(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024017903
(43)【公開日】2024-02-08
(54)【発明の名称】基板洗浄装置および基板洗浄方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/304 20060101AFI20240201BHJP
【FI】
H01L21/304 648G
H01L21/304 644B
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022120855
(22)【出願日】2022-07-28
(71)【出願人】
【識別番号】000207551
【氏名又は名称】株式会社SCREENホールディングス
(74)【代理人】
【識別番号】100108523
【弁理士】
【氏名又は名称】中川 雅博
(74)【代理人】
【識別番号】100125704
【弁理士】
【氏名又は名称】坂根 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100187931
【弁理士】
【氏名又は名称】澤村 英幸
(72)【発明者】
【氏名】帆角 良平
(72)【発明者】
【氏名】田中 克典
(72)【発明者】
【氏名】矢野 航
【テーマコード(参考)】
5F157
【Fターム(参考)】
5F157AB02
5F157AB14
5F157AB33
5F157AB90
5F157AC01
5F157AC13
5F157BA02
5F157BA13
5F157BA31
5F157BB23
5F157CB13
5F157CE03
5F157CE27
5F157CE32
5F157CE42
5F157DB02
(57)【要約】
【課題】ブラシによる洗浄後の基板の一面の清浄度を向上させるとともに基板の一面の洗浄に用いる洗浄液の消費量を低減可能な基板洗浄装置を提供する。
【解決手段】基板洗浄装置SSRは、スピンチャック10、液供給機構20、ブラシ押圧機構30およびブラシBRを備える。スピンチャック10は、基板Wを保持しつつ回転させる。液供給機構20は、スピンチャック10により保持されて回転する基板Wの一面上に洗浄液を供給する。ブラシ押圧機構30は、予め定められた押圧期間中、ブラシBRを回転する基板Wの一面に向けて押圧する。液供給機構20は、押圧期間の前に、基板Wの一面上に予め定められた基準流量で洗浄液を供給する。また、液供給機構20は、押圧期間のうち少なくとも一部の期間中、基板Wの一面上に基準流量よりも小さい流量で洗浄液を供給するか、または洗浄液の供給を停止する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板の一面を洗浄する基板洗浄装置であって、
前記基板を保持しつつ回転させる回転保持部と、
前記回転保持部により保持されて回転する前記基板の前記一面上に洗浄液を供給する液供給部と、
ブラシと、
予め定められた押圧期間中、前記ブラシを前記回転保持部により保持されて回転する前記基板の前記一面に向けて押圧するブラシ押圧機構とを備え、
前記液供給部は、
前記押圧期間の前に、前記基板の前記一面上に予め定められた基準流量で洗浄液を供給し、
前記押圧期間のうち少なくとも一部の期間中、前記基板の前記一面上に前記基準流量よりも小さい流量で洗浄液を供給するか、または洗浄液の供給を停止する、基板洗浄装置。
【請求項2】
前記ブラシ押圧機構は、前記押圧期間中、前記ブラシを前記基板の前記一面に向けて押圧しつつ当該ブラシを前記回転保持部により保持されて回転する前記基板の回転中心から前記基板の外周端部に向けて移動させ、
前記液供給部は、前記押圧時間中、前記洗浄液の供給を停止する、請求項1記載の基板洗浄装置。
【請求項3】
前記ブラシ押圧機構は、前記押圧期間中、前記ブラシを前記基板の前記一面に向けて押圧しつつ当該ブラシを前記回転保持部により保持されて回転する前記基板の回転中心から前記基板の外周端部に向けて移動させ、
前記液供給部は、
前記押圧期間の開始時点から前記ブラシが前記回転中心から前記回転中心と前記外周端部との間の特定位置に到達するまでの間、前記一面上に洗浄液を供給し、
前記ブラシが前記特定位置に到達した時点から前記押圧期間の終了時点までの間、前記洗浄液の供給を停止する、請求項1記載の基板洗浄装置。
【請求項4】
前記押圧期間は、時間軸上で順に並ぶ複数の押圧期間を含み、
前記複数の押圧期間のうち時間軸上で隣り合う各2つの押圧期間の間には、予め定められた非押圧期間が設定され、
前記ブラシ押圧機構は、
各押圧期間中、前記ブラシを前記基板の前記一面に向けて押圧しつつ当該ブラシを前記回転保持部により保持されて回転する前記基板の回転中心から前記基板の外周端部に向けて移動させ、
各非押圧期間中、前記ブラシを前記基板の前記一面から離間させつつ当該ブラシを前記外周端部から前記回転中心に向けて移動させ、
前記液供給部は、
各押圧期間中、前記洗浄液の供給を停止し、
各非押圧期間中、前記基板の前記一面上に洗浄液を供給する、請求項1記載の基板洗浄装置。
【請求項5】
前記押圧期間は、時間軸上で順に並ぶ第1の押圧期間および第2の押圧期間を含み、
前記第1の押圧期間および前記第2の押圧期間の間には、予め定められた非押圧期間が設定され、
前記ブラシ押圧機構は、
前記第1の押圧期間および前記第2の押圧期間の各々の期間中、前記ブラシを前記基板の前記一面に向けて押圧しつつ、当該ブラシを、前記回転保持部により保持されて回転する前記基板の回転中心から前記基板の外周端部に向けて移動させ、
前記非押圧期間中、前記ブラシを前記基板の前記一面から離間させつつ当該ブラシを前記外周端部から前記回転中心に向けて移動させ、
前記液供給部は、
前記第1の押圧期間中、前記基板の前記一面上に前記基準流量よりも小さい第1の流量で洗浄液を供給し、
前記第2の押圧期間中、前記基板の前記一面上に前記第1の流量よりも大きい第2の流量で洗浄液を供給する、請求項1記載の基板洗浄装置。
【請求項6】
基板の一面を洗浄する基板洗浄方法であって、
回転保持部により前記基板を保持しつつ回転させるステップと、
前記回転保持部により保持されて回転する前記基板の前記一面上に洗浄液を供給するステップと、
予め定められた押圧期間中、ブラシを前記回転保持部により保持されて回転する前記基板の前記一面に向けて押圧するステップとを含み、
前記洗浄液を供給するステップは、
前記押圧期間の前に、前記基板の前記一面上に予め定められた基準流量で洗浄液を供給することと、
前記押圧期間のうち少なくとも一部の期間中、前記基板の前記一面上に前記基準流量よりも小さい流量で洗浄液を供給するか、または洗浄液の供給を停止することとを含む、基板洗浄方法。
【請求項7】
前記押圧するステップは、前記押圧期間中、前記ブラシを前記基板の前記一面に向けて押圧しつつ当該ブラシを前記回転保持部により保持されて回転する前記基板の回転中心から前記基板の外周端部に向けて移動させることを含み、
前記洗浄液を供給するステップは、前記押圧時間中、前記洗浄液の供給を停止することを含む、請求項6記載の基板洗浄方法。
【請求項8】
前記押圧するステップは、前記押圧期間中、前記ブラシを前記基板の前記一面に向けて押圧しつつ当該ブラシを前記回転保持部により保持されて回転する前記基板の回転中心から前記基板の外周端部に向けて移動させることを含み、
前記洗浄液を供給するステップは、
前記押圧期間の開始時点から前記ブラシが前記回転中心から前記回転中心と前記外周端部との間の特定位置に到達するまでの間、前記一面上に洗浄液を供給することと、
前記ブラシが前記特定位置に到達した時点から前記押圧期間の終了時点までの間、前記洗浄液の供給を停止することとを含む、請求項6記載の基板洗浄方法。
【請求項9】
前記押圧期間は、時間軸上で順に並ぶ複数の押圧期間を含み、
前記複数の押圧期間のうち時間軸上で隣り合う各2つの押圧期間の間には、予め定められた非押圧期間が設定され、
前記押圧するステップは、
各押圧期間中、前記ブラシを前記基板の前記一面に向けて押圧しつつ、当該ブラシを、前記回転保持部により保持されて回転する前記基板の回転中心から前記基板の外周端部に向けて移動させることと、
各非押圧期間中、前記ブラシを前記基板の前記一面から離間させつつ前記ブラシを前記外周端部から前記回転中心に向けて移動させることとを含み、
前記洗浄液を供給するステップは、
各押圧期間中、前記洗浄液の供給を停止することと、
各非押圧期間中、前記基板の前記一面上に洗浄液を供給することとを含む、請求項6記載の基板洗浄方法。
【請求項10】
前記押圧期間は、時間軸上で順に並ぶ第1の押圧期間および第2の押圧期間を含み、
前記第1の押圧期間および前記第2の押圧期間の間には、予め定められた非押圧期間が設定され、
前記押圧するステップは、
前記第1の押圧期間および前記第2の押圧期間の各々の期間中、前記ブラシを前記基板の前記一面に向けて押圧しつつ当該ブラシを前記回転保持部により保持されて回転する前記基板の回転中心から前記基板の外周端部に向けて移動させることと、
前記非押圧期間中、前記ブラシを前記基板の前記一面から離間させつつ前記ブラシを前記外周端部から前記回転中心に向けて移動させることとを含み、
前記洗浄液を供給するステップは、
前記第1の押圧期間中、前記基板の前記一面上に前記基準流量よりも小さい第1の流量で洗浄液を供給することと、
前記第2の押圧期間中、前記基板の前記一面上に前記第1の流量よりも大きい第2の流量で洗浄液を供給することとを含む、請求項6記載の基板洗浄方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブラシを用いて基板を洗浄する基板洗浄装置および基板洗浄方法に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置または有機EL(Electro Luminescence)表示装置等に用いられるFPD(Flat Panel Display)用基板、半導体基板、光ディスク用基板、磁気ディスク用基板、光磁気ディスク用基板、フォトマスク用基板、セラミック基板または太陽電池用基板等の各種基板に種々の処理を行うために、基板処理装置が用いられている。基板を洗浄するために、基板洗浄装置が用いられる。
【0003】
基板洗浄装置の一例として、特許文献1には、ブラシを用いて基板の主面を洗浄する基板処理装置が記載されている。具体的には、その基板処理装置においては、スピンチャックにより保持されて回転する基板の主面(上面)に処理液が供給される。この状態で、基板の主面上にブラシが押し当てられる。また、基板の主面上で、ブラシが、基板の回転中心から基板の外周端部に向く方向に移動する。それにより、基板の主面が洗浄される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載された基板処理装置のように、ブラシを用いて基板の一面を洗浄する基板洗浄装置においては、洗浄後の基板の一面の清浄度を向上させることが望まれる。また、基板洗浄装置においては、基板の洗浄に用いられる処理液(洗浄液)の量を低減することが望まれる。
【0006】
本発明の目的は、ブラシによる洗浄後の基板の一面の清浄度を向上させるとともに基板の一面の洗浄に用いる洗浄液の消費量を低減可能な基板洗浄装置および基板洗浄方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一局面に従う基板洗浄装置は、基板の一面を洗浄する基板洗浄装置であって、前記基板を保持しつつ回転させる回転保持部と、前記回転保持部により保持されて回転する前記基板の前記一面上に洗浄液を供給する液供給部と、ブラシと、予め定められた押圧期間中、前記ブラシを前記回転保持部により保持されて回転する前記基板の前記一面に向けて押圧するブラシ駆動部とを備え、前記液供給部は、前記押圧期間の前に、前記基板の前記一面上に予め定められた基準流量で洗浄液を供給し、前記押圧期間のうち少なくとも一部の期間中、前記基板の前記一面上に前記基準流量よりも小さい流量で洗浄液を供給するか、または洗浄液の供給を停止する。
【0008】
本発明の他の局面に従う基板洗浄方法は、基板の一面を洗浄する基板洗浄方法であって、回転保持部により前記基板を保持しつつ回転させるステップと、前記回転保持部により保持されて回転する前記基板の前記一面上に洗浄液を供給するステップと、予め定められた押圧期間中、ブラシを前記回転保持部により保持されて回転する前記基板の前記一面に向けて押圧するステップとを含み、前記洗浄液を供給するステップは、前記押圧期間の前に、前記基板の前記一面上に予め定められた基準流量で洗浄液を供給することと、前記押圧期間のうち少なくとも一部の期間中、前記基板の前記一面上に前記基準流量よりも小さい流量で洗浄液を供給するか、または洗浄液の供給を停止することとを含む。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、ブラシによる洗浄後の基板の一面の清浄度を向上させるとともに基板の一面の洗浄に用いる洗浄液の消費量を低減することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の一実施の形態に係る基板洗浄装置の構成の一例を示す模式的側面図である。
【
図2】
図1の基板洗浄装置において基板の一面が洗浄されるときのスピンチャックおよびその周辺部材の状態の一例を示す模式的側面図である。
【
図3】境界液層の厚みに応じてブラシによる基板の洗浄力が変化するメカニズムを説明するための図である。
【
図4】境界液層の厚みに応じてブラシによる基板の洗浄力が変化するメカニズムを説明するための図である。
【
図5】境界液層の厚みに応じてブラシによる基板の洗浄力が変化するメカニズムを説明するための図である。
【
図6】
図1の基板洗浄装置による基板の一面の第1の洗浄例を説明するための図である。
【
図7】
図1の基板洗浄装置による基板の一面の第2の洗浄例を説明するための図である。
【
図8】
図1の基板洗浄装置による基板の一面の第3の洗浄例を説明するための図である。
【
図9】
図1の基板洗浄装置による基板の一面の第4の洗浄例を説明するための図である。
【
図10】
図1の基板洗浄装置による基板の一面の第5の洗浄例を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態に係る基板洗浄装置およびそれを備える基板洗浄方法について図面を参照しつつ説明する。以下の説明において、基板とは、半導体基板(ウエハ)、液晶表示装置もしくは有機EL(Electro Luminescence)表示装置等のFPD(Flat Panel Display)用基板、光ディスク用基板、磁気ディスク用基板、光磁気ディスク用基板、フォトマスク用基板、セラミック基板または太陽電池用基板等をいう。また、以下の説明では、基板の一面が非回路形成面(裏面)であり、基板の他面が回路形成面(表面)である。また、基板は、ノッチを除いて円形状を有する。
【0012】
さらに、以下の説明において、水平とは実質的に水平であることを意味する。厳密には、以下の説明における水平とは、対象となる面または線が所定の水平面に対して平行であること、および所定の水平面に対してある程度の角度範囲(例えば10°の角度範囲)内で傾斜していることを含む。また、鉛直とは実質的に鉛直であることを意味する。厳密には、以下の説明における鉛直とは、対象となる面または線が所定の鉛直面に平行であること、および所定の鉛直面に対してある程度の角度範囲(例えば10°の角度範囲)内で傾斜していることを含む。
【0013】
1.基板洗浄装置の構成
図1は、本発明の一実施の形態に係る基板洗浄装置の構成の一例を示す模式的側面図である。
図1に示すように、本実施の形態に係る基板洗浄装置SSRは、スピンチャック10、液供給機構20、ブラシ押圧機構30、制御部90およびブラシBRを備える。スピンチャック10は、基板Wの外周端部を保持するメカチャック式のスピンチャックであり、スピンベース11、複数のチャックピン12、チャック回転駆動部13および回転軸14を含む。
【0014】
スピンベース11は、円形状を有するとともに所定の厚みを有する円板状部材である。複数のチャックピン12は、スピンベース11の上面周縁部に等間隔で配置されている。各チャックピン12は、鉛直方向の軸の周りで回転可能に構成された回転式保持ピンである。スピンベース11上に基板Wが配置された状態で複数のチャックピン12の各々が回転する。それにより、基板Wの外周端部の複数の部分に複数のチャックピン12がそれぞれ当接し、基板Wが保持される。
【0015】
チャック回転駆動部13はモータを含む。回転軸14は、チャック回転駆動部13のモータの回転軸である。チャック回転駆動部13は、回転軸14が上方に向かって延びるように設置面SI上に設けられている。スピンベース11は、回転軸14の上端に水平姿勢で固定されている。スピンベース11上に基板Wが保持された状態でチャック回転駆動部13が動作する。それにより、基板Wが鉛直方向に延びる回転軸14の周りで回転する。
【0016】
スピンチャック10の側方の位置にブラシ押圧機構30が設けられている。ブラシ押圧機構30は、アーム駆動部31、回転軸32、アーム33およびブラシ駆動部34を含む。アーム駆動部31は、設置面SI上に取り付けられている。アーム駆動部31は、モータおよび昇降装置を含む。回転軸32は、アーム駆動部31から上方に延びるように設けられ、アーム駆動部31のモータにより鉛直方向の軸の周りで回転可能に支持されている。また、回転軸32は、アーム駆動部31の昇降装置により昇降可能に支持されている。
【0017】
回転軸32の上端部には、アーム33が水平方向に延びるように連結されている。アーム33の先端にブラシ駆動部34が設けられている。ブラシ駆動部34の下端部にはブラシBRが設けられている。ブラシBRは、例えば多孔質のPVA(ポリビニルアルコール)スポンジまたは砥粒が分散されたPVAスポンジにより形成され、基板Wの一面に接触可能な洗浄面を有する。
【0018】
ブラシ駆動部34は、モータおよび押圧装置を含む。ブラシBRは、ブラシ駆動部34のモータにより鉛直方向の軸の周りで回転可能に支持されている。また、ブラシBRは、ブラシ駆動部34の押圧装置により、後述する基板Wの一面の洗浄時に、予め定められた圧力でブラシ駆動部34の洗浄面を基板Wの一面に押圧することが可能に支持されている。
【0019】
上記の構成を有するブラシ押圧機構30においては、アーム駆動部31のモータが動作することにより、アーム33が水平面内で回転する。それにより、ブラシ駆動部34に設けられたブラシBRがスピンチャック10の上方の位置とスピンチャック10の上方の外側の位置との間で移動する。また、アーム駆動部31の昇降装置が動作することにより、アーム33が上昇または下降する。それにより、ブラシ駆動部34に設けられたブラシBRがアーム33とともに上昇または下降する。
【0020】
スピンチャック10に付随して液供給機構20が設けられている。液供給機構20は、洗浄液ノズル21、洗浄液供給系22、リンス液ノズル23およびリンス液供給系24を含む。洗浄液供給系22は、配管、ポンプおよびバルブ等の流体関連機器を含み、図示しない洗浄液供給源から洗浄液ノズル21に洗浄液を供給する。この場合、洗浄液ノズル21から洗浄液が吐出される。本実施の形態においては、洗浄液として、例えばBHF(バッファードフッ酸)、DHF(希フッ酸)、フッ酸、塩酸、硫酸、硝酸、リン酸、酢酸、シュウ酸またはアンモニア等の薬液が用いられる。また、洗浄液としては、さらに他の薬液として、アンモニアと過酸化水素水との混合溶液(SC1)または塩酸と過酸化水素水との混合溶液(SC2)等を用いることもできる。なお、洗浄液としては、上記の薬液に代えて、炭酸水、オゾン水、水素水、電解イオン水、または上記のいずれかの薬液と純水との混合液等が用いられてもよい。
【0021】
リンス液ノズル23は、配管、ポンプおよびバルブ等の流体関連機器を含み、図示しないリンス液供給源からリンス液ノズル23に洗浄液を供給する。この場合、リンス液ノズル23からリンス液が吐出される。本実施の形態においては、リンス液として、例えば純水が用いられる。なお、リンス液としては、純水に代えて、炭酸水、オゾン水、水素水または電解イオン水等が用いられてもよいし、HFE(ハイドロフルオロエーテル)またはIPA(イソプロピルアルコール)等の有機溶剤が用いられてもよい。
【0022】
制御部90は、例えばCPU(中央演算処理装置)およびメモリまたはマイクロコンピュータを含む。メモリには、基板洗浄プログラムが記憶されている。制御部90は、機能部として基板回転制御部91、液供給系制御部92およびブラシ制御部93を含む。これらの機能部は、制御部90のCPUがメモリに記憶された基板洗浄プログラムを実行することにより実現される。制御部90の機能部の一部または全部が電子回路等のハードウェアにより実現されてもよい。
【0023】
基板回転制御部91は、主として、基板洗浄装置SSRに基板Wが搬入された後基板洗浄装置SSRから基板Wが搬出されるまでの間、チャック回転駆動部13の動作を制御する。液供給系制御部92は、主として、基板Wの一面の洗浄時に洗浄液供給系22およびリンス液供給系24の動作を制御する。ブラシ制御部93は、主として、基板Wの一面の洗浄時にアーム駆動部31およびブラシ駆動部34の動作を制御する。
【0024】
上記の基板洗浄装置SSRにおける基本的な動作について説明する。初期状態で、ブラシBRは、スピンチャック10の側方の待機位置に保持されているものとする。まず、基板洗浄装置SSRには、一面(裏面)が上方に向けられた基板Wが水平姿勢で搬入される。基板洗浄装置SSRに搬入された基板Wは、基板Wの一面が上方を向いた状態でスピンチャック10により保持される。また、チャック回転駆動部13が動作することにより、基板Wが予め定められた回転速度で回転する。
【0025】
次に、洗浄液供給系22から洗浄液ノズル21を通して回転する基板Wの回転中心に洗浄液が供給される。それにより、基板W上に供給された洗浄液が遠心力により基板Wの一面全体に広がり、基板W上に液膜が形成される。換言すれば、基板Wの一面全体が洗浄液により湿潤する。
【0026】
次に、基板Wへの洗浄液の供給が継続または停止された状態で、ブラシ押圧機構30が動作する。それにより、待機位置に保持されていたブラシBRが基板Wの回転中心の上方の位置まで移動する。また、ブラシBRが鉛直方向の軸の周りで回転し、ブラシBRの洗浄面が予め定められた圧力で基板Wの一面における回転中心に押圧される。その後、ブラシBRが基板Wの一面上で、基板Wの回転中心から基板Wの外周端部に向けて移動する。これにより、基板Wの一面がブラシBRにより物理的に洗浄される。
【0027】
次に、回転する基板Wの一面上にリンス液が供給される。また、ブラシBRが待機位置に戻される。一定期間基板Wの一面にリンス液が供給された後、基板Wへのリンス液の供給が停止される。その後、基板Wが高速で回転される。それにより、基板W上に付着するリンス液の液滴が振り切られ、基板Wが乾燥する。最後に、基板Wの回転が停止され、洗浄後の乾燥した基板Wが基板洗浄装置SSRから搬出される。
【0028】
2.ブラシBRによる洗浄力の向上に関する検討
ブラシBRを用いて基板Wの一面を洗浄する洗浄方法の分野では、基板Wの一面に対するブラシBRの押圧力に応じて、ブラシBRによる基板Wの洗浄力(基板Wにおける汚染物質の除去能力)が変化することが知られている。
【0029】
通常、基板Wの一面に対するブラシBRの押圧力が高いほどブラシBRによる基板Wの洗浄力は大きくなり、基板Wの一面に対するブラシBRの押圧力が低いほどブラシBRによる基板Wの洗浄力は小さくなる。したがって、ブラシBRを用いて基板Wの一面を洗浄する場合には、より高い圧力でブラシBRの洗浄面を基板Wの一面に押圧することにより、洗浄後の基板Wの清浄度が向上すると考えらえる。
【0030】
しかしながら、基板Wの一面に対するブラシBRの押圧力が過剰に高くなると、基板Wのサイズおよび厚み等によっては、当該基板Wが変形したり、当該基板Wが破損したりする可能性がある。したがって、ブラシBRの押圧力を高くすることのみで向上させることが可能な洗浄力には限界がある。また、本発明者らは、複数の基板Wについて、互いに異なる複数の押圧力でブラシBRを用いてそれぞれ洗浄を行った。その後、互いに異なる押圧力で洗浄された複数の基板Wの清浄度を測定する試験を行った。その結果、押圧力がある一定の範囲を超えて大きくなると、押圧力の大きさが変化しても洗浄後の基板Wの清浄度は大きく変化しないことを確認した。
【0031】
これらの点を考慮して、本発明者らは、押圧力によらず基板Wの洗浄力を向上させるための条件について検討した。ブラシBRを用いた基板Wの一面の洗浄時には、ブラシBRが基板Wに接触することにより基板Wの一面が損傷しないように、基板Wの一面が洗浄液で湿潤している必要がある。
【0032】
従来、ブラシBRによる基板Wの洗浄時に、基板W上に処理液(洗浄液)の液膜の厚みが小さくなる領域があると、ブラシBRにより除去された汚染物質が基板W上に滞留し、基板Wの清浄度が低下すると考えられてきた。そのため、特許文献1では、ブラシBRによる基板Wの洗浄時に、基板Wの主面を単に湿潤させるだけでなく、基板Wの主面上に形成される処理液(洗浄液)の膜厚の低下を抑制する方法が提案されている。
【0033】
これに対して、本発明者らは、ブラシBRによる基板Wの洗浄のメカニズムを検討した結果、ブラシBRによる基板Wの洗浄時に基板W上に形成される洗浄液の液膜の厚みが大きいと、基板Wの洗浄力が低下する可能性があると考えた。
【0034】
図2は、
図1の基板洗浄装置SSRにおいて基板Wの一面が洗浄されるときのスピンチャック10およびその周辺部材の状態の一例を示す模式的側面図である。
図2および後述する
図3~
図10に示される模式的側面図では、ブラシBRと基板Wとの間の位置関係等が理解しやすいように、スピンチャック10により保持される基板Wにハッチングを付している。また、基板W上に洗浄液またはリンス液が供給されることにより基板W上に形成される洗浄液またはリンス液の液膜にドットパターンを付している。
【0035】
基板Wの一面の洗浄時には、例えば、
図2に太い一点鎖線の矢印で示すように、スピンチャック10の回転軸14が回転し、基板Wが水平姿勢で回転する。この状態で、洗浄液ノズル21から基板Wの回転中心の位置(以下、回転中心位置P1と呼ぶ。)に向けて洗浄液が供給される。それにより、回転する基板Wの一面上に洗浄液の液膜L1が形成される。なお、
図2に示される液膜L1は、基板Wの全体に渡ってほぼ同じ厚みを有するが、基板Wが回転している場合、液膜L1の厚みは、実際には、回転中心位置P1から基板Wの半径方向に遠ざかるにつれて漸次小さくなる。
【0036】
基板Wの一面上に液膜L1が形成された状態で、基板Wの一面にブラシBRの洗浄面が押し当てられる。このとき、ブラシBRの洗浄面は、鉛直方向の軸の周りで回転し、予め定められた圧力で基板Wの一面に押圧される。また、ブラシBRは、
図2に太い実線の矢印で示すように、基板Wの一面上で回転中心位置P1から基板Wの外周端部の位置(以下、外周端部位置P2と呼ぶ。)に向かって移動する。このとき、ブラシBRの洗浄面が基板Wの一面に対して接触しつつ移動することにより、基板Wの一面上に固着した汚染物質が、ブラシBRにより剥離され、洗浄液により洗い流される。
【0037】
ここで、基板Wの一面の洗浄時には基板Wが回転する。一方、ブラシBRは、基板Wの回転中心位置P1から外周端部位置P2にかけて直線状または円弧状の経路をたどって基板Wの一面上を移動する。また、ブラシBRは、基板Wの回転とは無関係に鉛直方向の軸の周りで回転する。それにより、ブラシBRによる基板Wの一面の洗浄時には、互いに対向するブラシBRの洗浄面と基板Wの一面とが相対的に移動および回転する。
【0038】
この場合、例えばブラシBRの洗浄面と基板Wの一面との間の境界部分に洗浄液が流れ込む際に、いわゆる水はけ不良により当該境界部分で洗浄液が円滑に流れないと、ブラシBRの洗浄面と基板Wの一面との間に洗浄液の層が形成される。このような現象は、ハイドロプレーン現象として知られている。以下の説明では、ハイドロプレーン現象の発生時にブラシBRの洗浄面と基板Wの一面との間に形成される洗浄液の層を、境界液層と呼ぶ。
【0039】
ブラシBRによる基板Wの一面の洗浄時にハイドロプレーン現象が発生することにより境界液層が形成されると、境界液層の厚みよりも小さいサイズを有する汚染物質は、ブラシBRにより物理的に除去することが難しいと考えられる。そこで、本発明者らは、ブラシBRによる基板Wの一面の洗浄時に形成される境界液層の厚みに応じてブラシBRによる基板Wの洗浄力が変化するメカニズムを推定した。
【0040】
図3~
図5は、境界液層の厚みに応じてブラシBRによる基板Wの洗浄力が変化するメカニズムを説明するための図である。
図3~
図5に示すように、基板Wの一面上に鉛直方向のサイズが異なる3つの汚染物質cn1,cn2,cn3が固着している場合を想定する。
【0041】
ブラシBRによる基板Wの一面の洗浄中に、比較的多量の洗浄液が基板Wの一面上に供給されると、
図3の例に示すように、基板W上に形成される液膜L1の厚みが大きくなる。この状態で、上記のハイドロプレーン現象が発生すると、単位時間あたりにブラシBRの洗浄面と基板Wの一面との間に流れ込む洗浄液の量が大きくなり、境界液層の厚みLt1が大きくなることが推定される。この場合、ブラシBRが基板W上で移動する際、ブラシBRの洗浄面は、厚みLt1よりも大きいサイズを有する汚染物質cn1に接触するが、厚みLt1よりも小さいサイズを有する汚染物質cn2,cn3には接触しない。それにより、厚みLt1よりも小さいサイズを有する汚染物質cn2,cn3は、ブラシBRにより除去されない。
【0042】
一方、ブラシBRによる基板Wの一面の洗浄中に、中程度の量の洗浄液が基板Wの一面上に供給されると、
図4の例に示すように、基板W上に形成される液膜L1の厚みは、
図3の例に比べてやや小さくなる。この状態で、上記のハイドロプレーン現象が発生すると、単位時間あたりにブラシBRの洗浄面と基板Wの一面との間に流れ込む洗浄液の量がやや小さくなり、境界液層の厚みLt2が
図3の例に比べてやや小さくなることが推定される。この場合、ブラシBRが基板W上で移動する際、ブラシBRの洗浄面は、厚みLt2よりも大きいサイズを有する汚染物質cn1,cn2に接触するが、厚みLt2よりも小さいサイズを有する汚染物質cn3には接触しない。それにより、厚みLt2よりも小さいサイズを有する汚染物質cn3は、ブラシBRにより除去されない。
【0043】
他方、ブラシBRによる基板Wの一面の洗浄中に、洗浄液が基板Wの一面上にほとんど供給されないと、
図5の例に示すように、基板W上に形成される液膜L1の厚みは、
図3の例に比べて著しく小さくなる。この状態で、上記のハイドロプレーン現象が発生すると、単位時間あたりにブラシBRの洗浄面と基板Wの一面との間に流れ込む洗浄液の量が著しく小さくなり、境界液層の厚みLt3が
図3の例に比べて十分に小さくなることが推定される。この場合、ブラシBRが基板W上で移動する際、ブラシBRの洗浄面は、厚みLt3よりも大きいサイズを有する汚染物質cn1,cn2,cn3に接触する。それにより、ハイドロプレーン現象が発生する場合でも、基板W上の大部分の汚染物質が除去される。
【0044】
本発明者らは、上記のように推定されるメカニズムから、洗浄液の液膜L1が形成された基板Wの一面にブラシBRを押圧する過程で、基板Wに供給される洗浄液の量を低減することにより洗浄力を向上させることが可能であると考えた。また、本発明者らは、上記のメカニズムに基づいて、ブラシBRによる基板Wの一面の洗浄力を向上させるために好適と考えられる複数の洗浄例を案出した。以下、複数の洗浄例について説明する。
【0045】
3.第1の洗浄例
以下の説明では、ブラシBRが押圧される前の回転する基板Wの一面上に洗浄液の液膜が形成される期間(いわゆるプリウェットに要する期間)を液膜形成期間と呼ぶ。また、液膜形成期間の後、回転する基板Wの一面上にブラシBRが押圧される期間をブラシ押圧移動期間と呼ぶ。また、ブラシ押圧移動期間の後、基板Wの一面上に残留する洗浄液および汚染物質を除去するために、回転する基板Wの一面上にリンス液が供給される期間をリンス期間と呼ぶ。さらに、リンス期間の後、基板Wへの洗浄液およびリンス液の供給が停止された状態で基板Wが高速回転されることにより基板Wが振り切り乾燥される期間を乾燥期間と呼ぶ。
【0046】
図6は、
図1の基板洗浄装置SSRによる基板Wの一面の第1の洗浄例を説明するための図である。
図6の上段には、第1の洗浄例において、基板Wの一面上に供給される洗浄液およびリンス液の流量の変化がタイムチャートで示される。
図6の上段のタイムチャートにおいては、横軸が時間を表し、縦軸が供給流量を表す。供給流量は、単位時間当たりに基板Wに供給される液の量である。さらに、そのタイムチャートにおいては、太い実線が
図1の洗浄液ノズル21から基板Wに供給される洗浄液の流量の経時的な変化を表し、太い一点鎖線が
図1のリンス液ノズル23から基板Wに供給される洗浄液の流量の経時的な変化を表す。
図6の下段には、第1の洗浄例の一部の期間または時点における基板Wおよびその周辺部の状態が、複数の吹き出し内に模式的側面図で示される。
【0047】
初期状態で、基板洗浄装置SSRに搬入された基板Wがスピンチャック10により保持され、所定の回転速度で回転しているものとする。
図1の基板回転制御部91は、後述する時点t01から時点t05にかけて、基板Wを水平姿勢で保持するとともに予め定められた回転速度で回転するようにチャック回転駆動部13を制御する。また、初期状態で、ブラシBRは待機位置にあるものとする。
【0048】
図6の上段に示すように、時点t01から時点t02にかけて、液膜形成期間が設定されている。その液膜形成期間においては、
図1の液供給系制御部92は、予め定められた基準流量rfで基板Wに洗浄液が供給されるように
図1の洗浄液供給系22を制御する。また、液供給系制御部92は、基板Wにリンス液が供給されないように
図1のリンス液供給系24を制御する。基準流量rfは、例えば基板Wのサイズおよび洗浄液の粘度を考慮した上で、実験またはシミュレーション等により予め定められた液膜形成期間内で少なくとも基板Wの一面全体に液膜が形成されるように設定される。これにより、
図6の下段の吹き出しb1内に示すように、液膜形成期間中、基板Wの一面上に洗浄液の液膜L1が形成される。
【0049】
次に、時点t02から時点t03にかけて、ブラシ押圧移動期間が設定されている。そのブラシ押圧移動期間においては、液供給系制御部92は、基板Wに洗浄液およびリンス液が供給されないように、洗浄液供給系22およびリンス液供給系24を制御する。
【0050】
一方、
図1のブラシ制御部93は、時点t02から時点t03にかけて、基板Wの一面上でブラシBRが回転中心位置P1から外周端部位置P2に移動するように、
図1のアーム駆動部31を制御する。また、ブラシ制御部93は、ブラシBRが鉛直方向の軸の周りで回転するとともにブラシBRの洗浄面が基板Wの一面に所定の圧力で押圧されるように、
図1のブラシ駆動部34を制御する。この場合、
図6の下段の吹き出しb2内に示すように、ブラシ押圧移動期間中は、液膜L1の厚みが液膜形成期間中の厚みよりも小さい状態で、基板Wの一面上にブラシBRが押圧される。それにより、ブラシ押圧移動期間中にハイドロプレーン現象が発生する場合でも、基板Wに供給される洗浄液の流量が基準流量rfで維持される場合に比べて基板Wの洗浄力が向上する。
【0051】
次に、時点t03から時点t04にかけて、リンス期間が設定されている。そのリンス期間においては、液供給系制御部92は、基準流量rfで基板Wにリンス液が供給されるようにリンス液供給系24を制御する。また、液供給系制御部92は、基板Wに洗浄液が供給されないように洗浄液供給系22を制御する。この場合、
図6の下段の吹き出しb3内に示すように、リンス期間中、基板Wの一面上にリンス液の液膜L2が形成される。なお、ブラシ制御部93は、リンス期間において、ブラシBRが待機位置に戻るようにアーム駆動部31を制御する。
【0052】
最後に、時点t04から時点t05にかけて、乾燥期間が設定されている。その乾燥期間においては、液供給系制御部92は、基板Wに洗浄液およびリンス液が供給されないように、洗浄液供給系22およびリンス液供給系24を制御する。これにより、基板W上のリンス液が振り切られ、基板Wが乾燥する。
【0053】
上記のように、第1の洗浄例によれば、ブラシ押圧移動期間中に、基板Wに洗浄液が供給されないので、ブラシBRによる基板Wの洗浄時に、基板W上に形成される洗浄液の液膜L1の厚みが大きくなることが抑制される。それにより、ブラシ押圧移動期間中に基板Wに基準流量rfで継続して洗浄液が供給される場合に比べて、ブラシBRによる基板Wの洗浄力が向上する。
【0054】
なお、第1の洗浄例においては、
図6の上段のグラフに太い点線で示すように、ブラシ押圧移動期間の開始時点t02から終了時点t03にかけて、基板Wに供給される洗浄液の流量を基準流量rfよりも小さい流量afで一定に維持してもよい。この場合においても、ブラシ押圧移動期間中に基板Wに基準流量rfで継続して洗浄液が供給される場合に比べて、ブラシBRによる基板Wの洗浄力が向上する。
【0055】
上記の流量afは、基板Wに対するブラシBRの押圧力、ブラシBRと基板Wとの間の相対速度および洗浄液の粘度等を考慮した上で、境界液層の厚みがより適切な厚みとなるように設定されることが好ましい。
【0056】
また、第1の洗浄例においては、リンス期間中に基板Wに供給されるリンス液の流量は、基準流量rfよりも小さくてもよいし、基準流量rfよりも大きくてもよい。
【0057】
4.第2の洗浄例
第2の洗浄例について、第1の洗浄例と異なる点を説明する。以下の説明では、ブラシ押圧移動期間中に回転中心位置P1から外周端部位置P2に移動するブラシBRの経路上の特定の位置を特定位置と呼ぶ。
【0058】
図7は、
図1の基板洗浄装置SSRによる基板Wの一面の第2の洗浄例を説明するための図である。
図7の上段には、
図6の上段の例と同様に、第2の洗浄例において、基板Wの一面上に供給される洗浄液およびリンス液の流量の変化がタイムチャートで示される。また、
図7の下段には、
図6の下段の例と同様に、第2の洗浄例の一部の期間または時点における基板Wおよびその周辺部の状態が、複数の吹き出し内に模式的側面図で示される。
【0059】
第2の洗浄例では、液供給系制御部92は、
図7の上段に示すように、時点t02から時点t03よりも前の時点taまでの間、基板Wに基準流量rfで継続して洗浄液が供給されるように、洗浄液供給系22を制御する。また、液供給系制御部92は、時点t02から時点taまでの間、基板Wにリンス液が供給されないようにリンス液供給系24を制御する。ここで、時点taは、ブラシ押圧移動期間中でブラシBRが特定位置P3に到達したときの時点である。この場合、
図7の下段の吹き出しb4,b5に示すように、ブラシBRが回転中心位置P1から特定位置P3に移動するまでの間は、液膜L1の厚みが液膜形成期間中の厚みとほぼ同じ状態で、基板Wの一面上にブラシBRが押圧される。
【0060】
その後、液供給系制御部92は、時点taから時点t03までの間、基板Wに洗浄液およびリンス液が供給されないように洗浄液供給系22およびリンス液供給系24を制御する。この場合、
図7の下段の吹き出しb6内に示すように、ブラシBRが特定位置P3から外周端部位置P2に移動するまでの間は、液膜L1の厚みが液膜形成期間中の厚みよりも小さい状態で、基板Wの一面上にブラシBRが押圧される。
【0061】
それにより、ブラシBRが特定位置P3から外周端部位置P2に移動するまでの間は、ハイドロプレーン現象が発生する場合でも、基板Wに供給される洗浄液の流量が基準流量rfで維持される場合に比べて基板Wの洗浄力が向上する。
【0062】
上記のように、第2の洗浄例によれば、ブラシ押圧移動期間中の一部の期間に、基板Wに洗浄液が供給されないので、当該一部の期間において基板W上に形成される洗浄液の液膜L1の厚みが大きくなることが抑制される。それにより、ブラシ押圧移動期間中の一部の期間で、ブラシBRによる基板Wの洗浄力が向上する。したがって、特定位置P3を適切に定めることにより、基板Wの一面の一部においてブラシBRによる洗浄力を局所的に向上させることができる。
【0063】
特定位置P3は、例えば、基板Wの半径方向における回転中心位置P1と外周端部位置P2との間の中間位置に設定されてもよい。あるいは、特定位置P3は、基板Wの半径方向における中間位置よりも基板Wの外周端部に近い位置に設定されてもよい。これらの場合、少なくとも基板Wの外周端部近傍の領域でブラシBRによる基板Wの洗浄力を向上させることができる。
【0064】
なお、第2の洗浄例においては、
図7の上段のグラフに太い点線で示すように、ブラシ押圧移動期間中の時点taから終了時点t03にかけて、基板Wに供給される洗浄液の流量を連続的に低下させてもよい。この場合においても、時点taから時点t03の間は、ブラシ押圧移動期間中に基板Wに基準流量rfで継続して洗浄液が供給される場合に比べて、ブラシBRによる基板Wの洗浄力が向上する。
【0065】
5.第3の洗浄例
第3の洗浄例について、第2の洗浄例と異なる点を説明する。
図8は、
図1の基板洗浄装置SSRによる基板Wの一面の第3の洗浄例を説明するための図である。
図8の上段には、
図6の上段の例と同様に、第3の洗浄例において、基板Wの一面上に供給される洗浄液およびリンス液の流量の変化がタイムチャートで示される。また、
図8の下段には、
図6の下段の例と同様に、第3の洗浄例の一部の期間または時点における基板Wおよびその周辺部の状態が、複数の吹き出し内に模式的側面図で示される。
【0066】
第3の洗浄例では、液供給系制御部92は、
図8の上段に示すように、時点t02から時点taまでの間、基板Wに基準流量rfよりも小さい流量afで洗浄液が供給されるように、洗浄液供給系22を制御する。この場合、
図8の下段の吹き出しb7~b9に示すように、ブラシBRが回転中心位置P1から特定位置P3に移動するまでの間に、液膜L1の厚みが時点t02,taの順で段階的に小さくなる。これにより、ブラシBRによる基板Wの洗浄力が、基板Wの半径方向における複数の領域で順次調整される。
【0067】
なお、第3の洗浄例においては、
図8の上段のグラフに太い点線で示すように、ブラシ押圧移動期間の開始時点t02から終了時点t03にかけて、基板Wに供給される洗浄液の流量を連続的に低下させてもよい。この場合においても、ブラシ押圧移動期間中に基板Wに基準流量rfで継続して洗浄液が供給される場合に比べて、ブラシBRによる基板Wの洗浄力が向上する。
【0068】
6.第4の洗浄例
第4の洗浄例について、第1の洗浄例と異なる点を説明する。第4の洗浄例においては、ブラシBRによる基板Wの一面の洗浄時に、ブラシBRが複数回(本例では2回)にわたって基板Wの一面上に押圧されつつ移動する。具体的には、ブラシBRは、回転する基板Wの一面に押圧されつつ回転中心位置P1から外周端部位置P2にかけて移動する。次に、基板Wから離間するようにブラシBRが外周端部位置P2の上方の位置に移動し、回転中心位置P1の上方の位置に向かって移動する。ブラシBRが回転中心位置P1の上方の位置に到達すると、ブラシBRが再び基板Wの一面に押圧される。その後、ブラシBRは、回転する基板Wの一面に押圧されつつ回転中心位置P1から外周端部位置P2にかけて移動する。以下の説明では、ブラシBRが基板Wから離間しつつ基板Wの外周端部位置P2から回転中心位置P1まで移動する期間をブラシ離間移動期間と呼ぶ。
【0069】
図9は、
図1の基板洗浄装置SSRによる基板Wの一面の第4の洗浄例を説明するための図である。
図9の上段には、
図6の上段の例と同様に、第4の洗浄例において、基板Wの一面上に供給される洗浄液およびリンス液の流量の変化がタイムチャートで示される。また、
図9の下段には、
図6の下段の例と同様に、第4の洗浄例の一部の期間または時点における基板Wおよびその周辺部の状態が、複数の吹き出し内に模式的側面図で示される。
【0070】
第4の洗浄例では、
図9の上段に示すように、液膜形成期間、ブラシ押圧移動期間、ブラシ離間移動期間、ブラシ押圧移動期間、リンス期間および乾燥期間がこの順で設定されている。このように、第4の洗浄例においては、時間軸上でブラシ離間移動期間を挟んで2つのブラシ押圧移動期間が並ぶように設定される。
【0071】
まず、第4の洗浄例では、液膜形成期間の開始時点t01から第1番目のブラシ押圧移動期間の終了時点t03までの間、第1の洗浄例と同じ動作が行われる。これにより、第1番目のブラシ押圧移動期間においては、基板Wに洗浄液が供給されない。それにより、
図9の下段の吹き出しb10に示すように、ブラシBRが基板Wの一面に押圧される間、基板Wの一面上に形成される液膜L1の厚みを小さくすることができる。したがって、高い洗浄力で基板Wの一面が洗浄される。
【0072】
次に、ブラシ制御部93は、時点t03から時点t04にかけて、ブラシBRが基板Wから離間しつつ外周端部位置P2から回転中心位置P1に向かって移動するように、アーム駆動部31を制御する。このとき、液供給系制御部92は、基準流量rfで基板Wに洗浄液が供給されるように洗浄液供給系22を制御する。それにより、
図9の下段の吹き出しb11に示すように、ブラシBRが基板Wから離間している間、液膜L1の厚みが大きくなる。したがって、第1番目のブラシ押圧移動期間にブラシBRにより基板W上から剥離された汚染物質が基板W上に残留する場合でも、その汚染物質が多量の洗浄液により洗い流される。
【0073】
次に、時点t04で、ブラシBRが回転中心位置P1上に到達すると、ブラシBRが再度基板Wの一面に押圧される。また、時点t04から時点t05にかけて第1番目のブラシ押圧移動期間と同じ動作(ブラシBRの移動)が繰り返される。さらに、このとき基板Wに洗浄液が供給されない。それにより、
図9の下段の吹き出しb12に示すように、ブラシBRが基板Wの一面に押圧される間、基板Wの一面上に形成される液膜L1の厚みを小さくすることができる。
【0074】
その後、時点t05から時点t06にかけて第1の洗浄例のリンス期間(
図6の時点t03から時点t04までの期間)と同様の動作が行われる。また、時点t06から時点t07にかけて第1の洗浄例の乾燥期間(
図6の時点t04から時点t05までの期間)と同じ動作が行われる。
【0075】
上記のように、第4の洗浄例によれば、第1の洗浄例と同様に、ブラシ押圧移動期間中に、基板Wに洗浄液が供給されない。それにより、ブラシBRによる基板Wの洗浄時に、基板W上に形成される洗浄液の液膜L1の厚みが大きくなることが抑制される。それにより、ブラシ押圧移動期間中に基板Wに基準流量rfで継続して洗浄液が供給される場合に比べて、ブラシBRによる基板Wの洗浄力が向上する。また、第4の洗浄例においては、基板Wの一面が複数回に渡ってブラシBRにより繰り返し洗浄される。したがって、洗浄後の基板Wの一面の清浄度がさらに向上する。
【0076】
さらに、第4の洗浄例においてはブラシ離間移動期間中に、基板Wに洗浄液が供給される。したがって、ブラシ押圧移動期間がブラシ離間移動期間を挟んで複数回繰り返される場合でも、基板Wの一面が乾燥することが防止される。
【0077】
なお、
図9の例では、第4の洗浄例として、時間軸上で1つのブラシ離間移動期間を挟んで2つのブラシ押圧移動期間が設定されるが、第4の洗浄例においては、3または4以上のブラシ押圧移動期間が設定されてもよい。この場合、時間軸上で隣り合う各2つのブラシ押圧移動期間の間に1つのブラシ離間移動期間が設定される。また、第4の洗浄例においては、ブラシ離間移動期間中、基準流量rfよりも低く0よりも大きい流量で基板Wに洗浄液が供給されてもよい。
【0078】
7.第5の洗浄例
第5の洗浄例について、第4の洗浄例と異なる点を説明する。
図10は、
図1の基板洗浄装置SSRによる基板Wの一面の第5の洗浄例を説明するための図である。
図10の上段には、
図6の上段の例と同様に、第5の洗浄例において、基板Wの一面上に供給される洗浄液およびリンス液の流量の変化がタイムチャートで示される。また、
図10の下段には、
図6の下段の例と同様に、第5の洗浄例の一部の期間または時点における基板Wおよびその周辺部の状態が、複数の吹き出し内に模式的側面図で示される。
【0079】
第5の洗浄例においては、
図10の上段に示すように、液膜形成期間、ブラシ押圧移動期間、ブラシ離間移動期間、ブラシ押圧移動期間、リンス期間および乾燥期間がこの順で設定されている。これらの複数の期間の設定順序は、第4の洗浄例と同じである。しかしながら、第5の洗浄例では、第1番目のブラシ押圧移動期間および第2番目のブラシ押圧移動期間中に基板Wに洗浄液が供給される点が第4の洗浄例とは異なる。
【0080】
具体的には、第1番目のブラシ押圧移動期間においては、液供給系制御部92は、基板Wに基準流量rfよりも小さい流量afで洗浄液が供給されるように、洗浄液供給系22を制御する。また、第2番目のブラシ押圧移動期間においては、液供給系制御部92は、基板Wに基準流量rfよりも大きい流量bfで洗浄液が供給されるように、洗浄液供給系22を制御する。
【0081】
この場合、第1番目のブラシ押圧移動期間においては、
図10の下段の吹き出しb13に示すように、基板Wに供給される洗浄液の流量が基準流量rfで維持される場合に比べて液膜L1の厚みが小さくなる。それにより、ブラシ押圧移動期間中に基板Wに基準流量rfで継続して洗浄液が供給される場合に比べて、ブラシBRによる基板Wの洗浄力が向上する。
【0082】
その後、ブラシ離間移動期間においては、
図10の下段の吹き出しb14に示すように、基板Wに基準流量rfの洗浄液が供給されるので、第1番目のブラシ押圧移動期間に基板Wから剥離されかつ基板W上に残留する汚染物質が、洗浄液により洗い流される。
【0083】
さらに、第2番目のブラシ押圧移動期間においては、
図10の下段の吹き出しb15に示すように、基板Wに供給される洗浄液の流量が基準流量rfで維持される場合に比べて液膜L1の厚みがさらに大きくなる。それにより、第1番目のブラシ押圧移動期間に基板Wから剥離されかつ基板W上に残留する汚染物質が、多量の洗浄液により円滑に洗い流される。また、このとき、ブラシBRに付着する汚染物質も洗浄液により洗い流される。
【0084】
なお、第5の洗浄例においては、ブラシ離間移動期間中に基板Wに供給される洗浄液の流量は、基準流量rfよりも大きくてもよいし、基準流量rfよりも小さくてもよい。また、第5の洗浄例においては、第2番目のブラシ押圧移動期間中に基板Wに供給される洗浄液の流量bfは、第1番目のブラシ押圧移動期間中に基板Wに供給される洗浄液の流量afよりも大きければよい。したがって、第2番目のブラシ押圧移動期間中に基板Wに供給される洗浄液の流量は、基準流量rfよりも大きくてもよいし、基準流量rfよりも小さくてもよい。
【0085】
8.確認試験
本発明者らは、ブラシ押圧移動期間中に基板Wに供給される洗浄液の流量と、ブラシBRによる基板Wの洗浄力との関係を確認するために、複数の確認試験を行った。複数の確認試験の各々は、基本的に以下の流れで行った。
【0086】
まず、一面に所定量の汚染物質が付着した試験用基板を用意する。続いて、
図1の基板洗浄装置SSRを用いて各確認試験に対応する洗浄方法で試験用基板を洗浄する。その後、洗浄後の各試験用基板が、洗浄前の汚染状態からどの程度清浄になったかを汚染の除去率として測定する。除去率が高いほど、ブラシBRによる基板Wの洗浄力が高く、洗浄後の試験用基板の清浄度が高いといえる。この測定はパーティクルカウンタを用いて行うことができる。以下、各確認試験に対応する洗浄方法とその試験結果について説明する。
【0087】
(a)第1の確認試験
第1の確認試験では、膜形成期間、ブラシ押圧移動期間、リンス期間および乾燥期間をこの順で設定し、設定された順に従って、ブラシBRによる試験用基板の洗浄処理を行った。ここで、第1の確認試験においては、ブラシ押圧移動期間中、試験用基板の一面上に薬液と純水との混合液を洗浄液として供給した。薬液の供給流量を400mL/minとし、純水の供給流量を400mL/minとした。したがって、薬液と純水との混合液の供給流量(合計の流量)は、800mL/minであった。
【0088】
(b)第2の確認試験
第2の確認試験では、ブラシ押圧移動期間中に試験用基板に供給される薬液および純水の供給流量が異なる点を除いて第1の確認試験と同じ方法で、ブラシBRによる試験用基板の洗浄処理を行った。第2の確認試験においては、ブラシ押圧移動期間中、薬液の供給流量を200mL/minとし、純水の供給流量を200mL/minとした。したがって、薬液と純水との混合液の供給流量(合計の流量)は、400mL/minであった。
【0089】
(c)第1の確認試験および第2の確認試験の結果
第1の確認試験の結果、洗浄後の試験用基板に残留する汚染物質のカウントに基づいて測定された汚染の除去率は71%であった。一方、第2の確認試験の結果、洗浄後の試験用基板に残留する汚染物質のカウントに基づいて測定された汚染の除去率は82%であった。これにより、ブラシ押圧移動期間中に試験用基板に供給される洗浄液(本件では、薬液および純水の混合液)の流量が小さいほど、洗浄力が向上することが確認された。
【0090】
(d)第3の確認試験
第3の確認試験では、膜形成期間、ブラシ押圧移動期間、リンス期間および乾燥期間をこの順で設定し、設定された順に従って、ブラシBRによる試験用基板の洗浄処理を行った。ここで、第3の確認試験においては、ブラシ押圧移動期間中、試験用基板の一面上に薬液を洗浄液として供給した。薬液の供給流量を400mL/minとした。
【0091】
(e)第4の確認試験
第4の確認試験では、ブラシ押圧移動期間中に試験用基板に供給される薬液の供給流量が異なる点を除いて第3の確認試験と同じ方法で、ブラシBRによる試験用基板の洗浄処理を行った。第3の確認試験においては、ブラシ押圧移動期間中、薬液の供給流量を200mL/minとした。
【0092】
(f)第3の確認試験および第4の確認試験の結果
第3の確認試験の結果、洗浄後の試験用基板に残留する汚染物質のカウントに基づいて測定された汚染の除去率は88%であった。一方、第4の確認試験の結果、洗浄後の試験用基板に残留する汚染物質のカウントに基づいて測定された汚染の除去率は91%であった。これにより、ブラシ押圧移動期間中に試験用基板に供給される洗浄液(本件では、薬液)の流量が小さいほど、洗浄力が向上することが確認された。
【0093】
(g)第5の確認試験
第5の確認試験では、膜形成期間、ブラシ押圧移動期間、リンス期間および乾燥期間をこの順で設定し、設定された順に従って、ブラシBRによる試験用基板の洗浄処理を行った。ここで、第5の確認試験においては、ブラシ押圧移動期間中、試験用基板の一面上に継続して一定量の薬液を洗浄液として供給した。
【0094】
(h)第6の確認試験
第6の確認試験では、ブラシ押圧移動期間の途中で試験用基板に供給される洗浄液の供給流量を0とした点を除いて第5の確認試験と同じ方法で、ブラシBRによる試験用基板の洗浄処理を行った。
【0095】
(i)第5の確認試験および第6の確認試験の結果
第5の確認試験の結果、洗浄後の試験用基板に残留する汚染物質のカウントに基づいて測定された汚染の除去率は65%であった。一方、第6の確認試験の結果、洗浄後の試験用基板に残留する汚染物質のカウントに基づいて測定された汚染の除去率は74%であった。また、第6の確認試験に係る試験用基板においては、洗浄液の供給停止後にブラシBRで押圧された領域に残留する汚染物質の量が他の領域上に残留する汚染物質の量に比べて十分に少ないことが確認された。これにより、ブラシ押圧移動期間中に試験用基板に供給される洗浄液(本件では、薬液)の流量が小さいほど、洗浄力が向上することが確認された。
【0096】
(j)第7の確認試験
第7の確認試験では、膜形成期間、ブラシ押圧移動期間、ブラシ離間移動期間、ブラシ押圧移動期間、リンス期間および乾燥期間をこの順で設定し、設定された順に従って、ブラシBRによる試験用基板の洗浄処理を行った。ここで、第7の確認試験においては、各ブラシ押圧移動期間中、試験用基板の一面上に継続して一定量の薬液を洗浄液として供給した。
【0097】
(k)第8の確認試験
第8の確認試験では、各ブラシ押圧移動期間の途中で試験用基板に供給される洗浄液の供給流量を0とした点を除いて第7の確認試験と同じ方法で、ブラシBRによる試験用基板の洗浄処理を行った。
【0098】
(l)第7の確認試験および第8の確認試験の結果
第7の確認試験の結果、洗浄後の試験用基板に残留する汚染物質のカウントに基づいて測定された汚染の除去率は74%であった。一方、第8の確認試験の結果、洗浄後の試験用基板に残留する汚染物質のカウントに基づいて測定された汚染の除去率は80%であった。また、第8の確認試験に係る試験用基板においては、洗浄液の供給停止後にブラシBRで押圧された領域に残留する汚染物質の量が他の領域上に残留する汚染物質の量に比べて十分に少ないことが確認された。これにより、ブラシ押圧移動期間中に試験用基板に供給される洗浄液(本件では、薬液)の流量が小さいほど、洗浄力が向上することが確認された。
【0099】
9.実施の形態の効果
本実施の形態に係る基板洗浄装置SSRにおいては、搬入された基板Wがスピンチャック10により水平姿勢で保持される。また、基板Wがスピンチャック10により鉛直方向に平行な軸の周りで回転する。基板Wの一面上に基準流量rfで洗浄液が供給される。それにより、基板Wの一面上に洗浄液の液膜L1が形成される。その後、ブラシ押圧移動期間中、スピンチャック10により回転する基板Wの一面にブラシBRが押圧され、基板Wの一面が洗浄される。
【0100】
ブラシ押圧移動期間のうち少なくとも一部の期間中に、基板Wの一面に供給される洗浄液の流量が基準流量rfよりも低くなるか、または基板Wの一面に洗浄液が供給されない。この場合、ブラシBRと基板Wの一面との間でハイドロプレーン現象が発生することにより、ブラシBRと基板Wの一面との間に境界液層が形成される場合でも、基板Wの一面に基準流量rfで洗浄液が供給される場合に比べて、その境界液層の厚みを小さくすることができる。それにより、ブラシBRによる基板Wの一面の洗浄力が向上する。その結果、洗浄後の基板Wの一面の清浄度が向上する。さらに、上記の構成によれば、基板Wの洗浄に用いる洗浄液の量を低減することができる。したがって、洗浄液の消費量を低減することができる。
【0101】
なお、液膜形成期間中は、ブラシBRが基板Wに押圧されないのでハイドロプレーン現象の発生を考慮する必要がない。したがって、液膜形成期間中に基板Wに供給される洗浄液の基準流量rfは、基板Wの回転速度および洗浄液の粘度等を考慮しつつ液膜形成期間を可能な限り短縮できるように設定されることが好ましい。液膜形成期間が短縮されることにより、基板Wの洗浄処理のスループットが向上する。
【0102】
10.他の実施の形態
(a)上記実施の形態に係る基板洗浄装置SSRにおいては、液膜形成期間に基板Wに洗浄液が供給されるが、本発明はこれに限定されない。液膜形成期間には、基板Wに洗浄液に代えてリンス液が供給されてもよい。
【0103】
(b)上記実施の形態に係る基板洗浄装置SSRにおいては、基板Wの一面の洗浄時にブラシBRが鉛直方向の軸の周りで回転する(自転する)が本発明はこれに限定されない。ブラシBRは、基板Wの一面の洗浄時に鉛直方向の軸の周りで回転しなくてもよい。
【0104】
(c)上記実施の形態に係る基板洗浄装置SSRにおいては、ブラシ押圧移動期間中に基板Wの回転速度が適宜変更されてもよい。例えば、ブラシBRが回転中心位置P1から外周端部位置P2に向かって移動するにつれて基板Wの回転速度が連続的または段階的に低下してもよい。あるいは、ブラシBRが回転中心位置P1から外周端部位置P2に向かって移動するにつれて基板Wの回転速度が連続的または段階的に上昇してもよい。
【0105】
(d)上記実施の形態に係る基板洗浄装置SSRにおいては、基板Wの非回路形成面(裏面)が洗浄されるが、本発明はこれに限定されない。洗浄対象となる基板Wが、ベアウェハ等の回路が未形成の基板である場合には、基板洗浄装置SSRにおいてブラシBRにより基板Wの回路形成面(表面)が洗浄されてもよい。
【0106】
(e)上記実施の形態に係る基板洗浄装置1においては、処理対象となる基板Wは、ノッチを除いて円形状を有するが、基板Wは矩形状を有してもよい。
【0107】
11.請求項の各構成要素と実施の形態の各部との対応関係
以下、請求項の各構成要素と実施の形態の各要素との対応の例について説明するが、本発明は下記の例に限定されない。請求項の各構成要素として、請求項に記載されている構成または機能を有する他の種々の要素を用いることもできる。
【0108】
上記実施の形態においては、基板洗浄装置SSRが基板洗浄装置の例であり、スピンチャック10が回転保持部の例であり、洗浄液ノズル21および洗浄液供給系22が液供給部の例であり、ブラシBRがブラシの例であり、ブラシ押圧移動期間が押圧期間の例であり、ブラシ押圧機構30がブラシ押圧機構の例であり、基準流量rfが基準流量の例であり、特定位置P3が特定位置の例であり、ブラシ離間移動期間が非押圧期間の例である。
【0109】
また、
図9および
図10の複数のブラシ押圧移動期間が複数の押圧期間の例であり、
図10の2つのブラシ押圧移動期間が第1の押圧期間および第2の押圧期間の例であり、
図10の流量afが第1の流量の例であり、
図10の流量bfが第2の流量の例である。
【0110】
12.実施の形態の総括
(第1項)第1項に係る基板洗浄装置は、
基板の一面を洗浄する基板洗浄装置であって、
前記基板を保持しつつ回転させる回転保持部と、
前記回転保持部により保持されて回転する前記基板の前記一面上に洗浄液を供給する液供給部と、
ブラシと、
予め定められた押圧期間中、前記ブラシを前記回転保持部により保持されて回転する前記基板の前記一面に向けて押圧するブラシ押圧機構とを備え、
前記液供給部は、
前記押圧期間の前に、前記基板の前記一面上に予め定められた基準流量で洗浄液を供給し、
前記押圧期間のうち少なくとも一部の期間中、前記基板の前記一面上に前記基準流量よりも小さい流量で洗浄液を供給するか、または洗浄液の供給を停止する。
【0111】
その基板洗浄装置においては、押圧期間の前に、基板の一面上に基準流量で洗浄液が供給される。それにより、基板の一面上に洗浄液の液膜が形成される。その後、押圧期間中、回転保持部により回転する基板の一面にブラシが押圧され、基板の一面が洗浄される。
【0112】
押圧期間のうち少なくとも一部の期間中に、基板の一面に供給される洗浄液の流量が基準流量よりも低くなるか、または基板の一面に洗浄液が供給されない。この場合、ブラシと基板の一面との間に洗浄液の層が形成される場合でも、基板の一面に基準流量で洗浄液が供給される場合に比べて、その洗浄液の層の厚みを小さくすることができる。それにより、ブラシによる基板の一面の洗浄力が向上する。その結果、洗浄後の基板の一面の清浄度が向上する。
【0113】
さらに、上記の構成によれば、基板の洗浄に用いる洗浄液の量を低減することができる。したがって、洗浄液の消費量を低減することができる。
【0114】
(第2項)第1項に記載の基板洗浄装置において、
前記ブラシ押圧機構は、前記押圧期間中、前記ブラシを前記基板の前記一面に向けて押圧しつつ当該ブラシを前記回転保持部により保持されて回転する前記基板の回転中心から前記基板の外周端部に向けて移動させ、
前記液供給部は、前記押圧時間中、前記洗浄液の供給を停止してもよい。
【0115】
この場合、押圧期間において、ブラシによる基板の一面の洗浄力がより向上する。その結果、洗浄後の基板の一面の清浄度がより向上する。
【0116】
(第3項)第1項に記載の基板洗浄装置において、
前記ブラシ押圧機構は、前記押圧期間中、前記ブラシを前記基板の前記一面に向けて押圧しつつ当該ブラシを前記回転保持部により保持されて回転する前記基板の回転中心から前記基板の外周端部に向けて移動させ、
前記液供給部は、
前記押圧期間の開始時点から前記ブラシが前記回転中心から前記回転中心と前記外周端部との間の特定位置に到達するまでの間、前記一面上に洗浄液を供給し、
前記ブラシが前記特定位置に到達した時点から前記押圧期間の終了時点までの間、前記洗浄液の供給を停止してもよい。
【0117】
この場合、基板の一面のうち洗浄液が供給されずにブラシが押圧される領域において、ブラシによる洗浄力がより向上する。その結果、洗浄後の基板の一面のうち少なくとも外周端部を含む領域の清浄度がより向上する。
【0118】
(第4項)第1項に記載の基板洗浄装置において、
前記押圧期間は、時間軸上で順に並ぶ複数の押圧期間を含み、
前記複数の押圧期間のうち時間軸上で隣り合う各2つの押圧期間の間には、予め定められた非押圧期間が設定され、
前記ブラシ押圧機構は、
各押圧期間中、前記ブラシを前記基板の前記一面に向けて押圧しつつ当該ブラシを前記回転保持部により保持されて回転する前記基板の回転中心から前記基板の外周端部に向けて移動させ、
各非押圧期間中、前記ブラシを前記基板の前記一面から離間させつつ当該ブラシを前記外周端部から前記回転中心に向けて移動させ、
前記液供給部は、
各押圧期間中、前記洗浄液の供給を停止し、
各非押圧期間中、前記基板の前記一面上に洗浄液を供給してもよい。
【0119】
この場合、各押圧期間において、ブラシによる基板の一面の洗浄力がより向上する。さらに、基板の一面が複数回ブラシにより洗浄される。その結果、洗浄後の基板の一面の清浄度がさらに向上する。
【0120】
(第5項)第1項に記載の基板洗浄装置において、
前記押圧期間は、時間軸上で順に並ぶ第1の押圧期間および第2の押圧期間を含み、
前記第1の押圧期間および前記第2の押圧期間の間には、予め定められた非押圧期間が設定され、
前記ブラシ押圧機構は、
前記第1の押圧期間および前記第2の押圧期間の各々の期間中、前記ブラシを前記基板の前記一面に向けて押圧しつつ、当該ブラシを、前記回転保持部により保持されて回転する前記基板の回転中心から前記基板の外周端部に向けて移動させ、
前記非押圧期間中、前記ブラシを前記基板の前記一面から離間させつつ当該ブラシを前記外周端部から前記回転中心に向けて移動させ、
前記液供給部は、
前記第1の押圧期間中、前記基板の前記一面上に前記基準流量よりも小さい第1の流量で洗浄液を供給し、
前記第2の押圧期間中、前記基板の前記一面上に前記第1の流量よりも大きい第2の流量で洗浄液を供給してもよい。
【0121】
この場合、第1の押圧期間において、基板の一面上に第1の流量で洗浄液が供給されるので、ブラシによる基板の一面の洗浄力がより向上する。その後、第2の押圧期間では、基板の一面上に第1の流量よりも大きい第2の流量で洗浄液が供給される。それにより、第1の押圧期間中にブラシにより剥離された汚染物質が基板の一面上に残留する場合でも、それらの汚染物質が多量の洗浄液により円滑に洗い流される。その結果、洗浄後の基板の一面の清浄度がさらに向上する。
【0122】
(第6項)第6項に記載の基板洗浄方法は、
基板の一面を洗浄する基板洗浄方法であって、
回転保持部により前記基板を保持しつつ回転させるステップと、
前記回転保持部により保持されて回転する前記基板の前記一面上に洗浄液を供給するステップと、
予め定められた押圧期間中、ブラシを前記回転保持部により保持されて回転する前記基板の前記一面に向けて押圧するステップとを含み、
前記洗浄液を供給するステップは、
前記押圧期間の前に、前記基板の前記一面上に予め定められた基準流量で洗浄液を供給することと、
前記押圧期間のうち少なくとも一部の期間中、前記基板の前記一面上に前記基準流量よりも小さい流量で洗浄液を供給するか、または洗浄液の供給を停止することとを含む。
【0123】
その基板洗浄方法においては、押圧期間の前に、基板の一面上に基準流量で洗浄液が供給される。それにより、基板の一面上に洗浄液の液膜が形成される。その後、押圧期間中、回転保持部により回転する基板の一面にブラシが押圧され、基板の一面が洗浄される。
【0124】
押圧期間のうち少なくとも一部の期間中に、基板の一面に供給される洗浄液の流量が基準流量よりも低くなるか、または基板の一面に洗浄液が供給されない。この場合、ブラシと基板の一面との間に洗浄液の層が形成される場合でも、基板の一面に基準流量で洗浄液が供給される場合に比べて、その洗浄液の層の厚みを小さくすることができる。それにより、ブラシによる基板の一面の洗浄力が向上する。その結果、洗浄後の基板の一面の清浄度が向上する。
【0125】
さらに、上記の構成によれば、基板の洗浄に用いる洗浄液の量を低減することができる。したがって、洗浄液の消費量を低減することができる。
【0126】
(第7項)第6項に記載の基板洗浄方法において、
前記押圧するステップは、前記押圧期間中、前記ブラシを前記基板の前記一面に向けて押圧しつつ当該ブラシを前記回転保持部により保持されて回転する前記基板の回転中心から前記基板の外周端部に向けて移動させることを含み、
前記洗浄液を供給するステップは、前記押圧時間中、前記洗浄液の供給を停止することを含んでもよい。
【0127】
この場合、押圧期間において、ブラシによる基板の一面の洗浄力がより向上する。その結果、洗浄後の基板の一面の清浄度がより向上する。
【0128】
(第8項)第6項に記載の基板洗浄方法において、
前記押圧するステップは、前記押圧期間中、前記ブラシを前記基板の前記一面に向けて押圧しつつ当該ブラシを前記回転保持部により保持されて回転する前記基板の回転中心から前記基板の外周端部に向けて移動させることを含み、
前記洗浄液を供給するステップは、
前記押圧期間の開始時点から前記ブラシが前記回転中心から前記回転中心と前記外周端部との間の特定位置に到達するまでの間、前記一面上に洗浄液を供給することと、
前記ブラシが前記特定位置に到達した時点から前記押圧期間の終了時点までの間、前記洗浄液の供給を停止することとを含む、請求項6記載の基板洗浄方法。
【0129】
この場合、基板の一面のうち洗浄液が供給されずにブラシが押圧される領域において、ブラシによる洗浄力がより向上する。その結果、洗浄後の基板の一面のうち少なくとも外周端部を含む領域の清浄度がより向上する。
【0130】
(第9項)第6項に記載の基板洗浄方法において、
前記押圧期間は、時間軸上で順に並ぶ複数の押圧期間を含み、
前記複数の押圧期間のうち時間軸上で隣り合う各2つの押圧期間の間には、予め定められた非押圧期間が設定され、
前記押圧するステップは、
各押圧期間中、前記ブラシを前記基板の前記一面に向けて押圧しつつ、当該ブラシを、前記回転保持部により保持されて回転する前記基板の回転中心から前記基板の外周端部に向けて移動させることと、
各非押圧期間中、前記ブラシを前記基板の前記一面から離間させつつ前記ブラシを前記外周端部から前記回転中心に向けて移動させることとを含み、
前記洗浄液を供給するステップは、
各押圧期間中、前記洗浄液の供給を停止することと、
各非押圧期間中、前記基板の前記一面上に洗浄液を供給することとを含んでもよい。
【0131】
この場合、各押圧期間において、ブラシによる基板の一面の洗浄力がより向上する。さらに、基板の一面が複数回ブラシにより洗浄される。その結果、洗浄後の基板の一面の清浄度がさらに向上する。
【0132】
(第10項)第6項に記載の基板洗浄方法において、
前記押圧期間は、時間軸上で順に並ぶ第1の押圧期間および第2の押圧期間を含み、
前記第1の押圧期間および前記第2の押圧期間の間には、予め定められた非押圧期間が設定され、
前記押圧するステップは、
前記第1の押圧期間および前記第2の押圧期間の各々の期間中、前記ブラシを前記基板の前記一面に向けて押圧しつつ当該ブラシを前記回転保持部により保持されて回転する前記基板の回転中心から前記基板の外周端部に向けて移動させることと、
前記非押圧期間中、前記ブラシを前記基板の前記一面から離間させつつ前記ブラシを前記外周端部から前記回転中心に向けて移動させることとを含み、
前記洗浄液を供給するステップは、
前記第1の押圧期間中、前記基板の前記一面上に前記基準流量よりも小さい第1の流量で洗浄液を供給することと、
前記第2の押圧期間中、前記基板の前記一面上に前記第1の流量よりも大きい第2の流量で洗浄液を供給することとを含んでもよい。
【0133】
この場合、第1の押圧期間において、基板の一面上に第1の流量で洗浄液が供給されるので、ブラシによる基板の一面の洗浄力がより向上する。その後、第2の押圧期間では、基板の一面上に第1の流量よりも大きい第2の流量で洗浄液が供給される。それにより、第1の押圧期間中にブラシにより剥離された汚染物質が基板の一面上に残留する場合でも、それらの汚染物質が多量の洗浄液により円滑に洗い流される。その結果、洗浄後の基板の一面の清浄度がさらに向上する。
【0134】
上記一連の実施形態に係る基板洗浄装置によれば、ブラシを用いた洗浄後の基板の清浄度が向上するので、基板処理により得られる製品の歩留まりが向上する。したがって、無駄な基板処理が低減されるので、基板処理の省エネルギー化が実現できる。また、無駄な薬液等の利用を低減することができるので、地球環境の汚染の低減に寄与することができる。
【符号の説明】
【0135】
1…基板洗浄装置,10…スピンチャック,11…スピンベース,12…チャックピン,13…チャック回転駆動部,14…回転軸,20…液供給機構,21…洗浄液ノズル,22…洗浄液供給系,23…リンス液ノズル,24…リンス液供給系,30…ブラシ押圧機構,31…アーム駆動部,32…回転軸,33…アーム,34…ブラシ駆動部,90…制御部,91…基板回転制御部,92…液供給系制御部,93…ブラシ制御部,BR…ブラシ,L1,L2…液膜,P1…回転中心位置,P2…外周端部位置,P3…特定位置,SI…設置面,SSR…基板洗浄装置,W…基板,cn1,cn2,cn3…汚染物質