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特開2024-179050粘着式ローラクリーナーと粘着シートの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024179050
(43)【公開日】2024-12-26
(54)【発明の名称】粘着式ローラクリーナーと粘着シートの製造方法
(51)【国際特許分類】
   A47L 25/00 20060101AFI20241219BHJP
   C09J 7/38 20180101ALI20241219BHJP
   C09J 7/26 20180101ALI20241219BHJP
【FI】
A47L25/00 A
C09J7/38
C09J7/26
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023097550
(22)【出願日】2023-06-14
(71)【出願人】
【識別番号】505176017
【氏名又は名称】中島 敏
(74)【代理人】
【識別番号】100094617
【弁理士】
【氏名又は名称】神崎 正浩
(72)【発明者】
【氏名】中島 敏
【テーマコード(参考)】
4J004
【Fターム(参考)】
4J004AB02
4J004BA02
4J004CB04
4J004DB02
4J004EA06
4J004FA10
(57)【要約】
【課題】使用済みの粘着シートが容易に完全に取り除かれる新規な形態の粘着シートを備えた粘着式ローラクリーナー及び、当該新規な粘着シートの製造方法の提供。
【解決手段】ハンドルに連続する軸芯に転動自在に取り付けられた円筒状のローラ10と、該ローラ10の外周に装着されて、その表面の粘着面にてローラ10の転動に伴って被清掃面上のゴミを捕捉する使い捨ての粘着シート20とを備えている粘着式ローラクリーナー1において、粘着シート20は、中空形状の基材シート(21a,21b)と、前記基材シートの表面上に形成された粘着剤層22と、粘着剤層22の表面を被覆する剥離ライナー23とが重ねられているものであり、その中空部23がローラ10の外周に着脱可能な内径寸法を有しているものとした。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハンドルに連続する軸芯に転動自在に取り付けられた円筒状のローラと、該ローラの外周に装着されて、その表面の粘着面にて前記ローラの転動に伴って被清掃面上のゴミを捕捉する使い捨ての粘着シートと、を備えている粘着式ローラクリーナーにおいて、
前記粘着シートは、中空形状の基材シートと、前記基材シートの表面上に形成された粘着剤層と、前記粘着剤層の表面を被覆する剥離ライナーとが重ねられているものであり、その中空部が前記ローラの外周に着脱可能な内径寸法を有していることを特徴とする粘着式ローラクリーナー。
【請求項2】
前記中空形状の基材シートは、互いに同一矩形状の第1の基材シートと第2の基材シートとが外表で重ねられて互いの長手方向の両端辺同士で接合されているものであることを特徴とする請求項1に記載の粘着式ローラクリーナー
【請求項3】
前記ローラは、外周面の複数箇所に、該外周面から外方へ突出して形成され、外力に応じた弾性変形によりローラ内側へ押し下げられるバネ部が一体に設けられていることを特徴とする請求項1に記載の粘着式ローラクリーナー。
【請求項4】
前記ローラは、前記粘着シートの中空部に挿入される側の先端部に、外径が連続的に縮小するテーパー部が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の粘着式ローラクリーナー。
【請求項5】
請求項2に記載の粘着シートの製造方法であって、
各供給源からそれぞれ送り出され、裏面同士を対向させて搬送されてくる互いに同種で同じ帯形状の第1の基材シートテープと第2の基材シートテープとを重ねて積層状態で下流へ搬送するシート積層工程と、
前記積層状態の前記第1の基材シートテープと前記第2の基材シートテープとの各表面に粘着剤を塗付する粘着剤層形成工程と、
前記前記第1の基材シートテープと前記第2の基材シートテープとに対して、それぞれ前記粘着剤層を被覆する帯状の剥離ライナーテープを重ねて積層体として下流へ搬送する剥離ライナー積層工程と、
前記剥離ライナー積層工程から搬送されてくる前記積層体に対して、予め定められた間隔毎に搬送方向と直交方向の線上で、外両側から挟んで押圧しながら前記第1の基材シートテープと前記第2の基材シートテープとの溶着を行って中空形状の粘着シートの連続体を形成する溶着工程と、
前記溶着工程の下流位置で、前記第1の基材シートテープと前記第2の基材シートテープとが溶着された前記線上にて、隣接する前記中空形状の粘着シート同士を切り離す切断工程、あるいは、前記線上にミシン目を打ち抜いて形成する打ち抜き工程、を備え、
前記第1の基材シートテープと前記第2の基材シートテープとが、少なくとも互いに重なる裏面に互いに溶着可能な熱可塑性樹脂層を含むものであることを特徴とする粘着シートの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粘着式ローラクリーナーに関し、詳しくは、使用後に綺麗に簡単に新しい粘着面が得られる使い捨ての粘着シート及び該粘着シートの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
現在、各種床面やカーペット、畳だけでなく、椅子やソファの張地、カーテン、クッション等のファブリック、また衣類等の表面に対して塵・埃やゴミを手軽に除去する掃除具として、粘着式ローラクリーナーは欠かせないものとなっている。
【0003】
一般的な粘着式ローラクリーナーは、円筒状の芯材周りに粘着面が表側を向くように巻回されて円筒スリーブ状とした粘着テープロールと、この粘着テープロールを回転可能に支持する清掃具本体とを備え、清掃具本体に形成されたテープ支持部としてのローラに粘着テープロールを差し込んで使用するものである(例えば、特許文献1を参照。)。
【0004】
このような粘着式ローラクリーナーでは、粘着テープロールを被清掃面上で転がすことで、粘着面でゴミを捕捉することができ、使用後は粘着テープの汚れた最外層のシート部分を切り取れば、新たに露呈された粘着シート部分を使用できる。
【0005】
さらに、粘着テープロールの円筒軸線方向に沿って、ミシン目状の切れ目が最外層からロール芯に至る深さに形成されているもの(例えば、特許文献2を参照。)も普及している。この場合、使用済みのシート部分のみをミシン目で切り取りやすくなっている。
【0006】
従って、使用済みのシート部分を粘着テープロール本体から切り離すときに、新しいシート部分の一部も切り取ってしまう、または、使用済みシート部分の一部を残して切り離してしまうことが回避される。
【0007】
しかし、使用済みのシート部分を粘着テープロールから剥がす際には、前回切り取られたミシン目に沿った端辺をとっかかりとして捲り上げることになるが、その端辺部分は、全幅にわたって裏面がその下の粘着面に密着しており、端辺が捲り難い状態となっている。
【0008】
更にゴミがその端辺を跨いで付着している場合には、とっかかりとしての端辺部を見つけて捉えること自体が難しく、ミシン目があってもスムーズに捲り剥がすことができない場合があるという問題があった。
【0009】
そこで、各粘着シートをロール1周分で菱形としたものが開発されている。これは、粘着シートロールに螺旋状にミシン目のカットを入れて製作しており(特許文献3を参照。)、各シートの鋭角な角部をとっかかりとして容易に捲り上げ、スムーズに剥がすことができるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2002-315718号公報
【特許文献2】特開2009-207903号公報
【特許文献3】特開2013-31621号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、上記のような鋭角な角部で容易に捲り上げられる菱形の粘着シートでも、ミシン目を跨いでゴミが付着していると、やはり必ずしもミシン目に沿って切り離されるわけではなく、湾曲した切り口となり、汚れた部分が残ることや新しい粘着シートが欠損することもある。特に髪の毛などの長いゴミがミシン目を跨いで絡んでいる場合には、その長いゴミを切断してからでなければミシン目に沿って使用済みのシートを容易に切り離すことができなかった。
【0012】
本発明の目的は、上記問題点に鑑み、使用済みの粘着シートが、長いゴミが絡んでいても切断する必要なく、次の新しい粘着面上に部分的に残ることも新しい粘着面が欠損することもなく容易に完全に取り除かれる新規な形態の粘着シートを備え、当該粘着シートを良好な保持状態で転動して効率的に清掃が行える粘着式ローラクリーナー及び、当該新規な粘着シートの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明に係る粘着式ローラクリーナーは、例えば、図1図4図5図6図7に示すように、ハンドルに連続する軸芯に転動自在に取り付けられた円筒状のローラと、該ローラの外周に装着されて、その表面の粘着面にて前記ローラの転動に伴って被清掃面上のゴミを捕捉する使い捨ての粘着シートと、を備えている粘着式ローラクリーナーにおいて、
前記粘着シートは、中空形状の基材シートと、前記基材シートの表面上に形成された粘着剤層と、前記粘着剤層の表面を被覆する剥離ライナーとが重ねられているものであり、その中空部が前記ローラの外周に着脱可能な内径寸法を有していることを特徴とする。
【0014】
本発明に係る請求項1に記載の粘着式ローラクリーナーによれば、粘着シートが中空形状であり、円筒状のローラの外周に着脱可能に装着されるものであるため、当該粘着シートをローラに装着し、最外層としての剥離ライナーを取り外して粘着シートの粘着剤層の表面(粘着面)を露呈させれば、被清掃面上でローラを転動させることによって従来と同様に被清掃面上のゴミを捕捉することができる。
【0015】
そして、本発明による粘着シートは、使用後にローラを相対的に抜き出せば、部分的に残ることもなく、容易に且つ完全にローラから取り外してそのまま廃棄できる。従って、髪の毛などの長いゴミが絡まって付着していても、それを切断してからミシン目に沿って切り取るという面倒な作業を必要とすることなく、簡単に完全な使用済み粘着シートの取外しが完了する。そして、別個の新しい中空形状の粘着シートを同様にローラに装着するだけで、簡単に且つスムーズに粘着シートの交換は完了し、直ちに被清掃面上の清掃を続けられる。
【0016】
尚、中空形状の粘着シートは、従来のロール状シートのような円筒状の芯材がなく、またそれぞれ粘着面が剥離ライナーで覆われているため、未使用時には平たく潰した状態で嵩張ることなく複数を重ねて収納しておくことができる。
【0017】
そして、使用直前に中空部を円筒状に膨らませてローラに容易に装着できる。またこのローラへの装着時にも手が粘着面に触れることがないため、装着作業を容易にする。
【0018】
更に、使用後の粘着シートを取り外す際には、粘着シートの開口端を摘まんで引っ張るだけでローラから簡単に外せる。このとき、粘着シートの表面の端部分に僅かな幅で粘着剤層が積層されていない非粘着領域を設けておくことが好ましい。使用後の取り外しの際に、この非粘着領域を摘まんで引っ張ることができるため、指先がゴミや粘着面に触れることがなく汚れずに済む。
【0019】
請求項2に記載の発明に係る粘着式ローラクリーナーは、例えば、図1図4図5図6図7に示すように、前記中空形状の基材シートは、互いに同一矩形状の第1の基材シートと第2の基材シートとが外表で重ねられて互いの長手方向の両端辺同士で接合されているものであることを特徴とする。
【0020】
本発明に係る請求項2に記載の粘着式ローラクリーナーによれば、2枚の矩形状の基材シート同士をその長手方向の両端辺同士で接合されたものであるため、例えば一枚の基材シートの両端辺を接合して中空形状とするものに粘着剤層および剥離ライナーを積層するよりも、簡単に多くの中空形状の粘着シートを形成できる。
【0021】
本発明における中空形状の粘着シートは、例えば、図8に示すように、同一の中空形状を有する複数個が、互いに長手辺同士でミシン目により切り離し可能に連続的に繋がっている製品形態のものから、使用直前に順次先端の新しい粘着シートをミシン目で切り離したものとすることができる。
【0022】
このようなミシン目で切り離し可能に繋がった複数個の中空形状の粘着シートの連続体を製品形態とした場合には、従来のロール状粘着シートのような芯材がないため、それぞれ平たく潰してミシン目で折り畳みながら重ねて粘着シートの連続体を1セットとした製品とすることができる。各粘着シートの粘着面は剥離ライナーで覆われているため、問題無く折り畳んで重ねることができる。
【0023】
一方、複数個の中空形状の粘着シートを互いに繋がっていない個別の状態で製品形態とした場合、実用的な販売形態として、それぞれ粘着面が剥離ライナーで覆われた個別の粘着シートを所定個数重ねた束単位で製品とすれば良い。
【0024】
請求項3に記載の発明に係る粘着式ローラクリーナーは、例えば、図1図2に示すように、前記ローラは、外周面の複数箇所に、該外周面から外方へ突出して形成され、外力に応じた弾性変形によりローラ内側へ押し下げられるバネ部が一体に設けられていることを特徴とする。
【0025】
本発明に係る請求項3に記載の粘着式ローラクリーナーによれば、ローラの外周面の複数箇所に突出して一体に形成されたバネ部によって、ローラの外周面に装着された中空形状の粘着シートは、その内側から外方へ付勢されるため、ローラ表面に対する横滑りが阻止され、確実で安定した装着状態が維持される。
【0026】
従って、使用中に粘着シートがローラから容易にズレたり外れることはない。
【0027】
尚、バネ部は、外方からローラの内側方向へ押せば、その弾性によってローラの内側へ若干押し下げることができる。
【0028】
従って、粘着シートの使用前の装着時には、バネ部を押しながら装着方向に引っ張れば、粘着シートはローラに対してスムーズに摺動し、良好に装着を完了させられる。同様に、使用後の粘着シートの取り外し時には、バネ部を押しながらローラが抜かれる方向に引っ張るだけで、粘着シートはスムーズに摺動して簡単に取り外すことができる。
【0029】
このようなバネ部は、ローラがプラスチック製であれば、周囲に切り込みを入れた凸部を形成するだけで、その部材弾性により良好に機能する。このバネ部をローラに一体に設ける方法としては、例えば型を用いた一体成形の後、各凸分の周囲に切り込みを入れてそれぞれバネ部を完成させることができる。
【0030】
また、例えば3Dプリンターによれば、バネ部付きのローラという目的の最終形態まで完成させることができる。
【0031】
請求項4に記載の発明に係る粘着式ローラクリーナーは、例えば、図1図2図5に示すように、前記ローラは、前記粘着シートの中空部に挿入される側の先端部に、外径が連続的に縮小するテーパー部が設けられていることを特徴とする。
【0032】
本発明に係る請求項4に記載の粘着式ローラクリーナーによれば、ローラの先端部のテーパー部が、中空形状の粘着シートをローラに装着する際の導入部となるため、装着がスムーズでより簡便となる。
【0033】
請求項5に記載の発明に係る粘着シートの製造方法は、請求項2に記載の粘着シートの製造方法であって、例えば、図3に示すように、各供給源からそれぞれ送り出され、裏面同士を対向させて搬送されてくる互いに同種で同じ帯形状の第1の基材シートテープと第2の基材シートテープとを重ねて積層状態で下流へ搬送するシート積層工程と、
前記積層状態の前記第1の基材シートテープと前記第2の基材シートテープとの各表面に粘着剤を塗付する粘着剤層形成工程と、
前記前記第1の基材シートテープと前記第2の基材シートテープとに対して、それぞれ前記粘着剤層を被覆する帯状の剥離ライナーテープを重ねて積層体として下流へ搬送する剥離ライナー積層工程と、
前記剥離ライナー積層工程から搬送されてくる前記積層体に対して、予め定められた間隔毎に搬送方向と直交方向の線上で、外両側から挟んで押圧しながら前記第1の基材シートテープと前記第2の基材シートテープとの溶着を行って中空形状の粘着シートの連続体を形成する溶着工程と、
前記溶着工程の下流位置で、前記第1の基材シートテープと前記第2の基材シートテープとが溶着された前記線上にて、隣接する前記中空形状の粘着シート同士を切り離す切断工程、あるいは、前記線上にミシン目を打ち抜いて形成する打ち抜き工程、を備え、
前記第1の基材シートテープと前記第2の基材シートテープとが、少なくとも互いに重なる裏面に互いに溶着可能な熱可塑性樹脂層を含むものであることを特徴とする。
【0034】
本発明に係る請求項5に記載の粘着シートの製造方法によれば、粘着式ローラクリーナー用の中空形状の粘着シートを連続的に効率よく製造することができる。即ち、例えばロール状の供給源からそれぞれ繰り出されて裏面同士を対向させられた状態で送り出されてくる帯形状の第1の基材シートテープと第2の基材シートテープとは、シート積層工程にて互いに積層状態に重ねられて下流へ搬送される。
【0035】
そして粘着剤層形成工程にて、外に向いた各表面上に、粘着剤が噴霧あるいはローラによる展延等で塗付されることによって粘着剤層が被覆される。このように、第1の基材シートテープと第2の基材シートテープは、外表状態で重ねられて搬送されるものである。
【0036】
また、粘着剤層形成工程の下流の剥離ライナー積層工程にて、互いに外表で重ねられている第1の基材シートテープと第2の基材シートテープとは、それぞれの粘着剤層を被覆する剥離ラーナーテープが更に重ねられた積層体とされて下流へ搬送される。
【0037】
その後、溶着工程にて、予め定められた間隔毎に搬送方向と直交方向の線上で、積層体を外両側から挟んで押圧しながら第1の基材シートテープと第2の基材シートテープとが、その少なくとも裏面側の熱可塑性樹脂層によって連続的に溶着される。
【0038】
ここで、溶着が施される間隔は、製品としての各粘着シートの上下に押し潰された状態での長手方向と直交する横幅寸法に相当するものとする。従って、この連続した溶着によって、外表で重ねられた同一矩形状の第1の基材シートと第2の基材シートとが互いの長手方向の両端辺同士で接合されて成る中空形状の粘着シートが連続して形成される。
【0039】
また、溶着された各線上にて切断を行えば、互いに切り離された個別の中空形状の粘着シートとして連続的に製造される。加えて、切断ではなく、打ち抜き工程にて溶着された各線上にミシン目を形成すれば、個別に切り離し可能に複数個が繋がった粘着シートの連続体を製品形態として形成することができる。
【0040】
尚、溶着は、互いの材料の間に熱を持たせて溶融し、圧力を加えて溶け合った部分同士が一体に接合され、その後の冷却にて接合部が固定されるものである。
【0041】
従って、本発明において、所定間隔毎に互いに溶着される第1の基材シートテープと第2の基材シートテープとは、互いに溶着可能な熱可塑性樹脂から構成されたものとする。
【0042】
この場合、第1と第2の基材シートテープの全体を熱可塑性樹脂製としてもよいが、少なくとも互いに重ねられる裏面に熱可塑性樹脂層を含むものであれば良い。例えば、紙などの別素材に熱可塑性樹脂フィルムを被覆したもので良い。
【0043】
また、熱可塑性樹脂としては、薄いシートの柔軟性、可撓性を損なうことなく被覆、形成できるポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリ塩化ビニル(PVC)など、比較的低コストで一般的に扱いやすい熱可塑性樹脂が好適である。
【0044】
この他、本発明における具体的な溶着方法についても、従来、熱可塑性樹脂シート・フィルムの溶着に一般的に用いられている熱溶着手段でよく、例えば、高周波溶着(高周波ウェルダー)、熱溶着、超音波溶着が採用できる。
【0045】
尚、外部にある熱源から加熱、接合させる熱溶着に比べて、内部加熱による高周波溶着、超音波溶着は、周囲への影響が少なく、きれいな仕上がりとなる点ではより好ましい。
【0046】
また、剥離ライナーテープは、粘着剤層表面に適度な貼着力で保持されていればよく、互いに溶着される必要のないものであるため、従来の粘着シート用の剥離紙等を剥離ライナーとして採用可能である。例えば、紙基材に粘着剤に付きにくいシリコン剥離剤をコーティングしたものが一般的であるが、シリコン樹脂は熱硬化性樹脂であり、基材シートの溶着に影響されないため、好適である。
【0047】
更に、粘着剤についても、基材シートに噴霧や展延塗付等によって積層できるものであれば、従来使用されている既存のものが採用できる。例えば、天然ゴム系の他、アクリル系粘着剤やウレタン粘着剤、シリコン粘着剤等の化学合成糊等が挙げられる。これらから、製品として対象とする被清掃面、例えば布系用、あるいはフローリング等に対応して、比較的粘性の強いものから弱いものの間で適宜選択され得る。
【発明の効果】
【0048】
本発明の粘着式ローラクリーナーによれば、以上に説明した通り、表面の粘着面に剥離ライナーが重ねられた中空形状の粘着シートをローラに交換可能に装着して使用することができるため、従来のロール状のような使用後の粘着シートを取り除く際にゴミが付着した一部が残ったり新しいシートが欠損してしまうという問題が生じることなく、簡単に且つ確実に新しい粘着シートへの取替えが行えるという効果がある。
【0049】
また、本発明の粘着シートの製造方法によれば、外表で重ねられた第1と第2の基材シートテープを粘着剤層、及び剥離ライナーテープを積層した後に所定間隔毎に溶着し、切断、あるいはミシン目を打ち込むという連続工程によって、多数の中空形状の粘着シートを連続的に効率良く製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0050】
図1】本発明に係る粘着式ローラクリーナーを構成するローラと粘着シートとを、未装着状態で示した斜視図である。
図2図1に示すローラの概略構成を示す断面図であり、(a)は図1中のIIa-IIa矢視における縦断面図、(b)は図1中のIIb-IIb矢視における横断面図である。
図3図1に示す粘着シートの製造方法を示す製造工程説明図である。
図4図1に示す粘着シートの概略構成図であり、(a)は未使用収納時の潰れ状態の斜視図、(b)は(a)中の円Xにおける縦断面図、(c)は使用直前のローラ装着のために中空部を円筒状に膨らませた状態の斜視図である。
図5図4に示す粘着シートのローラへの装着方向を示す斜視図である。
図6図5に示す粘着シートのローラ装着状態を示す斜視図であり、(a)は装着直後の剥離ライナー付きの状態図、(b)は剥離ライナー取り外し後の状態図である。
図7図6に示す粘着シートの使用後におけるローラからの取り外し状態を示す斜視図である。
図8図3に示す製造工程で得られる粘着シートの製品形態の一例を示す斜視図である。
図9図1の実施形態の変形例として剥離ライナーに摘まみ部を形成した粘着シートを示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0051】
以下に、図面を参照して、本発明の一実施の形態について説明する。
【0052】
<実施の形態>
図1乃至図8は、本発明に係る粘着式ローラクリーナーの一実施の形態を示している。
【0053】
本実施形態の粘着式ローラクリーナー1は、図1図2図5に示すように、ハンドル2に連続する金属製の軸芯3に回転自在に取り付けられた円筒状のローラ10と、ローラ10の本体外周面11に装着され、ローラ10の転動に伴ってその表面の粘着面にて被清掃面上のゴミを捕捉する使い捨ての粘着シート20と、を備えているものである。
【0054】
本実施形態において、粘着シート20は、図4図6に示すように、互いに同一矩形状の第1の基材シート21aと第2の基材シート21bとが互いの長手方向の両端辺同士で接合された中空形状であると共に、その中空部25がローラ10の本体外周面11に着脱可能な内径寸法を有し、それぞれ表面上に粘着剤層22が形成され、更にその表面に剥離ライナー23が重ねられている。
【0055】
中空形状の粘着シート20は、図4(a)に示すように、未使用時には平たく潰した状態で嵩張らずに収納しておける。そして、図4(b)に示すように、使用直前に中空部25を円筒状に膨らませれば、図5に示すように容易にローラ10の本体外周面11に被せて装着できる。中空部25の内径寸法は、ローラ10の外径にほぼ一致しており、粘着シート20の内周面をローラ10の本体外周面11に沿って摺動させれば、良好にフィットした状態で装着がなされる。
【0056】
尚、本実施形態におけるローラ10は、プラスチック製であり、先端部に本体外周11から連続して縮径するテーパー部12が設けられている。従って、このテーパー部12から粘着シート20の中空部25内に相対的に挿入することで、粘着シート20の内径がローラ10の本体外径に一致していても、装着時にローラ10がスムーズに中空部25内に導入される。
【0057】
また、以上のような粘着シート20の装着作業において、粘着シート20の粘着面は剥離ライナー23で覆われているため、粘着剤層22に触れることはない。そして粘着シート22のローラ10ヘの装着が完了した後、図6に示すように剥離ライナー23を捲り取って、粘着面を露呈させれば、清掃作業が行える。
【0058】
また、本実施形態においては、ローラ10の本体外周面11の複数箇所に、外方へ突出するバネ部14が一体に形成されている。このバネ部14は、ローラ外周面からの凸部が周囲の切り込み15とその部材弾性によって外力に応じて弾性変形するものである。
【0059】
従って、粘着シート20の装着時には、各バネ部14をローラ内側へ押し下げながら粘着シート20を摺動させることができる。そして装着後は、外方への突出状態に戻ろうとするバネ部14は、粘着シート20を内側から外方へ付勢する。これにより、装着後の粘着シート20は、ローラ10の本体外周面11に対してズレ難くなり、使用中も安定した装着状態が維持される。
【0060】
また、本実施形態のローラ10には、内部にローラ中心軸と同軸状に管状部13が一体に形成されており、この管状部13に軸芯3が挿入されてその先端が管状部13の端部に相対回転可能にネジ止めされている。これにより、ローラ10は、被清掃面上で自在に転動可能となっている。このローラ10の転動に伴って、粘着シート20の粘着面で被清掃面上のゴミが捕捉される。
【0061】
粘着面の全体にゴミが付着して、粘着性がほぼ無くなった時点で、粘着シート20は使用済みとなり、新しい粘着シート20での清掃を続ける場合、本実施形態においては、使用済み粘着シート20を取り外して新しい粘着シート20を装着するという交換作業を行う。従って、従来のロール状の粘着シートのようにミシン目で切り離す必要はなく、汚れたシートの一部が残ることなく、また新しいシートの一部が欠損することもなく、容易に完全な新しい粘着面を得ることができる。
【0062】
この使用後の粘着シート20の取り外しは、図7に示すように、粘着シート20に対して相対的にローラ10を引き抜けば良い。このとき、粘着シート20の端を摘まんで引っ張れば良い。尚、本実施形態では、粘着シート10の表面には、両端部に数ミリの幅で非粘着領域24が設けられている。
【0063】
従って、この僅かな非粘着領域24にはゴミが付着していないため、ここを摘まんで引っ張れば、使用後の粘着シート20を指を汚すことなく簡単にローラ10から取り外して廃棄することができる。
【0064】
以上のような本実施形態における中空形状の粘着シート20は、図4に示すように、第1の基材シート21aと第2の基材シート21bとが外表で重ねられて互いの長手方向の両端辺同士で接続されており、それぞれ粘着剤層22が積層され、更にその表面が剥離ライナー23で被覆されて成るものである。
【0065】
第1の基材シート21aと第2の基材シート21bは、それぞれ紙基材Pの裏面に、例えばポリエチレン等の熱可塑性樹脂フィルムFがコーティングされたものであり、後述するように、熱可塑性樹脂フィルムF同士の溶着によって両基材シート(21a,21b)の両端辺同士が一体に接合されて中空形状を形成している。
【0066】
本実施形態の中空形状の粘着シート20は、図3に示す工程に沿って第1と第2の基材シートテープ同士(21a,21b)の溶着を行うことによって連続的に得られるものである。本実施形態では、以下のように、高周波ウェルダーによって溶着を行う場合を例示する。
【0067】
即ち、まず、後に切断されるとそれぞれ第1の基材シートの21aと第2の基材シート21bとなる帯形状の第1の基材シートテープ21Aと第2の基材シートテープ21Bとが、供給源であるロールから繰り出されて互いに裏面同士が対向された状態でシート積層工程へ搬送される。帯形状の第1の基材シートテープ21Aと第2の基材シートテープ21Bとは、同種で同じ形態のものであり、それぞれ帯状の紙基材Pの裏面に熱可塑性フィルムFがコーティングされたものである。
【0068】
第1の基材シートテープ21Aと第2の基材シートテープ21Bは、シート積層工程にて、搬送ロール(RA,RB)によって互いに外表に重ねられた積層状態となるように下流へ搬送される。
【0069】
その後、粘着剤層形成工程にて、例えばアクリル系等の粘着剤が、タンク(TnA,TnB)から転写ローラ(RtA,RtB)に供給され、さらに転写ローラ(RtA,RtB)から展延ローラ(ReA,ReB)へ転写され、この展延ローラ(ReA,ReB)で第1の基材シートテープ21Aと第2の基材シートテープ21Bとの各表面に展延塗布されることによって、粘着剤層22が形成される。
【0070】
更に、その下流の剥離ライナー積層工程において、圧接ローラ(RcA,RcB)を介して、第1の基材シートテープ21Aと第2の基材シートテープ21Bとに対して、表面側の粘着剤層22の上に帯状の剥離ライナーテープ23Tが更に重ねられた積層体となって下流へ搬送される。
【0071】
次に、溶着工程として、剥離ライナー積層工程から搬送されてくる積層体に対して、予め定められた間隔毎に搬送方向と直交方向の線上で、両外側から溶着用ドラム(RmA,RmB)で挟んで押圧しながら第1の基材シートテープ21Aと第2の基材シートテープ21Bとの接合部に高周波電界が加えられて必要な溶着温度へ昇温される。この溶着温度は、例えば熱可塑性樹脂フィルムFがポリエチレンであれば、互いに充分融着できるように一般に設定されている溶着温度である220~280℃の間で設定される。
【0072】
このような溶着によって、接合部では、第1の基材シートテープ21Aと第2の基材シートテープ21Bとの熱可塑性樹脂同士が半液相状態に溶かされて互いに繋ぎ合わされる。
【0073】
そして必要な時間の経過後、例えば数秒後、に高周波電界を断って加熱を止めて適宜冷却されると、接合部は固定され、溶着が完了する。この溶着を連続的に所定間隔で行うことによって、連続して繋がった中空形状の粘着シーツ23が得られる。
【0074】
尚、溶着領域の搬送方向に沿った幅は、少なくとも後続する切断工程あるいはミシン目打ち抜き工程で用いられる刃の最大幅以上が必要であり、且つ切断後に各粘着シートの長手辺に沿った接合部となる部分の接合強度が充分確保されるものとして、2mm~5mm程度が好適である。
【0075】
また、溶着工程の下流位置における切断工程にて、搬送方向と直交方向の基材シートテープの全幅にわたる刃渡りの切断刃を備えた上下一対のカッティングドラム(DA,DB)によって、第1の基材シートテープ21Aと第2の基材シートテープ21Bとが互いに溶着された接合部の線上で、隣接する中空形状の粘着シート20同士が切り離される。これによって、個別の中空形状の粘着シート20が連続的に多数製造される。
【0076】
また、前記切断刃を備えたカッティングドラム(DA,DB)に代えてミシン目Sを打ち抜く打ち抜きドラムを用いれば、打ち抜き工程として、ミシン目Sで切り離し可能に繋がれた中空形状の粘着シート20の連続体30が製造できる。
【0077】
この場合、図8に示すように、ミシン目Sで切り離し可能に繋がった複数個の中空形状の粘着シート20をそれぞれ潰してミシン目Sで折り畳みながら重ねて粘着シート20の連続体30を1セットとした製品形態とすることができる。
【0078】
尚、以上の実施形態においては、溶着方法として高周波ウェルダーを用いた場合を示したが、本発明はこれに限定されるものではなく、熱溶着や超音波溶着も採用可能である。
【0079】
また、上記実施形態の変形例として、粘着シート20の上下の剥離ライナー23に、該剥離ライナー23を剥ぎ取りやすくする摘まみ部26を設けた場合を図9に示す。この摘まみ部25は、剥離ライナー23の四辺のそれぞれに、各辺と直行する方向に平行な二本の切り目を入れることによって、コの字状に形成されたものである。
【0080】
この摘まみ部26は、剥離ライナー23の四辺のうちの少なくとも一辺に設けておけば、摘まみ部26が無い場合より剥離ライナー23剥ぎ取りやすくなるが、四辺全てに設けておけば、どの方向からでも剥離ライナー23を摘まむことができ、より剥ぎ取りやすくなる。
【0081】
尚、このような摘まみ部26を構成する切り目は、図3に示した製造工程において、例えば溶着工程の後に、剥離ラーナー23に対する切り目打ち込みドラムを配置することによって、粘着シート20の連続製造工程中に形成できる。
【0082】
さらに、各切り目とその間の端辺に沿って、目印ライン26を印刷することによって、この摘まみ部25を目立たせている。また、その近傍に摘まみ部・カット部等の文字を印刷してさらに使用者に認識し易くすることも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0083】
本発明による粘着式ローラクリーナーは、比較的強粘着性から弱粘着性の間で適宜粘着剤を選択することによって、各種被清掃面に対応した複数のタイプの粘着シートを用意することができる。
【0084】
従って、従来のようなロール状シートではないため、本発明においては、対象の被清掃面に応じて随時適切なタイプの粘着シートを簡単に装着、交換することができ、共通のローラであっても、様々な清掃環境に適用できる。
【符号の説明】
【0085】
1:粘着式ローラクリーナー
2:ハンドル
3:軸芯
10:ローラ
11:本体外周面
12:テーパー部
13:管状部
14:バネ部
15:切り込み
20:粘着シート
21a,21b:基材シート
21A,21B:基材シートテープ
P:紙基材
F:熱可塑性フィルム
22:粘着剤層
23:剥離ライナー
23T:剥離ライナーテープ
24:非粘着領域
25:中空部
26:摘まみ部
27:目印ライン
30:粘着シートの連続体
S:ミシン目
RA,RB:搬送ローラ
TnA,TnB:タンク
RtA,RtB:転写ローラ
ReA,ReB:展延ローラ
RcA,RcB:圧接ローラ
RmA,RmB:溶着用ドラム
DA,DB:カッティングドラム
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9