(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024179040
(43)【公開日】2024-12-26
(54)【発明の名称】光断層画像撮影装置
(51)【国際特許分類】
A61B 3/10 20060101AFI20241219BHJP
G01N 21/17 20060101ALI20241219BHJP
G01N 21/21 20060101ALI20241219BHJP
【FI】
A61B3/10 100
G01N21/17 630
G01N21/21 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023097533
(22)【出願日】2023-06-14
(71)【出願人】
【識別番号】501299406
【氏名又は名称】株式会社トーメーコーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】110000110
【氏名又は名称】弁理士法人 快友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】杉山 聡
(72)【発明者】
【氏名】山成 正宏
(72)【発明者】
【氏名】スチャンドラ バナジー
【テーマコード(参考)】
2G059
4C316
【Fターム(参考)】
2G059AA05
2G059BB12
2G059EE02
2G059EE09
2G059FF02
2G059JJ11
2G059JJ15
2G059JJ17
2G059JJ19
2G059JJ20
2G059JJ22
2G059KK03
2G059MM01
2G059MM08
2G059PP04
4C316AA09
4C316AB04
4C316AB08
4C316AB11
4C316FB13
4C316FZ01
(57)【要約】
【課題】偏光感受型の光断層画像撮影装置で取得される情報から、簡便かつ有用な画像を生成する技術を提供する。
【解決手段】光断層画像撮影装置は、偏光感受型の光断層画像撮影装置である。光断層画像撮影装置は、被検眼の断層画像を撮影する撮影部と、断層画像の深さ方向の範囲を指定する指定手段と、演算部と、を備えている。断層画像は、被検眼に第1の偏光波を照射することで撮影された第1断層画像と、被検眼に第1の偏光波とは異なる振動方向を有する第2の偏光波を照射することで撮影された第2断層画像と、を含んでいる。演算部は、第1断層画像と第2断層画像に基づいて、指定手段で指定された断層画像の深さ方向の範囲について、複屈折を示す画像及び線維の走行態様を示す画像の少なくとも1つを生成する画像生成処理を実行可能に構成されている。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
偏光感受型の光断層画像撮影装置であって、
被検眼の断層画像を撮影する撮影部と、
前記断層画像の深さ方向の範囲を指定する指定手段と、
演算部と、を備えており、
前記断層画像は、前記被検眼に第1の偏光波を照射することで撮影された第1断層画像と、前記被検眼に前記第1の偏光波とは異なる振動方向を有する第2の偏光波を照射することで撮影された第2断層画像と、を含んでおり、
前記演算部は、前記第1断層画像と前記第2断層画像に基づいて、前記指定手段で指定された前記断層画像の深さ方向の範囲について、複屈折を示す画像及び線維の走行態様を示す画像の少なくとも1つを生成する画像生成処理を実行可能に構成されている、光断層画像撮影装置。
【請求項2】
前記線維の走行態様を示す画像を表示する表示部をさらに備えており、
前記表示部は、前記線維の走行態様を示す画像と共に、前記線維の走行態様を示す画像の対応する位置に線維の走行方向を示す線を重畳して表示する、請求項1に記載の光断層画像撮影装置。
【請求項3】
前記表示部は、前記線維の走行態様を示す画像の対応する位置に、複屈折強度が所定値より大きい領域を示す画像をさらに重畳して表示する、請求項2に記載の光断層画像撮影装置。
【請求項4】
前記複屈折を示す画像を表示する表示部をさらに備えており、
前記表示部は、複屈折が所定値より高い領域の厚さを示す厚さマップを表示する、請求項1に記載の光断層画像撮影装置。
【請求項5】
前記複屈折を示す画像を表示する表示部をさらに備えており、
前記演算部は、
前記被検眼内の各層を特定する層特定処理と、
前記層特定処理で特定された各層について、複屈折が所定値より高いか否かを判定する判定処理と、をさらに実行可能に構成されており、
前記表示部は、前記特定処理で複屈折が所定値より高いと判定された層の数を示す層数マップを表示する、請求項1に記載の光断層画像撮影装置。
【請求項6】
前記演算部は、
前記被検眼内の各層を特定する層特定処理と、
前記層特定処理で特定された各層について、隣接する層との間の相対角を算出する第1算出処理と、
前記指定手段で指定された前記断層画像の深さ方向の範囲について、前記第1算出処理で算出された相対角の総和を算出する第2算出処理と、をさらに実行可能に構成されており、
前記第2算出処理で算出された前記相対角の総和について、角度を示す角度マップを表示する表示部をさらに備える、請求項1に記載の光断層画像撮影装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書に開示する技術は、偏光感受型の光断層画像撮影装置に関する。
【背景技術】
【0002】
光断層画像撮影装置は、非侵襲、非接触であるため、生体組織の断層画像を取得する方法として眼科装置等に広く利用されている。また近年では、多機能性の光断層画像撮影装置の一つである偏光感受型の光断層画像撮影装置が開発されている。偏光状態を変化させる複屈折は分子や繊維組織が一定方向に配列する組織において生じる。偏光感受型の光断層画像撮影装置を用いると、複屈折性を可視化することができる。例えば、特許文献1に、偏光感受型の光断層画像撮影装置の一例が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載されるような偏光感受型の光断層画像撮影装置を用いると、複屈折性に関する種々の特徴を可視化することができる。このため、偏光感受型の光断層画像撮影装置では、被検眼の断面を示す断層画像(以下、通常の断層画像ともいう)では取得できない多くの情報を含む画像を生成することが可能となり、被検眼の状態を多面的に解析することができる。しかしながら、偏光感受型の光断層画像撮影装置で取得した情報を用いて画像を生成すると、通常の断層画像より画像が複雑になるため、臨床上有用な情報を正確に読み解くことが難しいという問題があった。
【0005】
本明細書は、偏光感受型の光断層画像撮影装置で取得される情報から、簡便かつ有用な画像を生成する技術を開示する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本明細書に開示する技術の第1の態様では、光断層画像撮影装置は、偏光感受型の光断層画像撮影装置である。光断層画像撮影装置は、被検眼の断層画像を撮影する撮影部と、断層画像の深さ方向の範囲を指定する指定手段と、演算部と、を備えている。断層画像は、被検眼に第1の偏光波を照射することで撮影された第1断層画像と、被検眼に第1の偏光波とは異なる振動方向を有する第2の偏光波を照射することで撮影された第2断層画像と、を含んでいる。演算部は、第1断層画像と第2断層画像に基づいて、指定手段で指定された断層画像の深さ方向の範囲について、複屈折を示す画像及び線維の走行態様を示す画像の少なくとも1つを生成する画像生成処理を実行可能に構成されている。
【0007】
上記の光断層画像撮影装置では、深さ方向の範囲を指定し、指定された範囲の複屈折を示す画像及び線維の走行態様を示す画像の少なくとも1つを生成することにより、ユーザが所望する深さ方向の範囲のみについての画像を生成することができる。これにより、ユーザによって不要な深さ方向の範囲の情報が除かれることで情報量を減らすことができる。このため、画像が見易くなり、被検眼の状態を容易かつ正確に確認することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施例1~7に係る光断層画像撮影装置の光学系の概略構成を示す図。
【
図2】実施例1~7に係る光断層画像撮影装置の制御系を示すブロック図。
【
図3】サンプリングトリガー/クロック発生器の構成を示すブロック図。
【
図4】実施例1において、被検眼の所望の深さ方向の範囲について、複屈折の強度マップを生成する処理の一例を示すフローチャート。
【
図5】(a)は複屈折を示す断層画像であり、(b)は(a)に層の境界を重畳した画像であり、(c)は被検眼の選択された深さ方向の範囲のみの複屈折の強度マップを示す画像である。
【
図6】実施例2において、被検眼の所望の深さ方向の範囲について、線線維走行マップを生成する処理の一例を示すフローチャート。
【
図7】(a)は線維の走行方向を示す断層画像に層の境界を重畳した画像であり、(b)は被検眼の選択された深さ方向の範囲r1(視神経線維層(NFL)とヘンレ線維層)のみの線線維走行マップを示す画像である。
【
図8】(a)は線維の走行方向を示す断層画像に層の境界を重畳した画像であり、(b)は被検眼の選択された深さ方向の範囲r2(強膜)のみの線線維走行マップを示す画像である。
【
図9】(a)は線維の走行方向を示す断層画像に層の境界を重畳した画像であり、(b)は被検眼の選択された深さ方向の範囲r1において、線線維走行マップにストリームラインを重畳した画像である。
【
図10】(a)は線維の走行方向を示す断層画像に層の境界を重畳した画像であり、(b)は被検眼の選択された深さ方向の範囲r2において、線線維走行マップにストリームラインを重畳した画像である。
【
図11】実施例4において、被検眼の所望の深さ方向の範囲について、ストリームラインに高複屈折領域を重畳して表示する処理の一例を示すフローチャート。
【
図12】(a)は線維の走行方向を示す断層画像に層の境界を重畳した画像であり、(b)は被検眼の選択された深さ方向の範囲r1において、ストリームラインに高複屈折領域を重畳した画像である。
【
図13】(a)は線維の走行方向を示す断層画像に層の境界を重畳した画像であり、(b)は被検眼の選択された深さ方向の範囲r2において、ストリームラインに高複屈折領域を重畳した画像である。
【
図14】実施例5において、被検眼の所望の深さ方向の範囲について、高複屈折領域の厚さマップを生成する処理の一例を示すフローチャート。
【
図15】(a)は複屈折を示す断層画像に層の境界を重畳した画像であり、(b)は被検眼の選択された深さ方向の範囲の高複屈折領域を示す画像であり、(c)は被検眼の選択された深さ方向の範囲のみの高複屈折領域の厚さマップを示す画像である。
【
図16】(a)は複屈折を示す断層画像に層の境界を重畳した画像であり、(b)は被検眼選択されたの深さ方向の範囲の高複屈折領域を示す画像であり、(c)は被検眼の選択された深さ方向の範囲のみの高複屈折の層数マップを示す画像である。
【
図17】実施例7において、被検眼の所望の深さ方向の範囲について、相対角マップを生成する処理の一例を示すフローチャート。
【
図19】
図18の要部XIXに対応する線維の走行方向を示す断層画像。
【
図20】
図18の要部XXに対応する線維の走行方向を示す断層画像。
【
図21】は被検眼の選択された深さ方向の範囲の相対角マップを示す画像。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に説明する実施例の主要な特徴を列記しておく。なお、以下に記載する技術要素は、それぞれ独立した技術要素であって、単独であるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組合せに限定されるものではない。
【0010】
本明細書に開示する技術の第2の態様では、上記の第1の態様において、光断層画像撮影装置は、線維の走行態様を示す画像を表示する表示部をさらに備えていてもよい。表示部は、線維の走行態様を示す画像と共に、線維の走行態様を示す画像の対応する位置に線維の走行方向を示す線を重畳して表示してもよい。線維の走行態様を示す画像は、一般的に線維の走行方向を色分けして表示するものであり、色の違いから線維の走行方向を読み取ることは難しい。線維の走行態様を示す画像に線維の走行方向を示す線を重畳して表示することによって、線維の走行方向が把握し易くなる。
【0011】
本明細書に開示する技術の第3の態様では、上記の第2の態様において、表示部は、線維の走行態様を示す画像の対応する位置に、複屈折強度が所定値より大きい領域を示す画像をさらに重畳して表示してもよい。このような構成によると、線維の走行方向と複屈折強度が高い領域との関係を把握し易くなる。複屈折の強度と線維の走行方向は、別個に評価することも有用だが、両者を統合して評価することも重要である。線維の走行態様を示す画像に複屈折強度が所定値より大きい領域を示す画像を重畳して表示することによって、複屈折の強度と線維の走行方向を統合的に評価し易くなる。
【0012】
本明細書に開示する技術の第4の態様では、上記の第1の態様において、光断層画像撮影装置は、複屈折を示す画像を表示する表示部をさらに備えていてもよい。表示部は、複屈折が所定値より高い領域の厚さを示す厚さマップを表示してもよい。このような構成によると、複屈折が高い領域の厚さを把握し易くなる。例えば、複屈折の強度を示す強度マップでは、複屈折が高い領域の位置を把握することはできる一方で、複屈折が高い領域の厚さを把握するためには、各断層画像を確認する必要が生じる。複屈折が所定値より高い領域の厚さを示す厚さマップを表示することによって、複屈折が高い領域の厚さを容易に把握することができる。
【0013】
本明細書に開示する技術の第5の態様では、上記の第1の態様において、光断層画像撮影装置は、複屈折を示す画像を表示する表示部をさらに備えていてもよい。演算部は、被検眼内の各層を特定する層特定処理と、層特定処理で特定された各層について、複屈折が所定値より高いか否かを判定する判定処理と、をさらに実行可能に構成されていてもよい。表示部は、特定処理で複屈折が所定値より高いと判定された層の数を示す層数マップを表示してもよい。このような構成によると、複屈折が所定値より高い層の数を容易に把握することができる。
【0014】
本明細書に開示する技術の第6の態様では、上記の第1の態様において、演算部は、被検眼内の各層を特定する層特定処理と、層特定処理で特定された各層について、隣接する層との間の相対角を算出する第1算出処理と、指定手段で指定された断層画像の深さ方向の範囲について、第1算出処理で算出された相対角の総和を算出する第2算出処理と、をさらに実行可能に構成されていてもよい。光断層画像撮影装置は、第2算出処理で算出された相対角の総和について、角度を示す角度マップを表示する表示部をさらに備えていてもよい。このような構成によると、被検眼内の相対角の状態を把握し易くなる。隣接する層において、線維の走行方向がどのくらい異なっているのかという情報は、例えば、眼軸長の進展に対してストレス耐性を有するか否か等、臨床上重要な意味を有する。相対角マップを表示することによって、相対角の総和の分布を容易に把握することができる。
【実施例0015】
(実施例1)
図面を参照して、実施例に係る光断層画像撮影装置について説明する。本実施例の光断層画像撮影装置は、波長掃引型の光源を用いた波長掃引型のフーリエドメイン方式(swept-source optical coherence tomography:SS-OCT)で、被検物の偏光特性を捉えることが可能な偏光感受型OCT(polarization-sensitive OCT:PS-OCT)の装置である。
【0016】
図1に示すように、本実施例の光断層画像撮影装置は、光源11と、光源11の光から測定光を生成する測定光生成部(21~29、31、32)と、光源11の光から参照光を生成する参照光生成部(41~46、51)と、測定光生成部で生成される被検眼500からの反射光と参照光生成部で生成される参照光とを合波して干渉光を生成する干渉光生成部60、70と、干渉光生成部60、70で生成された干渉光を検出する干渉光検出部80、90を備えている。
【0017】
(光源)
光源11は、波長掃引型の光源であり、出射される光の波長(波数)が所定の周期で変化する。被検眼500に照射される光の波長が変化(掃引)するため、被検眼500からの反射光と参照光との干渉光から得られる信号をフーリエ解析することで、被検眼500の深さ方向の各部位から反射される光の強度分布を得ることができる。
【0018】
なお、光源11には、偏光制御装置12及びファイバカプラ13が接続され、ファイバカプラ13にはPMFC(偏波保持ファイバカプラ)14及びサンプリングトリガー/クロック発生器100が接続されている。したがって、光源11から出力される光は、偏光制御装置12及びファイバカプラ13を介して、PMFC14及びサンプルトリガー/クロック発生器100のそれぞれに入力される。サンプリングトリガー/クロック発生器100は、光源11の光を用いて、後述する信号処理器83、93それぞれのサンプリングトリガー及びサンプリングクロックを生成する。
【0019】
(測定光生成部)
測定光生成部(21~29、31、32)は、PMFC14に接続されたPMFC21と、PMFC21から分岐する2つの測定光路S1、S2と、2つの測定光路S1、S2を接続する偏光ビームコンバイナ/スプリッタ25と、偏光ビームコンバイナ/スプリッタ25に接続されるコリメータレンズ26、ガルバノミラー27、28及びレンズ29を備えている。測定光路S1には、光路長差生成部22とサーキュレータ23が配置されている。測定光路S2には、サーキュレータ24のみが配置されている。したがって、測定光路S1と測定光路S2との光路長差ΔLは、光路長差生成部22によって生成される。光路長差ΔLは、被検眼500の深さ方向の測定範囲よりも長く設定してもよい。これにより、光路長差の異なる干渉光が重なることを防止できる。光路長差生成部22には、例えば、光ファイバが用いられてもよいし、ミラーやプリズム等の光学系が用いられてもよい。本実施例では、光路長差生成部22に、1mのPMファイバを用いている。また、測定光生成部は、PMFC31、32をさらに備えている。PMFC31は、サーキュレータ23に接続されている。PMFC32は、サーキュレータ24に接続されている。
【0020】
上記の測定光生成部(21~29、31、32)には、PMFC14で分岐された一方の光(すなわち、測定光)が入力される。PMFC21は、PMFC14から入力する測定光を、第1測定光と第2測定光に分割する。PMFC21で分割された第1測定光は測定光路S1に導かれ、第2測定光は測定光路S2に導かれる。測定光路S1に導かれた第1測定光は、光路長差生成部22及びサーキュレータ23を通って偏光ビームコンバイナ/スプリッタ25に入力される。測定光路S2に導かれた第2測定光は、サーキュレータ24を通って偏光ビームコンバイナ/スプリッタ25に入力される。PMファイバ304は、偏光ビームコンバイナ/スプリッタ25に、PMファイバ302に対して円周方向に90度回転した状態で接続される。これにより、偏光ビームコンバイナ/スプリッタ25に入力される第2測定光は、第1測定光に対して直交する偏光成分を持った光となる。測定光路S1に光路長差生成部22が設けられているため、第1測定光は第2測定光に対して光路長差生成部22の距離だけ遅延している(すなわち、光路長差ΔLが生じている)。偏光ビームコンバイナ/スプリッタ25は、入力される第1測定光と第2測定光を重畳する。偏光ビームコンバイナ/スプリッタ25から出力される光(第1測定光と第2測定光が重畳された光)は、コリメータレンズ26、ガルバノミラー27、28及びレンズ29を介して被検眼500に照射される。被検眼500に照射される光は、ガルバノミラー27、28によってx-y方向に走査される。
【0021】
被検眼500に照射された光は、被検眼500によって反射する。ここで、被検眼500で反射される光は、被検眼500の表面や内部で散乱する。被検眼500からの反射光は、入射経路とは逆に、レンズ29、ガルバノミラー28、27及びコリメータレンズ26を通って、偏光ビームコンバイナ/スプリッタ25に入力される。偏光ビームコンバイナ/スプリッタ25は、入力される反射光を、互いに直交する2つの偏光成分に分割する。ここでは便宜上それらを水平偏光反射光(水平偏光成分)と垂直偏光反射光(垂直偏光成分)と呼ぶ。そして、水平偏光反射光は測定光路S1に導かれ、垂直偏光反射光は測定光路S2に導かれる。
【0022】
水平偏光反射光は、サーキュレータ23により光路が変更され、PMFC31に入力される。PMFC31は、入力される水平偏光反射光を分岐して、PMFC61、71のそれぞれに入力する。したがって、PMFC61、71に入力される水平偏光反射光には、第1測定光による反射光成分と、第2測定光による反射光成分が含まれている。垂直偏光反射光は、サーキュレータ24により光路が変更され、PMFC32に入力される。PMFC32は、入力される垂直偏光反射光を分岐して、PMFC62、72に入力する。したがって、PMFC62、72に入力される垂直偏光反射光には、第1測定光による反射光成分と、第2測定光による反射光成分が含まれている。
【0023】
(参照光生成部)
参照光生成部(41~46、51)は、PMFC14に接続されたサーキュレータ41と、サーキュレータ41に接続された参照遅延ライン(42、43)と、サーキュレータ41に接続されたPMFC44と、PMFC44から分岐する2つの参照光路R1、R2と、参照光路R1に接続されるPMFC46と、参照光路R2に接続されるPMFC51を備えている。参照光路R1には、光路長差生成部45が配置されている。参照光路R2には、光路長差生成部は設けられていない。したがって、参照光路R1と参照光路R2との光路長差ΔL’は、光路長差生成部45によって生成される。光路長差生成部45には、例えば、光ファイバが用いられる。光路長差生成部45の光路長ΔL’は、光路長差生成部22の光路長ΔLと同一としてもよい。光路長差ΔLとΔL’を同一にすることで、後述する複数の干渉光の被検眼500に対する深さ位置が同一となる。すなわち、取得される複数の断層像の位置合わせが不要となる。
【0024】
上記の参照光生成部(41~46、51)には、PMFC14で分岐された他方の光(すなわち、参照光)が入力される。PMFC14から入力される参照光は、サーキュレータ41を通って参照遅延ライン(42、43)に入力される。参照遅延ライン(42、43)は、コリメータレンズ42と参照ミラー43によって構成されている。参照遅延ライン(42、43)に入力された参照光は、コリメータレンズ42を介して参照ミラー43に照射される。参照ミラー43で反射された参照光は、コリメータレンズ42を介してサーキュレータ41に入力される。ここで、参照ミラー43は、コリメータレンズ42に対して近接又は離間する方向に移動可能となっている。本実施例では、測定を開始する前に、被検眼500からの信号がOCTの深さ方向の測定範囲内に収まるように、参照ミラー43の位置を調整している。
【0025】
参照ミラー43で反射された参照光は、サーキュレータ41により光路が変更され、PMFC44に入力される。PMFC44は、入力する参照光を、第1参照光と第2参照光に分岐する。第1参照光は参照光路R1に導かれ、第2参照光は参照光路R2に導かれる。第1参照光は、光路長差生成部45を通ってPMFC46に入力される。PMFC46に入力された参照光は、第1分岐参照光と第2分岐参照光に分岐される。第1分岐参照光は、コリメータレンズ47、レンズ48を通ってPMFC61に入力される。第2分岐参照光は、コリメータレンズ49、レンズ50を通って、PMFC62に入力される。第2参照光は、PMFC51に入力され、第3分岐参照光と第4分岐参照光に分割される。第3分岐参照光は、コリメータレンズ52、レンズ53を通って、PMFC71に入力される。第4分岐参照光は、コリメータレンズ54、レンズ55を通って、PMFC72に入力される。
【0026】
(干渉光生成部)
干渉光生成部60、70は、第1干渉光生成部60と、第2干渉光生成部70を備えている。第1干渉光生成部60は、PMFC61、62を有している。上述したように、PMFC61には、測定光生成部より水平偏光反射光が入力され、参照光生成部より第1分岐参照光(光路長差ΔL’を有する光)が入力される。ここで、水平偏光反射光には、第1測定光による反射光成分(光路長差ΔLを有する光)と、第2測定光による反射光成分(光路長差ΔLを有しない光)が含まれている。したがって、PMFC61では、水平偏光反射光のうち第1測定光による反射光成分(光路長差ΔLを有する光)と、第1分岐参照光とが合波されて第1干渉光(水平偏光成分)が生成される。
【0027】
また、PMFC62には、測定光生成部より垂直偏光反射光が入力され、参照光生成部より第2分岐参照光(光路長差ΔL’を有する光)が入力される。ここで、垂直偏光反射光には、第1測定光による反射光成分(光路長差ΔLを有する光)と、第2測定光による反射光成分(光路長差ΔLを有しない光)が含まれている。したがって、PMFC62では、垂直偏光反射光のうち第1測定光による反射光成分(光路長差ΔLを有する光)と、第2分岐参照光とが合波されて第2干渉光(垂直偏光成分)が生成される。
【0028】
第2干渉光生成部70は、PMFC71、72を有している。上述したように、PMFC71には、測定光生成部より水平偏光反射光が入力され、参照光生成部より第3分岐参照光(光路長差ΔL’を有しない光)が入力される。したがって、PMFC71では、水平偏光反射光のうち第2測定光による反射光成分(光路長差ΔLを有しない光)と、第3分岐参照光とが合波されて第3干渉光(水平偏光成分)が生成される。
【0029】
また、PMFC72には、測定光生成部より垂直偏光反射光が入力され、参照光生成部より第4分岐参照光(光路長差ΔL’を有しない光)が入力される。したがって、PMFC72では、垂直偏光反射光のうち第2測定光による反射光成分(光路長差ΔLを有しない光)と、第4分岐参照光とが合波されて第4干渉光(垂直偏光成分)が生成される。第1干渉光と第2干渉光は測定光路S1を経由した測定光に対応しており、第3干渉光と第4干渉光は測定光路S2を経由した測定光に対応している。
【0030】
(干渉光検出部)
干渉光検出部80、90は、第1干渉光生成部60で生成された干渉光(第1干渉光及び第2干渉光)を検出する第1干渉光検出部80と、第2干渉光生成部70で生成された干渉光(第3干渉光及び第4干渉光)を検出する第2干渉光検出部90を備えている。
【0031】
第1干渉光検出部80は、バランス型光検出器81、82(以下、単に「検出器81,82」ともいう)と、検出器81、82に接続された信号処理器83を備えている。検出器81にはPMFC61が接続されており、検出器81の出力端子には信号処理器83が接続されている。PMFC61は、第1干渉光を、位相が180度異なる2つの干渉光に分岐して、検出器81に入力する。検出器81は、PMFC61から入力する位相が180度異なる2つの干渉光に対して、差動増幅及びノイズ低減処理を実施し、電気信号(第1干渉信号)に変換し、第1干渉信号を信号処理器83に出力する。すなわち、第1干渉信号は、水平偏光測定光による被検眼500からの水平偏光反射光と参照光の干渉信号HHである。同様に、検出器82にはPMFC62が接続されており、検出器82の出力端子には信号処理器83が接続されている。PMFC62は、第2干渉光を、位相が180度異なる2つの干渉光に分岐して、検出器82に入力する。検出器82は、位相が180度異なる2つの干渉光に対して、差動増幅及びノイズ低減処理を実施し、電気信号(第2干渉信号)に変換し、第2干渉信号を信号処理器83に出力する。すなわち、第2干渉信号は、水平偏光測定光による被検眼500からの垂直偏光反射光と参照光の干渉信号HVである。
【0032】
信号処理器83は、第1干渉信号が入力される第1信号処理部84と、第2干渉信号が入力される第2信号処理部85を備えている。第1信号処理部84は、サンプリングトリガー/クロック発生器100から信号処理器83に入力されるサンプリングトリガー及びサンプリングクロックに基づいて、第1干渉信号をサンプリングする。また、第2信号処理部85は、サンプリングトリガー/クロック発生器100から信号処理器83に入力されるサンプリングトリガー及びサンプリングクロックに基づいて、第2干渉信号をサンプリングする。第1信号処理部84及び第2信号処理部85でサンプリングされた第1干渉信号と第2干渉信号は、後述する演算部202に入力される。信号処理器83には、公知のデータ収集装置(いわゆる、DAQ)を用いることができる。
【0033】
第2干渉光検出部90は、第1干渉光検出部80と同様に、バランス型光検出器91、92(以下、単に「検出器91、92」ともいう)と、検出器91、92に接続された信号処理器93を備えている。検出器91にはPMFC71が接続されており、検出器91の出力端子には信号処理器93が接続されている。PMFC71は、第3干渉光を、位相が180度異なる2つの干渉光に分岐して、検出器91に入力する。検出器91は、位相が180度異なる2つの干渉光に対して、差動増幅及びノイズ低減処理を実施し、電気信号(第3干渉信号)に変換し、第3干渉信号を信号処理器93に出力する。すなわち、第3干渉信号は、垂直偏光測定光による被検眼500からの水平偏光反射光と参照光の干渉信号VHである。同様に、検出器92にはPMFC72が接続されており、検出器92の出力端子には信号処理器93が接続されている。PMFC72は、第4干渉光を、位相が180度異なる2つの干渉光に分岐して、検出器92に入力する。検出器92は、位相が180度異なる2つの干渉光に対して、差動増幅及びノイズ低減処理を実施し、電気信号(第4干渉信号)に変換し、第4干渉信号を信号処理器93に出力する。すなわち、第4干渉信号は、垂直偏光測定光からによる被検眼500の垂直偏光反射光と参照光の干渉信号VVである。
【0034】
信号処理器93は、第3干渉信号が入力される第3信号処理部94と、第4干渉信号が入力される第4信号処理部95を備えている。第3信号処理部94は、サンプリングトリガー/クロック発生器100から信号処理器93に入力されるサンプリングトリガー及びサンプリングクロックに基づいて、第3干渉信号をサンプリングする。また、第4信号処理部95は、サンプリングトリガー/クロック発生器100から信号処理器93に入力されるサンプリングトリガー及びサンプリングクロックに基づいて、第4干渉信号をサンプリングする。第3信号処理部94及び第4信号処理部95でサンプリングされた第3干渉信号と第4干渉信号とは、後述する演算部202に入力される。信号処理器93にも、公知のデータ収集装置(いわゆる、DAQ)を用いることができる。このような構成によると、被検眼500の4つの偏光特性を表す干渉信号を取得することができる。なお、本実施例では、2つの信号処理部を備える信号処理器83,93用いているが、このような構成に限定されない。例えば、4つの信号処理部を備える1つの信号処理器を用いてもよいし、1つの信号処理部を備える信号処理器を4つ用いてもよい。
【0035】
次に、本実施例に係る光断層画像撮影装置の制御系の構成を説明する。
図2に示すように、光断層画像撮影装置は演算装置200によって制御される。演算装置200は、演算部202と、第1干渉光検出部80と、第2干渉光検出部90によって構成されている。第1干渉光検出部80と、第2干渉光検出部90と、演算部202は、測定部10に接続されている。演算部202は、測定部10に制御信号を出力し、ガルバノミラー27及び28を駆動することで測定光の被検眼500への入射位置を走査する。第1干渉光検出部80は、測定部10から入力される干渉信号(干渉信号HHと干渉信号HV)に対して、サンプリングトリガー1をトリガーにして、測定部10から入力されるサンプリングクロック1に基づいて、第1サンプリングデータを取得し、演算部202に第1サンプリングデータを出力する。演算部202は、第1サンプリングデータにフーリエ変換処理等の演算処理を行い、HH断層画像とHV断層画像を生成する。第2干渉光検出部90は、サンプリングトリガー2をトリガーにして、測定部10から入力される干渉信号(干渉信号VHと干渉信号VV)に対して、測定部10から入力されるサンプリングクロック2に基づいて、第2サンプリングデータを取得し、演算部202に第2サンプリングデータを出力する。演算部202は、第2サンプリングデータにフーリエ変換処理等の演算処理を行い、VH断層画像とVV断層画像を生成する。ここで、HH断層画像と、VH断層画像と、HV断層画像と、VV断層画像とは、同一位置の断層画像である。このため、演算部202は、被検眼500のジョーンズ行列を表す4つの偏光特性(HH、HV、VH、VV)の断層画像を生成することができる。
【0036】
図3に示すように、サンプリングトリガー/クロック発生器100は、ファイバカプラ102と、サンプリングトリガー発生器(140~152)と、サンプリングクロック発生器(160~172)を備えている。光源11からの光は、ファイバカプラ13とファイバカプラ102を介して、サンプリングトリガー発生器140及びサンプリングクロック発生器160にそれぞれ入力される。
【0037】
(サンプリングトリガー発生器)
サンプリングトリガー発生器140は、例えば、FBG(Fiber Bragg Grating)144を用いて、サンプリングトリガーを生成してもよい。
図3に示すように、FBG144は、光源11から入射される光の特定の波長のみを反射して、サンプリングトリガーを生成する。生成されたサンプリングトリガーは、分配器150に入力される。分配器150は、サンプリングトリガーを、サンプリングトリガー1とサンプリングトリガー2に分配する。サンプリングトリガー1は、信号遅延回路152を介して、演算部202に入力される。サンプリングトリガー2は、そのまま演算部202に入力される。サンプリングトリガー1は、第1干渉光検出部80から演算部202に入力される干渉信号(第1干渉信号と第2干渉信号)のトリガー信号となる。サンプリングトリガー2は、第2干渉光検出部90から演算部202に入力される干渉信号(第3干渉信号と第4干渉信号)のトリガー信号となる。信号遅延回路152は、サンプリングトリガー1がサンプリングトリガー2に対して、光路長差生成部22の光路長差ΔLの分だけ時間が遅延するように設計されている。これにより、第1干渉光検出部80から入力される干渉信号のサンプリングを開始する周波数と、第2干渉光検出部90から入力される干渉信号のサンプリングを開始する周波数を同じにすることができる。ここで、サンプリングトリガー1だけを生成してもよい。光路長差ΔLが既知であるので、第2干渉光検出部90から入力される干渉をサンプリングする際、サンプリングトリガー1から光路長差ΔLの分だけ時間を遅延するようにサンプリングを開始すればよい。
【0038】
(サンプリングクロック発生器)
サンプリングクロック発生器は、例えば、マッハツェンダー干渉計で構成されていてもよい。
図3に示すように、サンプリングクロック発生器は、マッハツェンダー干渉計を用いて、等周波数のサンプリングクロックを生成する。マッハツェンダー干渉計で生成されたサンプリングクロックは、分配器172に入力される。分配器172は、サンプリングクロックを、サンプリングクロック1とサンプリングクロック2に分配する。サンプリングクロック1は、信号遅延回路174を通って、第1干渉光検出部80に入力される。サンプリングクロック2は、そのまま第2干渉光検出部90に入力される。信号遅延回路174は、光路長差生成部22の光路長差ΔLの分だけ時間が遅延するように設計されている。これにより、光路長差生成部22の分だけ遅延している干渉光に対しても、同じタイミングでサンプリングすることができる。これにより、取得する複数の断層画像の位置ずれが防止できる。本実施例では、サンプリングクロックを生成するのに、マッハツェンダー干渉計を用いている。しかしながら、サンプリングクロックを生成するのに、マイケルソン干渉計を用いてもよいし、電気回路を用いてもよい。また、光源に、サンプリングクロック発生器を備えた光源を用いて、サンプリングクロックを生成してもよい。
【0039】
次に、
図4及び
図5を参照して、被検眼500の所望の深さ方向の範囲について、複屈折の強度を示す画像(以下、複屈折の強度マップともいう)を生成する処理について説明する。本実施例の光断層画像撮影装置を用いて被検眼500を撮影すると、複屈折性に関する種々の特徴を可視化することができる。ユーザ(例えば、医師等の医療従事者等)が把握したい被検眼500の深さ方向の範囲は、検査したい疾病の種類によって異なる。ユーザが所望する深さ方向の範囲以外の情報が画像に含まれていると、画像に含まれる情報量が多くなり、被検眼500の把握したい情報を把握し難くなる。以下では、ユーザが所望する範囲の深さ方向の範囲のみについて、複屈折を示す画像(複屈折の強度マップ)を生成する。特に、本実施例の偏光感受型の光断層画像撮影装置では、取得される情報量が多いため、不要な範囲を除いて画像を生成することで、ユーザが所望する範囲の情報のみを表示することができ、画像が見易くなり有効となる。
【0040】
本実施例では、被検眼500の眼底の断層画像を重畳して表示する処理を例にして説明する。なお、断層画像は、被検眼500の眼底を撮影したものに限定されるものではない。断層画像は、被検眼500の眼底とは異なる部分を撮影したものであってもよく、例えば、前眼部を撮影したものであってもよい。
【0041】
図4に示すように、まず、演算部202は、被検眼500の眼底の複屈折を示す断層画像を取得する(S12)。被検眼500の眼底の複屈折を示す断層画像を取得する処理は、以下の手順で実行する。まず、検査者は図示しないジョイスティック等の操作部材を操作して、被検眼500に対して光断層画像撮影装置の位置合わせを行う。すなわち、演算部202は、検査者の操作部材の操作に応じて、図示しない位置調整機構を駆動する。これによって、被検眼500に対する光断層画像撮影装置のxy方向(縦横方向)の位置とz方向(進退動する方向)の位置が調整される。次いで、演算部202は、被検眼500の眼底の断層画像を撮影する。本実施例では、ラスタースキャン方式により実行される。ラスタースキャン方式では、Bスキャン方向を被検眼500に対して水平方向に設定し、Cスキャン方向を垂直方向として断層画像の取込みが行われる。これにより、被検眼500の眼底の断層画像が全領域に亘って取得される。なお、被検眼500の眼底の断層画像の撮影方法は、ラスタースキャン方式に限定されない。被検眼500の眼底の断層画像が全領域に亘って取得できればよく、例えば、ラジアルスキャン方式によって撮影されてもよい。ラジアルスキャン方式では、Bスキャン方向を被検眼500の角膜頂点から放射方向に設定し、Cスキャン方向を円周方向として断層画像の取込みが行われる。
【0042】
上述したように、本実施例の光断層画像撮影装置は、偏光感受型の光断層画像撮影装置であるため、被検眼500に垂直波を照射することによって撮影される断層画像と、被検眼500に水平波を照射することによって撮影される断層画像を同時に取得できる。これら2種類の断層画像を用いることによって、演算部202は、被検眼500内の組織を散乱強度で示す断層画像(いわゆる、通常の断層画像)だけでなく、被検眼500内の複屈折を示す断層画像を生成することができる。本実施例では、複屈折を示す断層画像は、4つの干渉信号HH、HV、VH、VVを用いて生成される。複屈折を示す断層画像は、公知の方法を用いて生成することができる。例えば、複屈折を示す断層画像は、以下の方法で取得できる。断層画像を撮影する際に、OCT分解能以下の微細構造によって生じる散乱光が干渉し合うことによって、スペックルが発生する。発生したスペックルの偏光間の信号の位相差を表示する。これによって、複屈折を示す断層画像が得られる。
【0043】
次いで、演算部202は、各断層画像について被検眼500内の隣接する組織間の境界(例えば、神経線維層と神経節細胞層の境界)を特定(セグメンテーション)する(S14)。なお、セグメンテーションは、例えば、特開2019-88957号公報等に開示されている公知の方法を用いて実行することができるため、詳細な説明は省略する。
【0044】
次いで、演算部202は、ステップS12で取得した断層画像に、ステップS14で特定した層の境界を重畳して、モニタ120に表示する(S16)。
図5(a)は、ステップS12で取得した断層画像を示しており、
図5(b)は、
図5(a)の断層画像にステップS14で特定した境界線を重畳した画像を示している。
図5(b)に示すように、断層画像に層の境界を重畳して表示することによって、ユーザは被検眼500の各層を視覚的に容易に把握できる。
【0045】
次いで、演算部202は、深さ方向の範囲が選択されたか否かを判断する(S18)。具体的には、ユーザが、マウス等の入力手段(図示省略)を用いて、ステップS16でモニタ120に表示された断層画像に対して特定(所望)の深さ方向の範囲を入力する。例えば、ユーザは、ステップS14で境界が特定された各層のうち、1又は複数の層を指定する。すると、指定された1又は複数の層が選択される。又は、ユーザが、特定の層を指定すると、指定された層の表面及び/又は裏面から深さ方向の所定の範囲が選択されてもよい。あるいは、ユーザが選択する層の名称(例えば、視神経線維層(NFL)等)をキーボード等の入力手段(図示省略)を用いて入力し、演算部202は、入力された層に該当する1又は複数の層を選択してもよい。演算部202は、深さ方向の範囲が選択されていない場合(ステップS18でNO)、ユーザによって深さ方向の範囲が選択されるまで待機する。
【0046】
深さ方向の範囲が選択されると(ステップS18でYES)、演算部202は、ステップS18で選択された深さ方向の範囲について、複屈折の強度マップを生成する(S20)。複屈折の強度マップは、3次元データについて、Aスキャン毎に深さ方向で複屈折の強度の最大値、最小値又は平均値などを算出し、3次元データを2次元の正面画像に圧縮した画像(en-face(アンファス)画像)である。演算部202は、ステップS18で選択された深さ方向の範囲の断層画像(断層情報)のみを用いて、en-face画像を生成する。これにより、ステップS18で選択された深さ方向の範囲のみについての複屈折の強度マップが生成される。
【0047】
次いで、演算部202は、ステップS20で生成された複屈折の強度マップをモニタ120に表示する(S22)。
図5(c)に示すように、ステップS18で選択された1又は複数の層のみの断層情報を用いて算出された複屈折の強度マップがモニタ120に表示される。複屈折の強度マップは、ステップS18で選択された1又は複数の層の情報のみを含み、その他の層の情報を含まない。不要な範囲の複屈折に関する情報を含まず、所望の範囲のみの複屈折に関する情報(複屈折の強度マップ)が表示されるため、不要な情報が減り、画像を見易くすることができる。線維密度は、複屈折に相関することが知られている。被検眼500の複屈折の強度分布を確認することによって、被検眼500内の線維密度を間接的に評価することができる。
【0048】
(実施例2)
上記の実施例1では、演算部202は、被検眼500の所望の深さ方向の範囲について、複屈折の強度マップを生成したが、被検眼500の所望の深さ方向の範囲について、複屈折性に関する他の画像を生成してもよい。例えば、演算部202は、被検眼500の所望の深さ方向の範囲について、線維状組織の走行態様を示す画像(以下、線維走行マップともいう)を生成してもよい。本実施例では、線維走行マップは、線維の走行方向が水平となる部分を第1の色で示し、線維の走行方向が垂直となる部分を第1の色とは異なる第2の色で示し、その間は第1の色と第2の色との間でグラデーションとなるように示される(
図7(b)及び
図8(b)参照)。このように表示することにより、色の違いから視覚的に線維の走行方向が把握できる。
【0049】
図6に示すように、まず、演算部202は、被検眼500の眼底の線維の走行方向を示す断層画像を取得する(S112)。本実施例では、線維の走行方向を示す断層画像は、4つの干渉信号HH、HV、VH、VVを用いて生成される。線維の走行方向を示す断層画像は、公知の方法を用いて生成することができる。例えば、線維の走行方向を示す断層画像は、複屈折の軸を算出する事により、複屈折の向きを特定することができ、被検眼500内の線維の走行方向を可視化することができる。
【0050】
次いで、演算部202は、各断層画像について被検眼500内の各層の境界を特定し(S114)、断層画像に各層の境界を重畳してモニタ120に表示する(S116)。そして、ユーザによって深さ方向の範囲が選択されるのを待機する(S118)。なお、ステップS114~ステップS118の処理は、上記の実施例1のステップS14~ステップS18の処理と略同一であるため、詳細な説明は省略する。
【0051】
深さ方向の範囲が選択されると(ステップS118でYES)、演算部202は、ステップS118で選択された深さ方向の範囲について、線維走行マップを生成する(S120)。具体的には、演算部202は、ステップS118で選択された深さ方向の範囲の断層画像(断層情報)のみを用いて、en-face画像を生成する。これにより、ステップS38で選択された深さ方向の範囲について線維走行マップが生成される。本実施例においても、ユーザによって選択された層の断層情報のみを用いて線維走行マップが生成される。所望の範囲のみの複屈折に関する情報(線維走行マップ)が表示されるため、不要な情報が減り、画像を見易くすることができる。
【0052】
例えば、
図7(a)に示すように、ユーザによって視神経線維層(NFL)とヘンレ線維層を示す範囲r1が選択されると、
図7(b)に示すように、視神経線維層(NFL)とヘンレ線維層のみの線維の走行方向を示す線維走行マップが表示される。また、
図8(a)に示すように、ユーザによって強膜を示す範囲r2が選択されると、
図8(b)に示すように、強膜のみの線維の走行方向を示す線維走行マップが表示される。
図7(b)及び
図8(b)に示すように、被検眼500の眼底の層によって、線維の走行方向は異なる。被検眼500の眼底全体の線維走行マップを生成すると、線維の走行方向が異なる複数の層の情報が正面画像に圧縮され、線維の走行方向を把握し難くなる。ユーザが選択した所望の深さ方向の範囲のみで構成される線維走行マップを生成することによって、その範囲(層)の線維の走行方向を把握し易くなる。特定の範囲(層)の線維の走行方向を把握することで、線維の走行方向が被検眼500の形状にどのように影響を与えるのかを把握することに役立つ。例えば、強度近視や病的近視等により眼球形状が進展又は変形する前と後の線維の走行方向の変化を比較することによって、被検眼500の疾患をより理解することができ、治療方針の検討に活用することができる。
【0053】
(実施例3)
上記の実施例2では、演算部202は、被検眼500の所望の深さ方向の範囲について、線維走行マップを生成したが、被検眼500の所望の深さ方向の範囲について、線維走行マップに線維の走行方向(複屈折軸の方向)を示す線(以下、ストリームラインともいう)を重畳して表示してもよい。
【0054】
本実施例では、まず、演算部202は、上記の実施例2のステップS112~ステップS118の処理と同一の処理を実行する。次いで、演算部202は、上記の実施例2のステップS120と同様の処理を実行して線維走行マップを生成すると共に、ストリームラインを生成する。一般にストリームラインを描出するアルゴリズムやソフトウェアは容易に入手可能である。例えば、National Instruments社のLabVIEWへのアドオンとして提供されている、Heliosphere Research LCC社のAdvanced Plotting Toolkitを用いて複屈折軸方向のストリームラインを描出することができる。ほかにも、オープンソースソフトウェアのMatplotlibを用いて同様の処理を行ってもよい。
【0055】
次いで、演算部202は、生成した線維走行マップとストリームラインを重畳してモニタ120に表示する。本実施例においても、ユーザによって選択された層のみで構成された線維走行マップが生成される。所望の範囲のみの複屈折に関する情報(線維走行マップ)が表示されるため、不要な情報が減り、画像を見易くすることができる。また、
図9(b)及び
図10(b)に示すように、本実施例では、線維走行マップにストリームラインが重畳して表示される。軸方向を色で示した線維走行マップは、色の違いから線維の走行方向を読み取る必要があり、線維の走行方向を直感的に読解し難い。線維走行マップにストリームラインを重畳することにより、線維の走行方向を容易に把握することができる。なお、本実施例では、線維走行マップにストリームラインを重畳してモニタ120に表示したが、ユーザが入力手段を用いて指示することによって、ストリームラインを表示した状態と非表示にした状態(すなわち、線維走行マップのみが表示される状態)との間で切替可能に構成されていてもよい。
【0056】
(実施例4)
上記の実施例3では、演算部202は、被検眼500の所望の深さ方向の範囲について、線維走行マップを生成し、生成した線維走行マップにストリームラインを重畳して表示したが、被検眼500の所望の深さ方向の範囲について、線維走行マップ又はストリームラインに、複屈折の強度が所定値より高い領域(以下、高複屈折領域ともいう)に関する情報を重畳して表示してもよい。以下では、ストリームラインに高複屈折領域に関する情報を重畳して表示する例について説明するが、線維走行マップに高複屈折領域に関する情報を重畳して表示してもよい。
【0057】
図11に示すように、まず、演算部202は、被検眼500の眼底の複屈折を示す断層画像を取得する(S212)。なお、ステップS212の処理は、上記の実施例1のステップS12の処理を同一であるため、詳細な説明は省略する。次いで、演算部202は、被検眼500の眼底の線維の走行方向を示す断層画像を取得する(S214)。なお、ステップS214の処理は、上記の実施例2のステップS112の処理と同一であるため、詳細な説明は省略する。また、ステップS212の処理の前に、ステップS214の処理を実行してもよい。次いで、演算部202は、各断層画像について被検眼500内の各層の境界を特定し(S216)、断層画像に各層の境界を重畳してモニタ120に表示する(S218)。そして、ユーザによって深さ方向の範囲が選択されるのを待機する(S220)。なお、ステップS216~ステップS220の処理は、上記の実施例1のステップS14~ステップS18の処理と略同一であるため、詳細な説明は省略する。
【0058】
次いで、演算部202は、ステップS214で取得した被検眼500の眼底の線維の走行方向を示す断層画像を用いて、ステップS220で選択された深さ方向の範囲について、線維走行マップとストリームラインを生成する(S222)。なお、ステップS222の処理は、上記の実施例3の線維走行マップとストリームラインを生成する処理と略同一であるため、詳細な説明は省略する。
【0059】
次いで、演算部202は、ステップS212で取得した被検眼500の眼底の複屈折を示す断層画像に対して、ステップS220で選択された深さ方向の範囲について、高複屈折領域を特定する(S224)。高複屈折領域か否かを判定するための所定値は、ユーザによって設定された値を用いる。すなわち、ユーザは、複屈折の強度が高いと判断する値を所定値(すなわち、閾値)として設定する。
【0060】
次いで、演算部202は、ステップS222で生成したストリームラインに、ステップS224で特定した高複屈折領域を重畳してモニタ120に表示する(S226)。例えば、
図12(b)及び
図13(b)に示すように、本実施例では、高複屈折領域は、ストリームラインとは異なる色(ハイライト)で表示している。すなわち、ストリームラインに高複屈折領域を示す色が重畳して表示される。
【0061】
複屈折の強度と線維の走行方向は、いずれも線維状組織の複屈折性に関する特徴であるが、臨床的にそれぞれ異なる意味を有する。複屈折の強度と線維の走行方向を個々に評価することも有用であるが、両者を統合して総合的に評価することも重要である。複屈折の強度と線維の走行方向を統合して評価する際に、複屈折の強度と線維の走行方向を別個の画像で表示すると、2つの画像を見比べる必要があり、ユーザにとっては不便である。ストリームラインに高複屈折領域を重畳して表示することによって、ユーザは、複屈折の強度と線維の走行方向とを統合的に評価し易くなる。例えば、複屈折の強度が高い場合には、線維密度が高いことを示唆しており、高複屈折領域では、複屈折の強度が低い領域(すなわち、線維密度が疎となっている領域)より、線維の走行方向が重要な意味を持つことがある。ストリームラインに高複屈折領域を重畳して表示することによって、高複屈折領域の線維の走行方向を把握し易くなる。これにより、ユーザは、臨床的に特に重要な意味を持つ可能性が高い高複屈折領域の線維の走行方向に着目し易くなる。
【0062】
なお、本実施例では、高複屈折領域全体をストリームラインとは異なる色で表示したが、このような構成に限定されない。高複屈折領域を視覚的に容易に把握できればよく、例えば、高複屈折領域において、ストリームラインの色を他の領域とは異なる色で表示してもよい。また、高複屈折領域において、ストリームラインの太さを他の領域とは異なる太さで表示してもよいし、高複屈折領域において、ストリームラインの輝度を他の領域とは異なる輝度で表示してもよい。また、所定値は、ストリームラインに高複屈折領域を重畳して表示した後、ユーザによって変更可能に構成されていてもよい。
【0063】
(実施例5)
上記の実施例1では、演算部202は、被検眼500の所望の深さ方向の範囲について、複屈折の強度マップを生成したが、被検眼500の所望の深さ方向の範囲について、複屈折の強度が所定値より高い領域の厚さマップ(以下、高複屈折領域の厚さマップともいう)を生成してもよい。
【0064】
図14に示すように、まず、演算部202は、被検眼500の眼底の複屈折を示す断層画像を取得し(S312)、各断層画像について被検眼500内の各層の境界を特定し(S314)、断層画像に各層の境界を重畳してモニタ120に表示する(S316)。そして、ユーザによって深さ方向の範囲が選択されるのを待機する(S318)。なお、ステップS312~ステップS318の処理は、上記の実施例1のステップS14~ステップS18の処理と略同一であるため、詳細な説明は省略する。
【0065】
次いで、演算部202は、ステップS312で取得した被検眼500の複屈折を示す断層画像について、複屈折の強度が所定値より高い領域(高複屈折領域)を特定する(S320)。所定値は、ユーザによって設定された値を用いる。すなわち、ユーザは、複屈折の強度が高いと判断する値を所定値(すなわち、閾値)として設定する。例えば、ユーザによって脈絡膜と強膜との間の境界面(CSI)より深い範囲が選択されたとする。また、所定値として、0.12deg/μmが設定されたとする(
図15(a)の下図のレンジ範囲参照)。すると、演算部202は、CSIより深い範囲について、複屈折の強度が0.12deg/μm以上の領域を特定する。
【0066】
次いで、演算部202は、ステップS318で選択された深さ方向の範囲について、ステップS320で特定された高複屈折領域の厚さを算出する(S322)。例えば、
図15(b)に示すように、各断層画像について、ユーザが選択した深さ方向の範囲で、複屈折の強度が0.12deg/μm以上である領域の厚さをAスキャン毎に算出する。
【0067】
次いで、演算部202は、算出した高複屈折領域の厚さから、高複屈折領域の厚さマップ生成し(S324)、生成した高複屈折領域の厚さマップをモニタ120に表示する(S326)。例えば、
図15(c)で示すように、高複屈折領域の厚さマップは、厚さに応じて異なる色で表示する。本実施例では、ユーザが選択した深さ方向の範囲のみについて、高複屈折領域の厚さマップが表示される。高複屈折領域の厚さマップは、ユーザが選択した深さ方向の範囲を用いているため、ユーザにとって不要な深さ方向の範囲の情報が除外される。このため、ユーザは、必要な深さ方向の範囲のみについて高複屈折領域の厚さを把握できる。また、高複屈折領域の厚さマップは、複屈折の強度が所定値より高い領域のみの厚さマップであるため、複屈折の強度が低い層の情報が除外される。このため、複屈折の強度が高い領域について把握し易くなる。
【0068】
複屈折の強度が高い領域は、線維密度が高いことを示唆している。線維密度が高い層では、眼軸長が進展して負荷がかかったことにより、線維の走行方向が揃い、線維密度が上昇した可能性がある。あるいは、線維密度が高い層では、生来から線維密度が高く、眼軸長の進展に対して高い耐性を持っている可能性もある。このように、線維密度が高い層は、臨床上、注目すべき領域であると考えられる。例えば、複屈折の強度マップ(
図5参照)では、高複屈折領域の位置を把握することはできるが、高複屈折領域の厚さは把握できない。このため、高複屈折領域の厚さは把握するためには、各断層画像を確認する必要があった。複屈折層の厚さマップを表示することによって、高複屈折領域の厚さを一目で把握することができる。
【0069】
(実施例6)
上記の実施例5では、演算部202は、被検眼500の所望の深さ方向の範囲について、高複屈折領域の厚さマップを生成したが、被検眼500の所望の深さ方向の範囲について、複屈折の強度が所定値より高い層の数を示すマップ(以下、高複屈折の層数マップともいう)を生成してもよい。
【0070】
本実施例では、まず、演算部202は、上記の実施例5のステップS312~ステップS320の処理と同一の処理を実行する。
【0071】
次いで、演算部202は、ステップS318で選択された深さ方向の範囲について、ステップS320で特定された高複屈折領域を含む層の数を算出する。例えば、
図16(b)に示すように、各断層画像について、ユーザが選択した深さ方向の範囲で、複屈折の強度が0.12deg/μm以上である領域を含む層の数をAスキャン毎に算出する。
【0072】
次いで、演算部202は、算出した高複屈折領域を含む層の数から、高複屈折の層数マップ生成し、生成した高複屈折の層数マップをモニタ120に表示する。例えば、
図16(c)に示すように、高複屈折の層数マップは、層の数に応じて異なる色で表示する。本実施例においても、ユーザが選択した深さ方向の範囲のみについて、高複屈折の層数マップが表示される。このため、ユーザにとって不要な情報(ユーザにとって不要な深さ方向の範囲の情報と、複屈折の強度が低い層の情報)が除外され、複屈折の強度が高い領域について把握し易くなる。また、高複屈折の層数マップを表示することによって、複屈折の強度が高い領域の層の数を一目で把握することができる。
【0073】
(実施例7)
上記の実施例2では、演算部202は、被検眼500の所望の深さ方向の範囲について、線維走行マップを生成したが、被検眼500の所望の深さ方向の範囲について、隣接する層との間の相対角の総和を示す角度マップ(以下、相対角マップともいう)を生成してもよい。
【0074】
図17に示すように、まず、演算部202は、被検眼500の眼底の複屈折を示す断層画像を取得すると共に(S412)、被検眼500の眼底の線維の走行方向を示す断層画像を取得する(S414)。次いで、演算部202は、各断層画像について被検眼500内の各層の境界を特定し(S416)、断層画像に各層の境界を重畳してモニタ120に表示する(S418)。そして、ユーザによって深さ方向の範囲が選択されるのを待機する(S420)。なお、ステップS412~ステップS420の処理は、上記の実施例4のステップS212~ステップS220の処理と略同一であるため、詳細な説明は省略する。
【0075】
次いで、演算部202は、ステップS412で取得した被検眼500の眼底の複屈折を示す断層画像を用いて、ステップS420で選択された深さ方向の範囲について、複屈折の強度が所定値より高い層(高複屈折層)を特定する(S422)。具体的には、演算部202は、ステップS412で取得した被検眼500の眼底の複屈折を示す各断層画像について、ステップS420で選択された深さ方向の範囲において複屈折の強度が所定値より高い領域(高複屈折領域)を特定する。そして、深さ方向に異なる位置にある高複屈折領域を、それぞれ異なる高複屈折層として特定する。したがって、高複屈折層は、ステップS416で特定した組織毎に構成される層とは異なるものであり、同一組織内に複数の高複屈折層が存在することもある。
【0076】
例えば、
図18は、複屈折を示す断層画像である。
図19は、
図18の要部XIXに対応する線維の走行方向を示す断層画像を示し、
図20は、
図18の要部XXに対応する線維の走行方向を示す断層画像を示している。
図19の要部XIX(
図19に示す部分であり、以下、領域Aともいう)では、深さ方向の異なる位置に高複屈折領域が2箇所存在している。演算部202は、この2箇所の高複屈折領域をそれぞれ高複屈折層L1、L2と特定する。また、
図18の要部XX(
図20に示す部分)では、深さ方向の異なる位置に高複屈折領域が3箇所存在している。演算部202は、この3箇所の高複屈折領域をそれぞれ高複屈折層L3、L4、L5と特定する。高複屈折層L3、L5は、
図20の左右方向全体に位置している一方で、高複屈折層L4は、
図20の左側にしか位置していない。すなわち、要部XX(
図20に示す部分)の左側(以下、領域Bともいう)には、深さ方向に3つの高複屈折層L3、L4、L5が位置しており、要部XX(
図20に示す部分)の右側(以下、領域Cともいう)には、深さ方向に2つの高複屈折層L3、L5が位置している。
【0077】
次いで、演算部202は、深さ方向に隣接する高複屈折層の間の相対角を算出する(S424)。具体的には、演算部202は、ステップS422で特定した各高複屈折層の線維の走行方向(角度)を特定し、Aスキャン毎に深さ方向に隣接する高複屈折層の線維の走行方向(角度)の差分を算出する。これにより、相対角が算出される。各高複屈折層の線維の走行方向は、ステップS414で取得した線維の走行方向を示す断層画像を用いて特定する。なお、1の高複屈折層内で線維の走行方向が一定でない場合、その高複屈折層内における線維の走行方向の平均値を算出して、その高複屈折層内で線維の走行方向とする。また、1の高複屈折層内で線維の走行方向が一定でない場合、その高複屈折層の中心位置の線維の走行方向をその高複屈折層内で線維の走行方向としてもよい。
【0078】
例えば、
図19に示すように、領域Aでは、ステップS422において、2つの高複屈折層L1、L2が特定されている。高複屈折層L1の線維の走行方向は、0度を示しており、高複屈折層L2の線維の走行方向は、45度を示している。このため、演算部202は、領域Aでは、隣接する高複屈折層L1、L2間の相対角は、45度(45度-0度)と算出する。また、
図20に示すように、領域Bでは、ステップS422において、3つの高複屈折層L3、L4、L5が特定されている。高複屈折層L3の線維の走行方向は、0度を示しており、高複屈折層L4の線維の走行方向は、45度を示しており、高複屈折層L5の線維の走行方向は、90度を示している。このため、演算部202は、領域Bでは、隣接する高複屈折層L3、L4間の相対角は、45度(45度-0度)と算出し、隣接する高複屈折層L4、L5間の相対角は、45度(90度-45度)と算出する。さらに、領域Cでは、ステップS422において、2つの高複屈折層L3、L5が特定されている。このため、領域Cでは、演算部202は、隣接する高複屈折層L3、L5間の相対角は、90度(90度-0度)と算出する。
【0079】
次いで、演算部202は、深さ方向毎に相対角の総和を算出する(S426)。例えば、
図19に示すように、領域Aでは、ステップS424で深さ方向毎に算出された相対角は、高複屈折層L1、L2間の相対角45度の1つのみであるため、相対角の総和は、45度となる。また、
図20に示すように、領域Bでは、ステップS424で深さ方向毎に算出された相対角は、高複屈折層L3、L4間の相対角45度と、高複屈折層L4、L5間の相対角45度の2つであるため、相対角の総和は、90度(45度+45度)となる。さらに、領域Cでは、ステップS424で深さ方向毎に算出された相対角は、高複屈折層L3、L5間の相対角90度の1つのみであるため、相対角の総和は、90度となる。
【0080】
次いで、演算部202は、ステップS426で算出した深さ方向毎の相対角の総和から、相対角マップ生成し(S428)、生成した相対角マップをモニタ120に表示する(S430)。例えば、
図21に示すように、相対角マップは、相対角の総和(角度)に応じて異なる色で表示する。
【0081】
本実施例においても、ユーザが選択した深さ方向の範囲のみについて、相対角マップが表示される。このため、ユーザにとって不要な情報(ユーザにとって不要な深さ方向の範囲の情報と、複屈折の強度が低い層の情報)が除外され、複屈折の強度が高い領域の相対角が把握し易くなる。複屈折の強度が高い領域が深さ方向に複数個所存在するとき、線維の走行方向が同じ場合と異なる場合とでは、例えば、眼軸長の進展に対するストレス耐性等の臨床上の意味が異なると考えられる。相対角マップを表示することによって、相対角の状態を把握し易くなる。
【0082】
以上、本明細書に開示の技術の具体例を詳細に説明したが、これらは例示にすぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。また、本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組合せに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数目的を同時に達成するものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。