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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024179092
(43)【公開日】2024-12-26
(54)【発明の名称】車両用成形天井の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 53/36 20060101AFI20241219BHJP
   B29C 53/04 20060101ALI20241219BHJP
   B29C 65/08 20060101ALI20241219BHJP
   B60R 13/02 20060101ALI20241219BHJP
【FI】
B29C53/36
B29C53/04
B29C65/08
B60R13/02 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023097631
(22)【出願日】2023-06-14
(71)【出願人】
【識別番号】509069892
【氏名又は名称】株式会社HOWA
(74)【代理人】
【識別番号】110000394
【氏名又は名称】弁理士法人岡田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】菊地 智博
(72)【発明者】
【氏名】明智 茂治
【テーマコード(参考)】
3D023
4F209
4F211
【Fターム(参考)】
3D023BA01
3D023BB03
3D023BC01
3D023BD01
3D023BE05
3D023BE31
4F209AG23
4F209AH26
4F209NA03
4F209NA13
4F209NB01
4F209NG07
4F209NH07
4F209NJ08
4F209NK07
4F211AG23
4F211AH26
4F211TA01
4F211TC08
4F211TD12
4F211TH18
4F211TN23
4F211TQ05
(57)【要約】
【課題】車両用成形天井における端末処理の品質の安定化を図ると共に、端末処理における作業者の熱管理の負担を減らし、作業者がより安全に作業することができる車両用成形天井の製造方法を提供する。
【解決手段】成形天井10の開口部12の周縁を端末処理する、成形天井の製造方法であって、成形天井10を基台20に載置する載置工程と、第1の超音波ホーンとして機能する折曲駒23によって、端縁部15を、成形天井10の裏面10bに沿うように折り曲げる折曲工程と、折り曲げられた端縁部15と成形天井10の裏面10bが密着するように、第1先端部24によって端縁部15を基台20の受け部21aに向かって押圧する押さえ工程と、第1先端部24で押圧された状態の端縁部15と成形天井10の裏面10bを、第1先端部24を介して超音波溶着させることにより、溶着された巻込部14が形成される第1溶着工程とを含む。
【選択図】図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
成形面が所要曲面に形成された成形型で加圧することにより成形天井を成形した後、前記成形天井に設けられた開口部の周縁に沿った端縁部を前記成形天井の裏面側に向かって折り曲げ、前記成形天井の裏面と接着させる、車両用成形天井の製造方法であって、
前記成形天井は、裏面側に熱可塑性樹脂を含む面状の裏材を備えた構成とされ、
前記成形天井を、前記開口部の周縁を支持する受け部を有する基台の載置面に、前記成形天井の表面側が前記基台の載置面と対向し、かつ前記端縁部が前記受け部より前記基台の外側に延在するように載置する載置工程と、
超音波振動を伝達可能な第1先端部を有し、第1の超音波ホーンとして機能する折曲駒によって、前記端縁部を、前記端縁部が前記成形天井の裏面に沿うように折り曲げる、折曲工程と、
前記折曲工程で折り曲げられた前記端縁部と前記成形天井の裏面が密着するように、前記第1先端部によって前記端縁部を前記基台の前記受け部に向かって押圧する、押さえ工程と、
前記第1先端部で押圧された状態の前記端縁部と前記成形天井の裏面を、前記第1先端部を介して超音波溶着させることにより、溶着された巻込部が形成される、第1溶着工程と、を含む車両用成形天井の製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載された車両用成形天井の製造方法であって、
前記折曲工程は、
前記折曲駒を、前記第1先端部が前記基台に載置された前記成形天井の前記端縁部に対し前記成形天井の表面側から近接する第1移動軌跡の進入方向に移動させて、前記第1先端部を前記成形天井の前記端縁部に当接させ、さらに前記折曲駒を前記第1先端部が前記端縁部から離れない位置まで移動させることにより、前記端縁部を前記成形天井の表面側から裏面側に向かって折り曲げる、第1折曲工程と、
前記折曲駒を、前記第1先端部が前記基台に載置された前記成形天井の裏面と近接する第2移動軌跡の進入方向に移動させることにより、前記第1折曲工程で折り曲げられた前記端縁部を、前記成形天井の裏面に沿うようにさらに折り曲げる、第2折曲工程と、を含む、車両用成形天井の製造方法。
【請求項3】
請求項2に記載された車両用成形天井の製造方法であって、
前記押さえ工程は、
前記第1先端部を、前記第2折曲工程でさらに折り曲げられた前記端縁部の厚さ方向に前記端縁部と前記成形天井の裏面が面接触するまで引き込むように、前記折曲駒を移動させる、引込工程を含み、
前記引込工程で引き込まれた前記第1先端部によって、前記端縁部が押圧される、車両用成形天井の製造方法。
【請求項4】
請求項2又は請求項3に記載された車両用成形天井の製造方法であって、
前記第1折曲工程は、
前記第1先端部と対向して近接離間するように進退移動可能に配設され、板面が前記基台の載置面と対向する板状の支持部材を備え、
前記支持部材が、前記基台に載置された前記成形天井の前記端縁部の裏面側に近接するように進入する動作と、
前記支持部材の先端が、前記端縁部の折曲げ基点に接するように前記成形天井に対して位置決めされる動作と、を含み、
前記折曲駒を前記第1移動軌跡の進入方向に移動させることにより、前記端縁部が前記支持部材の板面上に折り曲げられる工程であり、
前記第1折曲工程で前記端縁部が折り曲げられた後に、前記支持部材が退避し、前記支持部材が退避した後に前記第2折曲工程が行われる、車両用成形天井の製造方法。
【請求項5】
請求項2又は請求項3に記載された車両用成形天井の製造方法であって、
前記成形天井は、前記端縁部の折曲げ基点において、前記成形天井の裏面側から厚さ方向に凹んだ凹部又は厚さ方向に切り込まれた切込み部を有しており、
前記第1折曲工程と前記第2折曲工程において、前記端縁部が前記折曲げ基点で折り曲げられる、車両用成形天井の製造方法。
【請求項6】
請求項2又は請求項3に記載された車両用成形天井の製造方法であって、
前記成形天井の裏面における前記開口部の周辺領域の少なくとも一部の領域に、前記開口部の周縁を補強する補強部材を配置する、配置工程と、
前記補強部材を前記成形天井の裏面に固着させる、固着工程と、を含み、
前記固着工程は、前記第2折曲工程から前記第1溶着工程終了までの間に行われる、車両用成形天井の製造方法。
【請求項7】
請求項6に記載された車両用成形天井の製造方法であって、
前記固着工程は、超音波振動を伝達可能な第2先端部を有し、第2の超音波ホーンとして機能する補強用駒によって前記補強部材を前記成形天井の裏面に超音波溶着する、第2溶着工程を含む、車両用成形天井の製造方法。
【請求項8】
請求項7に記載された車両用成形天井の製造方法であって、
前記補強用駒は、前記第2先端部に前記補強部材を保持可能な保持部を有しており、
前記配置工程は、前記保持部で前記補強部材を保持しながら、前記補強用駒を前記第2先端部が前記基台に載置された前記成形天井の裏面と近接する方向に移動させることにより、前記補強部材を前記開口部の周辺領域に配置する、車両用成形天井の製造方法。
【請求項9】
請求項6に記載された車両用成形天井の製造方法であって、
前記固着工程は、前記第1溶着工程と同時に行われる、車両用成形天井の製造方法。
【請求項10】
請求項6に記載された車両用成形天井の製造方法であって、
前記補強部材は、前記成形天井における前記開口部を形成するために除かれた部位の端材が用いられる、車両用成形天井の製造方法。
【請求項11】
請求項6に記載された車両用成形天井の製造方法であって、
前記補強部材は、プラスチック、樹脂、金属板、又は木材から選択される、車両用成形天井の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用成形天井の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車内装部品の成形天井は、製品の端末の見栄え向上のために種々の方法で端末処理が施されている。例えば、成形天井の端末における裏材部分を剥がして表皮のみを残して、接着剤を塗布した後に人手により表皮を巻き込む方法がある。また、熱風を当てる、あるいは高温の駒を接触させる等することで、裏材を加熱し熱溶融させた上で、巻込み用の駒を用いて端末部分を巻き込む方法がある。特許文献1には、成形天井のサンルーフ用開口における表皮の端末処理において、表皮の巻き込みシロを熱風ノズルで加熱軟化処理した後、巻き込み駒の可動により開口縁部に沿って表皮を巻き込み処理する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008-143455号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、人手により表皮を巻き込む作業を行う場合には、作業の習熟が必要であり、品質の安定性は作業者に依存する傾向にあった。一方、治具に成形天井をセットした後に、裏材を加熱し熱溶融させた上で巻き込み用の駒で端末処理を行う場合には、自動で表皮を巻き込みできるものの、駒の余熱が必要であるため、巻き込み作業をしない間でも稼働させておかなければならず、光熱費が高くなる傾向にあった。また、作業者が製品をセット又は取り出しを行う際に、常に高温の熱風口あるいは加熱用の駒が待機しており、高温部位に接触しないように細心の注意を払う必要があった。
【0005】
本発明は、このような点に鑑みて創案されたものであり、本発明が解決しようとする課題は、車両用成形天井における端末処理の品質の安定化を図ると共に、端末処理における作業者の熱管理の負担を減らし、作業者がより安全に作業することができる車両用成形天井の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決する車両用成形天井の製造方法の一つの特徴は、成形面が所要曲面に形成された成形型で加圧することにより成形天井を成形した後、前記成形天井に設けられた開口部の周縁に沿った端縁部を前記成形天井の裏面側に向かって折り曲げ、前記成形天井の裏面と接着させる、車両用成形天井の製造方法であって、前記成形天井は、裏面側に熱可塑性樹脂を含む面状の裏材を備えた構成とされ、前記成形天井を、前記開口部の周縁を支持する受け部を有する基台の載置面に、前記成形天井の表面側が前記基台の載置面と対向し、かつ前記端縁部が前記受け部より前記基台の外側に延在するように載置する載置工程と、超音波振動を伝達可能な第1先端部を有し、第1の超音波ホーンとして機能する折曲駒によって、前記端縁部を、前記成形天井の裏面に沿うように折り曲げる折曲工程と、前記折曲工程で折り曲げられた前記端縁部と前記成形天井の裏面が密着するように、前記第1先端部によって前記端縁部を前記基台の前記受け部に向かって押圧する押さえ工程と、前記第1先端部で押圧された状態の前記端縁部と前記成形天井の裏面を、前記第1先端部を介して超音波溶着させることにより、溶着された巻込部が形成される第1溶着工程とを含む。
【0007】
上記工程の一つの特徴及び利点は、成形天井に設けられた開口部の周縁の端縁部が、第1の超音波ホーンとして機能する折曲駒で成形天井の裏面に向かって折り曲げられる。折り曲げられた端縁部は、折曲駒の第1先端部で押圧される。これにより、端縁部と成形天井の裏面がより密着した状態で、第1先端部を介して超音波振動が伝達され、端縁部を成形天井の裏面に確実に超音波溶着し得る。したがって、成形天井の開口部の端末を折り曲げ、成形天井の裏面に溶着させる一連の工程を、自動で行うことができ、端末処理の品質の安定化を図ることができる。また、折曲駒が、折り曲げ及び超音波溶着用の治具を兼ねることにより、折曲駒とは別に成形天井の端縁部を加熱するための加熱用の駒や熱風ダクト等を設ける必要がなく、作業者の熱管理の負担軽減や余熱のための光熱費の削減を図ることができる。さらに、作業者が製品をセット又は取り出しを行う際に、その周囲における高温の部位を減らすことができ、作業の安全性の向上を図ることができる。
【0008】
上記車両用成形天井の製造方法について、前記折曲工程は、前記折曲駒を、前記第1先端部が前記基台に載置された前記成形天井の前記端縁部に対し前記成形天井の表面側から近接する第1移動軌跡の進入方向に移動させて、前記第1先端部を前記成形天井の前記端縁部に当接させ、さらに前記折曲駒を前記第1先端部が前記端縁部から離れない位置まで移動させることにより、前記端縁部を前記成形天井の表面側から裏面側に向かって折り曲げる第1折曲工程と、前記折曲駒を、前記第1先端部が前記基台に載置された前記成形天井の裏面と近接する第2移動軌跡の進入方向に移動させることにより、前記第1折曲工程で折り曲げられた前記端縁部を、前記成形天井の裏面に沿うようにさらに折り曲げる第2折曲工程とを含む、製造方法であっても良い。
【0009】
上記工程の一つの特徴及び利点は、折曲工程は、第1折曲工程と第2折曲工程を含んでいる。成形天井における開口部の端縁部は、折曲駒が第1移動軌跡の進入方向に移動し、第1先端部が端縁部に当接しながら端縁部から離れない位置まで移動することで、進入方向に沿うように途中まで折り曲げられる。そしてその状態から折曲駒が第2移動軌跡の進入方向に移動することで、端縁部が成形天井の裏面に沿うようにさらに折り曲げられる。したがって、製品によって端縁部を折り曲げる基点のばらつきが生じることを抑制し得る。
【0010】
上記車両用成形天井の製造方法について、前記押さえ工程は、前記第1先端部を、前記第2折曲工程でさらに折り曲げられた前記端縁部の厚さ方向に前記端縁部と前記成形天井の裏面が面接触するまで引き込むように、前記折曲駒を移動させる、引込工程を含み、前記引込工程で引き込まれた前記第1先端部によって、前記端縁部が押圧される、製造方法であっても良い。
【0011】
上記工程の一つの特徴及び利点は、押さえ工程において、第2折曲工程で折り曲げられた端縁部の厚さ方向に第1先端部を引き込むように折曲駒を移動させる。これにより、成形天井の裏面と近接した端縁部が押圧されて、さらにしっかりと折り曲げられる。したがって、端縁部と成形天井の裏面との間に隙間が生じている場合でも、端縁部と成形天井の裏面とを密着させることができ、必要な部位まで超音波振動を伝達し得る。
【0012】
上記車両用成形天井の製造方法について、前記第1折曲工程は、前記第1先端部と対向して近接離間するように進退移動可能に配設され、板面が前記基台の載置面と対向する板状の支持部材を備え、前記支持部材が、前記基台に載置された前記成形天井の前記端縁部の裏面側に近接するように進入する動作と、前記支持部材の先端が、前記端縁部の折曲げ基点に接するように前記成形天井に対して位置決めされる動作とを含み、前記折曲駒を前記第1移動軌跡の進入方向に移動させることにより、前記端縁部が前記支持部材の板面上に折り曲げられる工程であり、前記第1折曲工程で前記端縁部が折り曲げられた後に、前記支持部材が退避し、前記支持部材が退避した後に前記第2折曲工程が行われる、製造方法であっても良い。
【0013】
上記工程の一つの特徴及び利点は、第1折曲工程において、板状の支持部材が成形天井の端縁部を挟んで、折曲駒の第1先端部と対向する位置に進入して待機する。支持部材の先端は、端縁部の裏面側において、折曲げ基点に接する。これにより、折曲駒が第1移動軌跡の進入方向に移動することで、板状の支持部材の板面上に成形天井の端縁部が折り曲げられる。したがって、成形天井の材料構成や開口部の形状によって端縁部が曲がりにくい場合であっても、支持部材の先端を基点にして端縁部を安定した位置で折り曲げることができる。
【0014】
上記車両用成形天井の製造方法について、前記成形天井は、前記端縁部の折曲げ基点において、前記成形天井の裏面側から厚さ方向に凹んだ凹部又は厚さ方向に切り込まれた切込み部を有しており、前記第1折曲工程と前記第2折曲工程において、前記端縁部が前記折曲げ基点で折り曲げられる、製造方法であっても良い。
【0015】
上記工程の一つの特徴及び利点は、成形天井の折曲げ基点において、裏面側から厚さ方向に凹んだ凹部又は厚さ方向に切り込まれた切込み部が設けられている。これにより、成形天井の材質等によらず、折曲げ基点において基材等が曲がり易くなると共に、折曲げの基点が位置決めされ、第1折曲工程において安定した位置で端縁部を折り曲げることができる。また、第2折曲工程で端縁部をさらに折り曲げるときにも、よりきれいな折り曲げを実現し得る。
【0016】
上記車両用成形天井の製造方法について、前記成形天井の裏面における前記開口部の周辺領域の少なくとも一部の領域に前記開口部の周縁を補強する補強部材を配置する、配置工程と、前記補強部材を前記成形天井の裏面に固着させる、固着工程とを含み、前記固着工程は、前記第2折曲工程から前記第1溶着工程終了までの間に行われる、製造方法であっても良い。
【0017】
上記工程の一つの特徴及び利点は、成形天井の開口部の周辺領域に補強部材を配置し、固着させることにより、開口部の周辺領域の強度の向上を図り得る。また、補強部材の固着工程を端縁部に係る第2折曲工程から第1溶着工程終了までの間に行うことにより、成形天井の開口部の周縁における端末処理と同時に補強部材の固着を行うことができる。したがって、後工程の短縮を図ることができる。
【0018】
上記車両用成形天井の製造方法について、前記固着工程は、超音波振動を伝達可能な第2先端部を有し、第2の超音波ホーンとして機能する補強用駒によって前記補強部材を前記成形天井の裏面に超音波溶着する、第2溶着工程とを含む、製造方法であっても良い。
【0019】
上記工程の一つの特徴及び利点は、第2溶着工程において、第2の超音波ホーンとして機能する補強用駒によって、成形天井の開口部の周辺領域の少なくとも一部の領域において補強部材が超音波溶着される。第2溶着工程を第2折曲工程から第1溶着工程終了までの間に行うことにより、成形天井の開口部の周縁における端末処理と同時に補強部材の溶着を行うことができる。したがって、後工程の短縮を図ることができる。
【0020】
上記車両用成形天井の製造方法について、前記補強用駒は、前記第2先端部に前記補強部材を保持可能な保持部を有しており、前記配置工程は、前記保持部で前記補強部材を保持しながら、前記補強用駒を前記第2先端部が前記基台に載置された前記成形天井の裏面と近接する方向に移動させることにより、前記補強部材を前記開口部の周辺領域に配置する、製造方法であっても良い。
【0021】
上記工程の一つの特徴及び利点は、配置工程において、補強用駒の保持部で補強部材を保持しながら、成形天井の裏面に向かって移動させて、開口部の周辺領域に配置する。そして、補強用駒の第2先端部を介して超音波振動を伝達することで、配置された補強部材を成形天井の裏面と超音波溶着させる。したがって、補強部材を手作業でなく自動で開口部の周辺領域に配置することができると共に、成形天井の裏面に超音波溶着するまでの工程を効率的に行うことができる。
【0022】
上記車両用成形天井の製造方法について、前記固着工程は、前記第1溶着工程と同時に行われる、製造方法であっても良い。
【0023】
上記工程の一つの特徴及び利点は、成形天井の裏面に対する補強部材の固着と端縁部の溶着を同時に行うことにより、端末処理の後工程の短縮を図ることができ、工程全体の効率化を図ることができる。
【0024】
上記車両用成形天井の製造方法について、前記補強部材は、前記成形天井における前記開口部を形成するために除かれた部位の端材が用いられる、製造方法であっても良い。
【0025】
上記工程の一つの特徴及び利点は、成形天井の開口部の周縁を補強する補強部材として、開口部を形成するために除かれた部位の端材が用いられる。すなわち、成形天井の材料を有効に活用することができ、歩留まりの向上を図り得る。
【0026】
上記車両用成形天井の製造方法について、前記補強部材は、プラスチック、樹脂、金属板、又は木材から選択される、製造方法であっても良い。
【0027】
上記工程の一つの特徴及び利点は、補強部材は、プラスチック、樹脂、金属板、又は木材から選択される。すなわち、様々な材質からなる補強部材によって開口部の周辺領域を補強した成形天井を製造し得る。
【発明の効果】
【0028】
本発明は、上記工程により、車両用成形天井における端末処理の品質の安定化を図ると共に、端末処理における作業者の熱管理の負担を減らし、作業者がより安全に作業することができる車両用成形天井の製造方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】実施形態に係る成形天井の平面を模式的に示す図である。
図2】実施形態に係る成形天井の断面構成を模式的に示す図である。
図3】実施形態に係る端末処理用の治具の配置を模式的に示す図である。
図4】実施形態に係る第1折曲工程を模式的に示す図である。
図5】実施形態に係る第1折曲工程後、支持部材が所定位置(待機位置)に戻る状態を模式的に示す図である。
図6】実施形態に係る第2折曲工程と補強部材の配置工程を模式的に示す図である。
図7】実施形態に係る押さえ工程と第2溶着工程を模式的に示す図である。
図8】実施形態に係る第1溶着工程を模式的に示す図である。
図9】実施形態に係る第1溶着工程後、折曲駒が定位置に戻る状態を模式的に示す図である。
図10】上記実施形態の変更例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
<車両用成形天井の構成>
以下に、本発明の実施形態について、図を用いて説明する。車両には屋根として鋼板製の天井パネルが構成されている。天井パネルには、サンルーフ用の開口部が設けられる態様もある。第1実施形態に係る車両用の成形天井10は、この開口部が設けられた天井パネルの車室内側に装着される天井材であり、天井パネルの開口部と対向する位置に合わせて、成形天井10の中央部に開口部12が設けられている(図1参照)。
【0031】
成形天井10は、図2に示すように、基材層2と、裏材3と、表皮材4が積層されており、熱プレスによって加熱及び加圧することにより、三次元の面状に成形されている。基材層2は、例えば芯材と、芯材の両面に積層された繊維補強材で構成されている。芯材は、成形天井10の形状保持と剛性確保のために設けられており、車室内の吸音、断熱を有する態様も採り得る。芯材は、繊維系、段ボール系、ウレタン系、発泡オレフィン系等、種々適用できる。本実施形態に係る芯材は、例えばウレタンフォームが選択される。繊維補強材は、その表面に熱硬化性接着剤が塗布、又は含浸されて、芯材の両面にそれぞれ接着されており、成形天井10の形状保持と剛性向上に寄与する。また、基材層2の車室内側において繊維補強材と表皮材4の間に不織布層が積層されても良い。
【0032】
裏材3は、基材層2の車体側(天井パネル側)の面に沿って積層されている。裏材3は、熱可塑性樹脂を含む素材からなり、例えばポリアミド系、ポリエステル系、ポリアクリルニトリル系等、種々の合成繊維不織布が適用できる。また、裏材3と基材層2の間に非通気性樹脂フィルムが積層されても良い。
【0033】
表皮材4は、基材層2の車室内側の面に沿って積層されている。表皮材4は、成形天井10の意匠面を担う部位である。表皮材4は、例えば表面層と、ウレタンフォームシートが積層されたものが選択される。表面層は、ファブリック、クロス、ニット等の布帛や、織布、不織布、希毛布等の布部材、合成皮革、人工皮革、本革等、種々適用できる。ウレタンフォームシートは、成形天井10に柔らかい触感を得るためにウレタン樹脂発泡体からなる軟質層を適用して積層される。なお、ウレタンフォームシートが積層されない構成としても良い。
【0034】
成形天井10の中央部には、図1に示すように、開口部12が設けられている。開口部12の周縁は、端末処理が施され、巻込部14が形成されている。具体的には、開口部12の周縁に沿った端縁部15が、成形天井10の裏面10b(天井パネル側の面)側に向かって折り曲げられ、超音波溶着によって成形天井10の裏面10bと固着されている(図9参照)。すなわち巻込部14は、端縁部15と成形天井10の裏面10bとの接着面において、裏材3に含まれる熱可塑性樹脂が超音波振動により溶融した後に固化することで形成されている。なお端縁部15は、積層された状態の表皮材4、基材層2及び裏材3が一体に折り曲げられている。端縁部15が表皮材4のみではなく基材層2も含むことにより、巻込部14が形成される領域の強度の向上を図ることができる。
【0035】
成形天井10の開口部12の周囲(周辺領域)は、相対的に断面二次モーメントの低い部位となる傾向にある。そのため、開口部周辺領域16に、補強部材6が配置され、成形天井10の裏面10bに固定されている。ここで、開口部周辺領域16は、巻込部14が形成される領域とその周囲の領域が含まれる。補強部材6は、例えば成形天井10の製造工程で開口部12を形成するために除かれた部位の端材が用いられ、平板状かつ帯状に形成されている。そして、例えば巻込部14に隣接する位置又は領域に補強部材6が配置され、超音波溶着によって成形天井10の裏面10bと固着されている。なお、補強部材6は、開口部周辺領域16の全周に渡って配置しても良く、一部の領域にのみ配置しても良い。補強部材6は、成形天井10を構成する材料の端材のほか、例えばプラスチック、樹脂、金属板、木材など、種々の材質が適用され得る。また、成形天井10の裏面10bに対する補強部材6の固着方法は、補強部材6の材質に応じて、超音波溶着のほか、接着剤や両面テープ等による接着等が選択され得る。
【0036】
<端末処理用の治具>
次に、上記成形天井10における開口部12の端末処理に用いる治具について説明する。図3に示すように、本実施形態に係る端末処理用の治具として、基台20、折曲駒23、補強用駒27、支持部材30を備える。
【0037】
基台20は、端末処理される成形天井10を載置する載置面21を有しており、端末処理の工程において成形天井10を支持し得る。基台20は、載置面21において成形天井10における開口部12の周縁を支持する受け部21aを有している。受け部21aは、例えば開口部12の周縁の面形状に沿うように傾斜面が形成されている。端末処理の工程の間、受け部21aによって、成形天井10の開口部12の周囲の領域、端縁部15等が支持される。
【0038】
折曲駒23は、開口部12の周縁に沿った端縁部15を成形天井10の裏面10b側に折り曲げると共に、第1の超音波ホーンとして機能し、折り曲げた端縁部15を超音波溶着させるものである。折曲駒23は、例えばシリンダ等によって水平方向と上下方向に進退移動可能に構成されており、基台20の受け部21aに隣接した位置に配設される。本実施形態では、成形天井10の開口部12の周縁に沿って、巻込部14が形成される開口部周辺領域16が複数に区分けされており、区分けされた領域にそれぞれ対応するように複数の折曲駒23が配置される(例えば図1に示すA~L)。
【0039】
折曲駒23は、後述する折曲工程において、所定位置(待機位置)から第1移動軌跡の進入方向23X1に移動し、さらに第2移動軌跡の進入方向23Y1に移動するように構成されている(図4,6参照)。ここで、第1移動軌跡は、後述する折曲駒23の第1先端部24が、基台20に載置された成形天井10の端縁部15に対し表面10a(車室内側の面)側から近接するように移動する軌跡であり、図3図9に示す前後方向とする。第1移動軌跡の進入方向23X1は、前方向とする。第2移動軌跡は、第1先端部24が基台20に載置された成形天井10の裏面10bと近接するように移動する軌跡であり、図3~9に示す上下方向とする。第2移動軌跡の進入方向23Y1は、下降方向とする。
【0040】
折曲駒23は、超音波振動を伝達可能な第1先端部24を有している。第1先端部24は、側面視でフック状を呈するように形成されており、基台20の受け部21a(内側)に係止され得る。また、第1先端部24の超音波を伝達する伝達面24aは、対向する受け部21aの傾斜面に合わせて形成されている。これらの構成により、折曲駒23が第1移動軌跡の進入方向23X1に移動することで、第1先端部24が端縁部15と当接し、端縁部15がくの字に折り曲げられる(図4,5参照)。そして、折曲駒23が第2移動軌跡の進入方向23Y1(下降方向)に移動することで、端縁部15が第1先端部24と受け部21aの間に挟み込まれ、成形天井10の裏面10b側に折り曲げられる(図6参照)。すなわち折曲駒23は、第1先端部24が端縁部15の折曲げ基点の周りを移動することで、端縁部15を成形天井10の裏面10b側に折り曲げ、さらに裏面10bに近接するように折り曲げることができる。
【0041】
また、折曲駒23は、端縁部15を成形天井10の裏面10b側にさらに折り曲げた後、裏面10bに近接した端縁部15を第1先端部24の伝達面24aと基台20の受け部21aの間に挟むようにして、その位置から第1移動軌跡の進入方向23X1と反対方向(退避方向23X2)に移動し得る(図7参照)。このように第1先端部24を引き込むように折曲駒23が退避方向23X2に移動することで、端縁部15をさらにしっかりと折り曲げると共に、基台20の受け部21aに向かって押圧できる。すなわち第1先端部24の伝達面24aが、端縁部15を押さえる押圧面としても作用する。
【0042】
折曲駒23に接続される超音波の発信機は、例えば折曲駒23と同数の発信機を配置して、それぞれの発信機が個々の折曲駒23に対して超音波を発信する構成としても良い。これにより、複数に区分けされた領域で同時に巻込部14を形成できる。また、例えば折曲駒23より少ない数の発信機を配設して、一つの発信機で複数の折曲駒23に対して超音波を発信する構成としても良い。この場合、区分けされた領域(部位)ごとに順次超音波溶着を行うため、後述する第1溶着工程において若干のタクト時間を要するが、発信機の数を減らすことで設備の費用削減を図り得る。
【0043】
補強用駒27は、補強部材6を開口部周辺領域16に配置すると共に、第2の超音波ホーンとして機能し、配置した補強部材6を超音波溶着させるものである。補強用駒27は、例えばシリンダ等によって上下方向に進退移動可能に構成されており、基台20の上方において、補強部材6の配置の位置や数に応じて適宜配設される。補強用駒27は、第2先端部28が基台20に載置された成形天井10の裏面10bと近接するように、下降する構成となっており、下降するときに折曲駒23の第1先端部24と接触しないように下降の位置が設定されている。補強用駒27は、超音波振動を伝達可能な第2先端部28を有している。第2先端部28の超音波を伝達する伝達面28aは、対向する受け部21aの傾斜面に合わせて形成されている。
【0044】
補強用駒27は、第2先端部28に、補強部材6を保持可能な保持部29を備えている。保持部29は、例えばバキュームなどで補強部材6を保持する構成となっており、保持される部材の材質により保持方法が適宜選択される。補強用駒27は、保持部29で補強部材6を保持しながら、第2先端部28が基台20に載置された成形天井10の裏面10bと近接する進入方向27Y1(下降方向)に移動させることにより、補強部材6を開口部周辺領域16に配置する(図6参照)。
【0045】
図3に示すように、水平方向(前後方向)において折曲駒23と対向する位置には、板状の支持部材30が、板面が基台20の載置面21と対向するように、言い換えれば板面が上下方向を向くように配設されている。支持部材30は、例えばシリンダ等によって水平方向に進退移動可能に構成されており、折曲駒23の第1先端部24と対向して近接離間し得る。支持部材30は、その先端30aが端縁部15の折曲げ基点となる位置に接するまで進入方向30X1に移動する構成となっている(図4参照)。これにより、支持部材30は、第1移動軌跡の進入方向23X1に移動した折曲駒23によって折り曲げられる端縁部15を支持し得る。また、支持部材30は、開口部12の形状に近似するように形成されている。これにより、例えば、開口部12が曲線状に形成されている部位又はコーナー部分など、端縁部15を折り曲げるときにしわ等が発生しやすい場合でも、成形天井10の裏面10b側と端縁部15が確実に面接触し得るように折り曲げることができる。
【0046】
<車両用成形天井の製造工程>
次に、本実施形態に係る成形天井10の製造方法について説明する。本実施形態では、成形面が所要曲面に形成された成形型で加圧することにより成形天井10を成形した後、成形天井10に設けられた開口部12の周縁に沿った端縁部15を成形天井10の裏面10b側に向かって折り曲げ、成形天井10の裏面10bと接着させる。成形天井10の製造工程には、成形工程、開口部形成工程、開口部12の端末処理工程が含まれる。端末処理工程には、載置工程、折曲工程、押さえ工程、第1溶着工程、配置工程及び第2溶着工程(固着工程)が含まれ、折曲工程には、第1折曲工程と第2折曲工程が含まれる。
【0047】
図1,2を参照するように、成形工程では、基材層2の車体側に裏材3、基材層2の車室内側に表皮材4を積層させた積層体を、成形型で加熱及び加圧することにより、三次元の面状に一体成形する。そして、開口部形成工程において、成形天井10の中央部に天井パネルのサンルーフ用の開口部に対応する開口部12を設ける。
【0048】
端末処理工程に含まれるそれぞれの工程について説明する。図3を参照するように、載置工程では、成形天井10を、基台20に載置する。成形天井10は、表面10a側が基台20の載置面21と対向し、かつ端縁部15が受け部21aより基台20の外側に延在するように載置される。
【0049】
折曲工程は、基台20に載置された成形天井10における開口部12の端縁部15を、成形天井10の表面10a側から裏面10b側に向かって折り曲げる工程である。端縁部15は、積層されている表皮材4と基材層2と裏材3が一体に折り曲げられる。第1折曲工程では、図4,5を参照するように、折曲駒23を第1移動軌跡の進入方向23X1に移動させて、折曲駒23の第1先端部24を成形天井10の端縁部15に当接させる。折曲駒23は、第1先端部24が端縁部15から離れない位置まで、さらに進入方向23X1に移動する。これにより、端縁部15は、成形天井10の裏面10b側にくの字状に折り曲げられる。
【0050】
第1折曲工程では、板状の支持部材30を、基台20に載置された成形天井10における開口部12の端縁部15の裏面10b側に近接するように進入させた状態で、折曲駒23を進入させても良い。進入した支持部材30の先端30aは、端縁部15の折曲げ基点に接するように成形天井10に対して位置決めされる。これにより、端縁部15が支持部材30の先端30aを基点にして、支持部材30の板面上に折り曲げられる。ここで、折り曲げられた端縁部15を折曲部18とする。支持部材30の進入方向30X1は、折曲駒23の進入方向23X1と反対方向に設定されている。支持部材30は、端縁部15が折り曲げられた後に、退避方向30X2に移動する。そして支持部材30が退避した後に第2折曲工程が行われる。
【0051】
第2折曲工程では、図6を参照するように、第1折曲工程で折り曲げられた端縁部15(折曲部18)を、成形天井10の裏面10bに沿うようにさらに折り曲げる。具体的には、折曲駒23を、第1折曲工程で進入方向23X1に移動した位置から、第2移動軌跡の進入方向23Y1(下降方向)に移動させる。これにより、第1先端部24が折曲部18を巻き込むようにして基台20の受け部21aと近接する。折曲部18は、成形天井10の裏面10bにさらに近接するように折り曲げられる。
【0052】
第2折曲工程の後、押さえ工程が行われる。押さえ工程では、折曲部18(折り曲げられた端縁部15)と成形天井10の裏面10bを密着させる。本実施形態では、第1先端部24を折り曲げられた折曲部18の厚さ方向に引き込むようにして、折曲部18と成形天井10の裏面10bが面接触するまで、折曲駒23を移動させる引込工程を行う。具体的には、図7を参照するように、折曲部18を第1先端部24と基台20の受け部21aの間に挟むようにして、折曲駒23を第2折曲工程で下降した位置から、第1移動軌跡の進入方向23X1と反対方向(退避方向23X2)に移動させる。これにより、第1先端部24の伝達面24aが押圧面として作用し、折曲部18が厚さ方向に圧縮されるように基台20の受け部21aに向かって押圧される。そして、折曲部18がさらにしっかりと折り曲げられると共に、成形天井10の裏面10bと密着する。このようにして、第2折曲工程でさらに折り曲げられた端縁部15と成形天井10の裏面10bとの間の隙間を無くすことで、成形天井10における巻込部14が形成される領域(部位)に対して確実に超音波振動が伝達され、端縁部15を溶着固定することができる。
【0053】
第1溶着工程では、図8を参照するように、第1先端部24によって押圧された状態の端縁部15(折曲部18)と成形天井10の裏面10bを、第1先端部24を介して超音波溶着させる。これにより、端末処理された巻込部14が形成される。折曲駒23と同数の発信機を配置した場合は、それぞれの発信機が個々の折曲駒23に対して同時に超音波を発信し、複数に区分けされた領域で同時に巻込部14を形成することができる。また、例えば折曲駒23より少ない数の発信機を配設して、一つの発信機で複数の折曲駒23に対して超音波を発信する場合は、順次超音波溶着を行う。
【0054】
配置工程で、成形天井10の開口部周辺領域16に補強部材6を配置する。具体的には、図5,6を参照するように、補強用駒27の保持部29で補強部材6を保持しながら、補強用駒27を進入方向27Y1(下降方向)に移動させることにより、補強部材6を巻込部14が形成される領域と隣接する位置に配置する。保持部29は、例えばバキュームなどによる吸着等によって補強部材6を保持し得る。本実施形態では、折曲駒23の下降と同時に補強用駒27が下降する。すなわち、第2折曲工程の間に、補強部材6の配置工程が行われる。なお、配置工程は、補強用駒27によらず、予め人手により補強部材6を配置し、仮固定しても良い。
【0055】
第2折曲工程から第1溶着工程終了までの間に、第2溶着工程(固着工程)が行われる。第2溶着工程では、補強部材6を成形天井10の裏面10bに超音波溶着によって固着させる。図6,7を参照するように、配置工程で補強部材6を保持しながら下降し、補強部材6を配置した補強用駒27が、第2の超音波ホーンとして機能して、第2先端部28を介して補強部材6に超音波振動を伝達する。本実施形態では、押さえ工程における引込工程と同時に第2溶着工程が行われる。
【0056】
補強部材6の固着工程は、超音波溶着に代えて、接着剤又は両面テープ等により補強部材6を接着させても良い。例えば、補強部材6の固着される側の面に予め接着剤を塗布又は両面テープを貼りつけておくことで、開口部周辺領域16に配置された補強部材6が成形天井10の裏面10bに接着(固着)される。また、固着工程は、第1溶着工程と同時に行われても良い。
【0057】
次に、成形天井10における開口部12の端末処理の流れについて説明する。図3を参照するように、加圧成形後に開口部12が形成された成形天井10を、基台20にセットする。支持部材30が所定位置(待機位置)から進入方向30X1に移動し、支持部材30の先端30aが端縁部15の折曲げ基点に接するように、開口部12の端縁部15に裏面10b側から近接する。図4を参照するように、折曲駒23が所定位置(待機位置)から第1移動軌跡の進入方向23X1に移動する。折曲駒23の第1先端部24が、成形天井10の表面10a側から端縁部15に当接する。さらに折曲駒23が進入方向23X1に移動することにより、端縁部15が支持部材30の先端30aを基点にして、くの字状に折り曲げられる(第1折曲工程)。図5を参照するように、第1折曲工程の後、支持部材30が退避し所定位置に戻る。
【0058】
図6を参照するように、折曲駒23と、補強部材6を保持した補強用駒27が同時に下降する。折曲駒23が下降することで、端縁部15(折曲部18)が第1先端部24によってさらに折り曲げられ、成形天井10の裏面10bと近接する(第2折曲工程)。また、補強用駒27が下降することで、補強部材6が開口部周辺領域16に、例えば巻込部14と隣接する位置に配置される(配置工程)。
【0059】
図7を参照するように、折曲駒23が第1先端部24を引き込むように第1移動軌跡の退避方向23X2に移動する(引込工程)。成形天井10の裏面10bと近接した端縁部15(折曲部18)が押圧され、成形天井10の裏面10bと密着する(押さえ工程)。折曲駒23が退避方向23X2に移動する間に、補強用駒27の第2先端部28を介して補強部材6が超音波溶着される(第2溶着工程)。
【0060】
図8を参照するように、補強用駒27が退避方向27Y2(上昇方向)に移動すると共に、折曲駒23の第1先端部24を介して端縁部15が成形天井10の裏面10bに超音波溶着される(第1溶着工程)。これにより端末処理された巻込部14が形成される。その後、図9を参照するように、折曲駒23は第2移動軌跡の退避方向23Y2に上昇移動し、さらに第1移動軌跡の退避方向23X2に移動して、所定位置(待機位置)に戻る。端末処理が施された製品が取り出される。
【0061】
上記車両用成形天井の製造工程の変更例として、図10に示すように、成形天井10は、端縁部15の折曲げ基点において、成形天井10の裏面10b側から厚さ方向に凹んだ凹部19が設けられていても良い。折曲げ基点に凹部19を設けることで、第1折曲工程において支持部材30を用いることなく、端縁部15の折曲げの基点が位置決めされる。よって、第1折曲工程から第2折曲工程にわたり、端縁部15を折曲げ基点できれいに折り曲げできる。なお、折曲げ基点における凹部19に代えて、成形天井10の厚さ方向に切り込まれた切込み部を設けても良い。
【0062】
<実施形態の効果>
上記実施形態に係る成形天井10の製造工程によれば、成形天井10に設けられた開口部12の周縁の端縁部15が、第1の超音波ホーンとして機能する折曲駒23で成形天井10の裏面10bに向かって折り曲げられる。折り曲げられた端縁部15は、折曲駒23の第1先端部24で押圧される。これにより、端縁部15と成形天井10の裏面10bがより密着した状態で、第1先端部24を介して超音波振動が伝達され、端縁部15を成形天井10の裏面10bに確実に超音波溶着し得る。したがって、成形天井10の開口部12の端末を折り曲げ、成形天井10の裏面10bに溶着させる一連の工程を、自動で行うことができ、端末処理の品質の安定化を図ることができる。また、折曲駒23が、折り曲げ及び超音波溶着用の治具を兼ねることにより、折曲駒23とは別に成形天井10の端縁部15を加熱するための加熱用の駒や熱風ダクト等を設ける必要がなく、作業者の熱管理の負担軽減や余熱のための光熱費の削減を図ることができる。さらに、作業者が製品をセット又は取り出しを行う際に、その周囲における高温の部位を減らすことができ、作業の安全性の向上を図ることができる。
【0063】
上記実施形態に係る成形天井10の製造工程は、第1折曲工程と第2折曲工程を含んでいる。成形天井10における開口部12の端縁部15は、折曲駒23が第1移動軌跡の進入方向23X1に移動し、第1先端部24が端縁部15に当接しながら端縁部15から離れない位置まで移動することで、進入方向23X1に沿うように途中まで折り曲げられる。そしてその状態から折曲駒23が第2移動軌跡の進入方向23Y1(下降方向)に移動することで、端縁部15が成形天井10の裏面10bに沿うようにさらに折り曲げられる。したがって、製品によって端縁部15を折り曲げる基点のばらつきが生じることを抑制し得る。
【0064】
上記実施形態に係る成形天井10の製造工程は、押さえ工程において、第2折曲工程で折り曲げられた端縁部15(折曲部18)の厚さ方向に第1先端部24を引き込むように折曲駒23を移動させる。これにより、成形天井10の裏面10bと近接した折曲部18は押圧されて、さらにしっかりと折り曲げられる。したがって、折曲部18と成形天井10の裏面10bとの間に隙間が生じている場合でも、折曲部18と成形天井10の裏面10bとを密着させることができ、必要な部位まで超音波振動を伝達し得る。
【0065】
上記実施形態に係る成形天井10の製造工程は、第1折曲工程において、板状の支持部材30が成形天井10の端縁部15を挟んで、折曲駒23の第1先端部24と対向する位置に進入して待機する。支持部材30の先端30aは、端縁部15の裏面側において、折曲げ基点に接する。これにより、折曲駒23が第1移動軌跡の進入方向23X1に移動することで、板状の支持部材30の板面上に成形天井10の端縁部15が折り曲げられる。したがって、成形天井10の材料構成や開口部12の形状によって端縁部15が曲がりにくい場合であっても、支持部材30の先端30aを基点にして端縁部15を安定した位置で折り曲げることができる。
【0066】
上記実施形態に係る成形天井10の製造工程は、第2溶着工程(固着工程)において、第2の超音波ホーンとして機能する補強用駒27によって、成形天井10の開口部周辺領域16の少なくとも一部の領域に補強部材6が超音波溶着される。成形天井10の開口部周辺領域16に補強部材6を配置し、固着させることにより、開口部周辺領域16の強度の向上を図り得る。また、第2溶着工程を第2折曲工程から第1溶着工程終了までの間に行うことにより、成形天井10の開口部12の周縁における端末処理と同時に補強部材6の溶着(固着)を行うことができる。したがって、後工程の短縮を図ることができる。
【0067】
上記実施形態に係る成形天井10の製造工程は、配置工程において、補強用駒27の保持部29で補強部材6を保持しながら、成形天井10の裏面10bに向かって移動させて、開口部周辺領域16に配置する。そして、補強用駒27の第2先端部28を介して超音波振動を伝達することで、配置された補強部材6を成形天井10の裏面10bと超音波溶着させる。したがって、補強部材6を手作業でなく自動で開口部周辺領域16に配置することができると共に、成形天井10の裏面10bに超音波溶着するまでの工程を効率的に行うことができる。
【0068】
上記実施形態に係る成形天井10の製造工程は、成形天井10の開口部12の周縁を補強する補強部材6として、開口部12を形成するために除かれた部位の端材が用いられる。すなわち、成形天井10の材料を有効に活用することができ、歩留まりの向上を図り得る。
【0069】
上記実施形態に係る成形天井10の製造工程によれば、超音波溶着により端末処理された巻込部14が形成される。また、補強部材6を、成形天井10の裏面10bに配置し、超音波溶着により固着する。このように超音波溶着によって端末処理や補強部材6の固着をすることで、例えば加熱による変形や焦げつきなど、成形天井10の成形面への影響を軽減し得る。
【0070】
上記実施形態に係る成形天井10の製造工程は、開口部12の端縁部15を折り曲げる折曲駒23が超音波ホーンの機能を兼ね備える。これにより、加熱用の駒や熱風ダクト等は不要となるため、例えば、車種ごとに対応する折曲駒23と支持部材30、又は折曲駒23のみを備えれば良く、車種ごとに必要となる端末処理用の治具の数を減らすことができ、設備費用等の削減を図ることができる。
【0071】
上記実施形態に係る成形天井10の製造工程は、折曲駒23における第1先端部24の伝達面24aが、押さえ工程において端縁部15を押さえる押圧面としても作用する。これにより、端縁部15を折り曲げてから超音波溶着するまでの一連の工程の効率化を図ることができる。
【0072】
上記実施形態に係る成形天井10の製造工程は、押さえ工程において、折曲駒23が第1先端部24を引き込むように退避移動する引込工程を行うことで、端縁部15が折曲げ基点からさらにしっかりと折り曲げられる。したがって、端縁部15は、折曲駒23が第1移動軌跡の進入方向23X1、第2移動軌跡の進入方向23Y1(下降方向)、第1移動軌跡の進入方向23X1と反対方向(退避方向23X2)の順に移動する向きを変えることにより、第1先端部24によって3段階に折り曲げられる。また、第2折曲工程から押さえ工程までの間、第1先端部24が傾斜した受け部21aに対して異なる2方向から端縁部15を折り曲げ、押圧し得る。よって、基材層2を含んだ厚さを有する成形天井10の端縁部15を裏面10bと面接触するまでしっかりと折り曲げることができる。
【0073】
上記実施形態に係る成形天井10の製造工程は、補強部材6の配置工程が、第2折曲工程と同時に行われ、補強部材6を溶着する第2溶着工程が、引込工程(押さえ工程)と同時に行われる。すなわち、開口部12の端末処理の工程と同時に補強部材6の配置と溶着の工程を行い得る。したがって、端末処理後の後工程の短縮を図ることができる。
【0074】
上記実施形態に係る成形天井10の製造工程は、補強用駒27が補強部材6を保持する保持部29を有すると共に、超音波ホーンの機能を兼ね備える。これにより、必要な治具の数を減らすことができ、設備費用等の削減を図ることができる。
【0075】
成形天井10の製造工程は、成形天井10の折曲げ基点において、裏面側から厚さ方向に凹んだ凹部19又は厚さ方向に切り込まれた切込み部が設けられている場合、成形天井10の材質等によらず、折曲げ基点において基材等が曲がり易くなると共に、折曲げの基点が位置決めされる。したがって、支持部材30を用いなくても、第1折曲工程において安定した位置で端縁部15を折り曲げることができる。また、第2折曲工程で端縁部15をさらに折り曲げるときにも、よりきれいな折り曲げを実現し得る。
【0076】
成形天井10の製造工程は、固着工程が第1溶着工程と同時に行われても良い。成形天井10の裏面10bに対する補強部材6の固着と端縁部15の超音波溶着を同時に行うことにより、端末処理の後工程の短縮を図ることができ、工程全体の効率化を図ることができる。
【0077】
補強部材6は、プラスチック、樹脂、金属板、又は木材等から選択しても良い。すなわち、様々な材質からなる補強部材6によって開口部周辺領域16を補強した成形天井10を製造し得る。
【0078】
本発明に係る車両用の成形天井の製造方法は、上記実施形態において説明した外観、構成等に限られず、本発明の要旨を変更しない範囲で種々の変更、追加、削除、構成の組み合わせにより、その他各種の形態で実施できるものである。
【0079】
上記実施形態に係る折曲駒23が移動する第1移動軌跡と第2移動軌跡は、任意に設定される。例えば三次元に移動する軌跡であっても良い。また、折曲駒23、補強用駒27、及び支持部材30の進入方向と退避方向も任意の方向に適宜設定されるものである。
【0080】
上記実施形態では、配置工程において補強用駒27が保持部29で補強部材6を保持しながら下降することで、補強部材6を成形天井10の裏面10bに配置する例を示したが、これに限られず、補強部材6を手作業で配置して仮固定する方法を採用しても良い。
【0081】
成形天井10の開口部周辺領域16に配置される補強部材6は、必要に応じて配置の位置や数が適宜選択される。また、成形天井10は、補強部材6を配置しない構成としても良い。
【0082】
補強部材6を溶着する第2溶着工程のタイミングは、引込工程と同時に限られず、適宜設定されるものである。例えば、第1溶着工程と同時に補強部材6の溶着を行っても良い。また、端縁部15の折曲工程の間に、補強部材6の溶着を行っても良い。
【0083】
補強部材6の固着方法は、超音波溶着による固着に限られず、補強部材6の材質に応じて種々選択できる。例えば、接着剤又は両面テープ等で補強部材6を接着(固着)させても良い。
【0084】
上記実施形態では、折曲工程において支持部材30によって、端縁部15を支持する例を示したが、例えば基材層2が折れ曲がり易い場合など、成形天井10の材質等に応じて、支持部材30を用いることなく端縁部15を折り曲げる方法を採用しても良い。
【0085】
上記実施形態に係る基材層2の構成として、ウレタンフォームの芯材と繊維補強材を積層させた構成の例を示したが、これに限られず、種々の構成を適用できる。例えばガラス繊維と熱可塑性樹脂を含んだ芯材の両面に、不織布からなる繊維層が積層された成形体、あるいは成形不織布などを基材層の構成として選択しても良い。
【符号の説明】
【0086】
2 基材層
3 裏材
4 表皮材
6 補強部材
10 成形天井(車両用成形天井)
10a 成形天井の表面
10b 成形天井の裏面
12 開口部
14 巻込部
15 端縁部
16 開口部周辺領域(開口部の周辺領域)
18 折曲部(端縁部)
19 凹部
20 基台
21 載置面
21a 受け部
23 折曲駒
23X1 第1移動軌跡の進入方向
23Y1 第2移動軌跡の進入方向
24 第1先端部
27 補強用駒
28 第2先端部
29 保持部
30 支持部材
30a 支持部材の先端
図1
図2
図3
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図10