(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024179079
(43)【公開日】2024-12-26
(54)【発明の名称】駆動装置
(51)【国際特許分類】
B60K 1/02 20060101AFI20241219BHJP
F16H 57/04 20100101ALI20241219BHJP
H02K 7/116 20060101ALI20241219BHJP
【FI】
B60K1/02
F16H57/04
F16H57/04 Z
F16H57/04 N
F16H57/04 K
H02K7/116
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023097601
(22)【出願日】2023-06-14
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000110
【氏名又は名称】弁理士法人 快友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 英司
(72)【発明者】
【氏名】奥田 弘一
(72)【発明者】
【氏名】田端 淳
【テーマコード(参考)】
3D235
3J063
5H607
【Fターム(参考)】
3D235BB18
3D235BB46
3D235CC12
3D235FF32
3D235GA07
3D235GA15
3D235GB03
3J063AA04
3J063AB02
3J063AB04
3J063AC01
3J063BA11
3J063BB03
3J063CA01
3J063XD03
3J063XD15
3J063XD23
3J063XD32
3J063XD38
3J063XD43
3J063XD62
3J063XD72
3J063XE15
5H607AA02
5H607AA12
5H607BB01
5H607CC03
5H607DD03
5H607EE36
5H607JJ10
(57)【要約】
【課題】 電動機室とギヤ室の間に端子台室が設けられた駆動装置において、端子台の絶縁性を向上させる。
【解決手段】 車両に搭載される駆動装置であって、電動機室、端子台室、及び、ギヤ室を有するケースと、電動機と、端子台と、前記ギヤ室内に配置されている減速機と、前記ギヤ室内に配置されているハイポイドギヤ、を有する。前記電動機室と前記端子台室の間の隔壁に第1貫通孔が設けられている。前記端子台室と前記ギヤ室の間の隔壁に第2貫通孔が設けられている。前記電動機が、前記電動機室から前記第1貫通孔、前記端子台室、及び、前記第2貫通孔を通過して前記ギヤ室まで伸びるロータシャフトを有している。前記ロータシャフトと前記第2貫通孔の間の隙間がオイルシールによりシールされている。前記電動機室と前記端子台室に第1潤滑油が収容されている。前記ギヤ室に第2潤滑油が収容されている。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載される駆動装置であって、
電動機室、端子台室、及び、ギヤ室を有するケースと、
前記電動機室内に収容されている電動機と、
前記端子台室内に収容されており、前記電動機に電気的に接続されている端子台と、
前記ギヤ室内に配置されている減速機と、
前記ギヤ室内に配置されているハイポイドギヤ、
を有し、
前記電動機室と前記端子台室の間の隔壁に第1貫通孔が設けられており、
前記端子台室と前記ギヤ室の間の隔壁に第2貫通孔が設けられており、
前記電動機が、前記電動機室から前記第1貫通孔、前記端子台室、及び、前記第2貫通孔を通過して前記ギヤ室まで伸びるロータシャフトを有しており、
前記ロータシャフトの回転が前記減速機と前記ハイポイドギヤを介して前記車両の車輪に伝えられるように構成されており、
前記ロータシャフトと前記第2貫通孔の間の隙間がオイルシールによりシールされており、
前記電動機室と前記端子台室に第1潤滑油が収容されており、
前記ギヤ室に第2潤滑油が収容されている、
駆動装置。
【請求項2】
前記電動機の動作中に前記電動機室と前記端子台室の間で前記第1潤滑油が循環する、請求項1に記載の駆動装置。
【請求項3】
前記第1潤滑油の粘度が前記第2潤滑油の粘度よりも低い、請求項1または2に記載の駆動装置。
【請求項4】
前記オイルシールが、前記ロータシャフトの外周面と前記第2貫通孔の内周面に接する第1シール部と、前記第1シール部よりも前記ギヤ室に近い位置で前記ロータシャフトの前記外周面と前記第2貫通孔の前記内周面に接する第2シール部を有する、請求項1または2に記載の駆動装置。
【請求項5】
前記ケースに、前記第1シール部と前記第2シール部の間の位置で前記第2貫通孔の前記内周面に開口するオイル排出路が設けられている請求項4に記載の駆動装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書に開示の技術は、駆動装置に関する。
【0002】
特許文献1には、車両の車輪を駆動する駆動装置が開示されている。この駆動装置は、電動機室に収容された電動機と、ギヤ室に収容されたギヤを有している。ギヤ室内のギヤには、減速機とハイポイドギヤが含まれる。ギヤ室は電動機室の隣に配置されている。電動機の駆動力がギヤを介して駆動シャフトに伝達されることで、車輪が回転する。また、この駆動装置は、電動機に電力を供給する端子台を有する。端子台を収容する端子台室は、電動機室を挟んでギヤ室の反対側に設けられている。すなわち、端子台室とギヤ室の間に電動機室が配置されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
駆動装置の全長を短くするために、端子台室を電動機室とギヤ室の間に設けることができる。本明細書では、電動機室とギヤ室の間に端子台室が設けられた駆動装置において、端子台の絶縁性を向上させる技術を提案する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本明細書が開示する駆動装置は、車両に搭載される。この駆動装置は、ケース、電動機、端子台、減速機及びハイポイドギヤを有している。前記ケースは、電動機室、端子台室、及び、ギヤ室を有する。前記電動機は、前記電動機室内に収容されている。前記端子台は、前記端子台室内に収容されており、前記電動機に電気的に接続されている。前記減速機は、前記ギヤ室内に配置されている。前記ハイポイドギヤは、前記ギヤ室内に配置されている。前記電動機室と前記端子台室の間の隔壁に第1貫通孔が設けられている。前記端子台室と前記ギヤ室の間の隔壁に第2貫通孔が設けられている。前記電動機が、前記電動機室から前記第1貫通孔、前記端子台室、及び、前記第2貫通孔を通過して前記ギヤ室まで伸びるロータシャフトを有している。前記ロータシャフトの回転が前記減速機と前記ハイポイドギヤを介して前記車両の車輪に伝えられるように構成されている。前記ロータシャフトと前記第2貫通孔の間の隙間がオイルシールによりシールされている。前記電動機室と前記端子台室に第1潤滑油が収容されている。前記ギヤ室に第2潤滑油が収容されている。
【0006】
なお、減速機とハイポイドギヤはどのような順序で配置されてもよい。例えば、ロータシャフトの回転が減速機、ハイポイドギヤ、車輪の順に伝えられてもよいし、ロータシャフトの回転がハイポイドギヤ、減速機、車輪の順に伝えられてもよい。
【0007】
この駆動装置では、端子台室とギヤ室の間がオイルシールによって分離されている。したがって、ギヤ室に、電動機室及び端子台室とは異なる潤滑油を収容することができる。このため、ギヤ室にはギヤの潤滑に適した第2潤滑油を使用でき、電動機室には電動機の潤滑に適した第1潤滑油を使用できる。また、端子台室にも第1潤滑油を収容するので、端子台の表面に第1潤滑油の油膜が形成される。これによって、端子台の絶縁性が向上され、端子台の小型化が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施例1の駆動装置の左右方向に沿う断面図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に、本明細書が開示する駆動装置の付加的な特徴を列記する。
【0010】
電動機の動作中に電動機室と端子台室の間で第1潤滑油が循環してもよい。
【0011】
この構成によれば、第1潤滑油によって電動機を効果的に冷却することができる。
【0012】
第1潤滑油の粘度が第2潤滑油の粘度よりも低くてもよい。
【0013】
この構成によれば、第2潤滑油の粘度が高いことで、ギヤの歯面における油膜切れが抑制される。また、第1潤滑油の粘度が低いことで、電動機のロータを低損失で回転させることができる。また、第1潤滑油の粘度が低いことで、端子台の表面に第1潤滑油の油膜が形成され易くなり、端子台の絶縁性を効果的に向上させることができる。
【0014】
オイルシールが、ロータシャフトの外周面と第2貫通孔の内周面に接する第1シール部と、第1シール部よりもギヤ室に近い位置でロータシャフトの外周面と第2貫通孔の内周面に接する第2シール部を有していてもよい。
【0015】
この構成によれば、オイルシールにおける潤滑油の漏れを効果的に抑制できる。
【0016】
ケースに、第1シール部と第2シール部の間の位置で第2貫通孔の内周面に開口するオイル排出路が設けられていてもよい。
【0017】
この構成によれば、オイルシールにおける潤滑油の漏れをより効果的に抑制できる。
【実施例0018】
図1に示す実施例1の駆動装置10は、電動車両に搭載されている。なお、
図1において矢印FRは車両前方向を示しており、矢印RHは車両右方向を示している。駆動装置10は、ケース12を有している。ケース12の内部に、左駆動系90と右駆動系91が設けられている。左駆動系90は、電動車両の左後輪92を駆動する。右駆動系91は、電動車両の右後輪93を駆動する。左駆動系90と右駆動系91は左右対称であるので、以下では左駆動系90について説明する。
【0019】
ケース12の内部には、左電動機室13、左端子台室14、左カウンタギヤ室15及び左ハイポイドギヤ室16が設けられている。左端子台室14は左電動機室13の後方に配置されている。左カウンタギヤ室15は左端子台室14の後方に配置されている。左ハイポイドギヤ室16は左カウンタギヤ室15の後方に配置されている。左電動機室13には電動機20が収容されている。左端子台室14には、端子台20eが収容されている。端子台20eは、電動機20に電力を供給する端子を備えている。左カウンタギヤ室15には、カウンタギヤを構成するギヤセットが収容されている。左ハイポイドギヤ室16には、ハイポイドギヤを構成するギヤセットが収容されている。電動機20、左カウンタギヤ室15内のギヤセット、及び、左ハイポイドギヤ室16内のギヤセット等によって、左駆動系90が構成されている。
【0020】
図2に示すように、電動機20は、ロータ20aとステータ20bを有している。ロータ20aは、ロータシャフト20cを有している。ロータシャフト20cは、シャフト20c-1とシャフト20c-2を有している。シャフト20c-1は、円筒形状を有している。シャフト20c-2は、円柱形状を有している。シャフト20c-2の一端がシャフト20c-1内に挿入されている。シャフト20c-2は、スプライン篏合によってシャフト20c-1に固定されている。ロータ20aは、ロータシャフト20cが電動車両の前後方向に沿って伸びる向きで左電動機室13内に収容されている。左電動機室13と左端子台室14の間の隔壁には貫通孔18が設けられている。左端子台室14と左カウンタギヤ室15の間の隔壁には貫通孔19が設けられている。ロータシャフト20cは、貫通孔18、左端子台室14及び貫通孔19を通って左電動機室13から左カウンタギヤ室15まで伸びている。より詳細には、シャフト20c-1が左電動機室13から左端子台室14まで伸びており、シャフト20c-2が左端子台室14から左カウンタギヤ室15まで伸びている。ロータ20aは、ケース12に設けられた軸受けによって回転可能に支持されている。シャフト20c-2の外周面と貫通孔19の内周面の間の隙間は、オイルシール25によってシールされている。ステータ20bは、ロータ20aの周囲に配置されている。ステータ20bは、端子台20eに電気的に接続されている。端子台20eを介してステータ20bに電流が供給されると、ロータ20aが回転する。
【0021】
左カウンタギヤ室15内には、アウトプットシャフト24が配置されている。アウトプットシャフト24は、ロータシャフト20cと平行に配置されている。より詳細には、アウトプットシャフト24の中心軸は、ロータシャフト20cの中心軸と平行である。アウトプットシャフト24は、ケース12に設けられた軸受けによって回転可能に指示されている。アウトプットシャフト24は、左カウンタギヤ室15と左ハイポイドギヤ室16の間の隔壁を貫通して左カウンタギヤ室15から左ハイポイドギヤ室16まで伸びている。アウトプットシャフト24は、ケース12に設けられた軸受けによって回転可能に指示されている。
【0022】
左カウンタギヤ室15内に設けられたギヤセットは、ギヤ22a、22bを有する。ギヤ22aは、円柱型の歯車であり、ロータシャフト20cに固定されている。ギヤ22bは、円柱型の歯車であり、アウトプットシャフト24に固定されている。ギヤ22aは、ギヤ22bと係合している。ギヤ22aとギヤ22bによってカウンタギヤ22が構成されている。
【0023】
ロータシャフト20cが回転すると、ギヤ22aが回転する。ギヤ22aが回転すると、ギヤ22aからギヤ22bに駆動力が伝わる。このため、ギヤ22bとアウトプットシャフト24が回転する。カウンタギヤ22のギヤ比は、ロータシャフト20cの回転速度よりもアウトプットシャフト24の回転速度が遅くなるように設定されている。このように、左カウンタギヤ室15内の駆動系によって減速機が構成されている。
【0024】
左ハイポイドギヤ室16内には、駆動シャフト27が配置されている。駆動シャフト27は、電動車両の左右方向に沿って伸びている。駆動シャフト27は、左ハイポイドギヤ室16からケース12の左側壁を貫通してケース12の外部まで伸びている。
図1に示すように、駆動シャフト27の左側の端部には、左後輪92が接続されている。駆動シャフト27は、ケース12に設けられた軸受けによって回転可能に指示されている。
【0025】
図2に示すように、左ハイポイドギヤ室16内に設けられたギヤセットは、ギヤ28a、28bを有する。ギヤ28aは、円錐台型の歯車であり、アウトプットシャフト24に固定されている。ギヤ28bは、円錐台型の歯車であり、駆動シャフト27に固定されている。ギヤ28aは、ギヤ28bと係合している。ギヤ28aとギヤ28bによってハイポイドギヤ28が構成されている。
【0026】
電動機20が駆動すると、ロータシャフト20cが回転する。上述したように、ロータシャフト20cが回転すると、アウトプットシャフト24が回転する。アウトプットシャフト24が回転すると、ギヤ28aが回転し、ギヤ28aからギヤ28bに駆動力が伝わる。このため、ギヤ28bと駆動シャフト27が回転する。駆動シャフト27が回転すると、左後輪92が回転する。このように、左駆動系90は、電動機20の駆動力によって左後輪92を回転させる。
【0027】
図2に示すように、駆動装置10は、オイル貯留槽46を有している。オイル貯留槽46は、ケース12の内部に設けられていてもよいし。ケース12の外部に設けられていてもよい。オイル貯留槽46には、第1潤滑油80が貯留されている。後に詳述するが、第1潤滑油80は左電動機室13と左端子台室14を循環する。
図3に示すように、左カウンタギヤ室15と左ハイポイドギヤ室16の底部には、第2潤滑油82が貯留されている。第1潤滑油80は第2潤滑油82とは異なる種類の潤滑油である。第1潤滑油80の粘度は、第2潤滑油82の粘度よりも低い。左カウンタギヤ室15と左ハイポイドギヤ室16は図示しない位置で繋がっている。したがって、左カウンタギヤ室15と左ハイポイドギヤ室16の間では、第2潤滑油82が流れることができる。左端子台室14と左カウンタギヤ室15の間は、貫通孔19を除いて、隔壁によって分離されている。また、貫通孔19はオイルシール25によってシールされている。オイルシール25によって、左端子台室14と左カウンタギヤ室15の間で潤滑油が漏れることが防止される。このように、左端子台室14と左カウンタギヤ室15は、潤滑油が混ざらないように分離されている。
【0028】
ギヤ28bの下部は、第2潤滑油82に浸漬されている。したがって、ギヤ28bが回転するときに、左カウンタギヤ室15内と左ハイポイドギヤ室16内に第2潤滑油82が散布される。これによって、ギヤ22a、22b及びギヤ28a、28bが第2潤滑油82によって潤滑される。各ギヤの歯面には高い圧力が加わる。本実施例では、第2潤滑油82の粘度が高いので、ギヤ22a、22b及びギヤ28a、28bの歯面での油膜切れが防止される。
【0029】
図2に示すように、駆動装置10は、オイル排出流路35及びオイル供給流路36を有している。また、左端子台室14の底部には、オイル排出口34が形成されている。オイル排出流路35の上流端は、オイル排出口34に接続されている。オイル排出流路35の下流端は、オイル貯留槽46に接続されている。オイル供給流路36の上流端は、オイル貯留槽46に接続されている。上述したように、シャフト20c-1は円筒形状を備えている。シャフト20c-1の中心孔によってシャフト流路38が構成されている。オイル供給流路36の下流端は、シャフト流路38の前端に接続されている。オイル供給流路36には、オイルポンプ30が設けられている。オイルポンプ30は、第1潤滑油80をオイル貯留槽46からシャフト流路38へ向かって送り出す。シャフト20c-1には、シャフト流路38からシャフト20c-1の外周面まで伸びる複数のオイル吐出口40が設けられている。ケース12には、左電動機室13と左端子台室14を接続するオイル流路48が設けられている。
【0030】
電動機20の動作中に、オイルポンプ30が動作する。オイルポンプ30が動作すると、オイル貯留槽46内に貯留されている第1潤滑油80がオイル供給流路36を介してシャフト20c-1内のシャフト流路38に供給される。第1潤滑油は、シャフト流路38内を後方に向かって流れる。シャフト流路38内を流れる第1潤滑油によって電動機20が冷却される。シャフト流路38内の第1潤滑油は、オイル吐出口40から左電動機室13内に吐出される。左電動機室13内に吐出された第1潤滑油によって電動機20が潤滑される。左電動機室13内に吐出された第1潤滑油は、オイル流路48を通って左端子台室14へ流れる。第1潤滑油によって、端子台20eが冷却される。左端子台室14内の第1潤滑油は、オイル排出口34とオイル排出流路35を通ってオイル貯留槽46へ流れる。以上に説明したように、オイルポンプ30が作動すると、左電動機室13と左端子台室14の間で第1潤滑油が循環する。第1潤滑油が循環するときに、端子台20eの表面に第1潤滑油が塗布される。このため、端子台20eの表面に第1潤滑油の油膜が形成される。端子台20eの表面が第1潤滑油の油膜によって覆われるので、端子台20eの絶縁性が向上する。特に、第1潤滑油の粘度が低いので、端子台20eの表面に第1潤滑油の油膜が形成され易い。したがって、端子台20eにおいて高い絶縁性を実現することができる。このため、端子台20eの各端子からケース12の間の絶縁距離を短くすることが可能となる。これにより、駆動装置10の小型化が実現される。
【0031】
以上に説明したように、実施例1の駆動装置10では、左端子台室14と左カウンタギヤ室15の間がオイルシール25により分離されており、分離された各室に異なる潤滑油が使用されている。左カウンタギヤ室15及び左ハイポイドギヤ室16に粘度が高い第2潤滑油が使用されることで、各ギヤの歯面における油膜切れが防止される。また、左電動機室13と左端子台室14に粘度が低い第1潤滑油が使用されることで、オイルポンプ30によって第1潤滑油を効率的に循環させることができ、電動機20と端子台20eを効率的に冷却できる。また、左電動機室13に粘度が低い第1潤滑油が使用されることで、ロータ20aを低損失で回転させることができる。また、左電動機室13と共通の第1潤滑油(すなわち、粘度が低い潤滑油)が左端子台室14に使用されることで、端子台20eの絶縁性を効果的に向上させることができる。
【0032】
図4は、オイルシール25とその周辺部の断面を示している。
図4に示すように、オイルシール25は、シール部25a、25bの2か所でオイルをシールするダブルリップ構造を有している。シール部25aは、ロータシャフト20cの外周面と貫通孔19の内周面に接している。シール部25bは、シール部25aから間隔を開けて左カウンタギヤ室15に近い位置に配置されている。シール部25bは、ロータシャフト20cの外周面と貫通孔19の内周面に接している。また、ケース12には、シール部25aとシール部25bの間の間隔部25c内において貫通孔19の内周面に開口するオイル排出路50が形成されている。オイル排出路50の他端には、オイル溜まり52が設けられている。オイル溜まり52には、ケース12の外部に繋がる排出口54が設けられている。排出口54は、キャップ56により閉じられている。左端子台室14からシール部25aを超えて間隔部25c内へ第1潤滑油が漏れる場合がある。また、左カウンタギヤ室15からシール部25bを超えて間隔部25c内へ第2潤滑油が漏れる場合がある。このように間隔部25c内へ漏れ出た潤滑油は、オイル排出路50からオイル溜まり52へ排出される。オイル溜まり52に溜まった潤滑油は、メンテナンス時に排出口54からケース12の外部へ排出される。この構成によれば、左端子台室14から左カウンタギヤ室15へ第1潤滑油が漏れ出ること、及び、左カウンタギヤ室15から左端子台室14へ第2潤滑油が漏れ出ることを抑制できる。
【0033】
ギヤの構成は、実施例1と異なっていてもよい。例えば、以下に説明する実施例2、3のようにギヤが構成されていてもよい。
【0034】
図5は、実施例2の駆動装置を示している。実施例2では、左カウンタギヤ室15内にカウンタシャフト100とカウンタギヤ110が収容されている。カウンタギヤ110は、ロータシャフト20cの回転をカウンタシャフト100へ伝達する。また、実施例2では、アウトプットシャフト24がロータシャフト20cと同軸に配置されている。カウンタギヤ22は、カウンタシャフト100の回転をアウトプットシャフト24へ伝達する。実施例2のその他の構成は実施例1と等しい。実施例2のように、駆動装置は複数のカウンタギヤを有していてもよい。
【0035】
図6は、実施例3の駆動装置を示している。実施例3では、ギヤ室内に中間シャフト130が配置されている。中間シャフト130は、車両の左右方向に沿って伸びている。ハイポイドギヤ28は、ロータシャフト20cと中間シャフト130の間に設けられている。ハイポイドギヤ28はロータシャフト20cの回転を中間シャフト130へ伝達する。カウンタギヤ22は、中間シャフト130と駆動シャフト27の間に設けられている。カウンタギヤ22は、中間シャフト130の回転を駆動シャフト27へ伝達する。実施例3のその他の構成は、実施例1と等しい。実施例3のように、ハイポイドギヤの後段にカウンタギヤが設けられていてもよい。
【0036】
以上、実施形態について詳細に説明したが、これらは例示にすぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例をさまざまに変形、変更したものが含まれる。本明細書または図面に説明した技術要素は、単独あるいは各種の組み合わせによって技術有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組み合わせに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数目的を同時に達成するものであり、そのうちの1つの目的を達成すること自体で技術有用性を持つものである。