金属積層材の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は樹脂層と金属層が積層されてなる樹脂金属積層材及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
樹脂材は軽量であり、熱や電気を伝え難く、優れた耐食性等を有している。一方で、金属材は一般的に高強度であり、耐熱性や寸法安定性に優れる等の特徴を有している。樹脂材と金属材を複合化することができれば、各材料の利点を活用した複合材を得ることができるが、結合様式が異なる樹脂材と金属材を良好に接合することは困難であり、接合強度が要求される場合は、主としてリベット締結等の機械的接合が用いられる。
【0003】
しかしながら、リベット等を使用すると構造体の重量が増加するだけでなく、樹脂材と金属材の隙間からの腐食や機械締結部の応力集中による破断等、様々な問題点が存在する。これに対して、薄い金属箔を樹脂材と一体化させる場合においては、当該金属箔と樹脂材を直接接合することが提案されている。
【0004】
例えば、特許文献1(特開2020-82388号公報)においては、金属箔と、その少なくとも一方の面上に、非金属材料からなる導電性フィラー、有機繊維及び樹脂を含む樹脂層とを備える導電性金属樹脂積層体、が開示されている。
【0005】
上記特許文献1に記載の導電性金属樹脂積層体においては、金属箔と、その少なくとも一方の面上に、非金属材料からなる導電性フィラー、有機繊維及び樹脂を含む樹脂層とを備える導電性金属樹脂積層体によって、成形性や加工性が向上する、とされている。
【0006】
また、特許文献2(特開2008-221739号公報)においては、ポリアリールケトン系樹脂(A)と、ガラス転移温度が180~350℃の熱可塑性樹脂(B)とを、(A)/(B)=95/5~5/95の質量比で含有する樹脂組成物からなり、かつその厚さが0.5~15mmである樹脂層(X)の少なくとも片面に厚さ0.1~300μmの金属層(Y)を有し、且つ金属層(Y)外表面の最大山高さRy(JIS B0601-1994に準拠して測定)が、0.1~4μmの範囲にあることを特徴とする樹脂金属積層体、が開示されている。
【0007】
上記特許文献2に記載の樹脂金属積層体においては、耐熱性及び切削加工性に優れると共に、低吸水性及び低膨張性にも優れた樹脂板であって、電子・電気機器用部品、装置・機械器具用部材、自動車用部品等に好ましく用いることのできる樹脂金属積層体を提供することができる、とされている。
【0008】
更に、本発明者は、特許文献3(国際公開第2021/230025号)において、金属材と熱可塑性樹脂材を直接接合する方法であって、酸化性雰囲気下において前記金属材の表面にパルスレーザを照射し、表面改質領域を形成する第一工程と、前記表面改質領域に前記熱可塑性樹脂材を当接させ、被接合界面を形成する第二工程と、レーザ照射によって前記被接合界面を昇温して接合を達成する第三工程と、を有し、前記第一工程において、前記表面改質領域に5~500nmの粒径を有する金属酸化物粒子が連続的に接合されてなる金属酸化物粒子クラスターを形成し、前記金属酸化物粒子クラスターの表面の最大高さ(Sz)を50nm~3μmとすること、を特徴とする金属熱可塑性樹脂直接接合方法、を開示している。
【0009】
上記特許文献3に記載の金属熱可塑性樹脂直接接合方法においては、第三工程における熱可塑性樹脂材の分子結合の解離が金属酸化物粒子クラスターによって促進され、効率的に強固な接合部を得ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2020-82388号公報
【特許文献2】特開2008-221739号公報
【特許文献3】国際公開第2021/230025号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、特許文献1に記載の導電性金属樹脂積層体は、導電性金属樹脂積層体製造用シートを金属箔の少なくとも一方の面に載せ、加圧する工程を含む導電性金属樹脂積層体の製造方法によって得られるものであり、導電性金属樹脂積層体製造用シートと金属箔は強固に接合されておらず、接合界面に対して比較的大きな応力が印加される用途や長期の信頼性が要求される用途には用いることができない。
【0012】
また、特許文献2に記載の樹脂金属積層体は、公知の熱プレス法(圧縮成形法)又は複数の熱ロール、シームレスベルトもしくは熱板の間に挟む熱圧着法で得られるものであり、特許文献1に記載の導電性金属樹脂積層体と同様に、樹脂層と金属箔は強固に接合されておらず、接合界面に対して比較的大きな応力が印加される用途や長期の信頼性が要求される用途には用いることができない。
【0013】
換言すると、特許文献1に記載の導電性金属樹脂積層体及び特許文献2に記載の樹脂金属積層体においては、大きな応力が接合界面に印加される用途への適用は想定されていない。また、これらの樹脂金属積層体は、比較的厚い樹脂材の表面に薄い金属層を形成させたものであり、金属材の周囲が樹脂層で被覆された信頼性の高い樹脂金属積層材は存在しないのが現状である。
【0014】
一方で、特許文献3に記載の金属熱可塑性樹脂直接接合方法では強固な接合部を得ることができるが、金属部材と樹脂部材の継手を得るための技術であり、レーザ照射によって局所的に被接合界面を昇温して接合を達成することから、形成する接合界面の面積は比較的小さく、大面積での樹脂層と金属層の接合が必須となる樹脂金属接合体の製造には用いることができない。
【0015】
以上のような従来技術における問題点に鑑み、本発明の目的は、リベット締結等の機械的接合を用いることなく、樹脂層と金属層が強固に接合され、接合界面に大きな外部応力が印加される用途においても使用でき、表面と裏面が樹脂層で被覆された長期の信頼性を有する樹脂金属接合体及びその簡便かつ効率的な製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明者は上記目的を達成すべく、樹脂金属積層材の構造及び接合界面の状態等について鋭意研究を重ねた結果、金属板の表面及び裏面に、金属酸化物層を介して樹脂板を強固に直接接合すること等が極めて効果的であることを見出し、本発明に到達した。
【0017】
即ち、本発明は、
樹脂層と金属層とが積層した樹脂金属積層材であって、
前記樹脂層と前記金属層とが金属酸化物層を介して直接接合した接合領域を有し、
最上層と最下層が前記樹脂層であること、
を特徴とする樹脂金属積層材、を提供する。
【0018】
本発明の樹脂金属積層材においては、樹脂層と金属層が金属酸化物層を介して強固に直接接合されており、最上層と最下層が樹脂層となっている。その結果、樹脂層が有する優れた耐食性、断熱性及び絶縁性等を活用しつつ、構造体の軽量化を図ることができる。また、例えば、樹脂層を炭素繊維強化樹脂層(CFRP層)等とすることで、高強度化を図ることができる。一方で、内部には樹脂層と強固に接合された金属層が存在することから、金属層の優れた機械的性質や耐環境性を活用することができる。樹脂金属積層材の側面(外周)は樹脂層と金属層の積層面が露出した状態でもよく、例えば、金属層よりも広い樹脂層を積層し、樹脂層同士を圧着等してシールしてもよい。
【0019】
ここで、本発明における金属層は金属板や金属シートからなるものであり、例えば、メッシュ状等の緻密ではない金属材は含まれない。即ち、本発明の樹脂金属積層材においては、金属酸化物層を介した樹脂層と金属層の強固な接合界面が必須であり、メッシュ状の金属材に樹脂材が含侵して形成されるような、比較的弱い接合界面を有する複合材とは異なるものである。
【0020】
本発明の樹脂金属積層材における金属酸化物層は、大気中で金属層にパルスレーザを照射することで形成させることができる。当該金属酸化物層は金属層の全面に形成させてもよいが、接合領域に選択的に形成させることが好ましい。
【0021】
また、本発明の樹脂金属積層材においては、前記最上層の前記樹脂層と前記最下層の前記樹脂層が異なる樹脂からなること、が好ましい。最上層と最下層に異なる樹脂層を設けることで、所望の用途に応じて、樹脂金属積層材の機械的及び化学的特性を最適化することができる。例えば、最表面では化学安定性が要求され、樹脂金属積層材の全体としては軽量化と高い機械的特性が要求される場合、アルミニウム合金板(金属層)の一方の表面にフッ素樹脂層を設け、他方の表面に炭素繊維強化樹脂層(CFRP層)を設けることができる。
【0022】
また、本発明の樹脂金属積層材においては、前記樹脂層と前記金属層とが接する全ての領域に前記接合領域が形成されていること、が好ましい。樹脂層と金属層とが接する全ての領域に接合領域が形成されていることで、樹脂層と金属層との剥離を抑制することができる。
【0023】
また、本発明の樹脂金属積層材においては、前記樹脂層にフッ素樹脂層を含むこと、が好ましい。フッ素樹脂は耐薬品性、耐摩耗性、難燃性及び撥水撥油性に優れ、比誘電率及び誘電正接が低い等の特徴的な電気的特性を有するため、樹脂層にフッ素樹脂層を含むことで、樹脂金属積層材を医療機器、食品及び薬品等の関連産業において好適に用いることができる。フッ素樹脂は分子構造が安定で不活性であることから、フッ素樹脂と金属との接着は極めて困難であるが、本発明の樹脂金属積層材では樹脂層と金属層が金属酸化物層を介して強固に接合されることから、樹脂層をフッ素樹脂層とすることができる。
【0024】
更に、本発明の樹脂金属積層材においては、前記樹脂層と前記金属層のせん断引張試験において、接合界面破断とならないこと、が好ましい。本発明の樹脂金属積層材では金属層と樹脂層が金属酸化物層を介して強固に直接接合されていることから、接合界面に大きな外部応力が印加された場合であっても、界面破断となることが抑制される。ここで、樹脂層と金属層のせん断引張試験の方法は特に限定されず、例えば、樹脂層と金属層を部分的に切削して樹脂層と金属層のみの領域を形成した後、当該領域をチャックしてせん断応力を印加すればよい。
【0025】
また、本発明の樹脂金属積層材は、金属層の厚さ(T)が0.05~3.0mmとなっていることが好ましい。本発明の樹脂金属積層材における金属層は、電気的な特性の付与等を目的とする薄膜ではなく、樹脂金属積層材の機械的特性を向上させる役割も担っており、0.05~3.0mmの厚さを有していることが好ましい。
【0026】
金属層の厚さを0.05mm以上とすることで、金属層の機械的特性を活用することができる。ここで、金属層と樹脂層は金属酸化物層を介して強固に直接接合されていることから、金属層の厚さが0.05mm以上であっても、樹脂金属積層材に外部応力が印加された場合に界面破断となることが抑制される。一方で、金属層の厚さを3.0mm以下とすることで、金属層の割合の増加に伴う樹脂金属積層材の重量増加を抑制することができる。金属層の厚さは0.1~2.0mmであることが好ましく、0.2~1.0mmであることがより好ましく、0.3~0.5mmであることが最も好ましい。
【0027】
更に、本発明の樹脂金属積層材においては、前記金属層の厚さ(T)と前記樹脂層の厚さ(T)がT≦T≦20Tを満たすこと、が好ましい。金属層の厚さ(T)を樹脂層の厚さ(T)以上とすることで、金属層の機械的特性を樹脂金属積層材に十分反映させることができる。一方で、金属層の厚さ(T)を樹脂層の厚さ(T)の20倍以下とすることで、金属層の割合の増加に伴う樹脂金属積層材の重量増加を抑制することができる。即ち、T≦T≦20Tを満たすことで、金属層と樹脂層を積層するメリットを最大化することができる。金属層の厚さ(T)と樹脂層の厚さ(T)は2T≦T≦10Tを満たすことがより好ましく、3T≦T≦5Tを満たすことが最も好ましい。
【0028】
また、本発明は、
金属板の一方の表面及び他方の表面にパルスレーザを照射し、金属酸化物層を有する表面改質領域を形成させる第一工程と、
前記一方の表面における前記表面改質領域と前記他方の表面における前記表面改質領域に、樹脂板を当接させ、被接合界面を形成する第二工程と、
外部加熱手段を用いて前記被接合界面の全面を昇温すると共に、押圧手段を用いて前記被接合界面を押圧し、接合界面を形成する第三工程と、を有すること、
を特徴とする樹脂金属積層材の製造方法、も提供する。
【0029】
本発明の樹脂金属積層材の製造方法においては、金属板の両面に金属酸化物層を有する表面改質領域を形成させ、金属板を樹脂板で挟んだ状態で、被接合界面の全面を昇温すると共に押圧することで、強固な樹脂金属接合界面を有する樹脂金属積層体を簡便かつ効率的に得ることができる。
【0030】
また、本発明の樹脂金属積層材の製造方法においては、最上層と最下層に異なる樹脂からなる前記樹脂板を配置すること、が好ましい。最上層と最下層に異なる種類の樹脂板を配置することで、多様な積層組合せを有する樹脂金属積層材を簡便かつ効率的に製造することができる。
【0031】
また、本発明の樹脂金属積層材の製造方法においては、前記金属板材の両面の全ての領域に前記接合界面を形成させること、が好ましい。金属板材の両面の全ての領域に樹脂板を当接させて圧力を印加することで、金属板材の一方の表面及び他方の表面における被接合界面に均一な圧力を印加することができるだけでなく、一回の接合プロセスによって2枚の樹脂板を金属板に接合することができる。
【0032】
また、本発明の樹脂金属積層材の製造方法においては、少なくとも一枚のフッ素樹脂板を用いること、が好ましい。フッ素樹脂は分子構造が安定で不活性であることから、フッ素樹脂と金属との接着は極めて困難であるが、本発明の樹脂金属積層材では樹脂層と金属層が金属酸化物層を介して強固に接合されることから、樹脂層をフッ素樹脂層とすることができる。加えて、第三工程において、外部加熱手段を用いて被接合界面の全面を昇温すると共に、押圧手段を用いて被接合界面を押圧することから、大面積の接合界面を効率的に形成することができる。
【0033】
本発明の樹脂金属積層材の製造方法においては、板厚が0.05~3.0mmである金属板を用いることが好ましい。また、金属板の厚さ(T)と樹脂板の厚さ(T)はT≦T≦20Tを満たすように設計することが好ましい。適当な厚さの金属板と樹脂板を組み合わせることで、第三工程における押圧によって金属板と樹脂板の被接合界面に均一な圧力を印加することができ、良好な接合界面を形成することができる。
【0034】
また、第三工程において、外部加熱手段を用いて被接合界面の全面を昇温すると共に、押圧手段を用いて被接合界面を押圧することから、大面積の接合界面を効率的に形成することができる。外部加熱手段及び押圧手段は、本発明の効果を損なわない限りにおいて特に限定されず、従来公知の種々の手段を用いることができるが、例えば、オートクレーブでの昇温及び加圧を実施することが好ましい。
【発明の効果】
【0035】
本発明によれば、リベット締結等の機械的接合を用いることなく、樹脂層と金属層が強固に接合され、接合界面に大きな外部応力が印加される用途においても使用でき、表面と裏面が樹脂層で被覆された長期の信頼性を有する樹脂金属接合体及びその簡便かつ効率的な製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
図1】本発明の樹脂金属積層材の複数の態様を示す模式図である。
図2図1(a)の樹脂金属積層材1の概略断面図である。
図3】樹脂層4と金属層2のせん断引張試験の模式図である。
図4】本発明の樹脂金属積層材の製造方法の工程図である。
図5】実施例で用いたオートクレーブ成形条件である。
図6】実施例1で得られた樹脂金属積層材の外観写真である。
図7】実施例1で得られた樹脂金属積層材のせん断引張試験結果である。
図8】実施例2で得られた樹脂金属積層材の外観写真である。
図9】実施例2で得られた樹脂金属積層材の断面写真である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下、図面を参照しながら本発明の樹脂金属積層材及びその製造方法の代表的な実施形態について詳細に説明するが、本発明はこれらのみに限定されるものではない。なお、以下の説明では、同一または相当部分には同一符号を付し、重複する説明は省略する場合がある。また、図面は、本発明を概念的に説明するためのものであるから、表された各構成要素の寸法やそれらの比は実際のものとは異なる場合もある。
【0038】
1.樹脂金属積層材
本発明の樹脂金属積層材の複数の態様を示す模式図を図1に示す。図1の(a)は樹脂層/金属層/樹脂層からなる樹脂金属積層材、(b)は樹脂層/金属層/樹脂層からなる樹脂金属積層材において、樹脂層の種類が異なる場合、(c)は樹脂層/金属層/樹脂層/金属層/樹脂層からなる樹脂金属積層材の例である。なお、樹脂層と金属層の積層数はこれらに限られず、任意の積層数とすることができる。
【0039】
図1の(a)に示す樹脂金属積層材1は、金属層2の一方の表面と他方の表面の全面が樹脂層4で被覆されている。外部環境に接する樹脂金属積層材1の表面と裏面が樹脂層4で被覆されていることから、樹脂金属積層材1は、例えば、耐環境性が要求される用途に好適に用いることができる。また、樹脂金属積層材1の表面と裏面が樹脂層4で被覆されていることから、高い制振特性を発現することもできる。樹脂層4をフッ素樹脂とすることで化学安定性も付与できることから、例えば、フッ素樹脂/アルミニウム合金/フッ素樹脂とした樹脂金属積層材1は、医療用や化学処理用のトレイ等として使用することができる。
【0040】
図1の(b)に示す樹脂金属積層材1は、金属層2の一方の表面と他方の表面の全面が樹脂層4で被覆され、一方の表面を被覆する樹脂層4と他方の表面を被覆する樹脂層4が異なる種類の樹脂層となっている。例えば、一方の表面を被覆する樹脂層4をフッ素樹脂、他方の表面を被覆する樹脂層4を炭素繊維強化樹脂(CFRP)とすることで、高い強度と耐環境性が要求される軽量構造材として好適に使用することができる。
【0041】
図1の(c)に示す樹脂金属積層材1は、2層の金属層2と3層の樹脂層4で構成されており、最表面は樹脂層4となっている。図1の(a)に示す樹脂金属積層材1と同様に、外部環境に接する樹脂金属積層材1の表面と裏面が樹脂層4で被覆されていることから、樹脂金属積層材1は、例えば、耐環境性が要求される用途に好適に用いることができる。また、樹脂金属積層材1の表面と裏面が樹脂層4で被覆されていることから、高い制振特性を発現することもできる。更に、5層構造となっており、樹脂金属積層材1の各種特性をより緻密に設計することができる。
【0042】
樹脂金属積層材1における金属層2と樹脂層4の接合界面の状態を詳細に説明するために、図1(a)の樹脂金属積層材1の概略断面図を図2に示す。金属層2の一方の表面と他方の表面の全面に金属酸化物層6が形成され、金属酸化物層6を介して、樹脂層4が金属層2と直接接合されている。ここで、「直接接合されている」とは、接着剤やボルト等を使用することなく、樹脂層4が金属層2に接合されていることを意味している。
【0043】
また、金属酸化物層6は金属層2の表面の全面に形成されているが、金属層2の表面の全てが金属酸化物層6で緻密に覆われている必要はなく、例えば、点状や線状の金属酸化物層6が金属層2の表面の全面に形成されていればよい。より具体的には、金属酸化物層6を被接合界面の20%以上の面積とすることが好ましい。
【0044】
図2においては、説明のため、金属酸化物層6は比較的厚く記載しているが、実際の金属酸化物層6は極めて薄く、10~500nm程度の厚さである。金属酸化物層6は5~500nmの粒径を有する金属酸化物粒子が連続的に接合されてなる金属酸化物粒子クラスターであることが好ましく、最大高さ(Sz)が50nm~3μmの金属酸化物粒子クラスターとなっていることが好ましい。
【0045】
金属層2側の被接合界面となる金属酸化物粒子クラスターの表面の最大高さ(Sz)を50nm~3μmとすることで、金属酸化物粒子クラスターと樹脂層4との密着性を担保することができる。金属酸化物粒子クラスターの表面の最大高さ(Sz)を50nm以上とすることで、樹脂層4の充填によって接合部の強度を向上させることができ、3μm以下とすることで、樹脂層4が充填されずに空隙のまま残存することを抑制できる。より好ましい金属酸化物粒子クラスターの表面の最大高さ(Sz)は100nm~2μmであり、最も好ましい最大高さ(Sz)は200nm~1μmである。
【0046】
また、金属酸化物粒子の粒径は50~200nmとすることが好ましい。金属酸化物粒子の粒径を50nm以上とすることで、金属酸化物粒子クラスターの表面の最大高さ(Sz)を50nm以上とすることが容易になる。また、金属酸化物粒子の粒径を200nm以下とすることで、金属酸化物粒子クラスターの表面の最大高さ(Sz)を3μm以下とすることが容易になる。加えて、金属酸化物粒子の粒径を50~200nmとすることで、当該金属酸化物粒子の表面において、例えば、フッ素樹脂材が加熱された際に、当該フッ素樹脂材のC-F結合の解離を促進することができる。
【0047】
また、樹脂金属積層材1では、金属層2の厚さ(T)が0.05~3.0mmとなっている。金属層2の厚さを0.05mm以上とすることで、金属層2の機械的特性を活用することができる。ここで、金属層2と樹脂層4は金属酸化物層6を介して強固に直接接合されていることから、金属層2の厚さが0.05mm以上であっても、樹脂金属積層材1に外部応力が印加された場合に界面破断となることが抑制される。一方で、金属層2の厚さを3.0mm以下とすることで、金属層2の割合の増加に伴う樹脂金属積層材1の重量増加を抑制することができる。金属層2の厚さは0.1~2.0mmであることが好ましく、0.2~1.0mmであることがより好ましく、0.3~0.5mmであることが最も好ましい。
【0048】
また、金属層2の厚さ(T)と樹脂層4の厚さ(T)がT≦T≦20Tを満たすことが好ましい。金属層2の厚さ(T)を樹脂層4の厚さ(T)以上とすることで、金属層2の機械的特性を樹脂金属積層材1に十分反映させることができる。一方で、金属層2の厚さ(T)を樹脂層4の厚さ(T)の20倍以下とすることで、金属層2の割合の増加に伴う樹脂金属積層材1の重量増加を抑制することができる。即ち、T≦T≦20Tを満たすことで、金属層2と樹脂層4を積層するメリットを最大化することができる。金属層2の厚さ(T)と樹脂層4の厚さ(T)は2T≦T≦10Tを満たすことがより好ましく、3T≦T≦5Tを満たすことが最も好ましい。
【0049】
金属層2として用いる金属材は、本発明の効果を損なわない限りにおいて特に限定されず、従来公知の種々の金属材を用いることができ、例えば、ステンレス鋼、チタン、チタン合金、アルミニウム、アルミニウム合金、マグネシウム、マグネシウム合金、銅、銅合金等を用いることができるが、比強度の観点からはアルミニウム、アルミニウム合金、チタン及びチタン合金を用いることが好ましく、耐食性等の観点からは、ステンレス鋼、チタン及びチタン合金を用いることが好ましい。また、構造材料として、導電性を制御するためには、銅若しくは、銅合金を用いることが好ましい。
【0050】
また、樹脂層4には種々の熱可塑性樹脂を用いることができる。当該熱可塑性樹脂は本発明の効果を損なわない限りにおいて特に限定されず、従来公知の汎用プラスチック、エンジニアリングプラスチック及びスーパーエンジニアリングプラスチックを好適に用いることができる。より具体的には、例えば、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリスチレン(PS)、ポリアセタール(POM)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ABS樹脂(ABS)、ポリアミド(PA)、ポリカーボネート(PC)、PET(Polyethylene Terephthalate)、及び種々の炭素繊維強化樹脂(CFRP)やガラス繊維強化樹脂(GFRP)等を用いることができる。
【0051】
樹脂金属積層材1においては、樹脂層4と金属層2のせん断引張試験において、接合界面破断とならないことが好ましい。樹脂金属積層材1では金属層2と樹脂層4が金属酸化物層6を介して強固に直接接合されていることから、接合界面に大きな外部応力が印加された場合であっても、界面破断となることが抑制される。ここで、樹脂層4と金属層2のせん断引張試験の方法は特に限定されず、例えば、図3に示すように、樹脂層4と金属層2を部分的に切削して樹脂層4と金属層2のみの領域を形成した後、当該領域をチャックしてせん断応力(L)を印加すればよい。
【0052】
2.樹脂金属積層材の製造方法
図4は、本発明の樹脂金属積層材の製造方法の工程図である。本発明の樹脂金属積層材の製造方法は、金属酸化物層を有する表面改質領域を形成させる第一工程(S01)と、被接合界面を形成する第二工程(S02)と、接合界面を形成する第三工程(S03)と、を有している。以下、各工程について詳述する。
【0053】
(1)第一工程(S01:表面改質領域形成工程)
第一工程(S01)は、強固な接合界面の形成に寄与する表面改質領域を得るための工程である。表面改質領域には、5~500nmの粒径を有する金属酸化物粒子が連続的に接合されてなる金属酸化物粒子クラスターであって、最大高さ(Sz)が50nm~3μmの金属酸化物粒子クラスターを形成することが好ましい。
【0054】
金属層2となる金属板側の被接合界面における金属酸化物粒子クラスターの表面の最大高さ(Sz)を50nm~3μmとすることで、第三工程(S03)における金属酸化物粒子クラスターと樹脂層4となる樹脂板との密着性を担保することができる。金属酸化物粒子クラスターの表面の最大高さ(Sz)を50nm以上とすることで、樹脂材の充填によって接合部の強度を向上させることができ、3μm以下とすることで、樹脂材が充填されずに空隙のまま残存することを抑制できる。より好ましい金属酸化物粒子クラスターの表面の最大高さ(Sz)は100nm~2μmであり、最も好ましい最大高さ(Sz)は200nm~1μmである。
【0055】
また、金属酸化物粒子の粒径は50~200nmとすることが好ましい。金属酸化物粒子の粒径を50nm以上とすることで、金属酸化物粒子クラスターの表面の最大高さ(Sz)を50nm以上とすることが容易になる。また、金属酸化物粒子の粒径を200nm以下とすることで、金属酸化物粒子クラスターの表面の最大高さ(Sz)を3μm以下とすることが容易になる。加えて、金属酸化物粒子の粒径を50~200nmとすることで、当該金属酸化物粒子の表面において樹脂材が加熱された際に、当該樹脂材の結合の解離を促進することができる。
【0056】
第一工程(S01)において、具体的には、酸化性雰囲気下において金属材の表面にパルスレーザを照射する。第一工程で用いるレーザは、本発明の効果を損なわない限りにおいて特に制限されず、従来公知の種々のレーザを用いることができ、例えば、金属材を効率的に加熱できる半導体レーザを好適に用いることができる。
【0057】
パルスレーザの1パルスの照射エネルギーは0.2~1.0mjとすることが好ましい。パルスレーザの1パルスの照射エネルギーを0.2~1.0mjとすることで、照射領域に5~500nmの粒径を有する金属酸化物粒子が連続的に接合されてなる金属酸化物粒子クラスターを形成すると共に、当該金属酸化物粒子クラスターの表面の最大高さ(Sz)を50nm~3μmとすることができる。
【0058】
また、酸化性雰囲気の種類は本発明の効果を損なわない限りにおいて特に限定されず、パルスレーザの照射によって金属板の表面に金属酸化物粒子クラスターが形成される雰囲気とすればよく、例えば、大気中で処理を施せばよい。
【0059】
また、表面改質領域は金属板の被接合界面に形成させればよいが、当該表面改質領域を被接合界面の20%以上の面積とすることが好ましい。表面改質領域を被接合界面の20%以上の面積とすることで、接合部全体として高い継手強度と信頼性を担保することができる。また、表面改質領域は面状に形成してもよく、例えば、線状等として適当なパターンを描いてもよい。
【0060】
(2)第二工程(S02:被接合界面形成工程)
第二工程(S02)は、第一工程(S01)で表面改質領域を形成させた金属板と樹脂板とを当接させて、被接合界面を形成させるための工程である。
【0061】
ここで、樹脂金属積層材1は、金属板と樹脂板の間に形成される接合界面によって連続的に一体化する構造であればよく、金属板と樹脂板は任意の枚数を積層させることができる。
【0062】
金属層2として用いる金属板は、本発明の効果を損なわない限りにおいて特に限定されず、従来公知の種々の金属板を用いることができ、例えば、ステンレス鋼、チタン、チタン合金、アルミニウム、アルミニウム合金、マグネシウム、マグネシウム合金、銅、銅合金等を用いることができるが、比強度の観点からはアルミニウム、アルミニウム合金、チタン及びチタン合金を用いることが好ましく、耐食性等の観点からは、ステンレス鋼、チタン及びチタン合金を用いることが好ましい。
【0063】
また、樹脂層4となる樹脂板には、種々の熱可塑性樹脂を用いることができる。当該熱可塑性樹脂は本発明の効果を損なわない限りにおいて特に限定されず、従来公知の汎用プラスチック、エンジニアリングプラスチック及びスーパーエンジニアリングプラスチックを好適に用いることができる。より具体的には、例えば、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリスチレン(PS)、ポリアセタール(POM)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ABS樹脂(ABS)、ポリアミド(PA)、ポリカーボネート(PC)、PET(Polyethylene Terephthalate)、及び種々の炭素繊維強化樹脂(CFRP)やガラス繊維強化樹脂(GFRP)等を用いることができる。
【0064】
また、少なくとも一枚のフッ素樹脂板を用いることが好ましい。フッ素樹脂は分子構造が安定で不活性であることから、フッ素樹脂と金属との接着は極めて困難であるが、本発明の樹脂金属積層材では樹脂層4と金属層2が金属酸化物層6を介して強固に接合されることから、樹脂層4をフッ素樹脂層とすることができる。加えて、第三工程(S03)において、外部加熱手段を用いて被接合界面の全面を昇温すると共に、押圧手段を用いて被接合界面を押圧することから、大面積の接合界面を効率的に形成することができる。
【0065】
また、金属板の一方の表面と他方の表面を異なる種類の樹脂板で被覆することが好ましい。金属板の一方の表面と他方の表面に異なる種類の樹脂板を配置することで、多様な積層組合せを有する樹脂金属積層材1を簡便かつ効率的に製造することができる。
【0066】
ここで、金属板の厚さ(T)を0.05~3.0mmとし、金属板の厚さ(T)と樹脂板の厚さ(T)がT≦T≦20Tを満たすように設計することで、簡便かつ効率的に良好な樹脂金属積層材1を得ることができる。
【0067】
金属板の厚さを0.05mm以上とすることで、金属板の機械的特性を活用することができる。ここで、金属板と樹脂板は金属酸化物層6を介して強固に直接接合されていることから、金属板の厚さが0.05mm以上であっても、樹脂金属積層材1に外部応力が印加された場合に界面破断となることが抑制される。一方で、金属板の厚さを3.0mm以下とすることで、金属層2の割合の増加に伴う樹脂金属積層材1の重量増加を抑制することができる。金属板の厚さは0.1~2.0mmであることが好ましく、0.2~1.0mmであることがより好ましく、0.3~0.5mmであることが最も好ましい。
【0068】
また、金属板の厚さ(T)と樹脂板の厚さ(T)はT≦T≦20Tを満たすことが好ましい。金属板の厚さ(T)を樹脂板の厚さ(T)以上とすることで、金属板の機械的特性を樹脂金属積層材1に十分反映させることができる。一方で、金属板の厚さ(T)を樹脂板の厚さ(T)の20倍以下とすることで、金属層2の割合の増加に伴う樹脂金属積層材1の重量増加を抑制することができる。即ち、T≦T≦20Tを満たすことで、金属板と樹脂板を積層するメリットを最大化することができる。金属板の厚さ(T)と樹脂板の厚さ(T)は2T≦T≦10Tを満たすことがより好ましく、3T≦T≦5Tを満たすことが最も好ましい。
【0069】
(3)第三工程(S03:接合界面形成工程)
第三工程(S03)は、外部加熱手段及び押圧手段を用いて、第二工程(S02)で形成させた被接合界面の全面を同時に昇温及び押圧し、接合を達成する工程である。
【0070】
外部加熱手段を用いて被接合界面の全面を昇温すると共に、押圧手段を用いて被接合界面を押圧することから、大面積の接合界面を効率的に形成することができる。外部加熱手段及び押圧手段は、本発明の効果を損なわない限りにおいて特に限定されず、従来公知の種々の手段を用いることができるが、例えば、オートクレーブでの昇温及び加圧を実施することが好ましい。オートクレーブを用いることで、レーザ照射による部分的な昇温では対応が困難であった樹脂金属積層材の製造(大面積における均質かつ高強度な接合)を実施することができる。一方で、例えば、レーザ照射によって被接合界面を昇温する場合、被接合界面の全面を同時かつ均一に昇温することがでないことから、樹脂金属積層材の製造には用いることができない。
【0071】
被接合界面の温度及び印加圧力は、金属材及び樹脂材の種類、大きさ及び形状等に応じて適宜設定すればよいが、例えば、厚さ0.3mmのアルミニウム合金板の一方の表面に厚さ0.1mmのフッ素樹脂板、他方の表面にポリプロピレンをマトリックスとするCFRP板を積層する場合、150~250℃、0.1~1.0MPaで20分程度保持すればよい。
【0072】
更に、金属板材の両面の全ての領域に接合界面を形成させることが好ましい。金属板材の両面の全ての領域に樹脂板を当接させて圧力を印加することで、金属板材の一方の表面及び他方の表面における被接合界面に均一な圧力を印加することができるだけでなく、一回の接合プロセスによって2枚の樹脂板を金属板に接合することができる。
【0073】
以上、本発明の代表的な実施形態について説明したが、本発明はこれらのみに限定されるものではなく、種々の設計変更が可能であり、それら設計変更は全て本発明の技術的範囲に含まれる。
【実施例0074】
≪実施例1≫
本発明の樹脂金属積層材の製造方法を用いて、アルミニウム合金板(A5052)の一方の表面の全面にフッ素樹脂板(ETFE:テトラフルオロエチレン-エチレン共重合体)、他方の表面の全面にポリプロピレンをマトリックスとするCFRP板を接合し、本発明の樹脂金属積層材を得た。
【0075】
アルミニウム合金板の板厚は0.3mm、板幅は100mm、板の長さは100mmである。また、フッ素樹脂板の板厚は0.1mm、CFRP板の板厚は0.14mm(4層積層)であり、板幅と板の長さはアルミニウム合金板と同一である。金属板であるアルミニウム合金板の板厚は0.05~3.0mmの範囲となっており、アルミニウム合金板の厚さ(T)と各樹脂層の厚さ(T)はT≦T≦20Tを満たしている。
【0076】
被接合界面となるアルミニウム合金板の一方の表面及び他方の表面の全面に対して大気中にてレーザ照射を施し、表面改質領域を形成させた(第一工程)。レーザにはIPG社製のYLPパルスレーザを用い、レーザの照射条件は平均出力:50W(1パルスのエネルギー:1mj)、レーザドット径:59μmとして、アルミニウム合金板の表面に照射した。レーザドットの間隔は、X軸方向は30μmとし、Y軸方向は70μmとした。
【0077】
次に、表面改質領域にフッ素樹脂板とCFRP板を重ね合わせ(第二工程)、オートクレーブを用いて被接合界面を昇温及び加圧して(第三工程)、樹脂金属積層材を得た。オートクレーブには羽生田鉄工所製のDLF-4020を用い、図5に示すオートクレーブ成形条件を適用した。保持温度は200℃、印加圧力は0.5MPa、保持時間は20分以上とした。
【0078】
得られた樹脂金属積層材の外観写真を図6に示す。樹脂板と金属板が剥離等することなく、樹脂金属積層材全体が歪んでおり、当該状態は樹脂/金属接合界面が極めて強固であることを示している。また、フッ素樹脂板とCFRP板はアルミニウム合金板の表面全体に接合され、断面観察によって、各樹脂板とアルミニウム合金板の接合界面に剥離や空隙等の欠陥は認められなかった。
【0079】
次に、図3に示すように切削加工を施し、引張試験機を用いてフッ素樹脂板/アルミニウム合金板の接合強度、及びCFRP板/アルミニウム合金板のせん断引張強度を評価したところ、何れの場合も接合界面での破断は認められなかった。図7に、フッ素樹脂板/アルミニウム合金板の接合界面に対してせん断引張試験を行った場合の試験力とストロークの関係を示す。最大試験力は48Nに達し、フッ素樹脂が伸長して荷重が低下した後、フッ素樹脂にて破断した。なお、せん断引張試験はJIS Z0237に準拠し、試験機には島津製作所製のAGS-X10KNを用いた。試験片幅は25mmとした。
【0080】
≪実施例2≫
アルミニウム合金板(A5052)の一方の表面と他方の表面の全面にCFRP板を接合したこと以外は実施例1と同様にして、本発明の樹脂金属積層材を得た。
【0081】
得られた樹脂金属積層材の外観写真を図8、断面写真を図9にそれぞれ示す。CFRP板はアルミニウム合金板の表面全体に接合され、CFRP板とアルミニウム合金板の接合界面に剥離や空隙等の欠陥は認められない。なお、アルミニウム合金板の両面に同種の樹脂板を接合した場合、樹脂金属積層材の歪は認められない。
【0082】
以上の結果より、本発明の樹脂金属積層材の製造方法を用いることで、リベット締結等の機械的接合を用いることなく、樹脂層と金属層が強固に接合され、接合界面に大きな外部応力が印加される用途においても使用でき、長期の信頼性を有する樹脂金属接合体が得られることが分かる。
【符号の説明】
【0083】
1・・・樹脂金属積層材、
2・・・金属層、
4・・・樹脂層、
6・・・金属酸化物層。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9