(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024179097
(43)【公開日】2024-12-26
(54)【発明の名称】電池パックの気密性検査方法
(51)【国際特許分類】
G01M 3/20 20060101AFI20241219BHJP
【FI】
G01M3/20 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023097642
(22)【出願日】2023-06-14
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【弁理士】
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】森 伸一郎
【テーマコード(参考)】
2G067
【Fターム(参考)】
2G067AA22
2G067AA44
2G067CC04
2G067DD06
(57)【要約】
【課題】空気漏れを高精度かつ短時間で検出可能な電池パックの気密性検査方法を提供する。
【解決手段】本開示に係る電池パックの気密性検査方法は、各電池パックを検査対象とし、前記各電池パックを加圧又は減圧することによって前記各電池パック内の圧力を変化させ、前記各電池パックを加圧又は減圧させる前後における前記各電池パック内の圧力及び温度を計測し、圧力及び温度の計測結果と気体の状態方程式とに基づいて、前記各電池パックを加圧又は減圧させる前後において変化した体積を算出し、算出された前記体積に基づいて補正係数を算出し、算出された前記補正係数に基づいて前記各電池パック内における空気の漏れ量を算出する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
各電池パックを検査対象とする、電池パックの気密性検査方法であって、
前記各電池パックを加圧又は減圧することによって前記各電池パック内の圧力を変化させ、
前記各電池パックを加圧又は減圧させる前後における前記各電池パック内の圧力及び温度を計測し、
圧力及び温度の計測結果と気体の状態方程式とに基づいて、前記各電池パックを加圧又は減圧させる前後において変化した体積を算出し、
算出された前記体積に基づいて補正係数を算出し、
算出された前記補正係数に基づいて前記各電池パック内における空気の漏れ量を算出する、
電池パックの気密性検査方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電池パックの気密性検査方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電池パックが一定以上の気密性を有することを検査する方法が開発されている。
例えば、特許文献1には、検査対象の各電池パックに対し加圧または減圧によりパック内の圧力を変化させ、圧力変化後の保圧(平衡)状態を経た後に圧力変化量を検出して電池パック内の空気漏れが発生しているかどうかを判定する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
発明者らは、電池パックの気密性検査方法について、以下の課題を見出した。
電池パックを加圧又は減圧すると、電池パックの変形に伴って電池パックの体積が変化することがある。電池パックの体積が変化すると、空気漏れを判定する際に計測される圧力の値が低く検出されるため、空気漏れが発生しているか否かを判定するために長い時間を要する虞がある。
【0005】
本開示は、このような問題に鑑みなされたものであり、空気漏れを高精度かつ短時間で検出可能な電池パックの気密性検査方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成する一態様は、
各電池パックを検査対象とする、電池パックの気密性検査方法であって、
前記各電池パックを加圧又は減圧することによって前記各電池パック内の圧力を変化させ、
前記各電池パックを加圧又は減圧させる前後における前記各電池パック内の圧力及び温度を計測し、
圧力及び温度の計測結果と気体の状態方程式とに基づいて、前記各電池パックを加圧又は減圧させる前後において変化した体積を算出し、
算出された前記体積に基づいて補正係数を算出し、
算出された前記補正係数に基づいて前記各電池パック内における空気の漏れ量を算出する。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、空気漏れを高精度かつ短時間で検出可能な電池パックの気密性検査方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図2】実施形態に係る電池パックの気密性検査方法の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して本開示の実施形態について説明する。ただし、本開示が以下の実施形態に限定される訳ではない。また、説明を明確にするため、以下の記載及び図面は、適宜、簡略化されている。
【0010】
まず、
図1を参照して本実施形態に係る電池パックの気密性検査方法(本実施形態に係る気密性検査方法)の概要を説明する。本実施形態に係る気密性検査方法では、検査対象である電池パックを加圧又は減圧することによって電池パック内の圧力を変化させた後、電池パックの圧力変化量を検出することによって空気漏れの発生を検出する。
図1は、電池パックを減圧した後に気密性を検査する際における電池パック内の圧力変化の一例を示すグラフである。
図1に示すように、本実施形態に係る気密性検査方法では、電池パックを減圧(又は加圧)させ、保圧状態すなわち平衡状態を経た後に電池パック内の圧力変化量を検出する。以下、電池パックを減圧する場合について説明する。
【0011】
図2を参照して、本実施形態に係る気密性検査方法の詳細を説明する。本実施形態に係る気密性検査方法では、まず、電池パック内の圧力及び温度の測定を開始し、当該電池パックを減圧することによって当該電池パック内の圧力を変化させる。次に、圧力変化時における圧力及び温度データを取得する(ステップS101)。具体的には、電池パックを減圧する前後における当該電池パック内の圧力及び温度の測定データを取得する。次に、圧力変化時における空気変化量データを取得する(ステップS102)。具体的には、電池パックを減圧する前後における当該電池パック内の空気の変化量データを取得する。
図2に示す例ではステップS102をステップS101の後に行っているが、ステップS101及びステップS102を行う順序は特に限定されない。例えば、ステップS102は、ステップS101よりも先に行われてもよいし、ステップS101と並行して行われてもよい。
【0012】
次に、ステップS101及びステップS102において取得したデータに基づいて計算式を作成する(ステップS103)。以下、数式を参照しつつステップS103において作成される計算式を説明する。
【0013】
減圧前の電池パック内における気体の状態方程式を以下の数式(1)に示す。ここで、P1は、減圧前における電池パック内の圧力である。V1は、減圧前における電池パック内の体積である。n1は、減圧前における電池パック内の空気の物質量である。Rは、気体定数である。T1は、減圧前における電池パック内の温度である。尚、P1、R、T1は計測可能な定数である。
【0014】
【0015】
減圧後の電池パック内における気体の状態方程式を以下の数式(2)に示す。ここで、Pは、減圧後における電池パック内の圧力である。Vは、減圧後における電池パック内の体積である。n2は、減圧後における電池パック内の空気の物質量である。Tは、減圧前における電池パック内の温度である。尚、P、Tは計測可能な変数である。V、n2は未知数である。
【0016】
【0017】
減圧時に電池パック内から引き抜いた空気について気体の状態方程式を以下の数式(3)に示す。ここで、P3は、引き抜かれた空気の圧力である。V3は、引き抜かれた空気の体積である。n3は、引き抜かれた空気の物質量である。T3は、引き抜かれた空気の温度である。尚、P3、V3、T3は計測可能な定数である。n3は未知数である。
【0018】
【0019】
ここで、空気の物質量に関し、以下の数式(4)が成り立つ。
【0020】
【0021】
以下の数式(5)は、数式(4)に数式(1)~(3)を変形して代入した数式である。
【0022】
【0023】
数式(5)においてV1に理論値を適用することにより、減圧後における電池パックの圧力、堆積及び温度の関係式を得ることができる。すなわち、数式(5)に基づいて所定の圧力及び温度下における減圧後における電池パックの体積を求めることができる。ステップS103では、以上のようにして計算式を作成する。次に、減圧による電池パックの体積の変化量を算出する(ステップS104)。具体的には、ステップS101において取得したデータを数式(5)に代入することによって、減圧後における電池パックの体積を算出する。次に、ステップS104において算出された体積に基づいて補正係数Aを算出する(ステップS105)。
【0024】
ここでまず、減圧時に電気パックの体積が変化しない場合について考える。
平衡状態を経た時点すなわち空気漏れ検出開始時における電池パック内の気体の状態方程式を以下の数式(6)に示す。尚、Pbは、検出開始時における電池パック内の圧力である。
【0025】
【0026】
空気漏れが発生している場合における空気漏れ検出開始後の電池パック内の気体の状態方程式を以下の数式(7)に示す。尚、Paは、検出開始時における電池パック内の圧力である。n4は、空気漏れ検出開始後に電池パックに入り込んだ空気の物質量すなわち空気漏れした空気の物質量である。
【0027】
【0028】
空気漏れ検出時における電池パック内の圧力変化量すなわち差圧は数式(6)及び数式(7)に基づき、以下の数式(8)として表される。
【0029】
【0030】
以下の数式(9)は、数式(8)を変形したものである。このように、n4すなわち空気の漏れ量は、差圧から求められる。
【0031】
【0032】
次に、減圧時に電気パックの体積が変化する場合について考える。
空気漏れ検出開始時における電池パック内の気体の状態方程式を以下の数式(10)に示す。尚、Vbは、検出開始時における電池パック内の体積である。
【0033】
【0034】
空気漏れが発生している場合における空気漏れ検出開始後の電池パック内の気体の状態方程式を以下の数式(11)に示す。
【0035】
【0036】
空気漏れ検出時における電池パック内の圧力変化量すなわち差圧は数式(10)及び数式(11)に基づき、以下の数式(12)として表される。ここで、数式(8)と数式(12)とを比較すると、電池パックの体積が変化する場合、空気漏れ発生時における電池パックの圧力変化(差圧)が小さくなることが分かる。
【0037】
【0038】
そこで、数式(12)において空気漏れした空気の物質量に依らない部分を補正係数Aとする。補正係数Aは、以下の数式(13)として表される。本実施形態に係る気密性検査方法では、このようにして補正係数を算出する(ステップS105)。
【0039】
【0040】
次に、空気の漏れ量を算出する(ステップS106)。数式(14)は、数式(12)に数式(13)を代入して変形した数式である。ステップS106では、ステップS105において算出した補正係数Aと差圧とを利用して数式(14)に基づいて空気の漏れ量を算出する。このように補正係数Aを算出し、補正係数Aを加味して空気の漏れ量を算出することにより、電池パックの体積変化を考慮した気密性の検査を行うことができる。
【0041】
【0042】
次に、ステップS106において算出された空気の漏れ量が規格以下であるか否かを判定する(ステップS107)。空気の漏れ量が規格以下である場合(ステップS107Yes)、電池パック内の圧力及び温度の計測を終了する。空気の漏れ量が規格より多かった場合(ステップS107No)、規定時間を満たしているか否かを判定する(ステップS108)。規定時間を満たしている場合(ステップS108Yes)、再度、電池パックの体積の変化量を算出する(ステップS104)。規定時間を満たしていない場合(ステップS108No)、計測に異常があると判定する。
【0043】
このように、本実施形態に係る気密性検査方法では、電池パックの体積変化を加味して空気の漏れ量を算出しているため、高精度に空気漏れを検出することができる。また、電池パックの体積変化に伴って差圧が小さくなることを加味して空気の漏れ量が規定以下であるかを判定しているため、短時間で判定を行うことができる。