(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024179060
(43)【公開日】2024-12-26
(54)【発明の名称】記録素子基板
(51)【国際特許分類】
B41J 2/14 20060101AFI20241219BHJP
B41J 2/05 20060101ALI20241219BHJP
【FI】
B41J2/14 201
B41J2/05
B41J2/14 613
【審査請求】有
【請求項の数】23
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023097566
(22)【出願日】2023-06-14
(71)【出願人】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】弁理士法人谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】三浦 洋介
【テーマコード(参考)】
2C057
【Fターム(参考)】
2C057AF01
2C057AF21
2C057AG46
2C057AG90
2C057AK01
2C057AL03
2C057AL25
2C057AM03
2C057AM40
2C057AN01
2C057AN05
2C057AQ02
2C057BA13
(57)【要約】
【課題】従来と比べて、配線抵抗が低減し、レイアウトが改善され、高周波化に対応可能な記録素子基板の構成を提供する。
【解決手段】本発明の一実施形態は、液体を吐出するための複数の記録素子であって、第1方向に配列されて記録素子列をなす前記複数の記録素子と、前記液体を加熱する発熱素子と、前記発熱素子を駆動するドライバと、前記ドライバを制御するデータ処理回路と、前記データ処理回路に送る信号が外部から入力される複数のPADであって、前記第1方向に配列されてPAD列をなす前記複数のPADと、を有し、前記データ処理回路が、前記第1方向と直交する第2方向における、前記記録素子列と前記PAD列との間に、少なくとも2系統以上設けられる、ことを特徴とする記録素子基板である。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を吐出するための複数の記録素子であって、第1方向に配列されて記録素子列をなす前記複数の記録素子と、
前記液体を加熱する発熱素子と、
前記発熱素子を駆動するドライバと、
前記ドライバを制御するデータ処理回路と、
前記データ処理回路に送る信号が外部から入力される複数のPADであって、前記第1方向に配列されてPAD列をなす前記複数のPADと、
を有し、
前記データ処理回路が、前記第1方向と直交する第2方向における、前記記録素子列と前記PAD列との間に、少なくとも2系統以上設けられる、
ことを特徴とする記録素子基板。
【請求項2】
前記記録素子に向けた前記液体が供給される複数の供給口であって、前記第1方向に配列されて供給口列をなす前記複数の供給口を更に有する、
請求項1に記載の記録素子基板。
【請求項3】
前記記録素子列1つあたり、2つの供給口列が設けられ、
前記2つの供給口列は夫々、前記第2方向において、当該記録素子列を挟んで異なる位置となるように設けられる、
請求項1又は2に記載の記録素子基板。
【請求項4】
前記発熱素子は、前記第2方向における、前記記録素子列と前記供給口列との間に設けられる、
請求項3に記載の記録素子基板。
【請求項5】
複数の前記発熱素子が設けられ、
複数の前記発熱素子の夫々に対する加熱エリアが決まっており、
複数の前記加熱エリアは夫々、略同一のレイアウトを有する、
請求項1又は2に記載の記録素子基板。
【請求項6】
前記複数の加熱エリアの夫々に含まれる前記記録素子の数が等しい、
請求項5に記載の記録素子基板。
【請求項7】
前記ドライバは、前記複数の加熱エリアの夫々に対して1つとなるように設けられる、
請求項6に記載の記録素子基板。
【請求項8】
複数の前記ドライバが設けられ、
複数の前記ドライバの夫々と、前記データ処理回路との間の配線が、個別配線となっている、
請求項7に記載の記録素子基板。
【請求項9】
前記発熱素子は、ポリシリコンからなる、
請求項1又は2に記載の記録素子基板。
【請求項10】
前記発熱素子は、ポリシリコンからなる発熱部と、アルミニウムからなるバイパス部と、当該発熱部と当該バイパス部とを接続するプラグと、を有する、
請求項9に記載の記録素子基板。
【請求項11】
前記プラグは、タングステンから成る、
請求項10に記載の記録素子基板。
【請求項12】
前記ドライバは、前記第2方向において、前記供給口列を基準としたときの前記記録素子列の側と逆側の領域に配置されている、
請求項2に記載の記録素子基板。
【請求項13】
前記データ処理回路は、第1データ処理回路と、第2データ処理回路である、
請求項1又は2に記載の記録素子基板。
【請求項14】
前記複数のPADのうち1つである第1PADから入力されたデータを解析し、該解析に基づき、第1データ処理回路にデータを送る第1データ解析部と、
前記第1PADと異なる第2PADから入力されたデータを解析し、該解析に基づき、第2データ処理回路にデータを送る第2データ解析部と、
を更に有する、
請求項13に記載の記録素子基板。
【請求項15】
前記複数のPADのうち1つである第3PADであって、リセット信号が入力される前記第3PADを更に有し、
前記第1データ処理回路に前記リセット信号が入力された場合、前記第1データ処理回路のシフトレジスタに保持されている値がリセットされ、
前記第2データ処理回路に前記リセット信号が入力された場合、前記第2データ処理回路のシフトレジスタに保持されている値がリセットされる、
請求項14に記載の記録素子基板。
【請求項16】
複数の前記記録素子列を有し、
複数の前記記録素子列は夫々、前記第2方向における異なる位置に設けられる、
請求項1又は2に記載の記録素子基板。
【請求項17】
前記記録素子基板の形状は、長辺と短辺とから成る矩形の形状である、
請求項1又は2に記載の記録素子基板。
【請求項18】
液体を吐出するための記録素子と、
前記液体を加熱する発熱素子と、
前記発熱素子を駆動するドライバと、
前記ドライバを制御するデータ処理回路と、
前記発熱素子を駆動するための第1信号が前記発熱素子に転送されるかを判断し、当該判断の結果に基づいて、前記データ処理回路のシフトレジスタに当該第1信号を格納させる解析部と、
を有し、
前記記録素子を駆動する信号は、一定の周期で転送され、
前記解析部は、前記第1信号が転送されるかを前記一定の周期で判断し、
前記第1信号及び前記記録素子を駆動するための第2信号が、少なくとも2本以上の伝送路を用いて転送される、
ことを特徴とする記録素子基板。
【請求項19】
信号が外部から入力されるPADを更に有する、
請求項18に記載の記録素子基板。
【請求項20】
前記解析部の数は、前記伝送路の数と等しく、
前記PADの数は、前記伝送路の数と同じかそれより多い、
請求項19に記載の記録素子基板。
【請求項21】
前記データ処理回路は、第1データ処理回路と、第2データ処理回路とを含み、
前記解析部は、前記第1データ処理回路に接続する第1解析部と、前記第2データ処理回路に接続する第2解析部とを含み、
複数の前記PADは、前記第1解析部に接続する第1PADと、前記第2解析部に接続する第2PADと、リセット信号が入力される第3PADとを含む、
請求項20に記載の記録素子基板。
【請求項22】
前記第1信号を転送するか否かを示すデータは、バイト単位で送信される、
請求項21に記載の記録素子基板。
【請求項23】
前記一定の周期は、数kHz~数十kHzである、
請求項18乃至22の何れか1項に記載の記録素子基板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、液体を吐出して記録を行う記録装置が有する記録素子基板の技術に関する。
【背景技術】
【0002】
インク等の液体を吐出して記録を行う記録装置に用いられる記録素子基板では、近年の高画質化、高機能化の要求に伴い、該記録素子基板の温度を制御する温度制御が行われている。また、この要求に応えるため、記録素子基板のノズル数の増加やノズル駆動の高周波化の傾向がある。
【0003】
記録素子基板では、温度によって吐出される液滴の量や吐出速度がばらつく。そのため、基板温度の温度分布が生じた場合、その温度分布がそのまま画像のむらになり画像品質が低下する。
【0004】
特許文献1は、基板の温度分布を補正する方法として、記録素子基板内にサブヒータのドライバを特定のエリア内に搭載し、そのエリアを1又は複数任意に選択し加熱することで、基板内の温度むらを抑制する方法が開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1の構成は、外部からのデータ入力により、サブヒータを選択駆動するためのデータが格納されるデータ処理回路が1系統しか存在しない構成となっており、この構成では、前述した高画質化、高機能化の要求に充分応えることができない。
【0007】
データ処理回路が1系統の構成では、データ処理回路から全てのサブヒータを駆動するスイッチへ接続する配線が長くなり、基板上のレイアウトが複雑となる。また、かかる構成に対するデータの入力に関し、基本的には1つの伝送路にしか対応できない。そうなると、駆動するサブヒータ数が多いと入力されるデータ数が増えるため、高周波化に対応できなくなる。
【0008】
そこで本開示は、従来と比べて、配線抵抗が低減し、レイアウトが改善され、高周波化に対応可能な記録素子基板の構成を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一実施形態は、液体を吐出するための複数の記録素子であって、第1方向に配列されて記録素子列をなす前記複数の記録素子と、前記液体を加熱する発熱素子と、前記発熱素子を駆動するドライバと、前記ドライバを制御するデータ処理回路と、前記データ処理回路に送る信号が外部から入力される複数のPADであって、前記第1方向に配列されてPAD列をなす前記複数のPADと、を有し、前記データ処理回路が、前記第1方向と直交する第2方向における、前記記録素子列と前記PAD列との間に、少なくとも2系統以上設けられる、ことを特徴とする記録素子基板である。
【発明の効果】
【0010】
本開示によれば、従来と比べて、配線抵抗が低減し、レイアウトが改善され、高周波化に対応可能な記録素子基板の構成を提供することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図5】サブヒータ制御信号が記録素子基板内で生成される場合のブロック図
【
図6】記録素子基板における配線層の4層構造を示す図
【
図8】ヒータ周辺の詳細な構成を示す図(サブヒータ材がポリシリコンのケース)
【
図9】ヒータ周辺の詳細な構成を示す図(サブヒータ材がヒータ材のケース)
【
図11】記録素子基板に入力されるデータ及び信号のタイミングチャート
【
図12】送信1回分の印刷データ(パケット)Dtの構成を示す図
【
図13】付帯情報特定部(Inf12)の内容を示す図
【
図14】本実施形態における印刷データの構成を示す図
【
図16】記録素子基板に対するデータ入力を説明するための図
【
図17】2伝送路を使用することの効果を説明するための図
【発明を実施するための形態】
【0012】
[第1実施形態]
以下、図面を参照しながら、本実施形態における液体吐出ヘッド及び該液体吐出ヘッドを構成する記録素子基板について説明する。尚、以下の実施形態は、特許請求の範囲に係る発明を必要以上に限定する趣旨ではない。また、以下の実施形態には複数の特徴が記載されているが、該複数の特徴の全てが、本開示の課題解決に必須のものとは限らず、また、該複数の特徴は任意に組み合わせても良い。さらに、添付図面においては、同一又は同様の構成に同一の参照番号を付し、重複した説明は省略する場合がある。
【0013】
図1は、本実施形態における液体吐出ヘッドの外観を示す簡易斜視図である。
図1(a)は、複数の記録素子基板101が並んで配置された液体吐出ヘッド100を示す。この液体吐出ヘッドは一般的に「ラインヘッド」と呼ばれる形態である。
【0014】
図1(b)は、
図1(a)と別の形態として、2個の記録素子基板101が並んで配置された液体吐出ヘッド100を示す。この液体吐出ヘッドは一般的に「シリアルヘッド」と呼ばれる形態である。尚、本例では、液体吐出ヘッドが2個の記録素子基板を有するケースを示しているが、シリアルヘッド形態の液体吐出ヘッドは一般的に、1個又は2個の記録素子基板を有する。
【0015】
図2は、本実施形態における記録素子基板101の形状を示す平面図である。
図2(a)の記録素子基板101は、形状が平行四辺形であり、電気の入出力箇所であるPAD102が、当該平行四辺形の長い方の2辺のうち1辺に沿って複数設けられた結果、PAD列が当該1辺と平行に形成されている。PAD102は、後述するデータ処理回路(
図3参照)に送る信号を、外部から記録素子基板101に入力するための電極である。
【0016】
図2(b)の記録素子基板101は、形状が平行四辺形であり、複数のPAD102が、当該平行四辺形の長い方の2辺のそれぞれに沿って設けられた結果、2つのPAD列が形成されている。
【0017】
図2(c)の記録素子基板101は、形状が長方形であり、複数のPAD102が、当該長方形の長い方の2辺のうち1辺に沿って設けられた結果、PAD列が当該1辺と平行に形成されている。
【0018】
図2(d)の記録素子基板101は、形状が長方形であり、複数のPAD102が、当該長方形の長い方の2辺のそれぞれに沿って設けられた結果、2つのPAD列が形成されている。
【0019】
尚、記録素子基板の形状は、
図2(a)~
図2(d)の形状が一般的であるが、これらに限定されない。例えば、形状が台形でも良いし、PAD102の配置も様々である。記録素子基板の形状は、長辺と短辺から成る矩形の形状であれば良い。
【0020】
図3は、本実施形態における記録素子基板のレイアウトを示す図である。記録素子基板101の基板端部において、複数のPAD102がY方向に並べて設けられている。これらのPAD102には、インクを吐出するノズルを選択するためのデータを受信する信号端子や電源端子等が含まれる。
【0021】
記録素子基板101は複数のヒータ103を有する。ヒータ103は、インク等の液体を吐出するための記録素子である。本例では、複数のヒータ103はY方向に配列されており、ヒータ列(記録素子列ともいう)として、A列~D列が設けられている。
【0022】
記録素子基板101には、ノズルから吐出するインクを供給するためのインク供給口106がヒータ列に沿って設けられており、インク供給口106から流入したインクは、ヒータ103上部に供給される。
【0023】
ヒータ103の直上には吐出口205(
図8(b)、
図9(b)参照)が配されており、ヒータ103に任意のタイミングで電流を流し、インクを加熱ないし発泡させ、吐出口205よりインク滴を吐出する。尚、本実施形態では、インク吐出用の素子としてヒータを例に挙げているが、ピエゾ素子などを用いインクを加圧することで吐出する構成でも良い。
【0024】
記録素子基板には複数のサブヒータ105が設けられている。サブヒータ105は記録素子基板101やインクの温度を制御するための素子であり、具体的には加熱ないし保温する温度調節用の発熱素子である。サブヒータドライバ108はサブヒータ105に接続されており、サブヒータ105に流す電流のON/OFF制御(ONからOFF又はOFFからONにする制御)を行う。尚、本実施形態のサブヒータ105周りの詳細な構成は、
図7を用いて後述する。
【0025】
データ処理回路110とサブヒータドライバ108との間の配線については、データ処理回路-サブヒータドライバ間接続配線111のように引き回されている。複数のサブヒータ105のそれぞれを駆動するための信号である「サブヒータ制御信号」がデータ処理回路110に格納されている。本例のサブヒータ制御信号は具体的に、A列用のSH_A1~SH_A5、B列用のSH_B1~SH_B5、C列用のSH_C1~SH_C5、D列用のSH_D1~SH_D5である。サブヒータ制御信号SH_A1~SH_D5はそれぞれ、任意のタイミングで対応するサブヒータドライバへ送信される。図示するように、データ処理回路110と、複数のサブヒータドライバ108それぞれとの間の配線は、全て個別配線となっている。
【0026】
本実施形態では、PAD102の列と、記録素子列(具体的にはA列)との間に、2つのデータ処理回路110を設けることで、記録素子基板101を2つの配線系統とする。この構成にすることで、各サブヒータへの個別配線レイアウト領域が基本的には約半分となり、配線レイアウトが改善される。また配線長も短くできるため、ノイズによる誤動作のリスクも低減する。また、本例では、記録素子基板101が2系統のデータ処理回路110を有するケースを示したが、データ処理回路110の系統数は2に限定されず、データ処理回路が少なくとも2系統以上設けられれば良い。
【0027】
図4は、サブヒータ105を駆動する回路の図であり、
図3に対応する回路構成を示す。
図4中、PAD102aは+電源PADであり、PAD102bはGNDPADである。
【0028】
図6に示すように、本実施形態の記録素子基板の配線層は、アルミウム(以下Al)4層から成る4層構造となっている。尚、本明細書では、この4層について、最下層を第1層とし、中間層を下から上に第2層、第3層とし、最上層を第4層とする。
【0029】
最上層である第4層203aには、ヒータ104やサブヒータ105のGND配線が設けられている。最上層寄りの中間層である第3層203bには、ヒータ104やサブヒータ105の+電源配線が設けられている。
【0030】
最下層寄りの中間層である第2層203c及び最下層である第1層203dには、ロジック配線が設けられている。このロジック配線は、前述したデータ処理回路-サブヒータドライバ間接続配線111などに用いられる。本実施形態の記録素子基板は、+電源PADから第3層203bの+電源配線を経由してサブヒータへ通電し、第4層203aのGND配線を経由してGNDPADであるPAD102bへ抜けていく構成である。尚、これらの電源用PADは、インク液滴の吐出に使用するヒータ104の電源用PADとして使用しても良い。
【0031】
サブヒータ制御信号SH_A1~SH_D5により制御されるサブヒータドライバ108が、サブヒータを駆動する。これにより、記録素子基板101内の20か所ある任意の加熱エリア107が加熱される。尚、記録素子基板内を本例(
図3)よりも精度良く温度制御したい場合には、20か所以上の加熱エリアを設けて良い。
図3に示すように、あるヒータ列(A列~D列の何れか)に着目すると、複数のインク供給口106がヒータ列の伸長方向に沿って配置されて供給口列をなし、この供給口列は、ヒータ列を挟むように2列形成されている。また、サブヒータドライバ108は、インク供給口106を基準としたとき、図中の左右方向において、この2列のインク供給口の更に外側に配置される。尚、サブヒータ制御信号SH_A1~SH_D5は、PAD102から直接供給されても良いし、記録素子基板101内でデータ信号から変換されて生成されても良い。
【0032】
任意の1つの加熱エリアに着目すると、記録素子列1つあたり2つの供給口列が設けられ、サブヒータドライバ108は、X方向において、2つの供給口列のうち相対的に近い方の供給口列を基準としたときの記録素子列の側と、逆側の領域に配置されている。
【0033】
ここで
図5に、サブヒータ制御信号が記録素子基板内で生成される場合のブロック図を示す。
図5の方式の場合、画像データと同時に制御信号データをPAD102経由でデータ処理回路110に送れば、データ処理回路110にて該制御信号データに基づきサブヒータ制御信号が生成される。このように、
図5の方式によれば、サブヒータ制御信号を供給するためのPAD102を特別増加する必要なくサブヒータ制御が可能となる。
【0034】
図3では、複数のサブヒータ105がチップ長辺方向(図中Y方向)に並んで配置されており、Y方向と直交するX方向において、インク供給口106とヒータ103との間にサブヒータ105が配置されている。この配置によって、ヒータ103近傍のインクが加熱されるため、サブヒータ105を設けないときより効率的に、吐出するインクを加熱できる。記録素子基板内に複数ある加熱エリア107内のサブヒータのレイアウトは略同一であって、基本的には全て同じである。複数の加熱エリア107の夫々に含まれるヒータ104の数は等しい。そのため、基本的には、各エリアのサブヒータによる発熱量は全て等しくなり、記録素子基板101内の温度分布を一様にする温度制御が可能となる。但し、記録素子基板の端部などで温度差が発生し易いことを考慮し、エリア毎にサブヒータの発熱量を変える場合には、サブヒータのレイアウトを調整することでエリア毎に温度調整すれば良い。
【0035】
図7は、本実施形態におけるサブヒータ105の構成を示す図である。詳しくは、
図7(a)は、サブヒータの上面図であり、
図7(b)~7(f)は、サブヒータの断面図である。尚、ここではサブヒータ材のとしてポリシリコン(Poly-Siと記載)を使用しているが、サブヒータ材はポリシリコンに限らない。
【0036】
図7(a)では、加熱エリア107のサブヒータ105は、5か所の発熱部209と、4か所のバイパス部208とで構成されている。このバイパス部208は、
図7(b)に示すように、Al配線203とプラグ206とで構成されている。バイパス部208の抵抗値は、サブヒータ105と比べて1/100~1/1000と充分に小さく、本例では0オームと見積もっている。尚、バイパス部208は、アルミニウム(Al)、銅(Cu)、金(Au)、ニッケル(Ni)、タングステン(W)、チタン(Ti)及びその化合物の少なくとも1つから構成することが可能である。
【0037】
プラグ206は、例えばタングステン(W)で構成することが可能である。サブヒータ105のPoly-Si配線に対して、相対的に低抵抗なAl配線203を接続したことにより、加熱エリア107を流れる電流は、
図7(b)の矢印212に示す通り、発熱部209とバイパス部208とを交互に流れる。サブヒータ105の中では、隣接するAl配線203の間に位置する部分に殆どの電流が流れるので、この部分が発熱部209として機能し熱を発生する。このように、Al配線203は、任意の発熱部209に対する両端となるように接続され、サブヒータ105の中の発熱部以外の部分と並列に接続される。以上説明した構成により、加熱エリア107では、サブヒータ105が通電された場合に、このサブヒータ105を流れる電流の経路における途中でプラグ206を介してAl配線203に電流が流れる。
本実施形態におけるサブヒータ105は、加熱エリア107に対して、熱を発生する発熱部209が分散して配置された構成となっているので、加熱エリア107を均一に加熱できないとも思える。しかし、隣接する発熱部209と発熱部209との間は、金属で構成された熱抵抗の低いバイパス部208によって接続されており、これにより、発熱部209で発生した熱がバイパス部208を介して拡散するので、加熱エリア107は均一に加熱される。
【0038】
尚、より均一に加熱エリア107を加熱したい場合には、バイパス部208の長さを短くし、発熱部209の長さと幅との比を維持したまま、面積を拡大すればよい。但し、この場合、回路や基板の面積を縮小する効果(シュリンク効果)は低下する。
【0039】
逆に、発熱部209の長さと幅とを縮小し、かつバイパス部208の長さを長くすれば、高いシュリンク効果を得られるが、この場合には配線に流れる電流密度が上がるため、エレクトロマイグレーション等による断線が懸念される。「エレクトロマイグレーション」は、集積回路内部の金属配線に電流を流すことにより金属原子が移動する現象を指す。アルミ配線では電子の流れる方向にアルミ原子が移動し、陰極側にボイドが発生しオープン故障になり、陽極側ではヒロックやウィスカが成長し、最終的にはショート故障に至ってしまう。
【0040】
図7(c)は、エレクトロマイグレーションによって断線した例を示す。プラグ206は電流が集中するため、Al配線203との接点部分で比較的エレクトロマイグレーションは起こり易い。通常は、このような不良が起こらない電流範囲となるよう回路設計され、さらにAl配線203とプラグ206との間にバリアメタルを挟む等の対策がなされている。本実施形態では、仮にAl配線203において断線が起こってしまっても、サブヒータ105は加熱エリア107の範囲に亘って配線されているため、電流はサブヒータ105のPoly-Si配線へ迂回する結果、サブヒート機能は失われない。このような配線方法により、サブヒート駆動の高信頼性が得られる。但し、断線すると抵抗が上がるため発熱量は落ちる。従って、万一断線が発生した場合は、該発生したエリアのサブヒータは極力駆動を抑えることが望ましい。
【0041】
矢印212の電流経路に示すように、サブヒータ105の抵抗が高いため電流は抵抗の低いAl配線203を流れようとする。そのため、
図7(b)に示すように、端部のAl配線203において2列のプラグ206が設けられていても、発熱部209から見て手前側のプラグに電流は流れる。しかし、サブヒータ両端の電源の取り出し口に関しては断線するとサブヒート機能が失われてしまうので、プラグ206を2列以上設けることで、仮に手前側で断線したとしても奥側のプラグ経由で電流が流れるようにしている。かかる構成により、サブヒータ両端における完全な断線を防ぐことが可能になる。尚、Al配線203においても同様の効果が得られるため、プラグ206の代わりに(またはプラグ206と共に)、Al配線203を2列以上配置しても良い。
【0042】
図7(d)では、
図7(b)と比べてAl配線長が長い。このような設計にすることで、図中の矢印で示すように、プラグの位置を変更するだけで、発熱量を調整することが可能になる。例えば、Al配線203の端部に近づくようプラグ206を配置した場合(つまり外側に配置した場合)、発熱部の長さが短くなり、抵抗が下がるので、発熱量を上げる方向に調整できる。逆に、Al配線203の端部から遠ざかるようプラグを配置した場合(つまり内側に配置した場合)、抵抗値が上がるため、発熱量を下げる方向に調整できる。
図7(d)の構成を採用した場合、マスク1枚のみで設計変更できるため、サブヒータの発熱量を変更する際のコストダウンが可能となる。
【0043】
図7(e)は、あえてバイパス部でサブヒータのPoly-Si配線をカットした構成を示す。この構成では、前述したバイパスのメリットは生かせないが、レイアウトの自由度は増す。
【0044】
図7(f)は、前述したAl4層構造のサブヒータ断面を示す。サブヒータ105が駆動されると、第3層203bに設けられたAl配線経由で電流が流れ込み、加熱エリア107を通って、最終的に、最上層である第4層203aに設けられたAl配線経由で電流が流れ出る。
【0045】
図8(a)は、
図3で示した記録素子基板101におけるヒータ103近傍を拡大した平面図である。尚、
図8(a)では、簡単のため、サブヒータドライバ108を省略している。
【0046】
図8(a)に示すように、ヒータ103とインク供給口106とに対するインク流路が、ノズル材によって区画されており、2つのヒータ103に対して、図中の左右両側に1個ずつインク供給口106が設けられている。この構成によりインク吐出後のインクリフィルが両側のインク供給口106からなされるため、吐出周波数が上がり、印刷のスループットを向上することが可能となっている。また本実施形態では、前述したように、発熱量を下げることなくサブヒータの幅を縮めることができるため、ヒータ103とインク供給口106との間にサブヒータ105を配置しても吐出周波数に影響を与えない。
図8(b)は、
図8(a)の断面線A-A’における断面図(ヒータ103をインク流路方向に切った図)である。
図8(c)は、
図8(a)の断面線B-B’における断面図(サブヒータ105を長手方向に切った図)である。
【0047】
図8(a)~(c)に示す例では、サブヒータ105がバイパス部208と発熱部209とから構成されている。また、
図8(b)に示すように、サブヒータ105はポリシリコン配線で最下層に設けられている。さらに、
図8(b)及び
図8(c)に示すように、Al配線203は4層あり、その上にヒータ層が積層されている。そしてそれらの配線はプラグ206によって接続され、絶縁膜202に覆われている。その上層にノズル材が積層され、インク流路207及び吐出口205が形成されている。尚、本例では、Al配線203は第4層でバイパスされているが、第4層以外でバイパスされても良い。
【0048】
図8(b)に示すように、サブヒータ105は、インクが吐出されるヒータ103から離れているが、サブヒート加熱する位置としては、吐出するインクにより近いヒータ103付近が理想的である。そこで本実施形態では、バイパス部208(
図8(c))をヒータ近くに設け、さらによりヒータ103に近い上層のAl配線でバイパスすることにより、サブヒータ105の発熱部で発生した熱を、よりヒータ近傍に伝える構成としている。この構成によって、吐出するインクにより近い部分でのサブヒート加熱が可能になり、インク加熱によるインク粘度低下を実現でき、それによるインクリフィルの高速化が可能になり、印刷のスループットをさらに向上することが可能となる。また、この構成により、高粘度インクの吐出が可能になるので、高画質化につながり、インク選択の自由度が上がる。
【0049】
図9(a)は、
図8(a)と同様、ヒータ103近傍を拡大した平面図であるが、サブヒータ材としてポリシリコンでなく、ヒータ103と同じ膜を使用したケースを示している。
図9(b)は、
図9(a)の断面線A-A’における断面図(ヒータ103をインク流路方向に切った図)である。
図9(c)は、
図9(a)の断面線B-B’における断面図(サブヒータ105を長手方向に切った図)である。
【0050】
一般的に、インク吐出用のヒータ103のヒータ材の抵抗値は、ポリシリコンより高い。従って、
図9(c)に示すように、サブヒータ材として抵抗値の低いポリシリコンを使用する
図8(c)のケースと比べてバイパス部208の数を増やすことで、サブヒータ405全体の抵抗値を調整する必要がある。しかし、
図9の構成は、
図8の構成と異なり、サブヒータ405がヒータ103に近く、サブヒータ405の発熱部209がヒータ103近傍に配置される構成となっている。そのため、
図8の構成よりも、吐出されるインクの近傍を加熱でき、
図8と比べて大きな昇温効果が得られる。
【0051】
以下、
図10~
図13を用いて、サブヒータ駆動をするためのデータ構成について説明する。
【0052】
図10は、ヘッド基板14及び複数の記録素子基板101を有する液体吐出ヘッドについてのブロック図である。複数の記録素子基板101のそれぞれには、印刷データDtの他、制御基板から送信されるクロック信号Ck及びラッチ信号Ltがフレキシブル基板16を通して入力される。クロック信号Ckは、この信号波形のライズエッジ(ローレベルからハイレベルへの遷移)と、フォールエッジ(ハイレベルからローレベルへの遷移)との少なくとも1つにより、2以上の要素間の同期を図ることを可能とする。ラッチ信号Ltは、この信号波形のライズエッジ又はフォールエッジにより、印刷データDtを構成する個々の信号を不図示のラッチ回路にてラッチすることを可能とする。尚、
図10は、ラインヘッド構成を示しているが、本実施形態の液体吐出ヘッドは勿論シリアルヘッド構成でも良い。
【0053】
図11は、送信1回分の印刷データDt、並びに、これと共に記録素子基板101に入力されるクロック信号Ck及びラッチ信号Ltを示す。印刷データDtは、シリアル伝送方式により所定の単位で送信され、送信1回分のデータはパケット等と称される。印刷データDtの詳細については後述するが、複数の情報部inf11、inf12等(特に区別しない場合には単に「情報部inf」と記載する。)を含み、個々の情報部infは、複数の信号を含んで構成される。例えば、m及びnを1以上の整数として、情報部inf11は、信号a(0)、a(1)、a(2)・・・、a(m)を含むmビットデータとし、情報部inf12は、信号b(0)、b(1)、b(2)・・・、b(n)を含むnビットデータとする。尚、ビットデータは複数の信号で構成され、個々の信号の値はビット値とも表現可能である。
【0054】
図11の例では、時刻t0、t1、t2等におけるクロック信号Ckのライズエッジ/フォールエッジにより上記信号a(0)等が順に入力され、その後、ラッチ信号Ltがライズエッジを形成する時刻tpにおいて該送信された信号a(0)等がラッチされる。以上説明したように、送信1回分の印刷データDtは、あるラッチ信号Ltのフォールエッジから次のラッチ信号Ltのライズエッジまで、で画定される。
【0055】
図12は、送信1回分の印刷データDtの構成の例を示す。印刷データDtは、第1データ部D1を含んでおり、また、付随的に第2データ部D2を含み得る。データ部D1は、複数の情報部inf11~inf15を含んで構成され、そのデータ長(データサイズ)は固定されているものとする。これに対し、データ部D2は、複数の付帯情報部inf21~inf28を包含可能に構成され、そのデータ長は可変とする。
【0056】
先ず、データ部D1についてする。
【0057】
情報部inf11は、印刷データDtのヘッダの一態様(スタートコンディション)を形成し、通信の開始を示す通知データを構成する。
【0058】
情報部inf12は、データ部D2に含まれ得る複数の付帯情報部inf21~inf28のそれぞれの有無を示す。前述の通り、データ部D2のデータ長は、複数の付帯情報部inf21~inf28のそれぞれの有無に応じて可変である。
【0059】
情報部inf13は、どのヒータを駆動するか選択するためのデータを構成する。各画像データ1ブロックに対して各ヒータ1列が割り当てられる。
【0060】
情報部inf14は、ヒータを駆動するための信号のパルス波形や駆動のタイミングを定義するための定義用データを構成する。
【0061】
情報部inf15は、印刷データDtの送信が適切に実行されたか否かを診断するための診断用データを構成する。
【0062】
次に、データ部D2についてする。
【0063】
本実施形態では、付帯情報部として、付帯情報部inf21(サブヒータ選択データ)のみ具体的に定義している。inf22以降については、例えば、温度センサ選択データ、テスト波形選択データ、吐出有無確認データなどを当てはめて良い。
【0064】
このように、データ部D1には、現に印刷を実行するために必要な情報ないし印刷動作そのものに直接的に関連する情報が包含される。一方、データ部D2には、印刷実行前の準備段階で必要な情報ないし印刷動作に間接的に関連する情報が包含される。
【0065】
図13は、付帯情報特定部である情報部inf12の内容を示す。本実施形態では、情報部inf12は8ビットデータである。第1ビットは付帯情報部inf21の有無を示し、第2ビットは付帯情報部inf22の有無を示し、第3~第8ビットも同様、夫々に対応する付帯情報部infの有無を示す。本実施形態では、個々のビットは「0」又は「1」の2値をとるものとし、「0」は有ること、又は、動作しないことを示し、「1」は無いこと、又は、動作することを示す。例えば、第1ビットが「0」の場合、データ部D2は付帯情報部inf21を含むものとし、また、第1ビットが「1」の場合、データ部D2は付帯情報部inf21を含まないものとする。
【0066】
前述の通り、近年、記録装置の高画質化、高機能化が求められ、記録素子基板101のヒータ数、サブヒータ数が増加し転送するデータ数も増加している。その上、ヒータ駆動の高周波化、データ転送速度の増量が要求され、データ転送の周期(LT-LT間)が短くなってきている。そのため本実施形態では、印刷データを2つ以上に分割して、該分割した印刷データを2本の伝送路を用いて転送するものとする。これは本実施形態の特徴の1つである。
【0067】
図14は、本実施形態における印刷データの構成として、転送する印刷データを2つに分割し、該分割した印刷データを2本の伝送路で送信するケースの構成を示している。
【0068】
図14に示すように、画像データはヒータ列(A列~D列)毎に分割される。分割された画像データのうち、A列用の画像データは、第1印刷データDt1の情報部inf13
1を構成し、B列用の画像データは、第1印刷データDt1の情報部inf13
2を構成する。また、C列用の画像データは、第2印刷データDt2の情報部inf13
1を構成し、D列用の画像データは、第2印刷データDt2の情報部inf13
2を構成する。
【0069】
また、サブヒータ選択データも半分に分割され、該分割された一方は、第1印刷データDt1の付帯情報部inf21を構成し、他方は、第2印刷データDt2の付帯情報部inf21を構成する。かかるデータ構成とすることで、印刷データDtに含まれるデータ数を減らすことが可能となり、ヒータ駆動の高周期化に対応することが可能となる。
【0070】
図15は、
図14の付帯情報部inf21を構成するサブヒータ選択データの詳細を示す。
図15に示すサブヒータ選択データは、
図3で示した記録素子基板101に対応している。つまり、
図3の記録素子基板101には、20か所の加熱エリア107があり、それぞれの加熱エリア107に対して1系統のサブヒータが設けられるので、記録素子基板101は、合計20系統のサブヒータを有する。従って、
図15に示すように、Dt1のサブヒータ選択データ1として、10系統のサブヒータに対するサブヒータ制御信号が転送される。また、Dt2のサブヒータ選択データ2として、残り10系統のサブヒータに対するサブヒータ制御信号が転送される。尚、サブヒータ選択データはバイト単位で送るため、データ枠に余りが出る(図中に「不定」と記載)。これらに対しては、「1」と「0」との何れが割り当てられても動作に影響ない。
【0071】
基本的に、分割されたDtを送る伝送路の数、分割されたサブヒータ選択データを送る伝送路の数、サブヒータを選択するデータ処理回路の系統数を同数とした設計が、データ転送の効率や回路・配線レイアウトの効率が良いとされる。従って、本例の記録素子基板101は、後述する通り(
図16参照)、Dt及びサブヒータ選択データを送る2本の伝送路を有するように構成される。但し、本実施形態がこの構成に限定される訳ではない。伝送路は2本以上であっても良い。
【0072】
図16は、サブヒータを選択的に駆動する際の記録素子基板101に対するDtの入力態様を示す図である。
【0073】
図16に示すように、第1印刷データDt1はDt1PAD331から入力され、第2印刷データDt2はDt2PAD332から入力される。第1印刷データDt1及び第2印刷データDt2が入力されると、複数の付帯情報部inf(付帯データとする)が付帯データ解析部330に入力されることとなる。尚、第1印刷データDt1及び第2印刷データDt2について、特に区別する必要がなければDtと総称する。
【0074】
印刷データDtの入力後、付帯データ解析部330は、DtのInf12の第1ビットを参照することで、サブヒータ選択データの有無を判断する。そして、付帯データ解析部330が、サブヒータ選択データが有ると判断した場合には、付帯情報部Inf21のデータ(サブヒータ選択データ)を、データ処理回路110のシフトレジスタに格納させる。その後、LT信号が入力されたタイミングで、サブヒータ制御信号が、サブヒータ105のサブヒータドライバ108へ転送される。
【0075】
また、シフトレジスタに保持される値をリセット(「0」にする)するリセット信号が、RESETPAD333から入力可能である。リセット信号は、記録装置の駆動開始時やエラーが発生した際に使われる。
【0076】
図17(a)は、記録素子基板101に2伝送路を配置したときの効果を説明するための図である。
図17(a)は、信号及び転送される印刷データのタイミングチャートであり、下段(2伝送路と記載)が、本実施形態の構成(
図16参照)に対応する。尚、参考のため、
図17(a)の上段(1伝送路と記載)に、従来の構成に対応するタイミングチャートも示している。
図17(a)に示すように、Dt1(又はDt2)の付帯情報特定部は、一定の周期(具体的には、数kHz~数十kHz)で送られている。付帯データ解析部330は、この付帯情報特定部を用いることで、一定の周期で、サブヒータの制御信号がサブヒータドライバに転送されるか判断する。
【0077】
前述の通り、
図16に示す記録素子基板101は、20系統のサブヒータを有し、それぞれにサブヒータに対する制御信号を送る必要があるので、送信する印刷データは20ビットである。また、サブヒータ選択データは、バイト単位で送信される。従って、1伝送路の場合、サブヒータ選択データを3回に分けて送る必要がある(サブヒータ選択データ(1バイト目)、サブヒータ選択データ(2バイト目)、サブヒータ選択データ(3バイト目))。
【0078】
これに対し、本実施形態のように2伝送路を採用した場合、各伝送路でサブヒータ選択データを2回に分けて送れば良い(サブヒータ選択データ(1バイト目)、サブヒータ選択データ(2バイト目))。従って、ラッチ信号間の期間を1バイト分短縮できるので、高周波化に資する。
【0079】
尚、
図17(a)に示すように、Dt1とDt2とでサブヒータ選択データの数を揃えることが原則だが、
図17(b)に示すように、Dt1とDt2とでサブヒータ選択データの数を異ならせても良い。本例では、記録素子基板101が20系統のサブヒータを有するので、Dt1とDt2とで合計3バイト確保すれば、全てのサブヒータ選択データを送信することができる。但し、本実施形態の効果を達成するためには、Dt1とDt2との夫々におけるトータルのデータ数(ビット数)を揃える必要があるので、
図17(b)に示すように、付帯データを挿入する必要がある。
【0080】
本実施形態では、ヒータ数やサブヒータ数を限定して説明したが、ヒータ数やサブヒータ数は上述したものに限定されない。
【0081】
[その他の実施形態]
本開示は、上述の実施形態の1以上の機能を実現するプログラムを、ネットワーク又は記憶媒体を介してシステム又は装置に供給し、そのシステム又は装置のコンピュータにおける1つ以上のプロセッサがプログラムを読出し実行する処理でも実現可能である。また、1以上の機能を実現する回路(例えば、ASIC)によっても実現可能である。
【0082】
[本開示の技術的特徴]
本開示は、以下の構成を含む。
【0083】
(構成1)液体を吐出するための複数の記録素子であって、第1方向に配列されて記録素子列をなす前記複数の記録素子と、前記液体を加熱する発熱素子と、前記発熱素子を駆動するドライバと、前記ドライバを制御するデータ処理回路と、前記データ処理回路に送る信号が外部から入力される複数のPADであって、前記第1方向に配列されてPAD列をなす前記複数のPADと、を有し、前記データ処理回路が、前記第1方向と直交する第2方向における、前記記録素子列と前記PAD列との間に、少なくとも2系統以上設けられる、ことを特徴とする記録素子基板。
(構成2)前記記録素子に向けた前記液体が供給される複数の供給口であって、前記第1方向に配列されて供給口列をなす前記複数の供給口を更に有する、構成1に記載の記録素子基板。
(構成3)前記記録素子列1つあたり、2つの供給口列が設けられ、前記2つの供給口列は夫々、前記第2方向において、当該記録素子列を挟んで異なる位置となるように設けられる、構成1又は2に記載の記録素子基板。
(構成4)前記発熱素子は、前記第2方向における、前記記録素子列と前記供給口列との間に設けられる、構成1乃至3の何れか1つに記載の記録素子基板。
(構成5)複数の前記発熱素子が設けられ、複数の前記発熱素子の夫々に対する加熱エリアが決まっており、複数の前記加熱エリアは夫々、略同一のレイアウトを有する、構成1乃至4の何れか1つに記載の記録素子基板。
(構成6)前記複数の加熱エリアの夫々に含まれる前記記録素子の数が等しい、構成1乃至5の何れか1つに記載の記録素子基板。
(構成7)前記ドライバは、前記複数の加熱エリアの夫々に対して1つとなるように設けられる、構成1乃至6の何れか1つに記載の記録素子基板。
(構成8)複数の前記ドライバが設けられ、複数の前記ドライバの夫々と、前記データ処理回路との間の配線が、個別配線となっている、構成1乃至7の何れか1つに記載の記録素子基板。
(構成9)前記発熱素子は、ポリシリコンからなる、構成1乃至8の何れか1つに記載の記録素子基板。
(構成10)前記発熱素子は、ポリシリコンからなる発熱部と、アルミニウムからなるバイパス部と、当該発熱部と当該バイパス部とを接続するプラグと、を有する、構成1乃至9の何れか1つに記載の記録素子基板。
(構成11)前記プラグは、タングステンから成る、構成1乃至10の何れか1つに記載の記録素子基板。
(構成12)前記ドライバは、前記第2方向において、前記供給口列を基準としたときの前記記録素子列の側と逆側の領域に配置されている、構成1乃至11の何れか1つに記載の記録素子基板。
(構成13)前記データ処理回路は、第1データ処理回路と、第2データ処理回路である、構成1乃至12の何れか1つに記載の記録素子基板。
(構成14)前記複数のPADのうち1つである第1PADから入力されたデータを解析し、該解析に基づき、第1データ処理回路にデータを送る第1データ解析部と、前記第1PADと異なる第2PADから入力されたデータを解析し、該解析に基づき、第2データ処理回路にデータを送る第2データ解析部と、を更に有する、構成1乃至13の何れか1つに記載の記録素子基板。
(構成15)前記複数のPADのうち1つである第3PADであって、リセット信号が入力される前記第3PADを更に有し、前記第1データ処理回路に前記リセット信号が入力された場合、前記第1データ処理回路のシフトレジスタに保持されている値がリセットされ、前記第2データ処理回路に前記リセット信号が入力された場合、前記第2データ処理回路のシフトレジスタに保持されている値がリセットされる、構成1乃至14の何れか1つに記載の記録素子基板。
(構成16)複数の前記記録素子列を有し、複数の前記記録素子列は夫々、前記第2方向における異なる位置に設けられる、構成1乃至15の何れか1つに記載の記録素子基板。
(構成17)前記記録素子基板の形状は、長辺と短辺とから成る矩形の形状である、構成1乃至16の何れか1つに記載の記録素子基板。
(構成18)液体を吐出するための記録素子と、前記液体を加熱する発熱素子と、前記発熱素子を駆動するドライバと、前記ドライバを制御するデータ処理回路と、前記発熱素子を駆動するための第1信号が前記発熱素子に転送されるかを判断し、当該判断の結果に基づいて、前記データ処理回路のシフトレジスタに当該第1信号を格納させる解析部と、
を有し、前記記録素子を駆動する信号は、一定の周期で転送され、前記解析部は、前記第1信号が転送されるかを前記一定の周期で判断し、前記第1信号及び前記記録素子を駆動するための第2信号が、少なくとも2本以上の伝送路を用いて転送される、ことを特徴とする記録素子基板。
(構成19)信号が外部から入力されるPADを更に有する、構成18に記載の記録素子基板。
(構成20)前記解析部の数は、前記伝送路の数と等しく、前記PADの数は、前記伝送路の数と同じかそれより多い、構成18又は19に記載の記録素子基板。
(構成21)前記データ処理回路は、第1データ処理回路と、第2データ処理回路とを含み、前記解析部は、前記第1データ処理回路に接続する第1解析部と、前記第2データ処理回路に接続する第2解析部とを含み、複数の前記PADは、前記第1解析部に接続する第1PADと、前記第2解析部に接続する第2PADと、リセット信号が入力される第3PADとを含む、構成18乃至20の何れか1つに記載の記録素子基板。
(構成22)前記第1信号を転送するか否かを示すデータは、バイト単位で送信される、構成18乃至21の何れか1つに記載の記録素子基板。
(構成23)前記一定の周期は、数kHz~数十kHzである、構成18乃至22の何れか1つに記載の記録素子基板。
【符号の説明】
【0084】
101 記録素子基板
102 PAD
103 ヒータ
105 サブヒータ
108 サブヒータドライバ
110 データ処理回路