(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024179058
(43)【公開日】2024-12-26
(54)【発明の名称】メンテナンス管理方法、メンテナンス管理システム、及びメンテナンス管理プログラム
(51)【国際特許分類】
G06Q 10/20 20230101AFI20241219BHJP
【FI】
G06Q10/20
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023097563
(22)【出願日】2023-06-14
(71)【出願人】
【識別番号】720001060
【氏名又は名称】ヤンマーホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100205350
【弁理士】
【氏名又は名称】狩野 芳正
(74)【代理人】
【識別番号】100117617
【弁理士】
【氏名又は名称】中尾 圭策
(72)【発明者】
【氏名】沢村 亮
【テーマコード(参考)】
5L049
【Fターム(参考)】
5L049CC15
(57)【要約】
【課題】メンテナンスの対象となるメンテナンス部位を精度高く決定する。
【解決手段】メンテナンス管理方法は、作業装置30の稼働情報に基づき、作業装置30に含まれる複数の部位の劣化度を決定することを含む。また、メンテナンス管理方法は、劣化度に基づき、複数の部位のうち、メンテナンスの対象となるメンテナンス部位を決定することを含む。さらに、メンテナンス管理方法は、メンテナンス部位を表すメンテナンス情報を出力することを含む。劣化度を決定することは、部位に含まれる1つ以上の部品において、稼働情報に表される状態で駆動したときに1つ以上の部品が劣化する程度を表す劣化情報410を用いて、劣化度を決定することを含んでもよい。
【選択図】
図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業装置の稼働情報に基づき、前記作業装置に含まれる複数の部位の劣化度を決定することと、
前記劣化度に基づき、前記複数の部位のうち、メンテナンスの対象となるメンテナンス部位を決定することと、
前記メンテナンス部位を表すメンテナンス情報を出力することと、
を含むメンテナンス管理方法。
【請求項2】
前記劣化度を決定することは、
前記部位に含まれる1つ以上の部品において、前記稼働情報に表される状態で駆動したときに前記1つ以上の部品が劣化する程度を表す劣化情報を用いて、前記劣化度を決定すること
を含み、
前記劣化情報は予め設定されている
請求項1に記載のメンテナンス管理方法。
【請求項3】
前記劣化情報は、前記稼働情報に表される状態で所定の時間駆動したときに前記1つ以上の部品が劣化する程度を表す
請求項2に記載のメンテナンス管理方法。
【請求項4】
前記1つ以上の部品が劣化する程度は摩耗量を表す
請求項2または3に記載のメンテナンス管理方法。
【請求項5】
前記劣化情報は、前記部位に含まれる第1部品に駆動力を与える駆動装置の負荷率に対する前記第1部品が劣化する程度を表す情報を含み、
前記劣化度を決定することは、
前記稼働情報に含まれる前記負荷率に基づき、前記第1部品の前記劣化度を決定すること
を含む請求項2または3に記載のメンテナンス管理方法。
【請求項6】
作業装置の稼働情報に基づき、前記作業装置に含まれる複数の部位の劣化度を決定する劣化度決定部と、
前記劣化度に基づき、前記複数の部位のうち、メンテナンスの対象となるメンテナンス部位を決定する部位決定部と、
前記メンテナンス部位を表すメンテナンス情報を出力する出力部と、
を備えるメンテナンス管理システム。
【請求項7】
作業装置の稼働情報に基づき、前記作業装置に含まれる複数の部位の劣化度を決定することと、
前記劣化度に基づき、前記複数の部位のうち、メンテナンスの対象となるメンテナンス部位を決定することと、
前記メンテナンス部位を表すメンテナンス情報を出力することと、
を演算装置に実行させるメンテナンス管理プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、メンテナンス管理方法、メンテナンス管理システム、及びメンテナンス管理プログラムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、情報処理を用いて、作業機械のメンテナンスを行う時期を決定することが研究されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、作業機械の各部位において、使用状況が加味された仮想稼働時間に応じて、メンテナンス時期を設定する技術が開示されている。この仮想稼働時間は、複数の作業機械の動作状況情報、例えばエンジン回転数などの平均値と、対象となる作業機械の動作状況情報との比を用いて、決定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、対応する部品の劣化の程度は、動作状況情報に比例するとは限らない。このため、仮想稼働時間は実際の劣化の程度と異なる場合がある。
【0006】
上記の状況に鑑み、本開示は、部品の劣化を考慮して、より精度の高いメンテナンス時期を報知することを目的の1つとする。他の目的については、以下の記載及び実施の形態の説明から理解することができる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
以下に、発明を実施するための形態で使用される番号・符号を用いて、課題を解決するための手段を説明する。これらの番号・符号は、特許請求の範囲の記載と発明を実施するための形態との対応関係の一例を示すために、参考として、括弧付きで付加されたものである。よって、括弧付きの記載により、特許請求の範囲は、限定的に解釈されるべきではない。
【0008】
上記目的を達成するための一実施の形態によるメンテナンス管理方法は、作業装置(30)の稼働情報に基づき、作業装置(30)に含まれる複数の部位の劣化度を決定することを含む。また、メンテナンス管理方法は、劣化度に基づき、複数の部位のうち、メンテナンスの対象となるメンテナンス部位を決定することを含む。さらに、メンテナンス管理方法は、メンテナンス部位を表すメンテナンス情報を出力することを含む。
【0009】
上記目的を達成するための一実施の形態によるメンテナンス管理システム(1000)は、劣化度決定部(170)と、部位決定部(180)と、出力部(190)とを備える。劣化度決定部(170)は、作業装置(30)の稼働情報に基づき、作業装置(30)に含まれる複数の部位の劣化度を決定する。部位決定部(180)は、劣化度に基づき、複数の部位のうち、メンテナンスの対象となるメンテナンス部位を決定する。出力部(190)は、メンテナンス部位を表すメンテナンス情報を出力する。
【0010】
上記目的を達成するための一実施の形態によるメンテナンス管理プログラム(450)は、作業装置(30)の稼働情報に基づき、作業装置(30)に含まれる複数の部位の劣化度を決定することを演算装置(120、220)に実行させる。また、メンテナンス管理プログラム(450)は、劣化度に基づき、複数の部位のうち、メンテナンスの対象となるメンテナンス部位を決定することを演算装置(120、220)に実行させる。さらに、メンテナンス管理プログラム(450)は、メンテナンス部位を表すメンテナンス情報を出力することを演算装置(120、220)に実行させる。
【発明の効果】
【0011】
上記の形態によれば、メンテナンスを行うべきメンテナンス部位をより精度高く決定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】一実施の形態におけるメンテナンス管理システムの概略図である。
【
図2】一実施の形態におけるメンテナンス時期データの構成を表す図である。
【
図3】一実施の形態におけるメンテナンス管理装置の構成を表す図である。
【
図4】一実施の形態における算出式データの構成を表す図である。
【
図5】一実施の形態におけるメンテナンス管理システムが実行する機能ブロックを表す図である。
【
図6】一実施の形態における端末の構成を表す図である。
【
図7】一実施の形態におけるメンテナンス管理システムが劣化係数データを決定する処理を表すフローチャートである。
【
図8】一実施の形態において、稼働情報から劣化係数を決定する方法を説明するための図である。
【
図9】一実施の形態におけるメンテナンス管理システムがメンテナンス部位を決定する処理を表すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
(実施の形態)
本開示の本実施の形態によるメンテナンス管理システム1000を、図面を参照して説明する。本実施の形態において、
図1に示すように、メンテナンス管理システム1000は、メンテナンス管理装置100と、端末200とを備える。メンテナンス管理装置100は、ネットワーク20、例えばインターネットを介して、端末200と、1つ以上の作業装置30と通信可能に接続されている。
【0014】
例えば、作業装置30は、圃場500で作業しているときの作業装置30の状態を表す稼働情報を取得し、取得された稼働情報をメンテナンス管理システム1000、例えばメンテナンス管理装置100に送信する。例えば、作業装置30は、測位装置、例えばGNSS(Global Navigation Satellite System)の受信機、量子コンパスなどを備え、各時刻の位置を表す位置情報を取得する。また、作業装置30は、実際に稼働した稼働時間を表す実稼働時間、例えばエンジンが起動してから停止するまでの時間を測定する。位置情報と、実稼働時間を表す時間情報とは、稼働情報に含まれ、メンテナンス管理システム1000に送信される。
【0015】
また、作業装置30が出力する稼働情報は、作業装置30の速度、操舵角、駆動装置31、例えばエンジンの平均負荷率、各種クラッチのON/OFF状況などを表す情報を含む。作業装置30が作業機械を牽引する車両、例えばトラクターであるとき、稼働情報には、作業機械に動力を伝達するときのPTO(power take-off)回転数、作業機械の姿勢を示すヒッチ高さやリフトアーム角度などの情報が含まれてもよい。また、作業装置30がモーターを備えるとき、稼働情報は、モーターの消費電力を含んでもよい。作業装置30がコンバインであるとき、稼働情報は収穫量、排藁量などを含んでもよい。作業装置30は、例えば、作業を行う作業機械と一体に形成されたコンバイン、作業を行う作業機械を牽引するトラクターなどを含む。
【0016】
メンテナンス管理システム1000は、圃場500で作業を行う作業装置30の各部位において、メンテナンスの対象となるメンテナンス部位を決定し、ユーザ、例えば作業者、作業装置30の所有者などにメンテナンス部位を報知する。例えば、
図2に示すように、作業装置30の各部位におけるメンテナンス時期は、稼働時間を用いて表されている。例えば、「部位A」は、稼働時間がメンテナンス時期に表される時間(例えば100時間、200時間、300時間など)に達したときにメンテナンスの対象となる。
【0017】
ここで、メンテナンス管理システム1000は、作業装置30の稼働情報と、作業装置30が実際に稼働した実稼働時間とに基づき、作業装置30の各部位における劣化の程度を考慮した仮想稼働時間を決定する。例えば、メンテナンス管理システム1000は、稼働情報に表される状態で所定の時間稼働したときの劣化の程度、例えば摩耗量を表す劣化情報を有する。メンテナンス管理システム1000は、作業装置30の稼働情報と、劣化情報と、実稼働時間とに基づき、仮想稼働時間を決定する。メンテナンス管理システム1000は、仮想稼働時間がメンテナンス時期に達した部位をメンテナンス部位として決定する。
【0018】
このように、メンテナンス管理システム1000は、各部位における劣化の程度に応じた稼働時間を表す仮想稼働時間に基づき、メンテナンス部位を決定する。ここで、作業装置30の各部位は、作業装置30を構成する部品または部品の集まりを表す。例えば、作業装置30が収穫機であるとき、圃場500の作物を刈り取る刈取部、刈り取った作物の脱穀を行う脱穀部、作業装置30を移動する走行部などを含む。
【0019】
(メンテナンス管理システムの構成)
図1に示すメンテナンス管理システム1000のメンテナンス管理装置100の構成を説明する。メンテナンス管理装置100は、
図3に示すように、入出力装置110と、演算装置120と、通信装置130と、記憶装置140とを備える。メンテナンス管理装置100は、例えば、クラウドサーバなどを含むコンピュータである。入出力装置110には、演算装置120が処理を実行するための情報が入力される。また、入出力装置110は、演算装置120が処理を実行した結果を出力する。入出力装置110は、様々な入力装置と出力装置とを含み、例えば、キーボード、マウス、マイク、ディスプレイ、スピーカー、タッチパネルなどを含む。入出力装置110は省略されてもよい。
【0020】
通信装置130は、ネットワーク20に通信可能に接続され、ネットワーク20を介して各々の装置との通信を行う。通信装置130は、作業装置30から取得する稼働情報を演算装置120に転送する。また、演算装置120が生成した信号を端末200に転送する。通信装置130は、例えば、NIC(Network Interface Card)、USB(Universal Serial Bus)などの種々のインタフェースを含む。
【0021】
記憶装置140は、メンテナンス情報をユーザに報知するための様々なデータ、例えばメンテナンス時期データ400と、劣化情報410と、算出式データ420と、劣化係数データ430と、作業実績データ440と、メンテナンス管理プログラム450とを格納する。記憶装置140は、メンテナンス管理プログラム450を記憶する非一時的記憶媒体(non-transitory tangible storage medium)として用いられる。メンテナンス管理プログラム450は、コンピュータ読み取り可能な記憶媒体1に記録されたコンピュータプログラム製品(computer program product)として提供されてもよく、または、サーバからダウンロード可能なコンピュータプログラム製品として提供されてもよい。
【0022】
メンテナンス時期データ400は、
図2に示すように、作業装置30の各部位をメンテナンスする時期と、メンテナンスを行った回数とを表す。例えば、メンテナンス時期データ400は、部位ごとのメンテナンス時期を記憶する。メンテナンス時期は、例えば部位をメンテナンスするときの劣化度、例えば仮想稼働時間を表す。
図2において、「部位A」に表されたメンテナンス時期は、「部位A」に対応する仮想稼働時間が100時間、200時間、300時間であるときに「部位A」をメンテナンスすることを表す。「部位B」に表されたメンテナンス時期は、「部位B」に対応する仮想稼働時間が200時間、600時間、1000時間であるときに「部位B」をメンテナンスすることを表す。
【0023】
図3に示す劣化情報410は、作業装置30の稼働情報、例えば駆動装置31の負荷率、速度などに表される状態で所定の時間稼働したときの各部位の劣化の程度、例えば部位に含まれる部品の摩耗量を表す。劣化情報410は、過去に測定された稼働情報、例えば駆動装置31の負荷率と、各部位の劣化の程度、例えば摩耗量との関係を表す。例えば、劣化情報410は、所定の期間における稼働情報の平均と、その期間における摩耗量との関係を表す。劣化情報410は、作業装置30の負荷試験により測定された値から決定されてもよく、実際に稼働している作業装置30の稼働情報と摩耗量とを測定した値から決定されてもよい。作業装置30が複数の駆動装置31、例えばエンジンとモーターなどを有するとき、劣化情報410は、各部位に含まれる部品、例えば駆動輪32の摩耗量と、その部品に駆動力を与える駆動装置31の平均負荷率との関係を表してもよい。
【0024】
算出式データ420には、例えば、
図4に示すように、部位ごとに、1つ以上の劣化係数k
iから劣化度、例えば仮想稼働時間を算出するための数式が記憶されている。1つ以上の劣化係数k
iは、作業装置30の稼働情報に基づき算出される。tは、作業装置30が実際に稼働した実稼働時間を表す。例えば、作業装置30がt時間だけ稼働したとき、部位Aの劣化度(例えば仮想稼働時間)は関数f
A(k
i、t)により算出され、部位Bの劣化度は関数f
B(k
i、t)により算出され、部位Cの劣化度は関数f
C(k
i、t)により算出される。
【0025】
図3に示す劣化係数データ430は、作業装置30の稼働情報に対する劣化係数k
iを表す。劣化係数k
iは、メンテナンス時期を判定する作業装置30の稼働情報に基づき決定され、対象の作業装置30の各部位が、他の作業装置30の各部位に対して劣化しやすいか否かを表す。
【0026】
作業実績データ440は、1つ以上の作業装置30から取得した稼働情報を記憶する。
【0027】
演算装置120は、メンテナンス管理プログラム450を記憶装置140から読み出し実行して、メンテナンス部位を決定するための様々なデータ処理を行う。例えば、演算装置120は、中央演算処理装置(CPU;Central Processing Unit)などを含む。
【0028】
演算装置120は、メンテナンス管理プログラム450を読み出し実行することで、
図5に示すように、データ記憶部150と、劣化係数決定部160と、劣化度決定部170と、部位決定部180と、出力部190とを実現する。データ記憶部150は、メンテナンス時期データ400と、劣化情報410と、算出式データ420と、劣化係数データ430と、作業実績データ440とを記憶する。劣化係数決定部160は、1つ以上の作業装置30の稼働情報に基づき、稼働情報に対する劣化係数k
iを表す劣化係数データ430を決定する。劣化度決定部170は、作業装置30の稼働情報と、劣化係数データ430とに基づき、作業装置30の各部位における劣化の程度を表す劣化度として、仮想稼働時間を決定する。部位決定部180は、メンテナンス時期データ400と、劣化度とに基づき、メンテナンス部位を決定する。出力部190は、メンテナンス部位を表すメンテナンス情報を端末200に出力する。
【0029】
次に、
図1に示す端末200の構成を説明する。端末200は、
図6に示すように、入出力装置210と、演算装置220と、通信装置230と、記憶装置240とを備える。端末200は、例えば、コンピュータ、タブレット、携帯電話などを含む。入出力装置210には、演算装置220が処理を実行するための情報が入力される。また、入出力装置210は、演算装置220が処理を実行した結果を出力する。入出力装置210は、様々な入力装置と出力装置とを含み、例えば、キーボード、マウス、マイク、ディスプレイ、スピーカー、タッチパネルなどを含む。
【0030】
通信装置230は、ネットワーク20に通信可能に接続され、ネットワーク20を介して各々の装置との通信を行う。通信装置230は、メンテナンス管理装置100から取得する信号を演算装置220に転送する。また、演算装置220が生成した信号をメンテナンス管理装置100に転送する。通信装置230は、例えば、無線LAN(Local Area Network)やセルラーネットワークなどの無線通信に用いられる送受信機、NIC(Network Interface Card)、USB(Universal Serial Bus)などの種々のインタフェースを含む。
【0031】
記憶装置240は、メンテナンス情報をユーザに報知するための様々なデータ、例えば表示プログラム460を格納する。記憶装置240は、表示プログラム460を記憶する非一時的記憶媒体(non-transitory tangible storage medium)として用いられる。表示プログラム460は、コンピュータ読み取り可能な記憶媒体2に記録されたコンピュータプログラム製品(computer program product)として提供されてもよく、または、サーバからダウンロード可能なコンピュータプログラム製品として提供されてもよい。
【0032】
演算装置220は、表示プログラム460を読み出し実行することで、
図5に示すように、入出力装置210と協働して、表示部250を実現する。表示部250は、メンテナンス管理装置100からメンテナンス情報を取得して、メンテナンス情報を入出力装置210に表示する。例えば、メンテナンス管理装置100が電子メールを用いてメンテナンス情報を報知するとき、表示部250は電子メールを閲覧するソフトウェアを含む。
【0033】
(メンテナンス管理システムの動作)
最初に、メンテナンス管理システム1000が劣化度(例えば仮想稼働時間)を決定する際に用いられる
図3に示す劣化係数データ430を決定する方法を説明する。
図1に示す作業装置30は、圃場500での作業を行うと、稼働情報をメンテナンス管理装置100の演算装置120に送信する。例えば、作業装置30は、駆動装置31、例えばエンジン、電動機などを停止したときに、駆動装置31を起動してから停止するまでの稼働情報をメンテナンス管理装置100の演算装置120に送信する。演算装置120は、作業装置30の稼働情報を受信すると、メンテナンス管理プログラム450を読み出し実行する。メンテナンス管理プログラム450を実行することで演算装置120により実現されるデータ記憶部150は、メンテナンス管理方法の一部の処理として、稼働情報を作業実績データ440に記憶する。稼働情報は、送信元の作業装置30を表す情報、例えば識別子と関連付けられて作業実績データ440に記憶される。
【0034】
また、演算装置120は、所定の数量の作業装置30に関する稼働情報を受信すると、メンテナンス管理プログラム450を読み出し実行して、メンテナンス管理方法の一部である
図7に示す処理を開始する。演算装置120は、所定の時刻に達したとき、例えば作業装置30を販売してから所定の期間が経過したときに、
図7に示す処理を開始してもよい。
【0035】
ステップS110において、演算装置120で実現される劣化係数決定部160は、作業装置30の稼働情報に対する動作情報を決定する。動作情報は、例えば、作業装置30の稼働情報に関する統計情報を表す。劣化係数決定部160は、例えば、1つ以上の作業装置30の各々について、動作情報を決定する。
【0036】
例えば、動作情報は、駆動装置31の負荷率に関する統計情報を表すとき、負荷率の平均値、最大値、最小値、中央値、分散などを表す。また、動作情報は、作業装置30の速度に関する統計情報を表すとき、作業装置30の速度の平均値、最大値、最小値、中央値、分散などを表す。動作情報は、作業装置30の排藁量に関する統計情報を表すとき、作業装置30の排藁量の平均値、最大値、最小値、中央値、分散などを表す。
【0037】
例えば、動作情報は、所定のクラッチのON/OFF状況に関する統計情報を表すとき、単位時間当たりに所定のクラッチがONであった(つながっていた)時間を表す。また、動作情報は、所定のクラッチがONであった総時間を表してもよい。また、動作情報は、所定のクラッチがOFFの状態からONの状態に変化した単位時間当たりの回数を表してもよい。動作情報は、これらの値のすべて、または、一部を含んでもよい。
【0038】
ステップS120において、劣化係数決定部160は、動作情報の統計値、例えば平均値と分散とを決定する。例えば、動作情報が駆動装置31の負荷率の平均値である平均負荷率を表すとき、動作情報の統計値は、すべての作業装置30における駆動装置31の平均負荷率に対する平均値と分散とを表す。
【0039】
ステップS130において、劣化係数決定部160は、動作情報に対する劣化係数kiを決定する。劣化係数kiは、対象の作業装置30の各部位において、他の作業装置30、例えば同型の作業装置30と比較した劣化しやすさを表す。また、劣化係数kiは、動作情報の分布において、対象の作業装置30の動作情報の位置も表す。劣化係数kiは、例えば、複数の作業装置30における動作情報の分布と、対象の作業装置30の動作情報とから数学的な計算処理により算出される。
【0040】
動作情報に対する劣化係数k
iは、例えば、複数の作業装置30の動作情報において、対象の作業装置30の動作情報が含まれる範囲、例えば下位5%未満などに応じた値でもよい。例えば、劣化係数k
iは、
図8に示すように、複数の閾値Z
nのうち、動作情報を間に挟む隣接する2つの閾値Z
nを特定して、特定した2つの閾値Z
nにより決定される。例えば、劣化係数k
iは閾値Z
nを境界とした階段状の値を表す。例えば、劣化係数k
iは、動作情報がZ
1より小さいとき固定値S
1を表し、動作情報がZ
1以上かつZ
2より小さいとき固定値S
1より大きい固定値S
2を表す。また、劣化係数k
iは、動作情報がZ
2以上かつZ
3より小さいとき固定値S
2より大きい固定値S
3を表し、動作情報がZ
3以上かつZ
4より小さいとき固定値S
3より大きい固定値S
4を表す。劣化係数k
iは、動作情報がZ
4以上かつZ
5より小さいとき、固定値S
4より大きい固定値S
5を表す。劣化係数k
iは、Z
5以上かつZ
6より小さい範囲に動作情報が存在するとき、固定値S
5より大きい固定値S
6を表す。Z
6は動作情報の平均値を表すため、Z
6以上かつZ
7より小さい範囲に動作情報が存在するとき、劣化係数k
iは、固定値S
6と同じ値を表す固定値S
7を表す。劣化係数k
iは、動作情報がZ
7以上かつZ
8より小さいとき固定値S
7より大きい固定値S
8を表し、動作情報がZ
8以上かつZ
9より小さいとき固定値S
8より大きい固定値S
9を表す。劣化係数k
iは、動作情報がZ
9以上かつZ
10より小さいとき固定値S
9より大きい固定値S
10を表し、動作情報がZ
10以上かつZ
11より小さいとき固定値S
10より大きい固定値S
11を表す。劣化係数k
iは、動作情報がZ
11以上であるとき、固定値S
11より大きい固定値S
12を表す。
【0041】
Z
1からZ
11は、各動作スコアに割り当てられる動作情報に割り当てられる作業装置30の数量に基づき、設定される。例えば、Z
1は、動作情報がZ
1より小さい作業装置30の割合が5%になるように設定される。Z
2は、動作情報がZ
1以上かつZ
2より小さい作業装置30の割合が10%になるように設定される。Z
3からZ
11も、2つの隣接するZ
nに挟まれる動作情報を有する作業装置30の割合が10%になるように設定される。例えば、動作情報の分布が正規分布となると仮定すると、Z
nは式(1)により算出される。
【数1】
ここで、μは動作情報の平均を表し、σは動作情報の標準偏差を表す。x
nはZ
nに対する固定値を表す。具体的には、x
1は-1.65を表し、x
2は-1.04を表す。x
3は-0.68を表し、x
4は-0.39を表し、x
5は-0.13を表し、x
6は0を表し、x
7は0.13を表し、x
8は0.39を表し、x
9は0.68を表し、x
10は1.04を表し、x
11は1.65を表す。
【0042】
固定値Snは、例えば、Znと劣化情報410とに基づき、決定される。劣化情報410は、動作情報、例えば駆動装置31の平均負荷率に表される状態で稼働したときに、1つの部位に含まれる部品、例えば駆動輪32が劣化する程度、例えば摩耗量を表す。例えば、走行部に含まれる駆動輪32の劣化情報410は、所定の期間における、駆動装置31の平均負荷率に対する駆動輪32の摩耗量を表す。例えば、劣化情報410は、作業装置30を所定の期間、例えば100時間稼働したときの部品の摩耗量を表す。劣化情報410は、例えば、負荷試験の結果に基づき、動作情報に対する劣化の程度を表す近似式、例えば一次関数を表す。
【0043】
固定値Snは、例えば、対応する動作情報を挟む2つの隣接する閾値Znに対して、所定の時間に劣化する程度により決定される。例えば、固定値Snは、対応する動作情報を挟む2つの隣接する閾値Znのうちの一方の閾値Znに対する劣化の程度と、動作情報の平均値における劣化の程度とに基づき決定される。例えば、固定値Snは、動作情報の平均値における劣化の程度に対して、対応する動作情報を挟む2つの隣接する閾値Znのうちの一方の閾値Znにおける劣化の程度の比率を表す。
【0044】
図8に示す劣化情報410は、作業装置30の駆動装置31が平均負荷率で所定の時間駆動したときに、駆動輪32が摩耗する摩耗量の推定値を表す。例えば、所定の時間だけ、駆動装置31がZ
1の平均負荷率で駆動したとき、駆動輪32の摩耗量の推定値はV
1である。同様に、所定の時間だけ、駆動装置31がZ
2の平均負荷率で駆動したとき、駆動輪32の摩耗量の推定値はV
2である。所定の時間だけ、駆動装置31がZ
3の平均負荷率で駆動したとき、駆動輪32の摩耗量の推定値はV
3である。所定の時間だけ、駆動装置31がZ
4の平均負荷率で駆動したとき、駆動輪32の摩耗量の推定値はV
4である。所定の時間だけ、駆動装置31がZ
5の平均負荷率で駆動したとき、駆動輪32の摩耗量の推定値はV
5である。所定の時間だけ、駆動装置31がZ
6の平均負荷率で駆動したとき、駆動輪32の摩耗量の推定値はV
6である。所定の時間だけ、駆動装置31がZ
7の平均負荷率で駆動したとき、駆動輪32の摩耗量の推定値はV
7である。所定の時間だけ、駆動装置31がZ
8の平均負荷率で駆動したとき、駆動輪32の摩耗量の推定値はV
8である。所定の時間だけ、駆動装置31がZ
9の平均負荷率で駆動したとき、駆動輪32の摩耗量の推定値はV
9である。所定の時間だけ、駆動装置31がZ
10の平均負荷率で駆動したとき、駆動輪32の摩耗量の推定値はV
10である。所定の時間だけ、駆動装置31がZ
11の平均負荷率で駆動したとき、駆動輪32の摩耗量の推定値はV
11である。
【0045】
ここで、駆動装置31の平均負荷率の平均値はZ
6を表すため、動作情報の平均値における劣化の程度(摩耗量)は、V
6と推定される。動作情報がZ
1より小さいときの劣化係数k
iは、固定値S
1を表し、動作情報の平均値であるV
6に対して、Z
1における動作情報であるV
1の比率により表される。同様に、動作情報がZ
2より小さく、かつ、Z
1以上であるときの劣化係数k
iは、固定値S
2を表し、動作情報の平均値であるV
6に対して、Z
2における動作情報であるV
2の比率により表される。動作情報がZ
3より小さく、かつ、Z
2以上であるときの劣化係数k
iは、固定値S
3を表し、動作情報の平均値であるV
6に対して、Z
3における動作情報であるV
3の比率により表される。動作情報がZ
4より小さく、かつ、Z
3以上であるときの劣化係数k
iは、固定値S
4を表し、動作情報の平均値であるV
6に対して、Z
4における動作情報であるV
4の比率により表される。動作情報がZ
5より小さく、かつ、Z
4以上であるときの劣化係数k
iは、固定値S
5を表し、動作情報の平均値であるV
6に対して、Z
5における動作情報であるV
5の比率により表される。また、動作情報がZ
6より小さく、かつ、Z
5以上であるときの劣化係数k
iは、固定値S
6を表し、動作情報の平均値であるV
6に対して、Z
6における動作情報であるV
6の比率により表される。このため、固定値S
6は1を表す。このように、動作情報が平均値であるZ
6より小さいときの固定値S
nは式(2)により表される。
【数2】
ここで、V
nは、動作情報を挟む2つの隣接する閾値Z
nのうちの上限を表す閾値Z
nに対する劣化の程度(摩耗量)を表す。
【0046】
動作情報がZ
7より小さく、かつ、Z
6以上であるときの劣化係数k
iは、固定値S
7を表し、動作情報の平均値であるV
6に対して、Z
6における動作情報であるV
6の比率により表される。動作情報がZ
8より小さく、かつ、Z
7以上であるときの劣化係数k
iは、固定値S
8を表し、動作情報の平均値であるV
6に対して、Z
7における動作情報であるV
7の比率により表される。動作情報がZ
9より小さく、かつ、Z
8以上であるときの劣化係数k
iは、固定値S
9を表し、動作情報の平均値であるV
6に対して、Z
8における動作情報であるV
8の比率により表される。動作情報がZ
10より小さく、かつ、Z
9以上であるときの劣化係数k
iは、固定値S
10を表し、動作情報の平均値であるV
6に対して、Z
9における動作情報であるV
9の比率により表される。動作情報がZ
11より小さく、かつ、Z
10以上であるときの劣化係数k
iは、固定値S
11を表し、動作情報の平均値であるV
6に対して、Z
10における動作情報であるV
10の比率により表される。動作情報がZ
11以上であるときの劣化係数k
iは、固定値S
12を表し、動作情報の平均値であるV
6に対して、Z
11における動作情報であるV
11の比率により表される。このように、動作情報が平均値であるZ
6以上ときの固定値S
nは式(3)により表される。
【数3】
ここで、V
n―1は、動作情報を挟む2つの隣接する閾値Z
nのうちの下限を表す閾値Z
nに対する劣化の程度(摩耗量)を表す。
【0047】
このように、劣化係数決定部160は、動作情報に対する劣化係数kiを決定する。劣化係数決定部160は、決定された動作情報に対する劣化係数kiを劣化係数データ430に記憶する。このように、メンテナンス管理装置100は、劣化係数データ430を決定する。
【0048】
次に、劣化係数データ430を用いて、メンテナンス部位を決定する方法を説明する。
図1に示す作業装置30は、圃場500での作業を行うと、稼働情報をメンテナンス管理装置100の演算装置120に送信する。演算装置120は、作業装置30の稼働情報を受信すると、メンテナンス管理プログラム450を読み出し実行する。メンテナンス管理装置100の演算装置120は、端末200の演算装置220から作業装置30の各部位のメンテナンス情報を要求する要求信号を受信したときに、メンテナンス管理プログラム450を読み出し実行してもよい。メンテナンス管理プログラム450を実行することで、演算装置120は、メンテナンス管理方法の一部である
図9に示す処理を開始する。
【0049】
ステップS210において、演算装置120で実現されるデータ記憶部150は、作業装置30の稼働情報に基づき、作業装置30が実際に稼働した実稼働時間を決定する。例えば、データ記憶部150は、稼働情報からエンジンを起動した起動時刻と停止した停止時刻とを抽出する。データ記憶部150は、抽出された起動時刻から停止時刻までの時間を、過去の実稼働時間に加算した時間を、実稼働時間として決定する。
【0050】
また、データ記憶部150は、稼働情報を送信した作業装置30を特定する。例えば、データ記憶部150は、稼働情報から送信元の作業装置30を特定する。また、データ記憶部150は、稼働情報の送信元を表す情報から作業装置30を特定してもよい。
【0051】
決定された実稼働時間は、取得された稼働情報と、特定された作業装置30の識別子と関連付けられて、作業実績データ440に記憶される。
【0052】
ステップS220において、劣化度決定部170は、
図7に示すステップS110と同様に、作業実績データ440に基づき、稼働情報を送信した作業装置30の動作情報を決定する。動作情報は、例えば、稼働情報に関する統計情報を表す。
【0053】
ステップS230において、劣化度決定部170は、決定された動作情報と、劣化係数データ430とに基づき、劣化係数kiを決定する。劣化度決定部170は、劣化係数データ430から、決定された動作情報に対する劣化係数kiを抽出する。例えば、劣化度決定部170は、動作情報がZ1より小さいとき、劣化係数kiとして、固定値S1を決定する。動作情報がZ2より小さく、かつ、Z1以上であるとき、劣化係数kiとして、固定値S2を決定する。動作情報がZ3より小さく、かつ、Z2以上であるとき、劣化係数kiとして、固定値S3を決定する。動作情報がZ4より小さく、かつ、Z3以上であるとき、劣化係数kiとして、固定値S4を決定する。動作情報がZ5より小さく、かつ、Z4以上であるとき、劣化係数kiとして、固定値S5を決定する。動作情報がZ6より小さく、かつ、Z5以上であるとき、劣化係数kiとして、固定値S6を決定する。動作情報がZ7より小さく、かつ、Z6以上であるとき、劣化係数kiとして、固定値S7を決定する。動作情報がZ8より小さく、かつ、Z7以上であるとき、劣化係数kiとして、固定値S8を決定する。動作情報がZ9より小さく、かつ、Z8以上であるとき、劣化係数kiとして、固定値S9を決定する。動作情報がZ10より小さく、かつ、Z9以上であるとき、劣化係数kiとして、固定値S10を決定する。動作情報がZ11より小さく、かつ、Z10以上であるとき、劣化係数kiとして、固定値S11を決定する。動作情報がZ11以上であるとき、劣化係数kiとして、固定値S12を決定する。
【0054】
ステップS240において、劣化度決定部170は、決定された劣化係数k
iと、実稼働時間と、
図4に示す算出式データ420とに基づき、各部位の劣化の程度を表す劣化度を決定する。例えば、「部位A」の劣化度は、関数f
A(k
i、t)により決定される。ここで、tは、作業装置30が実際に稼働した実稼働時間を表す。同様に、「部位B」の劣化度は、関数f
B(k
i、t)により決定される。ここで、tは、作業装置30が実際に稼働した実稼働時間を表す。「部位C」の劣化度は、関数f
C(k
i、t)により決定される。ここで、tは、作業装置30が実際に稼働した実稼働時間を表す。例えば、決定された劣化度は、
図2におけるメンテナンス時期と比較可能な仮想稼時間を表す。この場合、仮想稼働時間は、作業装置30の稼働情報から部位に含まれる部品が劣化する程度、例えば摩耗量などを推定し、推定された劣化の程度から決定され、各部位の劣化の程度を考慮した値を表す。例えば、劣化度は、部品の劣化が大きい状況で稼働した作業装置30ほど大きい値を表す。
【0055】
図9に示すステップS250において、部位決定部180は、劣化度に基づき、メンテナンスの対象となる部位を表すメンテナンス部位を決定する。部位決定部180は、最初に、
図2に示すメンテナンス時期データ400に基づき、各部位において次にメンテナンスが行われるメンテナンス時期を決定する。
【0056】
例えば、
図2に示す例は、「部位A」のメンテナンス回数が「1」であるため、「部位A」において次にメンテナンスが行われるメンテナンス時期が200時間であることを表す。「部位B」のメンテナンス回数が「1」であるため、「部位B」におけるメンテナンス時期は600時間を表す。「部位C」のメンテナンス回数が「2」であるため、「部位C」におけるメンテナンス時期は500時間を表す。
【0057】
次に、部位決定部180は、各部位において、劣化度(例えば仮想稼働時間)と、メンテナンス時期とを比較して、メンテナンスを行う対象を表すメンテナンス部位を決定する。例えば、部位決定部180は、劣化度がメンテナンス時期に達している部位をメンテナンス部位として決定する。また、部位決定部180は、劣化度がメンテナンス時期より所定の時間だけ減算した時間に達している部位をメンテナンス部位として決定してもよい。
【0058】
図9に示すステップS260において、出力部190は、決定されたメンテナンス部位を表すメンテナンス情報を出力する。例えば、出力部190は、メンテナンス部位と、メンテナンス部位における劣化度とを表す画像を構成するメンテナンス情報を端末200に出力する。また、メンテナンス情報は、作業装置30に設けられた複数の部位における劣化度を表す画像を構成してもよい。
【0059】
ステップS270において、端末200の表示部250は、メンテナンス管理装置100から取得したメンテナンス情報を入出力装置210に表示する。例えば、表示部250は、メンテナンス情報に表されたメンテナンスの対象となるメンテナンス部位を表す画像を表示する。また、表示部250は、メンテナンス情報に表されたメンテナンス部位と、メンテナンス部位における劣化度とを表す画像を表示する。表示部250は、さらに、作業装置30に設けられた複数の部位における劣化度を表す画像を表示してもよい。また、表示部250は、メンテナンス部位に含まれる複数の部品のうち、消耗している部品を表す画像を表示してもよい。
【0060】
このように、メンテナンス管理システム1000は、各部位に含まれる部品が劣化した程度を推定し、推定された劣化の程度を表す劣化度に基づきメンテナンス部位を決定する。これにより、メンテナンス管理システム1000は、各部位の部品が劣化した程度に応じて、メンテナンスの対象となる部位を決定する。このため、メンテナンス管理システム1000は、より精度高くメンテナンス部位を決定することができる。
【0061】
(変形例)
実施の形態において説明した構成は一例であり、機能を阻害しない範囲で構成を変更することができる。例えば、劣化情報410において、動作情報に対する部品の劣化の程度が摩耗量である例を示したが、これに限定されない。部品の劣化の程度は、部品の劣化の程度を表すものであれば、任意のものを選択することができ、部品の歪み、例えば伸び、縮み、ねじれ、傾きなどの変形の度合いを表してもよい。例えば、チェーンの劣化の程度は、チェーンの伸びを表してもよい。
【0062】
また、劣化情報410は、1つの動作情報に対する部品の劣化の程度を表す例を示したが、複数の動作情報に対する部品の劣化の程度を表してもよい。例えば、劣化情報410は、部品に駆動力を与える駆動装置31に関する動作情報と、部品に駆動力を伝達するクラッチのON/OFF状況に関する動作情報との組み合わせに対して、部品の劣化の程度を表してもよい。また、劣化情報410は、駆動装置31に関する動作情報と、作業装置30の速度との組み合わせに対して、部品の劣化の程度を表してもよい。また、作業装置30がコンバインであるとき、劣化情報410は、駆動装置31に関する動作情報と、作業装置30の排藁量との組み合わせに対して、部品の劣化の程度を表してもよい。
【0063】
劣化情報410は、稼働情報に表される状態で所定の時間稼働したときの各部位の劣化の程度を表す例を示したが、これに限定されない。例えば、劣化情報410は、作業装置30が稼働している時間によらず、稼働情報に表される状態、例えばクラッチの切替回数に応じた各部位の劣化の程度を表してもよい。劣化度を決定するときに用いる劣化係数kiが作業装置30の稼働時間によらない劣化情報410から決定されるとき、劣化度を決定する関数fA(ki、t)はtを引数として用いなくともよい。
【0064】
劣化の程度を表す劣化度が仮想稼働時間を表す例を示したが、これに限定されない。劣化度は、作業装置30の稼働により部位が劣化した程度を表す任意の値を用いてもよい。例えば、劣化度は、推定される部品の摩耗量を表してもよい。この場合、メンテナンス時期データ400が作業装置30の稼働に許容される摩耗量を表し、メンテナンス時期データ400に表される摩耗量と劣化度とに基づき、メンテナンス部位が決定されてもよい。また、
図9に示すステップS240において、部位決定部180は、メンテナンス時期データ400の表す仮想稼働時間からメンテナンスを行う時期の部品の摩耗量を表すメンテナンス摩耗量を決定してもよい。部位決定部180は、決定されたメンテンナス摩耗量と劣化度とを比較してメンテナンス部位を決定する。
【0065】
劣化度は、部位に含まれる複数の部品について、推定される各部品の劣化の程度、例えば摩耗量に基づき決定されてもよい。また、劣化度は、複数の部品のうち、一部の部品、例えば1つの部品について推定される劣化の程度、例えば摩耗量に基づき、決定されてもよい。
【0066】
劣化度は、
図4の算出式データ420に表される関数に、作業装置30が過去に実際に稼働した実稼働時間と、その期間における稼働情報に対する劣化係数k
iとを入力して決定される例を示したが、これに限定されない。例えば、作業装置30から1回の受信で取得される稼働情報、例えば駆動装置31が起動してから停止するまでの1回の期間における稼働情報に基づき、当該期間における劣化度を表す部分劣化度が決定されてもよい。この場合、各部位の劣化度は、部分劣化度を積算することで表される。
【0067】
以上において説明した実施の形態および変形例は一例であり、各実施の形態および変形例で説明した構成は、機能を阻害しない範囲で、任意に変更してもよく、または/および、任意に組み合わせてもよい。さらに、必要となる機能を実現できれば、実施の形態および変形例で説明した一部の機能を省略してもよい。例えば、
図1に示すメンテナンス管理システム1000に端末200が含まれなくてもよい。例えば、メンテナンス管理装置100は、メンテナンス管理システム1000に含まれない端末にメンテナンス情報を出力してもよい。メンテナンス管理装置100の処理は、すべてまたは一部がメンテナンス管理装置100または端末200で実行されてもよい。メンテナンス管理プログラム450は、表示プログラム460を含んでもよい。
【0068】
(付記)
各実施の形態で記載したメンテナンス管理方法と、メンテナンス管理システムと、メンテナンス管理プログラムとは以下のように言うことができる。
【0069】
第1の態様に係るメンテナンス管理方法は、
作業装置の稼働情報に基づき、前記作業装置に含まれる複数の部位の劣化度を決定することと、
前記劣化度に基づき、前記複数の部位のうち、メンテナンスの対象となるメンテナンス部位を決定することと、
前記メンテナンス部位を表すメンテナンス情報を出力することと、
を含む。
【0070】
第2の態様に係るメンテナンス管理方法は、第1の態様に係るメンテナンス管理方法であって、
前記劣化度を決定することは、
前記部位に含まれる1つ以上の部品において、前記稼働情報に表される状態で駆動したときに前記1つ以上の部品が劣化する程度を表す劣化情報を用いて、前記劣化度を決定すること
を含み、
前記劣化情報は予め設定されている。
【0071】
第3の態様に係るメンテナンス管理方法は、第2の態様に係るメンテナンス管理方法であって、
前記劣化情報は、前記稼働情報に表される状態で所定の時間駆動したときに前記1つ以上の部品が劣化する程度を表す。
【0072】
第4の態様に係るメンテナンス管理方法は、第2または第3の態様に係るメンテナンス管理方法であって、
前記1つ以上の部品が劣化する程度は摩耗量を表す。
【0073】
第5の態様に係るメンテナンス管理方法は、第2から第4の態様のいずれか係るメンテナンス管理方法であって、
前記劣化情報は、前記部位に含まれる第1部品に駆動力を与える駆動装置の負荷率に対する前記第1部品が劣化する程度を表す情報を含み、
前記劣化度を決定することは、
前記稼働情報に含まれる前記負荷率に基づき、前記第1部品の前記劣化度を決定すること
を含む。
【0074】
第6の態様に係るメンテナンス管理装置は、
作業装置の稼働情報に基づき、前記作業装置に含まれる複数の部位の劣化度を決定する劣化度決定部と、
前記劣化度に基づき、前記複数の部位のうち、メンテナンスの対象となるメンテナンス部位を決定する部位決定部と、
前記メンテナンス部位を表すメンテナンス情報を出力する出力部と、
を備える。
【0075】
第7の態様に係るメンテナンス管理プログラムは、
作業装置の稼働情報に基づき、前記作業装置に含まれる複数の部位の劣化度を決定することと、
前記劣化度に基づき、前記複数の部位のうち、メンテナンスの対象となるメンテナンス部位を決定することと、
前記メンテナンス部位を表すメンテナンス情報を出力することと、
を演算装置に実行させる。
【符号の説明】
【0076】
1、2 :記憶媒体
20 :ネットワーク
30 :作業装置
31 :駆動装置
32 :駆動輪
100 :メンテナンス管理装置
110 :入出力装置
120 :演算装置
130 :通信装置
140 :記憶装置
150 :データ記憶部
160 :劣化係数決定部
170 :劣化度決定部
180 :部位決定部
190 :出力部
200 :端末
210 :入出力装置
220 :演算装置
230 :通信装置
240 :記憶装置
250 :表示部
400 :メンテナンス時期データ
410 :劣化情報
420 :算出式データ
430 :劣化係数データ
440 :作業実績データ
450 :メンテナンス管理プログラム
460 :表示プログラム
500 :圃場
1000 :メンテナンス管理システム