(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024179027
(43)【公開日】2024-12-26
(54)【発明の名称】配線板
(51)【国際特許分類】
H05K 3/46 20060101AFI20241219BHJP
H05K 1/18 20060101ALI20241219BHJP
【FI】
H05K3/46 Q
H05K3/46 N
H05K1/18 P
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023097514
(22)【出願日】2023-06-14
(71)【出願人】
【識別番号】591036457
【氏名又は名称】三菱電機エンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002941
【氏名又は名称】弁理士法人ぱるも特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】阿部 則夫
【テーマコード(参考)】
5E316
5E336
【Fターム(参考)】
5E316AA12
5E316AA35
5E316AA42
5E316BB13
5E316DD22
5E316EE01
5E316FF04
5E316GG17
5E316GG28
5E316HH01
5E316HH22
5E316JJ02
5E316JJ26
5E316JJ28
5E336AA07
5E336AA11
5E336AA16
5E336BB03
5E336BC02
5E336CC32
5E336CC52
5E336CC53
5E336CC58
5E336EE01
5E336GG11
5E336GG30
(57)【要約】
【課題】プリント配線板上における電子部品の実装密度を向上させることができるとともに、電子部品の電極とLSIの端子電極との配線距離を短縮させる。
【解決手段】プリント配線板61に設けられたスルーホール8の内壁メッキを、非メッキ部9を境にして上側に位置する残存メッキ部10と、下側に位置する残存メッキ部11に分断し、スルーホール8の内部に、スルーホール8の内部形状に合わせて形成され、かつ上側電極513及び下側電極514を備えた電子部品51を格納し、上側電極513と残存メッキ部10を電気的に接続するとともに、下側電極514と残存メッキ部11を電気的に接続する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板に設けられたスルーホールの内壁メッキは、非メッキ部を境にして第1方向上側に位置する第1残存メッキ部と、第1方向下側に位置する第2残存メッキ部に分断して構成され、
前記スルーホールの内部に格納されるとともに、前記スルーホールの内部形状に合わせて形成され、かつ第1方向上側電極及び第1方向下側電極を備えた電子部品を有し、
前記第1方向上側電極と前記第1残存メッキ部を電気的に接続するとともに、前記第1方向下側電極と前記第2残存メッキ部を電気的に接続した配線板。
【請求項2】
基板に設けられたスルーホールの内部に格納されるとともに、前記スルーホールの内部形状に合わせて形成され、かつ第1方向上側電極及び第1方向下側電極を備えた電子部品を有し、
前記第1方向上側電極と前記スルーホールにおける内壁メッキ部とを電気的に接続するとともに、前記第1方向下側電極と、前記スルーホールの前記内壁メッキ部との接続を有しない導体とを電気的に接続した配線板。
【請求項3】
前記スルーホールの第1方向下側には、前記スルーホールの第1方向上側よりも径が大きく、かつ内壁メッキ部が存在しない大径部を設け、前記スルーホールの内部形状に合わせて形成された円柱部及びスルーホール差し込み部を有する電子部品を前記スルーホールに格納した請求項2に記載の配線板。
【請求項4】
前記第1方向下側電極は接続導体を介して前記スルーホールの前記内壁メッキ部との接続を有しない前記導体と電気的に接続されている請求項2または請求項3に記載の配線板。
【請求項5】
前記スルーホールの前記内壁メッキ部との接続を有しない前記導体は、前記基板の第1方向下側における表面導体層に設けられたランドである請求項4に記載の配線板。
【請求項6】
前記スルーホールの直径よりも大きな直径を有する固定部を前記電子部品の第1方向下側に設けた請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の配線板。
【請求項7】
前記基板の第1方向上側に集積回路部品を搭載した請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の配線板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、配線板に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電子装置の小型化および高性能化にともない、電子装置内で用いられるプリント配線板の高密度化が求められている。より高密度な実装を行うため、最近のプリント配線板としては、導体層と絶縁層を交互に積層し、任意の導体層を電気的に接続するスルーホールを用いた多層基板が広く用いられている。またプリント配線板に実装される電子部品としても、SMD(SURFACE MOUNT DEVICE)チップ部品が多く用いられる。更に大規模な演算処理を行うLSI(LARGE SCALE INTEGRATION)において、小さなパッケージにより多くの端子電極を設けることのできる、BGA(BALL GRID ARRAY)と呼ばれる種類のものが広く使用されている。
【0003】
更に電子装置においては、消費電力の低減化が求められており、プリント配線板で扱う電源の低電圧化が進んでいる。この低電圧化により、電源の供給先となるLSIで許容される電圧変動の裕度が狭まる。従ってLSIの誤動作を抑制するために、高い電源品質の確保が製品開発で重要な要素となっている。この電源品質の確保のため、従来からコンデンサ部品が広く用いられている。
【0004】
そしてプリント配線板で使用されるLSIが、BGAタイプの場合、このLSIのパッケージ中央付近に配置された電源端子に対し、供給する電源の品質確保を目的としたコンデンサ部品を接続する場合を考える。この場合、LSIが実装される表面導体層側にはLSIのパッケージが存在するため、コンデンサ部品とLSIを同一の表面導体層に配置することは困難となる。そのため、コンデンサ部品は、LSIが実装される表面導体層と、反対側の表面導体層に実装せざるを得なくなる。
【0005】
また、プリント配線板では、電子機器を正常動作させるために、LSIの他に、コンデンサ又は抵抗器のような2端子を有するSMDチップ部品が多く用いられる。これらの部品をプリント配線板上に実装するためには、プリント配線板の表面導体層に、SMD部品の電極を半田接続するためのパッドを設置する必要がある。そしてこのパッドが占める総面積が、プリント配線板の実装密度に深く影響する。
【0006】
パッドが占める面積を減少させる技術として、例えば、特許文献1のようなものが開示されている。
即ち特許文献1の配線板は、スルーホールを有している。さらに表面層となる導体層上には、ICチップが実装されている。当該スルーホールには、抵抗器、コンデンサ等の電子部品が収納されている。各電子部品の両端子は、半田によりそれぞれ導体層に接続されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1においては、電子部品を収納する貫通穴の内壁面はメッキ処理が行われていないため、その貫通穴を用いて、例えば電源が接続された内層導体層から、LSIが搭載される表面導体層に、電源パターンを引き出すことができない。そのため、電源を内層導体層から表面導体層に引き出すには、別のスルーホールが必要となり、プリント配線板の高密度化を図ることにおいて障害となる。特に、パッケージサイズに対して端子密度の高いBGAタイプのLSI部品においては、配設できるスルーホールの数が制限される。従って1つの電源端子に対し、引き出し用のスルーホールと電子部品用の貫通穴の2種類を設けることは困難であるという問題がある。
【0009】
本願は、上記のような課題を解決するための技術を開示するものであり、プリント配線板上における電子部品の実装密度を向上させることができるとともに、電子部品の電極とLSIの端子電極との配線距離を短縮させることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本願に開示される配線板は、基板に設けられたスルーホールの内壁メッキは、非メッキ部を境にして第1方向上側に位置する第1残存メッキ部と、第1方向下側に位置する第2残存メッキ部に分断して構成され、
前記スルーホールの内部に格納されるとともに、前記スルーホールの内部形状に合わせて形成され、かつ第1方向上側電極及び第1方向下側電極を備えた電子部品を有し、
前記第1方向上側電極と前記第1残存メッキ部を電気的に接続するとともに、前記第1方向下側電極と前記第2残存メッキ部を電気的に接続したものである。
又本願に開示される別の配線板は、基板に設けられたスルーホールの内部に格納されるとともに、前記スルーホールの内部形状に合わせて形成され、かつ第1方向上側電極及び第1方向下側電極を備えた電子部品を有し、
前記第1方向上側電極と前記スルーホールにおける内壁メッキ部とを電気的に接続するとともに、前記第1方向下側電極と、前記スルーホールの前記内壁メッキ部との接続を有しない導体とを電気的に接続したものである。
【発明の効果】
【0011】
本願に開示される配線板によれば、プリント配線板上における電子部品の実装密度を向上させることができるとともに、電子部品の電極とLSIの端子電極との配線距離を短縮させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】実施の形態1による電子部品が内蔵されたプリント配線板の透過斜視図である。
【
図2】実施の形態1によるプリント配線板を示す側面断面図である。
【
図3】実施の形態1によるプリント配線板の電気的等価回路図である。
【
図4】実施の形態1によるプリント配線板を示す側面断面図である。
【
図5】スルーホールに挿入される電子部品を示す斜視図である。
【
図6】実施の形態1によるプリント配線板を示す側面断面図である。
【
図7】実施の形態1によるプリント配線板を示す側面断面図である。
【
図8】実施の形態1によるプリント配線板を示す側面断面図である。
【
図9】実施の形態2によるプリント配線板を示す側面断面図である。
【
図10】
図9におけるC方向から見た平面図である。
【
図11】スルーホールに挿入する電子部品を示す斜視図である。
【
図13】実施の形態2によるプリント配線板を示す側面断面図である。
【
図14】実施の形態2によるプリント配線板を示す側面断面図である。
【
図15】実施の形態2によるプリント配線板を示す側面断面図である。
【
図16】実施の形態2によるプリント配線板の電気的等価回路図である。
【
図17】実施の形態3によるプリント配線板を示す側面断面図である。
【
図19】スルーホールに挿入される電子部品を示す斜視図である。
【
図20】実施の形態3によるプリント配線板を示す側面断面図である。
【
図21】LSIとコンデンサ部品が同一面に配置されていない場合のプリント配線板を示す側面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
実施の形態1.
本実施の形態は、電子装置に用いられる電子部品を内蔵したプリント配線板、ならびにプリント配線板に実装する電子部品に関するものである。以下、本実施の形態について、図面を参照し説明する。
先ずLSIとコンデンサ部品が同一面に配置されていない場合について、
図21に基づいて説明する。
図21においては、内層導体層とLSI電源端子とコンデンサ部品の接続状態を示している。LSI部品1014の電源端子が接続されるパッド1012への電源供給経路は以下のように構成される。即ち電源に接続される内層導体層1002を、スルーホール1017を介して表面導体層1001に接続する。そして表面導体層1001に形成されたパターン1013からパッド1012に接続するという順序となる。この接続に対し、SMDチップコンデンサ部品1022を、LSI部品1014の実装面と反対の面である表面導体層1004にハンダペースト1015により実装した場合、内層導体層1002からSMDチップコンデンサ部品1022への接続経路は、LSI部品1014への電源供給経路から外れたものとなる。この接続状態では、電源の電圧変動をコンデンサで軽減した後に、LSI部品1014に電源供給するというようなSMDチップコンデンサ部品1022の機能が十分に得られないことが考えられる。
【0014】
次に、4層のプリント配線板において、表面導体層1側に実装されたLSIチップ部品14の電源端子が接続されるパッド12に対し、内層導体層2から、コンデンサ部品を用いて電源供給する場合の一例を
図1等に基づいて説明する。
なお、後述の各実施の形態は単なる例示にすぎず、本実施の形態を何ら限定するものではない。したがって本実施の形態は当然にその要旨を逸脱しない範囲内で種々の改良、変形が可能である。例えば、スルーホール内に格納する電子部品は、コンデンサ部品に限らず、抵抗器又はダイオード等でもよい。
また、後述の各実施の形態では、スルーホール内に格納する電子部品は、円柱形状として説明しているが、市販されている多くの2端子SMDチップ部品の形状である直方体のものを用いることもできる。
【0015】
図1は実施の形態1による電子部品が内蔵されたプリント配線板の透過斜視図である。
図2は
図1におけるA-A線断面側面図であり、
図1の矢印B方向から見た断面図である。以下に示す種々の側面断面図においても、
図2と同様の方向から見た断面図である。又
図3は、
図1および
図2に示されたプリント配線板を、電気的に等価表示した等価回路図である。
図3において、31は電源、32、33はコンデンサ部品電極、13は表面導体層パターン、12はLSI実装用ランド、34はLSI電源端子である。
尚
図2において、基板において垂直方向をZ方向(第1方向)とし、Z方向に対して垂直な方向をX方向とし、X方向及びZ方向に対して垂直な方向をY方向とする。そしてX方向及びY方向が水平方向(第2方向)となる。更に第1方向において上側の面を上面とし、下側の面を下面とする。以下の図においても同様に定義する。
図2に示すように、内壁のメッキが、非メッキ部9を境に上下に分断する処理を施されたスルーホール8の内部に、上下に電極を有する電子部品(コンデンサ部品)51を挿入し、各々の電極と、スルーホール8の残存したメッキからなる導体とを、リフロー工程等により、電気的に接続する。その形状については、後述にて更に詳細に説明する。
【0016】
図4は、本実施の形態によるプリント配線板の構成を示したものであり、電子部品が実装される前のプリント配線板を示す側面断面図である。本実施の形態によるプリント配線板61は、表面導体層1、4と、内層導体層(電源)2と、内層導体層(GND)3と、層間絶縁層5、6、7が積層された4層基板である。ここでは、内層導体層2は電源に接続されるともに、内層導体層3はGNDに接続されている状態を一例として説明する。表面導体層1の側には、BGA(BALL GRID ARRAY)タイプのLSI(LARGE SCALE INTEGRATION)チップ部品14が実装されるパッドが多数設けられており、その内パッド12は、LSIチップ部品14の電源端子が接続される。
【0017】
プリント配線板61は、各導体層の接続ができるように内壁がメッキ処理されたスルーホールを多数有しており、その内、スルーホール8は、内壁のメッキが、非メッキ部9を境に上下に分断する処理を施されたものである。基板に設けられたスルーホール8では、残存するメッキを用いて、非メッキ部9より第1方向上側では、残存メッキ部(第1残存メッキ部)10により表面導体層1と内層導体層2が接続されるとともに、非メッキ部9より第1方向下側では、残存メッキ部(第2残存メッキ部)11により表面導体層4と内層導体層3が接続されている。なお、パッド12は、表面導体層1のパターン13により、スルーホール8の残存メッキ部10からなる導体と接続されている。
【0018】
スルーホール8を上下に分断する工法としては、通常のメッキが形成されたスルーホールに対し、レーザーカッタ等をスルーホール内に挿入し、任意の高さ位置の内壁のメッキを機械的に掘削する方法がある。更には基板製造時のメッキ処理が行われる前の段階で、スルーホールの内壁の一部において、メッキレジスト部材が露出する部分を設ける加工を行い、メッキ処理後にスルーホールを上下に分断させる方法がある。このように種々の方法があるが、本実施の形態においては、確実にスルーホールが上下に分断されていれば、どの工法を用いても構わない。
【0019】
次に、スルーホール8の中に格納する電子部品51の形状の一例について
図5に基づいて説明する。
図5はスルーホールに挿入される電子部品を示す斜視図である。
図5に示す電子部品51は、円柱部511と、固定部512により構成される。円柱部511の直径は、スルーホール8の内部に格納可能とするため、スルーホール8の直径より、僅かに小さいものとなる。円柱部511の高さは、プリント配線板61の厚み611より、僅かに短いことが望ましい。また、円柱部511は上下に上側電極(第1方向上側電極)513と下側電極(第1方向下側電極)514を有しており、コンデンサ又は抵抗のような電子部品として機能させるための内部構造は、上下の電極間で構成される。
【0020】
固定部512は、表面導体層4を上にした状態で、電子部品51をスルーホール8の中に格納した際、電子部品51の落下を防ぐためのものとなり、その直径は、スルーホール8の穴径より大きいものとなる。固定部512の材質は、プリント配線板の導体と半田接続が可能な金属部材を用いる。また、固定部512は、円柱部511の下側電極514と電気的に接続される。
【0021】
次に
図4に示されるプリント配線板61のスルーホール8に対し、
図5に示される電子部品51を実装する工程について、
図6~
図8に基づいて説明する。
まず
図6において、表面導体層4側に露出したスルーホール8のランドに対して、熱硬化式のハンダペースト15を塗布した後、電子部品51をスルーホール8に挿入して実装する。
図6は表面導体層4側のリフロー工程を経た状態を示している。
【0022】
この工程により、電子部品51の固定部512と、スルーホール8における非メッキ部9より表面導体層4側の残存メッキ部11からなる導体が、電気的に接続された状態となるとともに、電子部品51がプリント配線板61に固定される。なお、図示されていないが、前述の工程は、電子部品51が落下しないように、表面導体層4が上になる向きにて実施される。また前述の工程は、表面導体層4側へ実装される他のSMDチップ部品の実装と同時に行ってもよい。
【0023】
次に
図7においては、スルーホール8に生じる窪みに対し、熱硬化式のハンダペースト16の充填を行った状態を示している。この窪みは、電子部品51の円柱部511の高さが、プリント配線板61の厚み611より小さいために生じたものとなる。なお、充填するハンダペースト16の粘度は、スルーホール8の内壁と、電子部品51の円柱部との間に生じる僅かな間隙から、下側に向かって浸潤しないものであることが望ましい。
【0024】
次に、
図8に示すように、表面導体層1側の部品を実装するためのパッドに対してSMD部品実装用のハンダペースト15を塗布した後、LSIチップ部品(集積回路部品)14のような表面導体層1側(基板の第1方向上側)のSMDチップ部品の実装を行う。表面導体層1側のリフロー工程を経た状態が、
図8に示される。この工程により電子部品51の表面導体層1側の電極と、スルーホール8における非メッキ部9より表面導体層1側の残存メッキ部10からなる導体が、電気的に接続された状態となる。
【0025】
以上のような工程により、スルーホール8の内部に挿入された電子部品51の上側電極513は残存メッキ部10と電気的に接続され、更に下側電極514は残存メッキ部11と電気的に接続される。これにより電子部品51の上下の電極が、残存するメッキを用いて内層導体層及び表面導体層と接続されることになる。
【0026】
以上のように本実施の形態においては、内壁のメッキを上下に分断したスルーホール内に電子部品を格納し、スルーホール内の上下に残存するメッキと電子部品を電気的に接続するものである。これにより、スルーホール1個分の配設に要する面積のみで、内層導体層と表面導体層の接続、および電子部品の機能確保を両立することが可能となる。この結果、プリント配線板上における電子部品の実装密度の向上を図ることができる。また、LSIの端子電極と、スルーホール内に格納された電子部品の電極を接続する経路長さも、従来と比較して短縮することができるため、電子部品の効果を向上させることが可能である。
【0027】
本実施の形態においては、内層導体層と表面導体層を接続させること、及びコンデンサ等の電子部品を機能させることを、スルーホール1個分の設置に要する面積のみで実行させることが可能なプリント配線板の提供を目的としている。
本実施の形態によれば、スルーホール1個分の配設に要する面積のみで、スルーホール内に格納する電子部品を機能させることができる。これにより、プリント配線板上における電子部品の実装密度を向上させることができる。また電子部品の電極と、LSIの端子電極との配線距離を短縮できるため、電子部品の効果を向上させることができる。
【0028】
実施の形態2.
上述の実施の形態1では、内壁の一部にメッキが付着しない箇所を設けたスルーホールを設けた場合について説明したが、実施の形態2では、このスルーホールへの加工を行わず、前述の目的を達成する構造について説明する。なお、上記の実施の形態1と同様の機能を有するものについては、
図1~
図8に示した電子部品内蔵基板と同様の符号を用い、その説明を省略するものとする。
【0029】
図9は、実施の形態2におけるプリント配線板の構成を示す断面図であり、部品実装を行う前段階のプリント配線板の構成を示す断面図である。又
図10は
図9におけるC方向から見た平面図である。実施の形態1に示した
図4と
図9との相違点は、スルーホール17の内壁メッキ部に分断箇所がなく、スルーホール17の表面導体層1と表面導体層4のランドは、内壁のメッキを介して接続されるため同電位となる。そのため、スルーホール17の内部に格納する電子部品102の表面導体層4側の電極は、スルーホール17を形成する導体との接触を避ける必要がある。また、スルーホール17内に格納する電子部品102の、表面導体層4側の電極の接続先であるランド18は、スルーホール17とは別の経路で、所望の信号に接続する必要がある。
図9においては、ランド18を表面導体層4側のパターン19とスルーホール23を経由して、内層導体層3のGNDに接続する場合を例示している。
【0030】
スルーホール17内に格納する電子部品102の形状の一例について、
図11、
図12Aに示す斜視図、ならびに
図12AにおけるD方向から見た平面図である
図12Bを用いて説明する。
電子部品102も、実施の形態1で説明した電子部品51と同様に、円柱部121と、固定部122が電気的に接続された構成となる。円柱部121は、上側電極(第1方向上側電極)123と下側電極(第1方向下側電極)124を備え、電子部品として機能させるための内部構造は、上下の電極間で構成される。円柱部121は、上下電極部以外の表面には導電性はないものとする。固定部122は、表面に導電性のない部材126に対し、その中心に円柱部121を差し込む穴127を有している。更に固定部122は、表面に導電性のない部材に対して、底面、側面、および表面導体層4と接触する面の外周の一部に対してメッキ処理した電極部125を備えている。又固定部122の直径はスルーホール17の直径よりも大きく形成されている。
【0031】
円柱部121を固定部122の穴127に差し込んだ後、固定部122の底面から露出する円柱部121の下側電極124と固定部122の電極部125を、メッキ処理又はハンダ接続等の処理により、電気的に接続するように構成し、これにより
図12A及び
図12Bに示されるような実施の形態2に用いる電子部品102となる。なお、スルーホール17に挿入される電子部品102の突起128の高さは、プリント配線板62の厚み621より、僅かに小さいことが望ましい。
【0032】
次に、プリント配線板62のスルーホール17に対する電子部品102の実装工程について、
図13~
図15に基づいて説明する。
図13においては、スルーホール17の表面導体層4側のランドに近接する形で設けたランド18に、熱硬化式のハンダペースト15を塗布した後、電子部品102をスルーホール17に挿入する形で実装を行う。そして表面導体層4側のリフロー工程を経た状態を
図13に示している。なおこの工程は、実施の形態1の場合と同様に、表面導体層4が上となる向きにて実施される。更に表面導体層4側に実装される他のSMDチップ部品と同時に行ってもよい。
【0033】
この工程により、電子部品102がプリント配線板62に固定されるとともに、電子部品102の表面導体層4側の電極部125と、表面導体層4のパターン19に接続されたランド18が電気的に接続された状態となる。また、スルーホール17の表面導体層4側のランドと対向する位置であり、電子部品102の固定部122における表面においては、導電性がないため、電極部125とスルーホール17は絶縁された状態となる。
【0034】
次に
図14においては、実施の形態1の場合と同様に、プリント配線板62の厚み621と、電子部品102の突起128の高さの差から構成されるスルーホール17の窪み部分に対し、熱硬化式のハンダペースト16を充填する。この工程を経た後、
図15に示すように、表面導体層1側にSMDチップ部品を実装し、表面導体層1側にリフロー工程を行う。リフロー工程を行った後の状態を
図15に示す。
【0035】
前述の工程を経ることで、スルーホール17の内部に挿入された電子部品102の上側に位置する上側電極123は、スルーホール17の内壁のメッキと接続され、更に下側に位置する電極部125は、表面導体層4のパターン19に接続されたランド18と接続される。
即ち下側電極124は、スルーホール17と接続されていない導体と電極部125(接続導体)を介して電気的に接続されることとなる。この場合スルーホール17と接続されていない導体とは、基板の第1方向下側に設けられた表面導体層4側の電極の接続先であるランド18となる。
図16は実施の形態2によるプリント配線板を、電気的に等価表示した等価回路図である。
【0036】
実施の形態2の構造により、電子部品102を、スルーホール17に挿入することにより実装する際に、表面導体層4側に必要とされる面積は、スルーホール17のランド径よりも大きくなるため、実施の形態1の場合と比較して、実装密度の向上効果は若干低下する。しかし既存のスルーホールへの加工を必要としない利点がある。また、実施の形態2においても、電子部品102をスルーホール17内に格納するため、LSIの電極と電子部品の電極を接続する経路長は、実施の形態1の場合と同様に短縮することができ、電子部品の効果を向上させることができる。
【0037】
実施の形態3.
上記実施の形態1、2においては、プリント配線板に使用される既存のスルーホール内に電子部品を格納する形で実装する場合について説明した。この場合、格納される電子部品として、大容量のコンデンサのようなパッケージサイズの大きいものを使用する場合、穴の径の大きなスルーホールを用いる必要がある。しかし、BGAタイプのLSI部品のような部品端子が密集した箇所に対して、穴の径の大きなスルーホールを設けることは困難である。
そこで実施の形態3においては、部品端子が密集した箇所においても、パッケージサイズが大きい電子部品をスルーホール内に格納できるとともに、上記実施の形態1、2と同様の効果が得られる装置に関して、図に基づいて説明する。
【0038】
図17は、実施の形態3におけるプリント配線板の構成を示す断面図であり、部品実装を行う前段階のプリント配線板の構成を示す断面図である。又
図18は
図17におけるE方向から見た平面図である。実施の形態2との相違点は、一般的にバックドリルと呼ばれる工法を用いて、表面導体層4側から表面導体層1側に向けて任意の深さ21までのメッキを、スルーホールの穴径よりも太いドリルで掘削するものである。スルーホールを掘削した後の状態が、
図17に示すスルーホール20となり、ドリルによる掘削が行われなかった部分は、残存メッキ部10により内層導体層2と表面導体層1との接続が維持される。
【0039】
スルーホール20内に格納する電子部品の表面導体層4側の電極の接続先であるランド18は、表面導体層4側パターン19によって、所望の信号に接続される。
次に、バックドリルによる加工を行ったスルーホール20内に格納する電子部品103の形状に関する一例について説明する。
図19はスルーホール20に挿入される電子部品103を示す斜視図である。
【0040】
電子部品103は、円柱部131に対して、固定部132と、スルーホール差し込み部133が電気的に接続された構成となる。円柱部131は、上側電極134と下側電極135を備え、電子部品として機能させるための内部構造は、上下の電極間で構成される。
スルーホール差し込み部133は、円柱部131の上側電極134と電気的に接続され、その直径は、スルーホール20の残存メッキ部10に差し込み可能とするため、バックドリルを実施する前のスルーホールの直径よりも、僅かに小さいものとなる。
【0041】
固定部132の材質は、プリント配線板の導体とハンダによる接続が可能な金属部材を用い、円柱部131の下側電極135と電気的に接続する。又固定部132の直径はスルーホール20の直径よりも大きく形成されている。
円柱部131は、バックドリル工法によりドリル加工を行った穴に格納されるため、円柱部131の太さは、ドリルの直径よりも僅かに小さく、また円柱部131の高さはドリルにより加工された穴の深さよりも、僅かに小さいものとなる。また、円柱部131の高さに、スルーホール差し込み部133を加えた高さは、プリント配線板63の厚み631より、僅かに小さいことが望ましい。
【0042】
実施例の形態3におけるプリント配線板63のスルーホール20に対する電子部品103の実装工程については、実施の形態2と同様のものとなるため、ここでの詳細な説明は省く。
図20は表面導体層4側ならびに表面導体層1側に電子部品103を実装した後の状態を示すプリント配線板の構成を示す断面図である。
図20に示すように、実施の形態2の場合と同様に、電子部品103の下側電極135は、固定部132を介して、表面導体層4側のランド18と電気的に接続される。即ち下側電極135は、スルーホール20と接続されていない導体と電気的に接続されることとなる。また、上側電極134は、スルーホール20の残存メッキ部10と電気的に接続される。なお、この状態でのプリント配線板を電気的に等価表示した回路図は、実施の形態2において示した
図16と同等のものとなるため、等価回路図の図示は省略する。
【0043】
実施の形態3においては、スルーホール20の第1方向下側には、スルーホール20の第1方向上側よりも径が大きく、かつ残存メッキ部10が存在しない大径部を設け、スルーホール20の内部形状に合わせて形成された円柱部131及びスルーホール差し込み部133を有する電子部品103をスルーホール20に格納したものである。
【0044】
実施の形態3によると、バックドリル工法により径を拡張した穴に対して、電子部品103を格納するため、容量の大きいコンデンサのようなパッケージサイズが大きい部品を使用することができる。更にスルーホール20の表面導体層1側のランド形状は変更する必要がないため、BGAタイプのLSI部品のような端子電極が密集した箇所での使用が可能となる。更に、実施の形態1、2と同様に、プリント配線板の実装密度の向上を図ることができるとともに、LSIの電極と電子部品の電極を接続する経路長を短縮することができ、電子部品の効果を向上させることができる。
【0045】
本願は、様々な例示的な実施の形態及び実施例が記載されているが、1つ、または複数の実施の形態に記載された様々な特徴、態様、及び機能は特定の実施の形態の適用に限られるのではなく、単独で、または様々な組み合わせで実施の形態に適用可能である。
従って、例示されていない無数の変形例が、本願明細書に開示される技術の範囲内において想定される。例えば、少なくとも1つの構成要素を変形する場合、追加する場合または省略する場合、さらには、少なくとも1つの構成要素を抽出し、他の実施の形態の構成要素と組み合わせる場合が含まれるものとする。
【0046】
以下、本開示の諸態様を付記してまとめて記載する。
【0047】
(付記1)
基板に設けられたスルーホールの内壁メッキは、非メッキ部を境にして第1方向上側に位置する第1残存メッキ部と、第1方向下側に位置する第2残存メッキ部に分断して構成され、
前記スルーホールの内部に格納されるとともに、前記スルーホールの内部形状に合わせて形成され、かつ第1方向上側電極及び第1方向下側電極を備えた電子部品を有し、
前記第1方向上側電極と前記第1残存メッキ部を電気的に接続するとともに、前記第1方向下側電極と前記第2残存メッキ部を電気的に接続した配線板。
(付記2)
基板に設けられたスルーホールの内部に格納されるとともに、前記スルーホールの内部形状に合わせて形成され、かつ第1方向上側電極及び第1方向下側電極を備えた電子部品を有し、
前記第1方向上側電極と前記スルーホールにおける内壁メッキ部とを電気的に接続するとともに、前記第1方向下側電極と、前記スルーホールの前記内壁メッキ部との接続を有しない導体とを電気的に接続した配線板。
(付記3)
前記スルーホールの第1方向下側には、前記スルーホールの第1方向上側よりも径が大きく、かつ内壁メッキ部が存在しない大径部を設け、前記スルーホールの内部形状に合わせて形成された円柱部及びスルーホール差し込み部を有する電子部品を前記スルーホールに格納した付記2に記載の配線板。
(付記4)
前記第1方向下側電極は接続導体を介して前記スルーホールの前記内壁メッキ部との接続を有しない前記導体と電気的に接続されている付記2または付記3に記載の配線板。
(付記5)
前記スルーホールの前記内壁メッキ部との接続を有しない前記導体は、前記基板の第1方向下側における表面導体層に設けられたランドである付記2から付記4のいずれか1項に記載の配線板。
(付記6)
前記スルーホールの直径よりも大きな直径を有する固定部を前記電子部品の第1方向下側に設けた付記1から付記5のいずれか1項に記載の配線板。
(付記7)
前記基板の第1方向上側に集積回路部品を搭載した付記1から付記6のいずれか1項に記載の配線板。
【符号の説明】
【0048】
1,4 表面導体層、2,3 内層導体層、5,6,7 層間絶縁層、
8,17,20 スルーホール、9 非メッキ部、10,11 残存メッキ部、
18 ランド、51,102,103 電子部品、122,132,512 固定部、
123,134,513 上側電極、124,135,514 下側電極、
125 電極部。