(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024017909
(43)【公開日】2024-02-08
(54)【発明の名称】IPMモータ、そのロータ、ロータコア基礎構造、およびロータ形成方法
(51)【国際特許分類】
H02K 1/276 20220101AFI20240201BHJP
H02K 15/03 20060101ALI20240201BHJP
【FI】
H02K1/276
H02K15/03 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022120864
(22)【出願日】2022-07-28
(71)【出願人】
【識別番号】000203634
【氏名又は名称】多摩川精機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100119264
【弁理士】
【氏名又は名称】富沢 知成
(72)【発明者】
【氏名】臼田 伊織
(72)【発明者】
【氏名】志村 泰司
【テーマコード(参考)】
5H622
【Fターム(参考)】
5H622AA03
5H622CA02
5H622CA07
5H622CB03
5H622CB05
5H622PP03
5H622QB05
(57)【要約】 (修正有)
【課題】マグネット挿入工程における作業性を改善することのできる、IPMモータ製造技術を提供する。
【解決手段】IPMモータのロータコア基礎構造5は、複数のコアピース1、1、・・・からなるロータコアを備えたIPMモータを形成するための構造であって、ロータコア形成の基礎単位であるコアピース1が複数連結してなり、各コアピース1にはマグネット挿入用の挿入孔2が設けられており、隣接するコアピース1-1の間は各外周側の角部を屈曲可能につなげる関節部3をなしている構成とする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のコアピースからなるロータコアを備えたIPMモータ用のロータコア基礎構造であって、
ロータコア形成の基礎単位である該コアピースが複数連結してなり、
該コアピースにはマグネット挿入用の挿入孔が設けられており、
隣接するコアピースの間は各外周側の角部を屈曲可能につなげる関節部をなしている
ことを特徴とする、IPMモータのロータコア基礎構造。
【請求項2】
請求項1に記載のロータコア基礎構造が内周側に湾曲して環形を形成しており、
前記コアピースの挿入孔にマグネットが挿入されてなる
ことを特徴とする、IPMモータのロータ。
【請求項3】
前記マグネットはハルバッハ配列をなすように着磁されていることを特徴とする、請求項2に記載のIPMモータのロータ。
【請求項4】
請求項2、3のいずれかに記載のロータを備えていることを特徴とする、IPMモータ。
【請求項5】
請求項1に記載のロータコア基礎構造を用い、
前記挿入孔にマグネットを挿入するマグネット挿入過程と、
該マグネットが挿入された該ロータコア基礎構造を内周側に湾曲させて環形にし、両端部をつなげる環形形成過程と、
を備えてなることを特徴とする、IPMモータのロータ形成方法。
【請求項6】
前記マグネット挿入過程では未着磁のマグネットが挿入され、その後、該マグネットに着磁する着磁過程を備えることを特徴とする、請求項5に記載のIPMモータのロータ形成方法。
【請求項7】
前記着磁過程ではハルバッハ配列を有するように着磁がなされることを特徴とする、請求項6に記載のIPMモータのロータ形成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はIPMモータ、そのロータ、ロータコア基礎構造、およびロータ形成方法に係り、特にロータ形成工程の作業性を改善することのできる、IPMモータのロータ等に関するものである。
【背景技術】
【0002】
モータにおけるロータの磁石配置方法には従来、セグメント磁石をロータ表面に貼り付けるか、リング磁石を用いることで構成するSPM(Surfacial Permanent Magnet)構造による場合と、磁石をロータ内に埋め込むことで構成するIPM(Internal Permanent Magnet)構造による場合とがある。IPMモータ用のロータ構造については従来、特許出願等も多々なされている。
【0003】
たとえば出願人による後掲特許文献1には、ハルバッハ配列を有するIPMモータにおけるコギングトルク等の軽減を目的として、複数のセグメント磁石により囲繞形態に形成される極が連続配置されて構成され、各極は一の底部とその両端部に設けられた二の壁部とからなり、かつ、ロータの断面形状中における全ての二の壁部間の外縁が、軸心を中心とし外縁の最外点を通る円の円弧よりも曲率の大きい円の円弧弧より形成されている構成が開示されている。
【0004】
なお
図5は、このIPM構造を有するモータのロータ510製造方法を示す説明図であり、図中、(a)は当該方法を示す側面図、(b)は製造されたロータ510の平面図だが、図示するようにロータコア55は当然ながら環形であって、そのマグネット挿入孔52に着磁したマグネット56が挿入されて、ロータ510が形成される。
【0005】
また特許文献2には、磁石挿入孔内にロータ磁石を容易に挿入でき、また孔内での移動を抑制できるIPMモータ用のロータとして、積層によりロータコアを形成する複数のロータコア部材の少なくとも一つは、磁石挿入孔の内縁の一部を構成し、これに挿入されたロータ磁石と接触する突起部と、それを挟んで反対側に設けられた突起部変形許容部とを有する構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許6283788号公報「IPMモータのロータ構造、ロータおよびIPMモータ」
【特許文献2】特開2021-164174号公報「IPMモータ用ロータ」
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述の通り文献1に開示したIPM構造では、着磁したマグネットをマグネット挿入孔に挿入する方法が用いられているが、着磁したマグネットをロータコアに挿入することは、マグネットの極同士が反発するため、困難を伴う。すなわち、ロータ製造におけるマグネット挿入工程の作業性が悪く、作業性の改善が求められていた。
【0008】
そこで本発明が解決しようとする課題は、かかる従来技術の問題点をなくし、マグネット挿入工程における作業性を改善することのできる、IPMモータおよびその製造技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本願発明者は上記課題について検討した結果、変形可能なロータコアを用い、未着磁状態でマグネットを挿入孔に挿入し、その後で着磁し、着磁後にロータコアを変形してロータを形成するという方法にによって課題解決できることを見出し、これに基づいて本発明を完成するに至った。すなわち、上記課題を解決するための手段として本願で特許請求される発明、もしくは少なくとも開示される発明は、以下の通りである。
【0010】
〔1〕 複数のコアピースからなるロータコアを備えたIPMモータ用のロータコア基礎構造であって、ロータコア形成の基礎単位である該コアピースが複数連結してなり、該コアピースにはマグネット挿入用の挿入孔が設けられており、隣接するコアピースの間は各外周側の角部を屈曲可能につなげる関節部をなしていることを特徴とする、IPMモータのロータコア基礎構造。
〔2〕 〔1〕に記載のロータコア基礎構造が内周側に湾曲して環形を形成しており、前記コアピースの挿入孔にマグネットが挿入されてなることを特徴とする、IPMモータのロータ。
〔3〕 前記マグネットはハルバッハ配列をなすように着磁されていることを特徴とする、〔2〕に記載のIPMモータのロータ。
〔4〕 〔2〕、〔3〕のいずれかに記載のロータを備えていることを特徴とする、IPMモータ。
【0011】
〔5〕 〔1〕に記載のロータコア基礎構造を用い、前記挿入孔にマグネットを挿入するマグネット挿入過程と、該マグネットが挿入された該ロータコア基礎構造を内周側に湾曲させて環形にし、両端部をつなげる環形形成過程と、を備えてなることを特徴とする、IPMモータのロータ形成方法。
〔6〕 前記マグネット挿入過程では未着磁のマグネットが挿入され、その後、該マグネットに着磁する着磁過程を備えることを特徴とする、〔5〕に記載のIPMモータのロータ形成方法。
〔7〕 前記着磁過程ではハルバッハ配列を有するように着磁がなされることを特徴とする、〔6〕に記載のIPMモータのロータ形成方法。
【発明の効果】
【0012】
本発明のIPMモータ、そのロータ、ロータコア基礎構造、およびロータ形成方法は上述のように構成されるため、これらによれば、マグネット挿入工程における作業性を改善することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明のIPMモータのロータコア基礎構造の構成例を示す平面視の説明図である。
【
図2】本発明のIPMモータのロータの構成を示す平面視の説明図である。
【
図3】本発明のIPMモータのロータ形成方法の構成を示すフロー図である。
【
図4】本発明のIPMモータのロータ形成方法を構成する着磁過程を示す平面視の説明図である。
【
図5】従来のIPMモータのロータ製造方法を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面により本発明を詳細に説明する。
図1は、本発明のIPMモータのロータコア基礎構造の構成例を示す平面視の説明図である。また
図2は、本発明のIPMモータのロータの構成を示す平面視の説明図である。これらに示すように本IPMモータのロータコア基礎構造5は、複数のコアピース1、1、・・・からなるロータコア10を備えたIPMモータを形成するための構造であって、ロータコア10形成の基礎単位であるコアピース1が複数連結してなり、各コアピース1にはマグネット6挿入用の挿入孔2が設けられており、隣接するコアピース1-1の間は各外周側の角部を屈曲可能につなげる関節部3をなしていることを、主たる構成とする。
【0015】
かかる構成の本IPMモータのロータコア基礎構造5は、追って
図3等による説明でも述べる通り、複数連結する各コアピース1、1、1、・・・に設けられている各挿入孔2、2、2、・・・にマグネット6、6、6、・・・が挿入され、その後、関節部3、3、・・・がコアピース1、1、・・・の内周側に屈曲されてロータコア基礎構造5全体が環形に形成され、それによって最終的にロータコア10の形成が得られる。すなわち、両端を有する長尺の形態のロータコア基礎構造5を用いて、環形のロータコア10が形成される。
【0016】
関節部3は、左右をコアピース1、1の本体に挟まれて薄肉に形成されているため、内周側への屈曲は容易になされる。コアピース1は、ロータコア10形成のための分割構造とも言える。なお、
図1、2では20個のコアピース1によりロータコア基礎構造5が構成されているが、この個数は限定されず、最終的な環形形成を円滑に行える限り、適宜の数に設定することができる。
【0017】
図2に示すように、ロータコア基礎構造5が内周側に湾曲して環形を形成しており、コアピース1、1、1、・・・の各挿入孔2、2、2、・・・にマグネット6、6、6、・・・が挿入されてなるロータコア10を有するIPMモータ、およびそのロータも、本発明の範囲内である。また、マグネット6、6、6、・・・は、ハルバッハ配列をなすように着磁されている構成とすることができる。
【0018】
図3は、本発明のIPMモータのロータ形成方法の構成を示すフロー図である。図示するように本IPMモータのロータ形成方法は、以上述べたいずれかの構成をとるロータコア基礎構造5を用い、挿入孔2にマグネット6を挿入するマグネット挿入過程P10と、マグネット6が挿入されたロータコア基礎構造5を内周側に湾曲させて環形にし、両端部をつなげる環形形成過程P20とを備えることを、主たる構成とする。
【0019】
かかる構成の本フローによれば、マグネット挿入過程P10においてロータコア基礎構造5の各挿入孔2、2、2、・・・にマグネット6、6、6、・・・が挿入され、その後、環形形成過程P20においてマグネット6が挿入されたロータコア基礎構造5が内周側に湾曲させられて環形となり、その両端部つなげられて環形が形成され、ロータコア10が得られる。
【0020】
本ロータ形成方法は、なお、マグネット挿入過程P10では未着磁のマグネットが挿入され、その後、
図3に示す通りマグネットに着磁する着磁過程P15を備えたフローとすることができる。すなわち、未着磁のマグネット6、6、6、・・・を挿入孔2、2、2、・・・に挿入する方式とすることで、着磁済みのマグネット6を挿入する際のマグネット同士の反発や吸引を発生させることなく、円滑に挿入作業を行うことができる。作業性を高めることができる。
【0021】
このようにしてマグネット挿入過程P10での全マグネット6、6、6、・・・の挿入が完了した後に、着磁過程P15において未着磁の各マグネット6をたとえばハルバッハ配列を有するように等、然るべく着磁する。かかるマグネット挿入過程P10および着磁過程P15とすることによって、ロータコア10製造時の作業性を高めることができる。なお着磁過程P15後は、図示する通り環形形成過程P20を行う。
【0022】
なお
図4は、本発明のIPMモータのロータ形成方法を構成する着磁過程P15を示す平面視の説明図である。このように、環形形成過程P20によって環形に形成される前に、未着磁のマグネット6、6、6、・・・を挿入孔2、2、2、・・・に挿入し(マグネット挿入過程P10)、ついで着磁過程P15に供するのである。
【産業上の利用可能性】
【0023】
本発明のIPMモータ、そのロータ、ロータコア基礎構造、およびロータ形成方法によれば、マグネット挿入工程における作業性を改善することができる。したがって、ACサーボモータを初めとするIPMモータ製造・使用分野、殊にFA分野、および関連する全分野において、産業上利用性が高い発明である。
【符号の説明】
【0024】
1…コアピース
2…挿入孔
3…関節部
5…IPMモータのロータコア基礎構造
6…マグネット
10…ロータコア
P10…マグネット挿入過程
P15…着磁過程
P20…環形形成過程
52…マグネット挿入孔
55…ロータコア
56…マグネット
58…モータ軸
510…ロータ