(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024179082
(43)【公開日】2024-12-26
(54)【発明の名称】半導体装置、電力変換装置、および半導体装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 25/07 20060101AFI20241219BHJP
H02M 7/48 20070101ALI20241219BHJP
H01L 23/29 20060101ALI20241219BHJP
【FI】
H01L25/04 C
H02M7/48 Z
H01L23/36 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023097607
(22)【出願日】2023-06-14
(71)【出願人】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088672
【弁理士】
【氏名又は名称】吉竹 英俊
(74)【代理人】
【識別番号】100088845
【弁理士】
【氏名又は名称】有田 貴弘
(72)【発明者】
【氏名】中田 洋輔
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 祐司
(72)【発明者】
【氏名】吉田 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】林 啓
【テーマコード(参考)】
5F136
5H770
【Fターム(参考)】
5F136BB05
5F136BC03
5F136DA22
5F136DA27
5F136EA23
5F136FA03
5H770AA21
5H770BA01
5H770BA05
5H770CA01
5H770CA02
5H770CA05
5H770CA06
5H770DA03
5H770DA41
5H770JA10X
5H770PA11
5H770PA21
5H770PA42
5H770PA43
5H770QA01
5H770QA05
5H770QA22
5H770QA28
5H770QA33
(57)【要約】
【課題】平滑コンデンサの配線インダクタンスを低減することができる技術を提供する。
【解決手段】冷却器(2)上の絶縁基板(31)上に、半導体素子(1)と電気的に接続された回路パターン(32)が設けられている。平滑コンデンサ(401)は、平面視で前記半導体素子(1)に重ならないように配置され、静電容量を形成する内部電極(451)と、内部電極(451)を収めるコンデンサケース(490)と、コンデンサケース(490)から継ぎ目なく突出した端子(442)とを有する。第1の封止材(5)は、前記平滑コンデンサ(401)の前記端子(442)、前記絶縁基板(31)、および前記回路パターン(32)の各々の少なくとも一部を覆っている。前記平滑コンデンサ(401)の前記端子(442)と前記回路パターン(32)とは、前記端子(442)と前記回路パターン(32)との界面が有する接合力によって互いに直接に接続されている。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷却器と、
前記冷却器上に搭載された絶縁基板と、
前記絶縁基板上に設けられた回路パターンと、
前記回路パターンと電気的に接続された半導体素子と、
平面視で前記半導体素子に重ならないように配置され、静電容量を形成する内部電極と、前記内部電極を収めるコンデンサケースと、前記コンデンサケースから継ぎ目なく突出した端子と、を有する平滑コンデンサと、
前記平滑コンデンサの前記端子、前記絶縁基板、および前記回路パターンの各々の少なくとも一部を覆う第1の封止材と、
を備え、
前記平滑コンデンサの前記端子と前記回路パターンとは、前記端子と前記回路パターンとの界面が有する接合力によって互いに直接に接続されている、半導体装置。
【請求項2】
請求項1に記載の半導体装置であって、
前記第1の封止材はゲルまたはゴムを含有する、半導体装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の半導体装置であって、
前記半導体素子は第1の主面および第2の主面を有しており、
前記半導体装置は、
前記半導体素子の前記第1の主面に接続された第1の導体部と、
前記半導体素子の前記第2の主面に接続された第2の導体部と、
前記第1の導体部および前記第2の導体部の各々を少なくとも部分的に露出させつつ前記第1の導体部および前記第2の導体部の各々の一部を覆い、前記半導体素子を封止する第2の封止材と、
をさらに備え、
前記半導体素子の前記第1の主面は、前記第1の導体部を介して前記回路パターンと電気的に接続されている、半導体装置。
【請求項4】
請求項1または2に記載の半導体装置であって、
前記冷却器に面する第1の面と、前記第1の面と反対の第2の面とを有し、第1の辺および第2の辺を含む複数の辺を有する閉曲線に沿って前記冷却器上において前記絶縁基板を囲うように延在する基板ケースと、
前記基板ケースの前記第2の面と前記平滑コンデンサとの間に設けられ、前記基板ケースの材料と前記平滑コンデンサの前記コンデンサケースの材料との各々よりも弾性率の低い材料からなるシーリング材と、
をさらに備え、
前記基板ケースの前記第2の面は、前記第1の辺に対応した第1の領域と、前記第2の辺に対応し前記第1の領域よりも低められた第2の領域と、を含み、
前記平滑コンデンサは前記シーリング材を介して前記第2の面の前記第2の領域上に取り付けられており、
前記基板ケースおよび前記平滑コンデンサの内側に前記第1の封止材が充填されている、
半導体装置。
【請求項5】
請求項4に記載の半導体装置であって、
前記シーリング材はゴムを含有する、半導体装置。
【請求項6】
請求項4に記載の半導体装置であって、
前記基板ケースは、前記基板ケースの前記第2の辺に対応する部分に設けられた第1の嵌め合わせ部を有しており、
前記コンデンサケースは、前記第1の嵌め合わせ部が挿入される溝を有する第2の嵌め合わせ部を有しており、
前記シーリング材は、ゲルを含有し、前記コンデンサケースの前記第2の嵌め合わせ部の前記溝において前記第1の嵌め合わせ部と前記第2の嵌め合わせ部との間に充填されている、
半導体装置。
【請求項7】
請求項1または2に記載の半導体装置であって、
固定部材と、
前記固定部材を用いて前記冷却器に取り付けられたハウジングと、
をさらに備え、
前記平滑コンデンサの前記コンデンサケースは、前記固定部材が適用されるための被固定部を有しており、
前記固定部材は、前記平滑コンデンサの前記コンデンサケースの前記被固定部と、前記冷却器と、前記ハウジングと、を互いに固定している、
半導体装置。
【請求項8】
請求項1または2に記載の半導体装置であって、
前記平滑コンデンサの前記コンデンサケースと連続的につながることによって前記平滑コンデンサの前記コンデンサケースと共にケース部を構成する基板ケースをさらに備え、前記ケース部は前記冷却器上において前記絶縁基板を囲んでおり、前記第1の封止材は前記ケース部の内側に充填されており、
前記ケース部と前記冷却器との間に、前記平滑コンデンサの耐熱温度よりも低い温度で形成可能な材料からなるシーリング材をさらに備える、半導体装置。
【請求項9】
請求項1または2に記載の半導体装置であって、
前記平滑コンデンサの前記コンデンサケースは熱伝導材を介して前記冷却器上に搭載されている、半導体装置。
【請求項10】
請求項1または2に記載の半導体装置であって、
前記平滑コンデンサの前記端子は、
前記平滑コンデンサの前記コンデンサケースから延び、前記回路パターンからは離れた根元部分と、
前記根元部分から延び、前記回路パターンに直接に接続された複数の接続部分と、
を有しており、前記複数の接続部分は互いに分離されている、半導体装置。
【請求項11】
請求項1または2に記載の半導体装置であって、
前記半導体素子はワイドバンドギャップ半導体素子である、半導体装置。
【請求項12】
請求項1または2に記載の半導体装置を有し、入力される電力を、変換して出力する主変換回路と、
前記主変換回路を制御する制御信号を前記主変換回路に出力する制御回路と、
を備えた、電力変換装置。
【請求項13】
請求項6に記載の半導体装置を製造するための、半導体装置の製造方法であって、
ゲルを含有する前記シーリング材を形成する工程と、
前記シーリング材を形成する工程の後に、ゲルを含有する前記第1の封止材を形成する工程と、
を備えた、半導体装置の製造方法。
【請求項14】
請求項1からまたは2に記載の半導体装置を製造するための、半導体装置の製造方法であって、
a)前記平滑コンデンサの前記コンデンサケースが有する被固定部を前記冷却器へ固定する工程と、
b)前記a)の後に、前記平滑コンデンサの前記端子と前記回路パターンとを接合する工程と、
を備えた、半導体装置の製造方法。
【請求項15】
請求項14に記載の半導体装置の製造方法であって、
前記a)は、前記平滑コンデンサの前記コンデンサケースの前記被固定部へ第1の固定部材を適用することによって行われ、
前記製造方法は、さらに、
c)前記冷却器をハウジングに搭載する工程と、
d)前記c)の後、前記第1の固定部材を取り外す工程と、
e)前記平滑コンデンサの前記コンデンサケースの前記被固定部へ第2の固定部材を適用することによって、前記平滑コンデンサの前記コンデンサケースの前記被固定部と、前記冷却器と、前記ハウジングと、を互いに固定する工程と、
を備えた、半導体装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、半導体装置、電力変換装置、および半導体装置の製造方法に関し、特に、平滑コンデンサを有する半導体装置と、当該半導体装置を有する電力変換装置と、当該半導体装置の製造方法とに関するものである。
【背景技術】
【0002】
非特許文献1に記載されているように、近年,小型化が進むインバータでは,高速なパワー半導体を駆動する際に急峻な電流変化が生じても耐電圧破壊の原因となるサージ電圧を抑制することが求められている。サージ電圧の低減には,キャパシタやパワーモジュールの配線インダクタンスの低減が必要となる。そこで上記非特許文献1は,パワーモジュールの金属放熱板に対して内部の配線パターンをループ状とすることで渦電流を放熱板に効率良く誘導し,渦電流の磁束により配線が作る磁束を打消すことでインダクタンス成分を低減する配線実装技術を開示している。
【0003】
特許文献1によれば、パワーモジュール(半導体装置)は、スイッチング素子と、平滑コンデンサとを有している。上記特許文献1によれば、平滑コンデンサが、パワーモジュールに内蔵されたセラミックコンデンサであることによって、平滑コンデンサに起因したインダクタンスを低減することができる。具体的な構成としては、ベース板上に絶縁基板が固定されており、この絶縁基板上にスイッチング素子(半導体素子)が実装されており、このスイッチング素子の上方の空間にコンデンサ基板が配置されている。コンデンサ基板には、複数のセラミックコンデンサが搭載されている。また上記特許文献1には、スイッチング素子が実装された上記絶縁基板の側方に平滑コンデンサとしてのアルミ電解コンデンサが配置された構成も、従来技術として開示されている。平滑コンデンサとしてのアルミ電解コンデンサは、配線板およびそれを固定するためのねじを用いることによって電気的に接続されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000-350474号公報
【非特許文献1】中津欣也 他、「パワーモジュールのインダクタンス成分を低減する配線実装技術」、エレクトロニクス実装学会誌、18巻、4号、pp.270-278、(2015)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
半導体装置が取り扱う電流に対して、平滑コンデンサの容量が十分大きくないと、平滑コンデンサの電位がスイッチング時の充放電で下がってしまい、所望の出力を発揮することができない。特に、ワイドバンドギャップ半導体素子(例えば、SiC-MOSFET)を用いた半導体装置においてはこの課題が顕著であり、例えば、電気自動車のモーターを駆動するなど大きな電流を取り扱う場合には、平滑コンデンサの容量は数百μF程度必要である。このように平滑コンデンサの容量が大きい場合、半導体素子の上方の空間内に平滑コンデンサを収めることは難しい。
【0006】
加えて、平滑コンデンサを半導体素子の上方に配置するためには、半導体装置内で必要な絶縁距離を確保することも勘案すると、平滑コンデンサの配線としてのバスバーの配線距離が長くなってしまう。さらにこの配置の場合、上記非特許文献1で提案された配線実装技術を適用することによってインダクタンスを低減することも難しい。なぜならば、上記配置を得るためには半導体素子の上方へと平滑コンデンサのバスバーを延ばす必要があるので、バスバーは、半導体素子を支持しているベース板(金属放熱板)から遠ざかるように延びるからである。
【0007】
一方、上記特許文献1において従来技術として開示されていた構成においては、平滑コンデンサとしてのアルミ電解コンデンサがスイッチング素子の上方ではなく側方に配置されている。しかしながら、ねじを用いての配線板の電気的接続が利用されており、このような接続ではインダクタンスが高くなる課題がある。
【0008】
本開示は、上記のような問題点に鑑みてなされたものであり、平滑コンデンサの配線インダクタンスを低減することができる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示に係る半導体装置は、冷却器と、前記冷却器上に搭載された絶縁基板と、前記絶縁基板上に設けられた回路パターンと、前記回路パターンと電気的に接続された半導体素子と、平面視で前記半導体素子に重ならないように配置され、静電容量を形成する内部電極と前記内部電極を収めるコンデンサケースと前記コンデンサケースから継ぎ目なく突出した端子とを有する平滑コンデンサと、前記平滑コンデンサの前記端子、前記絶縁基板、および前記回路パターンの各々の少なくとも一部を覆う第1の封止材と、を備える。前記平滑コンデンサの前記端子と前記回路パターンとは、前記端子と前記回路パターンとの界面が有する接合力によって互いに直接に接続されている。
【発明の効果】
【0010】
本開示によれば、第1に、平滑コンデンサは、平面視で前記半導体素子に重ならないように配置されている。これにより、平滑コンデンサが平面視で前記半導体素子に重なるようにするという制約がないので、インダクタンスを低減することができる配線配置を適用しやすい。第2に、平滑コンデンサの端子の接続に際して、仮に、ねじのような締結部材を用いたとすると、配線長が長くなることに起因して配線インダクタンスが増大してしまい、また、これをキャンセルするように平行平板の配線構造を適用することも難しい。これに対して本実施の形態によれば、前記平滑コンデンサの前記端子と前記回路パターンとは、前記端子と前記回路パターンとの界面が有する接合力によって互いに直接に接続されている。これにより、平滑コンデンサのコンデンサケースを回路パターンに近接して配置することができる。特に、平滑コンデンサの端子の接合部が回路パターンと共に封止材で封止される場合、沿面距離の考慮なしにほぼ最短距離で平滑コンデンサを接続することができる。よって、配線長を短くすることができるので、配線インダクタンスを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】実施の形態1に係る電力変換システムの構成を概略的に示すブロック図である。
【
図2】
図1の平滑コンデンサの構成を示す模式図である。
【
図3】
図1の電力変換装置に含まれる半導体装置の構成を概略的に示す斜視図である。
【
図5】
図3の平滑コンデンサの端子近傍の構成を概略的に示す部分上面図である。
【
図6】
図3の半導体装置に含まれるサブモジュールの構成を概略的に示す断面図である。
【
図7】
図3の半導体装置に含まれる基板ケースの構成を概略的に示す上面図である。
【
図8】
図1の電力変換装置の構成を概略的に示す部分断面図である。
【
図9】
図8の電力変換装置の製造方法の第1の工程を概略的に示す部分断面図である。
【
図10】
図8の電力変換装置の製造方法の第2の工程を概略的に示す部分断面図である。
【
図11】
図8の電力変換装置の製造方法の第3の工程を概略的に示す部分断面図である。
【
図12】
図8の電力変換装置の製造方法の第4の工程を概略的に示す部分断面図である。
【
図13】
図8の電力変換装置の製造方法の第5の工程を概略的に示す部分断面図である。
【
図14】本実施の形態に対応したシミュレーションモデルを示す部分斜視図である。
【
図15】比較例に対応したシミュレーションモデルを示す部分斜視図である。
【
図16】
図14および
図15の各々のシミュレーションモデルを用いたシミュレーションによって得られた周波数と配線インダクタンスとの関係を示すグラフ図である。
【
図17】
図4の半導体装置の変形例の半導体装置の構成を概略的に示す部分断面図である。
【
図18】
図17の半導体装置の製造方法の第1工程を概略的に示す部分断面図である。
【
図19】
図17の半導体装置の製造方法の第2工程を概略的に示す部分断面図である。
【
図20】実施の形態2に係る半導体装置の構成を概略的に示す斜視図である。
【
図21】
図20の半導体装置の構成を概略的に示す分解斜視図である。
【
図22】実施の形態3に係る半導体装置の構成を概略的に示す斜視図である。
【
図23】
図22の構成を、平滑コンデンサの図示を省略して概略的に示す斜視図である。
【
図25】
図22の半導体装置の変形例の半導体装置の構成を概略的に示す斜視図である。
【
図26】
図25の半導体装置を概略的に示す分解斜視図である。
【
図27】
図25の半導体装置を概略的に示す部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面に基づいて実施の形態について説明する。なお、以下の図面において同一または相当する部分には同一の参照番号を付しその説明は繰返さない。
【0013】
<実施の形態1>
(電力変換装置の構成)
図1は、実施の形態1に係る電力変換システムの構成を概略的に示すブロック図である。電力変換システムは、電源100、電力変換装置200、負荷300から構成される。電源100は、直流電源であり、電力変換装置200に直流電力を供給する。電源100は種々のもので構成することが可能であり、例えば、直流系統、太陽電池、蓄電池で構成することができるし、交流系統に接続された整流回路やAC/DCコンバータで構成することとしてもよい。また、電源100を、直流系統から出力される直流電力を所定の電力に変換するDC/DCコンバータによって構成することとしてもよい。
【0014】
電力変換装置200は、電源100と負荷300の間に接続された三相のインバータであり、電源100から供給された直流電力を交流電力に変換し、負荷300に交流電力を供給する。電力変換装置200は、
図1に示すように、直流電力(入力される電力)を交流電力に変換して出力する主変換回路201と、主変換回路201を制御する制御信号を主変換回路201に出力する制御回路203とを備えている。
【0015】
負荷300は、電力変換装置200から供給された交流電力によって駆動される三相の電動機である。なお、負荷300は特定の用途に限られるものではなく、各種電気機器に搭載された電動機であり、例えば、ハイブリッド自動車や電気自動車、鉄道車両、エレベーター、もしくは、空調機器向けの電動機として用いられる。
【0016】
以下、電力変換装置200の詳細を説明する。主変換回路201は半導体装置202Aを含む。半導体装置202Aは少なくとも1つの半導体素子1を有している。少なくとも1つの半導体素子1はスイッチング素子1sを含んでいる。少なくとも1つの半導体素子1は還流ダイオード1dも含んでいてよい。主変換回路201は、スイッチング素子1sがスイッチングすることによって、電源100から供給される直流電力を交流電力に変換し、負荷300に供給する。主変換回路201の具体的な回路構成は種々のものがあるが、本実施の形態に係る主変換回路201は2レベルの三相フルブリッジ回路であり、6つのスイッチング素子1sとそれぞれのスイッチング素子1sに逆並列された6つの還流ダイオード1dから構成することができる。6つのスイッチング素子1sは2つのスイッチング素子1sごとに直列接続され上下アームを構成し、各上下アームはフルブリッジ回路の各相(U相、V相、W相)を構成する。これらU相、V相、W相のそれぞれに対応しての各上下アームの出力端子10u、10v、10w、すなわち主変換回路201の3つの出力端子10u、10v、10wは、負荷300に接続される。半導体素子1はワイドバンドギャップ半導体素子であってよく、例えば、炭化珪素半導体素子であってよい。
【0017】
また、主変換回路201は、各スイッチング素子1sを駆動する駆動回路204を備えている。駆動回路204は、半導体装置202Aとは別に設けられていてよく、あるいは変形例として半導体装置202Aに内蔵されていてよい。駆動回路204は、主変換回路201のスイッチング素子1sを駆動する駆動信号を生成し、主変換回路201のスイッチング素子1sの制御電極に供給する。具体的には、制御回路203からの制御信号に従い、スイッチング素子1sをオン状態にする駆動信号とスイッチング素子1sをオフ状態にする駆動信号とを各スイッチング素子1sの制御電極に出力する。スイッチング素子1sをオン状態に維持する場合、駆動信号はスイッチング素子1sの閾値電圧以上の電圧信号(オン信号)であり、スイッチング素子1sをオフ状態に維持する場合、駆動信号はスイッチング素子の閾値電圧以下の電圧信号(オフ信号)となる。
【0018】
制御回路203は、負荷300に所望の電力が供給されるよう主変換回路201のスイッチング素子1sを制御する。具体的には、負荷300に供給すべき電力に基づいて主変換回路201の各スイッチング素子1sがオン状態となるべき時間(オン時間)を算出する。例えば、出力すべき電圧に応じてスイッチング素子1sのオン時間を変調するPWM制御によって主変換回路201を制御することができる。そして、各時点においてオン状態となるべきスイッチング素子1sにはオン信号を、オフ状態となるべきスイッチング素子1sにはオフ信号が出力されるよう、駆動回路204に制御指令(制御信号)を出力する。駆動回路204は、この制御信号に従い、各スイッチング素子の制御電極にオン信号またはオフ信号を駆動信号として出力する。
【0019】
本実施の形態に係る電力変換装置200では、主変換回路201のスイッチング素子1sおよび還流ダイオード1dの少なくともいずれかを含むものとして、半導体装置202A(または、後述する他の実施の形態に係る半導体装置)が適用される。これにより、電力変換装置の変換効率を高めることができる。
【0020】
なお本実施の形態では、上記半導体装置が2レベルの三相インバータに適用される例を説明したが、半導体装置の適用はこれに限られるものではなく、種々の電力変換装置に適用されることができる。例えば、3レベルやマルチレベルの電力変換装置に適用されてよく、単相負荷に電力を供給する場合には単相のインバータに適用されても構わない。また、直流負荷等に電力を供給する場合にはDC/DCコンバータやAC/DCコンバータに適用されることも可能である。
【0021】
また、電力変換装置200の負荷300は、電動機に限定されるものではなく、例えば、放電加工機、レーザー加工機、誘導加熱調理器、または非接触給電システムであってよい。また電力変換装置200は、太陽光発電システムや蓄電システム等のパワーコンディショナーとして用いることも可能である。
【0022】
(半導体装置の構成)
図1における回路図に示されているように、半導体装置202Aは、電源100に電気的に接続された平滑コンデンサ401を有している。
図2を参照して、平滑コンデンサ401は、少なくとも1つのコンデンサ素子450と、コンデンサケース490と、複数の端子442とを有している。コンデンサ素子450の各々は、静電容量を形成する1対の内部電極451を有している。コンデンサケース490は、内部電極451を有するコンデンサ素子450を収めている。コンデンサ素子450は、例えばフィルムコンデンサである。上述した少なくとも1つのコンデンサ素子450は、複数のコンデンサ素子450であってよく、その場合、平滑コンデンサ401は、コンデンサモジュールである。端子442の各々は、コンデンサケース490から継ぎ目なく突出している。端子442の各々は、例えば、連続的に延びた銅電極である。複数の端子442は、平滑コンデンサ401の充放電のための少なくとも1対の端子(High端子およびLow端子)を含む。
【0023】
端子442はバスバー440の一部であってよい。バスバー440は、コンデンサケース490内において複数のコンデンサ素子450を互いに並列に接続していてよい。例えば、コンデンサケース490内を延びる1対のバスバー440の間に複数のフィルムコンデンサが配列されている。バスバー440の各々は、連続的に延びる銅電極であってよい。バスバー440は、コンデンサケース490から突出した1対の電源端子441(High端子およびLow端子)を有していてよい。電源端子441には電源100(
図1)が接続される。なお変形例として、電源端子441が省略されつつ、端子442に電源100が電気的に接続されてよい。
【0024】
図3を参照して、半導体装置202Aが6in1の三相フルブリッジ回路(
図1参照)を構成している場合、平滑コンデンサ401には3対以上(6端子以上)の端子442が設けられている。各相のために少なくとも1対の端子442が設けられ、
図3に示された例においては、各相に2対の端子442が設けられているので、合計で6対の端子442(12端子)が設けられている。
【0025】
図3および
図4を参照して、半導体装置202Aは、冷却器2と、絶縁基板31と、回路パターン32と、サブモジュール11と、平滑コンデンサ401と、封止材5(第1の封止材)と、を有している。サブモジュール11は、詳しくは後述するが、複数の半導体素子1(
図1参照)を含む。なお
図3においては、封止材5の内部が見えるようにするために、封止材5の図示が省略されている。また、
図3において、被固定部480には、後述する固定部材61または固定部材62(
図3において図示せず)が取り付けられていてよい。
【0026】
冷却器2は、高い放熱性を有する部材である。冷却器2は金属部材であってよい。当該金属部材は、銅またはアルミニウムの部材であってよく、またその表面がニッケルで覆われていてよい。また当該金属部材は、冷却面を有するベース板であってよい。また当該冷却面にはピンフィンが設けられてよい。
【0027】
絶縁基板31は、例えば、窒化珪素からなるセラミック基板である。絶縁基板31の上面および下面のそれぞれには、回路パターン32および金属膜33が形成されている。これら、絶縁基板31、回路パターン32および金属膜33は、回路基板を構成している。回路パターン32および金属膜33は、例えば、銅からなる。絶縁基板31は冷却器2上に、金属膜33が冷却器2に面するように搭載されている。この搭載は、
図4においては、接合層34を介して行われている。サブモジュール11(
図3)は回路パターン32と電気的に接続されている。平滑コンデンサ401は、平面視で半導体素子1に重ならないように配置されている。なお本明細書において、平面視は、厚み方向(
図4における縦方向)に垂直な面内方向におけるレイアウトに対応する。
【0028】
封止材5は、平滑コンデンサ401の端子442、絶縁基板31、および回路パターン32の各々の少なくとも一部を覆っている。封止材5は、
図4に示されているように、端子442の、回路パターン32上に接続された部分を覆っている。
【0029】
平滑コンデンサ401の端子442と回路パターン32とは、端子442と回路パターン32との界面が有する接合力によって互いに直接に接続されている。平滑コンデンサ401の耐熱温度は一般的に低いので、平滑コンデンサ401の端子442を回路パターン32に接続する工法は、コンデンサケース490内の温度を過度に上昇させないものであることが望ましく、例えば、超音波接合またはレーザー接合が望ましい。
【0030】
図5は、平滑コンデンサ401の端子442近傍の構成を概略的に示す部分上面図である。端子442の各々は、根元部分RTと、少なくとも1つの接続部分CNとを有していてよい。根元部分RTは、コンデンサケース490から延びており、回路パターン32からは離れている。接続部分CNは、根元部分RTから延びており、回路パターン32に直接に接続されている。
【0031】
図3に示されているように、端子442の各々は、少なくとも1箇所の折れ曲がりを有していてよく、図示された例においては2箇所の折れ曲がりを有している。特に、前述したように端子442が根元部分RTおよび接続部分CNを有する場合、端子442は、接続部分CNと根元部分RTとの間に1箇所の折れ曲がりを有していてよく、
図3に示された例においては、根元部分RTにおいて、もう1箇所の折れ曲がりを逆方向に有している。上記の折れ曲がりによって、端子442がコンデンサケース490から突出する高さ位置と、端子442が回路パターン32に接続されている高さ位置と、の間に、所望の差異を設けることができる。
【0032】
回路パターン32は、絶縁基板31上に接合されたおおよそ一定の厚みを有する導体平板にパターン形状が付与されたものであってよい。変形例として、回路パターン32は、端子442の接合に対する回路パターン32のダメージ耐性の向上、または、端子442が接合される高さ位置の調整などの目的で、上記導体板上に付加的な導体部材も有してよい。ただし、当該導体部材は、配線インダクタンスへの悪影響を抑えるべく、平面視において上記導体平板に重なる範囲内にのみ配置される。前述の目的が不要の場合は、回路パターン32は、上記導体部材なしに、絶縁基板31上の導体平板のみによって構成されていることが好ましい。言い換えれば、端子442は、回路パターン32としての上記導体平板に直接に接合されていることが好ましい。なお上記の付加的な導体部材を用いるか否かにかかわらず、回路パターン32への端子442の接合には、ねじのような締結部材は用いられない。この理由は、締結部材が適用される箇所を確保することが、配線インダクタンスの大幅な増大につながりやすいからである。
【0033】
封止材5は、ゲルまたはゴムを含有している。これにより封止材5の材料は、ゲル状またはゴム状とされており、よって低い弾性率を有している。封止材5は、例えば、ゲルまたはゴムからなっている。
【0034】
図6は、サブモジュール11(
図3参照)の構成を概略的に示す断面図である。サブモジュール11は複数の半導体素子1(
図1参照)を有している。半導体素子1は、下面(第1の主面)および上面(第2の主面)のそれぞれに下面電極および上面電極を有するチップ部品であってよい。サブモジュール11の各々は、複数の半導体素子1と、半導体素子1の各々の下面電極に接続された導体部111(第1の導体部)と、半導体素子1の各々の上面電極に接続された導体部112(第2の導体部)とを有している。半導体素子1と、導体部111および導体部112のそれぞれとの接続は、接合層121および接合層122を用いて行われてよい。接合層121および接合層122は、例えば、銀または銅からなる焼結材である。導体部111は、例えば、銅からなるヒートスプレッダである。導体部112は、例えば、銅または銀からなる板状の金属板であり、
図6に示されているように、半導体素子1に接続する面が板面から突出していてよい。これにより、導体部112を半導体素子1の上面の一部にのみ接続することができる。サブモジュール11は、さらに、半導体素子1の上面に設けられた制御電極に電気的に接続された導体部113(第3の導体部)を有していてよい。この接続はワイヤ114によって行われていてよい。導体部112が前述したように突出していることによって、導体部112がワイヤ114と電気的に短絡されてしまうことが容易に避けられる。
【0035】
さらに、サブモジュール11は、封止材130(第2の封止材)を有している。封止材130は、導体部111、導体部112および導体部113の各々の一部のみを覆いつつ半導体素子1を封止している。
【0036】
サブモジュール11は、
図3に示されているように、回路パターン32上に実装されていてよく、これにより半導体素子1の下面は導体部111を介して回路パターン32と電気的に接続されている。サブモジュール11の実装は、例えば、はんだ材または焼結材を用いて行われ、これにより電気的および熱的接続が確保される。具体的には、導体部111が回路パターン32に接続される。この接続のための工程は、接合層121および接合層122の融点よりも低い温度で実施することが望ましい。
【0037】
サブモジュール11の導体部112(
図6)は、金属製のリボン81およびリボン82(
図3)によって、回路パターン32および他のサブモジュール11の少なくともいずれかに接続されていてよい。リボンに代わってワイヤが用いられてもよい。変形例として、導体部112が、回路パターン32および他のサブモジュール11の少なくともいずれかへと接続するように延びていてよい。これら接続は、例えば、超音波接合、または、はんだ等の接合材による接合によって行われる。
【0038】
なお変形例として、半導体素子1はサブモジュール11の状態とされずに、回路パターン32に電気的に接続されてよい。具体的には、半導体素子1としての半導体チップ自体が回路パターン32上に実装されてよい。
【0039】
半導体装置202Aは、
図4に示されているように、基板ケース501と、シーリング材44とを有している。基板ケース501は、冷却器2に面する下面(第1の面)と、上面(第1の面と反対の第2の面)とを有している。シーリング材44は、基板ケース501の上面と平滑コンデンサ401との間に設けられている。シーリング材44は、基板ケース501の材料と平滑コンデンサ401のコンデンサケース490の材料との各々よりも弾性率の低い材料からなる。シーリング材44は、封止材5が充填される工程において、基板ケース501と平滑コンデンサ401との間から封止材5が漏れ出ることを防止する。言い換えれば、封止材5を形成するための、流動性を有する材料が充填される工程において、基板ケース501と平滑コンデンサ401との間から当該材料が漏れ出ることを防止する。シーリング材44は、特に本実施の形態においては、ゴムを含有することが好ましく、例えばゴムからなる。これによりシーリング材44をゴム状とすることができる。
【0040】
基板ケース501は、第1の辺SD1および第2の辺SD2を含む複数の辺を有する閉曲線(
図7における一点鎖線)に沿って冷却器2(
図4)上において絶縁基板31(
図4)を囲うように延在している。
図7に示されているように、基板ケース501の上面は、第1の辺SD1に対応した第1の領域RG1と、第2の辺SD2に対応した第2の領域RG2とを含む。第2の領域RG2は、厚み方向(
図7の視野に垂直な方向)において、第1の領域RG1よりも低められている。上記閉曲線は、
図7に示されたようにおおよそ長方形であってよく、その角部は丸められていてよい。平滑コンデンサ401のコンデンサケース490(
図3)はシーリング材44(
図4)を介して基板ケース501(
図7)の上面の第2の領域RG2上に取り付けられている。よって、コンデンサケース490(
図3)は、基板ケース501の、低められた部分に嵌め込まれている。このように組み合わされた基板ケース501および平滑コンデンサ401の内側に、封止材5(
図4)が充填されている。
【0041】
基板ケース501と冷却器2とは、ねじ状の固定部材もしくは接着材、またはその両方を用いて取り付けられてよい。基板ケース501は、絶縁体からなっていてよく、例えば樹脂からなる。基板ケース501中を、
図3に示されているように、出力端子10u~10w(
図1)が貫通していてよい。
図3においては、基板ケース501内へと貫通した出力端子10u~10wの各々が回路パターン32上に接続されている。
【0042】
(製造方法の例)
図8は、半導体装置202Aを有する電力変換装置200(
図1)の構成を概略的に示す部分断面図であり、これについての製造方法を、以下に例示する。なお電力変換装置200も一種の半導体装置である。
【0043】
電力変換装置200は、固定部材62(第2の固定部材)と、ハウジング7とを有している。ハウジング7は、固定部材62を用いて冷却器2に取り付けられている。固定部材62は、例えば、ねじ状の締結部材である。平滑コンデンサ401のコンデンサケース490は、固定部材62が適用されるための被固定部480を有している。固定部材62がねじ状の締結部材である場合、被固定部480は、ねじ穴であってよい。固定部材62は、平滑コンデンサ401のコンデンサケース490の被固定部480と、冷却器2と、ハウジング7と、を互いに固定している。
【0044】
次に、半導体装置202Aを有する電力変換装置200(
図8)の製造方法について、以下に説明する。
【0045】
図9を参照して、冷却器2上に、基板ケース501と、シーリング材44と、コンデンサケース490とが、この順に積層される。平滑コンデンサ401のコンデンサケース490が有する被固定部480が、冷却器2へ固定される。この固定は、平滑コンデンサ401のコンデンサケース490の被固定部480へ固定部材61(第1の固定部材)を適用することによって行われる。固定部材61は、例えば、ねじ状の締結部材である。
【0046】
その後、
図10に示されているように、平滑コンデンサ401の端子442と回路パターン32とが接合される。これにより、端子442と回路パターン32との界面DIが有する接合力によって、端子442と回路パターン32とが互いに直接に接続される。この接合は、例えば、超音波接合によって行われる。
【0047】
図11を参照して、基板ケース501内に封止材5が充填される。これにより、端子442と回路パターンとの接合箇所が封止材5によって覆われる。
【0048】
図12を参照して、冷却器2がハウジング7に搭載される。これらの間には熱伝導材49が設けられてよい。熱伝導材49は、樹脂シートであってよく、その材料には、例えば、ケイ素樹脂などを用いることができる。あるいは、熱伝導材49は放熱グリース層であってよい。上記搭載の後、固定部材61が取り外される。これにより、
図13に示されているように、被固定部480が空いた状態とされる。
【0049】
再び
図8を参照して、平滑コンデンサ401のコンデンサケース490の被固定部480へ固定部材62が適用される。これによって、被固定部480と、冷却器2と、ハウジング7と、が互いに固定される。固定部材61および固定部材62が、ねじ状の締結部材である場合、固定部材61(
図12)に比して固定部材62(
図8)の方が長くてよい。
【0050】
次に、平滑コンデンサの配線インダクタンスのシミュレーションの結果について説明する。
図14は、本実施の形態に対応したシミュレーションモデルを示す部分斜視図であり、図中、平滑コンデンサ401(
図3参照)については端子442のみが図示されている。一方、
図15は、比較例に対応したシミュレーションモデルを示す部分斜視図であり、当該モデルにおいては、平滑コンデンサの配線として、端子442に代わって配線TMが設けられている。配線TMは、端子TMaと、突出部材TMbとを有している。端子TMaは、平滑コンデンサのコンデンサケース(
図15において図示せず)から継ぎ目なく突出している。突出部材TMbは、平面視において回路パターン32に重なる範囲から、突出している。端子TMaと突出部材TMbとの各々は、ねじ穴を有している。ねじ穴に、図中一点鎖線で示すように、ねじ(図示せず)が適用されることによって、端子TMaと突出部材TMbとが互いに固定される。比較例においては、この固定によって平滑コンデンサが取り付けられることが想定されている。
図16は、上記のシミュレーションモデルの各々について、典型的な電気自動車向け汎用半導体装置を想定しての、周波数fと配線インダクタンスLsとの関係のシミュレーション結果の一例を示すグラフ図である。この結果から、ねじ締結が適用される配線TMが用いられる場合に比して、端子442が用いられる方が、インダクタンスを顕著に低減することができることがわかる。例えば、f=10MHzにおいて、配線TMのLs=19.1nHに比して、端子442のLs=6.5nHは、半分未満の値にまで低減されている。
【0051】
(効果)
本実施の形態によれば、第1に、平滑コンデンサ401(
図3)は、平面視で、半導体素子1(
図6)を含むサブモジュール11に重ならないように配置されている。これにより、平滑コンデンサ401が平面視で半導体素子1に重なるようにするという制約がないので、インダクタンスを低減することができる配線配置を適用しやすい。第2に、平滑コンデンサ401の端子の接続に際して、仮に、ねじのような締結部材を用いたとすると、配線長が長くなることに起因して配線インダクタンスが増大してしまい、また、これをキャンセルするように平行平板の配線構造を適用することも難しい。これに対して本実施の形態によれば、平滑コンデンサ401の端子442と回路パターン32とは、端子442と回路パターン32との界面が有する接合力によって互いに直接に接続されている。これにより、平滑コンデンサ401のコンデンサケース490を回路パターン32に近接して配置することができる。特に、平滑コンデンサ401の端子442の接合部が回路パターン32と共に封止材5で封止される場合、沿面距離の考慮なしにほぼ最短距離で平滑コンデンサ401を接続することができる。よって、配線長を短くすることができるので、配線インダクタンスを低減することができる。
【0052】
封止材5はゲルまたはゴムを含有していてよい。これにより、半導体装置202Aがハウジング7(
図8)などに取り付けられる際に、平滑コンデンサ401および冷却器2の相対的な取付位置の誤差に起因して平滑コンデンサ401の端子442に変形が生じたとしても、この変形に起因して封止材5に剥離または亀裂が生じることを防止することができる。よって、半導体装置202Aの信頼性を高めることができる。
【0053】
半導体素子1によってサブモジュール11(
図6)を構成することによって、絶縁基板31に実装される前の半導体素子1を、容易に検査することができる。このことについて、以下に説明する。
【0054】
平滑コンデンサ401として一般的に用いられるフィルムコンデンサの耐熱温度は100℃程度と低いので、半導体装置202Aの組立完了後は半導体素子1に対して高温検査が行いにくい。この高温検査を、半導体装置202Aの組立前に、半導体素子1を有するサブモジュール11に対して行っておけば、高温検査においてフィルムコンデンサが高温にさらされることを避けることができる。
【0055】
また、半導体素子1が、サブモジュール11の状態とされずにベアチップの状態にあると、耐電圧試験、定格電流試験および短絡試験が行いにくいところ、サブモジュール11の状態では、これが行いやすくなる。具体的には、導体部111および導体部112の熱容量が半導体素子からの一時的かつ急激な発熱を吸収することができる。よって、短絡試験のように、瞬間的に大電流を印加する試験に際して、半導体素子1からの熱を拡散させることにより、この発熱が素子に与えるダメージを抑制することができる。また、封止材130を有することにより高電圧での試験を行いやすい。また、複数の半導体素子1のスクリーニング試験を一括して行うことができるので、スクリーニング試験を効率化することができる。
【0056】
またベアチップに対しては、スクリーニング試験が行いにくい。スクリーニング試験は、半導体素子1が炭化珪素半導体素子の場合、品質担保上、特に重要である。スクリーニング試験の所要時間を短縮するためには、試験を厳しい条件下で行う必要があるところ、ベアチップの状態ではこれが難しい。例えば、炭化珪素半導体素子は、比較的小さな面積に、比較的大きな電流を流すことが想定されていることから、ベアチップの状態では実際の使用条件に近い状態で電流を印加することが難しい。これに対して、サブモジュール11の状態であれば、導体部111および導体部112の間での均等な通電により、大電流での試験が行いやすい。
【0057】
また、炭化珪素などのワイドバンドギャップ半導体が用いられる場合、半導体自体の耐電圧が高いので、半導体自体の耐電圧の観点では、半導体素子の終端構造の長さを短くすることができる。しかしながら、試験目的で大気中においてベアチップに高電圧を印加すると、本来の耐電圧に至る前に沿面放電が発生してしまうことがある。これに対して、半導体チップがサブモジュール11の状態であれば、終端構造が封止材130によって被覆されているので、沿面放電を抑制しつつ高電圧での試験を行うことができる。
【0058】
以上のように、半導体チップ単体では難しかった上記の試験群が、サブモジュール11を活用することで可能になる。
【0059】
基板ケース501が、均一な厚みの枠形状を有している場合においては、当該厚みが過小であると、半導体装置202Aの製造において基板ケース501内に封止材5を形成する際に、封止材5の材料(例えばゲル)が流れ出てしまう。逆に、基板ケース501の厚みが過大であると、平滑コンデンサ401の端子442が極力短くなるようにコンデンサケース490の高さ位置を調整しようとしたときに、コンデンサケース490と基板ケース501とが干渉しやすくなる。これに対して、本実施の形態によれば、第1の領域RG1(
図7)の高さを十分に高くすることによって封止材5(
図4)の材料の流れ出しを避けつつ、第1の領域RG1よりも低められている第2の領域RG2(
図7)に平滑コンデンサ401を取り付けることによって、上記の干渉の問題を避けることができる。
【0060】
また、半導体装置202Aがハウジング7(
図8)などに取り付けられる際に、取付寸法の誤差などに起因して、半導体装置202Aにおいて平滑コンデンサ401が相対的に変位し得る。この変位が大きいことに起因して、基板ケース501または平滑コンデンサ401が破損することがある。このような破損の発生を、シーリング材44の材料の弾性率を基板ケース501およびコンデンサケース490の材料よりも低くすることによって、抑制することができる。特に、シーリング材44がゴム材である場合は、シーリング材44を簡単に設けることができる。
【0061】
冷却器2とハウジング7(
図8)との間に冷却水が流される場合、水密性を十分に確保するために、冷却器2とハウジング7とが、ある程度多くの固定点で互いに固定される必要がある。特に、電力変換装置200(
図8)が自動車の駆動構造上に配置される場合などは、振動下において水密性および耐久性を確保するために、より多くの固定点を必要とすることがある。本実施の形態においては、電力変換装置200に平滑コンデンサ401が一体化された構造が用いられるので、この構造が上記のように複数の固定点を確保することを困難としないようにするために、平滑コンデンサ401の被固定部480が、冷却器2とハウジング7との固定点としても用いられてよい。
【0062】
平滑コンデンサ401の耐熱温度は一般的に低い。その場合、平滑コンデンサ401の端子442を回路パターン32に接続する工法は、コンデンサケース490内の温度を過度に上昇させないものである必要があり、例えば、超音波接合またはレーザー接合が望ましい。その場合において、端子442の各々の電流容量を確保するために太い端子が用いられていると、その接続のためには、超音波パワーまたはレーザーパワーを大きくする必要がある。その結果、パワー効率が悪くなったり、絶縁基板31へのダメージが懸念されたりする。端子442が、互いに分離された複数の接続部分CN(
図5)を有する場合、上記のような問題を回避しつつ、電流容量を確保することができる。
【0063】
半導体素子1がSiC等のワイドバンドギャップ半導体を用いている場合、高速でのインバータ駆動などを目的としての、高速なスイッチング動作がしばしば期待される。このような高速動作時においては、配線インダクタンスに起因しての動作損失が特に問題となりやすいところ、本実施の形態によれば、これを効果的に抑制することができる。
【0064】
コンデンサケース490の被固定部480を冷却器2へ固定する工程(
図9)の後に、端子442と回路パターン32との界面DI(
図10)が有する接合力によって、端子442と回路パターン32とが互いに直接に接続されてよい。これにより、接合部としての界面DIに応力が加わることを防止することができる。
【0065】
固定部材61は、ハウジング7への半導体装置202Aの取付作業(
図10)、または、半導体装置202Aの出荷作業(
図11)の際に、コンデンサケース490を冷却器2に一時的に固定する役割を有している。一方で、半導体装置202Aがハウジング7と組み合わされる段階においては、被固定部480において、固定部材61を取り外して、その代わりに、ハウジング7も固定することができる固定部材62(
図8)が適用されてよい。この場合において、固定部材61および固定部材62が共通の被固定部480を利用することによって、被固定部を配置するための場所を小さくすることができるので、半導体装置202Aを小型化することができる。
【0066】
<実施の形態1の変形例>
図17は、半導体装置202A(
図4:実施の形態1)の変形例の半導体装置202Bの構成を概略的に示す部分断面図である。半導体装置202Bは、半導体装置における基板ケース501およびコンデンサケース490のそれぞれに代わって、基板ケース501Mおよびコンデンサケース490Mを有している。基板ケース501Mは、基板ケース501Mの第2の辺SD2(
図7)に対応する部分に設けられた嵌め合わせ部FT1(第1の嵌め合わせ部)を有している。コンデンサケース490Mは、嵌め合わせ部FT1が挿入される溝SLを有する嵌め合わせ部FT2(第2の嵌め合わせ部)を有している。なお、実装公差を踏まえて、嵌め合わせ部FT1と冷却器2との間隔は、嵌め合わせ部FT2の厚みより大きくなっていることが好ましい。シーリング材44は、コンデンサケース490の嵌め合わせ部FT2の溝SLにおいて嵌め合わせ部FT1と嵌め合わせ部FT2との間に充填されている。シーリング材44は、ゲルを含有しており、これによりシーリング材44はゲル状とされている。
【0067】
図18および
図19は、半導体装置202Bの製造方法の第1および第2工程を概略的に示す部分断面図である。
図18を参照して、嵌め合わせ部FT2の溝SLに嵌め合わせ部FT1が挿入されることによって、嵌め合わせ部FT1と嵌め合わせ部FT2とが互いに嵌め合わされる。
図19を参照して、ゲルを含有するシーリング材44が形成される。具体的には、シーリング材44が、嵌め合わせ部FT2の溝SLにおいて嵌め合わせ部FT1と嵌め合わせ部FT2との間に充填される。
図20を参照して、上記のようにシーリング材44を形成した後に、ゲルを含有する封止材5が形成される。なお、シーリング材44を充填する工程(
図19)において溝SLの開口部が上方を向き、かつ、封止材5を形成する工程(
図17)において回路パターン32が上方を向くように、重力方向に対する仕掛品の姿勢が調整されてよい。
【0068】
なお上記以外の工程については、実施の形態1とおおよそ同様の工程が適用されてよいので、その説明を省略する。
【0069】
本変形例によれば、シーリング材44を、より安定的に形成することができる。これにより、ゲルを用いた封止材5を基板ケース501M内に充填する際に、封止材5の漏れをシーリング材44が、より確実に防止することができる。
【0070】
<実施の形態2>
(構成)
図20および
図21のそれぞれは、実施の形態2に係る半導体装置202Cの構成を概略的に示す斜視図および分解斜視図である。なおこれらの図において、封止材5(
図4参照)の内部が見えるようにするために、封止材5の図示が省略されている。また、被固定部480には、前述した固定部材61または固定部材62(
図20および
図21において図示せず)が取り付けられていてよい。
【0071】
半導体装置202Cは、基板ケース501(
図3:実施の形態1)に代わって、基板ケース502を有している。基板ケース502は、平滑コンデンサ401のコンデンサケース490と連続的につながることによって、平滑コンデンサ401のコンデンサケース490と共にケース部CPを構成している。これにより、平滑コンデンサ401と基板ケース502とが一体化されている。ケース部CPは冷却器2上において絶縁基板31を囲んでいる。封止材5はケース部CPの内側に充填されている。ケース部CPと冷却器2との間のシーリング材44は、平滑コンデンサ401の耐熱温度よりも低い温度で形成可能な材料からなる。当該材料は、例えば、熱硬化型接着剤である。なお、上記以外の構成については、上述した実施の形態1の構成とほぼ同じであるため、その説明を繰り返さない。
【0072】
(製造方法)
次に、半導体装置202Cの製造方法について、以下に説明する。
【0073】
図21を参照して、まず、冷却器2、絶縁基板31および回路パターン32を含む積層体(
図2参照)が準備される。次に、実施の形態1と同様に、サブモジュール11が実装される。なお、実施の形態1と同様、変形例として、サブモジュール11の状態とされることなく半導体素子1が実装されてよい。次に、冷却器2上に、絶縁基板31を取り囲むようにシーリング材44が形成される。例えば、シーリング材44としての熱硬化型接着剤が、絶縁基板31を取り囲むように塗布される。次に、平滑コンデンサ401と一体化された基板ケース502が取り付けられる。具体的には、ケース部CPがシーリング材44上に、平面視においてシーリング材44と重なるように取り付けられる。ケース部CPと冷却器2との間の接合は、シーリング材44の接着力によって行われてよい。それを補強するために、あるいはそれに代わって、ねじ状の締結部材が用いられてよい。次に、平滑コンデンサ401の端子442と、回路パターン32とが、実施の形態1と同様に電気的に接続される。次に、ケース部CP内に封止材5が充填される。封止材5は、ゲルを含有することによりゲル状であってよい。
【0074】
(効果)
本実施の形態によれば、ケース部CPとして、コンデンサケース490と基板ケース502とが連続的につながっている。これにより、第1に、封止材5の形成工程において、コンデンサケース490と基板ケース502との間を通ってケース部CPの内側から外側へと封止材5の材料が漏れる隙間を有しない構成を、ケース部CPが有することができる。よって、コンデンサケース490が、基板ケース502と共に封止材5の材料を封止する機能を、より確実に確保することができる。よって、コンデンサケース490を冷却器2上に基板ケース502を介することなく配置することが十分に許容される。これにより、コンデンサケース490から突出する端子442の高さを回路パターン32の高さに近づけることができるので、配線インダクタンスをより低減することができる。第2に、コンデンサケース490と基板ケース502とが予め一体化されているので、組立作業を簡素化することができる。
【0075】
<実施の形態3>
(構成)
図22は、実施の形態3に係る半導体装置202Dの構成を概略的に示す斜視図である。
図23および
図24のそれぞれは、半導体装置202Dを、平滑コンデンサ401の図示を省略して概略的に示す斜視図および分解斜視図である。なおこれらの図において、封止材5(
図4参照)の内部が見えるようにするために、封止材5の図示が省略されている。
【0076】
本実施の形態においては、絶縁基板31だけでなく平滑コンデンサ401のコンデンサケース490も支持されるように、冷却器2(
図3:実施の形態1)に比して拡張された冷却器2Lが用いられている。これにより、平滑コンデンサ401のコンデンサケース490が、熱伝導材49を介して冷却器2上に搭載される。よって、コンデンサケース490が冷却器2へ熱的に良好に接続される。シーリング材44および基板ケース503は、冷却器2L上において、絶縁基板31と平滑コンデンサ401とを囲んでいる。
【0077】
なお、上記以外の構成については、上述した実施の形態1の構成とほぼ同じであるため、その説明を繰り返さない。
【0078】
(効果)
本実施の形態によれば、平滑コンデンサ401を半導体装置202Dに、比較的単純な構成で一体化することができる。また、平滑コンデンサ401が冷却器2によって支持されることによって、半導体装置202Dが堅牢化され、その取扱いが簡単になる。
【0079】
また、平滑コンデンサ401のコンデンサケース490が冷却器2に熱的に良好に接続されるので、放熱経路についての複雑な配慮を要することなく、充放電時に発生する平滑コンデンサ401からの熱を冷却器2へ効率的に放出することができる。これにより、平滑コンデンサ401からの熱が半導体素子1の温度上昇につながることを抑制することができる。よって、温度上昇に起因しての半導体素子1の動作損失の増大または性能低下を抑制することができる。
【0080】
<実施の形態3の変形例>
図25、
図26および
図27のそれぞれは、半導体装置202D(
図22)の変形例の半導体装置202Eの構成を概略的に示す斜視図、分解斜視図および部分断面図である。なお、
図25および
図26においては、封止材5(
図27)の図示が省略されている。
【0081】
本変形例に係る半導体装置202Dは、前述した半導体装置202C(
図20および
図21:実施の形態2)とほぼ同様に、基板ケース502を有している。具体的には、基板ケース502は、平滑コンデンサ401のコンデンサケース490と連続的につながることによって、平滑コンデンサ401のコンデンサケース490と共にケース部CPを構成している。ケース部CPの内側には封止材5(
図27)が充填されている。
【0082】
一方で、実施の形態2とは異なり、半導体装置202Eにおいては、半導体装置202D(
図22~
図24)と同様に、平滑コンデンサ401のコンデンサケース490は、熱伝導材49を介して冷却器2上に搭載されている。
【0083】
なお、各実施の形態を自由に組み合わせたり、各実施の形態を適宜、変形、省略したりすることが可能である。
【0084】
<付記>
以下、本開示の諸態様を付記としてまとめて記載する。
【0085】
(付記1)
冷却器(2)と、
前記冷却器(2)上に搭載された絶縁基板(31)と、
前記絶縁基板(31)上に設けられた回路パターン(32)と、
前記回路パターン(32)と電気的に接続された半導体素子(1)と、
平面視で前記半導体素子(1)に重ならないように配置され、静電容量を形成する内部電極(451)と、前記内部電極(451)を収めるコンデンサケース(490)と、前記コンデンサケース(490)から継ぎ目なく突出した端子(442)と、を有する平滑コンデンサ(401)と、
前記平滑コンデンサ(401)の前記端子(442)、前記絶縁基板(31)、および前記回路パターン(32)の各々の少なくとも一部を覆う第1の封止材(5)と、
を備え、
前記平滑コンデンサ(401)の前記端子(442)と前記回路パターン(32)とは、前記端子(442)と前記回路パターン(32)との界面が有する接合力によって互いに直接に接続されている、半導体装置(202A~202E)。
【0086】
(付記2)
付記1に記載の半導体装置(202A~202E)であって、
前記第1の封止材(5)はゲルまたはゴムを含有する、半導体装置(202A~202E)。
【0087】
(付記3)
付記1または2に記載の半導体装置(202A~202E)であって、
前記半導体素子(1)は第1の主面および第2の主面を有しており、
前記半導体装置(202A~202E)は、
前記半導体素子の前記第1の主面に接続された第1の導体部(111)と、
前記半導体素子の前記第2の主面に接続された第2の導体部(112)と、
前記第1の導体部(111)および前記第2の導体部(112)の各々を少なくとも部分的に露出させつつ前記第1の導体部(111)および前記第2の導体部(112)の各々の一部を覆い、前記半導体素子(1)を封止する第2の封止材(130)と、
をさらに備え、
前記半導体素子の前記第1の主面は、前記第1の導体部(111)を介して前記回路パターン(32)と電気的に接続されている、半導体装置(202A~202E)。
【0088】
(付記4)
付記1から3のいずれか1項に記載の半導体装置(202A,202B)であって、
前記冷却器(2)に面する第1の面と、前記第1の面と反対の第2の面とを有し、第1の辺(SD1)および第2の辺(SD2)を含む複数の辺を有する閉曲線に沿って前記冷却器(2)上において前記絶縁基板(31)を囲うように延在する基板ケース(501,501M)と、
前記基板ケース(501,501M)の前記第2の面と前記平滑コンデンサ(401)との間に設けられ、前記基板ケース(501,501M)の材料と前記平滑コンデンサ(401)の前記コンデンサケース(490)の材料との各々よりも弾性率の低い材料からなるシーリング材(44)と、
をさらに備え、
前記基板ケース(501,501M)の前記第2の面は、前記第1の辺(SD1)に対応した第1の領域(RG1)と、前記第2の辺(SD2)に対応し前記第1の領域(RG1)よりも低められた第2の領域(RG2)と、を含み、
前記平滑コンデンサ(401)は前記シーリング材(44)を介して前記第2の面の前記第2の領域(RG2)上に取り付けられており、
前記基板ケース(501,501M)および前記平滑コンデンサ(401)の内側に前記第1の封止材(5)が充填されている、
半導体装置(202A,202B)。
【0089】
(付記5)
付記4に記載の半導体装置(202A,202B)であって、
前記シーリング材(44)はゴムを含有する、半導体装置(202A,202B)。
【0090】
(付記6)
付記4に記載の半導体装置(202B)であって、
前記基板ケース(501M)は、前記基板ケース(501M)の前記第2の辺に対応する部分に設けられた第1の嵌め合わせ部(FT1)を有しており、
前記コンデンサケース(490)は、前記第1の嵌め合わせ部(FT1)が挿入される溝(SL)を有する第2の嵌め合わせ部(FT2)を有しており、
前記シーリング材(44)は、ゲルを含有し、前記コンデンサケース(490)の前記第2の嵌め合わせ部(FT2)の前記溝(SL)において前記第1の嵌め合わせ部(FT1)と前記第2の嵌め合わせ部(FT2)との間に充填されている、
半導体装置(202B)。
【0091】
(付記7)
付記1から6のいずれか1項に記載の半導体装置(200)であって、
固定部材(62)と、
前記固定部材(62)を用いて前記冷却器(2)に取り付けられたハウジング(7)と、
をさらに備え、
前記平滑コンデンサ(401)の前記コンデンサケース(490)は、前記固定部材(62)が適用されるための被固定部(480)を有しており、
前記固定部材(62)は、前記平滑コンデンサ(401)の前記コンデンサケース(490)の前記被固定部(480)と、前記冷却器(2)と、前記ハウジング(7)と、を互いに固定している、
半導体装置(200)。
【0092】
(付記8)
付記1から3のいずれか1項に記載の半導体装置(202C)であって、
前記平滑コンデンサ(401)の前記コンデンサケース(490)と連続的につながることによって前記平滑コンデンサ(401)の前記コンデンサケース(490)と共にケース部(CP)を構成する基板ケース(502)をさらに備え、前記ケース部(CP)は前記冷却器(2)上において前記絶縁基板(31)を囲んでおり、前記第1の封止材(5)は前記ケース部(CP)の内側に充填されており、
前記ケース部(CP)と前記冷却器(2)との間に、前記平滑コンデンサ(401)の耐熱温度よりも低い温度で形成可能な材料からなるシーリング材(44)をさらに備える、半導体装置(202C)。
【0093】
(付記9)
付記1から3のいずれか1項に記載の半導体装置(202D,202E)であって、
前記平滑コンデンサ(401)の前記コンデンサケース(490)は熱伝導材(49)を介して前記冷却器上に搭載されている、半導体装置(202D,202E)。
【0094】
(付記10)
付記1から9のいずれか1項に記載の半導体装置(202A~202E)であって、
前記平滑コンデンサ(401)の前記端子(442)は、
前記平滑コンデンサ(401)の前記コンデンサケース(490)から延び、前記回路パターン(32)からは離れた根元部分(RT)と、
前記根元部分(RT)から延び、前記回路パターン(32)に直接に接続された複数の接続部分(CN)と、
を有しており、前記複数の接続部分(CN)は互いに分離されている、半導体装置(202A~202E)。
【0095】
(付記11)
付記1から10のいずれか1項に記載の半導体装置(202A~202E)であって、
前記半導体素子(1)はワイドバンドギャップ半導体素子である、半導体装置(202A~202E)。
【0096】
(付記12)
付記1から11のいずれか1項に記載の半導体装置(202A~202E)を有し、入力される電力を、変換して出力する主変換回路(201)と、
前記主変換回路を制御する制御信号を前記主変換回路に出力する制御回路(203)と、
を備えた、電力変換装置(200)。
【0097】
(付記13)
付記6に記載の半導体装置(202B)を製造するための、半導体装置の製造方法であって、
ゲルを含有する前記シーリング材(44)を形成する工程と、
前記シーリング材(44)を形成する工程の後に、ゲルを含有する前記第1の封止材(5)を形成する工程と、
を備えた、半導体装置の製造方法。
【0098】
(付記14)
付記1から6のいずれか1項に記載の半導体装置(202A,202B)を製造するための、半導体装置の製造方法であって、
a)前記平滑コンデンサ(401)の前記コンデンサケース(490)が有する被固定部(480)を前記冷却器(2)へ固定する工程と、
b)前記a)の後に、前記平滑コンデンサ(401)の前記端子(442)と前記回路パターン(32)とを接合する工程と、
を備えた、半導体装置の製造方法。
【0099】
(付記15)
付記14に記載の半導体装置の製造方法であって、
前記a)は、前記平滑コンデンサ(401)の前記コンデンサケース(490)の前記被固定部(480)へ第1の固定部材(61)を適用することによって行われ、
前記製造方法は、さらに、
c)前記冷却器(2)をハウジング(7)に搭載する工程と、
d)前記c)の後、前記第1の固定部材(61)を取り外す工程と、
e)前記平滑コンデンサ(401)の前記コンデンサケース(490)の前記被固定部(480)へ第2の固定部材(62)を適用することによって、前記平滑コンデンサ(401)の前記コンデンサケース(490)の前記被固定部(480)と、前記冷却器(2)と、前記ハウジング(7)と、を互いに固定する工程と、
を備えた、半導体装置の製造方法。
【符号の説明】
【0100】
1 半導体素子、2,2L 冷却器、5 第1の封止材、7 ハウジング、11 サブモジュール、31 絶縁基板、32 回路パターン、44 シーリング材、49 熱伝導材、61 固定部材(第1の固定部材)、62 固定部材(第2の固定部材)、130 第2の封止材、200 電力変換装置、201 主変換回路、202A~202E 半導体装置、203 制御回路、204 駆動回路、401 平滑コンデンサ、440 バスバー、442 端子、450 コンデンサ素子、451 内部電極、480 被固定部、490,490M コンデンサケース、501,501M,502,503 基板ケース、CN 接続部分、CP ケース部、FT1 第1の嵌め合わせ部、FT2 第2の嵌め合わせ部、RG1 第1の領域、RG2 第2の領域、RT 根元部分、SD1 第1の辺、SD2 第2の辺、SL 溝。