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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024179043
(43)【公開日】2024-12-26
(54)【発明の名称】設計支援装置及び設計支援方法
(51)【国際特許分類】
   G06Q 50/04 20120101AFI20241219BHJP
   G06F 30/10 20200101ALI20241219BHJP
【FI】
G06Q50/04
G06F30/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023097536
(22)【出願日】2023-06-14
(71)【出願人】
【識別番号】000005108
【氏名又は名称】株式会社日立製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】板林 勇気
(72)【発明者】
【氏名】清水 勇喜
【テーマコード(参考)】
5B146
5L049
5L050
【Fターム(参考)】
5B146DL08
5L049CC03
5L050CC03
(57)【要約】
【課題】トレードオフ関係にある評価指標を解決する具体的な改善策の提示に必要なデータベースの登録を支援することができる設計支援装置、及び方法を提供する。
【解決手段】計算機を用いて構成される設計支援装置であって、計算機は入力部と、演算部と、演算部で求められたデータの記憶部とを備え、入力部は、過去の不具合対策事例又は過去トラブルを記述した複数のドキュメント情報を取得し、演算部は、ドキュメント情報に記述された改善策を抽出する改善策抽出部と、ドキュメント情報に記述された評価指標を抽出する評価指標抽出部と、同じドキュメント情報に記述の改善策と評価指標の組み合わせを求めるとともに、改善策が類似する複数のドキュメント情報から、改善策と複数の評価指標の組み合わせを得る改善策評価指標紐づけ登録部とを備え、改善策と複数の評価指標の組み合わせの情報を記憶部に記憶することを特徴とする設計支援装置。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
計算機を用いて構成される設計支援装置であって、
計算機は入力部と、演算部と、演算部で求められたデータの記憶部とを備え、
入力部は、過去の不具合対策事例又は過去トラブルを記述した複数のドキュメント情報を取得し、
演算部は、前記ドキュメント情報に記述された改善策を抽出する改善策抽出部と、
前記ドキュメント情報に記述された評価指標を抽出する評価指標抽出部と、
同じドキュメント情報に記述の改善策と評価指標の組み合わせを求めるとともに、改善策が類似する複数の前記ドキュメント情報から、改善策と複数の評価指標の組み合わせを得る改善策評価指標紐づけ登録部とを備え、
改善策と複数の評価指標の組み合わせの情報を記憶部に記憶することを特徴とする設計支援装置。
【請求項2】
請求項1に記載の設計支援装置であって、
前記改善策抽出部は、改善策が記載されることの多い文章によく出現する単語を改善策に関連するキーワードとして記憶する改善策辞書を参照し、改善策に関連するキーワードを用いて前記ドキュメント情報に記述された改善策を抽出することを特徴とする設計支援装置。
【請求項3】
請求項1に記載の設計支援装置であって、
前記評価指標抽出部は、製品や部品における評価指標が記載される文章によく出現する単語を評価指標に関連するキーワードとして記憶評価指標辞書を参照し、評価指標に関連するキーワードを用いて前記ドキュメント情報に記述された評価指標を抽出することを特徴とする設計支援装置。
【請求項4】
請求項1に記載の設計支援装置であって、
前記改善策評価指標紐づけ登録部は、改善策に記載された文章の内容の類似性から,類似度を算出し、類似度の高い改善策について、改善策と複数の評価指標の組み合わせを得ることを特徴とする設計支援装置。
【請求項5】
請求項4に記載の設計支援装置であって、
前記改善策評価指標紐づけ登録部は、前記類似度のしきい値を変更して,前記類似度を考慮する度合いを大きくあるいは小さく調整することを特徴する設計支援装置。
【請求項6】
請求項4に記載の設計支援装置であって、
前記改善策評価指標紐づけ登録部は、類似度を算出するにあたり,CADモデルや形状の類似性を用いて算出することで,入力部とデータベースの類似性に限らない幾何的な類似度を考慮することで,より設計対象の形状に類似度の高い改善策を提示することを特徴とする設計支援装置。
【請求項7】
請求項4に記載の設計支援装置であって、
前記改善策評価指標紐づけ登録部は、類似度の算出結果から優位な改善策や評価指標が得られない場合は,前記入力部を介して編集や添付情報を追加するように指示することで前記記憶部に登録する時に必要な項目を付加して前記記憶部への登録を支援することを特徴とする設計支援装置。
【請求項8】
計算機を用いて実現される設計支援方法であって、
計算機は入力部と、演算部と、演算部で求められたデータの記憶部とを備え、
入力部は、過去の不具合対策事例又は過去トラブルを記述した複数のドキュメント情報を取得し、
演算部は、前記ドキュメント情報に記述された改善策を抽出し、前記ドキュメント情報に記述された評価指標を抽出し、同じドキュメント情報に記述の改善策と評価指標の組み合わせを求めるとともに、改善策が類似する複数の前記ドキュメント情報から、改善策と複数の評価指標の組み合わせを得、
改善策と複数の評価指標の組み合わせの情報を記憶することを特徴とする設計支援方法。
【請求項9】
請求項8に記載の設計支援方法であって、
改善策が記載されることの多い文章によく出現する単語を改善策に関連するキーワードとして記憶する改善策辞書を参照し、改善策に関連するキーワードを用いて前記ドキュメント情報に記述された改善策を抽出することを特徴とする設計支援方法。
【請求項10】
請求項8に記載の設計支援方法であって、
製品や部品における評価指標が記載される文章によく出現する単語を評価指標に関連するキーワードとして記憶評価指標辞書を参照し、評価指標に関連するキーワードを用いて前記ドキュメント情報に記述された評価指標を抽出することを特徴とする設計支援方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,製品の設計案の検討を支援する設計支援装置に関する。
【背景技術】
【0002】
製品設計では,顧客要求に基づいて製品性能やコスト,信頼性等の複数の評価指標を満足する設計案を検討する必要がある。しかし,評価指標の中には,互いにトレードオフの関係になるものがある。例えば,部品の強度を増すために板厚を厚くすると,本来なるべく小さくしたいコストや重量が増えてしまう。このように全ての評価指標を満足するためには,前述したようなトレードオフの関係を解決する必要がある。
【0003】
この点に関して、特許文献1は,ユーザに対して,工場における生産ラインを改善するため適切な施策を特定することを目的として,生産ラインにおける改善内容を示す改善テーマと生産ラインの特徴を示すライン特徴とを関連付けて,これらを記憶した施策記憶部を参照し,テーマ特定部では,改善対象の生産ラインである対象ラインについての改善テーマと関連付けられた施策を特定する。特徴特定部は,特定された施策を対象として,対象の施策と関連付けられたライン特徴と,対象ラインのライン特徴との類似度を計算して,類似度に基づき実施候補となる施策を特定する。
【0004】
また特許文献2は,エレベータの運行効率を向上することを目的として,エレベータの運行効率が低下する現象を検出する運行効率低下現象検出部と運行効率低下現象の要因を判定する要因判定処理部と,検出した運行効率低下現象とその要因に基づいて1つもしくは複数の改善策を選定する改善策選定処理部によって,エレベータの運行方法の変更,エレベータの利用者に対するエレベータの利用方法または操作方法に関する情報,エレベータの利用状態の制限のうち,運行効率が改善する少なくとも2つの改善策を提示する。この改善策の提示には,要因および改善策が紐づけられた要因および改善策データベースを参照して候補を提示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2021-184195号公報
【特許文献2】特開2021-070564号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1は,ユーザへ適切な施策を効果的に提示することで,工場における生産ラインの改善活動につなげるような発明である。この施策は,生産ラインを改善する評価指標に対する施策であって,なおかつ,評価指標1つに対して,適切な施策を1件提示するような1対1の関係で施策を特定する発明である。そのため,複数の評価指標間のトレードオフの関係を解決することはできない。
【0007】
特許文献2では,エレベータの運行効率低下の要因およびその改善策が紐づけられた要因および改善策データベースを用いており,あくまでも要因と改善策の関係で紐づけられており,複数のトレードオフ関係にある評価指標とその評価指標を両立するための改善策としては登録されておらず,特許文献1と同様に,トレードオフの関係を解決することはできない。さらに,データベースには運行効率低下の改善に寄与する改善策が登録されており,他の評価指標も考慮しようとするとデータベースの登録や構築作業が必要となり,別途工数がかかる。
【0008】
以上のことから本発明においては,トレードオフ関係にある評価指標を解決する具体的な改善策の提示に必要なデータベースの登録を支援することができる設計支援装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
以上のことから本発明においては、「計算機を用いて構成される設計支援装置であって、計算機は入力部と、演算部と、演算部で求められたデータの記憶部とを備え、入力部は、過去の不具合対策事例又は過去トラブルを記述した複数のドキュメント情報を取得し、演算部は、ドキュメント情報に記述された改善策を抽出する改善策抽出部と、ドキュメント情報に記述された評価指標を抽出する評価指標抽出部と、同じドキュメント情報に記述の改善策と評価指標の組み合わせを求めるとともに、改善策が類似する複数のドキュメント情報から、改善策と複数の評価指標の組み合わせを得る改善策評価指標紐づけ登録部とを備え、改善策と複数の評価指標の組み合わせの情報を記憶部に記憶することを特徴とする設計支援装置。」としたものである。
【0010】
また本発明においては、「計算機を用いて実現される設計支援方法であって、計算機は入力部と、演算部と、演算部で求められたデータの記憶部とを備え、入力部は、過去の不具合対策事例又は過去トラブルを記述した複数のドキュメント情報を取得し、演算部は、ドキュメント情報に記述された改善策を抽出し、ドキュメント情報に記述された評価指標を抽出し、同じドキュメント情報に記述の改善策と評価指標の組み合わせを求めるとともに、改善策が類似する複数のドキュメント情報から、改善策と複数の評価指標の組み合わせを得、改善策と複数の評価指標の組み合わせの情報を記憶することを特徴とする設計支援方法。」としたものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、トレードオフ関係にある評価指標を解決する具体的な改善策が含まれたデータベースの登録を支援することで,評価指標を満足する設計案を効率的に設計することを支援することができる。
【0012】
さらに本発明の実施例によれば、データベースの登録作業を効率化が図れ,ユーザは提示された改善策に対して検討を行うことができるため,試行錯誤の検討ではなく過去の知見を活用することで効率的な設計が支援できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の実施例に係る設計支援装置およびデータベース登録支援装置の構成例を示す図。
図2】最終的に形成されるデータベースDBのテーブル構造の一例を示す図。
図3】本発明の実施例にかかる処理手順を示すフロー図。
図4】改善策辞書の一例を示す図。
図5】改善策の候補の出力結果の一例を示す図。
図6】評価指標辞書の一例を示す図。
図7A】評価指標の候補の出力結果の一例を示す図。
図7B】評価指標の候補の出力結果の一例を示す図。
図8A】改善策と評価指標の組合せの出力結果の一例。
図8B】改善策と評価指標の組合せの出力結果の一例。
図8C】改善策と評価指標の組合せの出力結果の一例。
図9A】出力画面の一例を示す図。
図9B】出力画面の一例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下,図面を用いて本発明の設計支援装置の具体例として次の事例を説明する。ここでは、トレードオフ関係を解決する改善を提示する代表例を実施例として示す。本実施例では,冷却フィンのCADモデルを対象に,評価指標「冷却性能の向上」と「製造コストの低減」のトレードオフ関係を両立し,評価指標を満足する「冷却フィン」の設計案を検討することを例に説明する。
【0015】
なお設計支援装置では,製品の設計案に対する改善策を提示して,効率的に設計案の作成を支援する。なお、この設計支援装置では,設計案の検討の支援に必要な改善策と改善する評価指標の関係が格納され、データベースの登録がされていくことから、この設計支援装置はデータベース登録支援装置ということもできる。
【実施例0016】
図1は,本発明の実施例に係る設計支援装置およびデータベース登録支援装置の構成例を示す図である。なお設計支援装置とデータベース登録支援装置は基本的に同一構成とされるので、以下においては設計支援装置として説明する。
【0017】
図1に例示する設計支援装置は、入力部100と、改善策抽出部101と、評価指標抽出部102と、改善策評価指標紐づけ登録部103と、出力部104と、データベースDBを含んで構成されている。なおこの装置は計算機を用いて実現されるものであり、少なくとも改善策抽出部101と、評価指標抽出部102と、改善策評価指標紐づけ登録部103の処理機能は演算部での処理内容を機能的に表現したものである。
【0018】
図1の装置は、改善策と改善策によって改善する複数の評価指標を提示することで発想を支援する設計支援装置であって,このうち入力部100は、設計変更や形状変更に伴う設計事例に関する情報を含み,過去の不具合とその改善策が記載された複数の不具合対策事例や過去トラブルなどを含むドキュメント情報を入力とする。
【0019】
改善策抽出部101は、不具合対策事例から,改善策が記載されることの多い文章によく出現する単語を改善策に関連するキーワードとして記憶している改善策辞書111を検索して、改善策に関連するキーワードを抽出する。また評価指標抽出部102は、不具合対策事例から,製品や部品における評価指標が記載される際によく出現する単語を評価指標に関連するキーワードとして記憶している評価指標辞書112を検索し改善策によって改善される評価指標に関連するキーワードを抽出する。なおここで、改善策辞書111および評価指標辞書112における「辞書」とは、データベースで構成するのが好適であり、データベースを参照して必要な情報を得る機能、手段を辞書と称したものである。
【0020】
改善策抽出部101は、改善策に関連するキーワードを用いて、過去の不具合とその改善策が記載された複数の不具合対策事例や過去トラブルなどを含むドキュメント情報から改善策を抽出する。また評価指標抽出部102は、評価指標に関連するキーワードを用いて、過去の不具合とその改善策が記載された複数の不具合対策事例や過去トラブルなどを含むドキュメント情報から評価指標を抽出する。
【0021】
なお改善策に関連するキーワードや、評価指標に関連するキーワードを用いたドキュメント情報の検索とする理由は、以下のようである。まずこの時に行いたい事項は、ドキュメント情報から、改善策や評価指標を直接的に導出できることが最良である。しかしながら、ドキュメント作成者の意向によっては同じことの表現のために微妙な言い回しの相違などがあり、ピンポイントでの抽出は精度が低くなる傾向にある。
【0022】
このことから本発明では、改善策や評価指標を文章中で論じる際に使用される可能性が高い、高頻出用語(改善策に関連するキーワードや、評価指標に関連するキーワード)を改善策辞書111、評価指標辞書112として準備し、検索に利用することで、もれなく、より広範囲での抽出を行うことにしたものである。さらに述べると、もれなく、より広範囲での抽出を行った結果として改善策と評価指標の相関性が低いものまで抽出してしまう可能性が高まることから、用語間の類似性判定を行うことにしたものである。
【0023】
改善策評価指標紐づけ登録部103は、各辞書から取得した改善策と改善される評価指標のセット群に対して,改善策の類似度を評価して類似の高い改善策の評価指標を紐づけることで改善策と複数の評価指標の組合せを生成する。
【0024】
出力部104は、改善策評価指標紐づけ登録部103によって得られた組合せ結果に基づいて,改善策と複数の評価指標を提示する。データベースDBには、出力部104から出力された情報が互いに紐づけされて記憶される。
【0025】
概略上記構成の設計支援装置(データベース登録支援装置)において、改善策抽出部101では,改善策に関連するキーワードを検索する際に,改善策に関連するキーワードが登録された改善策辞書111を活用する。改善策辞書111は、図4を用いて後述するように例えば,過去の不具合対策事例から,改善策が記載されることの多い文章によく出現する「改善策」「解決手段」「解決方法」などの単語(キーワード)が辞書に登録されたものである。評価指標抽出部102では,評価指標に関連するキーワードを検索する際に,図6を用いて後述するように評価指標に関連するキーワードが登録された評価指標辞書112を活用する。
【0026】
設計支援装置(データベース登録支援装置)により、最終的に形成されるデータベースDBのテーブル構造の一例を図2に示す。データベースDBに格納されるデータは,ID(D0),改善事例D1,評価指標1名称D2,評価指標2名称D3,発明原理D4,評価指標1感度D5,評価指標2感度D6,評価指標1種別D7,評価指標2種別D8,対象製品・部品名D9,製品機能D0などから構成される。なおID(D0)は,設計事例ごとに付与される識別子である。改善事例D1は,具体的な改善策として記載されている。評価指標1名称D2および評価指標2名称D3は,トレードオフ関係にある改善評価指標であり,改善策によって改善が図られた評価指標である。
【0027】
例えば,ID(D0)のうち#0001は,改善事例「同等あるいは同等以上の冷却性能の安価な材質に変更して,切削時の加工コスト分をカバーする」211である。評価指標1名称および評価指標2名称は,それぞれ「冷却性能」212および「加工コスト」213であり,その発明原理は,「模倣代替」214である。
【0028】
続いて,評価指標1感度は,冷却性能の改善度合いを示す値であり,「維持,微増」215である。続く,評価指標2感度は,加工コストの改善度合いを示す値であり,「-2%~-3%改善」216となっている。
【0029】
次に,評価指標1種別および評価指標2種別は,それぞれ冷却性能は「品質」217と定義され,加工コストは「コスト」218と定義される。この種別では,例えば,品質保証の観点の環境性・品質および性能・コスト・納期などのEQCDの観点で定義できる。対象部品は,「フィン」219であり,製品機能は,「冷却」220となっている。なお,評価指標1感度215,評価指標2感度216は,改善度合いを示す値を傾きとして矢印で示して,直感的に認識できるような可視化を行っても良い。
【0030】
またID(D0)のうち#0002は,改善事例「加工方法を切削加工から加工方法へ置き換えて板金加工できる構造にするとコストが抑えられる」221について格納されている。ID(D0)のうち#0003は,改善事例「小さなモジュールをコピーした構成を用いて,性能を維持しながら,単品の加工コストも圧縮する」222が格納されている。
【0031】
本発明では,データベースの登録において工数のかかる改善事例D1と評価指標1名称D2および評価指標2名称D3の登録を支援することを目的とする。
【0032】
図3は,入力部100および出力部104を除いた、つまり演算部における処理手順を示すフロー図である。
【0033】
図3のフローは、ユーザがシステムを立ち上げたことをもって起動開始される。この一連の処理フローのうち、処理ステップS30,S31,S32,S38の部分が改善策抽出部101において実行される。
【0034】
まず改善策抽出部101では,入力部100から受け取った過去の不具合対策事例や過去トラブルなどのドキュメント情報を取得する(処理ステップS30)。ドキュメント情報とは,具体的にはドキュメントに記載された全文やファイル名,属性情報などに関する全ての情報である。次に,改善策辞書111より取得したキーワードに一致する,または,関連する改善策をドキュメント情報から検索する(処理ステップS31)。この時,キーワード検索を活用する場合は,形態素解析やWord2Vecなどの自然言語処理技術を活用しても良い。ドキュメント情報に関連する改善策があるかを調べ,改善策ある場合は,次の処理ステップS33へ進む。一方,改善策が無い場合は,入力部100において入力されるドキュメント情報の再取得あるいは,ドキュメント情報を更新するように指示する(処理ステップS38)。
【0035】
またこの一連の処理フローのうち、処理ステップS33,S34の部分が評価指標抽出部102において実行される。評価指標抽出部102では、入力部100から受け取った過去の不具合対策事例や過去トラブルなどのドキュメント情報を取得(処理ステップS30)し,取得したドキュメント情報に対して,評価指標辞書112より取得したキーワードに一致する,または,関連する評価指標を検索する(処理ステップS33)。
【0036】
処理ステップS34では、ドキュメント情報に関連する評価指標があるかを調べ,評価指標ある場合は,次のステップ(処理ステップS35)へ進む。一方,評価指標が無い場合は,入力部100において入力されるドキュメント情報の再取得あるいは,ドキュメント情報の更新を指示する(処理ステップS38)。なお詳細は後述するが,各製品や部品ごとに評価指標が定められている場合もあるため,製品や部品ごとに対応する辞書を用いることで効率的に評価指標を検索してもよい。
【0037】
またこの一連の処理フローのうち、処理ステップS35以降の部分が改善策評価指標紐づけ登録部103において実行される。改善策抽出部101および評価指標抽出部102の結果に対して,改善策評価指標紐づけ登録部103の処理を実行する。
【0038】
具体的には,次に3つの処理を実施する。これらは、改善策と評価指標のセット群を生成する処理(処理ステップS35),セット群に対して各改善策の類似度を評価する処理(処理ステップS36),類似度を評価した結果,類似する改善策を抽出し,紐づけることで1つの改善策で複数の評価指標を改善できる組合せを生成する処理(処理ステップS37)である。これらの具体的な処理内容や類似度の算出については,後述する。
【0039】
まず改善策と評価指標のセット群を生成する処理(処理ステップS35)では,同じドキュメント情報に対して,改善策抽出部101で検索した改善策および,評価指標抽出部102で検索した評価指標を1対1のセットとして生成する。このセットは,同じドキュメント内では,複数候補が生成されても良い。例えば,自然言語処理技術を活用して,頻出頻度や同じ章節項内で出現したものをセットとしてもよい。
【0040】
セット群に対して類似度を算出して評価する処理(処理ステップS36)では,改善策抽出部101で取得した改善策に対して,異なるドキュメント情報などに含まれる他の改善策との類似度を評価する。自然言語処理技術を活用して,対象製品・部品名,改善策の記載内容の文章を活用して,類似度を算出する。具体的には,改善策の記載内容やキーワードの類似性を定量的な数値として算出する。キーワード検索を活用する場合は,形態素解析やWord2Vecなどの自然言語処理技術を活用しても良い。類似度は各キーワードの類似度は,0.0~1.0の範囲内で定義される。値が1.0に近づくほど,類似度が高いことを意味する。
【0041】
類似する改善策を抽出し,紐づけることで1つの改善策で複数の評価指標を改善できる組合せを生成する処理(処理ステップS37)では,類似度を算出した評価する処理(処理ステップS36)の結果に基づいて,類似する改善策を取得する。取得した類似する改善策に対して,改善策に対応している評価指標を紐づけることで1対2の組合せを生成する。例えば,改善策Aと改善策Bがあり,それぞれ改善策Aには評価指標1がセットとして生成され,改善策Bには評価指標2をセットとして生成される場合,改善策Aと改善策Bが類似と判定された場合は,改善策Aおよび改善策Bを共通の1つの改善策A´として,この改善策A´に対して,評価指標1および評価指標2が紐づけられた組合せを生成する。
【0042】
以上,類似度を算出する処理は,改善策のスコアの最も高い改善策と複数の評価指標を組み合わせてユーザに提示することでデータベースの登録を支援する。ただしユーザによって,さらに類似度の高い改善策を重要視したい場合は,類似度を判定する基準のしきい値を任意に指定することも可能である。
【0043】
図4は,改善策辞書111の一例を示す図である。改善策辞書111は、用語D11と構造化タイプD12の組み合わせ情報を複数組保有している。用語D11としては、不具合対策事例から,改善策が記載されることの多い文章によく出現する単語を「改善策」「解決方法」「解決手段」などの用語(改善策に関連するキーワード)として登録している。構造化タイプD12としては、構造と非構造のいずれかの情報を含む。なお構造と非構造の相違は、端的には表形式での記載か、テキスト形式での記載かを表している。表中では体言表記され、テキストでは用言表記されることから、これを区別することで検索を容易化している。
【0044】
上記したように本発明では、不具合対策情報における見出しや章節項または,本文中の全文を対象に検索するために辞書を活用する。見出しや章節項のような構造化されている文章や本文中に記載されているような非構造の文章を対応できるように各タイプを紐づけて登録することで,検索時に効率的にキーワードを抽出できる。辞書を使った検索には,テキストマイニング処理や自然言語処理技術を用いて,改善策が記載されている可能性の高い文章や項目を改善策の候補として抽出する。
【0045】
図5は,改善策の候補の出力結果の一例を示す図である。改善策候補の出力結果としては、ケース番号D31,ファイル名D32,改善策候補D33の情報を含んでいる。図5で示す改善策の候補D33は,図4の改善事例辞書111を用いて、複数の不具合対策事例から検索した結果である。図5に示したケース番号D31が#00001の改善策の候補D33は501に示すように「下図に示すような,従来のブレードの構造をジャバラのような凹凸の構造へ変更することで,冷却性能を改善することとした。」と出力される。
【0046】
一方,ケース番号D31が#00002の改善策の候補D33は502に示すように「(中略)下図に示すような,従来のブレードの構造をジャバラのような凹凸の構造へ変更することで,加工コストを改善することとした。」と出力502される。
【0047】
各改善策の候補D33は,どこの不具合対策事例に含まれていたかを確認できるように,例えばファイル名D32が紐づけられた形式で候補D33がリスト化されて出力する。
【0048】
図6は,評価指標辞書112の一例を示す図である。評価指標辞書112は、製品/部品D21と評価指標タイプD22と種別D23の組み合わせ情報を複数組保有している。不具合対策事例から,製品や部品D21における評価指標D22が記載される際によく出現する単語を「低騒音化」「薄型化」「冷却性能」などの用語(評価指標に関連するキーワード)として登録している。
【0049】
評価指標D22は,製品や部品ごとに評価指標が定められていることも多く,その製品区分などに応じて登録できる。また評価指標D22は,品質工学におけるQCDの観点に加え,近年では環境性Eや安全性Sを重要視する傾向もある為,それらの観点を考慮可能なようにEQCDSの種別を紐づけて登録してもよい。
【0050】
例えば,図6に示した製品Cを対象とする記述では,603に示すような「冷却性能」および604に示すような「加工コスト」のように登録する。辞書を使った検索には,テキストマイニング処理や自然言語処理技術を用いて,評価指標が記載されている可能性の高い文章や単語,項目を評価指標の候補として抽出する。
【0051】
図7A図7Bは,評価指標の候補の出力結果の一例を示す図である。評価指標の候補の出力結果は、ID(D41)と種別D42と評価指標候補D43,D44との組み合わせ情報を複数組保有している。図7A図7Bで示す評価指標は,図6の評価指標辞書112からの情報を用いて,2つの不具合対策事例から検索した結果である。
【0052】
図7Aは,ドキュメント情報「AAA向け不具合対策事例.pdf」を対象に検索した場合であり,検索結果として評価指標候補D43に示すように評価指標1の候補を出力する。また図7Bは,別のドキュメント情報「BBB向け不具合対策事例.pptx」を対象に検索した場合であり,検索結果として評価指標候補D44に示すように,評価指標2の候補を出力する。
【0053】
このように複数のドキュメント情報を対象にそれぞれの評価指標の候補D43,D44がリストで出力される。評価指標辞書112の単語と一致するものを評価指標の候補D43,D44とするが,その他,単語の類似度や頻出頻度などから,評価指標の候補を絞り込んでもよい。図7Aでは、701に示すように“冷却性能”が評価指標1の候補D43となり,図7Bでは、702に示すように“加工コスト”が評価指標2の候補D44となる。
【0054】
図8Aおよび図8Bは,改善策評価指標紐づけ登録部103によって出力される改善策D33と評価指標(D43またはD44)の組合せの出力結果の一例である。また図8Cは,図5で出力された改善策の候補D33および図7で出力された評価指標の候補D43,D44を用いて,改善策の類似度を評価して,類似度のスコアが高い改善策を抽出し、改善策に対応している評価指標を紐づけることで1対2の組合せを生成した結果の一例である。
【0055】
例えば,図8Aおよび図8Bでは,改善策D33と評価指標(D43またはD44)がセットとして生成されており,それぞれ評価指標1と改善策Aがセット800として登録され,評価指標2と改善策Bがセット801として登録されている。この時,改善策Aと改善策Bでは「従来のブレードの構造をジャバラのような凹凸の構造へ変更する」という文章の類似度が高く,類似の改善策と判定される。つまり,改善策Aおよび改善策Bは共通の改善策となり,1つの改善策で複数の評価指標を改善できる候補となる。
【0056】
結果として,図8Cに示すように,この改善策の候補に対して,その改善策D33によって改善できる評価指標1(D43)の「冷却性能」、および評価指標2(D44)の「加工コスト」とを紐づけた組合せ802を生成することができる。
【0057】
図9Aは,出力画面の一例を説明する図である。図8Cで生成された結果を、評価指標1候補900および評価指標2候補901をユーザへ提示する。このとき,ユーザはトレードオフ関係にある評価指標を評価指標辞書112へ登録902することもでき,評価指標辞書112を活用した候補の予測精度向上などを図ることも可能である。
【0058】
さらに,ユーザは具体的な改善事例として改善策903の内容を確認することができる。このとき,関係するリンクやファイル,図などを添付ファイル904に設定しておけば,改善事例に関連する設計基準書や技術文書,図面などの情報も参照可能である。ユーザは,提示された評価指標や改善策の内容を確認した上で,データベース登録905することができる。
【0059】
また,提示された情報に対しては,適宜編集することも可能である。本設計支援装置およびデータベース登録支援装置を使用するシーンや設計対象に応じて,設定906を変更することも可能であり,図9Bのように,設定メニュー910が別画面で起動し,類似度を判定するしきい値の設定などを低,中,高など任意のしきい値911へ変更することも可能である。これにより,データベースの登録時に候補が提示されずにデータベースへ登録できないような場合でも,候補が提示されるように類似度のしきい値を調節することもできる。
【0060】
以上説明した本発明の実施例にかかる背系支援装置は、計算機を用いて構成され、計算機は入力部100と、演算部と、演算部で求められたデータの記憶部DBとを備え、入力部100は、過去の不具合対策事例や過去トラブルを記述した複数のドキュメント情報を取得し、演算部は、ドキュメント情報に記述された改善策をドキュメント情報名に関連付けして抽出する改善策抽出部101と、ドキュメント情報に記述された評価指標をドキュメント情報名に関連付けして抽出する評価指標抽出部102と、同じドキュメント情報名に記述の改善策と評価指標の組み合わせを求めるとともに、改善策が類似する複数のドキュメント情報から、改善策と複数の評価指標の組み合わせを得る改善策評価指標紐づけ登録部103とを備え、記憶部に、改善策と複数の評価指標の組み合わせの情報を記憶部DBに記憶するものである。
【0061】
以上により,トレードオフの関係を解決できる改善策と複数の評価指標をユーザへ提示することで,効率的なデータベースへの登録を支援できる。
【符号の説明】
【0062】
100:入力部
101:改善策抽出部
102:評価指標抽出部
103:改善策KPI紐づけ登録部
104:出力部
111:改善策辞書
106:評価指標辞書
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7A
図7B
図8A
図8B
図8C
図9A
図9B