(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024179057
(43)【公開日】2024-12-26
(54)【発明の名称】衣服
(51)【国際特許分類】
A41D 13/002 20060101AFI20241219BHJP
A41D 27/00 20060101ALI20241219BHJP
A41D 27/28 20060101ALI20241219BHJP
A41D 1/00 20180101ALI20241219BHJP
【FI】
A41D13/002 105
A41D27/00 Z
A41D27/28 A
A41D1/00 E
A41D1/00 G
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023097561
(22)【出願日】2023-06-14
(71)【出願人】
【識別番号】506393422
【氏名又は名称】ハイドサイン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090273
【弁理士】
【氏名又は名称】國分 孝悦
(72)【発明者】
【氏名】吉井 秀雄
【テーマコード(参考)】
3B030
3B035
3B211
【Fターム(参考)】
3B030AA03
3B030AB08
3B035AA03
3B035AA11
3B035AB03
3B035AC15
3B211AA01
3B211AB01
3B211AC02
3B211AC03
3B211AC18
3B211AC21
3B211AC22
(57)【要約】
【課題】衣服本体内で空気の流れを効率良く確保できるようにする。
【解決手段】電動ファンが装着される衣服本体2を備え、衣服本体2には、衣服本体2の生地が外側に膨らむことにより形成される導風路10が設けられる。導風路10は、衣服本体2の後身頃4に、着丈方向の途中位置から襟部6に向けて延伸するように設けられる。導風路10には、変形可能で、変形後の形状保持性を有する形状保持部材が設けられる。形状保持部材として、導風路10の幅方向に架け渡すように設けられた帯状の形状保持部材14と、導風路10を形成する生地に設けられ、導風路10の延伸方向に延びる帯状又は線状の形状保持部材15とを備える。
【選択図】
図1B
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電動ファンが装着される衣服本体を備え、
前記衣服本体には、前記衣服本体の生地が外側に膨らむことにより形成される導風路が設けられ、
前記導風路には、変形可能で、変形後の形状保持性を有する形状保持部材が設けられることを特徴とする衣服。
【請求項2】
前記形状保持部材として、前記導風路の幅方向に架け渡すように設けられた帯状の形状保持部材を備えることを特徴とする請求項1に記載の衣服。
【請求項3】
前記形状保持部材として、前記導風路を形成する前記生地に設けられ、前記導風路の延伸方向に延びる帯状又は線状の形状保持部材を備えることを特徴とする請求項1又は2に記載の衣服。
【請求項4】
前記導風路は、前記衣服本体の後身頃に、着丈方向の途中位置から襟部に向けて延伸するように設けられることを特徴とする請求項1又は2に記載の衣服。
【請求項5】
前記襟部には、その周方向に延びる帯状又は線状であり、変形可能で、変形後の形状保持性を有する形状保持部材が設けられることを特徴とする請求項4に記載の衣服。
【請求項6】
前記後身頃が、左右の身頃パーツと、前記左右の身頃パーツの間に設けられる帯状パーツとを備え、
前記帯状パーツが、その長手方向の途中位置から、前記襟部の方向に向けて徐々に幅広になる形状を有すること、及び、前記左右の身頃パーツの前記帯状パーツにつながる部分が、途中位置から、前記襟部の方向に向けて徐々に前記帯状パーツ側に延出する形状を有することのうちの少なくともいずれか一方の構成を有することにより、前記導風路が形成されることを特徴とする請求項4に記載の衣服。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、EF(ELECTRIC FAN)ウェアと呼ばれる衣服に関する。
【背景技術】
【0002】
電動ファンが装着され、衣服本体内に外気を取り込み、風による涼しさや気化熱による体温低下を実現する、EFウェアと呼ばれる衣服が実用化されている(例えば特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
EFウェアでは、衣服本体内で空気の流れを効率良く確保できるようにするのが理想である。
【0005】
本発明は、衣服本体内で空気の流れを効率良く確保できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の衣服は、電動ファンが装着される衣服本体を備え、前記衣服本体には、前記衣服本体の生地が外側に膨らむことにより形成される導風路が設けられ、前記導風路には、変形可能で、変形後の形状保持性を有する形状保持部材が設けられることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、衣服本体内で空気の流れを効率良く確保できるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1A】実施形態に係るEFウェアの正面図である。
【
図1B】実施形態に係るEFウェアの背面図である。
【
図2】実施形態に係るEFウェアの衣服本体の後身頃及び襟部の構成を示す図である。
【
図3】
図1BのI-I線断面を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照して、本発明の好適な実施形態について説明する。
本実施形態では、本発明を適用した衣服として、「爆発雰囲気下」の現場、いわゆる防爆エリアで使用可能にしたEFウェア1を説明する。防爆エリアにおいては厳格な防爆仕様の規格があり、防爆仕様に適合するためには、電動ファンのパワー(電圧)を低くする必要がある。そのため、一般的なEFウェアと比べて、電動ファンで発生させる風力が弱くなり、衣服本体内で空気の流れを効率良く確保できるようにすることが求められる。
【0010】
図1A及び
図1Bは、実施形態に係るEFウェア1を示す図であり、それぞれ正面図、背面図である。
実施形態に係るEFウェア1は、ベストタイプの上着であり、その衣服本体2は、着用者の胴を被う前身頃3、後身頃4及び脇下部5を備えた胴部を有し、スライドファスナ等による前開き構造となっている。スライドファスナは、比翼仕立てで隠れるようになっている。また、胴部には、首のまわりを取り巻く、スタンドカラータイプの襟部6が設けられる。
【0011】
図1Bに示すように、衣服本体2の腰まわりにおいて、後身頃4の左右に、電動ファン(不図示)を着脱自在に装着するための装着孔7が形成される。電動ファンは、例えば特許文献1にあるように、ファン本体のフランジと固定リングとの間に衣服本体を挟み込む構成を備える。装着孔7を含む領域は、電動ファンを支持することから、芯地が設けられて、型くずれしにくくなっている。なお、装着孔7の周囲の矩形状をなす点線7aは芯地を縫い付ける糸を示す。
【0012】
衣服本体2のアームホール8及び裾部9は、ゴム等によりそれぞれ着用者の腕まわり及び腰まわりに密着するようにし、衣服本体2内の空気の流出を抑えるようになっている。
このようにしたEFウェア1の各部には、制電性素材、自己消化性を有する素材、難燃素材等が用いられる。例えば衣服本体2には、タテとヨコに導電糸を織り込むことで、帯電する静電気を空気中に放電する機能を有する生地が使用される。
【0013】
ここで、衣服本体2の後身頃4には、着丈方向の途中位置(背中の高さ方向中央部あたりの位置)から襟部6に向けて延伸するようにして、導風路10が設けられる。
図3は、
図1BのI-I線断面を模式的に示す図である。
図3に示すように、後身頃4の生地が外側にアーチトンネル状に膨らむことにより、導風路10が形成される。
【0014】
図2を参照して、衣服本体2の後身頃4及び襟部6の構成を説明する。
図2は、衣服本体2の後身頃4及び襟部6の構成を示す図である。
後身頃4は、左右の身頃パーツ11L、11Rと、左右の身頃パーツ11L、11Rの間に設けられる帯状パーツ12とを備える。帯状パーツ12は、その長手方向の途中位置から、襟部6の方向に向けて徐々に幅広になる形状を有する。また、左右の身頃パーツ11L、11Rの帯状パーツ12につながる部分、すなわちそれぞれの内側の端部13L、13Rが、途中位置から、襟部6の方向に向けて徐々に帯状パーツ12側に延出する形状を有する。このようにした左右の身頃パーツ11L、11Rの端部13L、13Rと帯状パーツ12の左右の端部とを縫い合わせることにより、斜線で示す部分が浮き分になる弛みができ、
図3に示すように、アーチトンネル状の導風路10が形成される。
【0015】
また、襟部6を構成する襟パーツにも、斜線で示すように、その周方向に、衣服本体2側の浮き分に対応する浮き分となる余裕を持たせている。
なお、
図2に示す斜線は、説明のために描いたものであり、実際の衣服本体2に付されるものではない。
【0016】
衣服本体2の内側において、導風路10の幅方向(延伸方向に対して左右方向)に架け渡すように帯状の形状保持部材14が設けられる。形状保持部材14は、人の手で折り曲げたり、捻ったりして変形可能で、変形後の形状保持性を有する。このような特性を有する形状保持部材として金属製や合成樹脂製のものが存在するが、本実施形態では、静電気を誘発しにくい合成樹脂製とする。形状保持部材14は、例えば衣服本体2と同じ生地で被覆されたタブパーツとして構成される。衣服本体2と同じ生地で被覆することにより、着用者の身体に触れたときの接触ストレスを軽減させることができる。形状保持部材(タブパーツ)14は、帯状パーツ12の幅よりも短く、長手方向の端部が、左右の身頃パーツ11L、11Rと帯状パーツ12とが縫い合わされる位置(
図2中の位置X)で衣服本体2に縫合、固定される。このように短めの形状保持部材14を架け渡すことにより、導風路10を形成する生地の部分が外側にアーチトンネル状に膨らむように形づくることができる。
【0017】
また、衣服本体2の内側において、導風路10を形成する生地である帯状パーツ12には、導風路10の延伸方向に延びる帯状の形状保持部材15が設けられる。形状保持部材15は、形状保持部材14と同様、合成樹脂製であり、変形可能で、変形後の形状保持性を有し、また、例えば衣服本体2と同じ生地で被覆されたタブパーツとして構成される。本実施形態では、2本の形状保持部材(タブパーツ)15が並べて配置され、帯状パーツ12に縫合、固定される。形状保持部材15の下端部は、形状保持部材14と重なる位置にある。また、形状保持部材15の上端部は、
図1Aにも示すように、襟部6の内側で上縁部付近にある。なお、
図2では、形状保持部材15が帯状パーツ12側と襟部6側とに分離されているように図示するが、形状保持部材15の位置関係を示すためであり、各形状保持部材15は1本の帯状に構成されている。導風路10は、着用者の身体の動き等で、アーチトンネル状を確保することが困難な場合がある。縦方向にも形状保持部材15を配置し、横方向の形状保持部材14と組み合わせて、着用者の身体の動き等に応じて、導風路10のアーチトンネル状を確保、保持しやすくする。
【0018】
また、襟部6の後部には、その付け根部に沿うようにして、周方向に延びる帯状又は線状の形状保持部材16が設けられる。
また、襟部6には、その上縁部に沿うようにして、周方向に延びる帯状又は線状の形状保持部材17が設けられる。形状保持部材17は、形状保持部材16よりも長く、襟部6の後部の全域から前部まで至るように周方向に延びる。
また、襟部6の前部左右には、形状保持部材17の端部から下方に延びるように配置された帯状又は線状の形状保持部材18が設けられる。
上述した後身頃4側の縦方向の形状保持部材15及び横方向の形状保持部材14に加えて、横方向の形状保持部材16をさらに組み合わせることにより、着用者の身体の動き等に応じて、導風路10アーチトンネル状を確保、保持しやすくする。また、襟部6に形状保持部材16~18があることで、襟部6において、後身頃4の導風路10に連通する風の道を効率的に確保でき、首元から風を感じる仕様になっている。さらに、後身頃4に電動ファンが装着されると、重力の要因で、衣服本体2の胸部から襟部6が着用者の身体側に密着しやすくなるが、襟部6の前部にも形状保持部材17、18があることで、強制的に首から離して、風の道を確保できる。
【0019】
また、
図1Aに示すように、EFウェア1において、衣服本体2の肩線部分に沿うようにトンネル状の挿通部19が設けられ、この挿通部19にゴムスピンドル20が挿通する。ゴムスピンドル20の一端はアームホール8付近で固定される。また、ゴムスピンドル20の他端部は挿通部19から導出されて、他端が襟部6の前下部付近で固定される。また、ゴムスピンドル20には、その動きを抑制するアジャストパーツ21が設けられる。ゴムスピンドル20を内側方向(他端方向)に引っ張ることにより、肩線部分及びアームホール8を首方向に引っ張って、着用者の肩にフィットさせることができる。EFウェア1は、衣服本体2内に風を流すため、大きめのサイズ設定にされることが多い。この場合、重力の関係で肩線部分の生地が身体に密着する度合いが大きくなり、肩付近で衣服本体2内の風が滞留し、首元に抜けにくくなる場合がある。そこで、ゴムスピンドル20及びアジャストパーツ21を組み合わせることで、肩幅にフィットさせて、肩付近で衣服本体2内の風が滞留しないようにすることができる。
【0020】
以上のように、衣服本体2には、その生地が外側に膨らむことにより形成される導風路10が設けられ、導風路10には、変形可能で、変形後の形状保持性を有する形状保持部材14、15が設けられる。これにより、衣服本体2内で空気の流れを効率良く確保できるようになる。本実施形態のように、電動ファンのパワー(電圧)を低くすることが求められるEFウェア1においても、衣服本体2内で空気の流れを効率良く確保できるようになれば、十分な冷涼感を得ることができる。
【0021】
以上、本発明を実施形態と共に説明したが、上述した実施形態は本発明を実施するにあたっての具体化の例を示したものに過ぎず、これらによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。すなわち、本発明はその技術思想、又はその主要な特徴から逸脱することなく、様々な形で実施することができる。
実施形態では、防爆エリアで着用することを想定したEFウェア1を説明したが、本発明は、各種作業現場で着用される作業着や、カジュアルウェア、スポーツ・レジャーウェアとして用いられるEFウェアにも適用可能である。
また、形状保持部材の設置の仕方も限定されるものではない。例えば、導風路10に対して設置する形状保持部材(実施形態における形状保持部材14、15)の形状、数や配置等は適宜変更してもよい。また、上述したように、後身頃4に電動ファンが装着されると、重力の要因で、衣服本体2の胸部から襟部6が着用者の身体側に密着しやすくなるが、胸部にも形状保持部材を設けて、強制的に胸部から離すようにしてもよい。
【0022】
また、実施形態では、ベストタイプの上着を説明したが、本発明が適用可能な衣服の種類は限定されるものではなく、ベストタイプ以外の上着(長袖のブルゾン、シャツ等)でもよいし、ズボンでもよいし、つなぎでもよい。
また、実施形態では、衣服本体2の後身頃4において、導風路10が襟部6に向けて延伸するようにしたが、これに限定されるものではない。導風路が、衣服本体における襟部とは異なる開口部、例えば裾部やアームホールに向けて延伸するようにしてもよい。また、長袖の上着であれば、着用者の腕を覆うアーム部において、導風路が袖口に向けて延伸するようにしてもよい。また、ズボンであれば、導風路が、着用者の腰を覆うウエスト部に向けて延伸するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0023】
1:EFウェア、2:衣服本体、3:前身頃、4:後身頃、5:脇下部、6:襟部、7:装着孔、10:導風路、11L、11R:身頃パーツ、12:帯状パーツ、13L、13R:端部、14~18:形状保持部材