(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024179080
(43)【公開日】2024-12-26
(54)【発明の名称】液化ガスの荷役方法および荷役装置
(51)【国際特許分類】
F17C 13/00 20060101AFI20241219BHJP
F17D 1/20 20060101ALI20241219BHJP
【FI】
F17C13/00 302F
F17D1/20
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023097604
(22)【出願日】2023-06-14
(71)【出願人】
【識別番号】000000974
【氏名又は名称】川崎重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100127797
【弁理士】
【氏名又は名称】平田 晴洋
(72)【発明者】
【氏名】山之内 耕一郎
(72)【発明者】
【氏名】山下 誠二
【テーマコード(参考)】
3E172
3J071
【Fターム(参考)】
3E172AA03
3E172AA06
3E172AB01
3E172BA06
3E172BB06
3E172BB12
3E172BB17
3E172BD01
3E172BD05
3E172EA03
3E172EA44
3E172EA50
3E172EB03
3E172EB14
3J071AA23
3J071BB14
3J071CC03
3J071CC12
3J071CC25
3J071DD27
(57)【要約】
【課題】液化ガス基地と輸送船との間の荷役の際に、液化ガスを移送する配管のパージ作業の時間短縮を図る。
【解決手段】液化ガス基地1と液化ガス輸送船2との間で液化ガスを荷役する。液化ガス基地1から延び出す配管であって第1弁51を有する第1配管3の第1フランジ3Fと、液化ガス輸送船2から延び出す配管であって第2弁52を有する第2配管4の第2フランジ4Fとを、第1弁51および第2弁52を閉止した状態で接続することで、第1弁51と第2弁52との間に縁切りされた配管接続部PJを形成する。続いて、配管接続部PJを真空ポンプ13で真空引きする。その後、配管接続部PJに窒素ガスタンク12から窒素ガスを充填する。しかる後、第1弁51および第2弁52を開放して、液化ガス基地1と液化ガス輸送船2との間で液化ガスを移送する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液化ガス基地と輸送船との間で液化ガスを荷役する方法であって、
前記液化ガス基地から延び出す配管であって第1弁を有する第1配管の先端と、前記輸送船から延び出す配管であって第2弁を有する第2配管の先端とを、前記第1弁および前記第2弁を閉止した状態で接続することで、前記第1弁と前記第2弁との間に縁切りされた配管接続部を形成し、
前記配管接続部を真空引きし、
前記配管接続部に置換ガスを充填し、
前記第1弁および前記第2弁を開放して、前記液化ガス基地と前記輸送船との間で液化ガスを移送する、液化ガスの荷役方法。
【請求項2】
請求項1に記載の液化ガスの荷役方法において、
前記液化ガスが液化水素である、液化ガスの荷役方法。
【請求項3】
請求項2に記載の液化ガスの荷役方法において、
前記配管接続部への置換ガスの充填は、真空引きされた前記配管接続部に不活性ガスを充填する第1充填と、前記配管接続部に充填された前記不活性ガスを水素ガスに置換する第2充填とを含む、液化ガスの荷役方法。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載の液化ガスの荷役方法において、
前記液化ガス基地と前記輸送船との間での液化ガスの移送後、当該液化ガスのボイルオフガスを前記配管接続部へ供給し、当該配管接続部に残存する液化ガスを、前記第1弁を開放し前記第1配管を通して前記液化ガス基地側へ押し出す、若しくは、前記第2弁を開放し前記第2配管を通して前記輸送船側へ押し出す、液化ガスの荷役方法。
【請求項5】
請求項4に記載の液化ガスの荷役方法において、
前記ボイルオフガスによる前記押し出しの後、前記第1弁および前記第2弁を閉止して、前記配管接続部に前記ボイルオフガスを封入し、
前記配管接続部を真空引きして、前記ボイルオフガスを前記配管接続部から排出する、液化ガスの荷役方法。
【請求項6】
液化ガス基地と輸送船との間での液化ガスの荷役を行う荷役装置であって、
前記液化ガス基地から延び出す配管であって第1弁を有し、前記輸送船から延び出す配管であって第2弁を有する第2配管と接続される第1配管と、
前記第1弁および前記第2弁が閉止され且つ前記第1配管の先端と前記第2配管の先端とが接続された状態において、前記第1弁と前記第2弁との間に形成される縁切りされた配管接続部を真空引きすることが可能な真空ポンプと、
前記配管接続部に置換ガスを供給可能な置換ガス供給装置と、
を備える液化ガスの荷役装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、液化ガス基地と液化ガス輸送船との間で液化ガスを荷役する荷役方法および荷役装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液化ガス基地の貯蔵タンクと液化ガス輸送船との間では、液化ガスの移送を含む荷役が行われる。荷役の際、液化ガス基地から延び出す配管と輸送船から延び出す配管とが接続されて荷役配管が形成され、当該荷役配管を通して液化ガスが移送される。通常、前記接続の作業は屋外で行われるので、荷役配管内には空気が存在している。荷役される可燃性の液化ガスと空気中の酸素との接触を防止するため、液化ガスの荷役の前に、前記荷役配管内に存在する空気を排除するパージ作業が必要となる。
【0003】
前記パージ作業の具体的手段として、プレッシャースイングが知られている(特許文献1)。プレッシャースイングでは、パージガスを前記荷役配管に供給する加圧作業と、前記荷役配管内のガスを排出する落圧作業とが繰り返される。液化水素の荷役配管の場合、先ず荷役配管内の空気を窒素ガスに置換し、次いで窒素ガスを水素ガスに置換するパージ作業を、各々プレッシャースイングにて行うことになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、プレッシャースイングでは、加圧作業と落圧作業とを相当回数繰り返さないと、移送配管内のガスを問題のないレベルまで排除できない。液化水素の荷役配管の場合、上述の窒素ガス置換および水素ガス置換の何れにおいても、加圧・落圧作業およびガス濃度測定作業を数十回程度繰り返さねばならず、長い作業時間を要するという問題がある。
【0006】
本開示の目的は、液化ガス基地と輸送船との間の荷役の際に、液化ガスを移送する配管のパージ作業の時間短縮を図れる荷役方法および荷役装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一局面に係る液化ガスの荷役方法は、液化ガス基地と輸送船との間で液化ガスを荷役する方法であって、前記液化ガス基地から延び出す配管であって第1弁を有する第1配管の先端と、前記輸送船から延び出す配管であって第2弁を有する第2配管の先端とを、前記第1弁および前記第2弁を閉止した状態で接続することで、前記第1弁と前記第2弁との間に縁切りされた配管接続部を形成し、前記配管接続部を真空引きし、前記配管接続部に置換ガスを充填し、前記第1弁および前記第2弁を開放して、前記液化ガス基地と前記輸送船との間で液化ガスを移送する。
【0008】
本開示の他の局面に係る液化ガスの荷役装置は、液化ガス基地と輸送船との間での液化ガスの荷役を行う荷役装置であって、前記液化ガス基地から延び出す配管であって第1弁を有し、前記輸送船から延び出す配管であって第2弁を有する第2配管と接続される第1配管と、前記第1弁および前記第2弁が閉止され且つ前記第1配管の先端と前記第2配管の先端とが接続された状態において、前記第1弁と前記第2弁との間に形成される縁切りされた配管接続部を真空引きすることが可能な真空ポンプと、前記配管接続部に置換ガスを供給可能な置換ガス供給装置と、を備える。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、液化ガス基地と輸送船との間の荷役の際に、液化ガスを移送する配管のパージ作業の時間短縮を図れる荷役方法および荷役装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、本開示の液化ガスの荷役方法が適用される荷役装置の第1実施形態に係る構成を概略的に示す図である。
【
図2】
図2は、第1実施形態の荷役方法における、配管接続部の形成工程、配管接続部の真空引き工程および置換ガス充填工程を示す図である。
【
図3】
図3は、第1実施形態の荷役方法における、配管接続部を通した液化ガスの移送工程を示す図である。
【
図4】
図4は、第1実施形態の荷役方法における、配管接続部からの液化ガスの押し出し工程を示す図である。
【
図5】
図5は、第1実施形態の荷役方法における、配管接続部閉鎖工程および配管接続部の解除工程を示す図である。
【
図6】
図6は、本開示の液化ガスの荷役方法が適用される荷役装置の第2実施形態に係る構成を概略的に示す図である。
【
図7】
図7は、第2実施形態の荷役方法における、配管接続部の形成工程および配管接続部の真空引き工程を示す図である。
【
図8】
図8は、第2実施形態の荷役方法における、配管接続部への置換ガスの第1充填工程および第2充填工程を示す図である。
【
図9】
図9は、第2実施形態の荷役方法における、配管接続部を通した液化ガスの移送工程を示す図である。
【
図10】
図10は、第2実施形態の荷役方法における、配管接続部からの液化ガスの押し出し工程を示す図である。
【
図11】
図11は、第2実施形態の荷役方法における、液化水素移送後の配管接続部の真空引き工程および置換ガス充填工程を示す図である。
【
図12】
図12は、比較例の荷役方法を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して、本開示に係る液化ガスの荷役方法および荷役装置の実施形態を詳細に説明する。本開示の荷役方法および荷役装置は、液化ガス基地と液化ガス輸送船との間での液化ガスの荷役を対象とする。以下では、荷役配管に導入する不活性ガスからなる置換ガスを、そのまま液化ガス基地または液化ガス輸送船へ送り出すことが可能な液化ガスを荷役対象とする第1実施形態と、前記置換ガスをそのまま送り出すことができない液化ガスを荷役対象とする第2実施形態とを示す。第1実施形態の液化ガスは、例えば液化天然ガス(LNG)である。第2実施形態の液化ガスは、例えば液化水素(LH2)である。
【0012】
[第1実施形態]
<荷役装置の構成>
図1は、本開示の第1実施形態に係る液化ガスの荷役装置LFの構成を概略的に示す図である。荷役装置LFは、液化ガス基地1と液化ガス輸送船2との間で液化ガスの荷役を行う装置である。液化ガス基地1は、荷役設備を備えた液化ガスの荷役ターミナルであり、液化ガスの生産設備等から当該液化ガスの積荷を行うための陸地設備、あるいは液化ガスの揚荷を行うための陸地設備である。液化ガス輸送船2は、液化ガス基地1から積荷された液化ガス、もしくは液化ガス基地1へ揚荷する液化ガスを海上輸送する、荷役設備を備えた船舶である。
【0013】
液化ガス基地1には、液化ガス貯蔵タンク11、窒素ガスタンク12(置換ガス供給装置)、真空ポンプ13、ベントスタック14、第1移送ポンプ15、圧力計16、第1配管3および仮設配管32が配置されている。液化ガス輸送船2は、輸送船タンク21、第2移送ポンプ22および第2配管4を備えている。第1配管3および第2配管4が、液化ガスの荷役時において接続され、液化ガスを移送する荷役配管LPとなる。
【0014】
液化ガス貯蔵タンク11は、陸上に設置され、低温の液化ガスを貯留することが可能なタンクである。第1実施形態では、液化ガス貯蔵タンク11に貯留される液化ガスが、液化天然ガスであるとする。液化ガス貯蔵タンク11としては、保冷層を備えた多重殻構造の平底円筒タンク、球形タンクを例示できる。
【0015】
液化ガス貯蔵タンク11には、第1配管3の基端が接続されている。第1配管3は、陸側の荷役配管LPを構成する配管であって、本実施形態における液化ガス基地1から延び出す配管である。液化ガス基地1から延び出した第1配管3の先端には、第1フランジ3Fが取り付けられている。第1配管3の中間には、スイベルジョイント31Jを備えたローディングアーム31が介在されている。ローディングアーム31により、第1フランジ3Fの位置が自在に調整可能とされている。
【0016】
輸送船タンク21は、液化ガス輸送船2に装備され、低温の液化ガス、本実施形態では液化天然ガスを貯留可能なタンクである。輸送船タンク21には、第2配管4の基端が接続されている。第2配管4は、船側の荷役配管LPを構成する配管であって、本実施形態における液化ガス輸送船2から延び出す配管である。液化ガス輸送船2から延び出した第2配管4の延び出し先端には、第2フランジ4Fが取り付けられている。荷役時に、第1フランジ3Fと第2フランジ4Fとがフランジ接続され、荷役配管LPが形成される。
【0017】
窒素ガスタンク12は、置換ガスとしての窒素ガスを貯留するタンクである。置換ガスは、荷役配管LPの管内、実際には
図2以下に示す縁切りされた配管接続部PJの管内に導入されるガスである。窒素ガス以外の不活性ガスを前記置換ガスとして用いても良い。真空ポンプ13は、配管接続部PJを真空引きすることが可能なポンプである。真空ポンプ13としては、例えば油回転真空ポンプ、水封真空ポンプ、ドライ真空ポンプなどを用いることができる。ベントスタック14は、配管接続部PJからパージされたガスを希釈ないしは無害化して大気中へ放出させる設備である。
【0018】
第1移送ポンプ15は、第1配管3に組み入れられ、液化ガスを送り出すことが可能なポンプである。液化ガス基地1の液化ガス貯蔵タンク11から液化ガス輸送船2の輸送船タンク21へ液化ガスを移送する際に、第1移送ポンプ15が稼働する。第1配管3における第1移送ポンプ15よりも先端側、つまり第1フランジ3Fに近い側の位置には、当該第1配管3の開閉を行う第1弁51が組み入れられている。
【0019】
第2移送ポンプ22は、第2配管4に組み入れられ、液化ガスを送り出すことが可能なポンプである。輸送船タンク21から液化ガス貯蔵タンク11へ液化ガスを移送する際に、第2移送ポンプ22が稼働する。第2配管4における第2移送ポンプ22よりも先端側、つまり第2フランジ4Fに近い側の位置には、当該第2配管4の開閉を行う第2弁52が組み入れられている。
【0020】
第1配管3には仮設配管32が取り付けられている。仮設配管32は、配管接続部PJを真空引きする、もしくは配管接続部PJに置換ガスを導入するための配管である。第1配管3の第1弁51よりも先端側の位置には、第1分岐部3J1が設けられている。仮設配管32の基端は、第1分岐部3J1において第1配管3に接続されている。仮設配管32の他端側には第2分岐部3J2が設けられている。仮設配管32は、第2分岐部3J2から第1分岐管33と第2分岐管34とに分岐している。
【0021】
第1分岐管33の終端は、窒素ガスタンク12に接続されている。第1分岐管33には、当該第1分岐管33の開閉を行う第3弁53が組み入れられている。第2分岐管34の中間部には、真空ポンプ13が組み入れられている。第2分岐管34の終端は、ベントスタック14に接続されている。第2分岐部3J2と真空ポンプ13との間において第2分岐管34には、当該第2分岐管34の開閉を行う第4弁54が組み入れられている。
【0022】
圧力計16は、配管の管内圧力を測定可能な計測器である。
図1では、圧力計16が、第2分岐管34の第4弁54と第2分岐部3J2との間に配設されている例が示されている。圧力計16は、第1配管3と第2配管4とがフランジ接続され、且つ、4つの弁;第1弁51、第2弁52、第3弁53および第4弁54が閉止されることにより形成された、仮設配管32および荷役配管LPに跨がる閉鎖空間の圧力を計測する。
【0023】
<第1実施形態の荷役方法>
続いて、
図1の構成を備えた液化ガス荷役装置LFによる液化ガスの荷役方法を、
図2~
図5を参照して説明する。第1実施形態に係る荷役方法は、次の工程1~7を含む。
・工程1/配管接続部の形成;第1配管3と第2配管4とを接続するとともに、第1弁51~第4弁54を閉止して縁切りされた配管接続部PJを形成する(
図2)。
・工程2/配管接続部の真空引き;縁切りされた配管接続部PJの管内を真空ポンプ13で真空引きする(
図2)。
・工程3/配管接続部への置換ガス充填;真空引きされた配管接続部PJに、窒素ガスタンク12から窒素ガスを導入する(
図2)。
・工程4/液化ガスの移送;荷役配管LPを用いて、液化ガス貯蔵タンク11と輸送船タンク21との間で液化ガスを移送する(
図3)。
・工程5/液化ガスの押し出し;配管接続部PJに残存する液化ガスを、窒素ガスタンク12から供給する窒素ガスで押し出す(
図4)。
・工程6/配管接続部の閉鎖;第1弁51~第4弁54を閉止して、配管接続部PJを縁切りする(
図5)。
・工程7/配管接続部の解除;第1配管3と第2配管4との接続を解除する(
図5)。
以下、上記工程1~7の各々を詳述する。
【0024】
<工程1/配管接続部の形成>
液化ガス荷役装置LFにおいて液化ガスの荷役が始まる前は、
図1に示すように、第1配管3の先端の第1フランジ3Fと第2配管4の先端の第2フランジ4Fとは非接続の状態であり、且つ、第1弁51~第4弁54は閉止された状態である。真空ポンプ13は非稼働の状態であり、圧力計16の計測値は大気圧となる。工程1では、液化ガス輸送船2が液化ガス基地1に着岸した後、
図2に示すように、第1フランジ3Fと第2フランジ4Fとが接続される。
【0025】
当該接続により、液化ガス基地1の液化ガス貯蔵タンク11と液化ガス輸送船2の輸送船タンク21とを繋ぐ、第1配管3および第2配管4で構成される荷役配管LPが形成される。さらに、荷役配管LPにおける第1弁51と第2弁52との間には、配管接続部PJが形成される。配管接続部PJは、第1弁51および第2弁52が閉止されることにより、第1配管3の第1弁51よりも液化ガス貯蔵タンク11寄りの領域、並びに第2配管4の第2弁52よりも輸送船タンク21寄りの領域と遮断された、縁切り区間となる。配管接続部PJに繋がる仮設配管32もまた、第3弁53および第4弁54の閉止によって縁切りされている。つまり、第1弁51~第4弁54で挟まれた配管接続部PJおよび仮設配管32の内部空間が、閉鎖空間CSとなっている。現状では、閉鎖空間CSに空気が閉じ込められている状態である。
【0026】
<工程2/配管接続部の真空引き>
工程2では、第1弁51~第4弁54のうち、第4弁54だけが開放される。続いて、真空ポンプ13が作動状態とされる。真空ポンプ13の作動により、
図2の矢印A1で示すように、閉鎖空間CSの空気がベントスタック14を通して排気される。排気されるのは空気であるので、ベントスタック14は特に処理を行わない。
【0027】
真空ポンプ13による排気は、圧力計16をモニターしながら行われる。圧力計16にて所定の真空度が確認されたら、第4弁54を閉止するとともに、真空ポンプ13を停止させる。工程2の実施により、縁切りされた配管接続部PJ内に存在していた空気は、実質的に除去されることとなる。つまり、配管接続部PJのパージを、工程2の真空引きにより一気に達成できる。従って、パージ作業の大幅な時間短縮を図ることができる。
【0028】
<工程3/配管接続部への置換ガス充填>
工程3では、第1弁51~第4弁54のうち、第3弁53だけが開放される。閉鎖空間CSは所定の真空度まで減圧されているので、第3弁53が開放されると圧力差により、矢印A2で示すように、窒素ガスタンク12の窒素ガスが閉鎖空間CSの配管内へ流入する。圧力計16にて所定の圧力、例えば大気圧が確認されたならば、第3弁53が閉止される。工程3の実施により、配管接続部PJを含む閉鎖空間CSには窒素ガスが充填された状態となる。真空引きされた配管接続部PJへいきなり液化ガスを流すと、液化ガスが圧力変動で急激に気化することがある。液化ガスを流す前に、配管接続部PJに置換ガスを充填することで、前記気化の不具合を抑制できる。
【0029】
<工程4/液化ガスの移送>
工程4では、
図3に示すように、第1弁51および第2弁52が開とされ、第3弁53および第4弁54が閉とされる。すなわち、液化ガス貯蔵タンク11と輸送船タンク21とが、荷役配管LPで連通された状態とされる。そして、液化ガス貯蔵タンク11と輸送船タンク21との間で、液化ガスの移送が行われる。
【0030】
図3の矢印F1で示すように、液化ガス基地1から液化ガス輸送船2への液化ガスの積荷が行われる場合、基地側の第1移送ポンプ15が作動される。第1移送ポンプ15の作動により、液化ガス貯蔵タンク11に貯蔵されている液化ガスが、荷役配管LPを通して輸送船タンク21へ送り出される。逆に、矢印F2で示すように、液化ガス輸送船2から液化ガス基地1への液化ガスの揚荷が行われる場合、船側の第2移送ポンプ22が作動される。第2移送ポンプ22の作動により、輸送船タンク21に貯蔵されている液化ガスが、荷役配管LPを通して液化ガス貯蔵タンク11へ送り出される。
【0031】
<工程5/液化ガスの押し出し>
工程5は、配管接続部PJに残存する液化ガスを、液化ガス貯蔵タンク11または輸送船タンク21へ押し出す工程である。工程4が積荷の液化ガスの移送であった場合、第1弁51が閉止される。一方、工程4が揚荷の液化ガスの移送であった場合、第2弁52が閉止される。
図4は、積荷後の工程5の実施状況を示している。押し出し用のガスとして、窒素ガスタンク12の窒素ガスが利用される。このため、第3弁53も開放される。
【0032】
荷役配管LPを用いた液化ガスの移送後、当該荷役配管LPには、液化ガス貯蔵タンク11もしくは輸送船タンク21へ送り出しきれない液化ガスがどうしても残存する。液化ガスが残存した状態で配管接続部PJを解除することは妥当ではない。そこで、タンク11、12に混入しても差し支えないガスを押し出しガスとして用い、荷役配管LPに残存する液化ガスをタンク11、12へ送り出す。第1実施形態では、液化ガスとして液化天然ガスを想定している。窒素ガスは、液化天然ガスの冷熱では固化しない。従って、工程3の置換ガス充填で用いた窒素ガスを、前記押し出しガスとして用い得る。
【0033】
図4に矢印A3で示すように、第2弁52および第3弁53が開とされ、窒素ガスタンク12の窒素ガスが、仮設配管32を通して配管接続部PJへ供給される。供給された窒素ガスに押されて、配管接続部PJに残存している液化ガスは輸送船タンク21へ送られる。揚荷後の工程5では、第1弁51および第3弁53が開とされ、配管接続部PJに残存している液化ガスが液化ガス貯蔵タンク11へ送られる。
【0034】
<工程6/配管接続部の閉鎖>
工程6では、第1弁51~第4弁54の全てを閉止することで、配管接続部PJが再び縁切り状態とされる。つまり、配管接続部PJおよび仮設配管32が閉鎖空間とされる。この閉鎖空間には、先の工程5で押し出すガスとして用いた窒素ガスが存在している。
【0035】
<工程7/配管接続部の解除>
図6に示すように、工程7では、第1配管3の第1フランジ3Fと、第2配管4の第2フランジ4Fとのフランジ結合が取り外され、配管接続部PJが解除される。前記閉鎖空間の窒素ガスは、配管接続部PJの解除により大気中へ放散される。これにより、液化ガス輸送船2は離岸が可能となる。以上で、液化ガスの荷役は完了する。
【0036】
<比較例および第1実施形態の利点>
以上説明した第1実施形態の利点を、
図12に示す比較例との比較において説明する。
図12は、プレッシャースイングを使用する、比較例の液化ガス荷役装置LF0による荷役方法を説明するための図である。
図2と同一部分には同一符号を付しており、ここでは説明を省く。配管接続部PJに対して仮設配管320の一端が接続されている。仮設配管320の他端からは、窒素ガスタンク120に接続された第1分岐管330と、ベントスタック140に接続された第2分岐管340とが分岐している。第1分岐管330には第3弁53Aが、第2分岐管340には第4弁54Aが、各々配管の開閉用に組み込まれている。
【0037】
プレッシャースイングによるパージでは、配管接続部PJへ置換ガスを充填する加圧と、配管接続部PJに充填された置換ガスを放散する落圧とが繰り返される。「加圧」では、荷役配管LPの第1弁51および第2弁52と、第4弁54Aとが閉止され、第3弁53Aが開放される。この状態で、第1分岐管330に配置された図略のポンプの作動により、窒素ガスタンク120から窒素ガスが配管接続部PJへ圧入される。配管接続部PJが所定の圧力となったら、第4弁54Aが開放される一方、第3弁53Aが閉止され、「落圧」が行われる。第4弁54Aの開放により、配管接続部PJに圧入された窒素ガスは、ベントスタック140を通して排気される。
【0038】
プレッシャースイングでは、窒素ガスの自己拡散によって徐々に配管接続部PJ内のガス置換が行われるため、配管接続部PJの酸素濃度を測定しながら、上記の「加圧」と「落圧」とを繰り返し実行する必要がある。すなわち、可燃性の液化ガスに対する酸素濃度が、問題とならないレベルまで低下したことが確認されるまで、「加圧」および「落圧」のセットを繰り返す必要がある。このため、配管接続部PJのパージには、前記セットの繰り返しに伴う非常に長い作業時間を必要とする。さらに、多量の窒素ガスを必要とするという問題もある。
【0039】
これに対し、第1実施形態の荷役方法によれば、縁切りされた配管接続部PJを真空引きすることで、当該配管接続部PJ内に存在する空気を一気に除去することができる。従って、プレッシャースイングを採用する場合に比べて、液化ガス基地1と液化ガス輸送船2との間での液化ガスの移送前に必要な、配管接続部PJのパージ作業の時間短縮を図ることが可能となる。また、配管接続部PJ内が一気にガス抜きされるので、プレッシャースイングでは必要な酸素濃度測定作業も省ける。さらに、パージ作業において、窒素ガス等の不活性ガスの使用量を大幅に削減できる利点もある。
【0040】
[第2実施形態]
<荷役装置の構成>
図6は、第2実施形態に係る液化ガスの荷役装置LFAの構成を概略的に示す図である。荷役装置LFAは、液化水素基地1Aと液化水素輸送船2Aとの間で液化水素の荷役を行う装置である。水素は、液相の状態では-253℃の極低温であり、置換ガスとして用いる窒素ガスを固化させる。液化水素を荷役する第2実施形態では、窒素ガスの固化を考慮した荷役作業が必要となる。
図6において、
図1と同一構成の箇所には同一符号を付しており、ここでは説明を省略ないしは簡略化する。
【0041】
液化水素基地1Aは、荷役設備を備えた液化水素の荷役ターミナルであり、液化水素の積荷を行うための陸地設備、あるいは液化水素の揚荷を行うための陸地設備である。液化水素輸送船2Aは、液化水素基地1Aから積荷された液化水素、もしくは液化水素基地1Aへ揚荷する液化水素を海上輸送する、荷役設備を備えた船舶である。
【0042】
液化水素基地1Aには、液化水素貯蔵タンク11A、窒素ガスタンク12(置換ガス供給装置)、真空ポンプ13、ベントスタック14、第1移送ポンプ15、圧力計16、BOGタンク17(置換ガス供給装置)、第1配管3および仮設配管32が配置されている。液化水素貯蔵タンク11Aは、陸上に設置され、液化水素を貯留することが可能なタンクである。BOGタンク17は、液化水素貯蔵タンク11Aや液化水素基地1A内の設備で発生した液化水素のボイルオフガスを貯留するタンクである。仮設配管32は、第1分岐管33および第2分岐管34に加え、第2分岐部3J2とBOGタンク17とを繋ぐ第3分岐管35をさらに有する。第3分岐管35には、当該第3分岐管35を開閉する第5弁55が組み入れられている。その余の構成は、
図1に示した第1実施形態と同様である。
【0043】
液化水素輸送船2Aは、輸送船タンク21、第2移送ポンプ22および第2配管4を備えている。第2配管4には第2弁52が組み入れられている。輸送船タンク21の貯蔵対象が液化水素である他は、液化水素輸送船2Aの構成は先の液化ガス輸送船2と同様である。
【0044】
<第2実施形態の荷役方法>
続いて、
図6の構成を備えた液化水素の荷役装置LFAによる液化ガスの荷役方法を、
図7~
図11を参照して説明する。第2実施形態に係る荷役方法は、次の工程11~18を含む。
・工程11/配管接続部の形成;第1配管3と第2配管4とを接続するとともに、第1弁51~第5弁55を閉止して縁切りされた配管接続部PJを形成する(
図7)。
・工程12/配管接続部の真空引き;縁切りされた配管接続部PJの管内を真空ポンプ13で真空引きする(
図7)。
・工程13/ボイルオフガスの充填;BOGタンク17から液化水素のボイルオフガスを導入する(
図8)。
・工程14/液化水素の移送;荷役配管LPを用いて、液化水素貯蔵タンク11Aと輸送船タンク21との間で液化水素を移送する(
図9)。
・工程15/液化水素の押し出し;配管接続部PJに残存する液化水素を、BOGタンク17から供給するボイルオフガスで押し出す(
図10)。
・工程16/配管接続部の真空引き;配管接続部PJを縁切りして真空ポンプ13で真空引きし、配管接続部PJのボイルオフガスを排出する(
図11)。
・工程17/真空解除用のガス導入;配管接続部PJに窒素ガスタンク12から窒素ガスを供給し、配管接続部PJを大気圧に戻す(
図11)。
・工程18/配管接続部の解除;第1配管3と第2配管4との接続を解除する(
図11)。
以下、上記工程11~18の各々を詳述する。
【0045】
<工程11/配管接続部の形成>
液化水素荷役装置LFAにおいて液化水素の荷役が始まる前は、
図6に示すように、第1配管3の第1フランジ3Fと第2配管4の第2フランジ4Fとは非接続の状態であり、且つ、第1弁51~第5弁55は閉止された状態である。真空ポンプ13は非稼働の状態であり、圧力計16の計測値は大気圧となる。工程11では、
図7に示すように、第1フランジ3Fと第2フランジ4Fとが接続される。
【0046】
当該接続により、液化水素貯蔵タンク11Aと輸送船タンク21とを繋ぐ荷役配管LPが形成される。また、荷役配管LPにおける第1弁51と第2弁52との間には、配管接続部PJが形成される。配管接続部PJは、第1弁51および第2弁52が閉止されることにより縁切り区間となる。配管接続部PJに繋がる仮設配管32もまた、第3弁53、第4弁54および第5弁55の閉止によって縁切りされている。つまり、第1弁51~第5弁55で挟まれた配管接続部PJおよび仮設配管32の内部空間が、閉鎖空間CSとなっている。現状では、閉鎖空間CSに空気が閉じ込められている状態である。
【0047】
<工程12/配管接続部の真空引き>
工程2では、第1弁51~第5弁55のうち、第4弁54だけが開放される。続いて、真空ポンプ13が作動状態とされる。真空ポンプ13の作動により、
図7の矢印A11で示すように、閉鎖空間CSの空気がベントスタック14を通して排気される。真空ポンプ13による排気は、圧力計16をモニターしながら行われる。圧力計16にて所定の真空度が確認されたら、第4弁54を閉止するとともに、真空ポンプ13を停止させる。工程12の真空引きにより、配管接続部PJの空気抜きが一気に達成される。
【0048】
<工程13/ボイルオフガスの充填>
図8は、工程13の実施状況を示す図である。工程13では、配管接続部PJへBOGタンク17から液化水素のボイルオフガスを導入する。先の工程12で、既に閉鎖空間CSから空気が全て排除されているため、当該工程13で可燃性のボイルオフガスを閉鎖空間CS内に導入しても問題ない。
【0049】
配管接続部PJにBOGタンク17から水素ガスを導入するために、第1弁51~第5弁55のうち、第5弁55だけが開放される。第5弁55の開放により、矢印A12で示すように、真空引きされた閉鎖空間CSにBOGタンク17からボイルオフガス、つまり水素ガスが流入する。圧力計16にて所定の圧力が確認されたならば、第5弁55が閉止される。工程13の実施により、配管接続部PJを含む閉鎖空間CSには水素ガスが充填された状態となる。
【0050】
もし工程12の真空引きせずにガス置換を行うとなると、液化水素の荷役ではまず大気から窒素ガスに、更に窒素ガスからボイルオフガスに置換するという、配管接続部PJの二段階パージが必要となる。これらのパージ作業をプレッシャースイングで遂行した場合、液化天然ガスの荷役に比べてより時間と手間を要する。従って、配管接続部PJを真空ポンプ13で一気にガス抜きするという、本開示に係る手法を導入することによる時間短縮効果は顕著となる。
【0051】
<工程14/液化水素の移送>
工程14では、
図9に示すように、第1弁51および第2弁52が開とされ、第3弁53~第5弁55が閉とされる。すなわち、液化水素貯蔵タンク11Aと輸送船タンク21とが、荷役配管LPで連通された状態とされ、液化水素の移送が行われる。
【0052】
図9の矢印F1で示すように、液化水素基地1Aから液化水素輸送船2Aへの液化水素の積荷が行われる場合、基地側の第1移送ポンプ15が作動される。第1移送ポンプ15の作動により、液化水素貯蔵タンク11Aに貯蔵されている液化水素が、荷役配管LPを通して輸送船タンク21へ送り出される。逆に、矢印F2で示すように、液化水素輸送船2Aから液化水素基地1Aへの液化水素の揚荷が行われる場合、船側の第2移送ポンプ22が作動される。第2移送ポンプ22の作動により、輸送船タンク21に貯蔵されている液化水素が、荷役配管LPを通して液化水素貯蔵タンク11Aへ送り出される。
【0053】
<工程15/液化水素の押し出し>
第1実施形態の工程5では、配管接続部PJに残存する液化ガスの押し出しガスとして、窒素ガスタンク12の窒素ガスを利用した。しかし、液化水素の押し出しの場合、窒素ガスは液化水素の冷熱で固化するので押し出しガスとしては使えない。そこで、工程15では、液化水素の冷熱で固化することのない、液化水素のボイルオフガスを押し出しガスとして用いる。すなわち、BOGタンク17に貯留されている液化水素のボイルオフガスである水素ガスを用い、配管接続部PJに残存する液化水素を押し出す。
【0054】
工程14が積荷の液化水素の移送であった場合、第1弁51が閉止される。一方、工程14が揚荷の液化ガスの移送であった場合、第2弁52が閉止される。
図10は、積荷後の工程15を示している。押し出し用のガスとして、液化水素温度で固化しないBOGタンク17のボイルオフガスが利用される。第3弁55を開放することで、BOGタンク17のボイルオフガスが、仮設配管32を通して配管接続部PJへ供給される。矢印A13で示すように、供給されたボイルオフガスに押されて、配管接続部PJに残存している液化水素は輸送船タンク21へ送られる。揚荷後の工程15の場合には、第1弁51および第5弁55が開とされ、配管接続部PJに残存している液化水素が液化水素貯蔵タンク11Aへ押し出される。液化水素の押し出し完了後、第1弁51~第5弁55は全閉とされる。閉鎖空間CSには、ボイルオフガスが封入された状態となる。
【0055】
<工程16/配管接続部の真空引き>
図11は、工程16~18の実行状況を示す図である。工程16では、ボイルオフガスを配管接続部PJから排除するために、縁切り状態にある配管接続部PJを真空ポンプ13で真空引きする。この工程は、配管接続部PJの解体時に、ボイルオフガスと空気中の酸素とが直接接触することを防止する意味を持つ。第1弁51~第5弁55のうち、第4弁54だけが開放され、真空ポンプ13が作動状態とされる。真空ポンプ13の作動により、
図11の矢印A14で示すように、閉鎖空間CSの空気がベントスタック14を通して排気される。ベントスタック14は、ボイルオフガスを無害化処理して大気中へ放散する。圧力計16にて所定の真空度が確認されたら、第4弁54を閉止するとともに、真空ポンプ13を停止させる。
【0056】
<工程17/真空解除用のガス導入>
工程17は、先の工程16で真空引きされた状態の閉鎖空間CSを大気圧に戻すための工程である。工程17では、第3弁53のみを開放し、矢印A15で示すように、窒素ガスタンク12の窒素ガスが、閉鎖空間CSの配管内へ導入される。閉鎖空間CSが真空状態であると、第1フランジ3Fと第2フランジ4Fとの結合を外すことができず、配管接続部PJを解体できない。このため、閉鎖空間CSを大気圧に戻して、フランジ結合の解除を可能とする。大気圧に戻すための置換ガスは不活性ガスであれば良いが、本実施形態では仮設配管32に繋がっている窒素ガスタンク12の窒素ガスを利用する。圧力計16にて閉鎖空間CSが大気圧に復帰したことが確認されたら、第3弁53を閉止する。
【0057】
<工程18/配管接続部の解除>
工程18では、第1配管3の第1フランジ3Fと、第2配管4の第2フランジ4Fとのフランジ結合が取り外され、配管接続部PJが解除される。前記閉鎖空間の窒素ガスは、配管接続部PJの解除により大気中へ放散される。以上で、液化水素の荷役は完了する。
【0058】
[本開示のまとめ]
以上説明した具体的実施形態には、以下の構成を有する開示が含まれている。
【0059】
本開示の第1の態様に係る液化ガスの荷役方法は、液化ガス基地と輸送船との間で液化ガスを荷役する方法であって、前記液化ガス基地から延び出す配管であって第1弁を有する第1配管の先端と、前記輸送船から延び出す配管であって第2弁を有する第2配管の先端とを、前記第1弁および前記第2弁を閉止した状態で接続することで、前記第1弁と前記第2弁との間に縁切りされた配管接続部を形成し、前記配管接続部を真空引きし、前記配管接続部に置換ガスを充填し、前記第1弁および前記第2弁を開放して、前記液化ガス基地と前記輸送船との間で液化ガスを移送する。
【0060】
第1の態様によれば、縁切りされた配管接続部を真空引きすることで、当該配管接続部内に存在するガスを一気に除去することができる。従って、プレッシャースイングを採用する場合に比べて、液化ガス基地と輸送船との間での液化ガスの移送前に必要な、前記配管接続部のパージ作業の時間短縮を図ることが可能となる。また、配管接続部内が一気にガス抜きされるので、プレッシャースイングでは必要なガス濃度測定作業も省ける。さらに、真空引きされた配管接続部へいきなり液化ガスを通すのではなく、一旦配管接続部に置換ガスを充填した後に、液化ガスの移送を行う。従って、液化ガスが圧力変動で急激に気化することを抑制できる。
【0061】
第2の態様に係る液化ガスの荷役方法は、第1の態様の荷役方法において、前記液化ガスが液化水素である。
【0062】
液化ガスが液化水素である場合、水素と酸素との反応を防止するため、液化水素の移送前に配管接続部の空気を高度に排除しておく必要がある。このため、従来のプレッシャースイングでは、加圧・落圧作業および酸素濃度測定作業を多数回繰り返さねばならない。しかし、第2の態様によれば、前記真空引きにより一気に配管接続部の空気が排除されるので、液化水素を荷役する場合でも短時間で作業を済ませることが可能となる。
【0063】
第3の態様に係る液化ガスの荷役方法は、第2の態様の荷役方法において、前記配管接続部への置換ガスの充填は、真空引きされた前記配管接続部に不活性ガスを充填する第1充填と、前記配管接続部に充填された前記不活性ガスを水素ガスに置換する第2充填とを含む。
【0064】
第3の態様によれば、液化水素を荷役する場合でも、配管接続部を空気環境下で形成することができる。また、第1充填と第2充填の2段階パージにより、水素と酸素との接触を回避できる。さらに、2段階パージの双方に真空引きを採用することで、パージ作業時間をプレッシャースィングに比べて大幅に短縮できる。
【0065】
第4の態様に係る液化ガスの荷役方法は、第1から第3の態様の荷役方法において、前記液化ガス基地と前記輸送船との間での液化ガスの移送後、当該液化ガスのボイルオフガスを前記配管接続部へ供給し、当該配管接続部に残存する液化ガスを、前記第1弁を開放し前記第1配管を通して前記液化ガス基地側へ押し出す、若しくは、前記第2弁を開放し前記第2配管を通して前記輸送船側へ押し出す。
【0066】
第4の態様によれば、液化ガスの移送後に、配管接続部に残存する液化ガスをボイルオフガスにより完全に除去できる。従って、移送後の配管接続部の解体作業の容易化を図ることができる。
【0067】
第5の態様に係る液化ガスの荷役方法は、第4の態様の荷役方法において、前記ボイルオフガスによる前記押し出しの後、前記第1弁および前記第2弁を閉止して、前記配管接続部に前記ボイルオフガスを封入し、前記配管接続部を真空引きして、前記ボイルオフガスを前記配管接続部から排出する。
【0068】
第5の態様によれば、ボイルオフガスによる残存液化ガスの排除の後、配管接続部のボイルオフガスを真空引きにより一気に排除できる。この作業においても、プレッシャースイングに比べて作業時間の短縮を図れる。
【0069】
第6の態様に係る液化ガスの荷役装置は、液化ガス基地と輸送船との間での液化ガスの荷役を行う荷役装置であって、前記液化ガス基地から延び出す配管であって第1弁を有する第1配管と、前記輸送船から延び出す配管であって第2弁を有する第2配管と、前記第1弁および前記第2弁が閉止され且つ前記第1配管の先端と前記第2配管の先端とが接続された状態において、前記第1弁と前記第2弁との間に形成される縁切りされた配管接続部を真空引きすることが可能な真空ポンプと、前記配管接続部に置換ガスを供給可能な置換ガス供給装置と、を備える。
【0070】
第6の態様によれば、縁切りされた配管接続部を真空引きする真空ポンプを備えるので、当該配管接続部内に存在するガスを一気に除去することができる。従って、プレッシャースイングを採用する場合に比べて、液化ガス基地と輸送船との間での液化ガスの移送前に必要な、前記配管接続部のパージ作業の時間短縮を図ることが可能となる。
【符号の説明】
【0071】
LF 液化ガス荷役装置
PJ 配管接続部
CS 閉鎖空間
1 液化ガス基地
1A 液化水素基地
11 液化ガス貯蔵タンク
11A 液化水素貯蔵タンク
12 窒素ガスタンク(置換ガス供給装置)
13 真空ポンプ
17 BOGタンク(置換ガス供給装置)
2 液化ガス輸送船
2A 液化水素輸送船
21 輸送船タンク
3 第1配管
3F 第1フランジ(第1配管の先端)
32、33、34、35 第1、第2、第3、第4分岐管
4 第2配管
4F 第2フランジ(第2配管の先端)
51 第1弁
52 第2弁