(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024179039
(43)【公開日】2024-12-26
(54)【発明の名称】水上の上部工の構築方法
(51)【国際特許分類】
E02B 3/06 20060101AFI20241219BHJP
E02B 3/12 20060101ALI20241219BHJP
【FI】
E02B3/06
E02B3/12
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023097531
(22)【出願日】2023-06-14
(71)【出願人】
【識別番号】000219406
【氏名又は名称】東亜建設工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001368
【氏名又は名称】清流国際弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100129252
【弁理士】
【氏名又は名称】昼間 孝良
(74)【代理人】
【識別番号】100155033
【弁理士】
【氏名又は名称】境澤 正夫
(72)【発明者】
【氏名】網野 貴彦
(72)【発明者】
【氏名】濱田 洋志
【テーマコード(参考)】
2D118
【Fターム(参考)】
2D118AA28
2D118BA03
2D118BA05
2D118BA07
2D118FA06
2D118FA08
2D118FB11
2D118GA07
2D118GA09
(57)【要約】
【課題】水底地盤に立設された支持体に設置したプレキャストブロックの下方での作業を行わずに、効率的に水上の上部工を構築できる方法を提供する。
【解決手段】開口部4を有する本体部3と、本体部3の下方に突出している突出部6とを備えたプレキャストブロック2を作製する。水底地盤WBに立設された支持体30の外側に突出部6を配置した状態でプレキャストブロック2を所定位置に配置し、突出部6の少なくとも下端8を施工水域の水面下に水没させた状態にする。支持体30の外側面と突出部6の内側面との間に位置する水面にポリウレア系樹脂11aを噴き付け、水面上で硬化させたポリウレア系樹脂11aにより、支持体30の外側面と突出部6の内側面との間のすき間Saを塞ぎ、そのすき間Saと本体部3の開口部4とに中詰材13を充填して固化させることで、上部工1を支持体30の上部に固定する。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
施工水域の水底地盤に立設されている支持体の上部に固定される上部工を構築する水上の上部工の構築方法において、
上下に貫通する開口部を有する本体部と、前記本体部の下方に突出している突出部とを備えたプレキャストブロックを予め作製しておき、
前記支持体の外側に前記突出部を配置した状態で前記プレキャストブロックを所定位置に配置し、前記突出部の少なくとも下端を前記施工水域の水面下に水没させた状態とし、
前記支持体の外側面と前記突出部の内側面との間に位置する水面にポリウレア系樹脂を噴き付け、前記水面上で硬化させた前記ポリウレア系樹脂により、前記支持体の外側面と前記突出部の内側面との間のすき間を塞いだ状態とし、前記支持体の外側面と前記突出部の内側面との間のすき間と、前記本体部の前記開口部とに中詰材を充填して固化させることにより、前記プレキャストブロックと固化させた前記中詰材とを一体化した前記上部工を前記支持体の上部に固定することを特徴とする水上の上部工の構築方法。
【請求項2】
施工水域の水底地盤に立設されている支持体の上部に固定される上部工を構築する水上の上部工の構築方法において、
上下に貫通する開口部を有する本体部と、前記本体部の下方に突出している突出部とを備えたプレキャストブロックを予め作製しておき、
前記支持体の外側に前記突出部を配置した状態で前記プレキャストブロックを所定位置に配置し、前記突出部の少なくとも下端を前記施工水域の水面下に水没させた状態とし、
前記支持体の外側面と前記突出部の内側面との間に位置する水面上に嵩上げ材を突出させて配置した状態にして、その嵩上げ材の上を閉塞部材により覆って、前記閉塞部材により前記支持体の外側面と前記突出部の内側面との間のすき間を塞いだ状態とし、前記支持体の外側面と前記突出部の内側面との間のすき間と、前記本体部の前記開口部とに中詰材を充填して固化させることにより、前記プレキャストブロックと固化させた前記中詰材とを一体化した前記上部工を前記支持体の上部に固定することを特徴とする水上の上部工の構築方法。
【請求項3】
施工水域の水底地盤に立設されている支持体の上部に固定される上部工を構築する水上の上部工の構築方法において、
上下に貫通する開口部を有する本体部を備えたプレキャストブロックを予め作製しておき、
前記開口部の内側に前記支持体を配置した状態で前記プレキャストブロックを所定位置に配置し、前記プレキャストブロックの下端よりも前記施工水域の水面が上方に位置した状態で、
前記支持体の外側面と前記開口部の内側面との間に位置する水面にポリウレア系樹脂を噴き付け、前記水面上で硬化させた前記ポリウレア系樹脂により、前記支持体の外側面と前記開口部の内側面との間のすき間を塞いだ状態とし、前記支持体の外側面と前記開口部の内側面との間のすき間と、前記本体部の前記開口部とに中詰材を充填して固化させることにより、前記プレキャストブロックと固化させた前記中詰材とを一体化した前記上部工を前記支持体の上部に固定することを特徴とする水上の上部工の構築方法。
【請求項4】
施工水域の水底地盤に立設されている支持体の上部に固定される上部工を構築する水上の上部工の構築方法において、
上下に貫通する開口部を有する本体部を備えたプレキャストブロックを予め作製しておき、
前記開口部の内側に前記支持体を配置した状態で前記プレキャストブロックを所定位置に配置し、前記プレキャストブロックの下端よりも前記施工水域の水面が上方に位置した状態で、
前記支持体の外側面と前記開口部の内側面との間に位置する水面上に嵩上げ材を突出させて配置した状態にして、その嵩上げ材の上を閉塞部材により覆って、前記閉塞部材により前記支持体の外側面と前記開口部の内側面との間のすき間を塞いだ状態とし、前記支持体の外側面と前記開口部の内側面との間のすき間と、前記本体部の前記開口部とに中詰材を充填して固化させることにより、前記プレキャストブロックと固化させた前記中詰材とを一体化した前記上部工を前記支持体の上部に固定することを特徴とする水上の上部工の構築方法。
【請求項5】
ポリウレア系樹脂を前記嵩上げ材の上に噴き付けて硬化させたものを前記閉塞部材として使用する請求項2または4に記載の水上の上部工の構築方法。
【請求項6】
前記嵩上げ材の上に載置した板状体を前記閉塞部材として使用する請求項2または4に記載の水上の上部工の構築方法。
【請求項7】
前記プレキャストブロックを作製する際に、前記突出部の上下方向の長さを、前記プレキャストブロックを前記所定位置に配置したときに、前記突出部の下端が前記施工水域の干潮水位よりも低い位置に配置された状態になる長さに設定する請求項1または2に記載の水上の上部工の構築方法。
【請求項8】
前記突出部に前記支持体が挿通する挿通孔を設けて、前記開口部と前記挿通孔とを平面視で同一寸法にする請求項1または2に記載の水上の上部工の構築方法。
【請求項9】
前記プレキャストブロックを作製する際に、前記本体部と前記突出部とを一体物として作製する請求項1または2に記載の水上の上部工の構築方法。
【請求項10】
前記プレキャストブロックを作製する際に、前記本体部と前記突出部をそれぞれ別々に作製し、前記本体部の下部に前記突出部を付設する請求項1または2に記載の水上の上部工の構築方法。
【請求項11】
前記プレキャストブロックに、前記開口部に内嵌されて前記本体部の下方にまで延在する鞘管を設けておき、前記本体部の下方に突出している前記鞘管の下部を前記突出部として用いる請求項1または2に記載の水上の上部工の構築方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水上の上部工の構築方法に関し、さらに詳しくは、水底地盤に立設された杭や矢板などの支持体に設置したプレキャストブロックの下方での作業を行わずに、効率的に水上の上部工を構築できる水上の上部工の構築方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
水底地盤に立設された杭や矢板などの支持体に支持される桟橋や鋼矢板護岸等の水上の上部工を構築する方法としては、例えば、水上または水中において鉄筋を配筋した後に型枠を設置して、施工現場で型枠内に生コンクリートを打設して固化させる方法がある。このような上部工の構築方法では、水上または水中に仮設足場や支保工を設置し、鉄筋を組み立てた後に型枠などの設置やコンクリートの打ち込み等を行って構築する必要があり、水上での煩雑な作業も多いため、施工効率を向上させるには限界がある。
【0003】
そこで、水上構造物(上部工)の構築方法として、杭が挿通する杭孔を有するプレキャストコンクリート版を地上で形成しておき、プレキャストコンクリート版の杭孔に杭の頭部を遊挿した状態で杭に対してプレキャストコンクリート版を固定し、プレキャストコンクリート版の外回りに足場を取付ける構築方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。この構築方法では、プレキャストコンクリート版の杭孔と杭の外側面との間のすき間を、プレキャストコンクリート版の下方に設けた漏れ止め板で塞いだ状態にして、前述したすき間に無収縮モルタルを充填することで、プレキャストコンクリート版を杭の頭部に固定している。しかしながら、特許文献1で提案されている構築方法では、プレキャストコンクリート版の杭孔と杭の外側面との間のすき間を漏れ止め板で塞ぐ作業を、杭に設置したプレキャストコンクリート版の下方から行う必要があるため、水上足場を設置することや、潜水士などの作業者がプレキャストコンクリート版の下に入って煩雑な作業を行う必要がある。それ故、水上の上部工を構築する施工効率や作業者の安全性を向上させるには改善の余地がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、水底地盤に立設された杭や矢板などの支持体に設置したプレキャストブロックの下方での作業を行わずに、効率的に水上の上部工を構築できる水上の上部工の構築方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するための本発明の第一の水上の上部工の構築方法は、施工水域の水底地盤に立設されている支持体の上部に固定される上部工を構築する水上の上部工の構築方法において、上下に貫通する開口部を有する本体部と、前記本体部の下方に突出している突出部とを備えたプレキャストブロックを予め作製しておき、前記支持体の外側に前記突出部を配置した状態で前記プレキャストブロックを所定位置に配置し、前記突出部の少なくとも下端を前記施工水域の水面下に水没させた状態とし、前記支持体の外側面と前記突出部の内側面との間に位置する水面にポリウレア系樹脂を噴き付け、前記水面上で硬化させた前記ポリウレア系樹脂により、前記支持体の外側面と前記突出部の内側面との間のすき間を塞いだ状態とし、前記支持体の外側面と前記突出部の内側面との間のすき間と、前記本体部の前記開口部とに中詰材を充填して固化させることにより、前記プレキャストブロックと固化させた前記中詰材とを一体化した前記上部工を前記支持体の上部に固定することを特徴とする。
【0007】
本発明の第二の水上の上部工の構築方法は、施工水域の水底地盤に立設されている支持体の上部に固定される上部工を構築する水上の上部工の構築方法において、上下に貫通する開口部を有する本体部と、前記本体部の下方に突出している突出部とを備えたプレキャストブロックを予め作製しておき、前記支持体の外側に前記突出部を配置した状態で前記プレキャストブロックを所定位置に配置し、前記突出部の少なくとも下端を前記施工水域の水面下に水没させた状態とし、前記支持体の外側面と前記突出部の内側面との間に位置する水面上に嵩上げ材を突出させて配置した状態にして、その嵩上げ材の上を閉塞部材により覆って、前記閉塞部材により前記支持体の外側面と前記突出部の内側面との間のすき間を塞いだ状態とし、前記支持体の外側面と前記突出部の内側面との間のすき間と、前記本体部の前記開口部とに中詰材を充填して固化させることにより、前記プレキャストブロックと固化させた前記中詰材とを一体化した前記上部工を前記支持体の上部に固定することを特徴とする。
【0008】
本発明の第三の水上の上部工の構築方法は、施工水域の水底地盤に立設されている支持体の上部に固定される上部工を構築する水上の上部工の構築方法において、上下に貫通する開口部を有する本体部を備えたプレキャストブロックを予め作製しておき、前記開口部の内側に前記支持体を配置した状態で前記プレキャストブロックを所定位置に配置し、前記プレキャストブロックの下端よりも前記施工水域の水面が上方に位置した状態で、前記支持体の外側面と前記開口部の内側面との間に位置する水面にポリウレア系樹脂を噴き付け、前記水面上で硬化させた前記ポリウレア系樹脂により、前記支持体の外側面と前記開口部の内側面との間のすき間を塞いだ状態とし、前記支持体の外側面と前記開口部の内側面との間のすき間と、前記本体部の前記開口部とに中詰材を充填して固化させることにより、前記プレキャストブロックと固化させた前記中詰材とを一体化した前記上部工を前記支持体の上部に固定することを特徴とする。
【0009】
本発明の第四の水上の上部工の構築方法は、施工水域の水底地盤に立設されている支持体の上部に固定される上部工を構築する水上の上部工の構築方法において、上下に貫通する開口部を有する本体部を備えたプレキャストブロックを予め作製しておき、前記開口部の内側に前記支持体を配置した状態で前記プレキャストブロックを所定位置に配置し、前記プレキャストブロックの下端よりも前記施工水域の水面が上方に位置した状態で、前記支持体の外側面と前記開口部の内側面との間に位置する水面上に嵩上げ材を突出させて配置した状態にして、その嵩上げ材の上を閉塞部材により覆って、前記閉塞部材により前記支持体の外側面と前記開口部の内側面との間のすき間を塞いだ状態とし、前記支持体の外側面と前記開口部の内側面との間のすき間と、前記本体部の前記開口部とに中詰材を充填して固化させることにより、前記プレキャストブロックと固化させた前記中詰材とを一体化した前記上部工を前記支持体の上部に固定することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明の第一の構築方法によれば、支持体の外側面とプレキャストブロックに設けた突出部の内側面との間に位置する水面にポリウレア系樹脂を噴き付けて水面上でポリウレア系樹脂を硬化させることで、支持体の外側面と突出部の内側面との間のすき間を簡易に塞ぐことができる。本発明の第二の構築方法によれば、支持体の外側面とプレキャストブロックに設けた突出部の内側面との間に位置する水面上に嵩上げ材を突出させて配置した状態にして、その嵩上げ材の上を閉塞部材によって覆うことで、支持体の外側面と突出部の内側面との間のすき間を簡易に塞ぐことができる。本発明の第三の構築方法によれば、支持体の外側面とプレキャストブロックの本体部の開口部の内側面との間に位置する水面にポリウレア系樹脂を噴き付けて水面上でポリウレア系樹脂を硬化させることで、支持体の外側面と開口部の内側面との間のすき間を簡易に塞ぐことができる。本発明の第四の構築方法によれば、支持体の外側面とプレキャストブロックの本体部の開口部の内側面との間に位置する水面上に嵩上げ材を突出させて配置した状態にして、その嵩上げ材の上を閉塞部材によって覆うことで、支持体の外側面と開口部の内側面との間のすき間を簡易に塞ぐことができる。その後は本発明の第一と第二の構築方法では、支持体の外側面と突出部の内側面との間のすき間と、本体部の開口部とに中詰材を充填して固化させることで、支持体に設置したプレキャストブロックの下方での作業を行わずに、水上の上部工を効率的に構築することができる。本発明の第三と第四の構築方法では、支持体の外側面と本体部の開口部の内側面との間のすき間と、本体部の開口部とに中詰材を充填して固化させることで、支持体に設置したプレキャストブロックの下方での作業を行わずに、水上の上部工を効率的に構築することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の水上の上部工の構築方法によって支持体の上部に構築した上部工を側面視で例示する説明図である。
【
図2】上部工を構成するプレキャストブロックを支持体に設置する前の状況を断面視で例示する説明図である。
【
図3】上部工を構成するプレキャストブロックを支持体に設置する前の状況を平面視で例示する説明図である。
【
図4】
図2および
図3のプレキャストブロックを支持体に設置して、支持体の外側面と突出部の内側面との間に位置する水面にポリウレア系樹脂を噴き付けた状況を断面視で例示する説明図である。
【
図6】
図4および
図5の状況から支持体の外側面と突出部の内側面との間のすき間と、本体部の開口部とに中詰材を充填して固化させた状況を断面視で例示する説明図である。
【
図8】プレキャストブロックを支持体に設置して、支持体の外側面と突出部の内側面との間に位置する水面に嵩上げ材を突出させて配置した状態にして、その嵩上げ材の上に閉塞部材としてポリウレア系樹脂を噴き付けた状況を断面視で例示する説明図である。
【
図9】プレキャストブロックを支持体に設置して、支持体の外側面と突出部の内側面との間に位置する水面に嵩上げ材を突出させて配置した状態にして、その嵩上げ材の上に閉塞部材として板状体を載置した状況を断面視で例示する説明図である。
【
図10】本体部と突出部が一体化しているプレキャストブロックを支持体に設置して、支持体の外側面と突出部の内側面との間に位置する水面にポリウレア系樹脂を噴き付けた状況を断面視で例示する説明図である。
【
図12】本体部に突出部を付設した構成のプレキャストブロックを支持体に設置して、支持体の外側面と突出部の内側面との間に位置する水面にポリウレア系樹脂を噴き付けた状況を、断面視で例示する説明図である。
【
図14】別の実施形態のプレキャストブロックを支持体に設置して、支持体の外側面と突出部の内側面との間に位置する水面にポリウレア系樹脂を噴き付けた状況を平面視で例示する説明図である。
【
図16】
図14および
図15の状況から支持体の外側面と突出部の内側面との間のすき間と、本体部の開口部とに中詰材を充填して固化させた状況を断面視で例示する説明図である。
【
図17】突出部を設けていないプレキャストブロックを支持体に設置して、支持体の外側面と本体部の開口部の内側面との間に位置する水面にポリウレア系樹脂を噴き付けた状況を断面視で例示する説明図である。
【
図18】突出部を設けていないプレキャストブロックを支持体に設置して、支持体の外側面と本体部の開口部の内側面との間に位置する水面に嵩上げ材を突出させて配置した状態にして、その嵩上げ材の上に閉塞部材としてポリウレア系樹脂を噴き付けた状況を断面視で例示する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の水上の上部工の構築方法を図に示した実施形態に基づいて説明する。
【0013】
図1に例示するように、本発明は、施工水域の水底地盤WBに立設された杭や矢板などの支持体30の上部に固定される桟橋や鋼矢板護岸等の水上の上部工1を構築する方法である。支持体30としては、例えば、鋼管杭やコンクリート杭等の杭や、鋼管矢板や鋼矢板等の矢板などが例示できる。以下に説明する
図1~
図8に例示する実施形態では、支持体30が杭である場合を例示する。
【0014】
図1~
図8に例示する実施形態では、1本の支持体30の上部に固定される上部工1を構築する場合を例示するが、本発明では2本以上の支持体30の上部に固定される上部工1を構築することもできる。また、複数の鋼矢板が連続的に打ち込まれた構造の支持体30の上部に固定される上部工1の構築に採用することもできる。本発明における水上の上部工1は、常に水面上に位置する上部工1に限らず、潮位変動などにより一時的に水中に一部が没する上部工1も含んでいる。
図1~
図8に例示する実施形態では、支持体30の上部が水上に突出している場合を例示する。
【0015】
図2および
図3に例示するように、本発明では、陸上や船上などで予め作製したプレキャストブロック2を用いて上部工1を構築する。プレキャストブロック2は、例えば、プレキャストコンクリートや樹脂などで形成される。プレキャストブロック2は、例えば、プレキャストコンクリートに鉄筋(または鉄骨)が埋設された鉄筋コンクリート(鉄骨鉄筋コンクリート)構造にしてもよいし、プレキャストコンクリートに鉄筋等が埋設されていない構造にすることもできる。
【0016】
プレキャストブロック2は、上下に貫通する開口部4を有する本体部3を備えている。この実施形態のプレキャストブロック2はさらに、本体部3の下方に突出している突出部6を備えている。本体部3は、上部工1の主要構造を構成する部位である。この実施形態の本体部3の開口部4は、支持体30が遊挿可能な構成になっている。この実施形態の突出部6は、支持体30が遊挿可能な上下に貫通する挿通孔7を有している。この実施形態のプレキャストブロック2はさらに、平面視で本体部3の開口部4の内側に張り出した梁部材9と、プレキャストブロック2の移送に使用する吊金具10とを有している。
【0017】
この実施形態では、本体部3の外形が直方体形状に形成されている場合を例示しているが、本体部3の外形は直方体形状に限らず他の形状にすることもできる。この実施形態では、本体部3の中央の1ヶ所に開口部4が形成されていて、突出部6の中央の1ヶ所に挿通孔7が形成されている。本体部3の開口部4と突出部6の挿通孔7は上下に連通している。
【0018】
この実施形態のプレキャストブロック2では、本体部3の開口部4に鞘管6aが内嵌されている。鞘管6aは上下方向に延在していて、鞘管6aの下部は本体部3の下方に突出している。この実施形態では、本体部3の開口部4に内嵌めされている鞘管6aの上部は、本体部3の一部として本体部3を形成するプレキャスト材(プレキャストコンクリートや樹脂など)に接合していて、本体部3の下端面5よりも下方に位置している鞘管6aの下部が突出部6を構成している。
【0019】
より詳しくは、この実施形態では、本体部3の開口部4として、本体部3の下部に平面視で円形状の下部孔4bが形成されていて、下部孔4bの上方に下部孔4bよりも広い平面視で四角形状の上部孔4aが形成されている。この実施形態では、円筒状の鞘管6aの上部が下部孔4bに内嵌めされている。
【0020】
鞘管6aは、水上においても腐食し難い繊維強化プラスチック(FRP)などの樹脂製の管状部材で構成するとよい。鞘管6aは、例えば、鋼管などの金属製の管状部材で構成することもできる。金属製の鞘管6aを用いる場合には、本体部3の下方に突出している鞘管6aの下部の露出面に、錆などの腐食を抑制する塗装を施しておくとよい。
【0021】
本体部3や突出部6の外形や、本体部3の開口部4や突出部6の挿通孔7の形状などは、この実施形態の構成に限定されず、他にも様々な構成にすることができる。例えば、本体部3に平面視で多角形状の開口部4を設けて、その開口部4に平面視で多角形状の鞘管6aを内嵌めした構成にすることもできる。上部孔4aの形状は四角形状に限らず、例えば、平面視で円形状や楕円形状に形成することもできる。例えば、下部孔4bと上部孔4aを同じ形状で同じ大きさにすることもできる。
【0022】
なお、突出部6は本体部3の下方に突出していて支持体30の外側に配置される構成であればよく、突出部6は鞘管6a以外の部材で構成することもできる。突出部6を鞘管6a以外の部材で構成する場合については、後に別の実施形態として説明する。また、この実施形態では、プレキャストブロック2の本体部3と突出部6とを一体物として作製している場合を例示しているが、例えば、本体部3と突出部6を別々に作製し、本体部3に突出部6を付設する構成にすることもできる。本体部3に突出部6を付設する場合についても、後に別の実施形態として説明する。
【0023】
突出部6を鞘管6a以外の部材で構成する場合には、プレキャストブロック2に鞘管6aを任意に設けることができ、鞘管6aを有さないプレキャストブロック2を用いることもできる。なお、本発明では、本体部3の開口部4に鞘管6aが内嵌めされている場合には、鞘管6aの内側面を開口部4の内側面とし、本体部3の開口部4に鞘管6aが内嵌めされていない場合には、本体部3を構成するプレキャスト材の内側面を開口部4の内側面とする。
【0024】
この実施形態のように、本体部3の開口部4の内側に支持体30を配置する場合には、本体部3の開口部4の内寸(この実施形態では、鞘管6aの上部の内寸)は、支持体30が遊挿可能な寸法に設定する。開口部4の内寸は、平面視で開口部4の中心位置と支持体30の中心位置とを一致させた状態で開口部4に支持体30を挿入した場合に、開口部4の内側面と支持体30の外側面との間に例えば、5cm以上20cm以下、より好ましくは10cm以上15cm以下のすき間(クリアランス)ができる寸法に設定するとよい。なお、本体部3の開口部4の内側に支持体30を配置しない構成にすることもできる。その場合の本体部3の開口部4の内寸は、中詰材13を投入可能なサイズであればよく、特に限定されない。
【0025】
この実施形態のように、突出部6に挿通孔7を設ける場合には、挿通孔7の内寸(この実施形態では、鞘管6aの下部の内寸)は、支持体30が遊挿可能な寸法に設定する。挿通孔7の内寸は、平面視で挿通孔7の中心位置と支持体30の中心位置とを一致させた状態で挿通孔7に支持体30を挿入した場合に、挿通孔7の内側面と支持体30の外側面との間に例えば、5cm以上20cm以下、より好ましくは10cm以上15cm以下のすき間(クリアランス)ができる寸法に設定するとよい。なお、突出部6は支持体30の外側に配置される構成であればよく、挿通孔7を有さない突出部6にすることもできる。突出部6が挿通孔7を有さない場合については、後に別の実施形態で説明する。
【0026】
梁部材9は、H形鋼や溝形鋼などの型鋼や樹脂製の棒状部材などで構成される。梁部材9は水平方向に延在していて、平面視で本体部3の開口部4(鞘管6a)の内側に梁部材9が張り出している。梁部材9の少なくとも一部は、平面視で開口部4の外側まで延在している。
図3に例示するように、この実施形態では、一対の梁部材9、9が並列に間隔をあけて配置されていて、それぞれの梁部材9が開口部4を横断して架け渡されている。
【0027】
図2に例示するように、梁部材9は例えば、鞘管6aの上部、または、鞘管6aの上に配置される。この実施形態では、鞘管6aの上部にそれぞれの梁部材9を嵌込む溝が形成されていて、その溝に梁部材9が嵌め込まれた状態になっている。例えば、梁部材9は鞘管6aの上に載置した状態にすることもできる。梁部材9の開口部4の内側に位置する部分が露出していて、梁部材9の開口部4の外側に位置する部分が本体部3を構成するプレキャスト材に埋設された構造になっている。
【0028】
本体部3の上部には、プレキャストブロック2をクレーンなどで吊り上げる際に使用する複数の吊金具10が設けられている。この実施形態では、本体部3の上部の四隅にそれぞれ吊金具10が配設されている。吊金具10の下部は本体部3を構成するプレキャスト材に埋設されていて、吊金具10は本体部3に一体化されている。なお、プレキャストブロック2に吊金具10は任意に設けることができる。吊金具10を用いない別の方法でプレキャストブロック2を吊上げる場合には、吊金具10を有さないプレキャストブロック2を用いることもできる。この実施形態では設けていないが、上部工1に係船柱などの付帯物を設ける場合には、プレキャストブロック2(本体部3)に係船柱などの付帯物を一体化しておくこともできる。
【0029】
図4および
図5に例示するように、支持体30の上部にプレキャストブロック2が設置された状態では、支持体30の外側に突出部6が配置され、突出部6の少なくとも下端8が施工水域の水面下に水没した状態になる。即ち、プレキャストブロック2の突出部6の上下方向の長さ(本体部3の下端面5からの下方への突出長さ)は、プレキャストブロック2を支持体30の上部に設置したときに、突出部6の下端8が施工水域の水面位置WLよりも低い位置に配置された状態になる長さに設定する。この実施形態では、支持体30の上部にプレキャストブロック2が設置された状態では、突出部6の挿通孔7と本体部3の開口部4に支持体30が遊挿された状態になる。
【0030】
図4および
図5に例示するような支持体30の上部に上部工1が固定された状態で、支持体30の外側面と突出部6の内側面との間に位置する水面にポリウレア系樹脂11aが噴き付けられ、水面上でポリウレア系樹脂11aが硬化する。これにより、支持体30の外側面と突出部6の内側面との間のすき間Saが塞がれた状態になる。そして、
図6および
図7に例示するように、硬化したポリウレア系樹脂11aの上方における支持体30の外側面と突出部6の内側面との間のすき間Saと、本体部3の開口部4とに中詰材13が充填され、プレキャストブロック2と固化した中詰材13とが一体化した上部工1が支持体30の上部に固定された状態になる。
【0031】
前述したポリウレア系樹脂11aは、速乾性と防水性を有している。ポリウレア系樹脂11aの比重はほぼ1.0であるため、水面に噴き付けると、水面上にポリウレア系樹脂11aが浮かんだ状態となり、数秒から数分程度でポリウレア系樹脂11aは水面上で硬化した状態になる。ポリウレア系樹脂11aは硬化すると、高い強度とある程度の柔軟性を有する固体となり、支持体30の外側面と突出部6の内側面との間のすき間Saを塞ぐ底蓋になる。
【0032】
なお、本発明におけるポリウレア系樹脂11aは、ポリウレア樹脂に限らず、ポリウレア樹脂と同等の速乾性と防水性を有するポリウレア系のその他の樹脂化合物(例えば、ポリウレアウレタン樹脂など)も含んでいる。中詰材13としては、例えば、中詰めコンクリートや硬化性樹脂などが用いられる。中詰材13として例えば、モルタルに鋼繊維が混入された高強度繊維補強モルタルを用いることもできる。
【0033】
以下、本発明の上部工1の構築方法の具体的な作業手順を説明する。
【0034】
図2および
図3に例示するように、上部工1を固定する支持体30のサイズや、支持体30の上端と施工予定時の施工水域の水面位置WLとの上下距離などに基づいて、上述した構成のプレキャストブロック2を陸上や船上などで予め作製しておく。そして、プレキャストブロック2を支持体30が立設されている施工水域まで搬送する。
【0035】
上部工1を構築する施工水域の作業では、支持体30が杭や鋼管矢板である場合には、支持体30の上端から所定深さの位置に、支持体30の内部を上下に隔離する仕切板20を設けておく。仕切板20の外寸は支持体30の内寸と略同一に設定する。仕切板20を支持体30の内部に設置する方法は特に限定されないが、例えば、支持体30の上端部から吊り下げたワイヤなどの吊材で仕切板20を支持した状態にすることで、仕切板20を支持体30の内部に固定する。
【0036】
次いで、プレキャストブロック2に設けられているそれぞれの吊金具10にクレーンから懸下されたワイヤロープの吊具を連結し、クレーンによってプレキャストブロック2を支持体30の上方に吊上げた状態にする。そして、
図4および
図5に例示するように、支持体30の外側に突出部6を配置した状態でプレキャストブロック2を所定位置に配置し、突出部6の少なくとも下端8を施工水域の水面下に水没させた状態にする。即ち、突出部6は水中まで延在させた状態にする。より具体的には、この実施形態では、プレキャストブロック2の突出部6の挿通孔7と支持体30との位置を合わせた状態で、プレキャストブロック2を支持体30の上方から下方移動させ、突出部6の挿通孔7と本体部3の開口部4に支持体30を遊挿した状態で、プレキャストブロック2を所定位置に配置する。
【0037】
この実施形態では、本体部3の開口部4の内側に張り出している梁部材9を支持体30の上端部に載置した状態にすることで、プレキャストブロック2が支持体30の上部に支持された状態になる。プレキャストブロック2が支持体30の上部に支持された状態にすると、作業者がプレキャストブロック2の上にのって作業を行える状態になる。
【0038】
次いで、プレキャストブロック2の上からの作業で、支持体30の外側面と突出部6の内側面との間に位置する水面に、噴射器を用いて液状のポリウレア系樹脂11aを噴き付け、水面上で硬化させたポリウレア系樹脂11aにより、支持体30の外側面と突出部6の内側面との間のすき間Saを塞いだ状態にする。
【0039】
このポリウレア系樹脂11aを噴き付ける作業では、支持体30の外側面と突出部6の内側面との間に位置する水面の全面を覆うようにポリウレア系樹脂11aを噴き付ける。この実施形態では、水面付近の支持体30の外側面の全周と突出部6の内側面の全周にもポリウレア系樹脂11aを噴き付ける。水面にポリウレア系樹脂11aを噴き付けると数秒から数分程度でポリウレア系樹脂11aが水面上で硬化した状態となり、水面付近の支持体30の外側面と突出部6の内側面にもポリウレア系樹脂11aが強固に接着した状態になる。そして、硬化したポリウレア系樹脂11aによって形成された底蓋が、支持体30と突出部6に対して固定された状態になる。ポリウレア系樹脂11aによって形成する底蓋の厚さは、後に充填する中詰材13の重量に応じて適宜決定できる。
【0040】
次いで、
図6および
図7に例示するように、プレキャストブロック2の本体部3の開口部4に中詰材13を投入して、支持体30の外側面と突出部6の内側面との間のすき間Saと、本体部3の開口部4とに中詰材13を充填する。より具体的には、この実施形態では、仕切板20よりも上方の支持体30の内側と、支持体30の外側面と突出部6の内側面との間のすき間Saと、支持体30の外側面と本体部3の開口部4の内側面との間のすき間と、開口部4の上部(上部孔4a)とに、中詰材13を充填する。
【0041】
この実施形態では、中詰材13を複数回に分けて投入している。一度目の投入では、支持体30の外周面と開口部4の内周面との間から硬化したポリウレア系樹脂11aの上に5cm~20cm程度の厚さになるように第一の中詰材13aを投入して、その第一の中詰材13aを固化させることにより、硬化したポリウレア系樹脂11aの上に固化した中詰材13aで薄い底板を形成している。そして、その後に、開口部4が埋まるように残りの中詰材13を投入している。
図6および
図7では、中詰材13(13a)を充填している範囲を斜線で示している。
【0042】
その後、所定の養生期間が経過し、中詰材13が固化すると、プレキャストブロック2と固化された中詰材13とが一体化された上部工1が支持体30の上部に固定された状態になる。以上により、上部工1の施工が完了する。吊金具10は、施工後に上部工1から取外す。
【0043】
このように、本発明では、プレキャストブロック2の本体部3の下方に突出している突出部6を支持体30の外側に配置した状態で、プレキャストブロック2を所定位置に配置し、突出部6の少なくとも下端8を施工水域の水面下に水没させた状態にする。そして、支持体30の外側面と突出部6の内側面との間に位置する水面にポリウレア系樹脂11aを噴き付けて水面上でポリウレア系樹脂11aを硬化させる。これにより、支持体30に設置したプレキャストブロック2の下方での作業を行わずに、支持体30の外側面と突出部6の内側面との間のすき間Saを簡易に塞ぐことができる。その後は、支持体30の外側面と突出部6の内側面との間のすき間Saと、本体部3の開口部4とに中詰材13を充填して固化させることで、支持体30に設置したプレキャストブロック2の下方での作業を行わずに、水上の上部工1を効率的に構築することができる。
【0044】
本発明では、プレキャストブロック2に水中まで延在する突出部6を設けていることで、支持体30の外側面と突出部6の内側面との間に位置している水面が、突出部6の外側の波などの影響を受け難くなる。それ故、突出部6の内側の水面の揺れが小さくなり、突出部6の内側の水面上でポリウレア系樹脂11aを安定した状態で硬化させることができる。ポリウレア系樹脂11aは噴き付けてから数秒から数分程度で硬化するので、施工水域が海である場合にも施工日の潮の満ち引きによる水位変化の影響はほとんど受けない。
【0045】
また、ポリウレア系樹脂11aが硬化すると支持体30の外側面と突出部6の内側面にポリウレア系樹脂11aが強固に接合された状態になるので、ポリウレア系樹脂11aを硬化させたときの水面位置WLに対して、施工水域の水面位置WLが上下に変化した場合にも、硬化したポリウレア系樹脂11aで形成された底蓋は、支持体30およびプレキャストブロック2の所定の高さ位置に固定された状態が維持される。それ故、本発明は施工水域が海である場合にも、上部工1を構築することが可能である。それ故、当業者にとって非常に有用である。
【0046】
この実施形態では、プレキャストブロック2の挿通孔7および開口部4に対して、支持体30を遊挿できるすき間(クリアランス)を設けていることで、プレキャストブロック2を支持体30に設置する作業では、支持体30の打設位置の誤差を吸収できる。それ故、支持体30に対して挿通孔7および開口部4を高精度で位置決めしなくても、支持体30に干渉させずに挿通孔7および開口部4を支持体30に遊嵌することができる。支持体30にプレキャストブロック2を設置した状態で、平面視での支持体30の中心と開口部4および挿通孔7の中心とがずれている場合もあるが、支持体30の外側面と突出部6の内側面との間の水面にポリウレア系樹脂11aを噴き付けるだけで、支持体30の外側面と突出部6の内側面との間のすき間Saの形状に合った底蓋を形成できる。それ故、支持体30に対してプレキャストブロック2を高精度で位置決めしなくても簡易に効率よく上部工1を構築できる。
【0047】
施工水域が海である場合には、施工を実施する日時によって水面の高さ(潮位)が異なる。そのため、プレキャストブロック2を作製する際には、施工を行う予定日時の潮位の予測値に基づいて、突出部6の上下方向の長さを設定するとよい。好ましくは、プレキャストブロック2を作製する際に、突出部6の上下方向の長さを、プレキャストブロック2を支持体30に対して所定位置に配置したときに、突出部6の下端8が施工水域の干潮水位LWL(具体的には、施工予定日の予測干潮水位或いは施工予定月の朔望平均干潮位)よりも低い位置に配置された状態になる長さに設定するとよい。このようにすると、支持体30に対してプレキャストブロック2を設置する時刻が予定時刻からずれた場合にも、より確実に突出部6の下端8を施工水域の水面下に水没させた状態にできる。
【0048】
プレキャストブロック2の本体部3に対する突出部6のサイズは特に限定されないが、突出部6の下端8の表面積を本体部3の下端面5の表面積よりも小さくすると、突出部6の下端8を水中に挿入する際の抵抗や突出部6に作用する浮力、さらには波力が小さくなるため、プレキャストブロック2を支持体30に設置する作業が行い易くなる。具体的には、突出部6の下端8の表面積は、本体部3の下端8の表面積の例えば、0.5倍以下、より好ましくは0.3倍以下、さらに好ましくは0.1倍以下に設定するとよい。なお、突出部6の下端8の表面積の下限値は、突出部6が中詰材13を充填した際の側圧に耐え得る強度を確保できる条件であればよい。この実施形態のように、突出部6を鞘管6aなどの管状の部材で構成すると、突出部6の下端8を水中に挿入する際の抵抗や突出部6に作用する浮力が、さらには波力が小さいため、プレキャストブロック2を支持体30に設置する作業が非常に行い易くなる。
【0049】
この実施形態のように、プレキャストブロック2を作製する際に、本体部3と突出部6とを一体物として作製すると、プレキャストブロック2を非常に簡素に構成できる。特に、この実施形態のように、プレキャストブロック2の本体部3の開口部4に内嵌した鞘管6aの下部を突出部6として用いると、突出部6を有するプレキャストブロック2を非常に簡易に作製できる。鞘管6aは開口部4と挿通孔7を形成する際の型枠としても機能するので、鞘管6aを設けることで、プレキャストブロック2の作製に要する手間や労力も軽減できる。
【0050】
本発明では、例えば、平面視で本体部3の開口部4よりも突出部6の挿通孔7が大きい構成にすることもできるが、好ましくは、この実施形態のように、本体部3の開口部4と突出部6の挿通孔7を平面視で同一寸法にするとよい。開口部4と挿通孔7を平面視で同一寸法にすると、プレキャストブロック2の上から挿通孔7の内側の水面の全面を目視できるので、ポリウレア系樹脂11aを噴き付ける作業時に、ポリウレア系樹脂11aを噴き付けていない箇所やポリウレア系樹脂11aの噴き付けが不十分な箇所が生じるリスクを低くするには有利になる。
【0051】
本発明では、例えば、平面視で本体部3の開口部4よりも突出部6の挿通孔7を小さい構成にすることもできるが、突出部6の挿通孔7を小さくすると、突出部6の内側面と支持体30の外側面との間のクリアランスが狭くなるため、挿通孔7に支持体30を挿入する作業の位置決めにおいて要求される精度が高くなる。それ故、本体部3の開口部4と突出部6の挿通孔7は平面視で同一寸法にすることが好ましい。この実施形態のように突出部6を開口部4に内嵌めした鞘管6aで構成すると、本体部3の開口部4と突出部6の挿通孔7が平面視で同一寸法のプレキャストブロック2を非常に簡易に作製できる。
【0052】
この実施形態のように、プレキャストブロック2を作製する際に、プレキャストブロック2の開口部4の内側に張り出す梁部材9を設けると、支持体30の上端部に梁部材9を載置した状態にすることで、プレキャストブロック2を支持体30の上部に簡易に安定した状態で設置することが可能になる。プレキャストブロック2を支持体30の上部に設置した後には、作業者がプレキャストブロック2の上にのって作業を行うことが可能になるので、施工効率を向上させるには有利になる。
【0053】
プレキャストブロック2を構成する梁部材9の本数や配置は、この実施形態の構成に限定されず、例えば、開口部4の内側に張り出している梁部材9を1本や3本以上にすることもできる。また、例えば、梁部材9の端部が平面視で開口部4の内側に配置されていて、梁部材9が開口部4を横断していない構成にすることもできる。また、例えば、平面視で開口部4の内側に2本の梁部材9が交差するように配設された構成にすることもできる。
【0054】
なお、この実施形態では、プレキャストブロック2を支持体30に設置するための部材として梁部材9を設けているが、例えば、プレキャストブロック2を支持体30に設置するための部材としてその他の部材を設ける場合には、プレキャストブロック2が梁部材9を有さない構成にすることもできる。具体的には、例えば、梁部材9に代えて、支持体30の上部に係合させる係合部材などをプレキャストブロック2に設けることもできる。
【0055】
水面上で硬化したポリウレア系樹脂11aの上に中詰材13を投入する際には、ポリウレア系樹脂11aで形成された底蓋に中詰材13の荷重がかかるため、上述したように、中詰材13の投入は複数回に分けて行うことが好ましい。一度目の投入で、硬化したポリウレア系樹脂11aの上に中詰材13によって5cm~20cm程度の薄い底板を形成する構成にすると、その薄い底板が硬化したポリウレア系樹脂11aとともに、その後に投入される中詰材13の荷重を支持する底板として機能する。それ故、一度に多量の中詰材13を投入する場合よりも、硬化したポリウレア系樹脂11aにかかる負荷を低減できる。それに伴い、ポリウレア系樹脂11aで形成する底蓋の厚さを比較的薄くすることが可能になり、ポリウレア系樹脂11aの使用量の削減を図るにも有利になる。
【0056】
ポリウレア系樹脂11aを接着させる支持体30の外側面や突出部6の内側面には例えば、ポリウレア系樹脂11aとの接着性(接着強度)を高める凹凸部を設けることもできる。凹凸部は、例えば、支持体30の外側面や突出部6の内側面に複数の凸部(突起)を設けることで形成することもできるし、支持体30の外側面や突出部6の内側面に複数の凹部(溝や切欠き)を設けることで形成することもできる。支持体30の外側面や突出部6の内側面に対する凹凸部の突出幅は、突出部6の内側面と支持体30の外側面との間のクリアランスを確保できるサイズ、具体的には例えば、5mm以上20mm以下に設定するとよい。支持体30の外側面または突出部6の内側面の少なくともいずれかに凹凸部を設けると、硬化したポリウレア系樹脂11aによって安定した底蓋を形成するには有利になる。支持体30の外側面および突出部6の内側面の両方に凹凸部を設けると、硬化したポリウレア系樹脂11aによって安定した底蓋を形成するにはより一層有利になる。
【0057】
本発明では、
図8に例示する実施形態のような方法で上部工1を構築することもできる。
図8に例示する実施形態では、支持体30の外側面と突出部6の内側面との間のすき間Saを塞ぐ方法が、
図1~
図7に例示した先の実施形態と異なっている。上部工1の構築方法におけるその他の作業手順は、
図1~
図7に例示した実施形態と同じである。
【0058】
図8に例示する実施形態においても、
図1~
図7に例示した実施形態と同様の構成のプレキャストブロック2を予め作製しておく。そして、
図8に例示するように、支持体30の外側に突出部6を配置した状態でプレキャストブロック2を所定位置に配置し、突出部6の少なくとも下端8を施工水域の水面下に水没させた状態にする。
【0059】
次いで、この実施形態では、支持体30の外側面と突出部6の内側面との間に位置する水面上に嵩上げ材12を突出させて配置した状態にする。より具体的には、プレキャストブロック2の本体部3の開口部4から嵩上げ材12を投入して、支持体30の外側面と突出部6の内側面との間に位置する水面上に複数の嵩上げ材12を浮かべた状態にする。そして、支持体30の外側面と突出部6の内側面との間の水面を覆うように、複数の嵩上げ材12を敷き詰めた状態にする。
【0060】
嵩上げ材12は、施工水域の水(海水)よりも密度が小さいものであればよい。嵩上げ材12は、例えば、氷、発泡スチロール、プラスチック、生分解性の発泡成形品(例えば、生分解性ポリマーで形成された発泡ビーズ等)、生分解性のプラスチック、水分を吸収して膨張する不織布や止水材料などで形成され、また、これらの組み合わせであってもよい。この実施形態では、直方体形状の嵩上げ材12を例示しているが、それぞれの嵩上げ材12の形状やサイズは特に限定されず、例えば、球状の嵩上げ材12や多角形状の嵩上げ材12を用いることもできる。
【0061】
次いで、この実施形態では、突出部6の内側の水面上に突出させて配置した状態の嵩上げ材12の上を閉塞部材11により覆って、その閉塞部材11により、支持体30の外側面と突出部6の内側面との間のすき間Saを塞いだ状態にする。この実施形態では、ポリウレア系樹脂11aを嵩上げ材12の上に噴き付けて、ポリウレア系樹脂11aを硬化させることで、閉塞部材11を形成している。そして、プレキャストブロック2の本体部3の開口部4に中詰材13を投入して、支持体30の外側面と突出部6の内側面との間のすき間Saと、本体部3の開口部4とに中詰材13を充填する。
【0062】
この実施形態においても、先に例示した実施形態と同様に、中詰材13を複数回に分けて投入し、一度目の投入では、支持体30の外周面と開口部4の内周面との間から閉塞部材11の上に5cm~20cm程度の厚さになるように第一の中詰材13aを投入して、その第一の中詰材13aを固化させることにより、閉塞部材11の上に固化した中詰材13aで薄い底板を形成するとよい。そして、その後に、開口部4が埋まるように残りの中詰材13を投入するとよい。
【0063】
その後、所定の養生期間が経過し、中詰材13が固化すると、プレキャストブロック2と固化された中詰材13とが一体化された上部工1が支持体30の上部に固定された状態になる。嵩上げ材12は、突出部6の内側にそのまま残しておいてもよいし、上部工1の施工後に回収してもよい。なお、嵩上げ材12として氷を用いる場合には、施工後に自然に溶けて水になるため、回収する必要はない。また、嵩上げ材12として生分解性の発泡成形品や生分解性のプラスチックを用いる場合には、施工後に自然に分解されるため、回収する必要はない。
【0064】
この実施形態のように、支持体30の外側面と突出部6の内側面との間に位置する水面上に嵩上げ材12を突出させて配置した状態にして、その嵩上げ材12の上を閉塞部材11により覆う構成にすると、支持体30の外側面と突出部6の内側面との間のすき間Saを塞ぐ底蓋を水面よりも高い位置に形成することが可能になる。底蓋を水面よりも高い位置に形成することで、底蓋を水面の高さに形成する場合よりも、上部工1の構築に必要な中詰材13の打設量を削減できる。また、嵩上げ材12を積層させる高さを調整することで、支持体30の外側面と突出部6の内側面との間のすき間Saを塞ぐ底蓋の高さを所望の高さに調整することも可能になる。
【0065】
この実施形態のように、ポリウレア系樹脂11aを嵩上げ材12の上に噴き付けて硬化させたもの(底蓋)を閉塞部材11として使用する場合には、嵩上げ材12を設けることで、支持体30の外側面と突出部6の内側面の濡れていない部分にポリウレア系樹脂11aを接着させることができる。それ故、支持体30の外側面と突出部6の内側面に対するポリウレア系樹脂11aの接着性を高めるには有利になる。また、例えば、予め想定していた潮位の予測値よりも施工水域の水面位置WLが低く、水没している突出部6の下端8から水面までの上下距離が想定していた距離よりも短い場合も想定される。そのような場合には、水面上に嵩上げ材12を突出させて配置した状態にして、嵩上げ材12の上にポリウレア系樹脂11aを噴き付けることで、水面にポリウレア系樹脂11aを噴き付ける場合よりも、ポリウレア系樹脂11aが突出部6の下方から外部へ流出するリスクを低くできる。
【0066】
図8に例示した実施形態では、閉塞部材11をポリウレア系樹脂11aで形成する場合を例示したが、
図9に例示する実施形態のように、嵩上げ材12の上に載置した板状体11bを閉塞部材11として使用することもできる。上部工1の構築方法におけるその他の作業手順は、
図8に例示した実施形態と同じである。
【0067】
図9に例示する実施形態では、支持体30に対してプレキャストブロック2を設置した後に、平面視での支持体30の外周面と突出部6の内周面との間のすき間Saと同寸法の板状体11bを作製する。具体的には、例えば、3Dスキャナなどの形状取得手段を用いて、平面視での支持体30の外周面と突出部6の内周面との間のすき間Saの形状情報を取得し、その取得した形状情報に基づいて板状体11bを作製する。板状体11bは一枚の板状部材で構成してもよいし、分割された複数の板状部材で構成してもよい。板状体11bの素材は特に限定されないが、例えば、樹脂などの弾性部材で形成するとよい。
【0068】
次いで、支持体30の外側面と突出部6の内側面との間に位置する水面上に嵩上げ材12を突出させて配置した状態にして、その嵩上げ材12の上に閉塞部材11として板状体11bを載置することで、板状体11bにより支持体30の外側面と突出部6の内側面との間のすき間Saを塞いだ状態にする。その後は、支持体30の外側面と突出部6の内側面との間のすき間Saと、本体部3の開口部4とに中詰材13を充填して固化させることにより、プレキャストブロック2と固化させた中詰材13とを一体化した上部工1を支持体30の上部に固定する。
【0069】
この実施形態のように、嵩上げ材12の上に載置した板状体11bを閉塞部材11として使用する場合にも、
図8に例示した実施形態と同様の効果を奏することができる。この実施形態のように、嵩上げ材12の上に閉塞部材11として板状体11bを載置する場合には、一度に多量の中詰材13を投入すると、中詰材13の荷重によって板状体11bと嵩上げ材12とが水中に沈み込む可能性がある。そのため、この実施形態においても、
図8に例示した実施形態と同様に、中詰材13を複数回に分けて投入し、一度目の投入では、支持体30の外周面と開口部4の内周面との間から板状体11bの上に5cm~20cm程度の厚さになるように第一の中詰材13aを投入し、閉塞部材11の上に固化した中詰材13aで薄い底板を形成するとよい。中詰材13aで支持体30の外周面と開口部4の内周面とに固定される薄い底板を形成することで、その後の残りの中詰材13aを投入する際に、板状体11bと嵩上げ材12とが水中に沈み込むことを防ぐことができる。
【0070】
本発明では、例えば、真空ポンプなどを用いて支持体30の外側面と突出部6の内側面との間の空間の圧力を大気圧よりも低い負圧状態にすることで、突出部6の外側の水面位置WLよりも、支持体30の外側面と突出部6の内側面との間に位置する水面を上方に変位させた状態とし、その上方に変位させた状態の水面にポリウレア系樹脂11aを噴き付けて硬化させる構成にすることもできる。この場合にも、ポリウレア系樹脂11aによって形成する底蓋を施工水域の水面位置WLよりも高い位置に形成できるので、前述した嵩上げ材12を用いる場合と概ね同様の効果を奏することができる。
【0071】
本発明において作製する突出部6を備えたプレキャストブロック2は、例えば、
図10および
図11に例示する実施形態のような構成にすることもできる。
【0072】
図10および
図11に例示する実施形態のプレキャストブロック2は、本体部3と突出部6とをプレキャスト材で一体成形している。この実施形態の突出部6はプレキャスト材で形成された円筒形状の突出ブロック部6bで構成されている。本体部3の開口部4と突出部6の挿通孔7は平面視で同一寸法にしている。
【0073】
この実施形態のように、プレキャストブロック2の本体部3と突出部6とをプレキャスト材で一体成形すると、高い強度の突出部6を形成できるので、施工中の波浪や漂流物の衝突などによる突出部6の損壊や、中詰材13を充填した際にかかる圧力(側圧)による突出部6の損壊をより確実に防ぐことができる。加えて、突出部6を突出ブロック部6bで構成することで、中詰材13を充填した際の側圧に耐え得る強度の突出部6を簡易に作製できる。突出部6を突出ブロック部6bで構成すると、プレキャストブロック2を船舶で搬送する際に、突出部6(突出ブロック部6b)を船舶の甲板上に安定した状態で載置できるので、プレキャストブロック2を搬送し易くなる。
【0074】
なお、本体部3と突出部6とをプレキャスト材で一体成形する場合にも、本体部3や突出部6の外形、本体部3の開口部4や突出部6の挿通孔7の形状などは、この実施形態の構成に限定されず、他にも様々な構成にすることができる。例えば、突出部6を多角筒形状の突出ブロック部6bで構成することもできる。この実施形態では、突出部6を構成する筒形状の突出ブロック部6bが上端から下端8にかけて外形(外径)が同じ寸法である場合を例示しているが、例えば、突出部6は、上端から下端8に向かって外形(外径)がテーパ状に先細りする形状にすることもできる。突出部6の外形を下方に向かってテーパ状に先細りする形状にすると、プレキャストブロック2の突出部6をより軽量にできるので、プレキャストブロック2を支持する支持体30や梁部材9に要求される強度をより低減でき、支持体30や梁部材9の断面寸法などをより小さくできるというメリットがある。また、突出部6を突出ブロック部6bで構成する場合にも、例えば、本体部3の開口部4や突出部6の挿通孔7に鞘管6aを内嵌めした構成にすることもできる。
【0075】
本発明において作製する突出部6を備えたプレキャストブロック2は、例えば、
図12および
図13に例示する実施形態のような構成にすることもできる。
【0076】
図12および
図13に例示する実施形態では、プレキャストブロック2を作製する際に、本体部3と突出部6をそれぞれ別々に作製し、本体部3の下部に突出部6を付設する構成にしている。この実施形態では、突出部6を構成する付設部材6cを作製し、その付設部材6cを固定具6dによって本体部3の下部に固定している。
【0077】
この実施形態の付設部材6cは、突出部6を構成する挿通孔7が設けられた管状部と、その管状部の上端に設けられていて管状部の外周側に延在するフランジ部とを有している。付設部材6cは、水上においても腐食し難い繊維強化プラスチック(FRP)などの樹脂で形成するとよい。付設部材6cは、例えば、金属で形成することもできるが、金属で形成する場合には、付設部材6cの露出面に、錆などの腐食を抑制する塗装を施しておくとよい。付設部材6cのフランジ部には固定具6dを構成するボルトを挿し込むボルト孔が複数箇所に形成されている。本体部3の下部には固定具6dを構成するナットが複数箇所に埋設されている。
【0078】
付設部材6cの管状部の挿通孔7と本体部3の開口部4の位置を合わせて、付設部材6cのフランジ部の上面を本体部3の下端面5に押し当てた状態とし、フランジ部を複数の固定具6dによって本体部3の下部に固定することで、付設部材6cを本体部3に固定している。本体部3の下部に突出部6(付設部材6c)を付設する作業は、プレキャストブロック2を施工水域まで搬送する前に行ってもよいし、本体部3と突出部6(付設部材6c)とを施工水域まで搬送した後に行ってもよい。例えば、固定具6dの代わりに、接着剤などを用いて付設部材6cを本体部3に接合する構成にすることもできる。
【0079】
この実施形態のように、プレキャストブロック2の本体部3と突出部6とをそれぞれ別々に作製して、本体部3の下部に突出部6を付設する構成にすると、プレキャストブロック2の本体部3と突出部6とを分離した状態で搬送できるので、プレキャストブロック2をよりコンパクトな状態で搬送できるというメリットがある。また、プレキャストブロック2の本体部3と突出部6を一体物として作製する場合には、本体部3の下端面5を形成するための型枠を中空に配置する必要があるため、その型枠を支持する型枠支保工を構築する必要があるが、本体部3と突出部6をそれぞれ別々に作製する構成にすると、前述した型枠支保工を構築する必要がないというメリットもある。一方で、プレキャストブロック2の本体部3と突出部6を一体物として作製する場合には、本体部3に突出部6を付設する作業が不要になるというメリットがある。
【0080】
本体部3に付設する構成の突出部6は、この実施形態の付設部材6cの他にも様々な構成にすることができる。例えば、
図10および
図11で例示した実施形態の突出ブロック部6bを本体部3とは別に作製し、本体部3に固定具や接着剤などを用いて突出ブロック部6bを接合することもできる。また、例えば、本体部3に付設する構成の突出部6は、複数の分割部材で構成することもできる。具体的には例えば、挿通孔7の一部を形成する溝が設けられた複数の分割部材を作製し、分割部材どうしを継ぎ合わせた状態で本体部3の下部に固定することで、本体部3の下部に挿通孔7を有する突出部6を形成する構成にすることもできる。
【0081】
図14~
図16に例示する実施形態のように、本発明では、支持体30が鋼矢板である場合にも同様の方法で上部工1を構築することが可能である。この実施形態では、岸壁Qの側方に上部工1を構築する場合を例示する。
【0082】
図14および
図15に例示するように、この実施形態では、支持体30としてハット形の鋼矢板が岸壁Qの側方の水底地盤に立設されている。この実施形態のプレキャストブロック2の本体部3は、岸壁Q側から施工水域側に間隔をあけて配置された一対の側壁部3aと、一対の側壁部3aの上部に架け渡された複数の架橋部3bとを有していて、一対の側壁部3aと複数の架橋部3bとで囲われた開口部4が設けられている。
【0083】
この実施形態では、岸壁Q側の側壁部3aを岸壁Qの上面に載置し、施工水域側の側壁部3aを施工水域に配置している。この実施形態では、施工水域側の側壁部3aの下部が突出部6を構成している。
図15に図示している施工水域側の側壁部3aの破線よりも上側の部分が本体部3の一部であり、側壁部3aの破線よりも下側の部分が突出部6である。即ち、この実施形態では、本体部3と突出部6が同じ部材(側壁部3a)で構成されている。また、この実施形態の突出部6は挿通孔7を有さずに、一対の側壁部3aの間に支持体30が配置される構成になっている。
【0084】
図14および
図15に例示するように、この実施形態では、岸壁Q側の側壁部3aを岸壁Qの上面に載置し、架橋部3bを支持体30の上に載置することで、支持体30の上部にプレキャストブロック2が支持された状態にしている。突出部6(施工水域側の側壁部3aの下部)は支持体30の外側に配置した状態とし、突出部6の下端8を施工水域の水面下に水没させている。
【0085】
この実施形態では、プレキャストブロック2の上からの作業で、支持体30の外側面と突出部6の内側面との間に位置する水面に、噴射器を用いて液状のポリウレア系樹脂11aを噴き付け、水面上で硬化させたポリウレア系樹脂11aにより、支持体30の外側面と突出部6の内側面との間のすき間Saを塞いだ状態にしている。この実施形態では、支持体30の外側面と岸壁Qの壁面との間に位置する水面にも、液状のポリウレア系樹脂11aを噴き付け、水面上で硬化させたポリウレア系樹脂11aにより、支持体30の外側面と岸壁Qの壁面との間のすき間も塞いだ状態にしている。
【0086】
そして、
図16に例示するように、プレキャストブロック2の本体部3の開口部4に中詰材13を投入して、支持体30の外側面と突出部6の内側面との間のすき間Saと、支持体30の外側面と岸壁Qの壁面との間のすき間と、本体部3の開口部4とに、中詰材13を充填して固化させることにより、プレキャストブロック2と固化させた中詰材13とを一体化した上部工1を支持体30の上部に固定している。
【0087】
この実施形態のように、支持体30が鋼矢板である場合にも、先に例示した実施形態と同様に、支持体30に設置したプレキャストブロック2の下方での作業を行わずに、水上の上部工1を効率的に構築することができる。
【0088】
なお、
図10および
図11に例示した実施形態と、
図12および
図13に例示した実施形態と、
図14~
図16に例示した実施形態では、支持体30の外側面と突出部6の内側面との間に位置する水面にポリウレア系樹脂11aを噴き付けている場合を例示しているが、いずれの実施形態の場合にも、例えば、支持体30の外側面と突出部6の内側面との間に位置する水面に嵩上げ材12を突出させて配置した状態にして、その嵩上げ材12の上を閉塞部材11(硬化させたポリウレア系樹脂11aや板状体11b)により覆う構成にすることもできる。
【0089】
また、
図1~
図7に例示した実施形態と、
図8に例示した実施形態と、
図9に例示した実施形態と、
図10および
図11に例示した実施形態と、
図12および
図13に例示した実施形態とでは、支持体30が杭であり、本体部3の開口部4に支持体30が遊挿された状態になる場合を例示したが、例えば、支持体30が杭や鋼管矢板である場合にも、本体部3の開口部4に支持体30が遊挿されずに、支持体30の上端が本体部3よりも下方の突出部6の側方に位置する構成にすることもできる。
【0090】
上述したそれぞれの実施形態では、突出部6を備えたプレキャストブロック2を用いて上部工1を構築する場合を例示したが、
図17に例示する実施形態や
図18に例示する実施形態のように、本発明では、突出部6を設けていないプレキャストブロック2を用いて上部工1を構築することも可能である。
【0091】
図17に例示する実施形態と
図18に例示する実施形態で用いているそれぞれのプレキャストブロック2は、本体部3の下端面から突出する突出部6を有さない構造になっている。プレキャストブロック2のその他の構成は、
図1~
図7に例示した実施形態のプレキャストブロック2と同じである。つまり、
図17に例示する実施形態と
図18に例示する実施形態の構築方法では、上下に貫通する開口部4を有する本体部3を備えたプレキャストブロック2を予め作製している。
【0092】
図17に例示する実施形態では、本体部3の開口部4の内側に支持体30を配置した状態でプレキャストブロック2を所定位置に配置し、プレキャストブロック2の下端よりも施工水域の水面が上方に位置した状態で、支持体30の外側面と開口部4の内側面との間に位置する水面にポリウレア系樹脂11aを噴き付けている。そして、水面上で硬化させたポリウレア系樹脂11aにより、支持体30の外側面と開口部4の内側面との間のすき間Sbを塞いだ状態にしている。
【0093】
このポリウレア系樹脂11aを噴き付ける作業では、支持体30の外側面と開口部4の内側面との間に位置する水面の全面を覆うようにポリウレア系樹脂11aを噴き付ける。水面付近の支持体30の外側面の全周と開口部4の内側面の全周にもポリウレア系樹脂11aを噴き付ける。水面にポリウレア系樹脂11aを噴き付けると数秒から数分程度でポリウレア系樹脂11aが水面上で硬化した状態となり、水面付近の支持体30の外側面と開口部4の内側面にもポリウレア系樹脂11aが強固に接着した状態になる。そして、硬化したポリウレア系樹脂11aによって形成された底蓋が、支持体30と本体部3(開口部4の内側面)に対して固定された状態になる。
【0094】
図18に例示する実施形態では、本体部3の開口部4の内側に支持体30を配置した状態でプレキャストブロック2を所定位置に配置し、プレキャストブロック2の下端よりも施工水域の水面が上方に位置した状態で、支持体30の外側面と本体部3の開口部4の内側面との間に位置する水面上に嵩上げ材12を突出させて配置した状態にして、その嵩上げ材12の上を閉塞部材11により覆って、閉塞部材11により支持体30の外側面と開口部4の内側面との間のすき間Sbを塞いだ状態にしている。
図18に例示する実施形態では、閉塞部材11としてポリウレア系樹脂11aを嵩上げ材12の上に噴き付けて、ポリウレア系樹脂11aを硬化させることで、閉塞部材11を形成している場合を例示しているが、例えば、閉塞部材11として板状体11bを嵩上げ材12の上に載置することもできる。
【0095】
その後は、
図17に例示する実施形態と
図18に例示する実施形態のいずれにおいても、支持体30の外側面と開口部4の内側面との間のすき間Sbと、本体部3の開口部4とに中詰材13を充填して固化させることにより、プレキャストブロック2と固化させた中詰材13とを一体化した上部工1を支持体30の上部に固定する。より具体的には、支持体30に設けている仕切板20よりも上方の支持体30の内側と、支持体30の外側面と本体部3の開口部4の内側面との間のすき間Sbと、開口部4の上部(上部孔4a)とに、中詰材13を充填する。
【0096】
図17に例示する実施形態と
図18に例示する実施形態のいずれにおいても、先に例示した実施形態と同様に、中詰材13を複数回に分けて投入することが好ましい。一度目の投入では、支持体30の外周面と開口部4の内周面との間から水面または閉塞部材11の上に5cm~20cm程度の厚さになるように第一の中詰材13aを投入して、その第一の中詰材13aを固化させることにより、水面または閉塞部材11の上に固化した中詰材13aで薄い底板を形成するとよい。そして、その後に、開口部4が埋まるように残りの中詰材13を投入するとよい。
【0097】
このように、本発明では、プレキャストブロック2の本体部3の下端よりも施工水域の水位が上方に位置する状況になり得る場合には、突出部6を設けていないプレキャストブロック2を用いて上部工1を構築することも可能である。言い換えると、潮位変動などにより一時的に水中に一部が没する上部工1を構築する場合には、プレキャストブロック2の本体部3の下端よりも施工水域の水面が上方に位置する日時に、施工を行うことで、突出部6を設けていないプレキャストブロック2を用いて上部工1を簡易に構築することができる。
【0098】
図17に例示する実施形態のように、本体部3の開口部4の内側に支持体30を配置した状態でプレキャストブロック2を所定位置に配置し、プレキャストブロック2の下端よりも施工水域の水面が上方に位置した状態で、支持体30の外側面と開口部4の内側面との間に位置する水面にポリウレア系樹脂11aを噴き付けると、支持体30に設置したプレキャストブロック2の下方での作業を行わずに、支持体30の外側面と開口部4の内側面との間のすき間Sbを簡易に塞ぐことができる。
【0099】
また、
図18に例示する実施形態のように、本体部3の開口部4の内側に支持体30を配置した状態でプレキャストブロック2を所定位置に配置し、プレキャストブロック2の下端よりも施工水域の水面が上方に位置した状態で、支持体30の外側面と開口部4の内側面との間に位置する水面上に嵩上げ材12を突出させて配置した状態にする。そして、その嵩上げ材12の上を閉塞部材11(ポリウレア系樹脂11aや板状体11b)により覆うと、支持体30に設置したプレキャストブロック2の下方での作業を行わずに、支持体30の外側面と開口部4の内側面との間のすき間Sbを簡易に塞ぐことができる。
【0100】
その後は、
図17に例示する実施形態と
図18に例示する実施形態のいずれにおいても、支持体30の外側面と開口部4の内側面との間のすき間Sbと、本体部3の開口部4とに中詰材13を充填して固化させることで、支持体30に設置したプレキャストブロック2の下方での作業を行わずに、水上の上部工1を効率的に構築することができる。
【0101】
図17に例示する実施形態や
図18に例示する実施形態のように、プレキャストブロック2の本体部3の下端よりも施工水域の水位が上方に位置する状況になり得る場合には、突出部6を設けていないプレキャストブロック2を用いることで、突出部6を設けたプレキャストブロック2を用いる場合よりも、上部工1をより簡素に構築できるというメリットがある。一方で、突出部6を設けたプレキャストブロック2を用いると、プレキャストブロック2の本体部3の下端よりも施工水域の水位が下方に位置している場合にも、上部工1を構築することが可能になる。それ故、突出部6を設けたプレキャストブロック2を用いると、プレキャストブロック2の本体部3の下端と施工水域の水位との位置関係の制約や、施工水域の潮位変動の影響を受けることなく、上部工1を構築できるというメリットがある。
【0102】
なお、プレキャストブロック2の本体部3の下端よりも施工水域の水位が上方に位置する状況になり得る場合には、支持体30が鋼矢板である場合にも同様の方法で、突出部6を設けていないプレキャストブロック2を用いて、上部工1を構築することが可能である。
【0103】
図17に例示する実施形態や
図18に例示する実施形態のように、支持体30の外側面と開口部4の内側面とにポリウレア系樹脂11aを接着させる場合には、支持体30の外側面や開口部4の内側面に、ポリウレア系樹脂11aとの接着性を高める凹凸部を設けることもできる。支持体30の外側面や開口部4の内側面に対する凹凸部の突出幅は、開口部4の内側面と支持体30の外側面との間のクリアランスを確保できるサイズ、具体的には例えば、5mm以上20mm以下に設定するとよい。支持体30の外側面または開口部4の内側面の少なくともいずれかに凹凸部を設けると、硬化したポリウレア系樹脂11aによって安定した底蓋を形成するには有利になる。支持体30の外側面および開口部4の内側面の両方に凹凸部を設けると、硬化したポリウレア系樹脂11aによって安定した底蓋を形成するにはより一層有利になる。
【0104】
本発明では、例えば、突出部6を設けたプレキャストブロック2を用いて上部工1を構築する場合においても、施工水域の潮位が想定よりも高い場合には、本体部3の開口部4と突出部6の内側に支持体30を配置した状態でプレキャストブロック2を所定位置に配置したときに、プレキャストブロック2の下端よりも施工水域の水面が上方に位置した状態になる場合がある。前述した状況では、例えば、突出部6を設けたプレキャストブロック2を用いる場合にも、支持体30の外側面と開口部4の内側面との間に位置する水面にポリウレア系樹脂11aを噴き付けて、水面上で硬化させたポリウレア系樹脂11aにより、支持体30の外側面と開口部4の内側面との間のすき間Sbを塞いだ状態にすることもできる。また、前述した状況では、例えば、突出部6を設けたプレキャストブロック2を用いる場合にも、支持体30の外側面と開口部4の内側面との間に位置する水面上に嵩上げ材12を突出させて配置した状態にして、その嵩上げ材12の上を閉塞部材11により覆って、閉塞部材11により支持体30の外側面と開口部4の内側面との間のすき間Sbを塞いだ状態にすることもできる。
【0105】
上部工1(プレキャストブロック2)の形状や大きさなどは、上記で例示したそれぞれの実施形態に限定されず、他にも様々な構成にすることができる。上記では、1本の支持体30(杭)に固定される上部工1を構築する場合を主に例示したが、例えば、本体部3に複数の開口部4と複数の突出部6(挿通孔7)を有するプレキャストブロック2を作製して、それぞれの開口部4と挿通孔7に別々の支持体30(杭)を遊挿した状態にすることで、複数本の支持体30に渡って延在する上部工1を構築することも可能である。また、例えば、上面視でL字形や多角形状や円形状などの上部工1(プレキャストブロック2)を構築することもできる。
【符号の説明】
【0106】
1 上部工
2 プレキャストブロック
3 本体部
3a 側壁部
3b 架橋部
4 開口部
4a 上部孔
4b 下部孔
5 (本体部の)下端面
6 突出部
6a 鞘管
6b 突出ブロック部
6c 付設部材
6d 固定具
7 挿通孔
8 (突出部の)下端
9 梁部材
10 吊金具
11 閉塞部材
11a ポリウレア系樹脂
11b 板状体
12 嵩上げ材
13 中詰材
13a 第一の中詰材
20 仕切板
30 支持体
Sa (支持体の外側面と突出部の内側面との間の)すき間
Sb (支持体の外側面と開口部の内側面との間の)すき間
WL 水面位置
LWL 干潮水位
WB 水底地盤
Q 岸壁