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  • 特開-多層体、および、多層容器 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024179026
(43)【公開日】2024-12-26
(54)【発明の名称】多層体、および、多層容器
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/34 20060101AFI20241219BHJP
   B65D 1/00 20060101ALI20241219BHJP
   B65D 65/40 20060101ALI20241219BHJP
   B32B 27/36 20060101ALI20241219BHJP
【FI】
B32B27/34
B65D1/00 111
B65D65/40 D
B32B27/36
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023097513
(22)【出願日】2023-06-14
(71)【出願人】
【識別番号】000004466
【氏名又は名称】三菱瓦斯化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000109
【氏名又は名称】弁理士法人特許事務所サイクス
(72)【発明者】
【氏名】小林 政之
【テーマコード(参考)】
3E033
3E086
4F100
【Fターム(参考)】
3E033BA17
3E033BA18
3E033BA21
3E033BB08
3E033CA16
3E033FA02
3E033FA03
3E086AA23
3E086AD01
3E086AD03
3E086AD04
3E086AD05
3E086AD06
3E086BA15
3E086BA33
3E086BA35
3E086BB05
3E086BB21
3E086BB23
3E086BB35
3E086BB63
3E086BB75
3E086BB85
3E086CA01
3E086CA04
3E086CA05
3E086CA11
3E086CA16
3E086CA22
3E086CA25
3E086CA28
3E086CA31
3E086CA40
4F100AA05A
4F100AA05H
4F100AA06A
4F100AA06H
4F100AK41B
4F100AK42B
4F100AK42C
4F100AK46A
4F100BA02
4F100BA03
4F100BA06
4F100BA10B
4F100BA10C
4F100EH20A
4F100EH20B
4F100EH20C
4F100EJ37
4F100EJ38
4F100GB16
4F100JD02
4F100JD03
4F100YY00A
(57)【要約】
【課題】 ガスバリア性により優れた多層体、および、多層容器の提供。
【解決手段】 キシリレンジアミン系ポリアミド樹脂を主成分とするポリアミド樹脂層と、ポリエステル樹脂を主成分とするポリエステル樹脂層とを含み、前記ポリアミド樹脂層は、アルカリ金属のハロゲン化物およびアルカリ土類金属のハロゲン化物からなる群より選択されるハロゲン化物の少なくとも1種を含み、前記キシリレンジアミン系ポリアミド樹脂が、ジアミン由来の構成単位と、ジカルボン酸由来の構成単位を含み、前記ジアミン由来の構成単位の70モル%以上がキシリレンジアミンに由来し、前記ジカルボン酸由来の構成単位の70モル%以上が炭素数4~20のα,ω-直鎖脂肪族ジカルボン酸に由来する、多層体。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
キシリレンジアミン系ポリアミド樹脂を主成分とするポリアミド樹脂層と、
ポリエステル樹脂を主成分とするポリエステル樹脂層とを含み、
前記ポリアミド樹脂層は、アルカリ金属のハロゲン化物およびアルカリ土類金属のハロゲン化物からなる群より選択されるハロゲン化物の少なくとも1種を含み、
前記キシリレンジアミン系ポリアミド樹脂が、ジアミン由来の構成単位と、ジカルボン酸由来の構成単位を含み、前記ジアミン由来の構成単位の70モル%以上がキシリレンジアミンに由来し、前記ジカルボン酸由来の構成単位の70モル%以上が炭素数4~20のα,ω-直鎖脂肪族ジカルボン酸に由来する、
多層体。
【請求項2】
前記キシリレンジアミン系ポリアミド樹脂100質量部に対して、前記ハロゲン化物を0.1~3質量部の割合で含む、請求項1に記載の多層体。
【請求項3】
前記ハロゲン化物が、塩化物を含む、請求項1または2に記載の多層体。
【請求項4】
前記ハロゲン化物が、ハロゲン化マグネシウムおよび/またはハロゲン化リチウムを含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の多層体。
【請求項5】
前記キシリレンジアミンにおけるメタキシリレンジアミンとパラキシリレンジアミンのモル比率は、メタキシリレンジアミンとパラキシリレンジアミンの合計を100モルとしたときに、メタキシリレンジアミン/パラキシリレンジアミンが10~100/90~0である、請求項1~4のいずれか1項に記載の多層体。
【請求項6】
前記ジカルボン酸由来の構成単位の70モル%以上がアジピン酸、セバシン酸、および、ドデカン二酸のいずれか1種以上に由来する構成単位である、請求項1~5のいずれか1項に記載の多層体。
【請求項7】
前記ポリエステル樹脂が、ポリエチレンテレフタレート樹脂を含む、請求項1~6のいずれか1項に記載の多層体。
【請求項8】
前記キシリレンジアミン系ポリアミド樹脂100質量部に対して、前記ハロゲン化物を0.1~3質量部の割合で含み、
前記ハロゲン化物が、塩化物を含み、
前記ハロゲン化物が、ハロゲン化マグネシウムおよび/またはハロゲン化リチウムを含み、
前記キシリレンジアミンにおけるメタキシリレンジアミンとパラキシリレンジアミンのモル比率は、メタキシリレンジアミンとパラキシリレンジアミンの合計を100モルとしたときに、メタキシリレンジアミン/パラキシリレンジアミンが10~100/90~0であり、
前記ジカルボン酸由来の構成単位の70モル%以上がアジピン酸、セバシン酸、および、ドデカン二酸のいずれか1種以上に由来する構成単位であり、
前記ポリエステル樹脂が、ポリエチレンテレフタレート樹脂を含む、請求項1~7のいずれか1項に記載の多層体。
【請求項9】
延伸されている、請求項1~8のいずれか1項に記載の多層体。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか1項に記載の多層体を含む多層容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多層体および多層容器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、外層と内層を構成する樹脂として、ポリエステル樹脂を用い、前記外層と内層の間に、ポリアミド樹脂から形成されるバリア層を有する多層体や多層容器が検討されている(特許文献1、特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2016-169027号公報
【特許文献2】特開昭60-232952号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、近年、多層容器の需要が拡大しており、ポリエステル樹脂から形成される外層および内層と、ポリアミド樹脂から形成されるバリア層(中間層)を有する、新規な多層体や多層容器が求められる。特に、ガスバリア性のさらなる向上が求められる。
本発明はかかる課題を解決することを目的とするものであって、ガスバリア性により優れた多層体、および、多層容器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題のもと、本発明者が検討を行った結果、キシリレンジアミン系ポリアミド樹脂に、アルカリ金属のハロゲン化物およびアルカリ土類金属のハロゲン化物からなる群より選択されるハロゲン化物の少なくとも1種を配合したポリアミド樹脂層を用いることにより、上記課題を解決しうることを見出した。
具体的には、下記手段により、上記課題は解決された。
<1>キシリレンジアミン系ポリアミド樹脂を主成分とするポリアミド樹脂層と、
ポリエステル樹脂を主成分とするポリエステル樹脂層とを含み、
前記ポリアミド樹脂層は、アルカリ金属のハロゲン化物およびアルカリ土類金属のハロゲン化物からなる群より選択されるハロゲン化物の少なくとも1種を含み、
前記キシリレンジアミン系ポリアミド樹脂が、ジアミン由来の構成単位と、ジカルボン酸由来の構成単位を含み、前記ジアミン由来の構成単位の70モル%以上がキシリレンジアミンに由来し、前記ジカルボン酸由来の構成単位の70モル%以上が炭素数4~20のα,ω-直鎖脂肪族ジカルボン酸に由来する、
多層体。
<2>前記キシリレンジアミン系ポリアミド樹脂100質量部に対して、前記ハロゲン化物を0.1~3質量部の割合で含む、<1>に記載の多層体。
<3>前記ハロゲン化物が、塩化物を含む、<1>または<2>に記載の多層体。
<4>前記ハロゲン化物が、ハロゲン化マグネシウムおよび/またはハロゲン化リチウムを含む、<1>~<3>のいずれか1つに記載の多層体。
<5>前記キシリレンジアミンにおけるメタキシリレンジアミンとパラキシリレンジアミンのモル比率は、メタキシリレンジアミンとパラキシリレンジアミンの合計を100モルとしたときに、メタキシリレンジアミン/パラキシリレンジアミンが10~100/90~0である、<1>~<4>のいずれか1つに記載の多層体。
<6>前記ジカルボン酸由来の構成単位の70モル%以上がアジピン酸、セバシン酸、および、ドデカン二酸のいずれか1種以上に由来する構成単位である、<1>~<5>のいずれか1つに記載の多層体。
<7>前記ポリエステル樹脂が、ポリエチレンテレフタレート樹脂を含む、<1>~<6>のいずれか1つに記載の多層体。
<8>前記キシリレンジアミン系ポリアミド樹脂100質量部に対して、前記ハロゲン化物を0.1~3質量部の割合で含み、
前記ハロゲン化物が、塩化物を含み、
前記ハロゲン化物が、ハロゲン化マグネシウムおよび/またはハロゲン化リチウムを含み、
前記キシリレンジアミンにおけるメタキシリレンジアミンとパラキシリレンジアミンのモル比率は、メタキシリレンジアミンとパラキシリレンジアミンの合計を100モルとしたときに、メタキシリレンジアミン/パラキシリレンジアミンが10~100/90~0であり、
前記ジカルボン酸由来の構成単位の70モル%以上がアジピン酸、セバシン酸、および、ドデカン二酸のいずれか1種以上に由来する構成単位であり、
前記ポリエステル樹脂が、ポリエチレンテレフタレート樹脂を含む、<1>~<7>のいずれか1つに記載の多層体。
<9>延伸されている、<1>~<8>のいずれか1つに記載の多層体。
<10><1>~<9>のいずれか1つに記載の多層体を含む多層容器。
【発明の効果】
【0006】
本発明により、ガスバリア性により優れた多層体、および、多層容器を提供可能になった。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1図1は、本実施形態の多層容器の胴部の断面模式図の一例である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明を実施するための形態(以下、単に「本実施形態」という)について詳細に説明する。なお、以下の本実施形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明は本実施形態のみに限定されない。
なお、本明細書において「~」とはその前後に記載される数値を下限値および上限値として含む意味で使用される。
本明細書において、各種物性値および特性値は、特に述べない限り、23℃におけるものとする。
本明細書で示す規格で説明される測定方法等が年度によって異なる場合、特に述べない限り、2023年1月1日時点における規格に基づくものとする。
図1は、縮尺度などは実際と整合していないこともある。
【0009】
本実施形態の多層体は、キシリレンジアミン系ポリアミド樹脂を主成分とするポリアミド樹脂層(本明細書において、単に、「ポリアミド樹脂層」ということがある)と、ポリエステル樹脂を主成分とするポリエステル樹脂層(本明細書において、単に、「ポリエステル樹脂層」ということがある)とを含み、前記ポリアミド樹脂層は、アルカリ金属のハロゲン化物およびアルカリ土類金属のハロゲン化物からなる群より選択されるハロゲン化物(本明細書において、単に、「ハロゲン化物」ということがある)の少なくとも1種を含み、前記キシリレンジアミン系ポリアミド樹脂が、ジアミン由来の構成単位と、ジカルボン酸由来の構成単位を含み、前記ジアミン由来の構成単位の70モル%以上がキシリレンジアミンに由来し、前記ジカルボン酸由来の構成単位の70モル%以上が炭素数4~20のα,ω-直鎖脂肪族ジカルボン酸に由来することを特徴とする。このような構成とすることにより、ガスバリア性に優れた多層体が得られる。特に、酸素バリア性および/または炭酸ガスバリア性に優れた多層体が得られる。
この理由は、キシリレンジアミン系ポリアミド樹脂のアミド基に、リチウムイオンなどのアルカリ金属イオンやマグネシウムイオンなどのアルカリ土類金属イオンが配位し、疑似的架橋構造を取り、ガスが透過するのを抑制するためと推測される。
また、アルカリ金属イオンやアルカリ土類金属イオンは、極性を有することから、キシリレンジアミン系ポリアミド樹脂中で分散しやすい。加えて、ハロゲン化物を用いることにより、アルカリ金属イオンやアルカリ土類金属イオンを提供しやすくなると推測される。
【0010】
<ポリアミド樹脂層>
本実施形態におけるポリアミド樹脂層は、キシリレンジアミン系ポリアミド樹脂を主成分とし、アルカリ金属のハロゲン化物およびアルカリ土類金属のハロゲン化物からなる群より選択されるハロゲン化物の少なくとも1種を含み、前記キシリレンジアミン系ポリアミド樹脂が、ジアミン由来の構成単位と、ジカルボン酸由来の構成単位を含み、前記ジアミン由来の構成単位の70モル%以上がキシリレンジアミンに由来し、前記ジカルボン酸由来の構成単位の70モル%以上が炭素数4~20のα,ω-直鎖脂肪族ジカルボン酸に由来する。
【0011】
<<キシリレンジアミン系ポリアミド樹脂>>
本実施形態で用いるポリアミド樹脂層は、キシリレンジアミン系ポリアミド樹脂を含む。キシリレンジアミン系ポリアミド樹脂とは、ジアミン由来の構成単位と、ジカルボン酸由来の構成単位を含み、前記ジアミン由来の構成単位の70モル%以上がキシリレンジアミンに由来し、前記ジカルボン酸由来の構成単位の70モル%以上が炭素数4~20のα,ω-直鎖脂肪族ジカルボン酸に由来するポリアミド樹脂をいう。本実施形態においては、キシリレンジアミン系ポリアミド樹脂が本来的に有する強度を維持しつつ、かつ、バリア性に優れた多層体が得られる傾向にある。
キシリレンジアミン系ポリアミド樹脂のジアミン由来の構成単位は、より好ましくは75モル%以上、さらに好ましくは80モル%以上、一層好ましくは90モル%以上、より一層好ましくは95モル%以上、特に一層好ましくは99モル%以上がキシリレンジアミン(好ましくはパラキシリレンジアミンおよび/またはメタキシリレンジアミン、より好ましくはメタキシリレンジアミン)に由来する。また、キシリレンジアミン系ポリアミド樹脂のジカルボン酸由来の構成単位は、好ましくは75モル%以上、より好ましくは80モル%以上、一層好ましくは90モル%以上、より一層好ましくは95モル%以上、特に一層好ましくは99モル%以上が、炭素数4~20のα,ω-直鎖脂肪族ジカルボン酸に由来する。
【0012】
本実施形態においては、キシリレンジアミンにおけるメタキシリレンジアミンとパラキシリレンジアミンのモル比率は、メタキシリレンジアミンとパラキシリレンジアミンの合計を100モルとしたときに、メタキシリレンジアミン/パラキシリレンジアミンが、10~100/90~0であることが好ましく、20~100/80~0であることがより好ましく、40~100/60~0であることがさらに好ましく、80~100/20~0であることが一層好ましく、90~100/10~0であることがより一層好ましい。このような構成とすることにより、より優れた加工性を得ることができる傾向にある。
【0013】
キシリレンジアミン系ポリアミド樹脂の原料ジアミン成分として用いることができるメタキシリレンジアミンおよびパラキシリレンジアミン以外のジアミンとしては、テトラメチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、2-メチルペンタンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ヘプタメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン、デカメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミン、2,2,4-トリメチル-ヘキサメチレンジアミン、2,4,4-トリメチルヘキサメチレンジアミン等の脂肪族ジアミン、1,3-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1,4-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1,3-ジアミノシクロヘキサン、1,4-ジアミノシクロヘキサン、ビス(4-アミノシクロヘキシル)メタン、2,2-ビス(4-アミノシクロヘキシル)プロパン、ビス(アミノメチル)デカリン、ビス(アミノメチル)トリシクロデカン等の脂環式ジアミン、ビス(4-アミノフェニル)エーテル、パラフェニレンジアミン、ビス(アミノメチル)ナフタレン等の芳香環を有するジアミン等を例示することができ、1種または2種以上を混合して使用できる。
【0014】
キシリレンジアミン系ポリアミド樹脂は、また、ジカルボン酸由来の構成単位の70モル%以上が炭素数4~20のα,ω-直鎖脂肪族ジカルボン酸に由来することが好ましい。前記炭素数4~20のα,ω-直鎖脂肪族ジカルボン酸の炭素数は、6以上であることが好ましく、また、18以下であることが好ましく、16以下であることがより好ましく、14以下であることがさらに好ましく、13以下であることが一層好ましく、12以下であることがより一層好ましい。
キシリレンジアミン系ポリアミド樹脂の原料ジカルボン酸成分として用いるのに好ましい炭素数4~20のα,ω-直鎖脂肪族ジカルボン酸としては、例えば、コハク酸、グルタル酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、アジピン酸、セバシン酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸等の脂肪族ジカルボン酸が例示でき、1種または2種以上を混合して使用できるが、これらの中でも、アジピン酸、セバシン酸、および、ドデカン二酸のいずれか1種以上がより好ましく、アジピン酸がさらに好ましい。
【0015】
本実施形態におけるキシリレンジアミン系ポリアミド樹脂の好ましい一実施形態としてジカルボン酸由来の構成単位の50モル%以上(好ましくは70モル%以上、より好ましくは90モル%以上)がアジピン酸、セバシン酸、および、ドデカン二酸のいずれか1種以上(好ましくはアジピン酸)に由来するものが例示される。
【0016】
上記炭素数4~20のα,ω-直鎖脂肪族ジカルボン酸以外のジカルボン酸成分としては、イソフタル酸、テレフタル酸、オルソフタル酸等のフタル酸化合物、1,2-ナフタレンジカルボン酸、1,3-ナフタレンジカルボン酸、1,4-ナフタレンジカルボン酸、1,5-ナフタレンジカルボン酸、1,6-ナフタレンジカルボン酸、1,7-ナフタレンジカルボン酸、1,8-ナフタレンジカルボン酸、2,3-ナフタレンジカルボン酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、2,7-ナフタレンジカルボン酸といったナフタレンジカルボン酸の異性体等を例示することができ、1種または2種以上を混合して使用できる。
【0017】
なお、キシリレンジアミン系ポリアミド樹脂は、ジアミン由来の構成単位とジカルボン酸由来の構成単位を主成分として構成されるが、これら以外の構成単位を完全に排除するものではなく、ε-カプロラクタムやラウロラクタム等のラクタム類、アミノカプロン酸、アミノウンデカン酸等の脂肪族アミノカルボン酸類由来の構成単位を含んでいてもよいことは言うまでもない。ここで主成分とは、キシリレンジアミン系ポリアミド樹脂を構成する構成単位のうち、ジアミン由来の構成単位とジカルボン酸由来の構成単位の合計数が全構成単位のうち最も多いことをいう。本実施形態では、キシリレンジアミン系ポリアミド樹脂における、ジアミン由来の構成単位とジカルボン酸由来の構成単位の合計は、全構成単位の90質量%以上を占めることが好ましく、95質量%以上を占めることがより好ましく、97質量%以上を占めることがさらに好ましく、99質量%以上を占めることが一層好ましい。
【0018】
キシリレンジアミン系ポリアミド樹脂は、バイオマス原料を用いて製造されたポリアミド樹脂(バイオマスポリアミド樹脂)を用いることも好ましい。バイオマスポリアミド樹脂を用いることにより、環境負荷の低減を図ることができる。
キシリレンジアミン系ポリアミド樹脂において、バイオマス原料としては、バイオアジピン酸を用いることができる。また、マスバランス認証(ISCC PLUS)されたアジピン酸を用いることもできる。マスバランス認証とは、工場や生産設備ごとに再生可能な原料やバイオ原料がどの程度使用され、どの程度製品が生産や出荷されたかを定量化し、品質と合わせて保証されたものであることを意味する。
【0019】
キシリレンジアミン系ポリアミド樹脂の融点は、150~350℃であることが好ましく、180~330℃であることがより好ましく、200~330℃であることがさらに好ましく、200~320℃であることが一層好ましい。前記ポリアミド樹脂層がキシリレンジアミン系ポリアミド樹脂を2種以上含む場合、最も含有量が多いキシリレンジアミン系ポリアミド樹脂の融点とする。
【0020】
本明細書において、融点(Tm)は、示差走査熱量測定(DSC)に従い、ISO11357に準拠して、測定した値とする。示差走査熱量計を用い、樹脂を示差走査熱量計の測定パンに仕込み、窒素雰囲気下にて昇温速度10℃/分で融点を超える温度まで昇温し、急冷する前処理を行った後に測定を行う。測定条件は、昇温速度10℃/分で、280℃で5分保持した後、降温速度-5℃/分で100℃まで測定を行い、融点(Tm)を求める。
示差走査熱量計としては、島津製作所社(SHIMADZU CORPORATION)製「DSC-60」を用いる。
【0021】
キシリレンジアミン系ポリアミド樹脂は、数平均分子量(Mn)の下限が、6,000以上であることが好ましく、8,000以上であることがより好ましく、10,000以上であることがさらに好ましく、また、100,000以下が好ましく、50,000以下がより好ましい。前記ポリアミド樹脂層がキシリレンジアミン系ポリアミド樹脂を2種以上含む場合、混合物の数平均分子量とする。
【0022】
キシリレンジアミン系ポリアミド樹脂の数平均分子量(Mn)の測定は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)測定による標準ポリメチルメタクリレート(PMMA)換算値より求める。カラムとしては、充填剤として、スチレン系ポリマーを充填したものを2本用い、溶媒にはトリフルオロ酢酸ナトリウム濃度2mmol/Lのヘキサフルオロイソプロパノール(HFIP)を用い、樹脂濃度0.02質量%、カラム温度は40℃、流速0.3mL/分、屈折率検出器(RI)にて測定する。また、検量線は6水準のPMMAをHFIPに溶解させて測定する。
【0023】
前記ポリアミド樹脂層は、キシリレンジアミン系ポリアミド樹脂を主成分として含む。主成分とは、ポリアミド樹脂層に含まれる成分のうち、最も含有量が多い成分であることを意味する。本実施形態においては、ポリアミド樹脂層中のキシリレンジアミン系ポリアミド樹脂の含有量は、樹脂組成物中、50質量%超であることが好ましく、70質量%以上であることがより好ましく、90質量%以上であることがさらに好ましく、96質量%以上であることが一層好ましく、98質量%以上であることがより一層好ましい。また、前記ポリアミド樹脂層におけるキシリレンジアミン系ポリアミド樹脂の含有量の上限は、樹脂組成物中、アルカリ金属のハロゲン化物およびアルカリ土類金属のハロゲン化物からなる群より選択されるハロゲン化物以外の成分がすべてキシリレンジアミン系ポリアミド樹脂となる量である。
前記ポリアミド樹脂層は、キシリレンジアミン系ポリアミド樹脂を1種のみ含んでいてもよいし、2種以上含んでいてもよい。2種以上含む場合、合計量が上記範囲となることが好ましい。
【0024】
前記ポリアミド樹脂層は、キシリレンジアミン系ポリアミド樹脂以外の他のポリアミド樹脂を含んでいてもよいし、含んでいなくてもよい。
前記他のポリアミド樹脂としては、脂肪族ポリアミド樹脂であっても、半芳香族ポリアミド樹脂であってもよい。
脂肪族ポリアミド樹脂としては、ポリアミド4、ポリアミド46、ポリアミド410、ポリアミド6、ポリアミド66、ポリアミド666、ポリアミド610、ポリアミド11、ポリアミド12等が例示される。
半芳香族ポリアミド樹脂としては、ポリアミド4T、ポリアミド6I、ポリアミド6T、ポリアミド6I/6T、ポリアミド9Tなどが例示される。
その他、前記ポリアミド樹脂層が含んでいてもよい他のポリアミド樹脂として、特開2023-027478号公報の段落0052の記載を参酌でき、この内容は本明細書に組み込まれる。
【0025】
前記ポリアミド樹脂層が、他のポリアミド樹脂を含む場合、その含有量は、キシリレンジアミン系ポリアミド樹脂100質量部に対し、1~10質量部であることが好ましい。
また、前記ポリアミド樹脂層は、他のポリアミド樹脂を実質的に含まない構成とすることができる。他のポリアミド樹脂を実質的に含まないとは、樹脂組成物に含まれる他のポリアミド樹脂の含有量が10質量%未満であることをいい、5質量%未満であることが好ましく、3質量%未満であることがより好ましく、1質量%未満であることがさらに好ましい。
【0026】
<<ハロゲン化物>>
前記ポリアミド樹脂層は、アルカリ金属のハロゲン化物およびアルカリ土類金属のハロゲン化物からなる群より選択されるハロゲン化物の少なくとも1種を含む。このようなハロゲン化物を含むことにより、バリア性に優れた多層体が得られる。
アルカリ金属は、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム、フランシウムが例示され、リチウム、ナトリウム、カリウムが好ましく、リチウム、ナトリウムがより好ましく、リチウムがさらに好ましい。
アルカリ土類金属は、ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、ラジウムが例示され、ベリリウム、マグネシウム、カルシウムが好ましく、マグネシウム、カルシウムがより好ましく、マグネシウムがさらに好ましい。
ハロゲン化物は、フッ化物、塩化物、臭化物、ヨウ化物、が例示され、フッ化物、塩化物、ヨウ化物が好ましく、フッ化物、塩化物がより好ましく、塩化物がさらに好ましい。
【0027】
本実施形態で用いるハロゲン化物は、ハロゲン化マグネシウムおよび/またはハロゲン化リチウムを含むことが好ましく、塩化リチウムおよび/または塩化マグネシウムを含むことがより好ましく、塩化リチウムがさらに好ましい。
【0028】
本実施形態におけるアルカリ金属のハロゲン化物およびアルカリ土類金属のハロゲン化物からなる群より選択されるハロゲン化物の合計含有量は、キシリレンジアミン系ポリアミド樹脂100質量部に対し、0.1質量部以上であることが好ましく、0.2質量部以上であることがより好ましい。前記下限値以上とすることにより、ガスバリア性がより向上する傾向にある。また、前記ハロゲン化物の含有量の上限値は、キシリレンジアミン系ポリアミド樹脂100質量部に対し、3質量部以下であることが好ましく、2.5質量部以下であることがより好ましく、1.8質量部以下であることが好ましく、0.9質量部以下であることがさらに好ましい。前記上限値以下とすることにより、多層体ないし多層容器の成形性がより向上する傾向にある。
前記ポリアミド樹脂層は、前記ハロゲン化物を1種のみ含んでいてもよいし、2種以上含んでいてもよい。2種以上含む場合、合計量が上記範囲となることが好ましい。
【0029】
<<他の成分>>
本実施形態におけるポリアミド樹脂層は、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、キシリレンジアミン系ポリアミド樹脂およびハロゲン化物以外の他の成分を含んでいてもよい。
他の成分としては、キシリレンジアミン系ポリアミド樹脂以外の熱可塑性樹脂、ガラス繊維、炭素繊維などの無機充填剤;ガラスフレーク、タルク、カオリン、マイカ、モンモリロナイト、有機化クレイなどの板状無機充填剤;各種エラストマー類などの耐衝撃性改質材;結晶核剤;脂肪酸アミド系、脂肪酸アマイド系化合物等の滑剤;銅化合物、有機ハロゲン系化合物、ヒンダードフェノール系、ヒンダードアミン系、ヒドラジン系、硫黄系化合物、リン系化合物等の酸化防止剤;着色防止剤;ベンゾトリアゾール系等の紫外線吸収剤;離型剤、可塑剤、着色剤、難燃剤等の添加剤;酸化反応促進剤、リサイクル助剤、ベンゾキノン類、アントラキノン類、ナフトキノン類を含む化合物等の添加剤を含んでいてもよい。これらの他の成分の合計含有量は、10質量%以下であることが好ましく、より好ましくは5質量%以下であり、さらに好ましくは3質量%以下であり、1質量%以下であってもよい。
酸化反応促進剤は、国際公開第2019/058986号の段落0034~0036の記載を参酌でき、この内容は本明細書に組み込まれる。
【0030】
キシリレンジアミン系ポリアミド樹脂以外のポリアミド樹脂としては、脂肪族ポリアミド樹脂であっても、半芳香族ポリアミド樹脂であってもよく、脂肪族ポリアミド樹脂が好ましい。脂肪族ポリアミド樹脂は、例えば、ポリアミド6、ポリアミド66、ポリアミド10、ポリアミド11、ポリアミド12、ポリアミド46、ポリアミド410、ポリアミド610、ポリアミド612、ポリアミド666等を挙げられ、ポリアミド6、ポリアミド66、ポリアミド666が好ましく、さらにポリアミド6が好ましい。半芳香族ポリアミド樹脂としては、6T、6T/6I、9T、9N(ノナンジアミンとナフタレンジカルボン酸の重縮合物)等が例示される。これらのキシリレンジアミン系ポリアミド樹脂以外のポリアミド樹脂は、1種のみ用いても、2種以上用いてもよい。
【0031】
本実施形態においては、ポリアミド樹脂層が高級脂肪酸のアルカリ金属塩を含んでいてもよいし、含んでいなくてもよい。
本実施形態においては、ポリアミド樹脂層に含まれる高級脂肪酸のアルカリ金属塩の含有量は、アルカリ金属原子換算で、50質量ppm未満であることが好ましく、40質量ppm未満であることがより好ましく、30質量ppm未満であることがさらに好ましい。ポリアミド樹脂層中の高級脂肪酸のアルカリ金属塩を減らすことにより、得られる多層容器の外観が向上する等の利点がある。
高級脂肪酸のアルカリ金属塩としては、炭素数が12~30の脂肪酸の塩であることが好ましい。塩を形成する脂肪酸としては、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキジン酸、ベヘン酸などの飽和脂肪酸が好適なものとして例示される。アルカリ金属は、カリウムおよびナトリウムが好ましい。
【0032】
<ポリエステル樹脂層>
本実施形態の多層体は、ポリエステル樹脂層を有する。
本実施形態におけるポリエステル樹脂層は、ポリエステル樹脂を主成分とする。ここで主成分とは、ポリエステル樹脂がポリエステル樹脂層に含まれる成分の内、含有量が最も多い成分であることをいい、80質量%以上がポリエステル樹脂であることが好ましく、90質量%以上がポリエステル樹脂であることがより好ましく、95質量%以上がポリエステル樹脂であることがさらに好ましく、98質量%以上がポリエステル樹脂であることが一層好ましい。
ポリエステル樹脂は、1種のみ含んでいてもよいし、2種以上含んでいてもよい。2種以上含む場合、合計量が上記範囲となることが好ましい。
【0033】
本実施形態で用いるポリエステル樹脂としては、ポリエチレンテレフタレート樹脂およびポリブチレンテレフタレート樹脂が例示され、ポリエチレンテレフタレート樹脂がより好ましい。
ポリエチレンテレフタレート樹脂とは、ジオールに由来する構成単位とジカルボン酸に由来する構成単位を含み、ジオールに由来する構成単位の70モル%以上がエチレングリコールに由来し、ジカルボン酸に由来する構成単位の60モル%以上がテレフタル酸およびそのエステルから選択される少なくとも1種(好ましくはテレフタル酸)に由来するポリエステル樹脂である。
前記ジオールに由来する構成単位は、好ましくは85モル%以上、より好ましくは90モル%以上、さらに好ましくは95モル%以上、一層好ましくは99モル%以上がエチレングリコールに由来することが好ましい。
また、前記ジカルボン酸に由来する構成単位は、好ましくは70モル%以上、より好ましくは80モル%以上、さらに好ましくは90モル%以上がテレフタル酸およびそのエステルから選択される少なくとも1種に由来することが好ましい。前記の上限は100モル%であってもよく、99モル%以下が好ましい。
【0034】
さらに、本実施形態においては、前記ジカルボン酸に由来する構成単位の60~99モル%がテレフタル酸およびそのエステルから選択される少なくとも1種(好ましくはテレフタル酸)に由来し、40~1モル%がイソフタル酸およびそのエステルから選択される少なくとも1種(好ましくはイソフタル酸)に由来していてもよい。イソフタル酸およびそのエステルから選択される少なくとも1種に由来する構成単位を含むことにより、ポリエステル樹脂の結晶化がゆっくり進行し、固化がゆっくり進行する。そのため、ポリアミド樹脂層に含まれるポリアミド樹脂との相互作用がより強くなり、耐層間剥離性が向上する傾向にある。
また、本実施形態においては、前記ジカルボン酸に由来する構成単位におけるイソフタル酸およびそのエステルから選択される少なくとも1種に由来する構成単位の割合は、20モル%以下であることが好ましく、15モル%以下であることがより好ましく、10モル%以下であることがさらに好ましく、5モル%以下であることが一層好ましい。
【0035】
本実施形態で用いるポリエステル樹脂は、さらに、ジオールに由来する構成単位が、1,4-シクロヘキサンジメタノールに由来する構成単位等の他の構成単位を含んでいてもよい。しかしながら、本実施形態においては、ジオールに由来する構成単位の好ましくは85モル%以上、より好ましくは90モル%以上、さらに好ましくは95モル%以上、一層好ましくは99モル%以上が、エチレングリコールであることが好ましい。
また、本実施形態で用いるポリエステル樹脂は、さらに、ジカルボン酸に由来する構成単位がナフタレンジカルボン酸に由来する構成単位等の他の構成単位を含んでいてもよい。しかしながら、本実施形態においては、ジカルボン酸に由来する構成単位の好ましくは85モル%以上、より好ましくは90モル%以上、さらに好ましくは95モル%以上、一層好ましくは99モル%以上が、テレフタル酸およびイソフタル酸ならびにこれらのエステル(好ましくはテレフタル酸およびイソフタル酸)であることが好ましい。
【0036】
本実施形態におけるポリエステル樹脂は、末端基を除く全構成単位の、好ましくは70質量%以上、より好ましくは80質量%以上、さらに好ましくは90質量%以上、一層好ましくは95質量%以上、より一層好ましくは98質量%以上、さらに一層好ましくは99質量%以上がジオールに由来する構成単位とジカルボン酸由来によって構成される。
【0037】
ポリエステル樹脂層に含まれるポリエステル樹脂は、明確な融点を有する結晶性ポリエステル樹脂であってもよいし、明確な融点を有さない非晶性ポリエステル樹脂であってもよいが、融点を有する結晶性ポリエステル樹脂であることが好ましい。
本実施形態におけるポリエステル樹脂におけるポリエステル樹脂の融点は、150℃以上であることが好ましく、200℃以上であることがより好ましく、220℃以上であることがさらに好ましく、また、300℃で以下あることが好ましく、290℃以下であることがより好ましく、280℃以下であることがさらに好ましい。
本実施形態におけるポリエステル樹脂層が2種以上のポリエステル樹脂を含む場合、ポリエステル樹脂の融点は、各ポリエステル樹脂の融点に質量分率をかけた値とする。
【0038】
ポリエステル樹脂の固有粘度は、0.30dL/g以上であることが好ましく、0.40dL/g以上であることがより好ましく、0.60dL/g以上であることがさらに好ましい。また、前記固有粘度は、2.00dL/g以下であることが好ましく、1.50dL/g以下であることがより好ましく、1.00dL/g以下であることがさらに好ましく、0.90dL/g以下であることが一層好ましい。
本実施形態におけるポリエステル樹脂層が2種以上のポリエステル樹脂を含む場合、固有粘度は混合物のポリエステル樹脂の固有粘度とする。
【0039】
固有粘度は以下の方法に従って測定される。
フェノール/1,1,2,2-テトラクロロエタン(質量比1/1)の混合溶媒中に、ポリエステル樹脂(ペレット)を、濃度が1.00g/dLとなるように110℃で1時間撹拌して溶解させる。その後、30℃まで冷却する。全自動溶液粘度計にて、30℃で試料溶液の落下秒数、溶媒のみの落下秒数をそれぞれ測定し、下記式(1)により固有粘度を算出する。
固有粘度=((1+4Kηsp0.5-1)/(2KC) …(1)
ここで、ηsp=η/η-1であり、ηは試料溶液の落下秒数、ηは溶媒のみの落下秒数、Cは試料溶液濃度(g/dL)、Kはハギンズの定数である。Kは0.33を採用する。
【0040】
ポリエステル樹脂としては、上記の他、特開2016-169027号公報の段落0064~0080に記載のポリエステル樹脂、特開2006-111718号公報の段落0010~0021に記載のポリエステル樹脂、特開2017-105873号公報に記載のポリエステル樹脂、国際公開第2013/168804号に記載のポリエステル樹脂を参酌でき、これらの内容は本明細書に組み込まれる。
【0041】
本実施形態のポリエステル樹脂層には、本実施形態の趣旨を逸脱しない範囲で、他の成分を含んでいてもよい。具体的には、酸化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、可塑剤、増量剤、艶消し剤、乾燥調節剤、帯電防止剤、沈降防止剤、界面活性剤、流れ改良剤、乾燥油、ワックス類、着色剤、補強剤、表面平滑剤、レベリング剤、硬化反応促進剤、増粘剤などの各種添加剤を添加することもできる。その他の成分としては、特開2006-111718号公報の段落0026の記載を参酌でき、これらの内容は本明細書に組み込まれる。
【0042】
<多層体>
次に、本実施形態の多層体について説明する。本実施形態の多層体は、ポリアミド樹脂層とポリエステル樹脂層を有する。
多層体を構成する層の数は、少なくとも3層からなることが好ましい。本実施形態においては、少なくとも2層のポリエステル樹脂層と、少なくとも、1層のポリアミド樹脂層から形成された層を含む形態が例示される。
本実施形態の多層体において、ポリアミド樹脂層から形成された層は、バリア層として機能することが好ましい。
多層体を構成する層の数は、より具体的には、3~10層がより好ましく、3~5層がさらに好ましい。
また、本実施形態の多層体は、酸素吸収層、接着剤層、ポリアミド樹脂層以外のガスバリア層、保護層、意匠層等を含んでいてもよい。これらの詳細は、特開2021-080025号公報の段落0012~0046の記載、特開2017-114532号公報の記載、および、特開2016-169291号公報の段落0120~0122の記載を参酌でき、これらの内容は本明細書に組み込まれる。
【0043】
<延伸>
本実施形態の多層体は、延伸されていることが好ましい。延伸としては、フィルム状の多層体の一軸延伸または二軸延伸であってもよいし、ボトルなどの多層容器を成形する際に行う二軸延伸ブロー成形などであってもよく、二軸延伸ブロー成形が好ましい。
【0044】
延伸後の多層体のポリエステル樹脂の厚み、ポリアミド樹脂層の厚みは、それぞれ、後述する多層容器におけるポリエステル樹脂の厚み、ポリアミド樹脂層の厚みと同じであり、好ましい範囲も同様である。
本実施形態の多層体においてポリアミド樹脂層の質量は、多層体の総質量に対して1質量%以上とすることが好ましく、より好ましくは2質量%以上であり、3質量%以上であってもよく、また、20質量%以下とすることが好ましく、より好ましくは15質量%以下、特に好ましくは10質量%以下である。前記下限値以上とすることにより、多層体のバリア性が向上する傾向にある。また、上記上限値以下とすることにより、多層体の透明性がより向上する傾向にある。一方、本実施形態の多層体において、ポリエステル樹脂層の質量は、多層体の総質量に対して、80質量%以上であることが好ましく、85質量%以上であることがより好ましく、90質量%以上であることがさらに好ましい。また、本実施形態の多層体において、ポリエステル樹脂層の質量は、多層体の総質量に対して、99質量%以下であることが好ましく、98質量%以下であることがより好ましく、97質量%以下であってもよい。
【0045】
<多層体の製造方法>
本実施形態の多層体の製造方法は特に定めるものではなく、公知の多層体の製造方法を採用できる。
多層体の製造に際し、ポリエステル樹脂層を構成するポリエステル樹脂組成物およびポリアミド樹脂層を構成するポリアミド樹脂組成物(以下、これらをまとめて「樹脂組成物」という)を準備することが好ましい。ポリアミド樹脂組成物は、少なくとも、キシリレンジアミン系ポリアミド樹脂を用いるが、他のポリアミド樹脂を含む場合、ブレンド方法に特に制限は無く、ボトルのプリフォーム作製時にドライブレンドして供給してもよく、プリフォーム作製に先立ち単軸押出機や、二軸押出機などによってメルトブレンドしてもよく、一部の樹脂をメルトブレンドによってマスターバッチを作製して使用してもよい。
また、ポリアミド樹脂層に、酸化反応促進剤等の樹脂添加剤を配合する場合、キシリレンジアミン系ポリアミド樹脂と共にドライブレンドしてもよいし、ポリアミド樹脂等によってマスターバッチ化してから、配合してもよいし、メルトブレンドしてもよい。
ポリエステル樹脂組成物が2種以上のポリエステル樹脂を含む場合や、樹脂添加剤等を含む場合も同様である。
【0046】
多層体の製造方法は、多層体を含む成形品の構造等を考慮して適切な製造方法が選択される。
例えば、フィルムやシートの成形については、Tダイ、サーキュラーダイ等を通して溶融させた樹脂組成物を押出機から押し出して製造することができる。得られたフィルムを延伸することにより延伸フィルムに加工することもできる。
また、ボトル形状の包装容器については、射出成形機から金型中に溶融した樹脂組成物を射出してプリフォームを製造後、ブロー延伸することにより得ることができる(インジェクションブロー成形、インジェクションストレッチブロー成形)。または、押出成形機から金型中に溶融した樹脂組成物を押し出すことで得られるパリソンを金型内でブローすることにより得ることができる(ダイレクトブロー成形)。
トレイやカップ等の容器は射出成形機から金型中に溶融した樹脂組成物を射出して製造する方法や、シートを真空成形や圧空成形等の成形法によって成形して得ることができる。
【0047】
本実施形態の多層容器は、プリフォームを二軸延伸ブロー成形することによって製造することが好ましい。本実施形態の多層容器は、コールドパリソン成形であっても、ホットパリソン成形であってもよい。
【0048】
<多層容器>
本実施形態では、本実施形態の多層体を含む多層容器が例示される。
本実施形態の多層容器は、ポリエステル樹脂層とポリアミド樹脂層を有する。通常は、ポリエステル樹脂層が外側である。さらに、本実施形態の多層容器は、ポリエステル樹脂層/ポリアミド樹脂層/ポリエステル樹脂層の3層構造を有することが好ましい。具体的には、図1に例示されるように、多層容器の胴部の断面が、外側から順にポリエステル樹脂層1、ポリアミド樹脂層2、ポリエステル樹脂層3となっていることが好ましい。より好ましくは、ポリエステル樹脂層1とポリアミド樹脂層2とが胴部の断面に垂直な面方向で、直接にまたは接着剤層を介して接しており、ポリアミド樹脂層2とポリエステル樹脂層3も胴部の断面に垂直な面方向で、直接にまたは接着剤層を介して接している態様である。尚、図1における厚さは、実際の厚さに必ずしも比例するものではない。
本実施形態の多層容器は、その底部など胴部以外の部分も、前記ポリエステル樹脂層/ポリアミド樹脂層/ポリエステル樹脂層の3層構造を有することが好ましいが、必ずしもこの限りではない。また、このとき、2つのポリエステル樹脂層は同じ組成からなるポリエステル樹脂層であってもよいし、異なる組成からなるポリエステル樹脂層であってもよい。
さらに本実施形態の多層容器は、酸素吸収層、接着剤層、ポリアミド樹脂層以外のガスバリア層、保護層、意匠層等を含んでいてもよい。これらの詳細は、特開2021-080025号公報の段落0012~0046の記載、特開2017-114532号公報の記載、および、特開2016-169291号公報の段落0120~0122の記載を参酌でき、これらの内容は本明細書に組み込まれる。
【0049】
多層容器の形状は特に限定されず、例えば、ボトル、カップ、チューブ、トレイ、タッパウェア等の成形容器であってもよく、また、パウチ、スタンディングパウチ、ジッパー式保存袋等の袋状容器であってもよい。本実施形態では、ボトルが好ましい。
また、ボトルの全ての部分に本実施形態の多層体、特に、ポリアミド樹脂層が含まれている必要はない。例えば、ボトルの胴部にポリアミド樹脂層が含まれており、開口部(口栓部)付近にはポリアミド樹脂層が含まれていない態様などが例示される。但し、ポリアミド樹脂層がボトルの開口部付近まで存在している方がバリア性能はさらに高くなるため好ましい。
【0050】
本実施形態の多層容器の容量は、内容物の保存性から0.1~2.0Lであることが好ましく、0.2~1.5Lであることが好ましく、0.3~1.0Lであることがさらに好ましい。
本実施形態の多層容器は、胴部(ポリエステル樹脂層、ポリアミド樹脂層等の合計)の厚みが、好ましくは0.02mm以上、より好ましくは0.15mm以上、さらに好ましくは0.20mm以上であり、また、好ましくは5.0mm以下、より好ましくは3.0mm以下、さらに好ましくは2.5mm以下である。
本実施形態の多層容器は、内層(ポリエステル樹脂層)の厚みが、好ましく0.01mm以上、より好ましくは0.03mm以上、さらに好ましくは0.05mm以上であり、また、好ましくは2.0mm以下、より好ましくは1.5mm以下、さらに好ましくは1.0mm以下である。
また、外層(ポリエステル樹脂層)の厚みは、好ましく0.01mm以上、より好ましくは0.03mm以上、さらに好ましくは0.05mm以上であり、また、好ましくは2.0mm以下、より好ましくは1.5mm以下、さらに好ましくは1.0mm以下である。
また、ポリアミド樹脂層の厚みは、好ましく0.005mm以上、より好ましくは0.01mm以上、さらに好ましくは0.02mm以上であり、また、好ましくは0.2mm以下、より好ましくは0.15mm以下、さらに好ましくは0.1mm以下である。ポリアミド樹脂層を二層以上有している場合、各ポリアミド樹脂層の厚みの合計が上記の厚みを有していることが好ましい。
また、ポリアミド樹脂層を2層以上有しており、ポリアミド樹脂層とポリアミド樹脂層の間に中間層を有している場合、前記中間層の厚みは、好ましく0.01mm以上、より好ましくは0.03mm以上、さらに好ましくは0.05mm以上であり、また、好ましくは2.0mm以下、より好ましくは1.5mm以下、さらに好ましくは1.0mm以下である。
【0051】
本実施形態の多層容器は、酸素バリア性に優れている。具体的には、本実施形態の多層容器の酸素バリア性は0.012cc/(bottle・day・0.21atm)未満であることが好ましく、0.011cc/(bottle・day・0.21atm)以下であることがより好ましく、0.011cc/(bottle・day・0.21atm)未満であることがさらに好ましい。下限値は、0cc/(bottle・day・0.21atm)が理想であるが、0.001cc/(bottle・day・0.21atm)以上であっても十分に要求性能を満たす。
酸素バリア性は後述する実施例の記載に従って測定される。
【0052】
本実施形態の多層容器は、炭酸ガスバリア性に優れている。具体的には、本実施形態の多層容器の炭酸ガスバリア性は1.7cc/(bottle・day)未満であることが好ましく、1.6cc/(bottle・day)以下であることがより好ましく、1.5cc/(bottle・day)以下であることがより好ましく、1.5cc/(bottle・day)未満であることがより好ましい。下限値は、0cc/(bottle・day)が理想であるが、1.00cc/(bottle・day)以上であっても十分に要求性能を満たす。
炭酸ガスバリア性は後述する実施例の記載に従って測定される。
【0053】
本実施形態の多層容器(特に、ボトル)においてポリアミド樹脂層の質量は、多層容器の総質量に対して1質量%以上とすることが好ましく、より好ましくは2質量%以上であり、3質量%以上であってもよく、また、20質量%以下とすることが好ましく、より好ましくは15質量%以下、特に好ましくは10質量%以下である。前記下限値以上とすることにより、多層容器のバリア性が向上する傾向にある。また、上記上限値以下とすることにより、多層容器の透明性がより向上する傾向にある。一方、本実施形態の多層容器において、ポリエステル樹脂層の質量は、多層容器の総質量に対して、80質量%以上であることが好ましく、85質量%以上であることがより好ましく、90質量%以上であることがさらに好ましい。また、本実施形態の多層容器において、ポリエステル樹脂層の質量は、多層容器の総質量に対して、99質量%以下であることが好ましく、98質量%以下であることがより好ましく、97質量%以下であってもよい。
【0054】
本実施形態の多層容器に保存される対象は、特に制限されるものではなく、食品、化粧品、医薬品、トイレタリー、機械・電気・電子部品、オイル、樹脂類などが挙げられるが、特に食品を保存するための容器として好適に使用できる。
例えば、水産加工品、畜産加工品、飯類、液体食品が挙げられる。特に、酸素の影響を受けやすい食品の保存に適している。これらの詳細は、特開2011-37199号公報の段落0032~0035の記載を参酌でき、これらの内容は本明細書に組み込まれる。
充填される食品は、特に制限されるものではないが、具体例を示すならば、例えば、野菜汁、果汁、お茶類、コーヒー・コーヒー飲料類、乳・乳飲料類、ミネラルウォーター、イオン性飲料、酒類、乳酸菌飲料、豆乳等の飲料;豆腐類、卵豆腐類、ゼリー類、プリン、水羊羹、ムース、ヨーグルト類、杏仁豆腐などのゲル状食品;ソース、醤油、ケチャップ、麺つゆ、たれ、食酢、味醂、ドレッシング、ジャム、マヨネーズ、味噌、漬物の素、すり下ろし香辛料等の調味料;サラミ、ハム、ソーセージ、焼鳥、ミートボール、ハンバーグ、焼豚、ビーフジャーキー等の食肉加工品;蒲鉾、貝水煮、煮魚、竹輪等の水産加工品;粥、炊飯米、五目飯、赤飯等の米加工品;ミートソース、マーボーソース、パスタソース、カレー、シチュー、ハヤシソース等のソース類;チーズ、バター、クリーム、コンデンスミルク等の乳加工品;ゆで卵、温泉卵等の卵加工品;煮野菜・煮豆;揚げ物、蒸し物、炒め物、煮物、焼き物等の惣菜類;漬物;うどん、そば、スパゲッティ等の麺類・パスタ類;果物シラップ漬け等が挙げられる。
保存対象によっては、多層容器を、紫外線や電子線、γ線、X線等を用いて殺菌あるいは滅菌したりしてもよい。
【実施例0055】
以下に実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り、適宜、変更することができる。従って、本発明の範囲は以下に示す具体例に限定されるものではない。
実施例で用いた測定機器等が廃番等により入手困難な場合、他の同等の性能を有する機器を用いて測定することができる。
【0056】
1.原料
<ポリエステル樹脂>
PET:イソフタル酸変性ポリエチレンテレフタレート樹脂(固有粘度:0.83dL/g)、商品名:BK2180、三菱ケミカル株式会社製(融点248℃)、全カルボン酸成分に対するイソフタル酸含有量:1.4モル%、ガラス転移温度:79℃
<ポリアミド樹脂>
MXD6:メタキシリレンジアミンとアジピン酸から合成されたポリアミド樹脂、融点:237℃、ガラス転移温度:88℃、三菱ガス化学社製、品番:S6007
<ハロゲン化物>
MgCl:富士フイルム和光純薬株式会社製、試薬
LiCl:富士フイルム和光純薬株式会社製、試薬
【0057】
2.実施例1~3、比較例1
<ポリアミド樹脂組成物の製造>
表1に表すポリアミド樹脂およびハロゲン化物(各成分の割合は質量部である)をドライブレンドし、その後、二軸溶融混練機((株)日本製鋼所製、型式:TEX34αIII)に供給し、シリンダー温度240℃から260℃で溶融混練して、ポリアミド樹脂組成物のペレットを得た。
【0058】
<プリフォームの製造>
2本の射出シリンダーを有する射出成形機(住友重機械工業製、型式SE-DU130CI)および2個取りの多層ホットランナー金型(Kortec社製)を使用して、以下に示した条件で層(Y)/層(X)/層(Y)からなる3層構造を一部に有するプリフォームを製造した。具体的には、まず、層(Y)を構成する材料として、ポリエステル樹脂(PET)を射出シリンダーから射出し、層(Y)の射出状態を維持しながら、ポリアミド樹脂層(X)を構成するポリアミド樹脂組成物を、別の射出シリンダーから、層(Y)を構成するPETと共に射出し、最後に層(Y)を構成するPETを必要量射出してキャビティーを満たすことにより、(Y)/(X)/(Y)の3層構造を一部に有するプリフォーム(25g)を得た。射出した樹脂の合計量を100質量%としたときの、射出した層(Y)の量および射出した層(X)の量をそれぞれ表1に示した。プリフォームの形状は、全長92mm、外径22mm、肉厚3.9mmであった。プリフォームは製造直後に防湿包装し、後述する二軸延伸ブローを開始する直前までこの状態のまま保存した。
<<成形条件>>
スキン側(Y)射出シリンダー温度:280℃
コア側(X)射出シリンダー温度:260℃
金型内樹脂流路温度:290℃
金型冷却水温度:15℃
サイクルタイム:33sec
【0059】
<多層容器の製造>
上記プリフォームを二軸延伸ブロー成形装置(フロンティア製、型式EFB1000ET)により二軸延伸ブロー成形してペタロイド型ボトル(多層容器)を得た。ボトル(多層容器)の全長は223mm、外径は65mm、内容積は500mL(表面積:0.04m、胴部平均厚み:0.33mm)であり、底部はペタロイド形状である。胴部にディンプルは設けなかった。二軸延伸ブロー成形条件は以下に示したとおりである。得られた多層容器の各層の厚みは、層(Y)/層(X)/層(Y)の順に、150μm、35μm、120μmとした。
プリフォーム加熱温度: 105℃
一次ブロー圧力: 0.9MPa
二次ブロー圧力: 2.5MPa
一次ブロー遅延時間: 0.30sec
一次ブロー時間: 0.30sec
二次ブロー時間: 2.0sec
ブロー排気時間: 0.6sec
金型温度: 15℃
【0060】
<酸素バリア性>
実施例および比較例で作製した多層容器に、水100mLを充填し、酸素分圧0.21atmの条件下で、多層容器内部湿度100%RH(相対湿度)、外湿度50%RH、温度23℃の条件にて、多層容器内部に1atmの窒素を20mL/分で流通させ、200時間後のクーロメトリックセンサーにて多層容器内部を流通後の窒素中に含まれる酸素量を検出することで、酸素透過率(単位:cc/(bottle・day・0.21atm))を測定した。
酸素透過率測定装置は、MOCON社製、商品名「OX-TRAN 2/61」を使用した。
【0061】
<炭酸ガスバリア性>
実施例および比較例で作製した多層容器に、4.6GVの炭酸水500mLを充填し、キャップを閉めた後、23℃、相対湿度50%の環境で7日間保存した。続いて、23℃、多層容器の内部の相対湿度100%、多層容器の外部の相対湿度50%における多層容器の炭酸ガスロス率20%のシェルフライフを、炭酸ガス透過率測定装置を使用して測定した。炭酸ガスバリア性の単位は、cc/(bottle・day)とした。
炭酸ガス透過率測定装置は、MOCON社製、「PERMATRAN-C Model10」(登録商標)を用いた。
【0062】
【表1】
【0063】
上記結果から明らかなとおり、本実施形態の多層体は、酸素バリア性および炭酸ガスバリア性に優れていた(実施例1~3)。これに対し、所定のハロゲン化物を配合しないと、酸素バリア性および炭酸ガスバリア性の向上効果が認められなかった。
【符号の説明】
【0064】
1 ポリエステル樹脂層
2 ポリアミド樹脂層
3 ポリエステル樹脂層
図1