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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024179046
(43)【公開日】2024-12-26
(54)【発明の名称】多層管
(51)【国際特許分類】
   F16L 11/04 20060101AFI20241219BHJP
   B32B 1/08 20060101ALI20241219BHJP
   B32B 5/18 20060101ALI20241219BHJP
   B32B 27/30 20060101ALI20241219BHJP
【FI】
F16L11/04
B32B1/08
B32B5/18
B32B27/30 101
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023097545
(22)【出願日】2023-06-14
(71)【出願人】
【識別番号】505142964
【氏名又は名称】株式会社クボタケミックス
(74)【代理人】
【識別番号】110001438
【氏名又は名称】弁理士法人 丸山国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小林 毅博
(72)【発明者】
【氏名】岩本 貴
【テーマコード(参考)】
3H111
4F100
【Fターム(参考)】
3H111AA04
3H111BA15
3H111CB04
3H111CB14
3H111CB24
3H111CB29
3H111DA20
3H111DB03
3H111DB05
3H111EA04
4F100AK15
4F100AK15A
4F100AK15B
4F100AK15C
4F100BA03
4F100BA07
4F100DA11
4F100DJ01
4F100DJ01B
4F100EH17
4F100GB07
4F100YY00A
4F100YY00B
4F100YY00C
(57)【要約】
【課題】本発明は、外層に剛性を具備し、切管時の縮径を抑えることのできる多層管を提供する。
【解決手段】本発明の多層管10は、塩化ビニル系樹脂製の非発泡層からなる外層12と、前記外層の内周側に形成され、塩化ビニル系樹脂製の発泡層からなる中間層14と、前記中間層の内周側に形成され、塩化ビニル系樹脂製の非発泡層からなる内層16と、を含む多層管であって、前記外層は、前記中間層の30%超の厚さを有する。前記中間層は、連続気泡率が50%以上であることが望ましい。前記中間層は、独立気泡率が15%以下であることが望ましい。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
塩化ビニル系樹脂製の非発泡層からなる外層と、
前記外層の内周側に形成され、塩化ビニル系樹脂製の発泡層からなる中間層と、
前記中間層の内周側に形成され、塩化ビニル系樹脂製の非発泡層からなる内層と、
を含む多層管であって、
前記外層は、前記中間層の30%超の厚さを有する、
多層管。
【請求項2】
前記中間層は、連続気泡率が50%以上である、
請求項1に記載の多層管。
【請求項3】
前記中間層は、独立気泡率が15%以下である、
請求項2に記載の多層管。
【請求項4】
前記中間層の塩化ビニル系樹脂の重合度は、400~800である、
請求項3に記載の多層管。
【請求項5】
前記外層及び前記内層の塩化ビニル系樹脂の重合度は、前記中間層の塩化ビニル系樹脂の重合度よりも大きい、
請求項4に記載の多層管。
【請求項6】
前記外層は、前記中間層の60%以下の厚さを有する、
請求項5に記載の多層管。
【請求項7】
前記外層は、切断機により切管したときに、外径の縮径率が0.3%以下である、
請求項5に記載の多層管。
【請求項8】
呼び径が20~65である、
請求項5に記載の多層管。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内層と外層に塩化ビニル系樹脂製の非発泡層、中間層に同樹脂製の発泡層を有する多層管に関するものである。
【背景技術】
【0002】
配水管や空調ドレン管など、流体を流通させる配管として塩化ビニル系樹脂製の多層管が用いられている。多層管は、内層と外層を非発泡層、これらの間の中間層を発泡層としている。発泡層を含むことで多層管の軽量化を図ることができ、また、発泡層が防音や断熱効果を発揮することで、内部を流通する流体の流音や放熱、結露などを低減できる。多層管は、剛性の低い中間層を、剛性を具備する外層、内層で挟むことで、変形防止や傷付き防止の機能を有する。
【0003】
たとえば、特許文献1では、中間層に対する外層の肉厚を、30%を上限とする多層管を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第7123880号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
外層を薄く形成することで、コスト低減や軽量化を達成できる。しかしながら、中間層は剛性が低いため、外層を薄くすると、多層管の剛性が低下する。
【0006】
また、多層管を敷設する際に、適宜切管して長さ調整する必要があるが、切管の際に残留ひずみによって管端(外層)が縮径してしまう。管端の縮径は、管継手との接合部における漏水の一因となる。
【0007】
本発明の目的は、外層に剛性を具備し、切管時の縮径を抑えることのできる多層管を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の多層管は、
塩化ビニル系樹脂製の非発泡層からなる外層と、
前記外層の内周側に形成され、塩化ビニル系樹脂製の発泡層からなる中間層と、
前記中間層の内周側に形成され、塩化ビニル系樹脂製の非発泡層からなる内層と、
を含む多層管であって、
前記外層は、前記中間層の30%超の厚さを有する。
【0009】
前記中間層は、連続気泡率が50%以上であることが望ましい。
【0010】
前記中間層は、独立気泡率が15%以下であることが望ましい。
【0011】
前記中間層の塩化ビニル系樹脂の重合度は、400~800であることが望ましい。
【0012】
前記外層及び前記内層の塩化ビニル系樹脂の重合度は、前記中間層の塩化ビニル系樹脂の重合度よりも大きくすることができる。
【0013】
前記外層は、前記中間層の60%以下の厚さを有することが望ましい。
【0014】
前記外層は、切断機により切管したときに、外径の縮径率が0.3%以下であることが望ましい。
【0015】
呼び径が20~65であることが望ましい。
【発明の効果】
【0016】
本発明の多層管は、中間層に対する外層厚みを上記のとおり規定したことで、外層に剛性を具備できるから、変形や傷付きを防止できる。また、本発明の多層管は、中間層に対する外層厚みを規定したことで、切管時の管端の縮径を低減でき、管継手との接合部からの漏水を低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1図1は、本発明の多層管の断面図である。
図2図2は、連続気泡率測定装置を断面して示す説明図である。
図3図3は、多層管の製造装置を示す説明図である。
図4図4は、金型の断面図である。
図5図5は、真空サイジング装置の説明図である。
図6図6は、外層比率と外径縮径率との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の一実施形態に係る多層管10について説明する。本発明の多層管10は、流体を流通させる配水管や空調ドレン管などの配管として種々の用途に使用することができる。
【0019】
図1は、本発明の多層管10の一実施形態を示す断面図である。図に示すように、多層管10は、最も外周に設けられた外層12と、その内周側に形成された中間層14、さらにその内周側に形成された内層16を含む。なお、外層12、中間層14、内層16は夫々図示では1層の形態であるが、夫々を複数層の形態としても構わない。
【0020】
<材質>
本発明の多層管10は、外層12と内層16が塩化ビニル系樹脂の非発泡層、中間層14は、塩化ビニル系樹脂の発泡層から構成している。
【0021】
外層12、中間層14及び内層16は、塩化ビニル系樹脂製とすることができる。塩化ビニル系樹脂は、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル単量体とエチレン等の共重合体などを挙げることができるが、これに限定されるものではない。なお、外層12、中間層14、内層16の塩化ビニル系樹脂は同じであってもよいし、異なった材料であってもよい。
【0022】
塩化ビニル系樹脂の平均重合度は、400以上が好適であり、2000以下が望ましい。塩化ビニル系樹脂の平均重合度が400未満になると、熱安定性や疲労特性などが低下し易く、また、平均重合度が2000を超えると、一般的な成形温度での成形が困難になり、塩化ビニル系樹脂が分解してしまうためである。より望ましい塩化ビニル系樹脂の平均重合度は、下限が600以上であり、上限が1500以下である。
【0023】
塩化ビニル系樹脂の平均重合度について、非発泡層である外層12と内層16の平均重合度は、発泡層である中間層14の平均重合度よりも大きくすることが好適である。この理由は、強度を受け持つ外層12と内層16の樹脂の重合度は、より高重合度で強度の高い塩化ビニル樹脂が望ましく、中間層14の塩化ビニルの重合度は、発泡が進みやすい低重合度の塩化ビニル樹脂が望ましいからである。外層12と内層16の平均重合度は、800~1500であることが好適であり、中間層14の平均重合度は、400~800とすることが好適である。外層12と内層16の平均重合度は、中間層14の平均重合度よりも100以上大きいことがより望ましい。
【0024】
発泡層である中間層14には、発泡を行なうために、成形時に塩化ビニル系樹脂に発泡剤が添加される。発泡剤は、揮発性のもの、分解型のもの、或いは、熱膨張性マイクロカプセルを使用できる。揮発性を有する発泡剤として、脂肪族炭化水素、脂環族炭化水素、ハロゲン化炭化水素の他、エーテルやケトンなどを例示できるが、これに限定されるものではない。分解型の発泡剤としては、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、重炭酸アンモニウム、亜硝酸アンモニウムなどを例示できるが、これに限定されるものではない。なお、発泡剤は、1種のみ或いは複数種類を混合して使用してもよい。また、発泡剤は、炭酸ガスや空気、窒素ガスなどのガスであってもよい。
【0025】
塩化ビニル系樹脂には、成形性や製品特性を改善するために安定剤を含有することが望ましい。安定剤として、Ca-Zn系、Ba-Zn系、Sn系、Pb系のものを例示できる。
【0026】
非発泡層である外層12には、顔料を含めることができる。顔料を含めることで、多層管10の外観を良好とし、或いは、ユーザーのニーズに沿った着色とすることができる。
【0027】
<形状>
多層管10は、図1に示すように円環状の形態とすることができる。外層12、中間層14及び内層16を合わせた多層管10の内径、外径、肉厚は適宜選択することができる。たとえば、多層管10の内径は20mm以上が好ましく、65mm以下が好ましい。多層管10の外径は、32mm以上(呼び径20)が好ましく、89mm以下(呼び径65)が好ましい。また、多層管の肉厚は、6.0mm以上が好ましく、11.0mm以下が好ましい。
【0028】
各層の厚さについては、外層12は、中間層14の30%超の厚さとすることが好ましく、望ましくは、35%以上の厚さ、より望ましくは40%以上の厚さとする。非発泡層である外層12は、発泡層からなる中間層14よりも剛性が高いため、外層12の厚さを上記のように規定することで、多層管10の外周に高い剛性を具備でき、変形の防止や傷付きの防止を達成できる。
【0029】
一方で、非発泡層である外層12は、発泡層である中間層14よりも比重が大きいため、外層12が厚くなると、多層管10の重量化を招く。また、中間層14は、多孔質であるが故に、高い防音効果や断熱効果を具備するが、中間層14が薄くなるとそれらの効果も低減する。従って、外層12は、中間層14の60%以下の厚さとすることが好ましく、望ましくは50%以下の厚さ、より望ましくは45%以下の厚さとする。
【0030】
また、内層16は、中間層14の35%以上の厚さとすることが好ましく、望ましくは40%以上の厚さ、より望ましくは45%以上の厚さとする。非発泡層である内層16は、発泡層からなる中間層14よりも剛性が高いため、内層16の厚さを上記のように規定することで、多層管10の内周に高い剛性を具備でき、変形や、内部を流通する流体との接触による傷付き等を防止できる。
【0031】
一方で、外層12の場合と同様、非発泡層である内層16は、発泡層である中間層14よりも比重が大きいため、内層16が厚くなると多層管10の重量化を招く。また、発泡層である中間層14は、多孔質であるが故に、高い防音効果や断熱効果を具備するが、中間層14が薄くなるとそれらの効果も低減する。従って、内層16は、中間層14の厚さの70%以下の厚さとすることが好ましく、望ましくは65%以下の厚さ、より望ましくは60%以下の厚さとする。
【0032】
なお、外層12と内層16の厚さを比べた場合には、外層12の方を厚くすることで、流体と接する内層16では流体の温度の影響を吸収しつつ、管全体の強度を保有することができる。具体的には、外層12は、内層16の1.0倍超が好ましく、望ましくは1.2倍以上、より望ましくは1.4倍以上である。
【0033】
逆に、内層16の方を厚くすることで、流体と接する内層16(流体経路)の変形を抑制しつつ、管全体のたわみをある程度許容することができる。具体的には、内層16は、外層12の1.0倍超が好ましく、望ましくは1.2倍以上、より望ましくは1.4倍以上である。
【0034】
<中間層14>
発泡層である中間層14の発泡倍率は、3.0倍以上が好適であり、4.0倍以上が望ましい。また、その上限は、7.0倍以下が好適であり、6.0倍以下が望ましい。発泡倍率が高くなることで中間層14の軽量化、ひいては多層管10の軽量化を図り、防音や断熱効果を具備できる。しかしながら、発泡倍率が高くなると、剛性や強度が低下するため、上記範囲とすることが望ましい。発泡倍率は、中間層14を切り出し、JIS K 7112:1999により密度を測定して、算出することができる。
【0035】
中間層14は、発泡層に含まれる気泡どうしが繋がった連続気泡率が50%以上であることが好適であり、70%以上が望ましい。また、その上限は、90%以下が好適であり、85%以下が望ましい。連続気泡率は、JIS K 7138:2006に準拠して測定することができる。逆に、独立気泡率は15%以下であることが好適であり、10%以下が望ましい。
【0036】
連続気泡率が高くなり、独立気泡率が低くなる程、発泡倍率が高くなり、中間層14が軽量化、かつ断熱性能が向上するため、連続気泡率の下限と独立気泡率の上限は上記のとおり設定することが望まれる。一方、連続気泡率が高くなると、中間層14の強度や遮水性能が低下するため、上限は上記のとおり設定することが望まれる。
【0037】
また、たとえば、図2に示す連続気泡率測定装置80を用いて測定できる。連続気泡率測定装置80は、上下一対のキャップ81,82と下側のキャップ82に接続されたポンプ83を含んだ構成である。多層管10は、長さ400mmに切断され、内層16の内側の流路17をエアーパッカー84によって気密に塞いでいる。当該多層管10の両端には、外層12とキャップ81,82の内面との間にシールリング85を装着し、外層12の端面から1mmの隙間を残して、キャップ81,82を装着する。そして、ポンプ83から10kPaの圧力で水を送り込み、15分間放置する。そして、15分後に多層管10を縦に切断し、発泡層である中間層14の断面を観察して、中間層14のどの高さまで水が浸入したかによって連続気泡の割合を数値化する方法を例示できる。
【0038】
<多層管10の製造方法>
多層管10は、たとえば図3に示すような製造装置18を用いて製造することができる。製造装置18は、第1押出成形機20、第2押出成形機22、真空サイジング装置24、引取機26及び切断機28等を含む構成である。
【0039】
第1押出成形機20及び第2押出成形機22は、ホッパー30,32から供給された樹脂原材料を加熱溶融して押し出す第1押出機34と第2押出機36を含み、第1押出機34及び第2押出機36の出口には金型38が取り付けられる。第1押出成形機20のホッパー30には、多層管10の外層12と内層16の原材料が供給され、第2押出成形機22のホッパー32には、中間層14の原材料が供給される。中間層14は、発泡層故、中間層14の樹脂原料中に発泡剤を混入する。なお、発泡剤が混入されても溶融樹脂46は高圧下の第2押出機36内では発泡はしない。
【0040】
金型38は、図4に示すように、多層(三層)押出用金型であり、合流部40及び成形部42を含む。合流部40において、第1押出機34及び第2押出機36から導入された溶融樹脂44と46が合流され、その出口近傍で積層される。積層された溶融樹脂44と46は、成形部42において、積層されたままで拡径されて管状にされる。すなわち、溶融樹脂44が外層12と内層16となり、溶融樹脂46が中間層14となる。このとき、溶融樹脂46は、圧力開放されて、発泡剤が発泡する。なお、溶融樹脂44と46の供給圧、或いは、その流路面積を調整することで、外層12、中間層14、内層16の厚さを適宜調整できる。
【0041】
そして、積層された溶融樹脂44と46は、成形部42の先端部に設けられたダイリング48とマンドレル50によって、外周及び内周はある程度適切なサイズに規制され、多層からなる連続管52として押し出される。
【0042】
金型38の下流に配置される真空サイジング装置24は、金型38から押し出された連続管52の外面をサイジングするとともにこれを冷却するためのものであり、図5に示すように、連続管52の押出方向に延びる本体54を含む。本体54の長手方向の一方端部及び他方端部には管の入口56及び出口58が形成される。本体54内の入口56側には真空ポンプ60が接続された真空室62が設けられ、真空室62内にはサイジングスリーブ64が配置され、サイジングスリーブ64の一端が入口56に接続される。また、真空室62と出口58との間に冷却室66が設けられ、真空室62及び冷却室66の全長に亘って散水パイプ68が配置される。
【0043】
連続管52が真空サイジング装置24に与えられると、真空ポンプ60の負圧により連続管52が膨張され、その外面がサイジングスリーブ64の内面に密着されることによりサイジングされる。また、サイジングされた連続管52は、散水パイプ68から撒かれる冷却水により冷却されて硬化される。
【0044】
引取機26は、連続管52を一定の速さで引き取るためのものであり、連続管52の下部及び上部に押圧される引取ローラー70を含む。引取ローラー70の少なくとも一つには図示しないモーターが接続され、モーターの回転数を制御することによって連続管52の引き取り速さが調整される。
【0045】
切断機28は、連続管52を所定長さに切断するためのものであり、連続管52の先端位置を検出するセンサ71と、センサ71に連動して駆動される鋸歯72とを含む。連続管52の先端がセンサ71を押すと、鋸歯72が駆動されて連続管52が切断され、図1に示す外層12,中間層14及び内層16を含む多層管10が得られる。
【0046】
なお、上記製造方法は、一例であり、他の方法により多層管10を作製することはもちろん可能である。
【実施例0047】
下記要領にて多層管10を作製し、切管前後の縮径量、縮径率を測定した。
【0048】
外層12、中間層14、内層16の材質は下記のとおりである。
【0049】
外層12:ポリ塩化ビニル(重合度1000、大洋塩ビ株式会社製、商品名:TH-1000)
中間層14:ポリ塩化ビニル(重合度700、大洋塩ビ株式会社製、商品名:TH-700)、発泡剤:熱膨張性マイクロカプセル(松本油脂製薬株式会社製、商品名:マツモトマイクロスフェアーFシリーズ、アクリル系シェルタイプ)
内層16:外層12と同じ
【0050】
外層12と内層16のポリ塩化ビニル100質量部とPb系安定剤(水澤化学工業株式会社製、三塩基性硫酸鉛とステアリン酸鉛)を計2.0質量部とを混合し、非発泡層用の樹脂原材料を調整した。同じく、中間層14のポリ塩化ビニル100重量部と、Pb系安定剤(上記と同じ)を1.6重量部と、発泡剤を5.0重量部とを混合し、発泡層用の樹脂原材料を調整した。
【0051】
これら原材料を、図3乃至図5に示す製造装置18のホッパー30,32に供給し、多層管10の押出成形を行なった。第1押出機34と第2押出機36における樹脂原材料の加熱溶融温度は180℃、金型38内の圧力は10~20MPaである。なお、中間層14の発泡倍率は、約5.0倍であった。
【0052】
上記により作製した多層管10は、呼び径の異なる3種類であり、夫々発明例と比較例としている。多層管10の各層の厚さと、中間層14に対する内層16、外層12の厚さの比率、及び、切管前の多層管10の外径寸法を表1に示している。
【0053】
【表1】
【0054】
各多層管10を、塩ビ管切断機により切管した。そして、切管部の先端寸法を測定し、切管前寸法に対する縮径量と縮径率を算出した。結果を併せて表1に示している。また、外径の縮径率は、図6のグラフにプロットしている。
【0055】
表1及び図6を参照し、各呼び径毎に、発明例と比較例を比べると、発明例は比較例に比べて縮径量、縮径率を小さくできていることがわかる。具体的には、シュッ矩形率を0.3%以下に抑えることができた。これは、中間層14に対する外層12の厚さを30%超としたことで、多層管10の外周に高い剛性を具備でき、切管時の残留ひずみを低減できたためである。縮径量、縮径率が小さいことから、発明例の多層管10は、管継手との接合部における漏水を低減できることがわかる。
【0056】
外層12を厚く構成できることで、耐衝撃性も向上できる。たとえば、中間層14に対する外層12の比率が27%の多層管と48%の多層管を比較すると、強度を約16%向上できる。なお、強度の比較は、3kgの円柱状の錘を多層管の周面に落下させて、割れが発生する最小高さから算出した。
【0057】
また、図6のプロットから回帰近似式を求めたところ、式y=2.1858e-0.06xで近似できた。この近似式を図示すると、図6のとおりであり、外層比率が大きいほど、外径収縮率を小さくできることがわかる。
【0058】
上記実施例の説明は、本発明を説明するためのものであって、特許請求の範囲に記載の発明を限定し、或は範囲を減縮する様に解すべきではない。又、本発明の各部構成は上記実施例に限らず、特許請求の範囲に記載の技術的範囲内で種々の変形が可能であることは勿論である。
【符号の説明】
【0059】
10 多層管
12 外層
14 中間層
16 内層
図1
図2
図3
図4
図5
図6